特許第6410317号(P6410317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6410317
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】ポンプ容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20181015BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   B65D47/34 110
   B65D83/00 K
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-110960(P2015-110960)
(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-222312(P2016-222312A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【弁理士】
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】當麻 徹
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−203407(JP,A)
【文献】 特開2011−068380(JP,A)
【文献】 実開昭60−171850(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0267398(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口頸部(6)を起立する容器体(2)と、
口頸部(6)に装着され、容器体(2)内へ垂設したシリンダ(30)を含むシリンダ部材(20)と、
シリンダ(30)内面を摺動する筒状ピストン(42)を有するとともにシリンダ(30)上方へ起立する縦筒部(41)を有し、この縦筒部(41)の上端側を、操作ヘッド(70)の下面側に液密に嵌合させてなり、操作ヘッド(70)の上面に吐出口(76)を開口させた作動部材(40)と、
を備え、
作動部材(40)の上下動により容器体(2)から第1逆止弁(V1)を介してシリンダ(30)内へ液体を吸い上げるとともに、シリンダ(30)内の液体を、第2逆止弁(V2)を介して吐出口(76)から吐出するように構成したポンプ容器であって、
操作ヘッド(70)の内部に配置されて、吐出口(76)の周囲部分(78)裏面へ上方付勢状態で圧接されて吐出口(76)を閉塞する栓体(80)を設け、
操作ヘッド(70)の吐出口(76)の周囲裏面に操作ヘッド(70)の押し下げにより、栓体(80)を下降させる押圧面(D)と、
栓体(80)の下面と縦筒部(41)の上端側の対応箇所に、栓体(80)の下降により、相互にスライドして栓体(80)を周方向一方へ回転させるように形成した一対の第1係合面(S1U、S1L)と、
操作ヘッド(70)の裏面側と栓体(80)の上面との対応箇所に、栓体(80)の回転により、相互にスライドして、栓体(80)を操作ヘッド(70)に対してさらに下降させるように形成した一対の第2係合面(S2U、S2L)とをそれぞれ設け、
操作ヘッド(70)の押下げ解放により吐出口(76)が閉じるように構成したことを特徴とする、ポンプ容器。
【請求項2】
上記吐出口(76)は上方から見て円形であるとともに、栓体(80)の上面中央部に吐出口(76)内へ嵌合可能な凸状の栓部(82b)を形成し、この栓部(82b)が回転しながら吐出口(76)から離脱可能し、或いは嵌合されるように設けたことを特徴とする、ポンプ容器。
【請求項3】
上記吐出口(76)の周囲部分(78)裏面を、栓体(80)の外周部(82a)の形に対応して凹設させて、この外周部(82a)の上面と周囲部分(78)裏面とを密接させるともに、操作ヘッド(70)を押し下げたときには、この周囲部分(78)裏面が上記押圧面(D)として栓体80を押し下げるように構成したことを特徴とする、請求項2に記載のポンプ容器。
【請求項4】
上記縦筒部(41)は、有底筒状のピストンガイド(44)の下部外面に対して昇降可能に装着させた筒状ピストン(42)が、シリンダ(30)内面を摺動するように設け、そのピストンガイド(44)の上部へ下半部を嵌合させてシリンダ(30)上方へステム(46)を起立してなり、
