(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記物体検出部は、前記秤装置による計測結果が、前記かごに保守員が搭乗した際の当該秤装置による既知の出力変化に対応する場合に、当該かごに保守員が搭乗したことを検出する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の物体有無判定装置。
前記かご上判定部により前記かご上に物体が存在すると判定された場合に、前記秤装置による計測結果に基づいて、当該物体が保守員であるかを推定する物体推定部を備えた
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の物体有無判定装置。
前記物体推定部は、前記秤装置による一定時間分の計測結果を解析し、出現時間の長い計測値又は出現回数の多い計測値を抽出し、当該計測値から前記かご上に存在する物体の重さを推定し、当該物体が保守員であるかを推定する
ことを特徴とする請求項5記載の物体有無判定装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエレベーターの構成を示す図である。
エレベーターは、
図1に示すように、かご1、秤装置2、カメラ3、画像処理装置(観測装置)4及びエレベーター安全装置5を備えている。
【0012】
秤装置2は、かご1に存在する物体の重さ(積載重量)を計測するものである。秤装置2は、かご1の積載重量を計測できればよく、上方からかご1を吊り下げて計測する方式、下からかご1を支えて計測する方式のどちらの方式でもよい。なお、両方式ともに、エレベーターのかご1に物体が存在しない状態の計測値を基準値とし、当該基準値から差分値を算出することでかご1の積載重量を計測する。この秤装置2による計測結果を示す信号はエレベーター安全装置5に出力される。
【0013】
カメラ3は、かご1内を撮影して画像データを生成するものである。カメラ3は、かご1内全体を撮影可能であればよく、エレベーターのかご1内、各階の乗場のどちらに設置されていてもよい。このカメラ3により撮影され生成された画像データは画像処理装置4に出力される。
【0014】
画像処理装置4は、カメラ3からの画像データに基づいて、かご1内を観測するものである。ここで、画像処理装置4は、エレベーター安全装置5(後述するかご内搭乗判定部52)から、かご内物体有無を判定するための情報の生成を指令する信号が入力されると、まず、カメラ3から画像データを収集してバッファに格納する。そして、格納した画像データに基づいて、かご内物体有無を判定するための情報を生成する。この画像処理装置4により生成された情報(観測結果を示す信号)はエレベーター安全装置5に出力される。
なお、秤装置2、カメラ3及び画像処理装置4は、エレベーターに既設されている装置である。
【0015】
エレベーター安全装置5は、秤装置2による計測結果及び画像処理装置4による観測結果に基づいて、かご1上に物体が存在するかを判定し、かご1上に物体が存在すると判定した場合にはエレベーターを通常運転モードとは異なる安全運転モードで制御するものである。なお以下に示すエレベーター安全装置5では、判定対象がエレベーターの保守作業を行う保守員であるとし、かご1上に保守員が存在する場合に、保守用の運転モード(かご上搭乗運転モード)でエレベーターを制御するものとする。なお、かご上搭乗運転モードとは、かご1上に搭乗した保守員の安全を確保するための運転モードである。
このエレベーター安全装置5は、
図2に示すように、搭乗検出部(物体検出部)51、かご内搭乗判定部(かご内判定部)52、かご上搭乗判定部(かご上判定部)53及び動作制御部54から構成される。なお、エレベーター安全装置5の各機能部51〜54はソフトウェアによって実現される。
【0016】
また、エレベーター安全装置5のうち動作制御部54を除いた、搭乗検出部51、かご内搭乗判定部52及びかご上搭乗判定部53は、本発明の物体有無判定装置を構成する。この物体有無判定装置は、秤装置2による計測結果及び画像処理装置4による観測結果に基づいて、かご1上に物体(以下では保守員)が存在するかを判定するものである。
【0017】
搭乗検出部51は、秤装置2による計測結果に基づいて、かご1への保守員の搭乗有無を検出するものである。なお、搭乗検出部51による搭乗検出では、かご1上・かご1内の判別は行っていない。そして、搭乗検出部51は、かご1に保守員が搭乗したことを検出した場合には、その旨を示す信号をかご上搭乗判定部53に出力する。
