特許第6410879号(P6410879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6410879
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】車両用ミラー代替システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/00 20060101AFI20181015BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20181015BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20181015BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   B60R1/00 A
   G08G1/0968 B
   G08G1/16 C
   H04N7/18 J
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-114985(P2017-114985)
(22)【出願日】2017年6月12日
(65)【公開番号】特開2018-24413(P2018-24413A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2017年6月12日
(31)【優先権主張番号】10 2016 007 522.8
(32)【優先日】2016年6月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500020380
【氏名又は名称】メクラ・ラング・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】MEKRA Lang GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・モールトン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・ラング
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−40140(JP,A)
【文献】 特開2013−109505(JP,A)
【文献】 特開2017−100718(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/056495(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0015248(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00
G08G 1/0968
G08G 1/16
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に外装され、前記車両の周囲の視野の少なくとも1つを撮像する少なくとも1つの撮像ユニット(2)と、
運転者から見えるように設置された少なくとも1つの画像表示ユニット(7)と、
前記運転者からの入力情報を検出する少なくとも1つのドライバセンサ(4)と、
前記少なくとも1つのドライバセンサ(4)から受信したドライバパラメータ(8)に基づいて再フォーマットパラメータ(10)を制御する動作制御部(3)と、
前記少なくとも1つの撮像ユニット(2)から受信した映像データを前記再フォーマットパラメータ(10)に応じて再フォーマットし、再フォーマットされた前記映像データを前記少なくとも1つの画像表示ユニット(7)に転送して表示させる撮像ユニット制御部(6)と、
を備えた車両用のミラー代替システム(1)であって、
前記動作制御部(3)は、前記映像データが前記再フォーマットパラメータ(10)を用いて再フォーマットされる場合にリアルタイムで前記ミラー代替システム(1)が所定の動作範囲内に収まるか否かを計算するために前記ドライバパラメータ(8)を利用するとともに、前記ミラー代替システム(1)の動作が前記動作範囲内に収まるように前記再フォーマットパラメータ(10)を制御する、
ミラー代替システム(1)。
【請求項2】
前記ミラー代替システム(1)は、
前記ミラー代替システム(1)の動作が前記動作範囲に収まるように前記再フォーマットパラメータ(10)の再フォーマット範囲を設定する、
請求項1記載のミラー代替システム(1)。
【請求項3】
前記撮像ユニット制御部(6)および前記動作制御部(3)の少なくとも一方は、
さらに、前記再フォーマットパラメータ(10)の前記再フォーマット範囲を規定するように構成される、
請求項2記載のミラー代替システム(1)。
【請求項4】
前記視野は、
外装主ミラーの視野および外装広角ミラーの視野の少なくとも一方の視野に対応する、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のミラー代替システム(1)。
【請求項5】
前記動作範囲は、