このステム(46)の上部に操作ヘッド(70)を連結するとともに、
ピストンガイド(44)の下部に形成した弁座(44c)と筒状ピストン(42)の下部とで第2逆止弁(V2)を形成するとともに、この第2逆止弁(V2)を、ピストンガイド(44)の内部に形成される液体通路を経由して、吐出口(76)へ連通させるように形成し、
ピストンガイド(44)内に、ピストンガイド(44)の内圧の発生により上記液体通路の容積を増加させ、かつピストンガイド(44)の内圧の解消により、液体通路の容積が元の状態に復帰する容積調整機構(94)を設けたことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載のポンプ容器。
【請求項5】
上記容積調整機構(94)は、ピストンガイド(44)の内面下部に外周部を昇降可能にかつ密嵌させた水平な隔壁(96)と、これら隔壁(96)の下面から突設した複数のバネ板(98)とからなることを特徴とする、請求項4に記載のポンプ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ容器、特に大径の操作ヘッドを有するプッシュ式容器として適したポンプ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種容器として、口頸部を起立する容器体と、口頸部に装着するとともに容器体内へ垂設したシリンダを含むシリンダ部材と、シリンダ内面を摺動する筒状ピストンを有するとともにシリンダ上方へ起立する縦筒部を有し、この縦筒部の上端側に形成したシール筒部を、操作ヘッドの下面側から垂下する連結筒部に液密に嵌合させてなり、操作ヘッドの上面中央部に吐出口を開口させた作動部材とを備え、作動部材の上下動により容器体から第1逆止弁を介してシリンダ内へ液体を吸い上げるとともに、シリンダ内の液体を、第2逆止弁を介して吐出口から吐出するように構成したものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−274964
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の容器は、吐出口が常時開口であるため、吐出口の縁面に付着した内容物が乾燥などにより固化してしまう可能性があった。これを回避するためには、ポンプ装置の操作ヘッドを覆うオーバーキャップの頂壁裏面に栓を付設し、開口部を閉栓することが知られている。しかしながら、いちいちオーバーキャップを装着するのが面倒であり、利用者に使い勝手が悪いという印象を与えず、違和感なく使用できるポンプ容器が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、操作ヘッドの吐出孔を確実にかつ手数をかけずに閉栓できる機構を備えたポンプ式容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、口頸部6を起立する容器体2と、
口頸部6に装着され、容器体2内へ垂設したシリンダ30を含むシリンダ部材20と、
シリンダ30内面を摺動する筒状ピストン42を有するとともにシリンダ30上方へ起立する縦筒部41を有し、この縦筒部41の上端側を操作ヘッド70の下面側に液密に嵌合させてなり、操作ヘッド70の上面に吐出口76を開口させた作動部材40と、
を備え、
作動部材40の上下動により容器体2から第1逆止弁V1を介してシリンダ30内へ液体を吸い上げるとともに、シリンダ30内の液体を、第2逆止弁V2を介して吐出口76から吐出するように構成したポンプ容器であって、
操作ヘッド70の内部に配置されて、吐出口76の周囲部分78裏面へ上方付勢状態で圧接されて吐出口76を閉塞する栓体80を設け、
操作ヘッド70の吐出口76の周囲裏面に操作ヘッド70の押し下げにより、栓体80を下降させる押圧面Dと、
栓体80の下面と縦筒部41の上端側の対応箇所に、栓体80の下降により、相互にスライドして栓体80を周方向一方へ回転させるように形成した一対の第1係合面S1U、S1Lと、
操作ヘッド70の裏面側と栓体80の上面との対応箇所に、栓体80の回転により、相互にスライドして、栓体80を操作ヘッド70に対してさらに下降させるように形成した一対の第2係合面S2U、S2Lと、
をそれぞれ設け、
操作ヘッド70の押下げ解放により吐出口76が閉じるように構成した。
【0007】
