【実施例1】
【0036】
実施例1のワークパレット1と、このワークパレット1に装備した流体圧駆動型の第1,第2クランプ装置2A,2B等について
図1〜
図4に基づいて説明する。
ワークパレット1は長方形の鋼製の厚板で構成され、このワークパレット1はワークWを固定した状態でマシニングセンタ(図示略)のテーブル上に搬送してワークWを機械加工に供するものである。
【0037】
ワークパレット1の上面の一端側部分にはワークWを受け止める受け止め治具4が固定され、ワークパレット1の上面の他端側部分にはプッシュ型の第1,第2クランプ装置2A,2BがワークWの方に向けて横向き姿勢に装備され、第1,第2クランプ装置2A,2Bはワークパレット1に固定されたクランプ取付部材3に固定されている。受け止め治具4の側部には1対のワーク受部4aが間隔を空けて装備されている。第1,第2クランプ装置2A,2BによりワークWを受け止め治具4のワーク受部4aに押圧してクランプする。
【0038】
次に、第1,第2クランプ装置2A,2Bについて説明するが、以下の説明では第1,第2クランプ装置2A,2Bを縦向き姿勢にした状態を例にして説明する。
【0039】
最初に、第1クランプ装置2Aについて説明する。
図2、
図3に示すように、第1クランプ装置2Aは、流体圧シリンダ5Aを主体にして構成されたものであるので、以下の説明はその流体圧シリンダ5Aについての説明も含むものである。前記流体圧シリンダ5Aは、本実施例の場合、加圧流体として加圧油を用いるが、加圧油に代えて加圧エアを用いるエアシリンダを採用してもよい。尚、以下の説明中で加圧油を油圧という場合もある。
【0040】
第1クランプ装置2Aは、基本構成として、シリンダ本体10と、このシリンダ本体10内に縦向きに形成されたシリンダ孔11と、ピストン部材12と、第1,第2流体圧作動室13a,13bとを備えている。シリンダ本体10は、上部本体10aと下部本体10bとを備え、下部本体10bがクランプ取付部材3の円筒状の保持孔3aに嵌入され、上部本体10aの下端の据付け面10cがクランプ取付部材3の上面に当接し、上部本体10aが複数のボルト(図示略)でクランプ取付部材3に固定されている。
【0041】
下部本体10bは、円筒部14と、シリンダ孔11の下端を閉塞する板状のヘッド側端壁部材15とを有し、このヘッド側端壁部材15の上端部にはシリンダ孔11の下端部に嵌合した嵌合部15aが形成され、ヘッド側端壁部材15は複数のボルト(図示略)で円筒部14の下端に固定されている。上記の嵌合部15aの下端近傍部の外周部にはシール部材15bが装着されている。
【0042】
ピストン部材12は、シリンダ孔11にその軸心方向に可動(摺動自在)に装着されたピストン部12aと、このピストン部12aから上方へ延びて上部本体10aのロッド側端壁16に形成されたロッド孔17を挿通してシリンダ本体10の外部へ突出した出力ロッド12bとを備えており、出力ロッド12bの上端側部分には上端開放状のネジ穴12cが形成され、このネジ穴12cにはワークWを押圧する押圧部材18の脚部18aが螺合され、押圧部材18の頭部18bが出力ロッド12bの上端に露出している。押圧部材18の頭部18bの上面は部分球面又は部分球面に近い曲面形状になっている。
【0043】
ピストン部12aの外周部にはシール部材19が装着され、ロッド孔17の内周部にはシール部材20と、スクレーパ21とが装着されている。尚、ピストン部材12を複数の部材で構成してもよい。
【0044】
第1流体圧作動室13aは、シリンダ孔11内でピストン部12aとヘッド側端壁部材15(ヘッド側端壁)の間に形成されたクランプ用作動室である。尚、ヘッド側端壁部材15のうちシリンダ孔11に面する壁部が「ヘッド側端壁」に相当する。
第2流体圧作動室13bは、シリンダ孔11内でピストン部12aとロッド側端壁16の間に形成されたアンクランプ用作動室である。第1流体圧作動室13aに加圧油を供給/排出するため第1油路22と、第2流体圧作動室13bに加圧油を供給/排出するため第2油路23とが、クランプ本体10の壁部内に形成され、これら第1,第2油路22,23が油圧供給源(図示略)に接続されている。
【0045】