視野の表示および車両寸法に関する1または2以上の法定要件に基づいて規定される、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のミラー代替システム(1)。
【請求項6】
前記再フォーマット範囲は、
1または2以上のユーザの入力、好ましくは、ズーム設定、解像度設定、コントラスト設定、追加的な図形入力、及び/又は重畳表示入力、に基づいて規定される、
請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載のミラー代替システム(1)。
【請求項7】
前記車両から車両パラメータ情報を検出する少なくとも1つの車両センサ(5)をさらに備え、
前記動作制御部(3)は、
前記少なくとも1つの車両センサ(5)から受信した複数の車両パラメータ(9)に基づいて前記再フォーマットパラメータ(10)を制御する、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のミラー代替システム(1)。
【請求項8】
前記複数の車両パラメータ(9)は、
車両の走行方向、車両速度、車両位置、トレーラの有無、および運転者の運転操作の少なくとも1つを含む、
請求項7記載のミラー代替システム(1)。
【請求項9】
前記動作制御部(3)および前記撮像ユニット制御部(6)の少なくとも一方は、
運転状況および気象状態の少なくとも一方に基づいて前記動作範囲を規定する、
請求項7または請求項8に記載のミラー代替システム(1)。
【請求項10】
前記運転者からの入力情報および車両パラメータ情報の少なくとも一方に基づいて、前記少なくとも1つの撮像ユニット(2)から受信した1又は2以上の画像を解析する画像解析ユニット、
をさらに備えた請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のミラー代替システム(1)。
【請求項11】
前記動作制御部(3)および前記撮像ユニット制御部(6)の少なくとも一方は、
外部のサーバから交通データを受信するとともに前記交通データを用いて表示情報を生成する、
請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のミラー代替システム(1)。
【請求項12】
前記動作制御部(3)および前記撮像ユニット制御部(6)の少なくとも一方は、
1又は2以上の距離センサユニットから付加的なセンサデータを受信するとともに前記付加的なセンサデータを用いて表示情報を生成する、
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のミラー代替システム(1)。
【請求項13】
前記動作制御部(3)および前記撮像ユニット制御部(6)の少なくとも一方は、
障害物の情報を有する衝突予測情報などの安全情報に基づいて前記再フォーマットパラメータの再フォーマット範囲(10)を規定するとともに前記安全情報を用いて表示情報を生成する、
請求項2ないし請求項13のいずれか1項に記載の車両用ミラー代替システム(1)であって、請求項2に従属する請求項に記載のミラー代替システム(1)。
【請求項14】
前記動作制御部(3)および前記撮像ユニット制御部(6)は、
同一のハードウェア内に実装された、
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載のミラー代替システム(1)。
【請求項15】
前記ドライバセンサ(4)は、タッチパッド、視線追跡装置、音声制御装置、レバー、ジョイスティック、およびボタンの少なくとも1つを1または複数含む、
請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載のミラー代替システム(1)。
【請求項16】
前記動作制御部(3)および前記撮像ユニット制御部(6)の少なくとも一方により設定される前記再フォーマットパラメータ(10)の再フォーマット範囲は、
表示される画像に要求される最低の解像度を保証する範囲を含む、
請求項2ないし請求項15のいずれか1項に記載の車両用ミラー代替システム(1)であって、請求項2に従属する請求項に記載のミラー代替システム(1)。
【請求項17】
前記撮像ユニット制御部(6)は、
モニタに関する付加的な情報、好ましくはモニタに重畳表示される図形、を生成する、
請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載のミラー代替システム(1)。
【請求項18】
前記再フォーマットパラメータ(10)は、
アスペクト比、ズーム、抽出された画像の表示ウインドウの位置、解像度、コントラスト、ワーピング/デワーピングおよび通信プロトコル、物理的な通信媒体、および付加的な重畳図形の生成、の少なくとも1つを1または複数含む、
請求項1ないし請求項17のいずれか1項に記載のミラー代替システム(1)
【請求項19】
前記撮像ユニット(2)は、
前記動作制御部(3)に直接接続される、
請求項1ないし請求項18のいずれか1項に記載のミラー代替システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、本発明は、車両用ミラー代替システムに関し、特に商用車用ミラー代替システムに関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
