特許第6410356号(P6410356)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6410356映像伝送量を軽くしたインターホンシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6410356
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】映像伝送量を軽くしたインターホンシステム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20181015BHJP
   H04M 9/00 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   H04N7/18 H
   H04M9/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-47020(P2015-47020)
(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公開番号】特開2016-167741(P2016-167741A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2017年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 慎也
【審査官】 秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−131831(JP,A)
【文献】 特開2008−250366(JP,A)
【文献】 特開2013−78030(JP,A)
【文献】 特開2001−320707(JP,A)
【文献】 特開平4−354489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
H04M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを備えた子機とモニタを備えた親機を伝送路で接続し、前記カメラが撮影した映像を前記子機から前記親機に伝送して前記モニタに表示するインターホンシステムにおいて、
前記子機に前記カメラが撮影した映像情報を前記親機への伝送情報に変換するための子機映像回路を設け、前記親機に前記子機から受信した伝送情報を前記モニタの表示画像に変換するための親機映像回路を設け、
前記子機映像回路が、前記映像情報を人物が映し出されている人物情報と、人物が映し出されていない背景情報とに分類する映像分類手段と、前記背景情報を前記人物情報よりも低いフレームレートで前記親機に送信する映像伝送手段とを含み、
前記映像伝送手段は、単位時間あたりに前記人物情報をN回送信するとともに、N回のうちの初回に前記背景情報を前記人物情報と一緒に送信し、
前記親機映像回路が、前記子機から受信した前記背景情報と前記人物情報を合成して前記モニタの表示画像を生成する画像生成手段を含むことを特徴とするインターホンシステム。
【請求項2】
前記映像分類手段は、任意数のブロックに分割された映像情報から、人物が映し出されている人物情報ブロック、人物が映し出されていない背景情報ブロック、または、人物情報ブロックおよび背景情報ブロックを選択して前記映像伝送手段に提供するブロック選択部を含む請求項1記載のインターホンシステム。
【請求項3】
前記ブロック選択部は、前記カメラの映像中で人物が移動したときに、該移動に伴って前記人物情報ブロックから前記背景情報ブロックに変化した表示補完ブロックを前記人物情報ブロックと一緒に前記映像伝送手段に提供する請求項2記載のインターホンシステム。
【請求項4】
前記ブロック選択部は、前記カメラの映像中に新規の人物が加わったときに、該人物が映し出された新規の人物情報ブロックを既存の前記人物情報ブロックと一緒に前記映像伝送手段に提供する請求項2又は3記載のインターホンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子機のカメラで撮影した映像を子機から親機に伝送し、親機のモニタに表示するインターホンシステムに関し、特に、映像情報の伝送量を軽量化したインターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、子機カメラで撮影した映像情報を親機に伝送し、親機モニタに動画表示をするインターホンシステムが知られている。例えば、特許文献1には、子機からの映像を画像圧縮回路で圧縮し、圧縮画像信号をデジタル信号のまま伝送路を介して親機に送信し、親機の画像伸張回路により伸張して、親機モニタに動画で表示するインターホンシステムが記載されている。