【0018】
かご内搭乗判定部52は、画像処理装置4による観測結果に基づいて、かご1内に人が搭乗したかを判定するものである。ここで、かご内搭乗判定部52は、かご上搭乗判定部53から、かご内搭乗判定の実行を指令する信号が入力されると、画像処理装置4に対し、かご内搭乗有無を判定するための情報の生成を指令する信号を出力する。そして、画像処理装置4から、かご内搭乗有無を判定するための情報が入力されると、当該情報に基づいてかご1内に人が搭乗したかを判定する。このかご内搭乗判定部52による判定結果を示す信号はかご上搭乗判定部53に出力される。
【0019】
かご上搭乗判定部53は、搭乗検出部51による検出結果及びかご内搭乗判定部52による判定結果に基づいて、かご1上に保守員が搭乗したかを判定するものである。ここで、かご上搭乗判定部53は、搭乗検出部51によりかご1に保守員が搭乗したことが検出されると、まず、かご内搭乗判定部52に対し、かご内搭乗判定の実行を指令する信号を出力する。そして、かご内搭乗判定部52から判定結果を示す信号が入力されると、当該判定結果に基づいてかご1上に保守員が搭乗したかを判定する。このかご上搭乗判定部53による判定結果を示す信号は動作制御部54に出力される。
【0020】
動作制御部54は、かご上搭乗判定部53による判定結果に基づいて、エレベーターの動作を制御するものである。ここで、動作制御部54は、かご上搭乗判定部53によりかご1上に保守員が搭乗したと判定された場合に、エレベーターを、通常運転モードとは異なるかご上搭乗運転モードで制御する。
【0021】
次に、上記のように構成されたエレベーター安全装置5の動作について、
図3を参照しながら説明する。
エレベーター安全装置5の動作では、
図3に示すように、まず、搭乗検出部51は、秤装置2による計測結果に基づいて、かご1(かご1上・かご1内の判別なし)への保守員の搭乗有無を検出する(ステップST301)。この搭乗検出部51の詳細動作については後述する。
【0022】
このステップST301において、搭乗検出部51によりかご1に保守員が搭乗したことが検出されると、かご上搭乗判定部53は、かご内搭乗判定部52に対し、かご内搭乗判定の実行を指令する信号を出力する。そして、かご内搭乗判定部52は、当該信号に応じて、画像処理装置4による観測結果に基づいて、かご1内に人が搭乗したかを判定する(ステップST302)。このかご内搭乗判定部52の詳細動作については後述する。
【0023】
次いで、かご上搭乗判定部53は、かご内搭乗判定部52による判定結果に基づいて、かご1上に保守員が搭乗したかを判定する(ステップST303)。ここで、かご上搭乗判定部53は、かご内搭乗判定部52によりかご1内に人が搭乗したと判定された場合には、かご1上に保守員が搭乗していないと判定する。一方、かご内搭乗判定部52によりかご1内に人が搭乗していないと判定された場合には、かご1上に保守員が搭乗したと判定する。
【0024】
すなわち、搭乗検出部51によりかご1への保守員の搭乗が検出され、かご内搭乗判定部52によりかご1内への人の搭乗ありと判定された場合には、かご上搭乗判定部53は、かご1上への保守員の搭乗なしと判定する。また、搭乗検出部51によりかご1への保守員の搭乗が検出され、かご内搭乗判定部52によりかご1内への人の搭乗なしと判定された場合には、かご上搭乗判定部53は、かご1上への保守員の搭乗ありと判定する。
【0025】
次いで、動作制御部54は、かご上搭乗判定部53による判定結果に基づいて、エレベーターの動作を制御する(ステップST304)。ここで、動作制御部54は、かご上搭乗判定部53によりかご1上に保守員が搭乗したと判定された場合には、エレベーターの運転モードをかご上搭乗運転モードに切り替える。一方、かご上搭乗判定部53によりかご1上に保守員が搭乗していないと判定された場合には、通常の運転モードでエレベーターの動作を制御する。なお、動作制御部54によって運転モードがかご上搭乗運転モードに切り替えられた場合、保守員が意図的に解除しない限り、当該かご上搭乗運転モードでの制御が継続される。
【0026】
ここで、かご上搭乗運転モードの動作について説明する。