車両(motor vehicles)では、たとえば自動二輪車、乗客運送用の車両、荷物輸送用の車両等の車両種にもとづいて、いわゆる視野(fields of view)が法的に規定されている。この視野は、間接的に見るための装置(以下、間接視装置という)によって確保されなければならず、また、間接視装置を介して運転席に着座している運転者から常に視認可能でなければならない。車両の種類に応じて、特に、運転者が直接視認可能な車両周囲領域に応じて、間接視装置を介して所定の視野を永続的かつ常に確実に見えるようにすることが種々の法規定によって要求されている。欧州では、運転者に対して常に確実に見えるようにしなければならない視野は、後述のUN/ECE(国際連合欧州経済委員会)の協定規則第46号で規定されている。その他の関連規定には、たとえばISO16505が含まれる。
【0003】
たとえばトラックや運搬車両などの商用車の場合、運転席側と助手席側とにそれぞれ主ミラー(primary mirror)が間接視装置として設置される。車両運転者は、主ミラーを用いることで、車両運転者の視点よりも法定距離だけ後方から水平線まで延在するある幅の路面の水準、水平な部分を見ることができる。さらに、運転者の視点から短い距離だけ後方から始まる更に広い幅の帯域も、間接視装置によって車両運転者が見えるようにしなければならない。間接視装置によって車両運転者が常時且つ永続的に見えるようにすることが義務付けられたこれらの法定領域が視野(fields of view)として規定される。
【0004】
現在、UN/ECEの協定規則第46号のクラスIIの視野によれば、運転席側および助手席側の外装バックミラー(外装主ミラー)はそれぞれ、車両の運転席側最外端および助手席側最外端を通り車両中央縦断面に平行な面を境界とする道路のうち、少なくとも4メートルの幅を有する平坦で水平な部分であって運転者の目(眼球の点)よりも20メートル後方から水平線まで延在する部分を運転者が視認可能に構成されなければならない。さらに、道路は、車両中央縦断面に平行な面であって、運転者の目(眼球の点)を通る垂直面から4メートル後方を始点とする車両最外端を通る面を境界とする1メートル以上の幅が運転者から視認可能でなければならない。
【0005】
これらの主ミラーに加えて、広角ミラーによって再現(提示、または描出)される視野(視界)が商用車の両側で視認可能であることが要求される。運転者の目(眼球の点)の後方の領域は、広角ミラーにより、車両の長手方向に所定の距離が視認される。この後方の領域は、主ミラーによって見える領域よりも幅が広いものの、車両に沿って一定の長さしか延在しない。この領域は、UN/ECEの協定規則第46号では、視野IV(クラスIV)として規定されている。
【0006】
現在、UN/ECEの協定規則第46号のクラスIVの視野によれば、運転席側および助手席側の外装広角ミラーはそれぞれ、車両の運転席側最外端および助手席側最外端を通り車両中央縦断面に平行な面を境界とする道路のうち、少なくとも15メートルの幅を有する平坦で水平な部分であって運転者の目(眼球の点)よりも10メートル後方から25メートル後方まで延在する部分を運転者が視認可能に構成されなければならない。さらに、道路は、車両中央縦断面に平行な面であって、運転者の目(眼球の点)を通る垂直面から1.5メートル後方を始点とする車両最外端を通る面を境界とする4.5メートル以上の幅が運転者から視認可能でなければならない。
【0007】
従来、上述のように、1つまたは複数のミラーによって上記視野が見えるようにされている。しかし、ミラーには幾つかの欠点がある。たとえば、運転者がミラーで見えるものは、ミラーの運転者側に存在する物体のみである。ミラーの背後に位置するいかなる物体も、当該ミラーによって見ることはできない。また、平板ガラス製のミラーは、当該ミラーが運転者に相当近くない限り、狭い領域しか運転者に見せることができない。ミラーが凸面鏡である場合には、これらミラーに写される像は歪んでしまう。大型車両の場合には7または8以上のミラーが車体の外面周囲(外周)に設置されるのが一般的だが、これらのミラーの多くは歪んだ凸面鏡であるとともに、これらミラーの全てをもってしてもなお、大型車には死角が存在するのが通常である。また、運転者にとって、関連ある全てのミラーに対して同時に注意を払うことは困難である。
【0008】
最近、ミラーの代替手段または付加的手段として、カメラシステムを間接視装置として用いることがますます盛んになってきている。このようなカメラシステムでは、イメージセンサが継続的に画像を撮像(検出、保存)する。この撮像ユニットによって撮像された(動画の)データは、たとえば任意で更なる処理が施された後に転送ユニットを介して、運転室(driver’s cabin)に設けられた表示装置に転送される。表示装置は、運転者が常時かつ永続的に視認可能なように、対応する法定視野または複数の視野を描出するとともに、追加的に、車両周囲の領域における衝突リスクや他の物体までの距離などの補足情報を描出してもよい。表示装置は、また、優れた夜間視界、柔軟な配置オプション、および歪みの少ない拡大視野を提供する。
