(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
キャパシタンス放電回路を更に備え、前記TES制御モジュールは、場合によっては、前記2相電気刺激の送達中に前記電極のキャパシタンスを放電するように、前記キャパシタンス放電回路をトリガするように構成されている、請求項1、2、又は3に記載のアプリケータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、背景技術の課題を解決するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書では、神経変調を誘発する為の、経頭蓋電気刺激を含む経皮電気刺激(以下「TES」)の装置(装置及びシステムを含む)及び方法について記載されている。
【0014】
一般に、本明細書に記載の装置は、一対の電極とTES制御モジュールとを含み、一対の電極は、対象者の頭部及び/又は頸部の様々な所定部位に接続されてよく、TES制御モジュールは、特に、比較的大きな刺激が与えられたときに起こる痛みや不快さを最小限に抑えながら所望の認知状態及び/又は認知作用を誘発、強化、又は推進(まとめて「修正」)することに有効であるように決定された、強度及び周波数を含むパラメータの範囲内で刺激を送達するように構成されている。例えば、(アプリケータなどの)装置が、回路(例えば、ハードウェア)、ソフトウェア、及び/又はファームウェアを有する制御モジュールを含んでよく、制御モジュールは、本装置が有効範囲内で信号を印加することを可能にし、例えば、1つ以上の処理装置、タイマ、及び波形発生器を含む。一般に、TES制御モジュールは、特に、第1の電極と第2の電極との間に10秒以上の2相電気刺激信号を送達するように適合されてよく、信号は、周波数が100Hz以上(例えば、200Hz以上、400Hz以上、450Hz以上、500Hz以上、600Hz以上、700Hz以上等)であり、強度が2mA以上(例えば、3mA以上、4mA以上、5mA以上等)である。制御モジュールは又、デューティサイクル(例えば、印加される電流が非ゼロであるか、且つ/又はゼロより大きい時間の割合(パーセント))を制御することにより、刺激印加時の痛みを緩和するように構成されてよく、デューティサイクルの制御は、例えば、印加されるエネルギのデューティサイクルが10パーセント超(例えば、15パーセント超、20パーセント超、30パーセント超)になるように行われる。更に、制御モジュールは、印加される電流が2相であるか、且つ/又は電荷平衡されないように(例えば、印加される波形の平均振幅が非ゼロであるように、DCバイアスとも称されるDCオフセットを有するように)構成されてよい。代替又は追加として、制御モジュール(TES制御モジュール)は、電極に蓄積されたキャパシタンスを放電するように構成されてよく、この放電は、例えば、電極同士を時折又は定期的に「短絡」することによって、且つ/又は、逆電流を印加することによって行われる。一般に、制御モジュールは、これらのパラメータを含む刺激を発生させるように構成されてよく、且つ、痛みを誘発しないように、これらのパラメータから外れる刺激を発生させないように構成されてよい。
【0015】
これらのパラメータは、後で詳述するが、大まかには、認知作用を引き起こすように適合される。本明細書に記載の装置及び方法は、本明細書に記載されるように、認知作用の再現可能な誘起を可能にする。記載の方法及び装置によってもたらされる認知作用の性質は、対象者の身体上の(例えば、頭部、頸部等における)電極の位置決めに部分的に依存する可能性がある。例えば、認知作用のクラスは、概して、精神集中が高まる体感を対象者にもたらし、集中及び注意の強化、警戒の強化、集中及び/又は注意の増大、覚醒の強化、主観的エネルギ感の増大、客観的(即ち、生理学的)エネルギレベルの増大、(仕事、エクササイズ、家事を片付けること等の)意欲レベルの向上、エネルギの増大(例えば、生理学的覚醒、主観的エネルギ感の増大)、及び胸部の身体的温熱感を含んでよい。このクラスの認知作用は、まとめて、注意、警戒、又は精神集中の強化と称されてよい。
【0016】
認知作用のクラスの別の例は、弛緩、及び落ち着いた精神状態に関連付けられるものを含み、例えば、急速に(即ち、TESセッションの開始から約5分以内に)誘発されうる落ち着いた状態を含む、落ち着いた状態、のんびりした心理状態、心配事がない心理状態、睡眠の誘発、時間経過の減速感、生理学的、感情的、且つ/又は筋性の弛緩の強化、集中の強化、気を散らすことの抑制、認知的且つ/又は感覚的な明晰さの増大、解離状態、精神活性化合物(即ちアルコール)による軽い酩酊と同種の状態、精神活性化合物(即ちモルヒネ)によって誘発される軽い幸福感と同種の状態、リラックスしているか楽しんでいるとされる心理状態の誘発、聴覚及び視覚の体感(即ち、マルチメディア)の楽しみの強化、生理学的覚醒の緩和、感情的又は他のストレッサを処理する能力の増大、一般的にはストレス、不安、及び精神的機能障害のバイオマーカの低下に関連付けられる、視床下部・下垂体・副腎系軸(HPA軸)の活動の変化に関連付けられる精神生理学的覚醒の緩和、不安緩解、精神的明晰さが高い状態、身体能力の強化、ストレスの有害な結果に対する回復力の促進、末梢部(即ち、腕及び/又は脚)の身体的弛緩感、心臓の鼓動が聞こえそうな身体的興奮などを含む。このクラスの認知作用は、まとめて「落ち着いた、又はリラックスした精神状態」と称されてよい。
【0017】
本明細書に記載の方法は、刺激印加時に特定の認知作用を誘起するように対象者上の電極の位置決めを行う方法を含む。装置(例えば、アプリケータ)は、特定の位置決め構成に特化して適合又は構成されてよい。例えば、アプリケータは、所定の認知作用を誘起する為に対象者の身体の特定の場所にぴったり収まるように適合された、1つ以上の電極の面を含んでよい。また、本明細書に記載の実施例のほとんどは、第1の位置に配置された単一の電極(アノード/カソード)と第2の位置に配置された単一の(反対極性、例えば、カソード/アノードの)電極とを指しているが、(複数のアノード及び/又は複数のカソードを含む)複数の電極が各場所に配置されてよい。一般に、特定の身体部位に対する電極の位置決めは、電極から印加される電流のピーク密度が標的部位に来るように電極を配置することを意味し、従って、電極は、標的部位より小さくても大きくてもよい。本明細書において詳述するように、電極を適正に位置決めすることにより、痛みや不快さを防ぐことも可能である。一般に、本明細書において言及される電極は、対象者の身体上で分離されている対を形成するが、対の一方は、複数の電極で構成されてよい。例えば、第1の電極(又は電極の集合)は、対象者の頭部又は頸部の第1の位置に配置されてよい。第2の電極(又は電極の集合)は、頭部又は頸部を含む、対象者上の第2の位置に配置されてよい。第1の電極はアノードであってよく、第2の電極はカソードであってよい。或いは、逆に、第1の電極はカソードであってよく、第2の電極はアノードであってよい。TES電極は、典型的には、これら2つの電極(又は2つの電極群)の間に印加される。
【0018】
例えば、一構成(本明細書では便宜上「構成A」又は「構成2」と称する)では、第1の電極が対象者のこめかみ部付近(例えば目の側方。例えば、右目又は左目のやや右上)に貼り付けられてよく、少なくとも1つの第2の電極が右耳の後ろの乳様突起部(例えば、乳様突起上又はその付近)に配置されてよい。電極は任意の適切なサイズ(例えば、面積)であってよく、例えば、右こめかみ付近の電極の面積は、少なくとも約10cm
2(例えば、少なくとも約20cm
2)であってよく、より小さな乳様突起部電極は、約3cm
2から約10cm
2であってよい。この部位のTES刺激は、注意、警戒、又は精神集中の強化をもたらしうる。
【0019】
別の構成(本明細書では便宜上「構成B」又は「構成3」と称する)では、第1の電極が対象者のこめかみ部付近(例えば、右目の右上)の皮膚上に配置されてよく、第2の電極が対象者の頸部(例えば、正中線の右側に中心があって、任意選択で、一部が脊髄と重なる頸上部)に配置されてよい。有利な実施形態は、面積が少なくとも約20cm
2である頸部用電極と、面積が少なくとも約10cm
2(任意選択で少なくとも約20cm
2)である右こめかみ付近の電極と、を含む。この部位のTES刺激は、落ち着いた、又はリラックスした精神状態の強化をもたらしうる。
【0020】
これらの例示的構成の両方において、本明細書において与えられる経皮電気刺激の波形は、皮膚のいらいら、痛み、及び組織損傷を軽減しながら、強く確実な認知作用を誘発することが可能である。波形は、周波数、ピーク強度、デューティサイクル、正極性である非ゼロ電流の割合(即ち、「百分率直流分」)、波形が2相であるか一方向の電流を伝送するのみか、電気刺激システムがパルスとパルスの間にアノードとカソードとの間の電気的経路を短絡するかどうか、のうちの1つ以上に従って定義されてよい。実施形態によっては、パラメータ(即ち、周波数、ピーク強度、デューティサイクル)を2つの値の間でランプ状に変化させることが、波形又は波形の一部の中で行われる。
【0021】
本明細書に記載の波形はいずれも、連続的又は断続的に印加されてよく、これらの範囲の外側からこれらの範囲内への過渡状態(例えば、ランプ)のような変化をつけて、或いは、電流及び周波数(そして、変形形態によっては、DCオフセット及び/又はデューティサイクル)の範囲内で、連続的又は断続的に印加されてよい。一般に、特定の認知作用を誘発する、様々な有効範囲のパラメータの間で波形をシフトすることによって、より強い、より長く続く認知作用を達成する為に、ランプなどの波形特性が組み込まれてよい。有効な波形の間でのシフトは、反復的であってよく(即ち、1つのパラメータを変更し、次に、別のパラメータを変更する)、且つ、循環的であってよい(即ち、第1の波形から第2の波形に変更し、次に、第1の波形等に戻る。或いは、3つ以上の有効な波形の間でトグルする)。実施形態によっては、有効範囲内の1つ以上の波形パラメータを急速にシフトすることによって、より強い認知作用が誘発される。ただし、「急速」は、一般に15秒未満を意味し、1秒以下という短さであってもよい。
【0022】
上述のように、本明細書に記載の装置は、十分大きなピーク電流を達成できるように、高電圧(即ち、10V超、15V超、20V超、25V超、30V超、35V超、40V超、45V超、50V超、55V超、60V超、65V超、又は75V超)で動作する構成要素を有する制御装置を含んでよい。対象者の組織のインピーダンス(主に皮膚インピーダンスに起因する)、並びに電極を含む、システムのハードウェア構成要素のインピーダンスは、概ね1kΩから20kΩ(ただし、場合によっては、最大30kΩ以上)である為、認知作用の誘発に必要な、より大きなピーク電流を送達する為には、約50Vの高圧電流源が有利である。
【0023】
一般に、本明細書では、対象者の認知状態を修正する方法について記載されている。例えば、対象者の認知状態を修正する方法は、典型的には、経皮電気刺激(TES)アプリケータの第1の電極を、対象者の身体の第1の側のこめかみ部の皮膚上に配置するステップと、第2の電極を、対象者の身体の第1の側の乳様突起部の皮膚上、又は対象者の頸部の隆椎の上方の皮膚上に配置するステップと、TESアプリケータを活性化させて、周波数が100Hz以上であり、強度が2mA以上である経皮電気刺激を送達するステップと、第1の電極と第2の電極との間に経皮電気刺激を10秒以上にわたって印加することにより、対象者の認知状態を修正するステップと、を含んでよい。
【0024】
例えば、本明細書では、対象者の認知状態を修正する方法について記載されており、この方法は、可搬型経皮電気刺激(TES)アプリケータの第1の電極を、対象者の身体の第1の側のこめかみ部の皮膚上に配置するステップと、第2の電極を、対象者の身体の第1の側の乳様突起部の皮膚上、又は対象者の頸部の皮膚上に配置するステップと、TESアプリケータを活性化させて、周波数が400Hz以上であり、強度が3mA以上であり、DCオフセットを有する2相経皮電気刺激を送達するステップと、第1の電極と第2の電極との間に2相経皮電気刺激を10秒以上にわたって印加することにより、対象者の認知状態を修正するステップと、を含む。可搬型TESアプリケータを活性化させるステップは、TESアプリケータを活性化させて、デューティサイクルが10パーセント超である2相経皮電気刺激を送達するステップを含んでよい。
【0025】
これらの方法は、注意、警戒、又は精神集中を強化する方法、又は落ち着いた、又はリラックスした精神状態を強化する方法に固有であってよい。例えば、対象者の認知状態を修正するステップは、注意、警戒、又は精神集中を強化するステップを含んでよく、第2の電極を配置するステップは、第2の電極を、対象者の身体の第1の側の乳様突起部に配置するステップを含んでよい。同様に、対象者の認知状態を修正するステップは、落ち着いた、又はリラックスした精神状態を強化するステップを含んでよく、第2の電極を配置するステップは、第2の電極を、対象者の後頸部に配置するステップを含んでよい。
【0026】
本明細書に記載の方法はいずれも、本装置を装着した対象者によって実施されてよい。これが可能であるのは、本明細書に記載の装置が、比較的軽量であって、訓練を積んでいないユーザでも操作できるように、扱いが容易であるように構成される為である。例えば、対象者は、医師又はサードパーティが関与することを必要とせずに、自分の頭部及び/又は頸部に第1の電極及び第2の電極を配置することが可能である。
【0027】
電極が貼り付けられた後、TESの印加は、(例えば、取り付けが検知されてから)自動的にトリガされてよく、或いは、手動でトリガされてよく、又、(例えば、装置上のスイッチを操作して)ローカルにトリガされてよく、或いは、(例えば、対象者の頭部に貼り付けられた装置と無線で通信する装置を使用して)リモートでトリガされてよい。対象者は、TESの動作の活性化及び/又は修正を自分で行うことが可能である。例えば、可搬型TESアプリケータを活性化させるステップは、可搬型TESアプリケータの活性化を無線でトリガするステップを含んでよい。可搬型TESアプリケータを活性化させるステップは、可搬型TESアプリケータの活性化を手持ち式装置からトリガするステップを含む。
【0028】
上述のように、TESの印加中、印加されるTESは一定である必要はないが、好ましくは、可変及び/又は断続的であってよい。例えば、TESを印加するステップは、2相経皮電気刺激が印加されている間に、印加される2相経皮電気刺激を変化させるステップを含んでよい。印加される2相経皮電気刺激は、2相経皮電気刺激を、デューティサイクルが10パーセント超であって、周波数が400Hz以上であって、強度が3mAであること(及びDCオフセットを有すること)の範囲内に保ちながら、変化させられてよい。
【0029】
一般に、有効であって不快でないTESを提供する為に、強度及び周波数のパラメータは、指定範囲内に保持されてよい。例えば、強度(電流)は大きくてよく、例えば、約2mA超、3mA超、又は好ましくは4mA超又は5mA超(例えば、5mAから20mA)であってよい。刺激の周波数は、一般に、比較的高くてよく、例えば、100Hz超、200Hz超、400Hz超、又は、より具体的には、450Hz超又は500Hz超であってよい。これらのパラメータの操作は、典型的には、(例えば、周期的な立ち上がり及び立ち下がりを有し、典型的には、2つの相を有する)2相刺激に対して行われてよく、信号が電荷平衡しないようにDCオフセットを含んでもよい。上述のように、一般に、直流(DC)オフセット(DC成分、DCバイアス、又はDC係数とも呼ばれる)は、波形の平均値である。従って、印加されるTESは、典型的には、パルス状であって、2相であって、非対称形であってよい。同様に、TES刺激は又、デューティサイクルが10%から100%であってよく(例えば、100%より小さく、10%より大きくてよく)、これには20%超又は30%超が含まれる。
【0030】
これらのTESプロトコルのいずれにおいても、電極に蓄積されたキャパシタンスを放電する為に、刺激中に(TESの印加中に、定期的に又は時折)電極同士が「短絡」されてよい。同様に、本明細書に記載の装置(例えば、TESアプリケータ)のいずれにおいても、短絡機能が含まれてよい。例えば、電極同士の短絡は、主電流源と同様の固定電流源に関して行われてよいが、「短絡」源は、0Vで飽和している可能性があり、蓄積電荷を放電することだけが可能である。変形形態によっては、公称(又は最大)短絡電流は、あらかじめ設定されていてよく(例えば、40mA)、且つ/又は、抵抗を変更することにより変更されてよい。代替として、放電は、電流がその範囲内で調節可能である通常の電流源によって行われてよい。例えば、その範囲は最大20mAであってよく、整流スイッチをオンにすることによって、逆充電を防ぐことが可能である。
【0031】
一般に、2相経皮電気刺激を印加中にランプ状にすることは、強度、デューティサイクル、又はDCオフセットのうちの1つ以上を減らし、その後、強度、デューティサイクル、又はDCオフセットのうちの1つ以上を増やすことにより、達成可能である(同様に、周波数をランプ状にすることも、周波数を増やしてから減らすことにより可能である)。
【0032】
こめかみに電極を配置する場合、痛みを防ぎながら作用を最適化するように配置することが可能である。例えば、こめかみに配置することは、対象者の目の側方、且つ対象者の頬骨の上方に電極を配置することを含んでよく、例えば、右目のやや右上、或いは、左目のやや左上に配置することを含んでよい。電極をこめかみに配置することは、対象者の眼窩部又はその付近に電極を配置することを除外してよく(これは、目の周囲の痛み及び/又は気を散らす筋肉の引きつりを防ぐ為である)、或いは、頬骨の下に電極を配置することを除外してよい(これは、有効性の低下、及び/又は筋肉の引きつりを防ぐ為である)。
【0033】
変形形態によっては、電極を対象者の前額部に配置してよい。具体的には、対象者の眉間であって鼻のすぐ上の、鼻根部の上方の皮膚に(例えば、鼻梁のすぐ上の、目と目の間に直接)ピーク電流の領域が送達されるように、電極を配置してよい。例えば、第1の電極が鼻根部に配置され、第2の電極がこめかみに配置されてよく、或いは、第2の電極は頸部に配置されてよく、或いは、第2の電極は耳の後ろに配置されてよく、これらは記載されたとおりであり、TESは、概ね本明細書に記載のように印加されてよい。鼻根部に電極を配置することは、特に、第2の電極をこめかみに配置することとともに、注意、警戒、又は精神集中の強化などの、認知状態の誘起、強化、又は改善の為に行われてよい。
【0034】
一般に、これらの電極は、対象者の身体の同じ側に配置されてよい(例えば、両方とも右側に、或いは、両方とも左側に配置されてよい)。
【0035】
記載の方法のいずれにおいても、TESアプリケータは、自己完結型であってよく、軽量であってよい。特に、アプリケータはウェアラブルであってよい。例えば、アプリケータは、対象者の身体(例えば、顔面、頭部、頸部等)に粘着固定されてよい。ウェアラブル装置(アプリケータを含む)については後で詳述するが、概してロープロファイルであり、例えば、皮膚からの突出が約2cm未満、1.5cm未満、1cm未満、0.5cm未満等であり、又、概して軽量であり、例えば、60グラム未満、50グラム未満、40グラム未満、30グラム未満等である。
