特許第6410610号(P6410610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6410610
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】埋設式ガス栓の取付構造
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/00 20060101AFI20181015BHJP
   F16K 27/12 20060101ALI20181015BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   F16K27/00 B
   F16K27/12
   F16L5/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-1440(P2015-1440)
(22)【出願日】2015年1月7日
(65)【公開番号】特開2016-125617(P2016-125617A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151977
【氏名又は名称】株式会社藤井合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】玉城 康年
(72)【発明者】
【氏名】西川 三次
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−186267(JP,U)
【文献】 特開2000−064372(JP,A)
【文献】 実開昭58−186279(JP,U)
【文献】 特開2017−044275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00−27/12
F16L 1/00− 1/26; 5/00− 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス栓本体を収納した状態で、壁板又は床板に形成されたガス栓取付用孔内に落とし込むケーシングと、
前記ケーシングの開放端から半径方向外側に張り出す鍔部と、
前記鍔部を貫通し且つ前記ケーシングの周壁側へ揺動可能な締付けネジと、
前記ガス栓取付用孔周辺における壁板又は床板の裏面に当接させる添設板とを有し、
前記締付けネジを締め付けることにより、前記添設板と前記鍔部とで、壁板又は床板における前記ガス栓取付用孔の周辺を表裏から挟圧して前記ケーシングを固定する形式の埋設式ガス栓の取付構造において、
前記添設板の一辺から前記添設板に対して直角に且つ一体的にガイド板を延設させて断面略L字状の揺動金具が形成され、
前記締付けネジのネジ軸はケーシングの深さよりも長く設定されていると共に、前記ネジ軸に、揺動金具を抜け止め状態に支持するナット金具が螺合接続され、
前記ナット金具が締付けネジのネジ軸の先端近傍に位置するとき、前記揺動金具は、ガイド板がケーシングの底壁の裏面に略平行に位置すると同時に添設板が底壁の周縁より外側にて前記ネジ軸の先端を向く姿勢に保持され、
前記締付けネジの締付け時に、前記揺動金具は90度回動させられて、ガイド板がケーシングの周壁に沿うと同時に添設板が鍔部の裏側に略平行に位置する姿勢となる埋設式ガス栓の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の埋設式ガス栓の取付構造において、前記ケーシングは略円筒状に形成されると共に、その周壁のうち、対向する両側壁に、相互に平行に位置する平面部が形成され、この平面部側に位置する前記鍔部の各位置に前記締付けねじを挿通させるネジ挿通孔が形成されている埋設式ガス栓の取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載の埋設式ガス栓の取付構造において、前記ケーシングの深さ方向に沿った前記平面部の中心線上に、締付けネジのネジ軸が嵌入可能な凹溝が形成されると共に、前記ガイド板の前記平面部に沿う側の面に、前記凹溝に摺動可能に嵌り込む凸条が形成されている埋設式ガス栓の取付構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の埋設式ガス栓の取付構造において、前記締付けネジを、ケーシングの前記両側壁側へ揺動させた傾斜姿勢