かご上搭乗運転モードでの動作は、かご1上に搭乗した保守員の安全を確保する動作となる。そのため、手動運転モード(かご1上で意図的に運転スイッチを操作しなければエレベーターが動かないモードであり、エレベーターの移動速度も制限される)への切り替え、最上階への移動不可(頂部安全空間確保を目的とした最上階への移動不可)、終点スイッチでの強制停止(頂部安全空間確保を目的とした停止)のいずれの動作を実行するものとしてもよい。また、エレベーターのかご1の動作を制御して物理的に安全を確保するのみではなく、かご1上の保守員に注意を促すアナウンスを流すようにしてもよい。
【0027】
次に、ステップST301における搭乗検出部51の動作について、
図4を参照しながら説明する。
搭乗検出部51の動作では、
図4に示すように、まず、秤装置2による計測結果(計測値)を監視する(ステップST401)。
次いで、上記計測結果が、かご1に保守員が搭乗した際の秤装置2による既知の出力変化に対応するかを判定する(ステップST402)。このステップST402において、上記計測結果が上記出力変化と対応すると判定した場合には、かご1に保守員が搭乗したことを検出する(ステップST403)。一方、ステップST402において、上記計測結果が上記出力変化と対応しないと判定した場合には、シーケンスはステップST402に戻る。
【0028】
図5は秤装置2による計測値の時刻変化を示す図である。
図5において、Wdはかご1内が無人の状態での計測値であり、Wxはかご1に保守員が搭乗しているときの計測値であり、Wyはかご1に保守員以外の人が搭乗しているときの計測値であり、t(z−x)は保守員の搭乗開始時の時刻であり、t(z)は保守員の搭乗完了時の時刻である。
図5に示すように、保守員がかご1に搭乗する際には、秤装置2による計測値Wは、時刻t(z−x)から時刻t(z)のように増加する変化となる。そこで、搭乗検出部51は、秤装置2により計測された計測値Wの変化量が所定の値以上である場合に、かご1に保守員が搭乗したことを検出する。
【0029】
次に、ステップST302におけるかご内搭乗判定部52の動作について、
図6を参照しながら説明する。
かご内搭乗判定部52の動作では、
図6に示すように、まず、画像処理装置4に対し、かご内搭乗有無を判定するための情報の生成を指令する信号を出力する(ステップST601)。そして、画像処理装置4では、当該信号に応じて、カメラ3から画像データを収集し、当該画像データを解析することでかご内搭乗有無を判定するための情報を生成する。
【0030】
次いで、画像処理装置4からかご1内への人の搭乗有無を判定するための情報が入力されると、当該情報に基づいてかご1内に人が搭乗したかを判定する(ステップST602)。
次いで、上記判定結果をかご上搭乗判定部53に出力する(ステップST603)。
【0031】
ここで、保守員一人で保守作業を実施する作業形態のエレベーターにおいては、画像処理装置4は、例えば背景差分を用いた人物領域(物体領域)の抽出を行い、その結果をかご内搭乗有無を判定するための情報として、かご内搭乗判定部52に出力する。この場合、画像処理装置4は、当該エレベーターのかご1内が無人状態の画像データ(基準画像データ)を予め記録媒体に保持しておく。そして、カメラ3から画像データを収集した後、基準画像データと収集した画像データとを比較して、異なる領域を抽出する。そして、抽出した領域の大きさが人の大きさに該当する場合に、人物領域として抽出する。そして、かご内搭乗判定部52におけるかご内搭乗判定では、画像処理装置4により人物領域が抽出された場合にはかご1内に人が搭乗したと判定する。一方、人物領域が抽出されなかった場合にはかご1内に人は搭乗していないと判定する。本手法によりかご1内に搭乗した人がいるかを判定することができる。
【0032】
また、一人以上の保守員が保守作業を実施する作業形態のエレベーターにおいては、画像処理装置4は、例えばかご1の入口から内部への画像変化の抽出を行い、その結果をかご内搭乗有無を判定するための情報として、かご内搭乗判定部52に出力する。すなわち、この作業形態では、かご1上に搭乗する保守員の他に、かご1内でエレベーターを手動操作する保守員が存在する場合がある。よって、単純にかご1内に人がいるかどうかを判定する背景差分では、常にかご1内に一人保守員がいる場合に判定結果が常にかご内搭乗ありとなり、かご1上の搭乗を正しく判定することができない。そこで、このような作業形態の場合には、画像間の人の動きの向き及び大きさを解析して、かご1内に人が搭乗したかを判定する。この場合、画像処理装置4は、カメラ3から収集した複数枚の画像データから、画像内の各点の動きの向きと大きさを算出する。そして、かご内搭乗判定部52では、当該算出結果に基づき、動きの向きがかご1の入口から内部への方向であり、かつ、動きの大きさがかご1の入口から内部に移動するのに十分な大きさである場合には、かご1内に人が搭乗したと判定し、それ以外の場合には、かご1内に人は搭乗していないと判定する。本手法によりかご1内に搭乗しようとしている人がいるかを判定することができる。