本手段は、図1に示す操作ヘッド70の吐出口76を栓体80で開閉可能な機構を提案する。栓体80は、上方付勢状態で吐出口76の周囲部分78裏面に圧接しており、かつ栓体80の下面と縦筒部41の上端側とで形成した一対の第1係合面S1U、S1Lと、操作ヘッド70の裏面側と栓体80の上面とにより形成した一対の第2係合面S2U、S2Lとで操作ヘッド70の押圧操作に追従して栓体80を開閉するように設けている。
【0008】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記吐出口76は上方から見て円形であるとともに、栓体80の上面中央部に吐出口76内へ嵌合可能な凸状の栓部82bを形成し、この栓部82bが回転しながら吐出口76から離脱可能し、或いは嵌合されるように設けた。
【0009】
本手段は、図2に示すように吐出口76が上方から見て円形であり、栓部82bが回転しながら吐出口へ着脱するように構成している。これにより吐出口76の口縁への付着物が生じにくいようにしている。
なお、本手段の「嵌合」には、図3に示すように密嵌させる場合の他に、僅かな隙間を存して遊嵌させる場合も含む。後者の構成では、栓部の外周面と吐出口の口面との間に力が作用しないので、図3に示す押圧面Dが栓体80に強く圧接され、シール性が向上する。
【0010】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ
上記吐出口76の周囲部分78裏面を、栓体80の外周部82aの形に対応して凹設させて、この外周部82aの上面と周囲部分78裏面とを密接させるともに、操作ヘッド70を押し下げたときには、この周囲部分78裏面が上記押圧面Dとして栓体80を押し下げるように構成した。
【0011】
本手段は、図1に示す吐出口76の周囲部分78裏面を、栓体80への押圧面Dとすることを提案している。これにより栓体80を安定的にかつ確実の押下げできる。
【0012】
第4の手段は、第1の手段から第3の手段のいずれかを有し、かつ
上記縦筒部41は、有底筒状のピストンガイド44の下部外面に対して昇降可能に装着させた筒状ピストン42が、シリンダ30内面を摺動するように設け、そのピストンガイド44の上部へ下半部を嵌合させてシリンダ30上方へステム46を起立してなり、
このステム46の上部に操作ヘッド70を連結するとともに、
ピストンガイド44の下部に形成した弁座44cと筒状ピストン42の下部とで第2逆止弁V2を形成するとともに、この第2逆止弁V2を、ピストンガイド44の内部に形成される液体通路を経由して、吐出口76へ連通させるように形成し、
ピストンガイド44内に、ピストンガイド44の内圧の発生により上記液体通路の容積を増加させ、かつピストンガイド44の内圧の解消により、液体通路の容積が元の状態に復帰する容積調整機構94を設けた。
【0013】
本手段は、作動部材40の構成として、ステム46、ピストンガイド44を採用するとともに、ピストンガイド44の内部に容積調整機構を設けている。このような機構を設けないと第2逆止弁V2から栓体80まで液体が充填された場合に、栓体80が下降できずに作動不良を生ずる可能性があるからである。
【0014】
第5の手段は、第4の手段を有し、かつ
上記容積調整機構94は、ピストンガイド44の内面下部に外周部を昇降可能にかつ密嵌させた水平な隔壁96と、これら隔壁96の下面から突設した複数のバネ板98とからなる。
【0015】
本手段では、図1に示すように容積調整機構94を隔壁96の裏面にバネ板98を付設してなる簡易な構成とすることを提案している。
【発明の効果】
【0016】
第1の手段に係る発明によれば、栓体80の下面と縦筒部41の上端側とで形成した一対の第1係合面S1U、S1Lと、操作ヘッド70の裏面側と栓体80の上面とにより形成した一対の第2係合面S2U、S2Lとで、操作ヘッド70を押し下げると、操作ヘッド70に対して栓体80がさらに下降して吐出口76が開口するように構成したから、吐出口76の周囲に内容物が固化しにくい。
第2の手段に係る発明によれば、上方から見て円形である吐出口76内へ、栓体80の上面中央部に形成した凸状の栓部82bを嵌合したから、栓部82bを操作ヘッド70の形態に組み込み、統一感のある外観とすることができ、また栓部82bは回転しながら吐出口76から離脱し、或いは嵌合するので、さらに吐出口76の周囲部分に内容物が固化しにくい。