【0003】
ところで、動画表示をするインターホンシステムでは、近年、子機カメラの高画質、高解像度化に伴って映像情報の伝送量が増加する傾向にある。そこで、情報伝送量を減らすために、従来、子機および親機で高圧縮率のコーデックを使用したり、特許文献2に記載されているように、伝送路のトラフィック状態に応じて全体画像のビットレートやフレームレートを制御したりする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−245286号公報
【特許文献2】特開2005−294929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、高圧縮率のコーデックを使用する方法によると、子機および親機における映像処理効率が落ちるという問題があった。一方、ビットレートやフレームレートを制御する方法によると、レートを低く抑えた場合に、親機モニタに表示される人物の動きがぎこちなくなり、画像品質が下がるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、映像処理効率や画像品質を低下させることなく、映像伝送量を軽量化できるインターホンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、カメラを備えた子機とモニタを備えた親機を伝送路で接続し、カメラが撮影した映像を子機から親機に伝送してモニタに表示するインターホンシステムにおいて、次のような手段を提供する。
【0008】
(1)子機にカメラが撮影した映像情報を親機への伝送情報に変換するための子機映像回路を設け、親機に子機から受信した伝送情報をモニタの表示画像に変換するための親機映像回路を設け、子機映像回路が、映像情報を人物が映し出されている人物情報と、人物が映し出されていない背景情報とに分類する映像分類手段と、背景情報を人物情報よりも低いフレームレートで親機に送信する映像伝送手段とを含み、親機映像回路が、子機から受信した背景情報と人物情報を合成してモニタの表示画像を生成する画像生成手段を含むことを特徴とするインターホンシステム。
【0009】
(2)映像伝送手段は、単位時間あたりに人物情報をN回送信するとともに、N回のうちの初回に背景情報を人物情報と一緒に送信することを特徴とする上記1に記載のインターホンシステム。
【0010】
(3)映像分類手段は、任意数のブロックに分割された映像情報から、人物が映し出されている人物情報ブロック、人物が映し出されていない背景情報ブロック、または、人物情報ブロックおよび背景情報ブロックを選択して映像伝送手段に提供するブロック選択部を含むことを特徴とする上記1又は2に記載のインターホンシステム。
【0011】
(4)ブロック選択部は、カメラの映像中で人物が移動したときに、該移動に伴って人物情報ブロックから背景情報ブロックに変化した表示補完ブロックを人物情報ブロックと一緒に映像伝送手段に提供することを特徴とする上記3に記載のインターホンシステム。
【0012】
(5)ブロック選択部は、カメラの映像中に新規の人物が加わったときに、該人物が映し出された新規の人物情報ブロックを既存の人物情報ブロックと一緒に映像伝送手段に提供することを特徴とする上記3又は4に記載のインターホンシステム。
【発明の効果】
【0013】
本発明のインターホンシステムによれば、カメラの映像情報を人物情報と背景情報に分類し、背景情報のフレームレートを下げて親機に送信するので、全体としての伝送情報量を軽減できるという効果がある。また、人物情報のフレームレートを下げることなく親機に送信するので、親機モニタに人物の動きを滑らかに表示することができ、画像品質を高く保持できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態を示すインターホンシステムのブロック図である。
図2】子機映像回路および親機映像回路の構成を示すブロック図である。
図3】背景情報と人物情報の伝送フレームレートを示す模式図である。
図4】人物が移動した場合のブロック選択状態を示す模式図である。
図5】新たに人物が加わった場合のブロック選択状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を戸建または集合住宅用のインターホンシステムに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、この実施形態のインターホンシステム1は、玄関に設置された子機2と、居室に設置された親機3と、両者の間に双方向の伝送路を形成する伝送線4とから構成されている。