【0033】
なお上記では、画像処理装置4は、かご内搭乗有無を判定するための情報として、人物領域の抽出情報または画像変化の抽出情報をかご内搭乗判定部52に出力するものとして説明を行った。それに対して、画像処理装置4にて、上記抽出情報を用いてかご内搭乗有無の判定も行い、その結果をかご内搭乗有無を判定するための情報として、かご内搭乗判定部52に出力するようにしてもよい。
【0034】
以上のように、この実施の形態1によれば、搭乗検出部51により、秤装置2による計測結果に基づきかご1に保守員が搭乗したことが検出され、かご内搭乗判定部52により、画像処理装置4による観測結果に基づきかご1内に人が搭乗していないと判定された場合に、かご上搭乗判定部53にて、かご1上に保守員が搭乗したと判定するように構成したので、保守員がエレベーターの保守作業中に安全対策を実施せずにかご1上に搭乗したとしても、保守員がかご1上に搭乗していることを自動判定することができる。
【0035】
また、エレベーター既設の秤装置2、カメラ3及び画像処理装置4を用いて、保守員がかご1上に搭乗したことを自動判定するので、新規に機器を設置するためのコストを抑えることができる。
【0036】
また、かご上搭乗判定部53により保守員がかご1上に搭乗したことが判定された場合に、動作制御部54にて、エレベーターの運転モードを自動的にかご上搭乗運転モードに切り替えるように構成したので、保守員がかご1上に搭乗したときに、より安全に作業を行うことができる。また、保守員がかご1上に搭乗した際に、保守員に注意を促すアナウンスをかご1上に流すように構成することで、保守員がかご1上に搭乗したときに、より安全に作業を行うことができる。
【0037】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2に係るエレベーターの構成を示す図である。
図7に示す実施の形態2に係るエレベーターは、
図1に示す実施の形態1に係るエレベーターのカメラ3及び画像処理装置4を削除して光電装置(観測装置)6を追加し、エレベーター安全装置5をエレベーター安全装置5bに変更したものである。なお
図7の符号7はエレベーターのドアである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0038】
ドア7は、エレベーターのかご1の出入り口に設けられるものである。一般的なエレベーターでは、ドア7が、かご1側のドアと乗場側のドアに分かれている。ドア7としては、2枚式のサイドスライドドア、片側にスライドして開くSO式(サイドオープン式)、両側にスライドして開くCO式(センターオープン式)のいずれであってもよい。また、ドア7の形式は任意とし、開閉する板が1枚の形式でもよいし、2枚以上のドア板が重なり合ってスライドする形式でもよい。
【0039】
光電装置6は、かご1内への物体通過を検出するものである。この光電装置6は、かご1入口の側面に縦一列に並べられた複数の光電素子61からなる(光を発射する)投光部と(投光部からの光を受ける)受光部から構成され、受光部が受ける光の変化から、光電装置6を横切る物体(かご1入口を通過する物体)を検出する。なお、光電装置6は、エレベーターに既設されている装置である。
光電素子61には、反射型素子と透過型素子とがある。反射型素子を用いる場合には、投光部と受光部を同じ側面に配置し、受光部が検出する反射光の変化から物体有無を検出する。また、透過型素子を用いる場合には、投光部と受光部をかご1入口を挟んで配置し、受光部が遮光を検出することで物体有無を検出する。光電装置6は、エレベーターのかご1または各階の乗場のどちらに配置されていてもよいし、かご1側のドアと各乗場側のドアのどちらに配置されていてもよい。
この光電装置6による検出結果(観測結果)を示す信号はエレベーター安全装置5bに出力される。
【0040】
図8はこの発明の実施の形態2に係るエレベーター安全装置5bの構成を示すブロック図である。
図8に示す実施の形態2に係るエレベーター安全装置5bは、