にて仮保持可能な仮保持具が設けられている埋設式ガス栓の取付構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の埋設式ガス栓の取付構造において、ケーシングの底壁にガス栓本体を挿通させるためのガス栓挿通孔が形成され、前記ガス栓本体を取り付けるためのガス栓取付部は、前記ガス栓本体と前記ガス栓挿通孔との隙間を閉塞するように、前記ケーシングの底壁に設けられる埋設式ガス栓の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、壁板又は床板に埋設させる形式の埋設式ガス栓の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
壁裏又は床下に埋設させる埋設式ガス栓の取付構造として、実開平5−50265号公報(特許文献1)に開示のものを考案した。
このものでは、図5及び図6に示すように、床板(4)に開けたガス栓取付用孔(40)から、床下に既設のガス配管(41)を室内へ引き出すと共に、これを、予めケーシング(30)内に固定させたガス栓本体(3)に接続し、その後、ガス配管(41)と共に、ガス栓本体(3)を収納させたケーシング(30)をガス栓取付用孔(40)内に落とし込んで、ガス栓取付用孔(40)の周辺の床板(4)に固定させる。
ケーシング(30)の上方開放端には、床板(4)の表面側からガス栓取付用孔(40)の周辺に係止させる鍔部(31)が張り出している。また、床面(4)の裏面側には添設板(32)が設けられている。これら鍔部(31)と添設板(32)とで床板(4)のガス栓取付用孔(40)の周辺を表裏から挟み込み、添設板(32)に螺合させた締付けネジ(36)で締付けることにより、床板(4)は、鍔部(31)と添設板(32)とによって表裏から挟圧されて、ケーシング(30)はガス栓取付用孔(40)内に取り付けられる。
【0003】
添設板(32)付きの締付けネジ(36)は、鍔部(31)の対向する各位置にそれぞれ設けられており、ケーシング(30)をガス栓取付用孔(40)内に落とし込む際に、添設板(32)が邪魔にならないように、ケーシング(30)の周壁のうち、添設板(32)付きの締付けネジ(36)を具備させた側の両側壁に、図6に示すように、締付けネジ(36)の軸部が挿通可能な縦孔(33a)と、これに連続し且つ添設板(32)が挿通可能な横孔(33b)からなる逆T字状の逃がし孔(33)が形成されている。
【0004】
このように、従来の埋設式ガス栓の取付構造では、ケーシング(30)に逃がし孔(33)が貫通形成されているため、室内と壁板又は床板(4)の裏側とが逃がし孔(33)を介して連通する構造となっている。このため、ガス栓本体(3)のプラグ筒(3a)にソケット(図示せず)を接続させる際に、ガス栓取付用孔(40)を閉塞するように取付られる化粧板(図示せず)の開閉扉を開くと、壁板や床板(4)の裏側の冷気が室内に流れ込み、冬季においては室内の温度を低下させてしまうといった不都合があった。
【0005】
この不都合を解消するために、この考案のものでは、図5に示すように、気密シート(S)で、ケーシング(30)の内面を覆うことで、ケーシング(31)の内外の通気を遮断し、壁板や床板(4)の裏側の冷気が逃がし孔(33)から室内へ侵入するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−50265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、気密シート(S)を、ケーシング(30)の内面や底面又はガス栓本体(3)の基部(3b)に密着させて設置することは難しく、気密シート(S)が、前記開閉蓋の開閉動作や、プラグ筒(3a)へのソケットの脱着操作の妨げとなって円滑に作業できない不都合があったり、気密シート(S)の装着作業が面倒で手間取ったり、さらには、気密シート(S)が不用意に破れた場合、ケーシング(30)の内外の空気が連通してしまうといった不都合がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために講じたものであり、『ガス栓本体を収納した状態で、壁板又は床板に形成されたガス栓取付用孔内に落とし込むケーシングと、
前記ケーシングの開放端から半径方向外側に張り出す鍔部と、
前記鍔部を貫通し且つ前記ケーシングの周壁側へ揺動可能な締付けネジと、