【0016】
子機2には、玄関の周辺を撮影するカメラ11、カメラ11が撮影した映像情報を親機3への伝送情報に変換するための子機映像回路12、居住者を呼び出すための呼出ボタン13、居住者との通話に使用するマイク14およびスピーカ15、音声の符号・復号を行う通話回路16、親機3と通信する子機インターフェース17、子機2の各部を制御する子機CPU18が設けられている。
【0017】
親機3には、子機カメラ11が撮影した映像を表示するモニタ21、子機2から受信した伝送情報をモニタ21の表示画像に変換するための親機映像回路22、子機2からの呼び出しに応答する通話ボタン23、カメラ11の映像を記録する録画メモリ24、来訪者との通話に使用するマイク25およびスピーカ26、音声の符号・復号を行う通話回路27、子機2と通信する親機インターフェース28、親機3の各部を制御する親機CPU29が設けられている。
【0018】
図2に示すように、子機映像回路12には、人物検知部31、映像分割・タグ付与部32、映像ブロック選択部33、エンコーダ34および伝送部35が設けられている。人物検知部31は、カメラ11の映像中から人物を検知し、人物が映し出されている場所を映像分割・タグ付与部32に通知する。映像分割・タグ付与部32は、カメラ11の映像を任意数のブロックに分割し、人物が映し出されている場所に該当する人物情報ブロック、または人物が映し出されていない場所に該当する背景情報ブロック、あるいは人物および背景の両方の映像ブロックにタグを付与する。また、映像分割・タグ付与部32は、人物情報ブロックよりも、背景情報ブロックまたは人物および背景の両方の映像ブロックに対し、低いフレームレートでタグを付与する。
【0019】
ブロック選択部33は、各映像ブロックのタグを確認し、タグが付された映像ブロックのみをエンコーダ34に提供し、タグが付されていない映像ブロックを破棄する。そして、この実施形態では、人物検知部31、映像分割・タグ付与部32および映像ブロック選択部33により、カメラ11の映像情報を人物が映し出されている人物情報と人物が映し出されていない背景情報とに分類する映像分類手段が構成されている。
【0020】
エンコーダ34は、映像ブロック選択部33から提供された映像ブロックを伝送線4に載せるためのエンコード処理を行い、伝送部35が、エンコード処理された後の伝送情報を親機に送信する。したがって、この実施形態では、エンコーダ34および伝送部35によって、背景情報を人物情報よりも低いフレームレートで親機に送信する映像伝送手段が構成されている。
【0021】
一方、親機映像回路22には、伝送部41、デコーダ42、書き込み制御部43およびメモリ44が設けられている。伝送部41は子機2から伝送情報を受信し、デコーダ42が伝送情報中に含まれている映像ブロックのデコード処理を行う。画像生成手段としての書き込み制御部43は、映像ブロックに付されたタグの内容を確認し、各映像ブロックの情報をメモリ44内の対応する画像ブロックに書き込み、背景情報ブロックと人物情報ブロックを合成してモニタ21の表示画像を生成する。そして、モニタ21がメモリ44から表示画像データを読み出して画面に動画表示をするようになっている。
【0022】
上記構成のインターホンシステム1において、次に、子機映像回路12および親機映像回路22の動作について説明する。図1に示す子機2において、来訪者が呼出ボタン13を押すと、親機CPU29は、子機2からの呼出信号を確認し、スピーカ26に呼出音を発生させるとともに、子機2にカメラ起動指令を送信する。カメラ起動指令に応答し、子機CPU18がカメラ11を起動させ、カメラ11が玄関周辺を撮影し、カメラ11の映像情報が子機2から伝送線4を介して親機3に送信され、親機3のモニタ21によって表示される。
【0023】
このとき、子機映像回路12では、子機CPU18からの指令に従って、人物検知部31がカメラ11の映像中から人物を検知し、人物が映し出されている場所を映像分割・タグ付与部32に通知する。映像分割・タグ付与部32は、人物情報ブロック、背景情報ブロック、または、人物および背景の両方の映像ブロックに対し、低いフレームレートでタグを付与する。さらに、ブロック選択部33がタグの付された映像ブロックを選択してエンコーダ34に提供し、伝送部41がエンコード処理された後の伝送情報を親機3に送信する。
【0024】