【0036】
印加されるTESの全体継続時間は、概ね10秒より長く(変形形態によっては10秒より短い場合もある)、より安定的には、更に長く印加されてもよく、例えば、15秒超、20秒超、30秒超、1分超、5分超等にわたって印加されてもよい。例えば、対象者の認知状態を修正するステップは、第1の電極と第2の電極との間に5分以上にわたって2相経皮電気刺激を印加するステップを含んでよい。
【0037】
第2の電極を頸部に配置する際の、頸部のしかるべき部位は、頸部の隆椎の上方の部位であってよい。この配置は、頸部の正中線から側方にオフセットされてよく、例えば、対象者の、第1の電極(こめかみ電極)が配置されている側にオフセットされてよい。
【0038】
上述のように、対象者の認知状態を修正する方法のいずれもが、対象者によって実施されてよい。例えば、本明細書では、対象者の(落ち着いた、又はリラックスした認知状態、又は注意、警戒、又は精神集中の認知状態を含む)認知状態を修正する方法について記載されており、この方法は、可搬型経皮電気刺激(TES)アプリケータの第1の電極を、対象者の身体の第1の側のこめかみ部の皮膚上に配置することを対象者に指示するステップと、第2の電極を、対象者の身体の第1の側の頭部又は頸部の皮膚上に配置することを対象者に指示するステップと、可搬型TESアプリケータを活性化させることによって、対象者の認知状態を修正することを対象者に指示するステップと、を含んでよく、可搬型TESアプリケータは、第1の電極と第2の電極との間に2相経皮電気刺激を送達するように構成され、2相経皮電気刺激は、デューティサイクルが10パーセント超であり、周波数が400Hz超であり、強度が3mA超であり、DCオフセットを有する。
【0039】
例えば、注意、警戒、又は精神集中を強化する方法が、ウェアラブル経皮電気刺激(TES)アプリケータの第1の電極を、対象者の身体の第1の側のこめかみ部の皮膚上に配置するステップと、第2の電極を、対象者の身体の第1の側の乳様突起部の皮膚上に配置するステップと、ウェアラブルTESアプリケータを活性化させて、デューティサイクルが10パーセント超であり、周波数が400Hz超であり、強度が3mA超であり、DCオフセットを有する2相経皮電気刺激を送達するステップと、2相経皮電気刺激を第1の電極と第2の電極との間に10秒以上にわたって印加することにより、注意、警戒、又は精神集中を強化するステップと、を含んでよい。上述のように、対象者は、第1の電極及び第2の電極を配置してよく、且つ/又は、ウェアラブルTESアプリケータをトリガするか活性化させてよく、これは、例えば、ウェアラブルTESアプリケータの活性化を無線でトリガすることにより行われる。後で詳述するように、対象者は、遠隔制御装置(例えば、携帯電話/スマートフォン、ラップトップコンピュータ、パッド、タブレット等)を操作してよい。
【0040】
同様に、落ち着いた、又はリラックスした精神状態を強化する方法が、ウェアラブル経皮電気刺激(TES)アプリケータの第1の電極を、対象者の身体の第1の側のこめかみ部の皮膚上に配置するステップと、第2の電極を、対象者の後頸部の隆椎の上方に配置するステップと、ウェアラブルTESアプリケータを活性化させて、デューティサイクルが10パーセント超であり、周波数が400Hz超であり、強度が3mA超であり、DCオフセットを有する2相経皮電気刺激を送達するステップと、2相経皮電気刺激を第1の電極と第2の電極との間に10秒以上にわたって印加することにより、落ち着いた、又はリラックスした精神状態を強化するステップと、を含んでよい。上述のように、対象者は、第1の電極及び第2の電極を配置してよく、且つ/又は、ウェアラブルTESアプリケータをトリガするか活性化させてよい。
【0041】
又、本明細書では、対象者の認知状態を修正する可搬型経皮電気刺激(TES)アプリケータについて記載されている。一般に、これらのアプリケータは軽量であってよく(例えば、60グラム未満、50グラム未満、40グラム未満、30グラム未満、25グラム未満、20グラム未満等であってよく)、又、ウェアラブルであってよく、例えば、(例えば、粘着剤で)対象者に直接固定できる自己完結型ウェアラブル装置であってよい。
【0042】
例えば、可搬型TES装置(アプリケータ)は、ボディ(ハウジングを含んでよい)と、対象者の皮膚に固定されるように構成された第1の電極と、対象者の皮膚の第2の部分に固定されるように構成されて、本装置の他の部分とケーブル、コード等で接続された第2の電極と、少なくとも一部分がボディ内にあり、処理装置、タイマ、及び波形発生器を含むTES制御モジュールであって、周波数が400Hz超であり、デューティサイクルが10パーセント超であり、強度が3mA超であり、DCオフセットを有する2相経皮電気刺激信号を第1の電極と第2の電極との間に10秒以上にわたって送達するように適合されたTES制御モジュールと、を含んでよい。本装置は又、TES制御モジュールと結合された無線受信器と、バッテリと、メモリなどを含む更なる電子構成要素と、を含んでよい。
【0043】
対象者の認知状態を修正するウェアラブル経皮電気刺激(TES)アプリケータは、対象者が装着するように適合されたボディと、第1の電極と、第2の電極と、少なくとも一部分がボディ内にあるTES制御モジュールであって、電源、処理装置、タイマ、及び波形発生器を含むTES制御モジュールであって、周波数が400Hz超であり、デューティサイクルが10パーセント超であり、強度が3mA超であり、DCオフセットを有する2相経皮電気刺激信号を第1の電極と第2の電極との間に10秒以上にわたって送達するように適合されたTES制御モジュールと、TES制御モジュールと接続された無線受信器と、を含んでよく、ウェアラブルTESアプリケータの重量は50グラム未満である。
【0044】
対象者の認知状態を修正するウェアラブル経皮電気刺激(TES)アプリケータが、対象者の皮膚に装着されるように適合されたボディと、ボディ上の第1の電極と、ボディとコードで結合された第2の電極と、少なくとも一部分がボディ内にあり、処理装置、タイマ、及び波形発生器を含むTES制御モジュールであって、周波数が400Hz超であり、デューティサイクルが10パーセント超であり、強度が3mA超であり、DCオフセットを有する2相経皮電気刺激信号を第1の電極と第2の電極との間に10秒以上にわたって送達するように適合されたTES制御モジュールと、を含んでよく、更に、ウェアラブルTESアプリケータの重量は50グラム未満である。
【0045】
上述のように、本明細書に記載の装置はいずれも、装置の動作中に、電極に蓄積されたキャパシタンスを放電するように構成されてよい。例えば、これらの装置はいずれも、キャパシタンス放電回路を含んでよい。キャパシタンス放電回路は、TES制御モジュールによって制御されてよく、本装置による刺激印加の間に、時折、又は周期的に、又は定期的に放電を実施してよい。従って、TES制御モジュールは、2相電気刺激の送達中に、電極のキャパシタンスを放電するように、キャパシタンス放電回路を時折又は周期的にトリガするように構成されてよい。
【0046】
本明細書に記載の、対象者の認知状態を修正する可搬型経皮電気刺激(TES)アプリケータの別の例は、記載のキャパシタンス放電機能(「短絡」アプリケータ)を有するTES装置を含んでよい。例えば、対象者の認知状態を修正する可搬型TES装置が、ボディと、第1の電極と、第2の電極と、少なくとも一部分がボディ内にあって、処理装置、タイマ、及び波形発生器を含むTES制御モジュールであって、周波数が400Hz超であり、デューティサイクルが10パーセント超であり、強度が3mA超であり、DCオフセットを有する2相経皮電気刺激信号を第1の電極と第2の電極との間に10秒以上にわたって送達するように適合されたTES制御モジュールと、キャパシタンス放電回路と、を含んでよく、TES制御モジュールは、2相電気刺激の送達中に、電極のキャパシタンスを放電するように、キャパシタンス放電回路を時折トリガするように構成される。本装置は、キャパシタンス放電回路上に、TES制御モジュールと結合されたスイッチを含んでよい。
【0047】
本明細書に記載の方法のいずれもが、TESの印加中に、短時間で、電極のキャパシタンスを放電する(例えば、電極同士を短絡する)ステップを含んでよい。例えば、対象者の認知状態を修正する方法が、経皮電気刺激(TES)アプリケータの第1の電極を対象者の皮膚上に配置するステップと、TESアプリケータの第2の電極を対象者の皮膚上に配置するステップと、TESアプリケータを活性化させて、周波数が400Hz超であり、強度が3mA超であり、DCオフセットを有する2相経皮電気刺激を送達するステップと、2相経皮電気刺激を第1の電極と第2の電極との間に10秒以上の治療期間にわたって印加することにより、対象者の認知状態を修正するステップと、治療期間中に時折キャパシタンスを放電するのに十分な長さの時間にわたってキャパシタンス放電回路をトリガするステップと、を含んでよい。
【0048】
一般に、本明細書に記載のアプリケータのいずれにおいても、ボディ領域は、電子回路の一部又は全てを少なくとも部分的に囲むハウジングを含んでよい。一般に、ハウジングは、電子回路及び回路(例えば、電源、例えば、バッテリ、キャパシタ等、及びTES制御モジュール等)を保護するように適合されてよい。ウェアラブルな変形形態では、ハウジングは、ロープロファイルであってよく(例えば、厚さが30mm未満、25mm未満、20mm未満、18mm未満、15mm未満等であってよく)、且つ/又は、頭部の特定部位、例えばこめかみ部位にぴったり収まるように適合されてよい。例えば、ボディを伸ばして湾曲させて、頭部にぴったり収まるようにし、且つ、眼窩部に重なって視界を妨げることのないようにすることが可能である。本明細書に記載の装置の実施形態によっては、第1の電極はボディの外面上に配置されてよく、第2の電極はコード(ワイヤ、導体、ケーブル等)でボディ(例えば、TES制御モジュール)に接続されてよい。本装置は又、粘着剤(例えば、生体適合性及び/又は導電性を有する粘着剤)を含んでよい。変形形態によっては、第1の電極及び第2の電極の両方が、コード(同じコード、又は別々の2つのコード)でボディと結合される。変形形態によっては、本装置は、身体上に保持されず、(例えば、対象者の衣服等に装着されることによって、又は対象者の近く(例えば、机の上、ポケットの中など)に配置されることによって)身体付近に配置される。
【0049】
本明細書に記載の装置のいずれもが、装置の動作/活動を調整する制御コマンドを入力する為の入力、特に手動入力を含んでよい。例えば、本装置は、制御モジュールと結合された手動操作装置を本装置のボディ上に含んでよい。手動操作装置は、ボタン、スイッチ、タッチスクリーン等であってよい。
【0050】
TES制御装置は、一般に、(認知状態を有効に誘発する為に)比較的高強度であるパラメータ範囲の刺激を駆動するように特に適合されているが、不快さ及び/又は痛みを防ぐように構成されている、1つ以上の回路を含んでよい。例えば、TESモジュールの波形発生器は、本明細書に図示されているように、100Hzから30kHzを駆動できる発振器(発振回路)、並びにフィルタ及び整流器を含んでよい。特に、本明細書に記載の装置は、一般に、本装置を装着している対象者に害を与えないように、ヒューズとして動作可能な、電流制限器などの安全機能を含んでよい。TES制御装置は、TESアプリケータの動作に関する情報を保存するように適合されたメモリ(例えば、1つ以上のレジスタのような揮発性メモリ、フラッシュメモリ等)を含んでよく、或いは、そのメモリと接続されてよい。
【0051】
又、本明細書では、対象者の認知状態のTES変調の方法及び装置について記載されており、これらは、TES治療レジーム中の遷移が高速であるTESを提供するか含む。高速遷移は、ランプ又はエクスカージョンと称されてよく、これは、高速遷移が、典型的には、認知状態を修正する刺激レベルから、認知作用を誘発する閾値下である刺激レベルに至り、すぐに認知作用を誘発する閾値上レベルに戻る遷移又はエクスカージョンを含む為である。このエクスカージョン刺激(「ランプ」)は、典型的にはTESプロトコル内にあり、認知作用、及び/又は認知作用の知覚を強化する。慣れを弱める為にはより漸進的な遷移(即ち、ランプ)が有用でありうるが、認知状態が誘発されたという対象者の体感を強化する為には、(後述するように)急速な遷移が特に有用でありうる。
【0052】
一般に、対象者の認知状態を修正する為に経皮電気刺激(TES)を強化する方法が、強度、周波数、デューティサイクル、及び/又はDCオフセットのうちの少なくとも1つを変更することによって、印加される刺激を、認知作用を誘発する閾値上レベルから、認知作用を誘発する閾値下レベルに変更するステップを含んでよい。TESは、典型的には、認知作用を誘発する閾値上レベルに戻るように変更される前のほんの短時間(例えば、15秒未満、10秒未満、5秒未満、2秒未満等)だけ、閾値下範囲にとどまる。この、パラメータレベルの変更は、パラメータを、認知作用を誘発する閾値上レベルに戻す時間(典型的には数秒のオーダー)に比べて比較的ゆっくり行われてよい。
【0053】
例えば、対象者の認知状態を修正する為に経皮電気刺激(TES)を強化する方法が、認知状態を誘起する為に、ある強度、周波数、周波数、デューティサイクル、及びDCオフセットを有するTES刺激を対象者に送達するステップであって、目標周波数が400Hz超であり、目標強度が3mA超であり、目標デューティサイクルが10パーセント超であり、目標DCオフセットが10パーセント超である2相電気刺激を含むTES刺激を送達するステップと、TES刺激の印加中に対象者の認知状態を強化するステップと、を含んでよく、認知状態を強化するステップは、強度を目標強度の20%超だけ減らし、15秒未満の遅延の後、毎秒の強度変化が5%超となるレートで強度を目標強度まで戻すステップと、周波数を刺激周波数の10%超だけ増やし、15秒未満の遅延の後、毎秒の周波数変化が5%超となるレートで周波数を目標周波数まで戻すステップと、デューティサイクルを目標デューティサイクルから2%以上減らし、15秒未満の遅延の後、毎秒0.5%超のレートでデューティサイクルを目標デューティサイクルまで戻すステップと、DCオフセットを目標DCオフセットから±5%超だけ変化させ、15秒未満の遅延の後、毎秒1%超のレートでDCオフセットを目標DCオフセットまで戻すステップと、のうちの1つ以上のステップによって行われる。
【0054】
これらの方法のいずれもが、TESアプリケータの第1の電極を対象者の皮膚上に配置するステップと、TESアプリケータの第2の電極を対象者の皮膚上に配置するステップと、を含んでよく、TES刺激を送達することは、第1の電極と第2の電極との間にTES刺激を印加することを含む。本明細書に記載の方法のいずれにおいても、TES刺激を送達することは、TES刺激を10秒超(例えば、30秒超、1分超、2分超、5分超、10分超、12分超、15分超、20分超、25分超、30分超等)にわたって送達することをふくんでよい。又、本明細書に記載の方法のいずれもが、任意のしかるべき認知状態を修正すること、例えば、落ち着いた、又はリラックスした精神状態、或いは警戒又は集中の精神状態を含む認知状態を修正することに有用であってよい。
【0055】
上述のように、これらの方法はいずれも、対象者自身が認知状態の強化をトリガすることによって駆動されてもよい。例えば、対象者の認知状態を強化することは、対象者が、開始をトリガし、(刺激を強化する)ランプをトリガすること、対象者が波形を修正すること等を含んでよい。例えば、対象者は、認知作用が誘発されたという体感を強化する為に、上述のようにランプ(エクスカージョン)をトリガしてよく、或いは、ランプは自動的にトリガされてよい。上述のようにランプをトリガすることは、誘発された認知作用をブーストすることと称されてよい。
【0056】
例えば、一変形形態では、誘発された認知作用に対するブーストが(例えば、対象者によって)トリガされてよく、この場合、本装置は、強度を目標強度(閾値上刺激パラメータ)の50%超だけ減らし、500ミリ秒当たりの強度変化が50%超となるレートで強度を目標強度に戻す。
【0057】
一般に、厳密な閾値上刺激パラメータは、対象者に依存してよく、且つ、経験的に決定されてよいが、本明細書に記載の汎用閾値上パラメータが概ね適用されてよく、これらは、約3mA超の目標強度、約400Hz以上の目標周波数、10%超の目標デューティサイクル、及び約10%超の目標DCオフセットを含む目標刺激パラメータとされてよい。
【0058】
例えば、周波数を増やして戻すことは、500ミリ秒当たりの周波数変化が50%超となるレートで周波数を目標周波数に戻すことを含んでよい。デューティサイクルを減らして戻すことは、500ミリ秒当たり15%超のレートでデューティサイクルを目標デューティサイクルに戻すことを含んでよい。DCオフセットを変化させて戻すことは、500ミリ秒当たり15%超のレートでDCオフセットを目標DCオフセットに戻すことを含んでよい。
【0059】
本発明の新規な特徴は、後述の特許請求の範囲において具体的に示される。本発明の原理を利用する例示的実施形態を説明する以下の詳細説明を、以下の添付図面とともに参照することにより、本発明の特徴及び利点がよりよく理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本明細書では、経皮電気刺激(TES)の方法及び装置について記載されており、これは、対象者の認知状態を修正するTESアプリケータなどのデバイス及びシステムを含む。一般に、これらのTES用アプリケータ及び方法は、人間対象者に送達される電気刺激によって神経変調を誘発することにより、認知機能及び/又は認知状態に、有利な、又は望ましい変化を誘発することが可能である。(経頭蓋電気刺激を含む)経皮電気刺激の装置及び方法の別の例が、本出願の発明者らによる米国特許出願第14/091,121号、件名「ウェアラブル経皮電気刺激装置とその使用方法(Wearable transdermal electrical stimulation devices and methods of using them)」に記載されており、これは、その全内容が本明細書に組み込まれている。
【0062】
一般に、本明細書では、様々な認知状態を引き起こしたり、強化したり、修正したりすることに使用されてよい大まかなTES波形パラメータについて記載されている。本明細書に記載の装置及び方法は、様々な認知状態を誘発及び/又は修正するTESを提供する為に使用されてよいが、本明細書では2つの具体例を詳述しており、これらは、注意、警戒、又は精神集中の強化を誘発すること、並びに落ち着いた、又はリラックスした精神状態を誘発することを含む。特に詳述するのは、注意、警戒、又は精神集中を強化することと、落ち着いた、又はリラックスした精神状態を誘発することと、に特化した装置及び方法の構成についてであり、これは、これらの特定の認知作用のいずれかを対象者において達成する神経変調を引き起こす為の特定の構成を含む。
【0063】