第3の手段に係る発明によれば、上記吐出口76の周囲部分78裏面を、栓体80の外周部82aの形に対応して凹設させて、この外周部82aの上面と周囲部分78裏面とを密接させたからシール性が向上し、吐出口76の周囲部分78裏面が上記押圧面Dとして栓体80を押し下げるから、安定的な押下げが可能である。
第4の手段に係る発明によれば、ピストンガイドの内部に容積調整機構94を設けたから、第2逆止弁V2から吐出口76に至るまでの流路部分が液体で充填されても、栓体80が吐出口76から離れることが可能である。
第5の手段に係る発明によれば、容積調整機構94を、ピストンガイド44の内面下部に外周部を昇降可能にかつ密嵌させた水平な隔壁96と、これら隔壁96の下面から突設した複数のバネ板98とで形成したから、簡易な構成でありながら、十分に容積調整機能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るポンプ容器の縦断面図である。
図2図1のポンプ容器の平面図である。
図3図2のIII−III方向から見たポンプ容器の断面の一部拡大図である。
図4図2のIV−IV方向から見たポンプ容器の断面の一部拡大図である。
図5図1のポンプ容器の一部品(栓体)の斜視図である。
図6図1のポンプ容器の使用状態の各段階を示した図であり、同図(A)は初期段階を、同図(B)は操作ヘッドの押下げにより吐出口が開いた段階を、同図(C)は作動部材が下限に到達した段階を、それぞれ示している。
図7図6の(A)、(B)、(C)に対応して、本発明の要部の様子を示している。
図8図1の容器の別の要部の作用説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1から図8は、本発明の実施形態に係るポンプ容器を示している。この容器は、容器体2と、装着部材10と、シリンダ部材20と、抜止め部材34と、作動部材40とからなる。これら各部材は例えば合成樹脂や金属で形成することができる。
【0019】
容器体2は、本実施形態において、容器部3及び中皿8で構成されている。
容器部3は、有底筒状の胴部4から小外径の口頸部6を起立している。胴部4及び口頸部6の内径は同一であり、中皿8を上方から挿入できるようにしている。
また中皿8は、胴部4の内面に摺動可能な摺動部8aの外周部に有し、容器部3内の負圧化により、上昇できるように形成している。
もっともこれらの形状は適宜変更することができる。
【0020】
装着部材10は、上記口頸部6に装着され、この装着部材10を介して口頸部6に後述のシリンダ部材20の周壁部22を固定している。図示例では、口頸部6の外面に装着筒部12の下部を嵌合(図示例では螺合)させており、また装着筒部12の上部を、その下部から段部を介して縮径するように設け、その段部の下面と口頸部6の上面との間に、周壁部22の後述の鍔部24及びパッキンPを挟持するように形成している。また装着筒部12の上端からは、内下方へ折り返し筒部14を突出して、この折り返し筒部14を周壁部22の上部内面へ嵌着させている。
【0021】
シリンダ部材20は、周壁部22の下面から内方突出する底壁部26の内端をシリンダ30の筒壁30aに連結している。上記周壁部22の上下方向中間部には鍔部24を周設している。また上記筒壁30aの下端からは、内向きフランジ30bを内方突出している。
【0022】
シリンダ30の底部内には、第1逆止弁体32を取り付けている。図示例の第1逆止弁体32は、シリンダ30の筒壁30a内面の下部に嵌着した枠体から内方突出した複数の弾性支持片で弁板を支承してなる。この弁板とシリンダ30の内向きフランジ30bとで第1逆止弁V1を形成している。もっともこれらの構造は、適宜変更することができる。
【0023】
また上記底壁部26の上面からは、シリンダ30を囲む補助筒部28を起立している。この補助筒部28の外側には、後述の第1コイルスプリング66の固定用の複数の縦リブ28aを縦設している。また補助筒部28の内面上部には、抜止め用リブ28bを周設している。
【0024】
抜止め部材34は、嵌着筒部34aの上端から下内方へ抜止め用筒部34bを折り返すとともに、嵌着筒部34aの下端から上外方へテーパ状筒部34cを突出している。そして上記嵌着筒部34aをシリンダ30の筒壁30a外面に嵌着させるとともに、上記抜止め用筒部34bを上記シリンダ30の筒壁30a上部外面に嵌合させている(図8参照)。また上記テーパ状筒部34cの上端は、上記抜止め用リブ28bの下面に係止させている。
【0025】