前記ガス栓取付用孔周辺における壁板又は床板の裏面に当接させる添設板とを有し、
前記締付けネジを締め付けることにより、前記添設板と前記鍔部とで、壁板又は床板における前記ガス栓取付用孔の周辺を表裏から挟圧して前記ケーシングを固定する形式の埋設式ガス栓の取付構造』において、ケーシングの周壁に締付けネジや添設板を逃がすための逃がし孔等を設けることなく、ケーシングを締付けネジや添設板と共にガス栓取付用孔内に落とし込んで固定することができる埋設式ガス栓の取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために講じた本発明の埋設式ガス栓の取付構造は、『前記添設板の一辺から前記添設板に対して直角に且つ一体的にガイド板を延設させて断面略L字状の揺動金具が形成され、
前記締付けネジのネジ軸はケーシングの深さよりも長く設定されていると共に、前記ネジ軸に、揺動金具を抜け止め状態に支持するナット金具が螺合接続され、
前記ナット金具が締付けネジのネジ軸の先端近傍に位置するとき、前記揺動金具は、ガイド板がケーシングの底壁の裏面に略平行に位置すると同時に添設板が底壁の周縁より外側にて前記ネジ軸の先端を向く姿勢に保持され、
前記締付けネジの締付け時に、前記揺動金具は90度回動させられて、ガイド板がケーシングの周壁に沿うと同時に添設板が鍔部の裏側に略平行に位置する姿勢となる』ことを特徴とする。
【0010】
ケーシングの底壁を貫通するようにガス栓本体を取り付けると共に、壁板又は床板に開けられたガス栓取付用孔から、その裏側に予め配設されているガス配管を室内へ引き出して前記ガス栓本体に接続させる。ケーシングの鍔部に形成されているネジ挿通孔に締付けネジを挿通させた後、そのネジ軸に断面略L字状の揺動金具を具備させる。
ネジ軸の長さはケーシングの深さよりも長く設定されているから、揺動金具をネジ軸の先端に位置させれば、ガイド板をケーシングの底壁のの裏面に略平行に位置させ且つ添設板をケーシングの底壁の周縁よりも外側にてネジ軸に沿ってその先端側へ向けた姿勢に保持することができる。そして、ガイド板よりもネジ軸の先端側にナット金具を螺合させれば、揺動金具は、上記姿勢で抜け止め状態に保持される。
この状態で、締付けネジをケーシング側へ揺動させれば、揺動金具のほぼ全体をケーシングの底壁の裏側に位置させることができ、この状態を維持しながら、ケーシングを、締付けネジ、揺動金具及びナット金具と共にガス栓取付用孔に挿入し、鍔部をその周辺の表面に添設させる。
【0011】
鍔部をガス栓取付用孔の周辺に表面側から係止させた後、締付けネジを締付ける。締付けネジの締め付けに伴ってナット金具が鍔部側へ移動していくように設定しておけば、揺動金具は、ナット金具の移動に伴ってナット金具で押されて、締付けネジのネジ軸に具備されたまま90度回動させられ、ガイド板がケーシングの周壁に沿い且つ添設板が鍔部に略平行な姿勢となる。その姿勢を維持しながら、締付けネジを最終締め付け状態に達するまで締付けると、添設板はガス栓取付用孔周辺における壁板又は床板の裏面に当接し、添設板と鍔部とで前記壁板又は床板を表裏から挟圧する態様で、ケーシングはガス栓取付用孔内に固定される。
【0012】
上記埋設式ガス栓の取付構造において、『前記ケーシングは略円筒状に形成されると共に、その周壁のうち、対向する両側壁に、相互に平行に位置する平面部が形成され、この平面部側に位置する前記鍔部の各位置に前記締付けねじを挿通させるネジ挿通孔が形成されている』ものが望ましい。
ケーシングを略円筒状とすることで、壁板や床板に形成するガス栓取付用孔をホールソーを使って円形に形成することができるから、施工の作業性が良い。この円形のガス栓取付用孔にケーシングを挿入すると、ケーシングの対向する両側壁を構成する平面部と円形のガス栓取付用孔の周縁との間に、比較的広い隙間が生じる。この隙間に対応する鍔部にネジ挿通孔が形成されているから、これに挿通させる締付けネジを、揺動金具やナット金具と共に前記隙間内に位置させることができ、締付けネジを両平面部側に揺動させることにより、ケーシングのガス栓取付用孔への挿入が一層容易となる。
また、締付けネジを締付けて揺動金具を移動させる際に、ガイド板を平面部に沿わせることができるから、揺動金具をスムーズに且つ真っ直ぐに移動させることができる。
【0013】