認知状態を修正する汎用TESアプリケータ(デバイス又はシステム)は、2つの電極の対(又は2組の電極)、即ち、1つのアノードと1つのカソードとを含んでよく、これらは、対象者の身体の特定部位に貼り付けられてよく、本明細書において有効であると説明されている比較的高強度、高周波数の範囲でTES刺激を提供する為に使用されてよい。電流は、典型的には、アノード電極とカソード電極との間(又はグループのアノード電極とカソード電極との間)に印加され、特定の動作理論にとらわれることなく、電流は、アノードとカソードの間の身体を通り抜けてよく、潜在的には、エネルギを適切な治療レジームで、特定の神経経路にある下層神経組織(頭蓋神経、脳等)に印加することにより、所望の目標作用(例えば、注意、警戒、又は精神集中、並びに、落ち着いた、又はリラックスした精神状態の誘発)を結果として達成する。従って、所望の認知作用を実現する為には、電極を対象者の身体上のどこに配置するかが重要である。電極対(アノード電極及びカソード電極)の、所望の認知作用に特化した配置位置は、配置レジーム又は配置構成と称されてよい。例えば、注意、警戒、又は精神集中の認知状態を誘発する第1の配置構成(「構成A」又は「構成2」と称されてよい)は、対象者のこめかみ部付近(例えば目の側方。例えば、右目のやや右上、又は左目のやや左上)に貼り付けられる第1の電極と、第1の電極と同じ側の耳の後ろの乳様突起部(例えば、乳様突起上又はその付近)に配置される第2の電極と、を含む。この部位への高強度TES刺激(後で詳述)は、注意、警戒、又は精神集中の強化をもたらしうる。注意、警戒、又は精神集中の強化の為の第2の構成(本明細書では便宜上「構成C」又は「構成1」と称する)は、こめかみ部(例えば目の側方。例えば、右目のやや右上、又は左目のやや左上)に配置される第1の電極と、前額部(例えば、鼻根部の付近又は上方)に配置される第2の電極と、を含んでよい。
【0064】
例えば、注意、警戒、又は精神集中を強化する為の構成Aを用いるTESは、集中及び注意の強化、警戒の強化、集中及び/又は注意の増大、覚醒の強化、主観的エネルギ感の増大、客観的(即ち、生理学的)エネルギレベルの増大、(仕事、エクササイズ、家事を片付けること等の)意欲レベルの向上、エネルギの増大(例えば、生理学的覚醒、主観的エネルギ感の増大)、胸部の身体的温熱感などをもたらしうる。
【0065】
別の構成(本明細書では便宜上「構成B」又は「構成3」と称する)は、対象者のこめかみ部付近(例えば、右目の右上)の皮膚上に配置される電極と、対象者の頸部(例えば、正中線の右側(又は左側)に中心があって一部が脊髄と重なる頸上部)にある第2の電極と、を含んでよい。この部位へのTES刺激は、落ち着いた、又はリラックスした精神状態の強化をもたらしうる。
【0066】
構成Bを用いるTESは、急速に(即ち、TESセッションの開始から約5分以内に)誘発されうる落ち着いた状態を含む、落ち着いた状態、のんびりした心理状態、心配事がない心理状態、睡眠の誘発、時間経過の減速感、生理学的、感情的、且つ/又は筋性の弛緩の強化、集中の強化、気を散らすことの抑制、認知的且つ/又は感覚的な明晰さの増大、解離状態、精神活性化合物(即ちアルコール)による軽い酩酊と同種の状態、精神活性化合物(即ちモルヒネ)によって誘発される軽い幸福感と同種の状態、リラックスしているか楽しんでいるとされる心理状態の誘発、聴覚及び視覚の体感(即ち、マルチメディア)の楽しみの強化、生理学的覚醒の緩和、感情的又は他のストレッサを処理する能力の増大、一般的にはストレス、不安、及び精神的機能障害のバイオマーカの低下に関連付けられる、視床下部・下垂体・副腎系軸(HPA軸)の活動の変化に関連付けられる精神生理学的覚醒の緩和、不安緩解、精神的明晰さが高い状態、身体能力の強化、ストレスの有害な結果に対する回復力の促進、末梢部(即ち、腕及び/又は脚)の身体的弛緩感、心臓の鼓動が聞こえそうな身体的興奮などであって、これらに限定されない認知作用をもたらしうる。
【0067】
一般的には、認知作用は、母集団全体で(個々のばらつきや程度があるものの)画一的であると考えられ、任意の適切な手段によって実演可能である。例えば、構成A又は構成B(或いは他の任意の構成)による神経変調の作用は、以下を含んでこれらに限定されない群から選択される1つ以上の方法によって検出可能であり、それらの方法は、受容者の認知状態、感情状態、生理学的状態、注意状態、意欲状態、又は他の認知状態を修正することによって、受容者が、知覚、運動、概念、指令、他の象徴的コミュニケーションとして主観的に検出する方法、(ii)脳波記録法(EEG)、脳磁図(MEG)、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)、機能的近赤外線分光法(fNIRS)、陽電子放出断層撮影法(PET)、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、コンピュータ断層撮影法(CT)、機能的組織拍動画像法(fTPI)、キセノン133画像法、磁気共鳴分光法(MRS)、又は他の、当業者には既知の脳活動測定手法のうちの1つ又は複数の手法により、脳活動の生理学的測定を行うことによって検出する方法、並びに、(iii)筋電図(EMG)、電気性皮膚反射(GSR)、心電図(EKG)、パルスオキシメトリ(例えば、光電式容積脈波記録法)、心拍数、血圧、呼吸数、瞳孔拡張、眼球運動、注視方向、循環するホルモン(例えば、コルチゾール又はテストステロン)、タンパク質(例えば、アミラーゼ)、又は遺伝子転写物(即ち、mRNA)の測定、並びに他の生理学的測定などにより身体の生理学的測定を行うことによって検出する方法である。
【0068】
構成A及び構成Bのいずれにおいても、第1の電極はアノードでもカソードでもよい。便宜上、第1の(こめかみの)電極は、アノードであるとしてよい。構成A、B、及びCの全てにおいて、アノード(又は等電位アノードのセット)は、右のこめかみ、即ち、右目の右上の、まゆと頭髪の生え際との間に配置されてよい。電極アセンブリの2つの例示的電極配置を
図1A及び
図1Bに示す。この電極アセンブリは、TES装置とアノード−カソード対との間のコネクタ104と、第2の電極へのワイヤ103(第2の電極は図示せず)と、プラスチックバッキング101(上面、皮膚から遠い側)と、活性電極領域102(即ち、電流を経皮伝導させる為の)と、粘着性親水コロイド領域101(底面、皮膚に粘着)と、を有する。この例では、活性電極領域102の底面エッジは、鼻根部と耳の最上部との間を走る線105とほぼそろっている。活性電極領域の最寄りのエッジは、目から少なくとも約0.5cmのところにあってよく(最適には目から少なくとも約1cmのところにあってよく)、これは、送達されたTES波形によって引き起こされる、気を散らせる不快な眼筋のけいれん(
図1Dを参照)を防ぐ為である。目と活性電極領域のエッジとの間を走る線107は、電極のエッジと目との間の有利な距離を示す。
図1Aは、第1の有効な方位を示しており、これは、
図1Bの第2の有効な方位に対して反時計回りに回転している。電極の角度は、矢印106で概略的に表されている。頭髪の生え際が低い対象者の場合、
図1Bの位置決めでは、粘着剤又は電極を頭髪と重ならないように配置することが好ましいであろう。活性電極領域の適切な配置を、
図1A(109)及び
図1B(108)の位置に関して、
図1Cに概略的に示す。
【0069】
構成A、構成B、及び構成Cの場合、アノード電極面積は、一般に約5cm
2より大きくてよく、いくぶん大きめであってよい(即ち、約7cm
2より大きいか、約10cm
2より大きいか、約15cm
2より大きくてよい)。(例えば、単一アノード又はアノードのセットからなる)20cm
2より大きい電極面積は、構成A、B、及びCに関連付けられた認知作用を誘発することに関しては、より小さな電極よりも有効でない可能性があり、これは、経皮送達される電界の標的精度が低い為である。これらの構成にとっての有効な電極形状は、一般に幅広よりは細長いものであってよく、例えば、矩形、長円形、又は不規則な長い形状であってよく、これらに限定されない。
【0070】
構成Aの場合の第2の電極位置は、(便宜上)右耳の後ろで右乳様突起のほとんどを覆うカソード(又は等電位カソードのセット)であるとしてよい(
図2A)。構成Aの場合の第2の電極は、耳の裏側に接触しないことが好ましい。構成Aのカソード(又はカソードのセット)の有効な電極形状は、直径が約0.5”から1”の円形又は長円形であってよく、或いは、より乳様突起部位に有効に適合する不規則形状(即ち、三日月形)であってよい。電極は、乳様突起を覆う皮膚と、不快でなく均一(又はほぼ均一)に接触することが好ましい。場合によっては、カソードの経皮接触部分は、特に垂直方向の寸法がいくぶん大きめであってよいが、乳様突起の上方及び背後の頭髪の存在によってサイズが大まかに制限される。
図2Aでは、電極は、乳様突起部位の上部領域215から下部領域217にかけて延びてよい(長円形領域219を参照)。この電極の中心は、外耳道と一直線になっていてよく、或いは、対象者の頭髪の生え際及び乳様突起骨位置に応じて、外耳道より約5mm上下していてよい。第1の電極の場合と同様に、頭髪は避けられてよい。
図2Bから
図2Dは、許容範囲内の他の位置決めの変形形態を示す。
【0071】
図2Eから
図2Hは、構成Aの場合の電極及び電極配置の別の例を示す。
図2Eでは、対象者の頭部200が示されており、こめかみ電極配置位置213と乳様突起部電極配置位置211とが大まかに示されている。
図2Fは、こめかみにおける矩形電極203と乳様突起部における円形電極201との一例を示す。同様に、
図2Gでは、こめかみ電極207が円形である。
図2Hは、2つの円形電極208、209を有する一例を示しており、これらはアノードとして(或いは両方ともカソードとして)構成されてよい。
【0072】
こめかみに配置された第1の電極に加えて、構成Bでは第2の電極(又は等電位電極のセット、例えば、便宜上カソードであるとする)301を使用する。この電極301は、対象者の正中線において、又は、最適には、
図3Aから
図3Cに示されるように対象者の右側に最大約2cmずれた場所において、対象者の頸上部に配置される(即ち、電極の上部エッジが対象者の頭髪の生え際のエッジ又はその付近に配置される)。構成Bのカソード(又はカソードのセット)の電極サイズは、好ましくは面積が約10cm
2より大きく、或いは、最適には約15cm
2より大きく、或いは、最適には約20cm
2より大きい。構成Bの電極が約40cm
2より大きいと、神経変調から所望の認知作用を誘発することに関しては、あまり有効でない可能性があり、これは、体内に入る電界の標的精度が低い為である。構成Bのカソード(又はカソードのセット)は、円形、長円形、正方形、矩形、又は別の規則的又は不規則な形状であってよい。
図3Aから
図3Cの第2の電極位置301は、右側にずれているように示されている。一般に、第2の電極は、頸部正中線(垂直方向の破線315)の中心から、対象者の、こめかみ電極が配置されている側と同じ方向(例えば、右又は左)にずれていてよい。従って、第2の電極の位置は、中心からやや右側又は左側にずれている。電極は、対象者の頸部の垂直方向の、頭髪の生え際の最下部と隆椎319の最上方との間(例えば、頭髪の生え際により近い、例えば、頸部が肩部に向かって湾曲し始める部位より上方317)に配置されてよい。
図3B及び
図3Cは、頸部への電極301の配置の別の例を示しており、各図において対象者はこめかみ電極を右側に装着している。
図3Dは、構成Bの電極配置にふさわしい領域を示している。
図3Dでは、電極は、対象者300のこめかみ部322と、頸背部311とに配置されてよい。
【0073】
両構成のアノード及びカソードの電極の位置決めは、ゲルや塩類溶液で手を汚すことなく、皮膚に対して低インピーダンス且つ均一な電気的接触が可能であるように、頭髪が最小限であるか頭髪がない領域に収まるように選択されることが有利でありうる。例えば、有利な電極構成は、電流密度が2mA/cm
2を下回るようにサイズ決定された電極を含んでよい。
【0074】
図4Aから
図4Dは、構成1(構成C)の場合の電極位置を示す。注意及び/又は警戒を増大させる電気刺激を送達するTESシステムの一部として、構成1に従って頭部に配置される電極が使用されてよい。デフォルトモードネットワーク(大脳皮質内の機能分散ネットワーク)は、注意が持続している間は活動の低下を示し、注意が散漫している間や空想にふけっている間は活動の増大を示す。(下前頭回に沿う)右前島及び前頭弁蓋は、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による研究において、注意が持続している間に活性化されている脳部位であると識別されている。この構成での電極配置は、(右島を含む)右下前頭回に近い領域の活動を増大させ、デフォルトモードネットワークにおける活動を低下させることができるが、他の脳部位は、少なくとも幾つかのケースにおいて活性化されるか、抑制されるか、変調される可能性がある。第1の電極が、10/20標準の位置F8に近い右下前頭回を覆って配置されてよく、第2の電極が位置AFzの付近に配置されてよい。
図4Aから
図4Cは、構成1に従うアノード電極及びカソード電極の配置例を、10/20電極位置400、401を示す概略図上に示す。アノード402の概略中心は、円内にプラス印で示されており、カソード403の概略中心は、円内にマイナス印で示されている。一例示的電極位置が対象者400上に示されている。矩形アノード電極406がプラス印で示されており、カソード電極405がマイナス印で示されている。電極を可搬型手持ち式tDCS装置につないでいるアノードワイヤ407に注目されたい。好ましい一実施形態では、より大きな(約1”×約2”以上の)電極が構成1では有効である。実施形態によっては、単一の大きなアノードが、10/20位置F8の付近に配置された2つ以上の小さなアノードで置き換えられる。少なくとも幾つかのケースでは、目の高さのすぐ下から上方に右目の横まで延びる(10/20システムのF10からF6にかけての範囲に広がる)大きなアノード電極が使用される。カソードは、ユーザの前額部の中心において正中線をほぼ覆って配置される。
【0075】
図4Eから
図4Hは、構成Cに従って配置される電極の様々な変形形態を示す。
図4E及び
図4Fは、対象者の頭部400の、電極を配置してよい範囲を大まかに示す。
図4Eでは、こめかみ部412が示されており、
図4Fでは、前額部413が示されている。
図4Gは、こめかみ部に配置された略矩形の電極422を示しており、
図4Hは、こめかみ電極422と、丸みのある正方形の前額部電極424との両方を示している。
【0076】
本明細書に記載の電極構成はいずれも、対象者の皮膚上に配置された粘着式電極、ウェアラブルアセンブリ(例えば、帽子(ハット)、ヘッドバンド、アームバンド、又は他のウェアラブルな取り付けシステム。これ自体は、たとえシステムの電極が非粘着式であっても、粘着式であってよい)によって対象者の皮膚と低インピーダンス接触した状態が保持される非粘着式電極(例えば、塩類溶液に浸漬されたスポンジ)、又は、粘着式電極と非粘着式電極との組み合わせであって、これらにより、第1の電極セットが対象者に粘着的に取り付けられ、第2の電極セットが対象者に非粘着的に取り付けられる、粘着式電極と非粘着式電極との組み合わせによって達成可能である。粘着式電極は、取り外す際に対象者の皮膚上に残るかすが最小限になるように、且つ、塩類溶液又はゲルを加えることなく対象者にTESが送達されるように構成可能であるという点で具合がよい。非粘着式電極(例えば、塩類溶液に浸漬されたスポンジ又はゲルをベースとする電極システム)は、頭部、顔面、及び身体のうちの毛で覆われた領域において有用であり、これは、導電性の液体又はゲルにより、毛を通り抜ける低インピーダンス接触が可能な為である。TES電極は、しかるべき電気刺激波形を少なくとも2つの電極に供給するTES制御回路と電気的に結合されている。粘着式電極を使用する実施形態では、TES制御回路は、少なくとも1つの電極を含む粘着式アセンブリの一構成要素であってよい。粘着式電極を使用する別の実施形態では、TES制御回路は、電極とは別個のアセンブリに含まれてよく、電源及び制御回路とワイヤでつながれてよい。
【0077】
実施形態によっては、単一のアノード電極又はカソード電極を、多数の電気的に連続な電極で置き換えることが可能である(即ち、単一の大きなアノード電極を、互いに近接して配置されている2つの小さなアノード電極で置き換えることが可能である)。使用される各電極のサイズ及び形状は、刺激が送達される領域、及び対象者が知覚する痛み又はいらいらのレベルの制御を可能にするパラメータである。実施形態によっては、所与の構成における各電極位置は、1つの電極、又は標的領域内に配置されて互いに導電接続されている2つ以上の電極(任意選択で少なくとも2つの電極、任意選択で少なくとも3つの電極、任意選択で少なくとも4つの電極、任意選択で少なくとも5つの電極、任意選択で少なくとも10個の電極、任意選択で少なくとも25個の電極、任意選択で少なくとも50個の電極、任意選択で少なくとも100個の電極、又は任意選択で少なくとも1000個の電極)であってよい。
【0078】
一般に、脳、神経(例えば、脳神経、迷走神経、末梢神経)、及び/又は脊髄を標的とすることによって神経変調を引き起こす経皮電気刺激には、少なくとも3mAを超えるピーク刺激強度が有利でありうる。これらのピーク強度を、対象者の痛み、いらいら、又は不快さを引き起こさずに達成する為には、しかるべき電極及びTES波形が必要であると考えられる。有利な電極は、pH緩衝特性を有してよく、電極の皮膚に面した部分全体にわたって電流を均一に(又は、より均一に)送達する構成要素を含んでよい。
【0079】
人間の脳には、機能側性化が存在する。機能側性化の程度及び左右の分かれ方は、個人個人で異なる可能性がある。例えば、左利きの人々と女性は、右利きの男性より側性化の程度が小さい可能性がある。頭部及び頸部の右側に関して上述された構成のそれぞれに対して、頭部及び頸部の左側、又は頭部の両側の同様な位置に配置された電極が、対象者によっては同様に有効、又は、より有効である場合がある。
【0080】
ユーザによっては、ユーザの頭部及び頸部の左側に電極が配置された場合、アノード−カソード対が片側だけになるように、2組の電極が両側に、接続されて配置された場合、又は、アノード−カソード対が半球間にまたがるように、2対の電極が両側に、接続されて配置された場合に、有効性の向上が起こりうる。2組の電極が両側に配置された実施形態では、刺激の側性は、特定のセッション(例えば、右側のみ、左側のみ、又は両側)において一定であるか、ユーザの生理学的状態又は認知状態の測定に従って自動的に選択されるか、ユーザによって選択されるか、片側だけのアノード−カソード対形成と半球間のアノード−カソード対形成との間で切り換えられるか、或いは、時間の経過とともに変化するように構成されてよい。刺激の側性が時間変動する幾つかの実施形態では、刺激は、1つの刺激構成と別の刺激構成とが交互になる(例えば、一定時間にわたる右側刺激の後、一定時間にわたる左側刺激、或いは、一定時間にわたる、両側の電極セットを通しての片側のみの刺激の後、一定時間にわたる、両側の電極セットを通しての半球間刺激)。
【0081】
本明細書に記載のいずれかの構成に従って配置される複数のアノード−カソード電極対は、使用する刺激プロトコルが同一であってよい。本明細書に記載のいずれかの構成に従って配置される複数のアノード−カソード電極対は、使用する刺激プロトコルが、電流強度、波形、継続時間、及び他の刺激パラメータを含んでこれらに限定されないリストから選択される少なくとも1つのパラメータが異なっていてよい。当業者であれば理解されるように、電極を機能するように配列できる場所は多数あり、本明細書の実施形態は、任意のそのような機能する配列で使用されるように考えられている。