【0009】
ここで、「永続的に視認可能」とは、適時に遮られないように、すなわち、視野または視野の一部分の表示と非表示を繰り返したり、視野が完全には見えなくなるように他の表現を視野に重ねたりしないように、視野を描出することをいう。したがって、視野は、連続的かつリアルタイムに表示装置に表示される。これは、あらゆる車両状態において満たされる。ここでの車両状態には、イグニッションがオンされることが含まれ、好ましくは、ドア解放信号やイグニッションスイッチ信号などの信号を受信するセンサとイグニッションが接続されているとよい。
【0010】
特許文献1は、単一カメラを有する場合と、カメラを2個有する場合とを含む後方視界自動表示装置を開示する。単一カメラの構成では、天井に設置された娯楽システムのエンターテイメントスクリーンが開けられるとすぐに、或いは、運転者が車両を後退にしたときに、後部のナンバープレートに最も近い第1カメラの視界がバックミラーに表示される。カメラ2個の構成では、娯楽システムのエンターテイメントスクリーンが開けられた場合、車両の屋根の近くに設置された第2カメラの視界がバックミラーに表示される。カメラ2個の構成では、娯楽システムのエンターテイメントスクリーンが開けられたまたは閉じた状態で運転者が車両を後退にした場合、第1カメラの視界がバックミラーに表示される。どちらの構成においても、(車両のギアが後退ではない状態で)娯楽システムのエンターテイメントスクリーンが閉じられるとすぐに、バックミラーの機能は、正規のミラーの機能に戻る。
【0011】
特許文献2は、車両に設置された複数の映像源の少なくとも1つの視界を、車両イベントの検出に基づいて選択するステップを含む方法を開示する。映像源の画像は、表示モードに応じて表示されてもよい。この方法には、複数の車両イベントと、映像源の映像または映像表示モードとを関連付ける処理が含まれてもよい。システムは、車両イベントの検出に基づいて、車両に設置された複数の映像源から1つの映像源の視界を選択する表示ロジックを含む。このシステムには、映像源の視界及び/または映像表示モードと、複数の車両イベントと間の関連付けを特定する複数の表示ルールを含めることができる。上記映像表示モードは、編集可能であり、且つ、設定変更可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開2013/0229519号明細書
【特許文献2】米国特許第7463381号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
現代のミラーは、ほぼ完全に鮮明な像を運転者に提供する。運転者に提供される詳細さのレベルは、物体までの距離と、運転者の視力とに依存する。カメラシステムを用いる場合、どの程度詳細な画像情報を運転者に提供できるかは、多くの異なるパラメータの影響を受ける。これらのパラメータには、カメラセンサの解像度やカメラの視野だけではなく、モニタの解像度、カメラの視野の内のどの程度がモニタに表示されるか、運転者空間(driver space)からモニタがどの程度離れているか、および運転者の視力が含まれる。これらパラメータの内のいくつかの組合せでは、運転者は、ミラーでは見ることができない遥か遠方の物体を拡大して鮮明に見ることができる可能性がある。これらパラメータの内の別のいくつかの組合せでは、運転者が見る領域に、危険な交通上の脅威を見落としてしまうほど解像度が低い領域が含まれ得る。
【0014】
更に、ミラーの場合、運転者は、自然な奥行き感覚をもってミラー内に3次元を知覚することができる。このため、運転者は、ミラーに写された物体の環境に対する運転者の相対的位置を良好に把握することができる。一方、運転者は、複数のカメラシステムと、一般に利用可能な2次元表示装置とを用いても、奥行き感覚を得られない。これは、相対的位置及び相対的速度の両方を判断するためには、運転者が、画面上の視認可能な大きさの物体を利用する必要があることを意味する。運転者がズームイン(画面内で画像を拡大)またはズームアウトすることができる場合、この判断は特に困難となり得る。運転者がズームインまたはズームアウトすることができる場合、運転者は周囲の物体の遠さがすぐにわからなくなってしまうため、道路上に危険な状況をもたらす可能性がある。
【0015】
その上、ミラーの場合、運転者は、頭を傾けたり回したりすることで、様々な領域を見ることができる。このため、運転者は、より広い視野を確保でき、周辺環境内のどこを自分が注目しているのかを簡単に把握できる。一方、カメラシステムは、パンすることで運転者が様々な領域を見ることを可能するが、運転者は頭を傾けたり回したりする際に身体的感覚を用いているため、周辺環境内における自身が注目している箇所の正確な位置を見失ってしまう場合がある。このことは、運転者が視野内の物体の位置を誤認してしまう場合や運転者がカメラシステムに周囲の重要領域を表示させずに非重要領域を表示させたままにする場合、危険な状況をもたらし得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本発明の目的は、法定視野を常時且つリアルタイムに確実に見ながら望ましい設定(desired features)が利用できるように、運転者と相互作用することができるミラー代替システムを提供することである。上記望ましい設定とは、視野の特定の解像度や特定のコントラスト、または視野における特別なピント(ズーム)などの、視野に適合した設定をいう。
