【実施例1】
【0023】
以下、本発明の暖房装置の一実施例として、熱源にヒータを用いた輻射暖房装置を例にして図面を用いて説明する。
【0024】
図1は本発明の暖房装置の正面外観図であって、暖房装置は本体1と、本体1の下方に設けられた台座2と、本体1と台座2とを接続する支柱部3とから構成される。
【0025】
本体1は、前面に開口部4を有する外装ケース5を有しており、外装ケース5の上面には操作部6を備えるとともに、外装ケース5内に熱源としてのヒータ7と、ヒータ7の熱を前方に反射する反射板8とを収容している。また、外装ケース5の開口部4には金属製のガード9が取り付けられていて、ヒータ7から発せられる熱はガード9を介して開口部4より本体前方へ放出される。
【0026】
また、暖房装置は首振り機能を備えており、操作部6のボタンを操作して首振り機能をONにする.と、支柱部3を軸に本体1が床面に対して水平方向に回動し、熱が放出される方向が変化する。
【0027】
そして、外装ケース5前面のガード9の下方には、温度を検知する複数の赤外線素子を備えた赤外線アレイセンサ10が設けられている。この赤外線アレイセンサ10は
図2の拡大図に示すようにその検知面11をヒータから発せられる熱の放出方向(黒矢印)と略垂直(図では上向き)となるようにしてセンサ取付板12に載置されて外装ケース5の前面に取り付けられている。そのため、首振り機能によって本体1が回動してもヒータ7と赤外線アレイセンサ10との位置関係が変化しないため、赤外線アレイセンサ10はヒータ7の温度を確実に検知することができる。また、ガード9の下方はヒータ7の輻射熱の影響を受けにくいので、ヒータ7により加熱される物体そのものの温度を検知することにもなる。
【0028】
赤外線アレイセンサ10は、半導体基板上に行列状に配列された複数のセンサ素子と、センサ素子上に赤外線を集光するためのレンズとを含み、視野角α内の被検知物から放射された赤外線を検出することによって、被検知物の複数箇所の温度を測定して二次元の温度分布を得ることができるものである。そしてこのセンサ素子としては、たとえばサーモパイルや焦電センサなどが用いられる。
【0029】
また、本実施例では
図3に示すように、赤外線アレイセンサ10は8行8列の64個のセンサ素子によって構成され、その検知対象の違いから、ヒータ7に近い側から4行8列の第一センサ素子群13(素子番号0〜31番)と、ヒータ7から遠い側の4行8列の第二センサ素子群14(素子番号32〜63番)とに区別されている。なお、赤外線アレイセンサ10はセンサ素子が二次元に配置されているものであればよく、センサ素子の数は本実施例に限定するものではないし、第一センサ素子群13と第二センサ素子群14の行数は同数でなくてもかまわない。
【0030】
第一センサ素子群13は、ヒータ7とヒータ7により加熱される本体1側の温度、つまり反射板8やガード9の温度を検知するものであり、対して第二センサ素子群14は本体1の外側の温度を検知するものである。したがって、赤外線アレイセンサ10を本体1に取り付ける際に、本体1からの検知面11の張り出し位置はガード9との位置関係により設定され、センサ取付板12の大きさや形状によって調整される。なお、第二センサ素子群14は、可燃物が接近すると危険なライン(例えばガード9の前方15cm)までの温度を検知できればよい。
【0031】
暖房装置が運転中でヒータ7に通電されている場合、ヒータ7が発する熱により本体1内部の反射板8やガード9は加熱されて高温となるため、第一センサ素子群13は総じて高温を検知することとなる。一方で、第二センサ素子群14は、暖房装置の前方に異物が存在するかどうかによって検知する温度が異なる。
【0032】
つまり、本体1の前方に加熱される対象物が近接していなければ、ヒータ7が放出する熱は拡散して室内の空気を暖めることになるため、第二センサ素子群14が検知する温度は低温となる。しかし、ガード9が布等で覆われたり、ガード9の前方に物体が近接していたりしてヒータ7によって加熱される対象物が存在すると、ヒータ7からの熱によってこれら加熱対象物の温度が上昇するため第二センサ素子群14は高温を検知することになる。そのため、第二センサ素子群14が検知する温度が所定の温度条件を超えた時には異常であると判断して、ヒータ7への通電が停止されるようになっている。
【0033】
また、赤外線アレイセンサ10の検知した温度分布によって、周囲に可燃物のない通常の運転状態、ガード9が可燃物で覆われた状態、前方に可燃物が近接した状態などを区別して認識することができる。
【0034】
次に、赤外線アレイセンサ10の検知結果から得られる温度分布と異常状態の判別について
図4〜
図7により説明する。なお、図中では温度帯ごとに異なる網掛けを用いて領域A〜Eとして図示するが、網掛けの間隔が狭いほど温度が高い領域を意味している。
【0035】
<通常運転時>
図4は暖房装置周辺に可燃物等のない通常の運転状態(異常ではない運転状態)における赤外線アレイセンサ10の検知結果を二次元の温度分布として表した図である。本体1の内部やガード9はヒータ7により加熱されて高温となるため、第一センサ素子群13が検知する温度は温度領域A〜Cで表され、特にヒータ7に近い中央部分は最も高い温度領域Aとなっている。一方で、第二センサ素子群14は全ての素子が温度領域Eを検知している。このように通常運転時には第一センサ素子群13と第二センサ素子群14とでは表示される温度領域が明確に区別される。
【0036】
<異常状態1>
本体1の上方から布などの可燃物が落下し、ガード9の一部を覆ってしまった場合、赤外線アレイセンサ10の検知結果は