【0082】
一般に、本明細書に記載のいずれかの構成とともに使用されるTES波形は、対象者の組織内に送達(例えば、経皮送達)される電流のパターンであってよい。これらの波形及び電気的プロトコルは、構成(電極配置)ごとに、且つ、標的認知状態ごとに変形(最適化)があってよいが、一般に、これらのパターンは、引き起こされる不快さ及び/又は痛みを低レベル(例えば、最小限又はゼロ)に抑えながら、ほとんどの個人において反応を確実に誘起する為に印加される、高強度、高周波、高デューティサイクルであって荷電平衡されていない(例えば、DCオフセットされている)信号を提供する為には、同じ範囲内の値であってよい。
【0083】
神経変調を誘発する為に経頭蓋的に送達される電気刺激の時間変動パターンを、経皮電気刺激波形(「TES波形」)と称することとする。刺激プロトコルは、アノード−カソードセットに送達される電流の時間的パターンを定義してよく、以下の波形構成要素、即ち、直流、交流、パルス電流、直線電流ランプ、非直線電流ランプ、指数関数電流ランプ、電流の変調(例えば、1つ以上の周波数での振幅変調)、及び、より複雑なパターン(繰り返し、ランダム、疑似ランダム、及び無秩序のパターンを含む)を含んでこれらに限定されない1つ以上の波形構成要素を組み込まれることが可能である。動作時には、本装置は、しかるべき電極構成及び刺激プロトコルが与えられている場合には、神経変調を誘発する電流を標的領域(例えば、脳内、顔面神経、迷走神経、又は他のニューロン標的)に流すことが可能である。
【0084】
一般に、TES波形は、継続時間、方向、ピーク電流、及び周波数で定義されてよい。実施形態によっては、TES波形は更に、百分率デューティサイクル(
図5A)、百分率直流分(
図5A)、ランプ化又は他の振幅変調、1つ又は複数の周波数成分、2相電流の位相関係、フラットノイズ又は構造化ノイズ、波形(即ち、のこぎり波、三角波、正弦波、方形波、指数関数波、又は他の波形)、キャパシタンス補償特性、又は他の、参照によって全内容が本明細書に組み込まれている、2013年11月26日に出願された米国特許出願第14/091,121号、件名「ウェアラブル経皮電気刺激装置とその使用方法(Wearable Transdermal Electrical Stimulation Devices and Methods of Using Them)」に記載のパラメータで定義される。本明細書では、「百分率デューティサイクル」は、非ゼロ(又は公称で非ゼロ)の電流が経皮送達されるようにする波形の、1周期における比率を意味してよい(
図5Aの式を参照)。更に、「百分率直流分」は、波形周期のうちの正極性である非ゼロ部分を意味してよい(
図5Aの式を参照)。
【0085】
効果のある、ロバストな、且つ/又は信頼できる認知作用を誘発する為には、典型的には、パラメータセットで定義される適切なTES波形が必要である。刺激プロトコル(「TES波形」)は、アノード−カソードセットに送達される電流の時間的パターンを定義してよく、以下の波形構成要素、即ち、直流、交流、パルス電流、直線電流ランプ、非直線電流ランプ、指数関数電流ランプ、電流の変調、及び、より複雑なパターン(繰り返し、ランダム、疑似ランダム、及び無秩序のパターンを含む)を含んでこれらに限定されない1つ以上の波形構成要素を組み込まれることが可能である。動作時には、本装置は、しかるべき電極構成及び刺激プロトコルが与えられている場合には、神経変調を誘発する電流を標的領域(例えば、脳内)に流すことが可能である。
【0086】
波形パラメータのセットは、所望の認知作用(例えば、構成A、構成B等)、並びに、電極の数、電極の位置、電極のサイズ、電極の形状、電極の組成、及び電極のアノード−カソード対形成(即ち、電極のセットがアノード又はカソードとして電気的に結合されているかどうか、更には、刺激の複数の独立チャネルが、独立アノード−カソードセットを駆動する電流源を介して存在しているかどうか)に基づいて選択されてよい。前出のリストにあるいずれかの特性を変更する為には、所望の認知作用を達成する為に1つ以上のパラメータを変更することによってTES波形を適応させることが必要になる場合がある。
【0087】
図5B及び
図5Cは、本明細書に記載の波形の形成に使用されてよい、4kHzの正弦波(
図5B)及び方形波(
図5C)の一例を示す。例えば、
図5F及び
図5Gは、(
図5Fに示された)振幅変調が行われた4kHz方形波の一例を示す。
図5Gは、1mAの直流電流シフトが行われた4kHz方形波の一例を示す。なお、有利なパルス発生レジームは、振幅変調、周波数変調、及び他の、交流電流を変調する為の線形及び非線形の技術を含んでよい。例えば、本明細書に記載のTES刺激器には、正弦波及び方形波(例えば、4kHz波形)が有用と考えられる。有効なパルス発生レジームの一例は、オンが4ミリ秒、オフが16ミリ秒である。更に、神経回路を、約200Hz未満の生物学的に適切な周波数で刺激する為に、パルス発生が行われてよい。
【0088】
図5J及び
図5Kは、ゼロ正味電流による2つのパルス発生方式を示す。1つのパルス発生方式では、正極性フェーズ2100の直後に負極性フェーズ2101が続き、可変パルス間隔2102、2103、2104は周波数変調に従う。代替実施形態では、パルス間隔は一定である。別のパルス発生方式では、正極性パルスフェーズ2105と負極性パルスフェーズ2108とが間隔2106、2107、2109によって切り離される。
図5L及び
図5Mは、更に2つの、ゼロ正味電流によるパルス発生方式を示す。1つのパルス発生方式では、短い高電流正極性フェーズ2200の後に、より長い低電流負極性フェーズ2201と、可変パルス間隔2202、2203、2204とが続く。別のパルス発生方式では、正極性フェーズ2206と、負極性フェーズ2207と、パルス開始間隔2205と、を有する非方形波形が送達される。
【0089】
高周波2相刺激の場合、電流強度を非常に素早く上昇させることが可能であり、直流電流刺激に比べて不快であるということはない。この特性は、痛みもいらいらも気が散る副作用もなく、有利な認知作用を素早く誘発できることに関して有利である。従って、本明細書に記載の高周波2相交流電流刺激は、tDCSよりも、認知状態の変化が速やかに起こる。
【0090】
痛みを緩和する別の方式として、干渉刺激の使用があってよい。干渉刺激では2つのアノード−カソード対を使用し、例えば、1つの対は4kHz一定で使用し、1つの対はおよそ4001kHzから4200Hzの可変周波数で使用する。これにより、1Hzから200Hzの「うなり周波数」が電極の下の組織内に発生し、これは、痛みの伝達を緩和することを意図されている。1つのアノード−カソード対による1〜200Hzの刺激に対する、この方法の利点は、刺激の、不快な感覚副作用を最小限にできることである。干渉刺激の場合、1〜200Hzの「うなり周波数」は、痛み繊維及び筋繊維を変調する為の重要な周波数である。「搬送波周波数」の約4kHzは、1〜200Hzの高強度刺激の印加に典型的に付随する不快さを緩和する。うなり周波数を対象者の脳に送達する為には、2つのチャネル(即ち、アノード−カソードセット)が必要である(例えば、第1のチャネルが4000Hzで刺激を送達し、第2のチャネルが4100Hzで刺激を送達する)。
図5D及び
図5Eは、4000Hzの正弦波と4100Hzの正弦波からなる干渉tACS波形を、2通りの表示で示している。
【0091】
高周波2相刺激プロトコルで精神状態の変化を誘発する為の電流閾値は3〜10mA、又はそれ以上(少なくとも幾つかのケースではtDCSの場合より高い)であるが、本明細書に記載の刺激プロトコルを使用する場合、これらの高電流では、ひりひり感、かゆみ、焼けつく感じなどが予想より格段に少なくなる可能性がある。変形形態によっては、2相刺激のゼロ正味電流波形が皮膚のいらいらを緩和又は解消する可能性がある。しかしながら、本明細書に記載のように、(驚くべきことに)2相電流にDCオフセットがあることが有利である場合もあり、その場合、DCオフセットがなかったら、結果として荷電不平衡が起こるであろう。後述するように、(電極同士を短絡させることにより容量電荷を除去することを含む)1つ以上のいらいら緩和手法が用いられてよい。可能性のある副作用の1つが筋収縮であり、これは高電流(>6mA)において顕著となる可能性があり、痛くはないもののユーザによっては気が散る原因になる場合がある。筋収縮による不快さが過度にならない範囲で最大11mAが使用されてきたが、典型的には、筋収縮が顕著になるのは5〜10mAにおいてである。筋収縮を防ぐ為に、更に高い周波数(例えば、最大50kHz)が使用されてよい。電極を小さくすると(例えば、1平方インチ)、結果として、筋収縮の閾値が下がる可能性があり、且つ、精神状態が変化する閾値が下がる可能性がある(おそらく両作用とも電流密度に関係がある)。
【0092】
変形形態によっては、低正味電流又はゼロ正味電流が2相高周波TESの有利な特性となる場合があり、これは、皮膚のいらいらが電極の下のpH変化に直接関係し(pH変化は電極の下の電流密度に比例する)、低正味電流が、皮膚のpH変化に起因する痛み及びいらいらの緩和に同様に有効でありうる為である。例えば、DCで皮膚のいらいらが発生する閾値電流密度とほぼ同等のDCオフセット(Little PALS電極で約0.5mA/cm
2、通常の粘着式皮膚電極で0.2mA/cm
2)を、高周波交流電流刺激(
図5G)と一緒に使用することにより、最小限のいらいら、痛み、及び組織損傷でTESを提供することが可能になる。しかしながら、上述のように、変形形態によっては、荷電不平衡(例えば、DCオフセット)を有することは特に有効であり、とりわけ、刺激時に「短絡」して容量電荷を除去することとの組み合わせにおいて有効である。
【0093】
パルス状刺激の場合は、DC刺激の場合とは異なる「ルール」が事前データによって示唆される。少なくとも幾つかのケースでは、DC刺激を使用すると、認知作用は刺激の間じゅうずっと続く。少なくとも幾つかのケースでは、2相パルス状刺激を使用して、最大振幅電流を特定の閾値の前後で上げ下げしていると、効果は格段に大きくなる。少なくとも幾つかのケースでは、このプロトコルを使用すると、慣れは起こらない。少なくとも幾つかのケースでは、電流の増減を繰り返すことによって、増加のたびに所望の認知作用を誘発することが可能であるが、振幅を特定の値のままにすると(たとえその値が閾値であっても)効果が沈静化する可能性がある。この発見から、2次(より低速の)周波数で高周波2相tACSの振幅を変調する(
図5F)という新たな実施形態が着想された。この低速変調は、閾値の上方及び下方で頻繁に上げ下げして興奮を引き起こすことによって効果を持続させる。
図5Fに示された例では、2相高周波TES信号の振幅は、(認知作用の閾値の上方では)±5mAの間で交番し、(認知作用の閾値の下方では)±3mAの間で交番する。なお、閾値上及び閾値下の電流強度の間での他の振幅変調パターンも使用可能である(例えば、線形又は非線形ランプ、のこぎりパターン、正弦波、又は他の振幅変調波形)。
【0094】
別の代替実施形態では、高周波2相TES(例えば、tACS)が対象者に印加されて所望の認知作用が誘発された後、システムがDCモード動作に切り替わって認知作用を持続させることが可能である。高周波2相TESが、(例えば、0.5mA又は1mAの)DCオフセット又はDCバイアスと同時に印加されて、大きな認知作用を誘発しながら、同時に、痛み又はいらいらの興奮を緩和することも可能である(
図5G)。
【0095】
上述のパルス発生、TES、及び干渉刺激の方式のうちの1つ以上を適用する、粘着式の自己完結型TESシステムであれば、望ましい形態の神経変調を最小限の痛み、いらいら、及び組織損傷で達成することに有利でありうる。
【0096】
「短絡」(例えば、電極のキャパシタンスの放電)が組み込まれたTESシステムは、パルス状刺激レジームにとって有用たりうるとともに、痛みや不快さの緩和又は防止に役立ちうる。変形形態によっては、本装置は、電極と接続された短絡(又はキャパシタンス放電)回路を含む。例えば、キャパシタンス放電回路は、アノード−カソード経路を低オーム抵抗(例えば、50Ω)で短絡してパルスの継続時間に(例えば、対象者の皮膚に)蓄積されたキャパシタンスの放電を可能にする電子部品及びファームウェア機能を含んでよい。幾つかのケースでは、短絡は、不快さを緩和すること、従って、TESで誘発される認知作用を増やすことに有利である(これは、対象者が他の認知作用を体感できるように、不快さによる注意散漫を減らすこと、並びに、より顕著な認知作用を誘発する、より高いピーク電流強度の送達を可能にすることのうちの一方又は両方による)。容量性電流を急速に放電することにより、いらいらして所望の認知作用又は精神状態から気がそれる副作用(或いは、送達されるピーク強度に関して制限される副作用)を最小限にする、他のシステム及び方法が、上述の短絡のモード及びシステムの代替として使用されてよい。例えば、キャパシタンス放電回路が、本装置の主電流源とほぼ同等ながら、0Vで飽和し、蓄積電荷の放電を可能にする固定電流源を含んでよい。放電時間は固定されてよく、或いは、電圧及び電極キャパシタンスに依存してもよい。一例では、公称短絡回路が(例えば40mAまで)調節可能であってよく、抵抗を変更することによって変更可能である。放電は、(例えば、最大20mAの)範囲内で電流を調節できる通常の電流源によって行われてよく、このケースでは、2つの整流底部スイッチをオンにすることにより、逆充電を避けることが可能である。一般に、短絡放電は、非常に素早く(例えば、マイクロ秒の時間尺度で)行われることが可能であり、非常に高い電流(例えば、数十mAから100mA)を使用することが可能である。
【0097】
上述の構成A及び構成Bの両方において、許容可能なTES波形の範囲内で、1つ以上のパラメータを変更することにより、認知状態の修正内容を変更することが可能であり、例えば、誘発される認知作用の主観的体感を変更することが可能である。一人の対象者において、幾つかの刺激パラメータが別の刺激パラメータより有効である場合がある。
【0098】
一般に、特定の認知作用を誘発する、様々な有効範囲のパラメータの間で波形をシフトすることによって、より強い、より長く続く認知作用を達成する為に、ランプなどの波形特性が組み込まれてよい。有効な波形の間でのシフトは、反復的であってよく(即ち、1つのパラメータを変更し、次に、別のパラメータを変更する)、且つ、循環的であってよい(即ち、第1の波形から第2の波形に変更し、次に、第1の波形等に戻る。或いは、3つ以上の有効な波形の間でトグルする)。実施形態によっては、有効範囲内の1つ以上の波形パラメータを急速にシフトすることによって、より強い認知作用が誘発される。ただし、「急速」は、一般に15秒未満を意味し、1秒以下という短さであってもよい。
【0099】
構成A及び構成Bの両方において、神経変調用2相TES波形(直流電流<100%)は、位相が180度離れている正極性パルス及び負極性パルスの中心を有してよく、或いは、正極性パルスと負極性パルスとが重ならない限り、位相オフセットがより小さくてもよい。一般に、本明細書に記載の構成のいずれかに対応するTES波形が、加算されたり、減算されたり、畳み込まれたり、他の方法で振幅変調されたりしてよい。更に、実施形態では、本明細書に記載のいずれかの構成に対応するTES波形の振幅が、線形、指数関数、又は別のランプ形状でランプ化されてよい。TES波形のパルスは、方形波、正弦波、のこぎり波、三角波、整流(単相)波、パルス幅変調、振幅変調、周波数変調、又は他のパターンの交流電流波形を含んでよい。
【0100】
波形の送達は、対象者がユーザインタフェース(物理的なボタン、スイッチなど)又は非過渡的コンピュータ可読記憶媒体を活性化させたときに、開始、一時停止、停止、又は変調されることが可能になる(例えば、TES波形のパラメータの変更が可能になる)。この非過渡的コンピュータ可読記憶媒体は、遠隔処理装置を含むコンピューティング装置によって実行された場合に、遠隔処理装置(具体的にはスマートフォンなど)によって実行されることが可能な一連の命令を格納しており、TES波形を開始する為のユーザインタフェースをTES装置(又は、TES装置に通信可能に接続されたコンピューティング装置)の画面に表示させる。例えば、
図6は、対象者が装着しているウェアラブル装置の刺激をトリガすることに使用されてよい遠隔処理装置の一例を示す。この遠隔処理装置は、スマートフォンであってよく、(刺激パラメータ等を選択する為に)本装置と(二方向又は一方向)通信してよい。
【0101】
TESによって誘発される認知状態の変化を、ユーザが主観的に認識して、原因となった電気刺激に対応付けるのは困難である可能性がある。電流強度を低減する(周波数を高くする、デューティサイクルを減らす、DCオフセットを減らす等の)断続的、一時的な時間帯を組み込むことにより、その前の時点で発生した認知変化が識別できるようになり、これによってシステムに対するユーザの体感及び肯定的反応が改善される。手短に言えば、過渡的に(そして素早く)電流強度を減らし、そして増やすことによって、対象者にとっての際立った主観的コントラストを生成することにより、より高い電流レベルで誘発された認知作用をユーザに対してより明らかにすることが可能である。従って、TESセッションで誘発される認知状態の変化をユーザが知覚するように誘導する方法及びシステムが有利である。例えば、電流強度を、神経変調を誘発する閾値より上の、認知作用を誘発する閾値上レベルに維持した後、電流強度を急速に(例えば、5秒未満で、任意選択で10秒未満で、任意選択で15秒未満で)認知作用を誘発する閾値より下まで(認知作用を誘発する閾値下まで)減らすことにより、対象者は、それまでの、より高い電流強度で誘発された認知作用をより容易に認識することが可能になる。
【0102】
一例示的シーケンスを、以下の4ステップで表すことが可能である。(1)誘発される認知作用に必要な電流強度より低い中間電流強度までランプ状に急速に減らす。(2)それまで誘発されていた認知状態の変化がなくなっていることを対象者が認識するのに十分な時間だけ、中間レベルを維持する。(3)電流強度の増加による対象者のいらいら及び/又は痛みが最小限になるように、電流強度を十分低速に徐々に増やす。(4)当該認知作用を誘発するのに十分なTES用電流強度を維持する。この4ステップシーケンスは、対象者に対して一度だけ実施されてもよく、およそ0.001Hzから0.1Hzであるように選択される固定周波数又は可変周波数で繰り返されてもよい。
【0103】
例えば、
図5H及び
図5iは、TESの有効性を向上させる為の低速ランプ(ランプオン)及び急速ランプ(過渡的エクスカージョン)の両方を含む例示的パターンを示す。