図2に示す実施の形態1に係るエレベーター安全装置5のかご内搭乗判定部52をかご内搭乗判定部(かご内判定部)52bに変更したものである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
かご内搭乗判定部52bは、光電装置6による観測結果に基づいて、かご1内に人が搭乗したかを判定するものである。ここで、かご内搭乗判定部52bは、光電装置6による検出結果を示す信号が入力されると、その信号のログを一定時間分保持する。そして、かご上搭乗判定部53からかご内搭乗判定の実行を指令する信号が入力されると、上記信号のログを解析してかご1内に人が搭乗したかを判定する。このかご内搭乗判定部52bによる判定結果を示す信号はかご上搭乗判定部53に出力される。
【0042】
次に、上記のように構成されたエレベーター安全装置5bの動作について、
図9を参照しながら説明する。
図9に示す実施の形態2に係るエレベーター安全装置5bの動作は、
図3に示す実施の形態1に係るエレベーター安全装置5の動作に対し、ステップST302のみが異なるものである。以下、異なる部分についてのみ説明を行う。
エレベーター安全装置5bの動作では、
図9に示すように、ステップST301において、搭乗検出部51によりかご1に保守員が搭乗したことが検出されると、かご上搭乗判定部53は、かご内搭乗判定部52bに対し、かご内搭乗判定の実行を指令する信号を出力する。そして、かご内搭乗判定部52bは、当該信号に応じて、光電装置6による観測結果に基づいて、かご1内に人が搭乗したかを判定する(ステップST901)。
【0043】
次に、ステップST901におけるかご内搭乗判定部52bの動作について、
図10を参照しながら説明する。
かご内搭乗判定部52bの動作では、
図10に示すように、まず、光電装置6によるかご1内の物体有無の検出結果を示す信号を、かご内搭乗有無を判定するための情報として取得し、一定時間分の信号のログをバッファに保持する(ステップST1001)。
【0044】
次いで、かご上搭乗判定部53からかご内搭乗判定の実行を指令する信号が入力されると、保持している一定時間分の信号のログを解析する(ステップST1002,1003)。なお、ログの解析は、かご上搭乗判定部53から上記信号が入力された時刻より、一定時刻前までのデータ範囲を対象に行う。
【0045】
ここで、ログの解析を一定時刻前までのデータ範囲を対象に行う理由について説明する。以下では光電素子61が透過型素子である場合を例に説明を行う。
光電装置6の光電素子61は、かご1の入口側面に配置される。そのため、かご1内に保守員が搭乗する場合、秤装置2が反応する(出力が変化する)時刻より早い時刻に光電素子61が遮断され、搭乗検出時刻t
rと光電素子61遮断時刻t
dとの間にずれが生じる場合が考えられる。
このような状況に対応するため、光電装置6の出力信号のログの解析範囲をt
rよりもt
x秒前までとし、t
rとタイミングが異なる光電素子61の遮断を探す。つまり、搭乗が検出された時刻t
rから−t
xの範囲内で、光電素子61遮断の有無を探す。t
xは、光電装置6が取り付けられている場所(エレベーターの構造)に依存する。そのため、エレベーターの構造に応じて適宜設定するものとする。
【0046】
次いで、かご1の入口を物体が通過したかを判定する(ステップST1004)。このステップST1004において、物体の通過を示す出力が存在すると判定した場合には、かご1内に搭乗ありと判定する(ステップST1005)。一方、ステップST1004において、物体の通過を示す出力が存在しないと判定した場合には、かご1内に搭乗なしと判定する(ステップST1006)。このかご内搭乗判定部52bによる判定結果を示す信号はかご上搭乗判定部53に出力される。
【0047】
なお上記では、かご内搭乗判定部52bは、光電装置6による観測結果を示す信号のログを一定時間分バッファに保持する場合について示した。それに対して、光電装置6による観測結果を示す信号をエレベーター既設機器の記録媒体に出力し、当該記録媒体にて一定時間分の信号のログを保持するようにしてもよい。この場合、かご内搭乗判定部52bは、上記記録媒体にアクセスすることで、一定時間分のログを取得することができ、当該ログを解析することでかご内搭乗有無を判定する。
【0048】
以上のように、この実施の形態2によれば、画像処理装置4に代えて光電装置6を用いるように構成しても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0049】
実施の形態3.
