(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は、タンクから可搬式槽内に移送された使用済み液中の液面近傍の表層に含む油分を、親油性回転ドラムによる付着で回収しているため、液表層の中でも、親油性回転ドラムが接触する範囲で、かつ液面上に浮いた油分だけしか、使用済み液中の油分が回収できず、油分の回収効率は比較的低い。また、特許文献2は、収容槽内の表層液を油水分離部に移送するのに、液溜めの流入口を、この表層液の液面に向けて設置しているため、収容槽内への汚水の流入時において、収容槽内の表層液の液位が変化する場合や、表層液の液面が斜めに変化する場合等に、表層液以外にもエアが流入口に入り込んでしまう虞がある。油水分離部への移送管にエアが入り込むと、表層液をポンプで吸引する効率が低下して、油水分離部内への表層液の供給量が減少してしまい、油水分離部での油分の回収効率は低下する。
【0007】
特に、自動車用マフラーのような機械加工部品を量産体制で製造するのにあたり、機械加工工程でワークに付着した加工油を洗浄装置で洗い流す洗浄工程では、洗浄液は、使用後に浄化して繰り返し使用され、その洗浄工程に掛かるタクトタイムは、秒単位を競う比較的短い時間になっている場合がある。このような製造現場では、油分回収装置により、使用後の洗浄液に含まれる油分が、より短い時間で、より確かに洗浄液と分離して回収されないと、洗浄装置を連続運転して行う洗浄工程では、浄化後のきれいな洗浄液を、途切れなく継続的に洗浄装置に供給することができない問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、水系の液を使用したことにより、使用後の洗浄液に混在した油分を、この使用後の液から効率良く回収することができる油分回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る油分回収装置は、以下の構成を有する。
(1)水系の液を使用したことにより、使用後の液に混在した油分を、該使用後の液から除去して回収する油分回収装置において、前記使用後の液を貯留する第1タンクと、前記使用後の液から分離した前記油分を回収する第2タンクと、前記第1タンク内の前記使用後の液を前記第2タンク内に移送するポンプと、を備え、前記ポンプは、インペラの回転軸を前記第1タンクの上下方向に沿う姿勢で、前記インペラを、前記第1タンクに貯留した前記使用後の液の液面下に浸漬可能な位置に配設され、前記インペラの回転で圧送された前記使用後の液を流出させる出力ポートが、前記インペラより高い位置に配置されていること、前記第2タンクは、分離した前記油分を回収する油分回収流路を、当該第2タンクの上下方向に沿って有し、貯留された前記使用後の液の断面積が前記油分回収流路の下方から上方に向けて小さくなるよう、前記油分回収流路の周りで、当該第2タンクの上側を下側よりも窄めた形状に形成されていること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する油分回収装置において、前記第2タンクは、前記使用後の液のうち、前記油分と分離した前記液を回収に向けて流出させる流通部を、前記油分回収流路の外側で当該第2タンクの下側に有していること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する油分回収装置において、前記ポンプは、前記使用後の液を前記インペラに流入させる入力ポートを、前記インペラに対し、その上側または下側で、かつ前記回転軸寄りの位置に配置してなること、を特徴とする。
(4)(1)乃(3)のいずれか1つに記載する油分回収装置において、前記第1タンクに貯留した前記使用後の液の中で、前記ポンプを載置して浮上可能なフロートを備えていること、を特徴とする。
(5)(4)に記載する油分回収装置において、浮いた状態の前記ポンプが、前記第1タンクの上下方向に沿う方向への移動を許容すると共に、前記第1タンクの上下方向に対し、傾いた方向への動きを制限する姿勢制御手段を備えていること、を特徴とする。
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載する油分回収装置において、前記油分回収流路の最上端の高さを調節可能な液面調整部材が設けられていること、を特徴とする。
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載する油分回収装置において、前記ポンプの前記出力ポートと前記第2タンクとの間の流路に、第3タンクを備え、前記第3タンクは、前記ポンプで吸引した前記使用後の液を取り入れる流入部を有すると共に、前記油分回収流路をなす油分回収管の最上端より低い位置で、前記第2タンクと連通して配管されていること、前記流入部は、前記第3タンクに貯留可能な前記使用後の液の液面位置より高い位置に配設されていること、を特徴とする。
(8)(7)に記載する油分回収装置において、前記第3タンクは、当該第3タンクの底部と前記第2タンクの側部とを接合部で連結した構造により、前記第2タンクと一体に配設され、前記第2タンクの頂部側には、前記第2タンク内の領域と前記第3タンク内の領域とを区画する仕切りが、前記油分回収管と前記接合部との間に設けられていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有する本発明の油分回収装置の作用・効果について説明する。
(1)水系の液を使用したことにより、使用後の液に混在した油分を、該使用後の液から除去して回収する油分回収装置において、使用後の液を貯留する第1タンクと、使用後の液から分離した油分を回収する第2タンクと、第1タンク内の使用後の液を第2タンク内に移送するポンプと、を備え、ポンプは、インペラの回転軸を第1タンクの上下方向に沿う姿勢で、インペラを、第1タンクに貯留した使用後の液の液面下に浸漬可能な位置に配設され、インペラの回転で圧送された使用後の液を流出させる出力ポートが、インペラより高い位置に配置されていること、第2タンクは、分離した油分を回収する油分回収流路を、当該第2タンクの上下方向に沿って有し、貯留された使用後の液の断面積が油分回収流路の下方から上方に向けて小さくなるよう、油分回収流路の周りで、当該第2タンクの上側を下側よりも窄めた形状に形成されていること、を特徴とする。この特徴により、第2タンクでは、下方向の矢視による平面視で、使用後の液の表層の大きさ(面積)は、油分回収流路の上端側に向けて次第に小さくなるため、表層の液面近傍では、油分の表面張力により、油分の単一の個体同士が集積し易くなる。そのため、使用後の液に占める液の歩留まりを高くしたまま、使用後の液に混ざった油分を効率良く回収することができる。また、インペラの回転により圧送された使用後の液は、ポンプの回転軸の径方向外側に遠心力を受けるが、ポンプの出力ポートは、回転軸の軸方向上方で、インペラより高い位置にあるため、圧送された使用後の液は、出力ポートにスムーズに流れ難い。そのため、圧送時には、使用後の液に含まれる油分の成分と液の成分とでは、油分の比重が液より小さい場合に、このこと等に起因して油分の成分と液の成分との分離が促進され、油分が、液よりも、出力ポートに向けて積極的に流れ易い状態となり、油分の回収効率は向上する。