図5iの例では、電流強度は、0mAのレベルから開始され(2000)、直線的に増えて(2001)、(意図された認知作用を対象者において誘発する神経変調の為の)中間的副閾値の電流に達し(2002)、その後、再び直線的に増えて(2003)、意図された認知作用を対象者において誘発する神経変調の為の閾値より高い電流に達する(2004)。次に、送達されるTES電流の急速な減少(2005)が短時間の間に発生して、認知状態の変化を誘発する為の最小値より低いレベルの電流強度まで減少し(2006)、このレベルが1〜2分維持され、その後、電流強度は徐々に増加し(2007)、意図された認知作用を対象者において誘発する神経変調の為の閾値より高い電流レベルに戻る(2008)。この例では、電流強度の過渡的減少2009、2010、2011、2012が1回繰り返されてから、電流レベルが減少して0mAに戻る。変形形態によっては、強度が(閾値下まで)ランプ状に減少するのが急速であっても低速であっても、ランプ状に閾値上まで戻る時間が格段に短ければ(例えば、数秒未満などであれば)、更により有効であることがわかっている。
【0104】
同じ電極構成とともに使用されるよう意図された波形セットが、持続する、より強力な認知作用、又は、関連しているが、主観的に別個の体感を与える認知作用を誘発するように使用されてよい(例えば、第1のTES刺激波形が意欲を上昇させることが可能である一方、第2の関連するTES刺激波形は精神の明晰さ及び集中の高まりを誘発する)。(アプリケータ及び/又はアプリケータと対にされた遠隔処理装置を含む)装置が、これらの様々な波形セットを含んでよく、対象者によって選択されてよい(且つ、場合によっては修正されてよい)。
【0105】
持続する、より長く続く認知作用を対象者において引き起こす1つの方法は、所望の認知作用を誘発させる第1のTES波形を送達し、その後、第1のTES波形の後に休止期間を置いてから第2のTES波形を送達することである。第1のTES波形が終了しても、誘発された認知作用は、しばらくの間、持続することが可能であるが、強度又は特性が徐々に劣化する。その後に第2のTES波形が与えられると、これは、第1のTES波形によって引き起こされた認知作用の劣化のてこ入れ又は再誘発を引き起こすことが可能である。一般に、誘発プロトコルは、一般に数秒から数分続く第2のTES波形より長くてよい(即ち、1分以上、有利には3分以上、又は5分以上、又は10分以上であってよい)。この構成は、第1の、より長いTES波形を単純に再トリガする場合に比べて有利である可能性があり、それは、より不快でなく、より電力効率が高く(従ってTESシステムのバッテリがより長くもつ)、より安全な為であり、より安全であるのは、体内に入るエネルギを少なくしながら同等の認知作用を誘発する為である。
【0106】
例えば、構成Aに従って配置された電極に合わせて構成された8分の誘発TES波形が対象者に経皮送達されてよく、その後、「誘発」TES波形の終了後、数分から数十分(又は数時間)を経て、より短い(即ち、2分未満、又は5分未満の)TES波形を通して作用を「再投入」又は「再誘発」する第2のTES波形が選択される。この再誘発TES波形は、必要に応じてユーザが再使用することを意図されている。作用を選択する為にユーザがスマートフォンアプリケーションを使用する一実施形態では、第1のセッションの終了後、特定の時間が経過してから、第1の誘発TES波形と適合する「再誘発」(再投入)TES波形をユーザがトリガできるように、ユーザインタフェース要素が対象者に対して自動的に提示されてよい。
【0107】
「再誘発」TES波形又は「再投入」TES波形を誘発する幾つかの方法は、ユーザが誘発セッションと再投入セッションとの間(或いは、複数の再投入セッションの間)に電極を取り外せるようにすることと、任意選択で、再投入セッションの時間になったときに電極を配置することをユーザに気づかせることと、が可能である。再投入セッションのタイミングは、単に時刻に基づいて決定されてよく(即ち、開ループ)、或いは、生理学的データ、行動データ、認知データ、及び/又は他のデータと、誘発された認知作用が切れて「再投入」TES波形が必要になるタイミングを決定する適切なアルゴリズムと、に基づいて自動的にトリガされてもよい。
【0108】
構成Aに関連付けられた認知作用を誘発する有効TES波形の例として、パルス状2相刺激波形(即ち、1周期の間に両方向の刺激を有する波形)を使用できるが、パルス状単相刺激波形及び交流電流刺激波形も、少なくとも幾つかのケースでは同様の認知作用を誘発することに有効でありうる。
【0109】
パルス状2相刺激は、構成Aに関連付けられた認知作用を30%から50%のデューティサイクルで誘発する場合に有効でありうる。例えば、百分率直流分が30%から50%であり、卓越周波数が750Hzから6kHzであり、最小ピーク電極強度が周波数依存であって3mAから16mAの範囲にある。構成Aの認知作用を誘発することに有用なピーク強度は、TES波形の卓越周波数にほぼ直線的に比例すると考えられる。例えば、構成Aの認知作用を個人全体に対して確実に誘発する為に必要なピーク電流は、750Hzでは少なくとも3mA、4kHzでは少なくとも7mA、10kHzでは少なくとも16mAであってよい。一般に、構成Aの認知作用を確実に誘発する為には、少なくとも3mAのピーク電流が有用である。一般に、周波数が高くなるにつれて、作用を体感する為の電流が増える可能性がある。しかしながら、デューティサイクル及び百分率直流分の有効範囲は、刺激周波数の関数として変化しない可能性がある。
【0110】
高電圧(例えば、少なくとも50V)及び大電力(例えば、少なくとも700mW)の装置の場合は、卓越周波数成分が6kHzより高い、不快ではない有効波形もある。しかしながら、作用に必要な周波数と電流はほぼ比例するため、これらの作用を小電力装置で達成できるのは、皮膚インピーダンスが比較的低い(例えば、10kΩ以下)、人口のうちの20%未満と推定されるわずかな割合の人々だけである。実現可能であれば、約6kHzより高い(即ち、6kHzから25kHz、又は6kHzから15kHz、又は10kHzから15kHzの)卓越周波数からなるTES波形も、構成Aの作用を誘発することに有効である。周波数が高くなるほど高い電流強度が必要である為、この高い周波数範囲で構成Aの作用を誘発する為には、約7mAより高い(好ましくは、約10mAより高い)ピーク電流が必要である。
【0111】
(蓄積された容量電荷を減らして、不快さを減らし、副作用を緩和する)パルス間で短絡するように構成された装置の場合、神経刺激の従来の範囲のうちの低周波域における(即ち、約80Hzから150Hzの)卓越周波数からなるTES波形が、構成Aに関連付けられた有効な認知作用をもたらすことが可能であり、これは、おそらくは顔面神経の刺激によるものである。この低周波域の卓越周波数からなるTES波形の場合、デューティサイクル及び百分率直流分は、最適には、約30パーセントを下回る。
【0112】
上述されたように、一般に、(例えば、10秒未満の間、最適には3秒未満の間に発生する)有効周波数範囲内の刺激周波数の急速ランプが、構成Aに関連付けられた、より強い認知作用を誘発することが可能である。快適さを改善する為には、周波数をシフトしながら、対象者にとって不快でない周波数範囲の下端又は下端近くでピーク電流強度を使用することが一般に好ましい。周波数のシフトを繰り返すことも、強力な認知作用を誘発することに有利となる場合がある。例えば、3秒以下の間に2kHzから6kHzにシフトとして6kHzに戻ることは、構成Aに関連付けられた認知作用の強度を改善する為の有効なTES波形特性であってよい。
【0113】
構成Aに関連付けられた作用を誘発する一例示的有効TES波形は、40%のデューティサイクル、38%の直流分、10mAのピーク強度(これは、任意選択で、波形の過程にわたって徐々に増え、例えば、8mAから10mAにかけて増える)、及び4kHzと6kHzとの間でシフトする卓越周波数により、5分から15分持続する。
【0114】
一般に、構成Aに関連付けられた認知作用のレベルを短期的に上げることは、ピーク電流を増やすこと、デューティサイクルを増やすこと、及び刺激周波数を下げることを含めて、1つ以上の刺激パラメータを過渡的且つ急速に変調することによって達成可能である。しかしながら、百分率直流分を変調することは、構成Aによって誘発される認知作用の強度を増やす確実な方法ではない。認知作用の、所望の短期的増加を達成する為には、理想的には1秒以内に発生するTES波形パラメータを変調することが必要であるが、5秒までであれば、ある程度有効となりうる。一般に、被変調パラメータの有効範囲内にとどまりながら、認知作用の短期的増加を引き起こす変調を送達する為には、TES波形パラメータの、反対方向の変調を先行させる(任意選択で、より徐々に発生させる、即ち、10秒以上から数分又はそれ以上にわたって発生させる)ことが必要になる。一般に、電流又はデューティサイクルを急速に増加させるには、必要な大電力を素早く集めることが可能な、応答性のよいTES電流制御回路が必要である。
【0115】
構成Bに関連付けられた「弛緩」認知作用を誘発する有効なTES波形は、(例えば、1周期中に両方向の刺激を有する)パルス状2相刺激波形又はパルス状単相刺激波形を使用してよいが、少なくとも幾つかのケースにおいて同様の認知作用を誘発することに関しては交流電流刺激波形も有効である場合がある。パルス状2相刺激は、30%から60%のデューティサイクル、85%から100%の直流分(100%の直流分は単相パルス状刺激波形に相当する)、5kHzから50kHzの卓越周波数(例えば、5kHzから25kHz、最大50kHz等)、及び1mAから20mAのピーク電流強度(ただし、場合によっては、20mAより高いピーク強度が、ユーザにとって不快でなければ有効となる可能性もある)で、構成Bに関連付けられた認知作用を誘発することに有効でありうる。
【0116】
ピーク電流を下げたり上げたりするサイクルを含むTES波形が、構成Bに関連付けられた認知作用を誘発することに有利である場合がある。例えば、そのようなサイクルは、3〜4分の高いピーク強度(例えば、15mA)の期間と、その後に、過渡的減少を経て、10秒から1分の低いピーク強度(例えば、4mA以下)の期間とを含んでよい。例えば、電流強度を下げて上げるサイクルを約10分の期間にわたって少なくとも3つ有するTES波形が、構成Bに関連付けられた認知作用を誘発することに有効である。一般に、構成Bに関連付けられた強力な認知作用を誘発する別の方式として、ピーク電流時に約±1000Hzの卓越刺激周波数のシフト又はランプを行う方式がある。
【0117】
有効強度の漸増が組み込まれたTES波形が、構成Bに関連付けられた認知作用を強化することに有利な場合がある。有効強度を上げることは、ピーク電流を増やすこと、刺激周波数を下げること、デューティサイクルを増やすこと、百分率直流分を増やすこと、又はこれらの任意の組み合わせによって可能である。
【0118】
上述のように、(電極のキャパシタンス放電を含む)短絡が有効化されたTESシステムからTES波形が送達されることは、構成Bに関連付けられた作用の誘発に必要な百分率直流分が高いことから、有利な特性でありうる。直流分が大きいことは、典型的には、刺激の電荷不平衡がより大きいことを意味し、従って、短絡モードで放電すべきキャパシタンス負荷がより高いことを意味する。しかしながら、場合によっては、構成Bに関連付けられた認知作用が、短絡無しで(例えば、パラメータが2〜4kHz、7〜8mA、80%デューティサイクル、15%直流分であるTES波形で)誘発される場合がある。
【0119】
構成Bに関連付けられた作用を誘発する一例示的有効TES波形は、38%のデューティサイクル、100%の直流分(単相パルス)、16mAのピーク強度(これは、任意選択で、数分間の波形の過程にわたって徐々に増え、例えば、14mAから16mAにかけて増える)、7kHzの卓越周波数(これは、任意選択で、波形の継続時間の間に最大約1kHzの幅で上方及び/又は下方にシフトする)、及び波形の継続時間の間に断続的に11mAから下がったり戻ったりするランプを使用する。
【0120】
構成Bに関連付けられた作用を誘発する別の例示的有効TES波形は、44%のデューティサイクル、95%の直流分、13mAのピーク強度(これは、任意選択で、数分間の波形の過程にわたって徐々に増え、例えば、10mAから13mAにかけて増える)、7.5kHzから8.5kHzの範囲で変調する卓越周波数、及び波形の継続時間の間に断続的に4mAから下がったり戻ったりする強度ランプを使用する。
【0121】
一般に、構成A及び構成Bに関連付けられた作用を誘発するTES波形の継続時間は、少なくとも3分である(ただし、本明細書に記載の「再投入」波形はもっと短くてよく、例えば、数十秒以上であってよい)。
【0122】
一般に、構成A及び構成Bに関連付けられた作用を誘発するTES波形の不快さは、対象者が電流に慣れることが可能であるようにゼロ(又はほぼゼロ)電流から有効電極強度まで徐々にランプ状に増やすことによって改善されることが可能である。
【0123】
一般に、構成A又は構成Bに関連付けられた作用を誘発するTES波形は、有効範囲内でのパラメータ値間のシフト又はランプを含んでよい。構成A又は構成Bの為のTES波形の強度を数分間にわたって漸増させること(例えば、10分にわたって8mAから10mAまで漸増させること)は、安定的且つ/又は長く持続する作用を誘発することに有利であり、これは、対象者が、初期には副作用に非常に敏感であるが、時間が経つと副作用に適応する傾向がある為である。
アプリケータ
【0124】
上述の、対象者の認知状態を修正する方法は、様々な装置によって実施可能であり、例えば、TESアプリケータによって実施可能である。一般に、TESアプリケータは、TES用のハードウェア及びソフトウェアのシステムを含んでよく、例えば、主電源から安全に隔離されたバッテリ又は電力供給部と、TESイベントをトリガすることと、各電極の刺激の波形、継続時間、強度、及び他のパラメータを制御することと、を行う制御用のハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアと、頭皮との電気的結合にゲル、塩類溶液、又は別の材料を使用する1つ以上の電極対と、を含んでよい。TES用のハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアに含まれる構成要素の数は、これより多くても少なくてもよい。TES用のハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアは、様々な構成要素を含んでよい。
【0125】
本明細書に記載のTESアプリケータの実施形態は、粘着式の自己完結型経皮電気刺激(TES)システムであってよい。少なくとも幾つかの実施形態では、粘着式の自己完結型TESシステムは、バッテリ給電式であり、制御装置と無線で通信し、導電性ワイヤによってのみ結合される2つの独立アセンブリ、即ち、マスタアセンブリとスレーブアセンブリとに分離可能である。マスタアセンブリは、電流送達を管理するマイクロコントローラと、バッテリと、マイクロコントローラと、無線通信モジュールと、他の電子回路と、粘着式電極アセンブリとを含む。スレーブアセンブリは、粘着式電極アセンブリを含み、マルチコアワイヤで(のみ)マスタアセンブリとつながれており、対象者のTESセッションの準備が整うまで、マスタアセンブリのケースに収容される。TESセッションではまず、対象者が、スレーブアセンブリをマスタアセンブリハウジングから切り離し、両方の粘着式電極を自分の頭部に配置する。電極アセンブリは、交換可能且つ/又は使い捨てである。
【0126】
図7Aは、本明細書に記載のTESアプリケータの一例を示す。
図7Aでは、TESアプリケータは、一対の電極、即ち、TESアプリケータのボディ603と直接結合されている第1の電極601と、アプリケータのボディ603とケーブル又はワイヤ604で接続されている第2の電極606と、を含む。これらの電極は、交換可能/使い捨てであってよい。様々な形状の電極607を、再利用可能な同じTESアプリケータ装置で使用することが可能である。この装置は、コンパクト(ロープロファイル)であり、非常に軽量であり、対象者が装着することが可能であり、例えば、対象者の頭部や顔面に装着することが可能である。
【0127】
図7Bは、アプリケータの別の例であり、第1の電極701が本装置のボディ703に取り付けられている。この電極は、ボディ703に取り外し可能に取り付けられてよい(702)。本装置のボディ703には第2の電極(正面及び背面が
図7Cに示されている)も接続されてよく、第2の電極は、電極接触部706及び粘着部705を含む。第2の電極は、第2の電極を本装置のボディに電気的に接続するコード又はワイヤ708を含む。
【0128】
図7Dは、軽量のウェアラブルアプリケータの別の変形形態のボディ部分の様々な図(上面図、底面図、側面図、及び正面図)を示し、この装置に電極を取り付けることが可能である。この例は、対象者のこめかみ部位に接続することに特に有用であって、アプリケータハウジングは薄く、本装置の電子的構成要素のほとんどを囲む。
【0129】
本明細書に記載のTES方法及び様々な構成は、適切なTES波形を経皮送達できる任意のTESシステムで使用されてよい。一般に、TESシステムでは、粘着式電極、及び/又は、ウェアラブル装置(即ち、帽子(キャップ)、ヘッドバンド、ネックレス、めがねフレーム、又は他の、電極が対象者の皮膚と物理的に接触することを可能にするフォームファクタ)によって定位置に保持される電極を使用してよい。一般に、TESシステムの経皮電極の組成物は、皮膚と接触するヒドロゲル、電流を電気化学電流(即ち、荷電イオンによって搬送される電流)に効率的に変換するAg/AgCl
2成分、電極の面全体にわたる電流の均一性を向上させる層または他の構造、皮膚と安定的に接触している電極をより確実に保持する粘着剤(例えば、親水コロイド)、電流を経皮送達する、塩類溶液に浸漬されたスポンジ組成物、又は他の、経皮電気刺激の分野の当業者には知られている経皮電極技術を含んでこれらに限定されない群から選択される1つ以上の特性を有してよい。一般に、TES制御装置の電力供給部、電流制御装置、及び他の電子回路(例えば、安全回路、及び任意選択で無線通信チップセット)は、手持ち式、卓上、又は他の可搬型制御システム内にあってよく、一方又は両方の電極に直接接続されるか、ワイヤで電極に接続されるか、他の方法でユーザによって着用可能である(又は別の装着される構造物(例えば、ヘッドバンド又はアームバンド、ポケット、ネックレス、イヤリング、又はめがねフレーム)の中に配置される)ウェアラブル構成要素であってよく、或いは、完全に使い捨てであって本システムの1つ以上の経皮電極と一体化されてよい。
【0130】
例えば、本発明の実施形態は、構成A及び/又は構成Bに従う電極を使用して、経皮電気刺激システムから対象者へ適切なTES波形を送達することにより、上述の認知作用を誘発する方法を含む。一般には又、本発明の実施形態に含まれる各システムによって、TES装置が、処理装置によって実行された場合に、アノード(又は等電位アノードのセット)とカソード(又は等電位カソードのセット)との間でTES波形を経皮送達させる、処理装置によって実行可能な命令セットを保存する非過渡的コンピュータ可読記憶媒体に加えて、電力供給部(例えば、バッテリ)と、電流制御及び安全装置と、処理装置(即ち、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラなど)と、アノード及びカソードと接続する、導電性のコネクタ及びケーブルと、任意選択で、無線通信モジュールと、を含む。