尚、第2流体圧作動室13bは必須ものではなく、第2油路23の代わりに呼吸通路を形成し、第2流体圧作動室13bに代わるバネ装着室にピストン部12aを下方へ弾性付勢する圧縮スプリングを装着してもよい。
【0046】
次に、第1クランプ装置2Aに装備された本願特有の動作状態検出機構30について説明する。この動作状態検出機構30は、ロッド挿入穴31と、補助ロッド32を含む補助ロッド部材33と、ロッド装着孔34と、可動ロッド35と、移動規制機構36と、検出スイッチ37等を備えている。
【0047】
前記ロッド挿入穴31は、ピストン部12aと出力ロッド12bの一部に第1流体圧作動室13aに連通状に形成されている。ロッド挿入穴31は、下端部分の大径穴31aと、この大径穴31aの上端に短いテーパ穴31cを介して連なる小径穴31bとを有する。補助ロッド32は、ヘッド側端壁部材15(ヘッド側端壁)にシリンダ孔11内に突出するように設けられ且つロッド挿入穴31に挿入可能に形成されている。
【0048】
但し、本実施例においては、ヘッド側端壁部材15のうちロッド装着孔34の一部を形成する装着孔形成壁部15cと補助ロッド32とを一体の補助ロッド部材33で構成し、この補助ロッド部材33を長さの異なる補助ロッド部材33Bと交換可能にする為に補助ロッド部材33をシリンダ本体10に着脱可能に固定している。装着孔形成壁部15cと補助ロッド32とは等しい外径に形成され、補助ロッド32は補助ロッド部材33の上部側の約2/3の部分に形成されている。本実施例の場合、補助ロッド32の上端は、シリンダ孔11の中段部に位置している。
【0049】
補助ロッド部材33の下端部にはフランジ部33aが形成され、ヘッド側端壁部材15には、フランジ部33aを嵌入させる円形凹部38と、この円形凹部38の中心側部分に連通する縦向きの連通孔39であって補助ロッド32を挿通可能な連通孔39が形成されている。補助ロッド部材33を連通孔39からシリンダ孔11内へ挿入し、フランジ部33aを円形凹部38に嵌入させた状態で、フランジ部33aが複数のボルト40でヘッド側端壁部材15に固定されている。連通孔39の内周部にはシール部材41が装着されている。
【0050】
こうして、補助ロッド32がヘッド側端壁部材15の上面からシリンダ孔11内へ突出して、補助ロッド32がロッド挿入穴31に挿入可能になっている。但し、前記のフランジ部33aは必須のものではなく、補助ロッド部材33はフランジ部33aを採用する固定構造とは異なる固定構造でヘッド側端壁部材15に固定してもよい。
【0051】
ロッド装着孔34は、ヘッド側端壁部材15と補助ロッド32に軸心方向に貫通状に形成されたものである。但し、本実施例の場合、ロッド装着孔34の下部側部分はヘッド側端壁部材15の一部である装着孔形成壁部15cに形成されている。可動ロッド35は、ロッド装着孔34に上下方向に摺動自在に装着され且つヘッド側端壁部材15側の一端部分がロッド装着孔34から外部へ突出している。
【0052】
移動規制機構36は、ピストン部12aの下端がシリンダ孔11内の第1領域に位置している状態では、可動ロッド35の前記軸心方向への移動を禁止すると共に、ピストン部12aの下端がシリンダ孔11内の第2領域に位置している状態では可動ロッド35の前記軸心方向への移動を許容して、ロッド挿入穴31の油圧により可動ロッド35をロッド装着孔34から外部へ突出する突出量増大側へ所定距離移動させるように構成されている。本実施例の場合、第1領域はシリンダ孔11内の
図2に示す領域aであり、第2領域はシリンダ孔11内の
図2に示す領域bである。ピストン部12aの下端が第2領域bにあるとき、ピストン部12aがシリンダ孔11の長さ方向の途中部に位置している。
【0053】
移動規制機構36は、ピストン部材12がアンクランプ位置にある状態では可動ロッド35の前記軸心方向への移動を禁止すると共に、ピストン部材12がクランプ位置にある状態では可動ロッド35の軸心方向への移動を許容して、ロッド挿入穴31の油圧により可動ロッド35をロッド装着孔34から外部へ突出する突出量増大側へ所定距離移動させるように構成してある。第1,第2クランプ装置2A,2Bで固定するワークWの形状により、第1クランプ装置2Aは、ピストン部材12aがフルストロークの約1/2進出移動した状態でクランプ状態になる。他方、第2クランプ装置2Bは、ピストン部材12がフルストローク近くまで進出移動した状態でクランプ状態になる。