実施の形態1では画像処理装置4を用いてかご内搭乗判定を行う場合について示し、実施の形態2では光電装置6を用いてかご内搭乗判定を行う場合について示した。それに対して、実施の形態3では画像処理装置4及び光電装置6を組み合わせてかご内搭乗判定を行う場合について示す。
図11はこの発明の実施の形態3に係るエレベーター安全装置5cの構成を示すブロック図である。
図11に示す実施の形態3に係るエレベーター安全装置5cは、
図2に示す実施の形態1に係るエレベーター安全装置5のかご内搭乗判定部52をかご内搭乗判定部52cに変更したものである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
かご内搭乗判定部52cは、画像処理装置4及び光電装置6による観測結果に基づいて、かご1内に人が搭乗したかを判定するものである。ここで、かご内搭乗判定部52cは、光電装置6による検出結果を示す信号が入力されると、その信号のログを一定時間分保持する。そして、かご上搭乗判定部53からかご内搭乗判定の実行を指令する信号が入力されると、画像処理装置4に対し、かご内搭乗有無を判定するための情報の生成を指令する信号を出力する。そして、画像処理装置4からの情報及び保持している信号のログを解析してかご1内に人が搭乗したかを判定する。このかご内搭乗判定部52cによる判定結果はかご上搭乗判定部53に出力される。
【0051】
次に、上記のように構成されたエレベーター安全装置5cの動作について、
図12を参照しながら説明する。
図12に示す実施の形態3に係るエレベーター安全装置5cの動作は、
図3に示す実施の形態1に係るエレベーター安全装置5の動作に対し、ステップST302のみが異なるものである。以下、異なる部分についてのみ説明を行う。
エレベーター安全装置5cの動作では、
図12に示すように、ステップST301において、搭乗検出部51によりかご1に保守員が搭乗したことが検出されると、かご上搭乗判定部53は、かご内搭乗判定部52cに対し、かご内搭乗判定の実行を指令する信号を出力する。そして、かご内搭乗判定部52cは、当該信号に応じて、画像処理装置4及び光電装置6による観測結果に基づいて、かご1内に人が搭乗したかを判定する(ステップST1201)。
【0052】
次に、ステップST1201におけるかご内搭乗判定部52cの動作について、
図13を参照しながら説明する。
かご内搭乗判定部52cの動作では、
図13に示すように、まず、光電装置6によるかご1内の物体有無の検出結果を示す信号を、かご内搭乗有無を判定するための情報として取得し、一定時間分の信号のログをバッファに保持する(ステップST1301)。
なお、上記に代えて、光電装置6による観測結果を示す信号をエレベーター既設機器の記録媒体に出力し、当該記録媒体にて一定時間分の信号のログを保持するようにしてもよい。この場合、かご内搭乗判定部52cは、上記記録媒体にアクセスすることで、一定時間分の信号のログを取得することができる。
【0053】
次いで、かご上搭乗判定部53からかご内搭乗判定の実行を指令する信号が入力されると、画像処理装置4に対し、かご内搭乗有無を判定するための情報の生成を指令する信号を出力するとともに、保持している一定時間分の信号のログを解析する(ステップST1302〜1304)。そして、画像処理装置4では、かご上搭乗判定部53からの信号に応じて、カメラ3から画像データを収集し、当該画像データを解析することでかご内搭乗有無を判定するための情報を生成する。
【0054】
次いで、画像処理装置4からかご内搭乗有無を判定するための情報が入力されると、当該情報と、ログの解析結果に基づいてかご1内に人が搭乗したかを判定する(ステップST1305)。
次いで、上記判定結果をかご上搭乗判定部53に出力する(ステップST1306)。
【0055】
ここで、かご内搭乗判定部52cは、画像処理装置4及び光電装置6による観測結果に基づいて、以下のルールに基づいて、かご内搭乗判定を行う。
すなわち、かご内搭乗判定部52cは、光電装置6を用いてかご内搭乗ありと判定し、かつ画像処理装置4を用いてかご内搭乗ありと判定した場合には、かご内搭乗ありと判定する。また、光電装置6を用いてかご内搭乗なしと判定し、かつ画像処理装置4を用いてかご内搭乗なしと判定した場合には、かご内搭乗なしと判定する。また、光電装置6を用いてかご内搭乗なしと判定し、かつ画像処理装置4を用いてかご内搭乗ありと判定した場合には、かご内搭乗なしと判定する。また、光電装置6を用いてかご内搭乗ありと判定し、かつ画像処理装置4を用いてかご内搭乗なしと判定した場合には、かご内搭乗なしと判定する。