【0131】
有利な認知作用を誘発するには、10mAを超える刺激強度が使用されるとよい。しかしながら、TES用電極は、少なくとも幾つかのケースでは小さいことが必要である(これは、例えば、電極電界の、神経系の標的部分への改善された局所化を達成する為であり、或いは、頭髪で覆われていて電極の配置に最適とは言えない場所の付近が電極位置になる為であり、或いは、皮膚が敏感な場所が近くにある為であり、例えば、耳の後ろの乳様突起部がそうであり、或いは、筋肉がけいれんしやすい場所が近くにあるためであり、例えば、目の周囲の場所がそうである)。電極が大きい場合に比べて、小さな電極を使用するTESシステムの実施形態は、対象者と接触する表面積が小さい為にインピーダンスが大きい。更に、顕著な残留物(或いは、塩類溶液に浸漬されたスポンジ電極の場合に起こる湿り気)を残さずに身体と電気的に接触する為の、ヒドロゲル(粘着剤ヒドロゲルを含む)又は他の組成物からなる電極は、他の必要な特性(例えば、電荷不平衡刺激からのpH変化を緩衝する容量)を維持しながら電極インピーダンスをいかに低くできるかに関しては、限定される可能性がある。
【0132】
周波数を(例えば、数百Hzから低めの数十kHzまで)上げた場合の組織インピーダンスの既知の低下、並びにインピーダンスに対する他の波形特性の影響にかかわらず、有利な認知作用を誘発する為の、本明細書に記載のTES装置及び電極構成のシステムインピーダンスは、概ね1kΩから25kΩである。インピーダンス値が10kΩを超えることは珍しくはない。従って、オームの法則に従って、3mAを超える(又はケースによっては最大15mA及び15mA超の)ピーク電流を送達する為には、高い供給電圧が必要である。
【0133】
従って、本明細書に記載のTESシステムは、高電圧電気刺激を達成する電子回路を内蔵し、ここで高電圧は、概ね10V超であって、任意選択で15V超、20V超、30V超、40V超、50V超、55V超、60V超、65V超、又は75V超である回路電源電圧に相当する。高電流刺激を送達する一装置は、ピーク電極の送達を可能にする為に、且つ、変圧器(バックブースト又は他)がバッテリ又は他の電源から低電圧出力を取得し、指定された電力レベルを提供するのに必要な高電圧レベルを提供する為に、且つ、他の電子回路構成要素が高電圧下で予想通り且つ確実に動作するように設計されるように、(概ね1C以上であり、好ましくは3C以上、5C以上、又は10C以上である)急速放電特性を有する電源(一般的にはバッテリ)を含む。
【0134】
これまでの、神経系を標的とする経皮電気刺激システムで一般的に使用されてきた直流電流刺激では、2mAを超える電流(特に3mAを超える電流)がいらいら、痛み、又は組織損傷を引く起こすことがよくあった。そのため、神経変調を誘発する高電圧経皮電気刺激システムは、これまで検討されてこなかった。
【0135】
本明細書に記載の高電圧TESシステムが安全に動作し、ユーザに対してショック、やけど、いらいら、又は他の不快さや組織損傷を誘発させないようにする為に、特に注意を払わなければならない。一般に、TESシステムの電気回路及びファームウェア構成要素に安全要素が組み込まれてよく、それらは、最大瞬時出力電力、最大瞬時出力電流、最大時間平均出力電力、最大時間平均出力電流、制御装置の最大動作温度、バッテリの最大動作温度、最小バッテリ供給電圧及び/又は容量、及び他の、送達される刺激が安全仕様を満たすようにする特性を含み、これらに限定されない。
【0136】
本発明の実施形態では、ユーザがウェアラブルアセンブリを着用すると、電極の位置が、構成に必要な位置又はその付近になるように、電極の位置がウェアラブルアセンブリによって拘束される。或いは、ユーザが電極を特定の構成にふさわしい位置に配置することが、形状又は他の特性(例えば、触知できる特性)によって誘導されてよい。ウェアラブルアセンブリは、様々な形式をとってよく、例えば、帽子(ハット)、ヘッドバンド、ネックレス、アラウンドイヤーフォームファクタ、又は別の、電極位置を拘束するウェアラブルシステムの形式をとってよく、これらに限定されない。任意選択で、構成A又は構成Bに従って電極位置を拘束するウェアラブルアセンブリが、バッテリ又は他の電源、並びにTES波形を電極に送達するプログラマブル制御装置も拘束する。当業者であれば理解されるように、ウェアラブルアセンブリには様々な有用な形態があり、本発明の実施形態は、任意のそのようなウェアラブルアセンブリとともに使用されるように考えられている。
【0137】
一般に、本明細書に記載の装置は、対象者上の、構成A及び構成Bの両方にふさわしい位置に配置される2つの電極(例えば、カソード又はカソードセット)を含んでよく、更に、単一アノード(又は等電位アノード電極のセット)を構成A又は構成Bのカソードに選択的に接続するスイッチ(電気式スイッチ、機械式スイッチ、光学式スイッチなど)を含み、このスイッチは更に、カソード構成と関連付けられた認知作用を誘発する適切なTES波形を送達するように構成されている。
【0138】
図8は、TESシステムの構成及び使用法を示す概略図の一変形形態を示す。
図8は、TESセッションの構成、作動、及び終了の一例示的ワークフローを示している。TES装置又は無線接続された制御装置に対するユーザ入力800を使用して所望の認知作用が選択(801)されてよく、この選択によって、所望の認知作用を達成する為の電極構成セットアップ802が決定され、セットアップ802は、電極又は電極を収容するTESシステムの選択と、電極の正しい位置の決定と、を含む。一実施形態では、ユーザに対する構成命令803が、ユーザインタフェース経由で与えられる命令と、ユーザに与えられたキットと、TES電極をユーザの身体の適切な部分に接触させるように構成されたウェアラブルシステムと、ユーザによって(例えば、これまでのTESによる体感に基づいて)自動的に行われる電極の選択及び位置決めと、TESに習熟した開業医によって与えられる支援と、他の手段を経由して与えられる命令と、を含んでこれらに限定されないリストから選択された1つ以上の方法で提供される。
【0139】
これらの命令又は知識に基づいて、ユーザ又は他の個人又はシステムが身体上に電極を位置決めする(804)。実施形態によっては、電極が身体上に位置決めされた後、TESセッションが自動的に開始される(807)。別の実施形態では、TESセッションが開始される(807)前に、TESシステムによって電極のインピーダンスがチェックされる(805)。実施形態によっては、TESシステムによって電極のインピーダンスがチェックされた(805)後、TESセッションが開始される(807)前に、ユーザがTES装置を作動させる(806)。別の実施形態では、身体上に電極が位置決めされた(804)後に、ユーザがTES装置を作動させて(806)、TESセッションを開始する(807)。TESセッションが開始された後、次のステップは、指定された刺激プロトコルで電気刺激を送達する(808)ことである。実施形態によっては、ユーザがTESセッションの終了を作動させる(809)。別の実施形態では、刺激プロトコルが完了すると、TESセッションが自動的に終了する(810)。
【0140】
図9は、可搬型の有線TESシステム900の構成要素を示す。粘着式電極901が、コネクタ902及びワイヤ903を介して、TES制御装置904に接続されてよい。TES制御装置904は幾つかの構成要素を有しており、これには、バッテリ又は保護されたAC電力供給部905、ヒューズ及び他の安全回路907、メモリ908、マイクロプロセッサ909、ユーザインタフェース910、電流制御回路906、及び波形発生器911が含まれる。neuroConn DC刺激器(ノイロコン・ゲーエムベーハー(neuroConn GmbH)、イルメナウ、ドイツ)及びActivadose II(アクティバテック・インコーポレイテッド(Activatek Inc.)、ソルトレイクシティ、ユタ)が、ワイヤで電極に接続される、tDCSに使用可能な市販の可搬型システムである。inTENSity(商標)製品ライン(カレントソリューションLLC(Current Solutions LLC)、オースチン、テキサス)が、ワイヤで電極に接続され、固定干渉tACS用として構成可能な市販の可搬型システムである。他の市販システム又はカスタムシステムが、tACS、tDCS、tRNS、又は別の形態のTESを送達する可搬型の有線TESシステムとして使用可能である。
【0141】
図10は、粘着式又はウェアラブルなTES送達装置1000を含むTESシステムを示す。TES送達装置1000は、マイクロプロセッサによって制御される制御装置1009(例えば、Android又はiOSオペレーティングシステムを動作させているスマートフォン(例えば、iPhoneやSamsung Galaxy)、iPadなどのタブレット、ラップトップコンピュータ及びデスクトップコンピュータを含んでこれらに限定されないパーソナルコンピュータ、又は他の任意の好適なコンピュータ装置)と無線通信を行う。この例示的実施形態では、粘着式又はウェアラブルなTES送達装置1000は、対象者と皮膚接触する2つ以上の電極を、粘着剤、ユーザの身体の一部分に取り付けられるか装着される整形されたフォームファクタ(例えば、ヘッドバンド又はアラウンドイヤー「めがね」式のフォームファクタ)のうちの1つ以上により保持する。一例示的実施形態では、粘着式又はウェアラブルなTES送達装置1000は、構成要素として、バッテリ1001、メモリ1002、マイクロプロセッサ1003、ユーザインタフェース1004、電流制御回路1005、ヒューズ及び他の安全回路1006、無線用アンテナ及びチップセット1007、及び波形発生器1016を含む。マイクロプロセッサによって制御される制御装置1009は、構成要素として、無線用アンテナ及びチップセット1010、グラフィカルユーザインタフェース1011、TESセッションに関するフィードバックを与える1つ以上の表示エレメント1012、1つ以上のユーザ制御エレメント1013、メモリ1014、及びマイクロプロセッサ1010を含む。一代替実施形態では、TES送達装置1000に含まれる構成要素の数は、これより多くても少なくてもよい。当業者であれば理解されるように、TES送達装置は様々な構成要素から構成されてよく、本発明の実施形態は、任意のそのような構成要素とともに使用されるように考えられている。
【0142】
粘着式又はウェアラブルなTES送達装置1000は、無線通信プロトコル1008により、マイクロプロセッサによって制御されるシステム1009と二方向通信を行うように構成されてよい。本システムは、様々な形式のデータを無線で通信するように構成されてよく、そのようなデータとして、トリガ信号、制御信号、安全アラート信号、刺激タイミング、刺激継続時間、刺激強度、他の態様の刺激プロトコル、電極特性、電極インピーダンス、バッテリレベルなどがあり、これらに限定されない。通信は、当該技術分野で知られている方法を使用する装置及び制御装置により行われてよく、そのような方法として、RF、Wi−Fi、WiMax、Bluetooth(登録商標)、BLE、UHF、NHF、GSM(登録商標)、CDMA、LAN、WAN、又は別の無線プロトコルがあり、これらに限定されない。例えば、遠隔操作装置から送信されるパルス状赤外光も、無線通信形式の1つである。近距離無線通信(NFC)も、神経変調システム又は神経変調パックとの通信に有用な技術の1つである。当業者であれば理解されるように、本発明の実施形態とともに利用できる無線通信プロトコルは様々にあり、本発明の実施形態は、任意の無線通信プロトコルとともに使用されるように考えられている。
【0143】
粘着式又はウェアラブルなTES送達装置1009は、ユーザインタフェース1004を含まなくてもよく、制御装置1009から無線通信プロトコル1008を通してのみ制御される。一代替実施形態では、粘着式又はウェアラブルなTES送達装置1009は、無線用アンテナ及びチップセット1007を含まず、ユーザインタフェース1004を通してのみ制御される。当業者であれば理解されるように、代替のTESシステムは、電気刺激を経頭蓋的且つ経皮的に対象者に送達することが可能なまま、複数の構成を有するように設計されてよい。
【0144】
図21Aから
図27は、本明細書に記載のTESアプリケータ装置の一変形形態を示す。この例では、TESアプリケータは、粘着式の自己完結型TESシステムとして構成され、このシステムは、バッテリ給電式であり、遠隔制御装置と無線で通信し、導電性ワイヤによってのみ結合されるマスタアセンブリ(制御モジュールを内蔵し、電極が取り付けられたボディ)及びスレーブアセンブリ(第2の電極)を含む。マスタアセンブリは、電流送達を管理するマイクロコントローラ(制御モジュール)と、バッテリと、無線通信モジュールと、他の電子回路と、粘着式電極アセンブリとを含む。スレーブアセンブリは、粘着式電極アセンブリを含み、マルチコアワイヤで(のみ)マスタアセンブリとつながれており、対象者のTESセッションの準備が整うまで、マスタアセンブリのケースに収容される。TESセッションではまず、本明細書に記載の具体的な構成の為の命令に従って、対象者が、(変形形態によっては)スレーブアセンブリをマスタアセンブリハウジングから切り離し、両方の粘着式電極を自分の身体の適切な場所に配置してよい。電極アセンブリは、交換可能且つ/又は使い捨てであってよい。例えば、
図21A及び
図21Bは、TESシステムの一変形形態2301(
図21A)及びこのTESシステムの「分解」図(
図21B)の描画を示す。本システムは、スレーブアセンブリの電極アセンブリの構成要素を含み、それらは、剥離紙を剥がすと貼れる粘着フィルム2302、導電性粘着式電極2303、Ag/AgCl電流拡散器(及びpH緩衝器)2304、2305、2306、及び(例えば、成形スチレン又は加圧成形PETから作られた)係留式電極ベース2307である。スレーブアセンブリは、フレキシブル導電ワイヤ2308でマスタアセンブリに接続される。マスタアセンブリは又、電極アセンブリを有し、電極アセンブリは、剥離紙を剥がすと貼れる粘着フィルム2309、導電性粘着式電極2310、Ag/AgCl電流拡散器(及びpH緩衝器)2311、2314、2315、(例えば、成形スチレン又は加圧成形PETから作られた)係留式電極ベース2312、及びマスタアセンブリの制御モジュールに取り付けられて制御モジュールから電流を送達するコネクタを含む。
図22は、TESアプリケータ(「パック」)の様子を示しており、スレーブ電極2503アセンブリがマスタアセンブリ2501から分離されて、両者を接続するワイヤ2502でつながれている。
【0145】
TESアプリケータのボディは、任意の適切な材料から作られてよく、例えば、加圧成形PET又は射出成形スチレンから作られてよく、マスタアセンブリの再利用可能な制御モジュールエンクロージャ(「キーパー」)であってよく、これには、電源、無線通信、プログラマブル処理装置などの電気的構成要素が収容される。
【0146】
TESシステムの幾つかの構成要素の回路図が
図23から
図27に示されており、これらは、無線Bluetoothモジュール3902(
図23)、スマート電源スイッチ3901(
図24)、電流源3904(
図25)、バックコンバータ3903(
図26)、及びバーストコンバータ3900(
図27)を含む。LED、バッテリ電圧監視、プログラミングインタフェース、電源供給アクセス、電流源コネクタなどの為の回路は図示されていない。
【0147】
マスタアセンブリ及びスレーブアセンブリを有するTESアプリケータの有利な一特徴は、TESシステムを分離して、フレキシブルな導電性係留ワイヤでのみ接続することが可能な点であってよい。実施形態によっては、導電性係留ワイヤは、リボンケーブル又はマルチコアワイヤであってよい。従って、マスタ装置及びスレーブ装置の両方の電極アセンブリ同士が、マスタアセンブリの再利用可能な制御モジュールと電気的に結合される。導電性係留ワイヤは、使い捨ての電極アセンブリの一部であってよい。TES神経変調を対象脳部位に送達する為に、マスタ電極アセンブリ及びスレーブ電極アセンブリを頭部の適切な部分に粘着させることが可能なように、対象者(ユーザ)は、導電性係留ワイヤを必要に応じて展開してよい。この実施形態は、2つのアセンブリの相対位置が、2つのアセンブリをつなぐ導電性フレキシブルワイヤの長さによってのみ拘束される点が有利である。この実施形態は、電極の柔軟な位置決めが可能であり、これは、電極アセンブリが粘着式であり、小さく、複数の電極が頭部又は胴部と接触する場合に相対位置を拘束する大きなアセンブリ部分がない為である。
【0148】
TESセッションの為の電力は、小型のバッテリかスーパーキャパシタで十分供給可能である。TESシステムの主な電力消耗は、対象者の身体に送達される電流である。6mAという比較的大きなtDCS電流が30分間送達されたとしても、必要なのはわずか3mA時(mAh)であり、これは、可搬型バッテリ(例えば、市販の充電式の3.7V、150mAhのリチウムイオンポリマーバッテリ、重量は5グラム未満)で容易に達成可能である。電力要件に関しては、パルス状刺激プロトコルがより一層効率的である。短いTESセッションや低電流のTESセッションであれば、1つ以上のキャパシタ及び/又はスーパーキャパシタを組み込んだ実施形態が有用である(例えば、3.6Fのスーパーキャパシタは1mAhを供給する。これは6mAの直流電流を5分間送達する場合や更に長いパルス状刺激セッションに十分である)。バッテリ給電式TESシステムの他の電気的構成要素には更なる電力が必要になる場合があり、所与のTES継続時間及びプロトコルに対してバッテリ及びキャパシタの選択肢が通知される。
【0149】
スマートフォンやタブレットの音声ポート又は充電コネクタを使用して、TESシステムに電力及び/又は制御信号を供給することが可能である。有利な実施形態では、スマートフォン又はタブレットがもはやTESシステムに接続されない遅い時間でも電気刺激を送達できるように、スマートフォンやタブレットの音声ポート又は充電コネクタを使用して、TESシステムのバッテリ又はキャパシタの充電が行われる。実施形態によっては、クランク手回し充電システム又は1つ以上の太陽電池によって、TESシステムに電力が供給される。
【0150】
本明細書に記載のシステム及び方法では、ユーザは、コメンタリ、タグ付け、フィードバック、及び/又はソーシャルシェアリングを行う為に経皮電気刺激波形に「ブックマーク」を付けることが可能であってよい。経皮電気刺激を受ける体感は、時間とともに拡大する為、波形は、体感が数秒から数分の間に変化するように設計されてよい。例えば、特定の時点で眼内閃光を送達してよく、或いは、刺激のパラメータを変化させてよい(例えば、ピーク強度、刺激周波数、パルス幅、又は他のパラメータを、一定時間をかけてランプ状に変化させてよい)。これによって、対象者に送達される神経変調の変化が誘発され、これによって、対象者において誘発される認知作用の特性又は強度が修正されることが可能である。ユーザインタフェースは、対象者が、波形中のある時点と、コメント、格付け、タグ、強調、又は他の、その経皮電気刺激のユーザによる体感に関する何かを伝達する情報とを関連付けることを可能にしてよい。
【0151】