【0017】
上記目的は、請求項1の特徴を備えた車両用ミラー代替システムにより達成される。
好ましい実施形態は従属形式請求項に規定されている。
【0018】
本発明は、運転者が常に且つ永続的に法定視野を連続的な描写によりリアルタイムで見ながら車両周囲の現在状況をより良好に把握できるように、車両用ミラー代替システムにおいてモニタなどの画像表示ユニットに表示されるデータの描出を運転者の好みに応じて改善するという概略思想に基づく。画像表示ユニットに表示されるデータ用の複数の修正パラメータは、縦横比(アスペクト比)、ズーム、複数の異なる表示フレームのそれぞれの位置、解像度、コントラスト、ワーピング/デワーピング(warping/de-warping)、付加的な図形重畳、の少なくとも1つを含む。運転者に対して表示される画像、即ち画像データ、を改善するため、法定視野の見え方に支障がない限りにおいて、画像表示ユニットの表示設定(features)に運転者が関わることができる或いは表示設定を運転者が適合させることができるように、システムは構成される。運転操作中またはエンジン起動前、即ち、駐車中に運転者がシステムの設定を適正化できるように、システムは構成される。運転者の入力(要求、設定)は、当該運転者の要求をドライバパラメータとして動作制御器(operation controller, safety controller)に与えるドライバセンサから受信される。
【0019】
このような事前設定、運転者の入力、及び法的必要条件などの組合せは、何が如何なる手法で表示装置に表示されるべきかの必要最小条件に対応して、システムの動作範囲、即ち、表示される視野に関する動作範囲を規定する。表示される全ての視野がこの動作範囲内である場合、システムは、全体として、その動作範囲内にある。事前に設定された様々な条件に基づいて動作範囲を規定してもよく、これら条件が常に満たされていることを確認するために、動作範囲の定義には、個別の規則や複合論理を含めてもよい。動作範囲は、発生しうる全ての運転状況に対して必ずしも同一である必要はなく、特定の運転状況での動作範囲を規定する小区分が含まれてもよい。
【0020】
動作制御器は、撮像ユニット制御器(カメラ制御器、演算ユニット、CPU)への入力である複数の再フォーマットパラメータの再フォーマット範囲を更に規定する。或いは、複数の再フォーマットパラメータの再フォーマット範囲(即ち撮像画像が画像表示ユニットに表示される前に再フォーマットされる場合に用いられるこれらパラメータの再フォーマット範囲)は、撮像ユニット制御器によって規定されてもよい。実際の再フォーマットパラメータは、システムが常に動作範囲に収まるように、追加データに基づいてシステムにより設定される。上記追加データは、たとえば、複数の車両センサから受信した日付、外部からの日付情報を受信する複数のセンサからのデータ、ユーザによる日付の入力データや、実際のズーム設定データなどである。撮像ユニット制御器は、1つまたは複数の撮像ユニット(カメラ)からのライブ画像データの受信も実行する。撮像ユニット制御器は、1つまたは複数の画像表示ユニット上での表示に適するように、これらライブ画像データを複数の再フォーマットパラメータに応じて再フォーマットする。画像表示ユニットでの表示は、複数の再フォーマットパラメータに依存する。即ち、画像表示ユニットで表示される画像は、撮像ユニットから受信され、複数の再フォーマットパラメータにより再フォーマットされた画像データである。常に見えることが義務付けられた法定視野がもはや表示されない場合のように、画像表示ユニットに表示される画像のデータを再フォーマットすれば表示がシステムで規定された動作範囲内には収まらなくなるとシステム、特に、再フォーマットパラメータを設定及び決定する動作制御器が検出した場合には、システムは、表示画像及びシステムが動作範囲内に留まるように、自動的に再フォーマットパラメータの修正、上書き、ブロック、または訂正を行なう。これは、所定の再フォーマット範囲に収まるように動作制御器が再フォーマットパラメータを制御することを意味し、画像表示ユニットに表示される画像データは動作範囲内に維持される。システムは、いつ何処を見るかの運転者の自由度を最大化し、動作範囲への適合に必要な他の全てのシステム条件を満たすと共に法定視野を表示する動作を確保しつつ、最も重要な視野及び情報を常に明確且つ効果的に見ることができるように運転者を支援する。
【0021】