作動部材40は、シリンダ30内へ下半部を挿入した縦筒部41の上端に操作ヘッド70を取り付けてなる。
【0026】
上記縦筒部41は、筒状ピストン42と、ピストンガイド44と、ステム46とで形成している。
【0027】
上記筒状ピストン42は外筒部42aと内筒部42bとの上下方向中間部を連結部42cで連結してなる。外筒部42aの上下両端部は、シリンダ30の筒壁30a内面に摺接させている。
【0028】
上記ピストンガイド44は、図8に示す如く、縦管部44bの下端を底板部44aで閉塞するとともに、その底板部44aを側外方へ延出して弁座44cとしている。また上記縦管部44bの下部には通液孔44dを開口している。
【0029】
そして上記ピストンガイド44の下部を囲むように筒状ピストン42を配置しており、筒状ピストン42が、ピストンガイド44の上部に嵌着されたステム46の下端と上記弁座44cとの間でピストンガイド44に対して昇降可能であるように設ける。筒状ピストン42の内筒部42bの下端と弁座44cの上面とで第2逆止弁V2を形成している。
【0030】
ステム46は、上記ピストンガイド44の上部に嵌着させて、シリンダ30上方へ起立している。ステム46の下端部は大内径部48を形成しており、この大内径部48内に上記筒状ピストン42の内筒部42bの上端を摺動可能に嵌挿させている。ステム46は、後述の第1コイルスプリング66によって、上方へ付勢されている。
【0031】
また操作ヘッド70は、上記ステム46の上端部に嵌着している。図示例では、操作ヘッド70は、中央部に吐出口76を開口する天板部73を有し、この天板部73の周端部からヘッド周壁72を垂下している。このヘッド周壁72は、シリンダ部材20の周壁部22内へ昇降可能に嵌挿されている。ヘッド周壁72の下端には、折り返し筒部14の下端に係止して操作ヘッド70の抜け出しを防止する係止リブ72aを付設する。上記吐出口76は、ステム46の内部と連通している。
なお、説明の便宜上、本発明のより詳細な構成については後述するものとし、これまでに述べた事柄の作用を解説する。
【0032】
図1の状態から、操作ヘッド70を押し下げると、作動部材40が第1コイルスプリング66の付勢力に抗して下降して、第2逆止弁V2が開く。そうするとシリンダ30内の液体が第2逆止弁V2、通液孔44d、ピストンガイドの縦管部44bの内部を通って、吐出口76から外部へ吐出される。なお、本発明では、操作ヘッド50を押下げてから作動部材が下降するまでの間に後述の栓体が操作ヘッドに対して下降する行程があるが、これについては後で詳細に説明する。
【0033】
操作ヘッド70の押下げを解放すると、上記付勢力により作動部材40が上昇する。この際に筒状ピストン42は、シリンダ30内面と摺接するために、ステム46やピストンガイド44に遅れて上昇する。従って筒状ピストン42は、ピストンガイド44などに比べて相対的に低くなり、よって第2逆止弁V2は閉じる。第2逆止弁V2が閉じた後も作動部材40が上昇するために、シリンダ30内が負圧化し、これにより第1逆止弁V1が開き、容器部3内の液体がシリンダ30内へ吸引される。
【0034】
本発明においては、まずステム46の上端部から図3に示す如く下内方へ係止筒部50を折り返す。この係止筒部50は、上記ピストンガイド44の縦管部44bの上端内面に嵌着するとともに、係止筒部50の内面から係止爪50aを内方突出している。
【0035】
またステム46の上端部から外向きフランジ52を介してシール筒部54を垂設し、さらにシール筒部54の下端から延長板部56を側外方へ延設している。
【0036】
そして操作ヘッド70の天板部73の裏面から小径の連結筒部75及び大径のストッパ筒部74を二重筒状に垂下する。連結筒部75の内面には上記シール筒部54を液密に嵌合させるとともに、ストッパ筒部74の内面に上記延長板部56を当接している。この当接箇所には、回り止め手段Tを形成する。図示例では、回り止め手段Tを、延長板部56の外面に付設した縦リブ60と、ストッパ筒部74の内面に形成した縦溝74aとで形成しているが、延長板部側に縦溝を、ストッパ筒部側に縦リブをそれぞれ形成しても構わない。
【0037】