【0056】
以上のように、この実施の形態3によれば、画像処理装置4及び光電装置6による観測結果に基づいてかご内搭乗判定を行うように構成したので、実施の形態1,2における効果に加え、エレベーターのかご1の戸が開いた状況下にて、保守員がかご上搭乗を実施した場合においても、正確にかご上搭乗の有無を判定することが可能となる。
すなわち、エレベーターの設置されている建物の構造によるが、階間距離が短いエレベーターでは、通常の運転モードにおいて、特定階でかご1のドアを開けた状態において、当該特定階より1つ上の階にて保守員が乗場のドアを開け、かご1上に搭乗する場合がある。このような場合、実施の形態2の手法では、保守員がかご1上に搭乗した時刻に何らかの影響(第三者がかご1内には搭乗しないが光電装置6を遮った場合等)により光電素子61が遮られた場合、保守員がかご1上に搭乗しているにもかかわらず、かご1上搭乗なしと判定してしまう。それに対し、実施の形態3の手法ではこのような状況下においても保守員のかご上搭乗を判定することが可能である。
【0057】
なお、実施の形態1〜3に係るエレベーター安全装置5〜5cは、かご1上に保守員が搭乗したかの判定に限らず、かご1上に落下した物体の検出にも適用可能である。例えば、地震などにより、仮に、昇降路の天井や柱が崩れた破片がかご1上へ落下した場合や昇降路内に設置されているエレベーター構成部品がかご1上へ落下した場合に、それらの落下物の検出にも有効である。エレベーター安全装置5〜5cをかご1上落下物体の検出に適用することで、かご1上落下物体をエレベーターが自動検出した際に通常運転を中止するためことができるため、二次災害の防止に有効であり、より安全なエレベーターを構築することができる。
【0058】
実施の形態4.
図14はこの発明の実施の形態4に係るエレベーター安全装置5dの構成を示すブロック図である。
図14に示す実施の形態4に係るエレベーター安全装置5dは、
図2に示す実施の形態1に係るエレベーター安全装置5の搭乗検出部51及び動作制御部54を搭乗検出部51d及び動作制御部54dに変更し、搭乗者推定部(物体推定部)55を追加したものである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
なお、
図14では実施の形態1の構成を元に搭乗者推定部55を追加した場合について示したが、実施の形態2,3の構成を元に搭乗者推定部55を追加するようにしてもよい。
【0059】
搭乗検出部51dは、実施の形態1における動作に加え、秤装置2による計測結果を示す信号を収集し、一定時間分の信号のログをバッファに保持する。そして、かご1に保守員が搭乗したことを検出した場合に、その旨を示す信号をかご上搭乗判定部53に出力するとともに、保持している一定時間分の信号のログ及び搭乗検出時の秤装置2による計測値が収束した値(
図5の計測値Wxに相当)を示す情報を搭乗者推定部55に出力する。
【0060】
搭乗者推定部55は、かご上搭乗判定部53によりかご1上に保守員が搭乗したと判定された場合に、秤装置2による計測結果に基づいて、かご1上にいるのが保守員であるのか別の物体であるのかを推定するものである。この際、搭乗者推定部55は、上記秤装置2による計測結果として、搭乗検出部51dからの情報を用いて、かご1上にいるのが保守員であるのか別の物体であるのかを推定する。
【0061】
また、動作制御部54dは、搭乗者推定部55による推定結果に基づいて、エレベーターの動作を制御する。
【0062】
次に、上記のように構成されたエレベーター安全装置5dの動作について、
図15を参照しながら説明する。
エレベーター安全装置5dの動作では、
図15に示すように、まず、搭乗検出部51dは、秤装置2による計測結果に基づいて、かご1への保守員の搭乗有無を検出する(ステップST1501)。また、搭乗検出部51dでは、秤装置2による計測結果を示す信号を一定時間分の信号のログとしてバッファに保持し、かご1に保守員が搭乗したことを検出した場合に、当該一定時間分の信号のログ及び搭乗検出時の秤装置2による計測値が収束した値を示す情報を搭乗者推定部55に出力する。そして、搭乗者推定部55では、搭乗検出部51dからの情報をバッファに保持する。