そのようなシステムは、運転者の入力及び視野を継続的にモニタリングし続け、視野または他の(法的な)要件と運転者の入力とがマッチするか否かを永続的に判断し、そして視野と運転者の入力と次第で画像表示ユニットに表示されるデータ用の再フォーマットパラメータをリアルタイムに再調整することが必要である。複数のカメラシステムのような複数の撮像ユニットは、複数のミラーシステムにより提供される視野を超える柔軟な視野を運転者に提供することができる。従って、そのような複数の撮像ユニットは、ミラー代替システムの現在の状態を運転者に完全に把握し続けさせると共に、安全性が損なわれた可能性がある場合には如何なるときもできる限り早くミラー代替システムを安全状態に戻すように構成される必要がある。換言すれば、運転者の入力に従うと表示ユニットの表示がもはや動作範囲内に収まらない結果となる場合、システムは、運転者の入力をオーバーライドするように構成される。表示ユニットの表示がもはや動作範囲内に収まらない場合とは、たとえば、表示ユニットが上記法定視野を表示しなくなる場合、および/または衝突などの安全上の危機が生じそうな状況であっても当該危機的状況を表示ユニットが表示しない場合、および/またはシステムの動作範囲に含まれる他のシステム条件を表示ユニットが満たさない場合、である。
【0022】
本発明のミラー代替システムは、車両、好ましくは商用車に適用することができるが、乗用車にも適用することができる。システムは、データ解像度及び法定視野の見方に関して、たとえば商用車における主ミラー及び広角ミラーの代替システムとして機能することができると同時に、空間認識及び状況認識を損なうことなく運転者が快適且つ容易に周囲の様々な視野に視線を移すことを可能にする。
【0023】
また、動作制御器は、再フォーマットパラメータを用いたデータの再フォーマットによりシステムが動作範囲に確実に収まるように、再フォーマットパラメータの再フォーマット範囲を規定することもできる。或いは、撮像ユニット制御器または他の適切なユニットが再フォーマットパラメータの再フォーマット範囲を規定することもできる。
【0024】
動作制御器及び撮像ユニット制御器は、再フォーマットパラメータの再フォーマット範囲を規定するように構成された単一の制御器として構成することもできる。動作制御器及び/または撮像ユニット制御器は、車両の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)に含めることもできるし、半導体で構成されたマイクロコントローラとして構成することもできる。原理的には、撮像ユニットは、動作制御器の代替としてまたは動作制御器に付加的に、動作制御器の処理内容(task)の全てを実行するように構成することもできる。全ての構成要素は、表示ユニット、撮像ユニット制御器、撮像ユニット、動作制御器の内の1つまたは2つ以上を含めて、統合して構成することもできるし、互いに独立して構成することもできる。これらは、適用可能な限り、車両搭載コンピュータや運転者支援システムにおいて統合することもできる。
【0025】
好ましい一実施形態では、視野は、UN/ECEの協定規則第46号でバックミラーに対し規定されているような広角ミラーの視野及び/または主ミラーの視野に対応する。即ち、撮像ユニットは、主ミラーに対応する画像(視野II)及び/または広角ミラーに対応する画像(視野IV)を生成するように構成される。なお、たとえば、主ミラーに対応する画像(視野II)を生成する撮像ユニット、及び広角ミラーに対応する画像(視野IV)を生成する撮像ユニットの2つの撮像ユニットが存在することもあり得る。
【0026】
好ましくは、動作制御器は、視野の表示に対する複数の法定要件と、車体寸法とに基づいた動作範囲を規定するように構成される。上記複数の法定要件には、バックミラーに関するUN/ECEの協定規則第46号などの欧州経済連合発行の国際連合の規則を含めてもよい。なお、たとえば最小または最大のコントラスト、輝度、解像度に関する規則や、ISO16505等のISO規格といった規則に基づいて動作制御器が動作範囲を規定するように構成されることもあり得るが、顧客車両規則(customer vehicle regulations)基づいて動作制御器が動作範囲を規定するように構成されることもあり得る。更に、トレーラの有無などの車両参照情報(vehicle references)に基づいて動作制御器が動作範囲を規定するように構成されることもあり得る。動作範囲の規定に用いられるデータが多いほど、動作範囲をより正確に規定することができ、それに続いて複数の再フォーマットパラメータの再フォーマット範囲もより正確に規定することができる。動作範囲は、たとえば表示視野のコントラスト、ズーム、解像度に対する最低条件などの1または2以上のユーザの入力に基づいて付加的に規定されてもよい。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態では、ミラー代替システムは、車両から車両パラメータ情報を検出するための少なくとも1つの車両センサを更に備え、動作制御器は、少なくとも1つの車両センサから受信した車両パラメータに基づいて再フォーマットパラメータを制御する。車両パラメータは、車両の進行方向、車両速度、車両位置、トレーラの有無、運転者の運転操作(driver controls)の内の1または2以上を含むことが望ましい。運転者の運転操作は、ウインカー(方向指示、turn signals)、スロットルまたはブレーキの制御(加速量または減速量)、前照灯の制御などである。車両パラメータは、特に運転者の能動的監視用の車両内のセンサなどにより自動検出されうる他のどのパラメータを含んでもよいし、運転者に関する情報を含んでもよい。上記運転者に関する情報とは、現在の座席位置、運転者の両目が十分に開いているか部分的に閉じているか、運転者が疲れているように見えるか、運転者の身長や体重、などである。上記少なくとも1つのドライバセンサに加えて少なくとも1つの車両センサにより、複数の再フォーマットパラメータの再フォーマット範囲をより正確に規定することが可能となる。