又、本明細書に記載の非過渡的コンピュータ可読記憶媒体に記憶される、遠隔処理装置(具体的にはスマートフォンなど)によって実行可能な一連の命令が、遠隔処理装置を内蔵するコンピュータ装置によって実行されると、ユーザが、コメント、格付け、タグ、強調、又は他の、その経皮電気刺激のユーザによる体感に関する何かを伝達する情報を生成することを可能にするユーザインタフェースが提示されるようにし、その情報を、経皮電気刺激波形と自動的に関連付ける。一実施形態では、ランキング及びタグ、並びに、ユーザと、波形と、波形中の、コメントが行われた時刻と、に対応するIDを含むコメントの為のデータベース入力が行われる。例えば、ユーザが刺激についてのコメントを生成できるように、ユーザインタフェースが、データ入力フィールド(例えば、以前に入力されたタグに基づく「自動補完」機能が組み込まれた文字フィールド)、ボタン、プルダウンメニュー、又は格付けシステム(1つ以上の星を選択する)をタッチスクリーンディスプレイ上に含んでよく、ユーザが生成したコメントは、波形と、波形中の時刻とに、自動的に関連付けられる。
【0152】
この実施形態の有利な特徴の1つは、複数のユーザ(全てのユーザ、人口統計学的に、心理学的に、ソーシャル的に(例えば、フェイスブック上の友達で構成される)、又は他の方法で定義されたユーザの集合)にまたがって、且つ、特定のユーザが、同じ経皮電気刺激波形を使用するセッション間で体感を比較できるように、複数のセッションにまたがって、コメント、タグ、格付け等を蓄積できることである。一実施形態では、非過渡的コンピュータ可読記憶媒体に記憶される、遠隔処理装置(具体的にはスマートフォンなど)によって実行可能な一連の命令が、遠隔処理装置を内蔵するコンピュータ装置によって実行されると、コンピュータ装置上のディスプレイ(又は、コンピュータ装置に通信可能に接続された、即ち、画面分割又はApple TVによるディスプレイ)が、選択された波形に関するユーザのコメンタリを、複数のユーザ及び/又はセッションにまたがって表示するようにし、ユーザのコメンタリは、波形のうちの、ユーザがTESセッション中にまだ体感していない部分に関連付けられたコメンタリを含む。従って、ユーザは、波形のうちの非常に目立つ部分、又は他の観点で面白い(又は面白くない)部分の予想を形成する(即ち、「眼内閃光に注意」或いは「ここで強度を上げる」)。コメンタリ及びフィードバックの表示は、定量的であってよい(例えば、TES波形の特定部分における時刻又はフィードバック密度の関数としての、波形の複数のセクションにわたる平均格付けを示すヒートマップであってよい)。利用可能なフィードバックの量、及び/又は表示されている波形の時間的スケールに応じて、様々なメタデータが自動的に表示されてよい。
【0153】
同様に、生理学的センサなどの、TESユーザが着用しているか、他の方法でTESユーザについて調べるセンサ(例えば、電気性皮膚反射、体温、心拍数、心拍変動、呼吸率、瞳孔拡張、身体の動き、コルチゾール値、アミラーゼ値を測定するセンサ)からのメタデータを、波形とともに時間に対して並べることが可能である。
【0154】
本明細書に記載の、TES波形を適応させるシステム及び方法はいずれも、使用中のインピーダンス及び/又はキャパシタンスを考慮することが可能である。
【0155】
一般に、TES波形は、セッション中の(又は複数セッションにまたがる)電極及び/又は皮膚の予想されるインピーダンス変化を考慮することが可能である。劣化しつつある電極は、一般にインピーダンスが高くなり、電極−皮膚表面の全体にわたって電流が不均一になる可能性がある(これによって、電極強度の境界で皮膚の不快さが高まる可能性がある)。これに対して、数分にわたるTESセッションの間に、組織(皮膚)のインピーダンスは一般に低下する。組織(皮膚)のインピーダンスは周波数に依存することが知られている。一般に、交流刺激又はパルス状刺激の周波数が高いほど、周波数が低い場合に比べてインピーダンスが低くなる。ユーザの組織の周波数依存性は、経験的に推定、又は実験的に検査することが可能である。
【0156】
一般に、本明細書に記載の構成の為のTES波形は、周波数、強度、デューティサイクル、波形形状、又は他の波形パラメータを変更することによって変化する、電極及び組織の電気的特性を補償することが可能である。
【0157】
前もって(例えば、ユーザ又は他のユーザからの履歴データから)インピーダンスのチェック又は推定を行うことにより、所望の認知作用を誘発する神経変調の為の、有効であって不快でない経皮電気刺激を送達できるような波形又は電極構成(例えば、組成、サイズ、及び/又は位置決めを含む)を選択することが可能である。
【0158】
一実施形態では、ユーザの電気的特性(例えば、周波数に依存する皮膚インピーダンス)を使用して、TES波形の特性を自動的に変更することが可能である。ユーザの組織の電気的特性の初期(刺激前)変化及び刺激で誘発された変化の両方が、快適さ及び有効性の為の波形の選択及び/又は調節の指針として役立ちうる。
【0159】
本システムは、ユーザのインピーダンス及び/又はキャパシタンスを測定してデータをとることを一度又は繰り返して行うことが可能である。繰り返しの測定は、一定の間隔で行われてよく、ウェアラブルTESシステム又はウェアラブルTESシステムと通信可能に接続された制御装置(例えば、TESシステムと無線で通信するスマートフォンやタブレット)のユーザインタフェースを介した、ユーザ又はサードパーティによる選択に対する応答として行われてもよい。測定されたインピーダンス及び/又はキャパシタンスのデータは、今後の装置動作を改善する為に有利に保存される。ウェアラブルTESの機械可読コンピュータメモリ構成要素にローカルに保存されるインピーダンス及び/又はキャパシタンスのデータは、その装置の動作を改善する為の診断情報として有用となりうる。測定されたインピーダンス及び/又はキャパシタンスのデータは、ウェアラブルTESシステムから、有線または無線の通信プロトコルにより、コンピュータ、スマートフォン、タブレット、専用コンピューティング装置、又は他のコンピュータ化されたシステムの機械可読コンピュータメモリ構成要素に転送されて保存されてもよい。インピーダンス及び/又はキャパシタンスのデータを実時間又は非同期でインターネット経由でリモートサーバに送信することは、装置の快適さ及び動作の改善の為に、多くのユーザ及びTESシステムからのデータを自動的に保存して統合することが可能である点で有利である。
【0160】
TESシステムの有利な実施形態は、インピーダンス及び/又はキャパシタンスを測定する電気回路を含み、これらのデータを、ウェアラブルTESシステムの外部にある機械可読ハードウェア(インターネットを介して接続されたリモートサーバを含む)に送信し、ユーザ、及びハードウェア構成要素バージョン(例えば、電極)を含むメタデータを測定結果と関連付ける。メタデータは、地理データ(即ち、TESシステム、又はTESシステムの独立したハードウェアである制御装置(例えば、スマートフォンやタブレットコンピュータ)に内蔵されたGPSシステムから収集されたデータ)も含んでよい。地理データは、インピーダンス及び/又はキャパシタンスの値を、温度、湿度、及び他の、電極及び/又は人間の組織の電気的特性に作用しうる周囲因子と関連付ける為に使用されてよい。
【0161】
対象者の認知状態を修正する為に本明細書に記載のように動作するTESアプリケータ及びシステムの例を、
図11から
図15Bに示す。
【0162】
例えば、
図11は、本明細書に記載のTES刺激を受けた複数の対象者が知覚した時間長を実際の時間長で割った比の、対象者全体での平均を示したものである。電気刺激の前(
図11の左側のデータ点)では、比が約1であり、これは、対象者が時間の経過を正確に推定していることと一致している。刺激中には、対象者は、側方電極が対象者の右側に配置される構成1に従って配置された電極を通して送達された最大電流強度1.0mAの経頭蓋直流電流刺激を受けた。矩形の1.3”×2.1”PALS(登録商標) Platinum電極(アクセルガードマニュファクチュアリングカンパニーリミテッド(Axelgaard Manufacturing Co., LTD)、部品番号891200)がアノード(106)として動作し、正方形の2”×2”電極(アクセルガードマニュファクチュアリングカンパニーリミテッド(Axelgaard Manufacturing Co., LTD)、部品番号UF2020)がカソード(105)として動作した。結果として、刺激中及び刺激後、対象者は、時間がゆっくり経過したと推定した。対象者が推定した平均時間長は、実際に経過した時間長の約75%であった(
図11の中央のデータ点)。同様に、構成2(両電極が対象者の右側に配置される構成2に従って配置された電極を通してTESが1.5mAで送達された。矩形の1.3”×2.1”PALS(登録商標) Platinum電極(アクセルガードマニュファクチュアリングカンパニーリミテッド(Axelgaard Manufacturing Co., LTD)、部品番号891200)がアノードとして動作し、円形(直径約1”)Little PALS(登録商標) ECG電極(アクセルガードマニュファクチュアリングカンパニーリミテッド(Axelgaard Manufacturing Co., LTD)、部品番号SEN5001)がカソードとして動作した)を使用した刺激を受けた対象者が示した、刺激中及び刺激後の時間経過の平均推定値は、実際に経過した時間長の約85%であった(
図11の右側のデータ点)。これらの結果は、構成1及び2のTES刺激が、時間が早く経過するという主観的知覚を誘発し、知覚の特性は集中、注意、及びよどみない流れの認知状態に対応することを示している。
【0163】
図12に示されるように、構成2を1.5mAで使用する直流電流TESでも、結果として、作業記憶課題の成績が大幅に向上した。別々の3日間における別々のセッションで、対象者は、TES刺激又はシャム刺激を受けながら、「nバック」(但しn=2)課題を実施した。nバック課題は、作業記憶を深く究明するものであり、知的機能、注意、リテラシー、及び教育の成功と密接にリンクしている実行機能システムである。作業記憶は、トレーニングで容易に改善されるものではなく、このことは、作業記憶を改善するTESのシステム及び方法が対象者の知的能力の改善につながる可能性があることを示唆している。試行を繰り返す中で、より高い(例えば、3mAの)強度を使用した対象者において、より安定した効果が見られた。
【0164】
図13は、100回試行nバックセッションにおける試行回数の関数としての、対象者全体の平均誤り率を示す。構成1を使用するTESを受ける対象者が、誤り率が約10%という、シャム「S1」刺激を受ける対象者と同じベースラインレベルの成績を示した。これに対して、構成2のTESを使用する刺激を受ける対象者は、誤りが著しく少なく、それは特にnバックセッションの最初の約50回の試行において顕著であった。これらの結果は、1.5超(そして、より安定的には3mA超)の強度を使用する直流電流TES刺激がnバック課題の成績を著しく改善し、これは、刺激中の作業記憶の強化と一致することを示している。これに対して、低い(1mAの)強度のセッションでは、nバックの成績に関して、シャム「S1」刺激に比べて何の効果もなかった。
【0165】
これは、例えば、構成3(3〜3.5mAの強度)を使用した場合にも見られた。この例では、TESにより、エネルギ、集中、及び気分が高まった。エネルギレベルが増大し、集中が高まり、気分が改善されることは、生産性、活動状態、及び幸福度を高める上で、認知状態における非常に望ましい変化である。別々の3日間における別々のセッションで、対象者は、TES(構成1)刺激、TES(構成2)刺激、TES(構成3)刺激、シャム「S1」刺激、又はシャム「S2」刺激を受けた後のエネルギ、集中、及び気分の主観的知覚を評価する調査を完了した。
【0166】
図12及び
図13は、エネルギ、集中、及び気分に関する平均(±SEM)調査結果を、刺激前のベースライン調査に対して正規化したものを示しており、スコアが高いほど、エネルギレベルが増大し、集中が高まり、気分がよくなったことを示している。なお、シャム刺激の0を超える調査結果は、プラセボ効果に相当するものと考えられる。シャム「S1」刺激を基準にすると、構成1のTESは、集中においては中程度の高まりを誘発したが、エネルギ又は気分には有意に作用しなかった(
図12)。シャム「S1」刺激を基準にすると、構成2のTESは、対象者においてエネルギ及び集中の実質的な高まりを誘発したが、気分には有意に作用しなかった(
図12)。シャム「S2」刺激を基準にすると、構成3のTESは、集中及び気分が改善されたという主観的報告につながったが、エネルギレベルに関する主観的報告には有意に作用しなかった(
図14)。これらの結果は、構成1セッションは、対象者の集中をわずかに高めるが、対象者の集中又は気分には作用せず、TES構成2セッションは、対象者のエネルギ及び集中を高めるが、対象者の気分には作用せず、TES構成3セッションは、対象者の集中及び気分を高めるが、対象者のエネルギには作用しないことを示している。強度を高め、周波数(並びに上述のDCオフセット及びデューティサイクル)を制御すると、実質的に一層安定した作用が得られた。
【0167】
図15A及び
図15Bは、心拍変動に対するTESの作用を調べたものである。心拍変動(HRV)は、心拍間隔の変動を測定したものであり、自律神経系の働きの高感度アッセイと見なされている。別々の2日間における別々のセッションで、対象者は、構成1又は構成2のTESセッションの前、セッション中、及びセッション後にパルスセンサシステムを装着した。
図15A及び
図15Bは、構成1(
図15A)又は構成2(
図15B)のTESセッションを受けた対象者全体のHRVのフーリエ変換の平均を示している。いずれの形式のTES刺激においても、誘発されたHRVの高まりは周波数に固有ではなかった。これらの結果は、構成1又は構成2のTESセッションが心拍変動の高まりを誘発することを示しており、これらの形式の経頭蓋電気刺激が自律神経系を制御することに有効であり、従って、脳内外の広範な生理学的機能を制御することに有効であることを示唆している。
【0168】
図16は、電極が構成3に従って配置された状態での、対象者の弛緩レベルに対する高強度TES刺激を示す。この例では、電極が構成3に従って配置された状態で、対象者が、TES、プラセボ、又はシャム刺激を受けて、弛緩の主観的感覚について評価された。スコアが
図16に示されており、プラセボ条件が弛緩スコア1に相当するように正規化されている。シャム刺激は、対象者の間で平均弛緩スコアのわずかな減少を引き起こした。3mAの直流電流刺激でも、弛緩の増大は引き起こされなかった。これに対して、交流電流刺激(4kHzの2相方形波。inTENSityユニット(カレントソリューションLLC(Current Solutions LLC)、オースチン、テキサス)。電流強度が対象者によって最大10mAまで制御された)が、直流電流と隔離されて、又は直流電流と結合されて、弛緩の増大を引き起こした。パルス状直流電流刺激が弛緩の最大の増大を誘発した(Idrostarシステム(STDファーマシューティカルズ インコーポレイテッド(STD Pharmaceuticals, Inc)、ヘレフォード、英国)。7kHzのパルス発生。約42%のデューティサイクル。電流強度が対象者によって最大10mAまで制御された)。構成3に従って電極が配置されたTESシステムが、適切なTESプロトコルで構成された場合に、対象者において弛緩が増大する感覚を与える。
【0169】
図17は、対象者のエネルギ感に対する構成2のTESプロトコルの作用を示す。この例では、電極が構成2に従って配置された状態で、対象者が、TES、プラセボ、又はシャム刺激を受けて、主観的エネルギ感について評価された。スコアが
図17に示されている。シャム刺激は、対象者の間で、平均弛緩スコアのわずかな減少をプラセボに対して引き起こした。1.5mAの直流電流刺激が、エネルギ感の中程度の増大を引き起こした。交流電流刺激(4kHzの2相方形波。inTENSityユニット(カレントソリューションLLC(Current Solutions LLC)、オースチン、テキサス)。電流強度が対象者によって最大10mAまで制御された)が、直流電流(1.5mA)と隔離されて、又は直流電流(1.5mA)と結合されて、対象者のエネルギ感のより大きな増大を引き起こした。構成2に従って電極が配置されたTESシステムが、適切なTESプロトコルで構成された場合に、対象者においてエネルギが増大する感覚を与える。
【0170】
図18A及び
図18Bは、対象者の弛緩感及びエネルギ感に対する構成2及び構成3の作用を示す。この例では、対象者は、Idrostarシステム(STDファーマシューティカルズ インコーポレイテッド(STD Pharmaceuticals, Inc)、ヘレフォード、英国)からパルス状直流電流刺激を受けた。7kHzのパルス発生、約42%のデューティサイクルであり、電流強度が対象者によって最大10mAまで制御された。第1のセッションでは、対象者は、構成3に従って配置された電極を有し、10分間の電気刺激の後、主観的な弛緩感及びエネルギ感を報告した。対象者は、カスタマイズされた10点スケール(
図18A)において、弛緩については高いレベルを、エネルギについては低いレベルを報告した。10分間の「ウォッシュアウト」期間の後、対象者の電極が構成2の位置にシフトされ、パルス状直流電流刺激が再度開始された。この第2の10分間の電気刺激セッションの後、対象者は、エネルギスコアの上昇と弛緩スコアの下降を報告した。これらの結果は、エネルギを高めることについては構成2から、弛緩を高めることについては構成3から、安定的且つ可逆性の神経変調効果が得られることを示している。
【0171】
この実験や他の実験、他の電極位置(構成)を使用した様々な他の(失敗)実験などのような実験に基づくと、特定の認知作用を誘起する為には位置が極めて重要であることがわかった。
【0172】
他の構成(例えば、配置位置)の電極であれば、作用も異なる可能性があり、それらを例示した。例えば、
図19A及び
図19Bに示される構成の一例(「構成4」)では、第1の電極が対象者の鼻梁に配置され、第2の電極が、頭部(例えば、対象者の前額部又はこめかみ)に配置されて、第1の電極より数インチ大きい。構成4の電極配置は、ユーザが自分で行うことが比較的容易である。構成4を使用するTESのシステム及び方法では、第1の電極(例えば、アノード)が、対象者の鼻梁の、目と目の間と電気的に結合される。
図19Aは、円形アノード電極が鼻梁の目と目の間に配置されたモデル対象者4500を示している。好ましい一実施形態では、アノード電極は、対象者の鼻梁付近の領域の湾曲に順応するように、幅が1”未満であり、フレキシブルである。アノード電極は、鼻の湾曲領域に配置しやすいように構成された円形、長円、正方形、矩形、又は不規則波形であってよい。好ましい一実施形態では、第2の電極(例えば、カソード)が、(
図19Bに示された)こめかみ部4502、前額部4504、頸部4503、乳様突起部、肩部、腕部、又は他の、顔面か頭部か頸部か頸部の下の胴部かのどこかを含んでこれらに限定されない一覧から選択される部位に配置される。第2の電極は、身体のいずれの側に配置されてもよい。実施形態によっては、複数のカソード電極が使用されてよい。
【0173】