なお、上記埋設式ガス栓の取付構造において、『前記ケーシングの深さ方向に沿った前記平面部の中心線上に、締付けネジのネジ軸が嵌入可能な凹溝が形成されると共に、前記ガイド板の前記平面部に沿う側の面に、前記凹溝に摺動可能に嵌り込む凸条が形成されている』ものが望ましい。
このものでは、締付けネジをケーシングの平面部側に揺動させると、ネジ軸の一部が凹溝に嵌入可能となるから、締付けネジを、凹溝の深さ分、大きく揺動させることができる。よって、ガイド板を、一層確実にケーシングの底壁の周縁より内側に納めることが可能となる。
また、締付けネジの締付けによって、ガイド板に設けた凸条をケーシングの両側壁に設けた凹溝内に嵌め込んで摺動させながら、揺動金具を鍔部側に移動させることができるので、添設板が壁板や床板の裏面に対して歪むことなくまっすぐに揺動金具を引き上げることができる。
【0014】
また、上記埋設式ガス栓の取付構造において、『前記締付けネジを、ケーシングの前記両側壁側へ揺動させた傾斜姿勢にて仮保持可能な仮保持具が設けられている』ことが望ましい。
仮保持具によって、締付けねじのケーシング側への傾斜姿勢を保持できるから、ガス栓取付用孔への挿入が一層容易となる。
【0015】
さらに、上記埋設式ガス栓の取付構造において、『ケーシングの底壁にガス栓本体を挿通させるためのガス栓挿通孔が形成され、前記ガス栓本体を取り付けるためのガス栓取付部は、前記ガス栓本体と前記ガス栓挿通孔との隙間を閉塞するように、前記ケーシングの底壁に設けられる』ことが望ましい。
このものでは、ケーシングの底壁に形成されるガス栓挿通孔からの通気を、ガス栓取付部によって遮断する構成としたから、ガス栓挿通孔から底壁の裏側の冷気や塵芥がケーシング内に侵入してくることはない。また、前記ガス栓本体と前記ガス栓挿通孔との隙間から小物等をケーシングの裏側へ落とす不都合もない。
【発明の効果】
【0016】
ケーシングを壁板や床板に設けたガス栓取付用孔内に固定させるための揺動金具の略全体をケーシングの底壁の裏側に位置させながら、ケーシングをガス栓取付用孔内に容易に挿入できるようにしたから、ケーシングの周壁に、締付けネジや添設板等を逃がすための逃がし孔を設ける必要がない。よって、室内と、壁板又は床板の裏面との通気は連通することなく、壁板や床板の裏側の冷気が室内に侵入する不都合を確実に防止することができる。
また、ケーシングをガス栓取付用孔に挿入した後、締付けネジを締付けると、揺動金具は、ナット金具で押されることにより90度回動させられ、ガイド板がケーシングの周壁に沿い且つ添設板が壁板や床板に平行となる。そして、この姿勢のまま壁板や床板の裏面に向かって移動させることができ、締付けネジの最終締付け状態にて、添設板を壁板や床板の裏面に確実に添設させることができる。このように、ケーシングの取付作業が容易となり、施工性が向上する。
【0017】
特に、締付けネジに添設板を螺合させる従来のものでは、壁板又は床板の裏面にて、添設板をケーシングの外側に位置させるのが困難であり、また、外側に位置しているかどうかを確認することができないが、本願の揺動金具はナット金具によって所定の姿勢に保持される構成としたから、締付けネジの締付けによって、揺動金具の添設板を確実に且つ容易に壁板又は床板の裏面に添設させることができ、鍔部と共に壁板又は床板を表裏から挟圧してケーシングを固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態における埋設式ガス栓の取付状態を示す断面図である。
図2】本発明の実施の形態における埋設式ガス栓の底面図である。
図3】本発明の実施の形態における埋設式ガス栓の取付状態にて、揺動金具の様子を示す説明図である。
図4】本発明の実施の形態における埋設式ガス栓に具備させる揺動金具とナット金具を示す斜視図である。
図5】従来の埋設式ガス栓の取り付け状態を示す断面図である。
図6図5に示す従来の埋設式ガス栓の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
この実施の形態に採用するガス栓は、図1に示すように、下流端にソケット接続用のプラグ部(2a)が接続されていると共に、上流端に配管(41)が接続される配管接続筒部(2b)が形成されている略L字状のガス栓本体(2)からなり、ケーシング(20)の底壁(20a)には、ガス栓本体(2)の前記下流端側がちょうど挿通可能な大きさのガス栓挿通孔(22)が形成されている。