例えば、図3に示すように、フレームレートがN[fps](1秒間あたりN回フレームを伝送する)である場合、初回のフレームは、背景情報ブロックBI(ハッチ付きブロック)、人物情報ブロックPI(ハッチなしブロック)、ブロック分割情報(6列×4行)およびブロック位置情報(A1,・・・,D6)を一緒に親機3に送信する。2〜N回目のフレームは、人物情報ブロックPI、ブロック分割情報およびブロック位置情報を親機3に送信する。そして、親機映像回路22において、書き込み制御部43が受信した伝送情報中のブロック分割情報とブロック位置情報に基づいて、各映像ブロック情報をメモリ44の所定領域に上書きし、背景情報ブロックBIと人物情報ブロックPIを合成してモニタ21の表示画像を生成する。
【0025】
このように、N回のうちの初回フレームのみ、背景情報ブロックBIと人物情報ブロックPIの双方を一緒に伝送し、その他のフレームは、人物情報ブロックPIのみ伝送することで、人物を滑らかに表示して高い画像品質を保つことができ、しかも、高圧縮率のコーデックを使用することなく、背景情報分の伝送情報量を削減し、子機映像回路12および親機映像回路22の情報処理に伴う負担を軽減することができる。
【0026】
図4は、カメラ11の映像中で人物Pが(a)から(c)へ移動した場合の人物情報ブロックPIの遷移を示す。(a)に示すように、人物Pが映像中のほぼ中央に映し出されているときには、(d),(e)に示すように、映像中の人物Pと対応する場所の6つの人物情報ブロックPI(B3・4,C3・4,D3・4)が映像ブロック選択部33により選択される。(b)に示すように、人物Pが映像中で右側に移動すると、(f),(g)に示すように、移動元の6つの人物情報ブロックPIに加え、移動先の3つの人物情報ブロックPI(B5,C5,D5)も選択される。
【0027】
人物Pが(b)から(c)に移動する途中には、(h)に示すように、移動先の6つの人物情報ブロックPI(B4・5,C4・5,D4・5)に加え、人物Pの移動に伴って、人物情報ブロックPIから背景情報ブロックBIに変化した移動元の3つの表示補完ブロックDC(B3,C3,D3)が選択される。そして、選択された表示補完ブロックDCは、人物情報ブロックPIと一緒に映像ブロック選択部33からエンコーダ34を介して伝送部34に提供され、親機3に伝送される。表示補完ブロックDCをモニタ21に表示することで、人物Pの移動に伴う残像をモニタ画像から解消することができる。人物Pが(c)に移動すると、(i)に示すように、移動先の6つの人物情報ブロックPIのみが選択され、モニタ画像から表示補完ブロックDCが消去される。
【0028】
図5は、カメラ11の映像中に新規の人物NPが加わった場合の人物情報ブロックPIの遷移を示す。(a)に示すように、一人の人物Pが映像中に映し出されているときには、(d)に示すように、その人物Pと対応する場所の人物情報ブロックPI(B3・4,C3・4,D3・4)が選択される。(b)に示すように、新規の人物NPが映像中の左端に登場すると、(e)に示すように、既存の6つの人物情報ブロックEPIに加え、新規人物NPと対応する2つの新規人物情報ブロックNPI(C1,D1)も選択され、両方の人物情報ブロックEPI,NPIが一緒に親機3に伝送される。
【0029】
(c)に示すように、新規人物NPが既存の人物Pの隣まで移動すると、(f),(g)に示すように、移動先の4つの新規人物情報ブロックNPI(C1・2,D1・2)と既存の6つの人物情報ブロックEPIが選択され、それぞれが映像ブロック選択部33からエンコーダ34を介して伝送部34に提供され、親機3に伝送される。こうすることで、例えば通話中に新たな人物NPが加わった場合でも、複数人物を親機モニタ21に精細に表示することができる。
【0030】
なお、上記実施形態では、映像ブロック選択部33がタグが付された人物情報ブロックPI、背景情報ブロックBI、または、人物情報ブロックPIおよび背景情報ブロックBIを選択する方法を示したが、タグの付与されていない映像ブロックをブロック選択部33によって選択する方法を採用することも可能である。その他、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態のインターホンシステムをナースコールシステムに応用したり、映像伝送プログラムの手順を適宜に変更したりするなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の構成を任意に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 インターホンシステム
2 子機
3 親機
4 伝送線
11 カメラ
12 子機映像回路
18 子機CPU
19 映像分類手段
20 映像伝送手段
21 モニタ
22 親機映像回路
29 親機CPU
図1
図2
図3
図4
図5