【0063】
このステップST1501において、搭乗検出部51によりかご1に保守員が搭乗したことが検出されると、かご上搭乗判定部53は、かご内搭乗判定部52に対し、かご内搭乗判定の実行を指令する信号を出力する。そして、かご内搭乗判定部52は、当該信号に応じて、画像処理装置4による観測結果に基づいて、かご1内に人が搭乗したかを判定する(ステップST1502)。
【0064】
次いで、かご上搭乗判定部53は、かご内搭乗判定部52による判定結果に基づいて、かご1上に保守員が搭乗したかを判定する(ステップST1503)。
【0065】
次いで、搭乗者推定部55は、かご上搭乗判定部53によりかご1上に保守員が搭乗したと判定された場合に、バッファに保持した情報に基づいて、かご1上にいるのが保守員であるのか別の物体であるのかを推定する(ステップST1504)。この搭乗者推定部55の詳細動作については後述する。なお、かご上搭乗判定部53によりかご1上に保守員が搭乗していないと判定された場合には、搭乗者推定部55は、バッファに保持している情報をクリアする。
【0066】
次いで、動作制御部54dは、搭乗者推定部55による推定結果に基づいて、エレベーターの動作を制御する(ステップST1505)。ここで、搭乗者推定部55によりかご1上にいるのは保守員であると推定された場合には、エレベーターの運転モードをかご上搭乗運転モードに切り替える。一方、搭乗者推定部55によりかご1上にいるのは保守員ではないと推定された場合には、かご1上には何らかの物体が落下した可能性があるため、エレベーターを休止状態にする。また、かご上搭乗運転モードに切り替えるようにしてもよい。また、エレベーターのかご1の動作を制御して物理的に安全を確保するのみではなく、かご1上に何らかの物体が落下したことに対する注意及びエレベーター管理者への通知を促すアナウンスをエレベーターから流すようにしてもよい。さらに、当該エレベーターに通信制御装置が装備され、当該エレベーターと監視センター(エレベーターの稼働状況を監視しているセンター)とが接続されている場合には、かご上搭乗判定部53から動作制御部54に出力する信号を通信制御装置にも出力し、監視センターに異常を通報するようにしてもよい。
【0067】
次に、ステップST1504における搭乗者推定部55の動作について、
図16を参照しながら説明する。
搭乗者推定部55の動作では、
図16に示すように、まず、バッファに保持している、秤装置2による計測結果を示す一定時間分の信号のログを読み出す(ステップST1601)。
【0068】
次いで、読み出したログを解析し、出現時間の長い計測値を抽出し、当該抽出した計測値から保守作業を行っている保守員の重さ(
図5の計測値Wxに相当)を推定する(ステップST1602)。上記ログの解析において、出現回数の多い計測値を抽出し、保守作業を行っている保守員の重さを推定するようにしてもよい。
【0069】
次いで、推定した保守員の重さ(推定保守員体重Wz)と、バッファに保持している、搭乗検出時の秤装置2による計測値が収束した値(
図5の計測値Wxに相当)とを比較する(ステップST1603)。ここで、搭乗検出時の秤装置2による計測値が収束した値と保守員体重との差が、ある閾値Tw内である場合(|Wx−Wz|≦Tw)には、かご1上に搭乗したのは保守員であると推定する(ステップST1604)。一方、閾値Tw内ではない場合、かご1上に搭乗したのは保守員ではないと推定する(ステップST1605)。なお、閾値Twを用いる理由は、保守員は、保守に必要な道具を保持してかご1上に搭乗するため、ある程度の幅を持たせる必要があるからである。
【0070】
以上のように、この実施の形態4によれば、搭乗者推定部55にて、かご1上にいるのが保守員であるのか別の物体であるのかを推定するように構成したので、仮に、かご1上に物が落下した場合においても、かご1上の落下物体をエレベーターが自動検出し、通常運転を中止することが可能なため、二次災害の防止に有効であり、より安全なエレベーターを構築できる。
また、遠隔監視機能を搭載しているエレベーターにおいては、かご1上への物体の落下を検知した場合に監視センターに異常を通報することで、早期の安全確認及び復旧が可能となる。
【0071】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。