【0054】
移動規制機構36は、可動ロッド35の先端部分(上端側部分)に他部分(小径部35b)よりも大径に形成された大径部35aと、大径部35aの外周部に装着されたシール部材42と、ロッド装着孔34の一部に大径部35aが軸心方向へ可動に形成された大径孔部34aと、可動ロッド35の大径部35aの外周部に形成された環状凹部43と、補助ロッド32のうち大径孔部34aの外周側の筒壁33bに形成された複数の球体保持穴44と、複数の球体保持穴44に夫々径方向に可動に保持されて環状凹部43に部分的に係合可能な複数の球体45(鋼球)と、ロッド挿入穴31に形成された小径穴31bと大径穴31aとを備えている。
【0055】
小径穴31bは、ピストン部12aの下端が第1領域aにあるときに複数の球体45を環状凹部43に部分的に係合させるように形成されている(
図3参照)。大径穴31aは、ピストン部12aの下端が第2領域bにあるときに複数の球体45を環状凹部43から脱出可能にするように形成されている(
図2参照)。小径穴31bと大径穴31aの境界部には軸心方向の長さの短いテーパ穴31cが形成されている。環状凹部43の半断面は等脚台形であり、環状凹部43は小径の円筒面43aと、この円筒面43aの上端に連なる上側部分円錐面43bと、円筒面43aの下端に連なる下側部分円錐面43cとで形成されている。尚、複数の球体45が大径穴31aの内周面に当接している場合でも、各球体45の極く一部は環状凹部43内に突出している。
【0056】
可動ロッド35の移動の有無を検出して検出信号を出力する検出スイッチ37が設けられ、この検出スイッチ37はリミットスイッチ又は近接スイッチ等で構成され、ヘッド側端壁部材15の外面側に取り付けられている。本実施例の場合、可動ロッド35が突出量増大側へ移動した時に、検出スイッチ37の検出信号がONとなるように設定され、この検出スイッチ37の検出信号は油圧供給源等を制御する制御ユニット(図示略)へ供給されている。
【0057】
図4に示す第2クランプ装置2B(クランプ状態)は、流体圧シリンダ5Bを含み、基本的に第1クランプ装置2Aと同様の構造のものであるが、ピストン部材12がフルストローク近くまで進出移動した状態でクランプ状態になるように構成され、ピストン部12aの下端が第2領域にあるとき、ピストン部12aがロッド側端壁15に当接又は接近する。そのため、補助ロッド部材33Bの補助ロッド32Bが第1クランプ装置2Aの補助ロッド32よりも長く形成されている。第1クランプ装置2Aの構成要素と同様の構成要素に同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
この第1,第2クランプ装置2A,2Bの作用、効果について説明する。
但し、第1,第2クランプ装置2A,2Bは同様の作用、効果を奏するため、第1クランプ装置2Aの作用、効果について説明する。第2流体圧作動室13bに油圧を充填すると、第1クランプ装置2Aは
図3に示すアンクランプ状態になる。この状態ではピストン部材12のピストン部12aが下方限界位置まで下降しているため、複数の球体45が小径穴31b内に位置して環状凹部43に係合している。そのため、可動ロッド35の上端に油圧が作用しても、可動ロッド35は突出移動しないため、検出スイッチ37の検出信号はOFFである。
【0059】
次に、第1流体圧作動室13aに油圧を充填すると、第1クランプ装置2Aは
図2に示すクランプ状態になる。この状態ではピストン部材12のピストン部12aがシリンダ孔11の中段部に位置し、複数の球体45が大径穴31a内に位置して、可動ロッド35の上端にロッド挿入穴31内の油圧が作用するため、環状凹部43の上側部分円錐面43bで複数の球体45が外径側へ押動されて環状凹部43からほぼ脱出した状態になる。
【0060】
そのため、大径部35aの下端が大径孔部34aの下端と当接するまで、可動ロッド35が下降移動し、可動ロッド35の突出量が増大するため、可動ロッド35が検出スイッチ37を切換え、検出スイッチ37の検出信号がONになる。そのため、制御ユニットにおいて、第1クランプ装置2Aがクランプ状態になったことが分かる。
【0061】