【0011】
従って、本発明に係る油分回収装置によれば、水系の液を使用したことにより、この液に混在した油分を使用後の液から効率良く回収することができる、という優れた効果を奏する。
【0012】
(2)に記載する油分回収装置において、第2タンクは、使用後の液のうち、油分と分離した液を回収に向けて流出させる流通部を、油分回収流路の外側で当該第2タンクの下側に有していること、を特徴とする。この特徴により、第2タンクから供給される液には、油分の混入量が抑えられているため、再生する液の清浄度を高くすることができる。
【0013】
(3)に記載する油分回収装置において、ポンプは、使用後の液をインペラに流入させる入力ポートを、インペラに対し、その上側または下側で、かつ回転軸寄りの位置に配置してなること、を特徴とする。この特徴により、第1タンクに貯留した使用後の液の液面上からポンプ内にエアが入るのを抑制することができる。しかも、インペラで圧送する使用後の液は、第1タンクに貯留した使用後の液の中でも、油分が比較的多く浮上した表層から、滞りなく直接入力ポートに取り入れられる。そのため、油分をより多く占めた使用後の液は、インペラの回転により遠心力を受けた後、インペラを収容した流路の内壁等に作用したこの遠心力の反力等を受けて圧送される。使用後の液に含まれる油分の比重は、例えば、水である液の比重の約1/2等と小さいことから、油分をより多く占めた使用後の液のうち、液だけの成分は、上記反力等を受けながら圧送されても、インペラより高い位置の出力ポートに流れ難い。その反対に、分離の途中または分離した油分を含んだ成分は、上記反力等を受けながら圧送されても、この出力ポートに向けた流路内で浮上し易くなり、出力ポートに促進的に流れ易くなる。
【0014】
(4)に記載する油分回収装置において、第1タンクに貯留した使用後の液の中で、ポンプを載置して浮上可能なフロートを備えていること、を特徴とする。この特徴により、第1タンク内で使用後の液の液位が変化した場合や、使用後の液が波立った場合でも、ポンプの位置は、使用後の液の動きに追従して、インペラを使用後の液中に浸漬した状態を維持することができる。
【0015】
(5)に記載する油分回収装置において、浮いた状態のポンプが、第1タンクの上下方向に沿う方向への移動を許容すると共に、第1タンクの上下方向に対し、傾いた方向への動きを制限する姿勢制御手段を備えていること、を特徴とする。この特徴により、第1タンク内で使用後の液の液位が変化した場合や、使用後の液が波立った場合でも、ポンプは、傾くことなくフロートと共に、第1タンクと相対的に上下動でき、インペラ等を使用後の液中に浸漬した状態を維持することができる。ひいては、ポンプが、第1タンクに貯留した使用後の液を、より確実に圧送できる。
【0016】
(6)に記載する油分回収装置において、油分回収流路の最上端の高さを調節可能な液面調整部材が設けられていること、を特徴とする。この特徴により、第2タンクの油分回収部に対し、使用後の液の供給量が増えた場合でも、使用後の液の表層が油分回収流路に流出し始める位置を高くできる分、表層の液面が液面調整部材の上面に達するまでの時間に、表層の中で、油分が、液とより分離し易い状態になる。そのため、油分回収流路内に流出する表層の中で、油分に占める割合をより高くすることができ、液の含有をより少なくして、油分を効率良く回収することができる。
【0017】
(7)に記載する油分回収装置において、ポンプの出力ポートと第2タンクとの間の流路に、第3タンクを備え、第3タンクは、ポンプで吸引した使用後の液を取り入れる流入部を有すると共に、油分回収流路をなす油分回収管の最上端より低い位置で、第2タンクと連通して配管されていること、流入部は、第3タンクに貯留可能な使用後の液の液面位置より高い位置に配設されていること、を特徴とする。この特徴により、ポンプで使用後の液を第1タンクから吸引するのに伴い、気泡が、使用後の液と共に混入した場合でも、第3タンクは、気泡の第2タンクへの流通をより確かに抑制することができる。また、吸引した使用後の液を、第2タンクに供給するのに伴い、使用後の液が、第3タンクに貯留されている使用後の液の表層に流下したときに、気泡が発生した場合でも、第3タンクは、気泡の第2タンクへの流通をより確かに抑制することができる。
【0018】
(8)に記載する油分回収装置において、第3タンクは、当該第3タンクの底部と第2タンクの側部とを接合部で連結した構造により、第2タンクと一体に配設され、第2タンクの頂部側には、第2タンク内の領域と第3タンク内の領域とを区画する仕切りが、油分回収管と接合部との間に設けられていること、を特徴とする。この特徴により、第2タンクと第3タンクとをコンパクトにまとめて構成できることから、省スペースでも、本発明に係る油分回収装置を設置することができる。また、気泡を含む使用後の液に対し、気泡を除去した後、油分を除去して浄化した液を再生するにあたり、第3タンクで、気泡が効率良く除去でき、第2タンクで、油分が効率良く除去できるため、再生した液の清浄度は高い。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る油分回収装置について、実施形態1,2を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る油分回収装置は、水系の液を使用したことにより、使用後の液に混在した油分を、使用後の液から除去して回収する装置である。具体的には、本実施形態1,2に係る油分回収装置は、例えば、自動車用マフラーの製造にあたり、材料となる管(ワーク)に加工油を浸した状態で、曲げや絞り等の機械加工を施した後、この加工油を取り除く洗浄装置(図示省略)と共に、設置される。加工油は、例えば、プレス加工、絞り加工、曲げ加工、鍛造加工等の機械加工に用いる鉱物性の加工油剤で、洗浄液(本実施形態1,2では、温水)に対し疎水性を有した物性の油剤を対象としている。