図示例では、シール筒部54の上部にスカート状のシール部54aを形成し、このシール部54aを連結筒部75の内面に摺動可能に密接させている。また図1に示す如く、図示の延長板部56の外周部を内周部に比べて高く形成するとともに、その外周部裏面に環状の嵌合凹部58を周設している。本実施形態で延長板部56とシリンダ部材の底壁部26との間に第1コイルスプリング66を介装させているが、この第1コイルスプリング66の下端部は上記抜止め用リブ28bを縦設した補助筒部28の外面に嵌着し、第1コイルスプリング66の上端部は、上記嵌合凹部58内に嵌挿させている。第1コイルスプリング66は、金属又は合成樹脂により形成することができる。
【0038】
上記ステム46の上端部と天板部73の吐出口76との間には、吐出口76を閉塞するための栓体80を設ける。栓体80は、図示例において、図3に示す如く、水平な栓板82と、栓板82の下面から垂下する栓筒84とで形成されている。栓筒84は、筒壁の周方向一部を切り欠いたものでも構わない。そして栓筒84内に第2コイルスプリング92の上端部を挿入するとともに、上記係止筒部50の係止爪50aの上に第2コイルスプリング92の下端を設置して栓体80を上方へ付勢させている。図示例では、栓板82の外周部82aに比べて栓板82の中心部を上方へ突き出た栓部82bに形成している。また上記外周部82aの上面は、その内側部分を環状水平面に、外側部分をテーパ状面に形成している。第2コイルスプリング92の弾性力は、第1コイルスプリング66より弱いものとする。第2コイルスプリング92は、合成樹脂で形成することができる。
【0039】
上記栓部82b及び吐出口76の平面形状は円形としている。吐出口76の周囲部分78の下面は、栓板82の外周部82aの形状に一致するように凹設されている。この下面は、栓体80を押し下げるための押圧面Dとしての機能を有する。
【0040】
栓体80の栓板82の下面からは、周方向に一定の間隔をとって上側第1係合突部86を突設している。図示例では強度確保のために上側第1係合突部86と栓筒84とを一体化している(図5参照)。
【0041】
さらにステム46の上側の周端部からは、周方向に一定の間隔をおいて下側第1係合突部64を上方突出している。
【0042】
上側第1係合突部86は、径方向から見て一辺が傾斜した台形状であり(図7(A)参照)、その斜辺に対応して傾斜させた上側第1係合面S1Uを有する。各係合面は、周方向一方に向くように形成されている。同様に下側第1係合突部64も、ステム46の径方向から見て一辺が斜面である台形状であり、その斜辺に対応して傾斜させた下側第1係合面S1Lを有する。各係合面は、周方向他方に向くように形成されている。上側第1係合面S1U及び下側第1係合面S1Lは、操作ヘッド70を押し下げたときに、相互にスライドして、栓体80を回転させるように設ける。図示例では、上側第1係合面S1U及び下側第1係合面S1Lの傾斜角を等角としているが、必ずしも等角とする必要はない。さらに必ずしも両者を傾斜面とする必要はなく、例えば傾斜面と円弧面との組み合わせとしてもよい。
【0043】
また上記栓体80からは、図4に示す如く、アーム部88を側外方へ水平に突出して、このアーム部88の先部から下側第2係合突部90を起立するとともに、天板部73の裏面の対応位置から上側第2係合突部79を垂下している。下側第2係合突部90は下側第2係合面S2Lを、上側第2係合突部79は上側第2係合面S2Uをそれぞれ有する。上側第2係合面S2U及び下側第1係合面S1Lは、栓体80が回転したときに、相互にスライドして、栓体80を回転させるように設ける。第2係合面の傾斜角度は、第1傾斜角の傾斜角度と同じとすればよい。また第1係合面の形態に係る記載は第2係合面に援用する。
【0044】
第1係合面S1U、S1L及び第2係合面S2U、S2Lは、図2に点線で示すように、上方から見て相互に間隔をおいて、好ましくは等角的(図示例では90°毎)に配置することが望ましい。
【0045】
図6は、吐出作業の各段階を示し、同図(A)は初期段階を、同図(B)は吐出口76が開口する程度に操作ヘッド70を押し下げた段階を、同図(C)は作動部材40が下限位置に至るまで操作ヘッド70を押し下げた段階を、それぞれ示している。
図7は、吐出作業の各段階における第1係合面S1U、S1L及び第2係合面S2U、S2Lの動作を示している。これらの図形は、各係合面をそれぞれ側外方見た形態を一平面に模式的に表したものである。
【0046】