この第1クランプ装置2Aにおいては、ロッド挿入穴31と、補助ロッド32と、ロッド装着孔34と、可動ロッド35と、移動規制機構36の大部分を流体圧シリンダ5A内に装備することができるため、前記移動規制機構36により流体圧シリンダ5Aが大型化するのを防止できる。また、移動規制機構36において、小径穴31bと大径穴31aを介して第1,第2領域a,bを自由に設定可能であるため、ピストン部材12の検出対象の位置を自由に設定可能である。
【0062】
また、ピストン部12aとヘッド側端壁部材15間の少なくとも1つの第1流体圧作動室13aの油圧により可動ロッド35を突出量増大側へ移動させるため、ピストン部材12が出力ロッド進出側へ所定量又は最大限移動したときのピストン部材12の位置を検出するのに好適である。
【0063】
移動規制機構36は、大径部35aと、シール部材42と、大径孔部34aと、環状凹部43と、球体保持穴44と、複数の球体45と、ロッド挿入穴31に形成された小径穴31b及び大径穴31aとを備えているため、ピストン部12aの下端が第1領域aにあるとき、小径穴31bを介して複数の球体45が環状凹部43に係合し、可動ロッド35を移動しないように規制し、ピストン部12aの下端が第2領域bにあるとき、大径穴31aを介して複数の球体45が環状凹部43からほぼ脱出し、可動ロッド35が第1流体圧作動室13aの油圧で突出量増大側へ移動する。可動ロッド35の移動からピストン部12aの下端がシリンダ孔11内の第2領域bにあることを検出スイッチ37で検出することができる。しかも、移動規制機構36は、簡単な構成で耐久性に優れ、その大部分を流体圧シリンダ5A内に形成することができる。
【0064】
ヘッド側端壁部材15のうちロッド装着孔34を形成する装着孔形成壁部15cと補助ロッド32とを一体の補助ロッド部材33で構成し、この補助ロッド部材33を長さの異なる補助ロッド部材33Bと交換可能にする為に補助ロッド部材33Bをシリンダ本体10に着脱可能に固定するため、補助ロッド部材33を長さの異なる補助ロッド部材33Bと交換することで、第1,第2領域a,bを変更し、ピストン部材12の検出対象の位置を変えることができるうえ、補助ロッド32をヘッド側端壁部材15(ヘッド側端壁)と一体に形成する場合と比べて製作費を低減可能である。
【実施例6】
【0076】
実施例6のクランプ装置2Gと、これに含まれる流体圧シリンダ5Gは、基本的に実施例1と同様のものであるので、実施例1と同じ構成要素に同じ符号を付して説明を省略し、主に異なる構成についてのみ
図11に基づいて説明する。このクランプ装置2Gでは、補助ロッド32Gがヘッド側端壁部材15Gと一体形成されてシリンダ孔11内へ突出している。
【0077】
このクランプ装置2Gでは、ヘッド側端壁部材15Gの厚さを大きくし、このヘッド側端壁部材15Gの中心側部分の下部に、スイッチ収容凹部80が下端開放状に形成され、このスイッチ収容凹部80に検出スイッチ37が収容されてスイッチ収容凹部80の壁部に固定され、可動ロッド35の下端部がスイッチ収容凹部80に突出している。
図11に示すクランプ状態では、可動ロッド35の下端部の突出量が増大して検出スイッチ37を操作した状態になっている。尚、必要に応じて、スイッチ収容凹部80の下端を金属製の蓋板81で覆ってもよい。このクランプ装置2Gの場合、検出スイッチ37や可動ロッド35の下端部がヘッド側端壁部材15Gの下端面外へ突出しないため、邪魔にならず、破損しにくくなる。
【0078】
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
1)前記クランプ装置は、流体圧としての油圧で駆動する方式のものであったが、流体圧としての加圧エアで駆動する方式のものに構成してもよい。
2)前記検出スイッチは、リミットスイッチや近接スイッチ以外のスイッチを採用してもよい。
【0079】
3)前記クランプ装置は、 出力ロッドの先端でワークを押圧する形式のものであったが、クランプ装置は、リンク式クランプ装置、その他の種々のクランプ装置であってもよい。4)前記移動規制機構に代えて異なる構造の移動規制機構を採用することも可能である。5)その他、当業者ならば、本発明の趣旨を逸脱することなく、種々の変更を付加した形態で実施可能である。