【0021】
洗浄装置では、水系の洗浄液として、数十度の温水が、洗浄液タンク内の使用前貯留部(クリーン液槽)に貯められており、クリーン液槽内の温水を、高圧ポンプにより数MPaの吐出圧でノズルからワークに向けて噴射することにより、ワークに付着した加工油が洗い流される。噴射した使用後の洗浄液は、洗浄液タンク内の使用後貯留部(ダーティー液槽)に貯められる。この洗浄液は、洗い流した加工油を含んでおり、使用後の洗浄液に混在する油分は、本実施形態1,2の油分回収装置によって回収される。油分の回収後、浄化した洗浄液は、洗浄装置の洗浄液タンク内のクリーン液槽に還流され、次の脱脂洗浄に向けて使用される。このように、洗浄液は、洗浄装置と、本実施形態1,2の油分回収装置との間の流路を、繰り返し循環する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る油分回収装置の構成を概略的に示す説明図である。なお、第1タンク2の上下方向と、第2タンク3の上下方向はいずれも、
図1に示す上下方向VTに対応し、
図2以降の各図についても、
図1に準じる。
【0023】
図1に示すように、油分回収装置1は、第1タンク2と、第2タンク3と、ポンプ40とを備えている。第1タンク2は、前述した洗浄装置の洗浄液タンク内のダーティー液槽(図示省略)に連通する流入管路5を通じて、ダーティー液槽から第1流入口11に供給される使用後の洗浄液W1を、一時的に貯留するタンクである。
【0024】
第2タンク3は、
図1に示すように、洗浄液W2が流通可能な連通部35(本発明の流通部に対応)を挟んで、油分回収部20と洗浄液回収部30とを、1つの底部21に配置した構造で構成され、使用後の洗浄液W1を、洗浄液W2(温水)と油分L(加工油)とに分離し、洗浄液W2と油分Lとを別々に回収するタンクである。ポンプ40は、第1タンク2に貯留された使用後の洗浄液W1を第2タンク3に移送する。
【0025】
はじめに、ポンプ40について、説明する。
図2は、
図1に示す油分回収装置に構成されたポンプを、一部に断面図を用いて示す説明図である。ポンプ40は、
図2に示すように、大別して、図示しないモータを収容した駆動源収容部40Aと、この駆動源収容部40Aの真下に位置する流量制御部40Bとからなる。
【0026】
流量制御部40Bでは、モータの回転力に基づいて回転する回転軸41が、駆動源収容部40Aの真下に向けて、30cm程の長さで延びている。また、支持脚部46が、回転軸41の外周側で、回転軸41の周方向に2等分された位置に2つ、駆動源収容部40Aから垂下した形態で設けられている。なお、2つの支持脚部46のうち、一方は、中空になっており、他方は、中実になっている。インペラ42は、回転軸41の最下端に、回転軸41と共に回転可能に取付けられている。ポンプ40は、駆動源収容部40Aから数cm離れた位置まで、インペラ42と回転軸41を液体中に浸漬可能に構成されている。
【0027】
使用後の洗浄液W1をインペラ42に流入させる入力ポート43は、本実施形態1では、2つの支持脚部46の下端部同士をインペラ42の上側で繋ぐ支持上蓋部のうち、インペラ42に対し、その上側で、かつ回転軸41寄りの位置に、環状に開口して形成された部分である。インペラ42の下側は、支持下蓋部47で覆われており、支持上蓋部と支持下蓋部47とによって囲まれた内部空間に、インペラ42は収容されている。インペラ42の回転で圧送された使用後の洗浄液W1を流出させる出力ポート44は、インペラ42より高い駆動源収容部40A近傍の位置に配置されている。流量制御部40Bでは、入力ポート43と出力ポート44とを連通する圧送中間流路45は、インペラ42が回転する部分と、支持脚部46の中空部分とからなる。
【0028】
ポンプ40は、インペラ42の回転軸41を第1タンク2の上下方向VTに沿う姿勢で、インペラ42を、第1タンク2に貯留した使用後の洗浄液W1の液面下に浸漬可能な位置に配設されている。具体的には、ポンプ40は、
図1に示すように、ポンプ支持部60(本発明の姿勢制御手段に対応)により保持された状態で、第1タンク2に貯留した使用後の洗浄液W1に浮上可能なフロート50に、載置して取り付けられている。
【0029】
フロート50は、円筒状の基部51の上面に、扇型形状に形成された分割部52を4つ、互いに間隔を設けた状態で、基部51上面の周方向に4等分された位置に配置した完全密閉の中空体であり、ポンプ40やポンプ支持部60等の重さに対応した浮力を生じ得るステンレス製の浮きである。基部51の径は、ポンプ40の径に比して大きく、ポンプ40を安定した姿勢で載置するのに十分な大きさとなっている。配置された4つの分割部52の内周側は、浸漬されたポンプ40の流量制御部40Bを収容可能な空間を有しており、隣接する分割部52,52同士の間は、4箇所とも、第1タンク2に貯留した使用後の洗浄液W1を、ポンプ40の入力ポート43に導入する洗浄液取水口53となっている。なお、図示していないが、ポンプ40等の浮上対象物の重さに対し、浮力を制御する必要がある場合に備え、ウエイトバランスを適切にとることができるバランサユニットを、フロート50に取り付けても良い。
【0030】
ポンプ支持部60は、浮いた状態のポンプ40を、第1タンク2の上下方向VTへの移動を許容すると共に、上下方向VTに対し、傾いた方向への動きを制限するものである。このポンプ支持部60は、第1タンク2の蓋部10に取り付けられたガイドブッシュ62に、ガイド61を摺動可能に挿通し、ガイド61の下端を、フロート50の分割部52に固定した状態で、ガイド61の上端側を、ポンプ40の流量制御部40Bのフランジに摺動可能に保持している。ポンプ40は、2組のポンプ支持部60で保持して、フロート50に取り付けられている。
【0031】
次に、第2タンク3について、説明する。先に油分回収部20を説明した後に、洗浄液回収部30を説明する。
図4は、