前額部電極は、鏡かスマートフォン(又はタブレット)カメラを使用して容易に貼り付けることが可能であり、頸部カソードの位置決めは厳密でなくてよい。少なくとも幾つかのケースでは、構成4は、所望の認知作用を達成する為に、比較的大きな電流を必要とし、例えば、少なくとも約3mAのTES(tDCS)を必要とする。構成4に従って頭部に配置された電極は、対象者の落ち着いた状態を強化する為、眠りに落ちやすくなるように眠気を強化する為、又は睡眠を誘発する為に電気刺激を送達して認知状態の変化を誘発するTESシステムの一部として使用されてよい。構成4は、最大強度が3mAを超える直流電流、最大強度が5mAを超えるパルス状直流電流、又は最大強度が±5mAを超える交流電流のうちの1つ以上を送達するように構成されたTESシステムの一部として使用されてよい。
【0174】
図20Aは、本明細書では(便宜上)「構成5」と称される別の構成を示す。この例では、本明細書に記載のTESに構成5を使用することにより、エネルギの増大、集中の高まり、気分の改善、及び愉快な感覚を含んでこれらに限定されない認知作用が誘発される場合がある。構成5は、脳、1つ以上の頭蓋神経、1つ以上の神経、及び1つ以上の神経節のうちの1つ以上を標的とすることにより、神経変調を引き起こすことが可能である。
図20Aに示されるように、構成5の電極配置は、第1及び第2の電極の両方を対象者の前額部に取り付けることにより、ユーザが自分で行うことが比較的容易である。
図20Aは、前額部に、丸みのある正方形の電極が互いに隣接して配置されているか、互いに対して2cm以内に配置されているモデル対象者4600を示す。第1の電極(例えば、アノード)4602は、対象者の左目の上方に配置されており、第2の電極(例えば、カソード)4601は、対象者の右目の上方に配置されている。実施形態によっては、複数の等電位電極が単一のアノード又はカソードと置き換わってよい。興味深いことに、これらの領域の付近に同様に配置しても有効にはならない。小さな電極を対象者の左前額部のより上方且つより側方に配置し、第2の電極(例えば、長円形状の電極)を対象者の右まゆの上方に配置すると、結果として、この認知作用は誘発されず、このことは、電極の構成(配置)が重要であることを示している。構成5の前額部電極は、対象者が自分で鏡やカメラ(例えば、スマートフォンやタブレットのカメラ)を頼りにして貼り付けることが可能である。構成5は、所望の認知作用を達成する為に、本明細書に記載の大電流(例えば、少なくとも約3mAのTES刺激)を使用することによって、認知状態の修正を安定的にもたらすことが可能であり、この場合、電極及び/又は刺激プロトコルは、ユーザの痛みやいらいらを減らすように選択することが必要である。
【0175】
図20Bは、本明細書では「構成6」と称される別の構成例を示す。構成6では、第1の電極(例えば、アノード)は、鼻梁の上(例えば、鼻根部)に配置され、第2の電極(例えば、小さくて丸いカソード)は、そのまっすぐ上方、例えば、数cm以内の近辺に配置される。この構成を使用して誘起される認知作用は、エネルギ及び眠気に関しては、送達波形に応じて二峰性である場合がある。
【0176】
構成6を使用するTESによる治療を受ける対象者は、送達される波形及び強度に応じて異なる認知作用を有する様々な形態の神経変調を体感することが可能である。構成6では、第1の電極を、対象者の鼻梁の目と目の間と電気的に結合し(「鼻電極」)、第2の電極を、鼻電極の上方の、前額部の正中線付近と電気的に結合する(「前額部電極」)。鼻電極は、対象者の鼻梁付近の領域の湾曲に順応するように、幅が約1”以下であってフレキシブルであってよい(例えば、1”径のPALS Platinum電極(アクセルガードマニュファクチュアリングカンパニーリミテッド(Axelgaard Manufacturing Co., LTD)、フォールブルック、カリフォルニア)。前額部電極は、鼻電極に近接してよく(即ち、約1cmの近さであってよく)、鼻電極のまっすぐ上方にあってよい。前額部電極も、1”のフレキシブルな円形電極であってよく、様々なサイズ、形状、及び/又は組成を有するように選択されてよい。一般に、副作用を避ける為には、構成6の前額部電極として、直径が約2”未満である電極を使用することが好ましい。前額部電極は、前額部上の正中線の左又は右のやや側方に配置されてよく、且つ/又は、前額部のより上方に配置されてよい。
【0177】
図20Bは、構成6に従って電極が配置されたモデル対象者5300を示す。これらの電極はいずれも、アノード又はカソードとして構成可能である。しかしながら、好ましい実施形態は、円形の鼻電極5301がアノードであって、円形の前額部電極5302が、鼻電極5301のまっすぐ上方の、前額部中央の下部に貼り付けられるように構成される。実施形態によっては、単一のアノード又はカソードの代わりに、複数の等電位電極が配置されてよい。
図20Bでは、鼻電極がアノードであり、前額部電極がカソードである。
【0178】
この電極構成によるシステム及び方法は、後述のように、異なる認知作用を達成する為に、異なる電気刺激波形を送達する。例えば、第1の波形が、交流経頭蓋電気刺激電流を周波数3kHzから5kHz(100%デューティサイクル、直流オフセットなし)且つ2mAを超える(好ましくは5mAを超える)強度で使用するTESを送達し、眠気の増大、眠りたい気分の増大、睡眠の誘発、リラックスした心理状態の誘発、及び落ち着いた心理状態の誘発を含んでこれらに限定されない認知作用を伴う神経変調を対象者において誘発する。代替実施形態では、この波形から達成される認知作用を強化する為に、より短いデューティサイクルと、約2mA未満のDCオフセットとが使用される。このタイプの波形を使用するTESに関して報告されている1つの副作用として、副鼻腔の軽度の圧迫感がある。
【0179】
第2の波形が、交流経頭蓋電気刺激電流を周波数3kHz未満(100%デューティサイクル、直流オフセットなし、好ましくは300Hzから1kHz)且つ1mAを超える(好ましくは2mAを超える)強度で使用するTESを送達し、エネルギの増大、及び覚醒の高まりを含んでこれらに限定されない認知作用を伴う神経変調を誘発する。このタイプの波形を使用するTESに関して報告されている1つの副作用として、顔面又は頭部の皮膚のひりひり感又はかゆみがあり、これはおそらく、三叉神経の刺激が原因である。交流電流刺激の周波数を低くすると、これに伴って、皮膚インピーダンスが高くなり、ユーザにおいて誘発される認知作用の体感に悪影響を及ぼしうる副作用がより大きくなる。
【0180】
上述の第1及び第2の交流電流経頭蓋電気刺激波形を交番させるか、インタリーブするか、且つ/又は結合することにより、対象者は、エネルギ及び弛緩のレベルの漸増を達成することが可能であり、同時に、対象者のエネルギ及び弛緩のレベルが時間とともに変動する有利且つ楽しい体感を達成することが可能である。望ましくない副作用を最小限にして両方の作用を実現する為には、構成6の電極配置が重要である。電極同士が近接する(即ち、最も近い電極同士のエッジ間隔が約1cm以下である)実施形態であれば、刺激回路内の抵抗が最小限になり、TESシステムのエネルギ効率が向上する。エネルギ効率は、可搬型のバッテリ給電式TESシステムの有利な特性である。電極を、鼻領域と、そのまっすぐ上方の前額部中央の下部とに配置することの別の利点は、望ましくない副作用が緩和されることである。これらの電極の一方がより側方の、まぶた付近(例えば、こめかみ)にあると、400Hzの交流電流刺激プロトコルで目がひきつっていらいらする可能性があり、4000Hzの交流電流刺激プロトコルによる顔面のひりひり感(原因はおそらく、三叉神経の活性化である)によって、落ち着き/眠気の作用が弱まる可能性がある。
【0181】
構成6を使用する別の有利な、任意選択の特性として、波形の電流強度を素早くランプ状に増加及び/又は減少させることにより、神経変調作用及び感覚的副作用のいずれの、楽しさ及び面白さの感覚特性に起因する神経変調形式も強化することが挙げられる。これは既に詳述したとおりである。
【0182】
構成6などの構成を使用するTESの為のシステムは、電極を定位置で保持する、めがね又は他の装着されるバンド、アセンブリ、又は帽子(キャップ)を含んでよい。例えば、鼻電極及び前額部電極を定位置でしっかりと保持する為に、サングラス又は「シャッターシェイド」が使用されてよい。
【0183】
本明細書において、1つの特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上に(on)」あるように述べられた場合、その1つの特徴又は要素は、その別の特徴又は要素の上に直接あってもよく、介在する特徴及び/又は要素が存在してもよい。これに対して、1つの特徴又は要素が別の特徴又は要素の「すぐ上に(directly on)」あるように述べられた場合、介在する特徴も要素も存在しない。又、当然のことながら、1つの特徴又は要素が別の特徴又は要素と「接続されて(connected)」いるか、「取り付けられて(attached)」いるか、「結合されて(coupled)」いるように述べられた場合、その1つの特徴又は要素は、その別の特徴又は要素と直接、接続されているか、取り付けられているか、結合されていてよく、介在する特徴及び/又は要素が存在してもよい。これに対して、「直接接続されて(directly connected)」いるか、「直接取り付けられて(directly attached)」いるか、「直接結合されて(directly coupled)」いるように述べられた場合、介在する特徴も要素も存在しない。1つの実施形態に関して説明又は図示してきたが、そのように説明又は図示された特徴及び要素は、他の実施形態にも当てはまりうる。又、当業者であれば理解されるように、別の特徴と「隣接して(adjacent)」配置されている構造又は特徴が参照された場合、この参照は、その隣接する特徴に重なるか、その下に横たわる部分を有してよい。
【0184】
本明細書で使用した術語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することは意図していない。例えば、本明細書で使用した単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに矛盾する場合を除き、複数形も同様に包含するものとする。更に、当然のことながら、「comprises(備える)」及び/又は「comprising(備える)」という語は、本明細書で使用された際には、述べられた特徴、手順、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を明記するものであり、1つ以上の他の特徴、手順、操作、要素、構成要素、及び/又はこれらの集まりの存在又は追加を排除するものではない。本明細書では、「及び/又は(and/or)」という用語は、関連付けられて列挙されたアイテムのうちの1つ以上のアイテムのあらゆる組み合わせを包含し、「/」と略記されてよい。
【0185】
「下に(under)」、「下方に(below)」、「下方の(lower)」、「上方の(over)」、「より上方の(upper)」などのような空間的相対的な語句は、本明細書では、図面に示されるような、1つの要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明する場合の説明を簡単にする為に使用される場合がある。当然のことながら、この空間的相対的な語句は、使用時又は操作時の器具の、図面で描かれる向き以外の向きも包含するものとする。例えば、図面内のある装置が反転された場合、別の要素又は特徴の「下に(under)」又は「下方に(beneath)」あると述べられた要素は、その別の要素又は特徴の「上に(over)」方向づけられることになる。従って、例示的用語「下に(under)」は、「上に」と「下に」の両方の方向づけを包含してよい。装置は他の方向づけがなされてよく(90度回転されてよく、又は他の方向に向けられてよく)、本明細書で使用されている空間的相対記述子は相応に解釈される。同様に、「上方に(upwardly)」、「下方に(downwardly)」、「垂直方向の(vertical)」、「水平方向の(horizontal)」などの用語は、本明細書では、特に断らない限り、説明のみを目的として使用されている。
【0186】
「第1の(first)」及び「第2の(second)」という用語は、本明細書では、(ステップを含む)様々な特徴/要素を説明する為に使用されてよいが、これらの特徴/要素は、別段に記述しない限りは、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの特徴/要素を別の特徴/要素と区別する為に使用されてよい。従って、本発明の教示から逸脱しない限り、後述の第1の特徴/要素は、第2の特徴/要素と称されてよく、同様に、後述の第2の特徴/要素は、第1の特徴/要素と称されてよい。
【0187】
特に断らない限り、実施例での使用を含め、本明細書及び特許請求の範囲で使用されている全ての数値は、その前に、「約(about)」又は「約(approximately)」という語が明示的に付されていない場合であっても、あたかも付されているかのように読まれてよい。「約(about)」又は「約(approximately)」という語句は、大きさ及び/又は位置を説明する際に、記載された値及び/又は位置が、値及び/又は位置の予想される妥当な範囲内にあることを示す為に使用されてよい。例えば、数値は、記載された値(又は記載された範囲の値)の±0.1%の値であってよい場合や、記載された値(又は記載された範囲の値)の±1%の値であってよい場合や、記載された値(又は記載された範囲の値)の±2%の値であってよい場合や、記載された値(又は記載された範囲の値)の±5%の値であってよい場合や、記載された値(又は記載された範囲の値)の±10%の値であってよい場合などがある。本明細書において記載されたいかなる数値範囲も、そこに包摂される全ての副範囲を包含するものとする。
【0188】
ここまで様々な例示的実施形態が説明されているが、特許請求の範囲によって示されている、本発明の範囲から逸脱しない限り、いくつかの変更のうちのどれでも、様々な実施形態に対して行われてよい。例えば、記載された各種方法ステップの実施順序が、代替実施形態によっては、しばしば変更される場合があり、又、代替実施形態によっては、1つ以上の方法ステップがまとめてスキップされる場合がある。様々な装置及びシステムの実施形態の任意選択の特徴が、実施形態によっては含まれてよく、実施形態によっては含まれなくてよい。従って、上述の説明は、主として例示を目的としたものであって、特許請求の範囲において示される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0189】
本明細書に含まれる実施例及び図解は、本発明対象を実施できる特定の実施形態を、限定ではなく例示として示したものである。上述のように、別の実施形態が利用されてよく、そこからの派生が行われてよく、従って、本開示の範囲から逸脱しない限り、構造的且つ論理的な置換や変更が行われてよい。本発明対象のそのような実施形態は、本明細書では、あくまで便宜的に「発明」という語句で個別又は集合的に参照されてよく、実際には2つ以上の発明が開示されていても、本出願の範囲を何らかの単一の発明又は発明概念に意図的に限定しようとすることはない。従って、本明細書では特定の実施形態が図示及び説明されてきたが、同じ目的を達成することが予測される任意の構成が、示された特定の実施形態の代替とされてよい。本開示は、様々な実施形態のあらゆる翻案又は変形を包含するものとする。当業者であれば、上述の説明を精査することにより、上述の実施形態同士の組み合わせ、及び本明細書で具体的に述べられていない他の実施形態については明らかであろう。
〔付記1〕
対象者の認知状態を修正する可搬型の経皮電気刺激(TES)アプリケータであって、
ボディと、
第1の電極と、
第2の電極と、
少なくとも一部分が前記ボディ内にあって、処理装置と、タイマと、波形発生器とを備えるTES制御モジュールであって、前記第1の電極と前記第2の電極との間に、周波数が400Hz以上であり、デューティサイクルが10パーセントより大きく、強度が3mA以上であり、DCオフセットがある、10秒以上の2相電気刺激信号を送達するように適合された前記TES制御モジュールと、
を備える装置。
〔付記2〕
対象者の認知状態を修正するウェアラブル経皮電気刺激(TES)アプリケータであって、
前記対象者が装着するように適合されたボディと、
第1の電極と、
第2の電極と、
少なくとも一部分が前記ボディ内にあって、電源と、処理装置と、タイマと、波形発生器とを含むTES制御モジュールであって、前記第1の電極と前記第2の電極との間に、周波数が400Hz以上であり、デューティサイクルが10パーセントより大きく、強度が3mA以上であり、DCオフセットがある、10秒以上の2相電気刺激信号を送達するように適合された前記TES制御モジュールと、
前記TES制御モジュールと接続された無線受信器と、を備え、
前記ウェアラブルTESアプリケータは重量が50グラム未満である、
装置。
〔付記3〕
対象者の認知状態を修正するウェアラブル経皮電気刺激(TES)アプリケータであって、
前記対象者の皮膚に当てて装着されるように適合されたボディと、
前記ボディ上の第1の電極と、
前記ボディとコードで結合された第2の電極と、
少なくとも一部分が前記ボディ内にあって、処理装置と、タイマと、波形発生器とを備えるTES制御モジュールであって、前記第1の電極と前記第2の電極との間に、周波数が400Hz以上であり、デューティサイクルが10パーセントより大きく、強度が3mA以上であり、DCオフセットがある、10秒以上の2相電気刺激信号を送達するように適合された前記TES制御モジュールと、を備え、
更に、前記ウェアラブルTESアプリケータは重量が50グラム未満である、
装置。
〔付記4〕
前記TES制御モジュールと結合された無線受信器を更に備える、付記1又は3に記載の装置。
〔付記5〕
前記第1の電極は前記ボディの外面上にある、付記1又は2に記載の装置。
〔付記6〕
前記第1の電極は前記ボディとコードで結合されている、付記1又は2に記載の装置。
〔付記7〕
前記第2の電極は前記ボディとコードで結合されている、付記1又は2に記載の装置。
〔付記8〕
前記ボディを前記対象者に固定する為の粘着剤を更に備える、付記1、2、又は3に記載の装置。
〔付記9〕
電源を更に備える、付記1又は3に記載の装置。
〔付記10〕
前記電源は少なくとも1つのバッテリを備える、付記2に記載の装置。
〔付記11〕
前記制御モジュールと結合された手動操作装置を前記ボディ上に更に備える、付記1、2、又は3に記載の装置。
〔付記12〕
前記制御モジュールと結合されたボタンとして構成された手動操作装置を前記ボディ上に更に備える、付記1、2、又は3に記載の装置。
〔付記13〕
キャパシタンス放電回路を更に備え、前記TES制御モジュールは、場合によっては、前記2相電気刺激の送達中に前記電極のキャパシタンスを放電するように、前記キャパシタンス放電回路をトリガするように構成されている、付記1、2、又は3に記載の装置。
〔付記14〕
電流制限器を更に備える、付記1、2、又は3に記載の装置。
〔付記15〕
前記TES制御モジュールに接続され、前記TESアプリケータの動作に関する情報を保存するように適合されたメモリを更に備える、付記1、2、又は3に記載の装置。