【0028】
また、動作制御器は、1または2以上のユーザの入力、好ましくはズーム設定、解像度設定、コントラスト設定、追加的な図形入力(graphical inputs)、重畳表示入力(overlays inputs)に基づいて、複数の再フォーマットパラメータを規定するように構成される。
【0029】
また、動作範囲は、複数の異なる運転状況下ではそれぞれ異なってもよく、動作制御器は、再フォーマット範囲の規定に必要な、各運転状況に応じた動作範囲を選択するように構成される。複適切な選択パラメータは、たとえば車両センサによって捕捉された運転状況に基づいているか、或いは、フォグランプ点灯センサやフロントガラスワイパの起動センサなどの車両センサや温度センサなどの付加的センサによって捕捉された気象状態に基づいている。運転状況は、前進または後退、速度、ギアなどである。一方、このようなパラメータは、運転状況に応じた動作範囲が事前に選択されずとも、再フォーマットパラメータの設定に利用されてもよい。
【0030】
ミラー代替システムは、上記少なくとも1つの撮像ユニットから受信した1または2以上の画像を車両パラメータ情報や運転手により入力された情報に基づいて解析する処理に適応した画像解析ユニットを更に備えると好ましい。換言すれば、画像解析ユニットは、少なくとも1つの撮像ユニットで撮影された映像データにおける、画像表示ユニットに表示すべきデータの有無、当該表示すべき画像中における運転者の入力及び要請に応じて拡張または強調すべきデータの有無、或いは、車両情報パラメータの有無、を解析するように構成される。
【0031】
動作制御器は、好ましくはサーバ、交通参照テーブルや、交通データベースなどの外部記憶メディアから交通データを受信するように構成され、V2VまたはV2Xのセルラー方式無線通信で情報を取得する動作制御器を含む。動作制御器及び/または撮像ユニット制御器は、交通データを用いて表示情報を生成するよう構成される。たとえば、動作制御器は、走行領域内の1または2以上の場所的な制限速度、局所的な交通情報、迂回路の情報や、近づきつつある幹線道路の出口の情報の受信に適応した構成とすることができる。これは、複数の再フォーマットパラメータの細かい調整を可能にするだけではなく、システムが所定の情報に運転制御を能動的に適合させることも可能にする。換言すれば、動作制御器は、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)として付加的に機能することができ、それによって、運転者の安全及びその周囲の安全と、運転者の快適さとを向上できる。そのような先進運転支援システムの適用は、より経済的な運転にも資する。
【0032】
更に、動作制御器及び/または撮像ユニット制御器は、1または2以上の距離センサユニットから付加的なセンサデータを受信するよう構成されるとともに、上記付加的なセンサデータを用いて表示情報を生成するよう構成される。好ましくは、 動作制御器及び/または撮像ユニット制御器は、他の複数の撮像ユニット及び/または制御ユニットからの物体認識結果が含まれる付加的なセンサデータを受信するように構成される。そのような付加的なセンサデータには、たとえば、レーダー(RADAR:Radio Detection And Ranging)またはライダー(LIDAR:Light Detection And Ranging)に基づく複数のシステムから受信したデータを含めてもよい。
【0033】
好ましい一実施形態では、動作制御器及び/または撮像ユニット制御器は、安全情報、望ましくは障害物に関する情報が含まれる衝突予測情報に基づいて複数の再フォーマットパラメータの再フォーマット範囲を規定するよう構成されるとともに、付加的なセンサデータを用いて表示情報を生成するよう構成される。たとえば、動作制御器は、自転車に乗っている人などの障害物に関する情報を、画像表示ユニット上でのハイライト表示により、または、警告としてあるいは警告とともにその旨を示唆することにより、運転者に提供するように構成される。そのような安全情報は、たとえば撮像画像の解析によって取得されてもよいし、或いは、車両に搭載された距離センサから取得されてもよい。
【0034】
好ましくは、動作制御器及び撮像ユニット制御器は、同一のハードウェア内に実装されるが、別々のソフトウェアによって実行されてもよい。共通の筐体に動作制御器及び撮像ユニット制御器が収納される場合、当該筐体は製造し易いのでコスト削減に資する。但し、動作制御器及び撮像ユニット制御器は、両者が単一の制御器として構成される場合には特に、共通のソフトウェア及び共通のハードウェアで実現されることもあり得る。