図1に示す第2タンクの平面図である。第2タンク3の油分回収部20内の中央には、油分回収流路23Aをなす油分回収管路23が、第2タンク3の上下方向VTに沿い底部21を貫通して配設されている。油分回収管路23の上方先端部23Tの外周には、雄ネジ24が形成されている。油分回収部20は、貯留された使用後の洗浄液W1の断面積S(
図1参照、上下方向VTの矢視による断面積)が油分回収流路23Aの下方から上方に向けて小さくなるよう、油分回収管路23の周りで、当該油分回収部20の上側を下側よりも窄めた形状に形成されている。具体的には、油分回収部20は、その中央に油分回収管路23を配設し、四面の側部を、各側部とも当該油分回収部20の上側に向けて窄めた略ピラミッド型形状に形成されている。油分回収管路23の最上端23PTは、四面の側部の高さより低い位置となっている。
【0032】
油分回収部20の下方で底部21に近接した位置には、第2流入口22が設けられている。第2流入口22は、ポンプ40の出力ポート44に連通するタンク間接続管路6と接続され、タンク間接続管路6には逆止弁9が配管されている。第1タンク2に貯留された使用後の洗浄液W1は、ポンプ40により、タンク間接続管路6を通じて、逆流することなく第2流入口22に向けて圧送され、油分回収管路23の周りにある油分回収部20の内部空間20Sに供給される。なお、図示していないが、タンク間接続管路6にエア抜き弁が配管されていることが好ましい。停止状態にあるポンプ40が運転を開始すると、エアが運転開始時に、使用後の洗浄液W1の液面上から入力ポート43に入り易くなり、タンク間接続管路6内に入ったエアを、エア抜き弁を通じて外部に排気するためである。底部21には、整流壁29が設けられており、整流壁29は、第2流入口22から流入する使用後の洗浄液W1が連通部35を通じて洗浄液回収部30に直接流れるのを規制している。
【0033】
使用後の洗浄液W1が、油分回収部20の内部空間20Sに供給されて貯められると、使用後の洗浄液W1の表層SW(
図7参照)が、経時的に油分回収管路23の周囲に生成される。使用後の洗浄液W1の表層SWでは、使用後の洗浄液W1中の油分Lが、洗浄液W2とほぼ、または完全に分離した状態にあり、表層SWが、油分回収管路23の最上端位置(液面調整部材25の上端面)を少しでも超えると、油分Lが、油分回収管路23の上端から自由流下して、油分回収流路23Aを通じて、底部21下に配置した油分収容タンク4に回収される。
【0034】
前述したように、油分回収部20における4つの側部は、略ピラミッド型形状になっている。そのため、使用後の洗浄液W1が油分回収部20の内部空間20Sに貯まり続け、表層SWの位置が、油分回収部20内で次第に高くなるにつれて、下方向の矢視による平面視で見た表層SWの大きさ(面積)は、次第に小さくなる(
図1参照)。
【0035】
図5は、実施形態1に係る油分回収装置の液面調整部材を示す斜視図であり、この液面調整部材を、第2タンクの油分回収管路の上方先端部に装着した様子を、
図4中、A−A矢視断面で示した説明図を、
図6に示す。
図6に示すように、油分回収管路23の上方先端部23Tには、液面調整部材25が設けられている。液面調整部材25は、平面視形状を円環とした筒状の本体部26のうち、上端側の端面に、3つの拡張片部27を等分間隔で取り付けた部材であり、本体部26内周側には、雌ネジ28が、油分回収管路23の雄ネジ24と螺合可能に形成されている。液面調整部材25は、油分回収管路23との相対的な回転で、油分回収管路23の上方先端部23Tの雄ネジ24との噛み合い量を変化させることにより、油分回収管路23の上方先端部23T端面からの高さを、高さ調整範囲H内で自在に調整できる。
【0036】
螺合時に、この液面調整部材25を直に掴んで回転しようとすると、油分回収部20に貯めた使用後の洗浄液W1に含む油分L等に起因して滑ることがあるため、作業者は、拡張片部27を用いて液面調整部材25を回転することで、油分回収管路23の高さが容易に調整できる。また、3つの拡張片部27は、液面調整部材25の本体部26を中心に放射状に設けられているため、使用後の洗浄液W1の表層SWから分離した油分Lが、油分回収流路23A内に自由流下するときに、拡張片部27が、流れ出ようとする油分Lの流れを整流し、油分Lの油分回収流路23Aへの流下を促進し易くしている。
【0037】
次に、第2タンク3の洗浄液回収部30について説明する。
図7は、実施形態1に係る油分回収装置の作用を説明する模式図である。
図7に示すように、油分回収部20の内部空間20Sに供給された使用後の洗浄液W1では、時間の経過と共に分離した油分Lを含む表層SWが、油分回収部20の頂部側(
図1中、上側)に生成される。この表層SWより下層は、使用後の洗浄液W1のうち、油分Lを除いた洗浄液W2の液層であり、この洗浄液W2が、整流壁29の奥側(
図1中、整流壁29の左側)と連通部35を通じて、洗浄液回収部30の内部空間30Sに流通する。連通部35は、油分回収管路23の外側に設けられ、油分回収部20の内部空間20Sと洗浄液回収部30の内部空間30Sとを接続して連通されている。
【0038】
第2タンク3の洗浄液回収部30は、その中央に洗浄液回収管路31を配設し、四面の側部を四角枠状に形成して設けられている。洗浄液回収管路31は、第2タンク3の上下方向VTに沿い底部21を貫通して配設され、洗浄液回収管路31の最上端は、四面の側部の高さより低い位置となっている。また、この洗浄液回収管路31には、本実施形態1では、三方弁9Bが配管されている。三方弁9Bは、入力ポートから流れる流体を、2つの出力ポートのうちの何れかの出力ポートに、スイッチ操作で制御して流す流体制御弁である。三方弁9Bの入力ポートは洗浄液回収管路31に、一の出力ポートは循環管路7に、他の出力ポートは流出管路8に、それぞれ連通されている。
【0039】
内部空間30Sに供給された洗浄液W2が、洗浄液回収管路31の最上端位置を少しでも超えると、この洗浄液W2は、洗浄液回収管路31の上端から自由流下して、三方弁9Bの入力ポートに流れる。一の出力ポートが開路し、他の出力ポートが閉路している状態では、洗浄液W2は、循環管路7を通じて第1タンク2に戻される。他方、一の出力ポートが閉路し、他の出力ポートが開路している状態では、洗浄液W2は、流出管路8を通じて、図示しないポンプにより、洗浄装置の洗浄液タンク内のクリーン液槽に還流される。
【0040】