ガス栓本体(2)の前記下流端側の周面の所定位置には、図2に示すように、ネジ孔(24a)が各々形成されたガス栓取付部(24)が張り出していると共に、ネジ孔(24a)に対応するケーシング(20)の底壁(20a)の所定箇所には、ネジ挿通孔(図示せず)が形成されている。
【0020】
上記した構成のガス栓をケーシング(20)内に固定するには、底壁(20a)の裏面側から、プラグ部(2a)とガス栓本体(2)の下流端側をガス栓挿通孔(22)に差込み、プラグ部(2a)をケーシング(20)内に突出させる。そして、ネジ孔(24a)が前記ネジ挿通孔に対応するように、底壁(20a)の裏面にガス栓取付部(24)を当接させて、底壁(20a)の表面から固定ネジ(241)をネジ孔(24a)にそれぞれ螺合させる。ガス栓挿通孔(22)は、ガス栓取付部(24)より下流側のガス栓本体(2)の下流端側がちょうど挿通可能な大きさに設定されていると共に、ガス栓挿通孔(22)とガス栓本体(2)の下流端側の周面との間を閉塞するように、ガス栓取付部(24)が底壁(20a)の裏面に取り付けられる態様となるから、ケーシング(20)の底壁(20a)からの通気は確実に遮断される。
【0021】
ガス栓を固定させたケーシング(20)を床板(4)に取り付けるには、床板(4)の所定位置にホールソーによりガス栓取付用孔(40)を形成し、このガス栓取付用孔(40)から、予め床下に配管されているガス配管(41)を室内に引き出し、室内にて、ガス栓本体(2)の配管接続筒部(2b)に接続させる。
【0022】
ケーシング(20)は、床板(4)に形成されたガス栓取付用孔(40)内に落とし込み可能な上方開放の略円筒形の筒体であって、その周面の相互に対向する両側壁に、図2に示すように、平面部(25)(25)が形成されている。また、ケーシング(20)の上方開放端縁には、ガス栓取付用孔(40)の周縁に係止させるための略正方形状の外形を有する鍔部(21)が四方に張り出している。
この鍔部(21)のうち、平面部(25)(25)側に続く各位置には、ネジ挿通孔(26)(26)がそれぞれ形成されている。
【0023】
そして、ネジ挿通孔(26)に挿通させる締付けネジ(16)のネジ軸には、図3及び図4に示すように、略L字状の揺動金具(1)を具備させると共にその下方にはナット金具(13)を螺合させておく。
なお、各平面部(25)の深さ方向に沿った中心線上には、締付けネジ(16)のネジ軸が嵌入可能な幅の凹溝(25a)が形成されている。
【0024】
揺動金具(1)は、図4の実線に示すように、添設板(11)と、これの、ケーシング(20)の平面部(25)側に位置する一端辺から直角に垂下するガイド板(12)とからなる略L字状体であり、添設板(11)からガイド板(12)に連続する中心線に沿って、締付けネジ(16)のネジ軸が、移動自在に挿通可能な幅を有するスリット(10)が貫通している。
また、ガイド板(12)の、平面部(25)に接触する側の面には、凹溝(25a)に嵌入可能な凸条(12a)が突設されている(図4の点線で示す揺動金具(1)参照)。
【0025】
ナット金具(13)は、同図に示すように、締付けネジ(16)のネジ軸が螺合可能なネジ筒部(13a)と、その両側に張り出している一対の張出板(13b)(13b)とで構成されており、揺動金具(1)の下方に位置して、揺動金具(1)を締付けネジ(16)に対して抜け止め状態に保持している。
【0026】
底壁(20a)にガス栓本体(2)が貫通状態に固定され、鍔部(21)のネジ挿通孔(26)に締付けネジ(16)が挿通され、締付けネジ(16)に揺動金具(1)とナット金具(13)を具備させた状態のケーシング(20)をガス栓取付用孔(40)内に落とし込む際に、揺動金具(1)が邪魔にならないように、揺動金具(1)の姿勢を、図4の下側の二点鎖線に示すように、ガイド板(12)を底壁(20a)の裏面に沿って位置させると共に添設板(11)を締付けネジ(16)のネジ軸に沿ってその先端側を向く姿勢とし、ガイド板(12)の基端部近傍をナット金具(13)の張出板(13b)(13b)の上端で支持させる。
【0027】
この状態にて、締付けネジ(16)を平面部(25)側へ揺動させて傾斜させると、図3のケーシング(20)の右側に示すように、締付けネジ(16)のネジ軸が平面部(25)の凹溝(25a)内に嵌り込むと共に、揺動金具(1)のガイド板(12)の殆ど全体、すなわち、揺動金具(1)のほぼ全体をケーシング(20)の底壁(20a)の下方に逃がすことができる。