図5のようになる。落下した可燃物が広範囲に亘ってガード9を覆ってしまうと本体1外への熱の放出が抑えられるため、本体1の内側に熱が篭って内部の温度が上昇するが、ガード9の一部が覆われた状態では、本体1内部の温度はそれほど上昇しないので、第一センサ素子群13は通常運転時と比べ温度の高い領域が多少は増えるものの正常か異常かを区別できるほどの明確な違いは発見しにくい。しかしながら、通常運転時には一様に低温を検知していた第二センサ素子群14のうちヒータ7に近い側2行(素子番号32〜47)では、ガード9の外側を覆う可燃物の温度を検知した素子が高温領域を示すことになる。したがって、第二センサ素子群14のヒータ7に近い側で温度領域Aを検知したときには異常と判断し、ヒータ7への通電を停止する。
【0037】
このように、可燃物により覆われたのがガード9の一部であったとしても、可燃物はヒータ7が放出する熱によって加熱され高温となるので、覆われた部分の温度を検知する第二センサ素子群14が高い温度領域を示すようになる。そしてそれは可燃物によって覆われる面積の大小や位置には関係しない。よって、従来は検知することが難しかったガード9の一部が覆われた場合であっても赤外線アレイセンサ10を用いることによって即座に異常と判断してヒータ7への通電を停止することができる。
【0038】
<異常状態2>
本体1の前方(ガード9前方)に可燃物が近接した場合、赤外線アレイセンサ10の検知結果は
図6のようになる。本体1の内部に熱が篭ることはないため、第一センサ素子群13が検知する本体1内部の温度は通常運転時と比べてほとんど変化はない。また、ガード9が可燃物で覆われているわけではないので、第二センサ素子群14のうちヒータ7に近い側2行(素子番号32〜47)の温度も通常運転時よりは多少温度が高くなってはいるが、まだ温度領域はDまたはEと低温状態を示しており、正常か異常かを区別できるほどの明確な違いは見られない。しかし、第二センサ素子群14のうちヒータ7から遠い側2行(素子番号48〜63)では、本体1前方の可燃物の温度を検知した素子が高温領域を示すようになる。よって、第二センサ素子群14のヒータ7から遠い側で温度領域Aを検知したときにも異常と判断し、ヒータ7への通電を停止する。
【0039】
つまり、赤外線アレイセンサ10は、本体1内部だけでなく本体1から離れた物体の温度も同時に検知することができるので、このように本体1には接触していないが長時間加熱されると発火に至る可能性のある位置に可燃物が存在している状態も検知することが可能となる。また、本実施例では本体1外の温度を検知する第二センサ素子群14は4行で構成しているが、少なくとも2行以上で構成していれば、可燃物によりガード9が覆われた状態と、前方に可燃物が近接した状態とを区別して認識することが可能となる。
【0040】
<異常状態3>
暖房装置にはガード9が取り付けられているが、このガード9が取り外されたまま使用されると、使用者がヒータ7に手を触れることによってやけどをしたり、可燃物が直接ヒータ7と接することで発火したりしてしまうおそれがあるので、安全性を高めるためにはガード9が取り外されていた場合も異常として検知できるようになっていることが望ましい。
【0041】
ガード9が取り外されていた場合、赤外線アレイセンサ10の検知結果は
図7のようになる。通常運転時には一様にA〜Cの高温を検知するはずの第一センサ素子群13は、ヒータ7の温度を検知する部分(素子番号10、13)は高い温度を検知するが、それ以外は低温を検知し、特にガード9の温度を検知する部分(素子番号24〜31)は温度領域Eを示しており、これはヒータ7により加熱される対象物が存在しないことを意味する。よって、ヒータ7への通電開始から所定時間経過後に、第一センサ素子群13のうちガード9の温度を検知する素子(素子番号24〜31)が温度領域Aに満たないときには異常と判断してヒータ7への通電を停止する。
【0042】
従来の構造では、ガード9の取り外しを検知するには専用のセンサを設ける必要があったが、この赤外線アレイセンサ10を用いることで、別途センサを設けることなくガード9が取り外された場合も異常として検知することが可能となる。また、通電開始後もヒータ7部分の温度を検知する素子が低温を示したままであったら、ヒータ7が断線していると判断することができ、機器の故障もこの赤外線アレイセンサ10で検知することが可能である。
【0043】
このように、センサ素子を二次元に配置して構成される赤外線アレイセンサ10を用いて温度を検知することで、発火の可能性のある状態をすばやく検知することができるため、安全性に優れた暖房装置を構成することが可能となる。
【0044】
また、本実施例では、赤外線アレイセンサ10をガード9の下方に配置した場合を例に説明したが、ガード9の上方に設置するようにしてもよい。しかし、その場合には赤外線アレイセンサ10はヒータ7の輻射熱の影響を受けやすいため、実際の物体の温度よりも高目を検知する傾向があることを考慮して異常判定を行う必要がある。なお、ガード9の上方に設置した場合には、赤外線アレイセンサ10の検知面11は下に向けて設置することになるため、ガード9の下方に配置した場合に比べて検知面11に埃等が付着するのを抑えることができるので、検知感度を維持することができるという利点がある。
【0045】
また、本実施例の暖房装置は送風機を備えない輻射方式であるが、送風機を備えた温風方式の暖房装置にも適用できるものである。さらには、赤外線アレイセンサ10を駆動する電源を得ることができれば、熱源もヒータに限定するものではなく、灯油やガス等の燃料を燃焼する方式の暖房装置にも適用可能である。