このように、本実施形態1では、洗浄液回収管路31に流れ出た洗浄液W2を、第1タンク2に戻す循環管路7と、洗浄液タンク内のクリーン液槽に戻す流出管路8と、を別々に設け、洗浄液W2の流れが、三方弁9Bの切り換えにより、これら2つの流路から選択できている。ここで、その理由について、簡単に述べる。
【0041】
油分回収装置1は、前述したように、本実施形態1では、自動車用マフラーの製造で、材料となる管(ワーク)に加工油を浸した状態で、曲げや絞り等の機械加工を施した後、この加工油を取り除く洗浄装置と共に、設置されている。自動車用マフラーのような機械加工部品を量産体制で製造する場合、機械加工工程でワークに付着した加工油を洗浄装置で洗い流す洗浄工程では、洗浄液は、使用後に浄化して繰り返し使用される。その洗浄工程に掛かるタクトタイムは、秒単位を競う比較的短い時間に設定されていることが多い。そのため、使用後の洗浄液W1に含まれる油分Lを、油分回収装置1の第2タンク3に1回パスするだけでは、洗浄液回収管路31から流れ出た洗浄液W2は、十分に浄化されておらず、洗浄装置での再使用にあたり、洗浄液W2の浄化精度をさらに上げたいこともある。
【0042】
このような場合に備え、洗浄液回収管路31から流出する洗浄液W2を、第1タンク2に戻して油分回収部20に再び通過させ、第1タンク2と第2タンク3との間を繰り返し循環して流通させれば、油分Lの回収効率は向上する。但し、このような油分Lの回収効率の向上を図る作業は、洗浄液W2の洗浄装置への供給を一時的に停止して行う必要がある。そこで、生産現場で、洗浄装置を稼働していない時間帯(例えば、夜間や、昼間の生産時間帯と夜間の生産時間帯との間の空き時間、生産現場の休日等)に油分回収装置1を利用して、回収効率の向上を図る作業を実施すれば、機械加工部品の生産に影響がなく、油分Lを効率良く回収できる。それ故に、洗浄液回収管路31に流れ出た洗浄液W2を流す流路が、循環管路7と流出管路8とに選択できると、油分Lの回収効率が向上し、洗浄液W2の浄化精度をさらに上げることができるからである。
【0043】
勿論、三方弁9Bや循環管路7を設けず、洗浄液回収管路31から流れ出た洗浄液W2が、洗浄液タンク内のクリーン液槽に直接還流される流路のほか、洗浄液回収管路31から流れ出た洗浄液W2の一部が、洗浄液タンク内のクリーン液槽に戻される流路と、洗浄液W2のその残部が、第1タンク2に戻される流路とを、並設しても良い。
【0044】
次に、本実施形態1に係る油分回収装置1の作用・効果について説明する。本実施形態1に係る油分回収装置1は、洗浄液W2を使用したことにより、使用後の洗浄液W1に混在した油分Lを、使用後の洗浄液W1から除去して回収する油分回収装置において、使用後の洗浄液W1を貯留する第1タンク2と、使用後の洗浄液W1から分離した油分Lを回収する第2タンク3と、第1タンク2内の使用後の洗浄液W1を第2タンク3内に移送するポンプ40と、を備えている。ポンプ40は、インペラ42の回転軸41を第1タンク2の上下方向VTに沿う姿勢で、インペラ42を、第1タンク2に貯留した使用後の洗浄液W1の液面下に浸漬可能な位置に配設され、インペラ42の回転で圧送された使用後の洗浄液W1を流出させる出力ポート44が、インペラ42より高い位置に配置されている。第2タンク3は、分離した油分Lを回収する油分回収管路23を、当該第2タンク3の上下方向VTに沿って有し、貯留された使用後の洗浄液W1の断面積Sが油分回収流路23Aの下方から上方に向けて小さくなるよう、油分回収管路23の周りで、当該第2タンク3の上側を下側よりも窄めた形状に形成されていること、を特徴とする。この特徴により、下方向の矢視による平面視で見た表層SWの大きさ(面積)は、油分回収管路23の上端側で次第に小さくなるため、表層SWの液面近傍では、油分Lの表面張力により、油分Lの単一の個体同士が集積し易くなる。そのため、使用後の洗浄液W1に占める洗浄液W2の歩留まりを高くしたまま、使用後の洗浄液W1に混ざった油分Lを効率良く回収することができる。
【0045】
また、インペラ42の回転により圧送された使用後の洗浄液W1は、ポンプ40の回転軸41の径方向外側に遠心力を受けるが、ポンプ40の出力ポート44は、回転軸41の軸方向上方で、インペラ42より高い位置にあるため、圧送された使用後の洗浄液W1は、出力ポート44にスムーズに流れ難い。そのため、圧送時には、使用後の洗浄液W1に含まれる油分Lの成分と洗浄液W2の成分とでは、油分Lの比重が洗浄液W2より小さいこと等に起因して、油分Lの成分と洗浄液W2の成分との分離が促進され、油分Lが、洗浄液W2よりも、出力ポート44に向けて積極的に流れ易い状態となって、油分Lの回収効率は向上する。
【0046】
従って、本実施形態1に係る油分回収装置1によれば、温水である洗浄液W2を使用したことにより、使用後の洗浄液W1に混在した油分Lを、使用後の洗浄液W1から効率良く回収することができる、という優れた効果を奏する。
【0047】
また、本実施形態1に係る油分回収装置1では、第2タンク3の油分回収部20は、使用後の洗浄液W1のうち、油分Lと分離した洗浄液W2を回収に向けて流出させる連通部35を、油分回収管路23の外側で、当該油分回収部20の下側に有していること、を特徴とする。この特徴により、第2タンク3において、油分回収部20の内部空間20Sから洗浄液回収部30の内部空間30Sに供給される洗浄液W2には、油分Lの混入量が抑えられているため、再生する洗浄液W2の清浄度を高くすることができる。
【0048】
また、本実施形態1に係る油分回収装置1では、ポンプ40は、使用後の洗浄液W1をインペラ42に流入させる入力ポート43を、インペラ42に対し、その上側で、かつ回転軸41寄りの位置に配置してなること、を特徴とする。この特徴により、第1タンク2に貯留した使用後の洗浄液W1の液面上からポンプ40内にエアが入るのを抑制することができる。しかも、インペラ42で圧送する使用後の洗浄液W1は、第1タンク2に貯留した使用後の洗浄液W1の中でも、油分Lが比較的多く浮上した表層から、滞りなく直接入力ポート43に取り入れられている。そのため、油分Lをより多く占めた使用後の洗浄液W1は、インペラ42の回転により遠心力を受けた後、インペラ42を収容した圧送中間流路45の一部(支持上蓋部と支持下蓋部47とに囲まれた流路の部分)の内壁等に作用したこの遠心力の反力等を受けて、圧送される。使用後の洗浄液W1に含まれる油分Lの比重は、例えば、水である洗浄液W2の比重の約1/2等と小さいことから、油分Lをより多く占めた使用後の洗浄液W1の液のうち、洗浄液W2だけの成分は、上記反力等を受けながら圧送されても、インペラ42より高い位置の出力ポート44に流れ難い。その反対に、分離の途中または分離した油分Lを含んだ成分は、上記反力等を受けながら圧送されても、この出力ポート44に向けた圧送中間流路45内で浮上し易くなり、出力ポート44に促進的に流れ易くなる。