なお、この姿勢が仮保持されるように、ガイド板(12)をケーシング(20)の底壁(20a)の裏面に接着テープで止めたり、図3の二点鎖線に示すように、揺動金具(1)の上方で締付けネジ(16)とケーシング(20)とに輪ゴム(14)をかけたりするとよい。この場合、接着テープや輪ゴム(14)が特定事項としての仮保持具として機能する。
【0028】
この状態で、ケーシング(20)をガス栓取付用孔(40)内に挿入すれば、揺動金具(1)等が邪魔になることなく、ケーシング(20)をガス栓取付用孔(40)内に落とし込むことができ、鍔部(21)をガス栓取付用孔(40)の周縁に係止させることができる。
【0029】
揺動金具(1)を、図3の二点鎖線に示す輪ゴム(14)によって仮保持させた姿勢にて、締付けネジ(16)を締付けると、ナット金具(13)は、張出板(13b)(13b)が添設板(11)に当接するため締付けネジ(16)と共回りすることなく、締付けネジ(16)の締付けに伴って上方へ移動する。ナット金具(13)の上方への移動に伴って、揺動金具(1)は、ケーシング(20)の底壁(20a)の周縁から外側へはみ出しているガイド板(12)の基端部がナット金具(13)の張出板(13b)(13b)によって下方から押されることにより、スリット(10)に締付けネジ(16)のネジ軸を挿通させた状態で90度回動させられ、図3のケーシング(20)の右側の姿勢から、左側下方の二点鎖線に示すような、ガイド板(12)が平面部(25)に沿い、添設板(11)が鍔部(21)及び床板(4)の裏面に平行に位置する姿勢となる。
【0030】
この姿勢にて、締付けネジ(16)をさらに締付けると、ナット金具(13)の張出板(13b)(13b)がガイド板(12)に当接することよって回動阻止状態となるため、締付けネジ(16)の締付けに伴って、ナット金具(13)は揺動金具(1)を押し上げながら、さらに上方へ移動していき、ガイド板(12)の凸条(12a)が平面部(25)の凹溝(25a)に嵌り込んだ姿勢のまま、添設板(11)が、床板(4)の裏面に到達することとなる。
【0031】
締付けネジ(16)の最終締付け状態にて、床板(4)は、図3のケーシング(20)の左側上方の実線に示す揺動金具(1)の添設板(11)と、鍔部(21)とで表裏から挟圧されることとなり、ケーシング(20)はガス栓取付用孔(40)内に落とし込んだ状態に固定されることとなる。
なお、締付けネジ(16)の傾斜姿勢を仮保持するために装着させた輪ゴム(14)は、締付けネジ(16)の締付けによって揺動金具(1)と共に上昇していくため何ら問題は生じない。また、接着テープで仮保持させた場合でも、接着テープは揺動金具(1)が90度回動する際に簡単に剥がれるため何ら問題はない。
【0032】
その後、図1に示すように、ケーシング(20)内に、ソケットの着脱ユニット(15)を収容した後に、ケーシング(20)の鍔部(21)の表面を上方から全体的に包囲するように、化粧板(42)を床板(4)の表面に添設させて、埋設式ガス栓の床板(4)への取り付けが完了する。
この化粧板(42)の中央部には、着脱ユニット(15)の開閉蓋(15a)がちょうど露出する大きさの窓部(43)が開放している。
【0033】
本発明の実施の形態に係るケーシング(20)の周壁及び底壁(20a)には、逃がし孔や切欠、又は、隙間等が形成されない構成としているから、プラグ筒(23)にソケットを接続させる際に、開閉蓋(15a)を開放させても、床板(4)の下方の冷気が、ケーシング(20)を介して、化粧板(42) の窓部(43)から室内に流れ込む不都合がない。
なお、上記実施の形態では、床板埋設式のガス栓の取付構造について説明したが、壁板にでも同様に設置可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
(1) ・・・・・・・・揺動金具
(11)・・・・・・・・添設板
(12)・・・・・・・・ガイド板
(16)・・・・・・・・締付けネジ
(2) ・・・・・・・・ガス栓本体
(20)・・・・・・・・ケーシング
(20a) ・・・・・・・底壁
(21)・・・・・・・・鍔部
(4) ・・・・・・・・床板
(40)・・・・・・・・ガス栓取付用孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6