操作ヘッド70を押し下げると、押圧面Dを介して栓体80に押圧力Fが作用する(図7(A)参照)。第1コイルスプリング66の弾性力に比べて第2コイルスプリング92の弾性力が小さいため、作動部材40のうちまず栓体80のみが下降する。栓体80が下降して第1係合面S1U、S1L同士がスライドし、これら係合面から周方向への応力f1が作用するので、栓体80が周方向へ回転する。そして栓体80が回転すると、第2係合面S2U、S2L同士がスライドし、これら係合面から下方への応力f2が作用するので、栓体80が天板部73に対してさらに下降する。これにより図7(B)に示すように吐出口76が開口する。この状態では、ポンプ容器の第2逆止弁V2は閉じたままである。図7(B)からさらに操作ヘッド70を押し下げると、栓体80は操作ヘッド70に対して同図の状態から下がることができないため、第1コイルスプリング66が圧縮し始める。それにより作動部材40全体が下降し、第2逆止弁V2が開く。その後は通常のポンプ容器と同様の行程でポンプ作用を生ずる。
【0047】
また操作ヘッド70の押し下げを解放すると、第2コイルスプリング92の弾性復元力により図7(C)→(B)→(A)に示す手順で栓体80は回転しながら、吐出口76を閉鎖する位置へ復帰する。
【0048】
また本発明では、ピストンガイド44の下端部に、ピストンガイド44の内部に形成される液体通路の内容積を調整する容積調整機構94を設ける(図8参照)。このような機構を設ける理由は、前述の通り、本発明では、天板部73の吐出口76を、当該吐出口形成箇所の下側で昇降する栓体80で開閉しているが、吐出口76が閉栓されている状態で、吐出口76から第2逆止弁V2に至る流路全体が非圧縮性である液体で充填された場合に、操作ヘッド70を押し下げても、栓体80が吐出口76から離れないという不都合を生ずる可能性があるからである。
【0049】
図示例の容積調整機構94は、ピストンガイド44の内部のうちの下端部を、残りの部分から仕切る水平な隔壁96と、この隔壁96の下端から突出した板バネ98とで構成される。隔壁96とピストンガイド44の底板部44aとの間の空間は空気室である。この空間に液体が入らないように隔壁96の周囲には筒状のシール壁部96aを付設し、このシール壁部96aを縦管部44bの内面に摺動可能に密接させている。ピストンガイド44の内部のうち隔壁96の上面より上方の部分が、ピストンガイド内部の液体通路である。
【0050】
操作ヘッド70を押し下げて、図8に想像線で示すように板バネ98が変形して隔壁96が下降するので、ピストンガイド44内の液体通路の内容積が増加するので、液圧の上昇を緩和することができ、栓体80の下降を可能とする。
【0051】
ポンプ容器の機構としてピストンガイドを用いないときには、同様の考え方で第2逆止弁V2から吐出口76に至る通路の何れかに液体通路から隔壁で仕切られた空気室を形成し、その隔壁を液体流路の圧力を緩和するように支える弾性手段を設ければよい。
【符号の説明】
【0052】
2…容器体 3…容器部 4…胴部 6…口頸部 8…中皿 8a…摺動部
10…装着部材 12…装着筒部 14…折り返し筒部
20…シリンダ部材 22…周壁部 24…鍔部 26…底壁部
28…補助筒部 28a…縦リブ 28b…抜止め用リブ
30…シリンダ 30a…筒壁 30b…内向きフランジ
32…第1逆止弁体
34…抜止め部材 34a…嵌着筒部 34b…抜止め用筒部
34c…テーパ状筒部
40…作動部材 41…縦筒部 42…筒状ピストン 42a…外筒部
42b…内筒部 42c…連結部
44…ピストンガイド 44a…底板部 44b…縦管部 44c…弁座
44d…通液孔
46…ステム 48…大内径部 50…係止筒部 50a…係止爪
52…外向きフランジ 54…シール筒部 54a…シール部
56…延長板部 58…嵌合凹部 60…縦リブ
62…当接筒部 64…下側第1係合突部
66…第1コイルスプリング
70…操作ヘッド 72…ヘッド周壁 72a…係止リブ 73…天板部
74…ストッパ筒部74a…縦溝 75…連結筒部 76…吐出口 78…周囲部分
79…上側第2係合突部
80…栓体 82…栓板 82a…外周部 82b…栓部 84…栓筒
86…上側第1係合突部 88…アーム部 90…下側第2係合突部
92…第2コイルスプリング
94…容積調整機構 96…隔壁 96a…シール壁部 98…板バネ
D…押圧面 L…液体通路 P…パッキン R…液体通路
S1L、S1U…第1係合面
S2L、S2U…第2係合面
T…回り止め手段 V1…第1逆止弁 V2…第2逆止弁

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8