【0049】
また、本実施形態1に係る油分回収装置1では、第1タンク2に貯留した使用後の洗浄液W1の中で、ポンプ40を載置して浮上可能なフロート50を備えていること、を特徴とする。この特徴により、第1タンク2内で使用後の洗浄液W1の液位が変化した場合や、使用後の洗浄液W1が波立った場合でも、ポンプ40の位置は、使用後の洗浄液W1の動きに追従して、インペラ42と入力ポート43とを使用後の洗浄液W1中に浸漬した状態を維持することができる。
【0050】
また、本実施形態1に係る油分回収装置1では、浮いた状態のポンプ40が、第1タンク2の上下方向VTに沿う方向への移動を許容すると共に、第1タンク2の上下方向VTに対し、傾いた方向への動きを制限するポンプ支持部60を備えていること、を特徴とする。この特徴により、第1タンク2内で使用後の洗浄液W1の液位が変化した場合や、使用後の洗浄液W1が波立った場合でも、ポンプ40は、傾くことなくフロート50と共に、第1タンク2の蓋部10と相対的に上下動でき、インペラ42と入力ポート43とを使用後の洗浄液W1中に浸漬した状態を維持することができる。ひいては、ポンプ40が、使用後の洗浄液W1をより確実に圧送できる。
【0051】
また、本実施形態1に係る油分回収装置1では、油分回収管路23の最上端23PTの高さを調節可能な液面調整部材25が設けられていること、を特徴とする。この特徴により、第2タンク3の油分回収部20に対し、使用後の洗浄液W1の供給量が増えた場合でも、表層SWが油分回収管路23の油分回収流路23Aに流出し始める位置を高くできる分、表層SWの液面が液面調整部材25の本体部26上面に達するまでの時間に、表層SWの中で、油分Lが、洗浄液W2とより分離し易い状態になる。そのため、油分回収管路23内に流出する表層SWの中で、油分Lに占める割合をより高くすることができ、洗浄液W2の含有をより少なくして、油分Lを効率良く回収することができる。特に、液面調整部材25の本体部26上面の位置が、油分回収管路23の上方先端部23T端面の位置より高くなれば、下方向の矢視による平面視で見た表層SWの大きさ(面積)は、さらに小さくなるため、表層SWの液面近傍では、油分Lの表面張力により、油分Lの単一の個体同士が一層集積し易くなる。そのため、油分回収管路23に流れ出る油分Lの回収効率は、より高くなり、油分Lを除去した洗浄液W2の浄化度は高くなる。
【0052】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る油分回収装置について、説明する。実施形態1の油分回収装置1では、ポンプ40の出力ポート44と、第2タンク3の油分回収部20の第2流入口22とをタンク間接続管路6で接続し、ポンプ40で吸引した使用後の洗浄液W1を、油分回収部20の内部空間20Sに直接供給した。これに対し、実施形態2の油分回収装置101では、ポンプ40で吸引した使用後の洗浄液W1を、第3タンク70の流入部80を介して、第2タンク3の油分回収部20の内部空間20Sに供給している。実施形態1と実施形態2では、使用後の洗浄液W1の供給先と、タンク間接続管路6に逆止弁9Aの有無等が異なるが、それ以外の部分は、実施形態1と同様である。従って、実施形態1とは異なる部分を中心に説明し、その他について説明を簡略または省略する。
【0053】
図8は、実施形態2に係る油分回収装置の構成を概略的に示す説明図であり、
図8に示す第2タンク及び第3タンクの平面図を、
図9に示す。
図8に示すように、油分回収装置101は、第1タンク2と、第2タンク3と、流入部80と一体構造の第3タンク70と、ポンプ40とを備えている。
【0054】
ポンプ40は、
図8に示すように、ポンプ支持部60により保持された状態で、第1タンク2に貯留した使用後の洗浄液W1に浮上可能なフロート50に、載置して取り付けられている。ポンプ支持部60は、浮いた状態のポンプ40を、第1タンク2の上下方向VTへの移動を許容すると共に、上下方向VTに対し、傾いた方向への動きを制限するものである。このポンプ支持部60は、第1タンク2に固着したブラケット65に取り付けられたガイドブッシュ62に、ガイド61を摺動可能に挿通し、ガイド61の下端を、フロート50の分割部52に固定した状態で、ガイド61の上端側を、ポンプ40の流量制御部40Bのフランジに摺動可能に保持している。ポンプ40は、2組のポンプ支持部60で保持して、フロート50に取り付けられている。
【0055】
特に、使用後の洗浄液W1による波立ちに起因してフロート50に多少の揺らぎが生じても、ポンプ支持部60のガイドブッシュ62が、第1タンク2に固着したブラケット65にしっかりと固定してガイド61を保持している。そのため、フロート50の揺らぎによってガイド61の傾きがより確実に抑制され、ガイド61と連結するポンプ40は、より安定した姿勢で維持されている。なお、ポンプ40が安定した姿勢で浮上できれば良く、フロート50の形状や分割部52の形状は、適宜変更可能である。
【0056】
次に、第3タンク70について、説明する。第3タンク70は、ポンプ40の出力ポート44と第2タンク3の油分回収部20との間の流路に設けられている。第3タンク70は、タンク間接続管路6を通じて、ポンプ40で吸引した使用後の洗浄液W1を取り入れる流入部80を有すると共に、第2タンク3の油分回収部20において、油分回収流路23Aをなす油分回収管路23の最上端23PT(
図11参照)より低い位置で、油分回収部20の内部空間20Sと連通して配管されている。流入部80は、第3タンク70に貯留可能な使用後の洗浄液W1の液面位置LH(
図11参照)より高い位置に配設されている。
【0057】
具体的に説明する。本実施形態1で説明したように、油分回収部20は、貯留された使用後の洗浄液W1の断面積S(
図1参照、上下方向VTの矢視による断面積)が油分回収流路23Aの下方から上方に向けて小さくなるよう、油分回収管路23の周りで、当該油分回収部20の上側を下側よりも窄めた形状に形成されている。すなわち、油分回収部20は、その中央に油分回収管路23を配設し、四面の側部を、各側部とも当該油分回収部20の上側に向けて窄めた略ピラミッド型形状に形成されている。
【0058】
図8及び
図9に示すように、第3タンク70は、本実施形態2では、平面視による外形を長方形形状に形成し、当該第3タンク70の底部71と、第2タンク3の油分回収部20の側部21Aとを接合部73で連結した構造により、油分回収部20と一体で配設されている。第3タンク70の底部71は、油分回収管路23の液面調整部材25より低い位置にある。油分回収部20の側部において、四面のうちの一面である側部21Aは、その頂部側(
図8中、上側)の先端を、他の三面の各側部より低くしており、側部21Aの頂部側先端部は、水平方向に延びる第3タンク70の底部71の一端部(
図11中、左側)と、溶接により接合部73で接続されている。第3タンク70は、底部71の他端部(
図11中、右側)から立設した側部72と、
図11の紙面表裏方向に接続する両側部を有し、この第3タンク70の両側部は、油分回収部20の側部21Aに隣り合う油分回収部20の両側部と面一になっている。
【0059】
図10は、実施形態2に係る油分回収装置の第2タンク及び第3タンクに、使用後の洗浄液が供給された様子を平面視で示した模式図である。
図11は、
図9中、B−B矢視断面図であり、実施形態2に係る油分回収装置の作用を説明する模式図である。第2タンク3の油分回収部20の頂部側(
図8中、上側)には、仕切り75が、油分回収管路23と接合部73との間に設けられている。仕切り75は、第3タンク70内の領域T1と油分回収部20内の領域T2とを区画する部材であり、
図10に示すように、第3タンク70に貯まった使用後の洗浄液W1の液面近傍にある表層と、油分回収部20に貯まった使用後の洗浄液W1の液面近傍にある表層とを分けて、双方の表層の混合を防いでいる。
【0060】
流入部80は、
図11に示すように、接続されたタンク間接続管路6と連通する供給口82と、供給口82から本体部81の内部空間に流入した使用後の洗浄液W1を第3タンク70に流出する排出口83とを具備している。この流入部80は、ボルト締め等の固定具85により、第3タンク70の側部72に装着されている。第3タンク70内は、油分回収部20の内部空間20Sと連通しているため、
図11に示すように、油分回収部20と第3タンク70の両方で、排出口83から供給された使用後の洗浄液W1の液面位置LHは、油分回収管路23の最上端23PTの位置になる。流入部80の排出口83は、この液面位置LH(
図11参照)より高い位置に配設されている。
【0061】
なお、油分回収管路23の上方先端部23Tに液面調整部材25が装着され、油分回収管路23の上方先端部23T端面からの高さが、高さ調整範囲H内で自在に調整できるため、使用後の洗浄液W1の液面位置LHが可変する。そのため、液面位置LHの変化に合わせて、流入部80の排出口83の高さが、固定具85で可変できると良い。
【0062】
油分回収装置101では、ポンプ40が、第1タンク2に貯留された使用後の洗浄液W1を吸引すると、
図11に示すように、使用後の洗浄液W1は、タンク間接続管路6を通じて、流入部80の供給口82より本体部81内の流路を流れ、排出口83から第3タンク70に自由流下する。この使用後の洗浄液W1が、ポンプ40により第1タンク2から吸引されるときに、ポンプ40は、第1タンク2内の空気を含んで使用後の洗浄液W1を、タンク間接続管路6に圧送することもある。第3タンク70には、その空気による気泡Vも、使用後の洗浄液W1と共に、排出口83から排出されて、第3タンク70に貯留されている使用後の洗浄液W1の表層に貯まる。また、排出口83から第3タンク70に使用後の洗浄液W1が自由流下するのに伴い、第3タンク70内の空気が、第3タンク70に貯留されている使用後の洗浄液W1の液層に入り込み、その空気による気泡Vが、第3タンク70に貯留されている使用後の洗浄液W1の表層に貯まる。
【0063】
しかしながら、
図10及び
図11に示すように、このような気泡Vは、第2タンク3の油分回収部20内の領域T2に移動することなく、第3タンク70内の領域T1で、第3タンク70に貯留されている使用後の洗浄液W1の表層に浮上し、この表層やその上方に留まって経時的に消滅する。また、第3タンク70は、接合部73と仕切り75との間の流路で、第2タンク3の油分回収部20の内部空間20Sと連通しているため、気泡Vを除いた状態の使用後の洗浄液W1が、仕切り75の下を通過して第2タンク3の油分回収部20の内部空間20Sに流通する。
【0064】
気泡Vを除いた状態の使用後の洗浄液W1が、油分回収部20の内部空間20Sに供給されて貯められると、使用後の洗浄液W1の表層SW(
図11参照)が、経時的に油分回収管路23の周囲に生成される。使用後の洗浄液W1の表層SWでは、使用後の洗浄液W1中の油分Lが、洗浄液W2とほぼ、または完全に分離した状態にあり、表層SWが、油分回収管路23の最上端位置(液面調整部材25の上端面)を少しでも超えると、油分Lが、油分回収管路23の上端から自由流下して、油分回収流路23Aを通じて、底部21下に配置した油分収容タンク4に回収される。
【0065】
使用後の洗浄液W1の表層SWより下層は、使用後の洗浄液W1のうち、油分Lを除いた洗浄液W2の液層であり、この洗浄液W2が、整流壁29の奥側(
図8中、整流壁29の左側)と連通部35を通じて、洗浄液回収部30の内部空間30Sに流通する。内部空間30Sに供給された洗浄液W2が、洗浄液回収管路31の最上端位置を少しでも超えると、この洗浄液W2は、洗浄液回収管路31の上端から自由流下して、三方弁9Bの入力ポートに流れる。一の出力ポートが開路し、他の出力ポートが閉路している状態では、洗浄液W2は、循環管路7を通じて第1タンク2に戻される。他方、一の出力ポートが閉路し、他の出力ポートが開路している状態では、洗浄液W2は、流出管路8を通じて、図示しないポンプにより、洗浄装置の洗浄液タンク内のクリーン液槽に還流される。
【0066】
次に、本実施形態2に係る油分回収装置101の作用・効果について説明する。本実施形態1に係る油分回収装置1と同様、本実施形態2に係る油分回収装置101でも、その作用・効果は、段落[0044]〜段落[0051]に記載した内容の通り、実施形態1に係る油分回収装置1に及ぼす作用・効果と同じで重複する。そのため、ここでは、重複した効果の説明は再掲するが、重複した作用の説明は割愛して、本実施形態2に係る油分回収装置101に及ぼす新たな作用についてのみ、説明する。
【0067】
効果として、本実施形態2に係る油分回収装置101によれば、温水である洗浄液W2を使用したことにより、使用後の洗浄液W1に混在した油分Lを、使用後の洗浄液W1から効率良く回収することができる、という優れた効果を奏する。
【0068】
本実施形態2に係る油分回収装置101に及ぼす新たな作用として、本実施形態2に係る油分回収装置101では、ポンプ40の出力ポート44と第2タンク3の油分回収部20との間の流路に、第3タンク70を備え、第3タンク70は、ポンプ40で吸引した使用後の洗浄液W1を、タンク間接続管路6を通じて、供給口82から取り入れる流入部80を有すると共に、油分回収流路23Aをなす油分回収管路23の最上端23PTより低い位置で、第2タンク3の油分回収部20の内部空間20Sと連通して配管されていること、流入部80は、第3タンク70に貯留可能な使用後の洗浄液W1の液面位置LHより高い位置に配設されていること、を特徴とする。この特徴により、ポンプ40で使用後の洗浄液W1を第1タンク2から吸引するのに伴い、気泡Vが、使用後の洗浄液W1と共に混入した場合でも、第3タンク70は、気泡Vの油分回収部20への流通をより確かに抑制することができる。また、タンク間接続管路6を通じて、吸引した使用後の洗浄液W1を、第2タンク3の油分回収部20に供給するのに伴い、使用後の洗浄液W1が、第3タンク70に貯留されている使用後の洗浄液W1の表層に自由流下したときに、気泡Vが発生した場合でも、第3タンク70は、気泡Vの油分回収部20への流通をより確かに抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態2に係る油分回収装置101では、第3タンク70は、当該第3タンク70の底部71と第2タンク3の油分回収部20の側部21Aとを接合部73で連結した構造により、第2タンク3の油分回収部20と一体に配設され、第2タンク3の油分回収部20の頂部側には、第2タンク3の油分回収部20内の領域T1と第3タンク70内の領域T2とを区画する仕切り75が、油分回収管路23と接合部73との間に設けられていること、を特徴とする。この特徴により、第2タンク3と第3タンク70とをコンパクトにまとめて構成できることから、省スペースでも油分回収装置101を設置することができる。また、気泡Vを含む使用後の洗浄液W1に対し、気泡Vを除去した後、油分Lを除去して浄化した洗浄液W2を再生するにあたり、第3タンク70で、気泡Vが効率良く除去でき、第2タンク3で、油分Lが効率良く除去できるため、再生した洗浄液W2の清浄度は高い。
【0070】
特に、第2タンク3と一体構造で構成した第3タンク70は、油分回収部20の頂部側において、接合部73と仕切り75との間の流路で、第2タンク3の油分回収部20の内部空間20Sと連通し、第3タンク70から油分回収部20に供給される使用後の洗浄液W1が、ポンプ等で強制的に圧送されなくても、ある程度の時間をかけた自然の流れで、仕切り75の下を通過して油分回収部20の内部空間20Sに流通できている。そのため、油分回収部20の内部空間20Sに流通する間に、使用後の洗浄液W1に含む洗浄液W2と油分Lとの分離が促進され易い。また、油分回収部20の内部空間20Sに流通しようとする使用後の洗浄液W1に、前もって第3タンク70で消滅できていない気泡Vがたとえ混入していた場合でも、このような気泡Vは後に、再びこの第3タンク70に浮上して戻り、消滅させることができる。あるいは、気泡Vは、油分回収部20の内部空間20Sに浮上して、回収する油分Lと共に、油分回収流路23Aを通じて油分収容タンク4に排出することができる。
【0071】
以上において、本発明を実施形態1,2に即して説明したが、本発明は上記実施形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
(1)例えば、実施形態1,2では、油分回収装置1,101の概略的な構成について、
図1,8を用いて説明したに過ぎず、
図1,8に示す油分回収装置1,101の構成に限定されるものではない。一例として、第2タンク3、ポンプ40、及び油分回収管路23等は、いずれも1つだけであり、ポンプ40と第2タンク3とを、1系統のタンク間接続管路6で接続したが、1つのポンプ40と、複数設置された第2タンク3とを、複数の系統で並列接続しても良い。このように、ポンプに対し、複数の系統で複数の第2タンクが接続されると、処理しようとする使用後の液に対し、油分を回収できる単位時間当たりの処理量を大幅に増すことができる。また、本発明に係る油分回収装置では、第2タンク、第3タンク、流入部、油分回収管路、及び液面調整部材において、それぞれの形状や数量、構成は、実施形態に限定されるものでなく、適宜変更可能である。
【0072】
(2)また、実施形態1,2では、入力ポート43を、インペラ42に対し、その上側で、かつ回転軸41寄りの位置に環状に配置したポンプ40を用いたが、ポンプは、
図3に示すように、インペラに対し、その下側で、かつ回転軸寄りの位置に入力ポートを配置したポンプを用いても良い。
図3は、変形例に係るポンプを示す説明図である。ポンプ40Xは、回転軸41Aの下方で、インペラ42Aの下側を覆う支持下蓋部47Aの中央部を、円形状に開口して形成された入力ポート43Aを有している。ポンプ40Xの出力ポート44Aと入力ポート43Aとを連通する圧送中間流路45Aは、インペラ42Aの外周側にある環状部分と、支持脚部46Aの中空部分とからなる。
【0073】
(3)また、実施形態1,2では、油分回収装置1,101を用いた油分Lの回収対象を、ワークに付着した加工油を洗い流す洗浄装置の洗浄液とした。しかしながら、水系の液を使用したことにより、使用後の液に混在した油分を、使用後の液から除去して回収する対象は、一例に挙げた実施形態に限定されるものではなく、水系の液に、疎水性を有した物性の油分が混じった使用後の液から、この油分を回収するものであれば、本発明に係る油分回収装置は、何でも適用しても良い。
【0074】
(4)また、実施形態2では、タンク間接続管路6には逆止弁を設けていないが、実施形態1のように、必要に応じて、逆止弁9Aをタンク間接続管路6に設けても良い。