【0035】
好ましくは、ドライバセンサは、タッチパッド、視線追跡装置(eye tracking device)、音声制御装置、レバー、ジョイスティック、ボタンの少なくとも1つを含む。特に、ドライバセンサは、(視線追跡装置を用いた運転者の目の動きの継続的監視により受信される入力などの)運転者入力を自動検出するように構成されるか、或いは、(たとえばタッチパッド、レバー、ジョイスティックを用いることで運転者の特定の動きにより受信される入力などの)運転者自身が能動的に入力した運転者の要求を受信するように構成される。運転者の要求を自動検出するためには、たとえば視線追跡によりドライバセンサが運転者の挙動を継続的に監視及び検出する必要がある。運転者による能動的な入力を受信するためには、たとえばタッチパッドなどの上記制御ユニットの少なくとも1つを運転者が積極的に選択し、動作制御器に対して情報を入力する必要がある。従って、運転者による能動的な入力は、画像表示ユニットに表示されるデータに影響する。
【0036】
好ましくは、動作制御器は、特定の撮像ユニットでの表示において必要最低限の解像度の設定条件を確実に満たすように構成される。たとえば、動作範囲は、運転者が各画像を鮮明に見ることができる最低のサイズと最低の解像度を含み、動作制御器は、各視野についてサイズと解像度を継続的に算出する。運転者は、1のモニタ上で1つ、2つ、3つまたはそれ以上の撮像ユニットの画像を見ることが可能である。しかし、動作範囲が満たされない程度にある1つの撮像ユニットをズームインしようと運転者が試みた場合、動作制御器は、撮像ユニット制御器をオーバーライドしてそれ以上のズームインを防止する。他の撮像ユニットの表示領域を確保しようとして運転者が1つの撮像ユニットの表示領域を縮小しようと試みた場合、動作制御器は、サイズ及び解像度を動作範囲内に維持するように運転者の縮小要求をオーバーライドしてもよい。動作制御器は、モニタから運転者の両眼までの距離、モニタの解像度、その時点での運転室の照明条件などを上記演算処理に反映させてもよい。
【0037】
また、動作範囲には、運転者が見たい視野の特徴(所望の特徴: desired features)を少なくとも1つの画像表示ユニット上で常に見ることができるという条件を含めてもよい。所望の特徴には、大型トラックが牽引するトレーラの側面、トレーラの後端、或いは、たとえばレーダーセンサを用いて関係有りとして検出された車両の画像を含めてもよい。これらの所望の特徴が見えづらくなるように運転者が撮像ユニットでパンニングを行おうと個々と見る場合やズームを変更しようと試みる場合は、動作制御器は、システムの動作範囲に応じて、所望の特徴の表示を維持する用に運転者の要求をオーバーライドしてもよい。動作範囲により要求される所望の特徴を最良の見え方で特定の1つの撮像ユニットが提供すると動作制御器が判定したが、この撮像ユニットによって収集されたデータの画像を運転者が現在見ていない場合、動作制御器は、運転者の介入なしに、この撮像ユニットによって収集されたデータの画像をモニタに表示させるように構成される。所望の特徴を見えづらくするように、運転者が別の撮像ユニットにより収集されたデータを表示させようと試みるかまたは撮像ユニットの表示データの視野を移動しようと試みる場合、動作制御器は、運転手の入力により選択された複数の再フォーマットパラメータをオーバーライドすることで、これら再フォーマットパラメータを再フォーマット範囲内に維持すると共にシステムを動作範囲内に維持するように構成される。図形の重畳を有効にしようと運転者が試みる場合や、所望の特徴の上にまたは所望の特徴にかえて他の情報を表示しようと運転者が試みる場合は、動作制御器は、動作範囲に応じて、このような運転者の入力をオーバーライドするように構成される。
【0038】
また、たとえば輝度及び/またはコントラストの設定を適正化すれば、所望の特徴をより容易に識別し易くする場合や、最低限の認識可能性が動作範囲における条件である場合、動作制御器は、好ましくは幾つかの特定の領域の視野に対し、輝度及び/またはコントラストの設定を適正にすることで、所望の特徴の視認性を向上するように構成される。運転者が目を楽にするために、再フォーマットパラメータが夜間のモニタの輝度またはコントラストを下げる方向に働くように入力を試みた場合、動作制御器は、後ろから近づいてくる1または2以上の車両、或いは、道路の前方の障害物を認識すると共に、これらの障害物を容易に認識するために必要な最小レベル、すなわち動作範囲内の最小レベル、を満たすように輝度およびコントラストの設定をオーバーライドする。動作制御器は、規定された動作範囲に従えば必要と推定する場合には、視野の幾つかの領域のみのコントラストを人工的に(artificially)上げるように構成される。たとえば、移りたい車線に既に他の車両が存在するときに運転者が車線変更を試みる場合、動作制御器は、当該他の車両を運転者に認識させ易くするように、当該他の車両のコントラストを上げつつ周囲環境のコントラストを一時的に下げるように構成される。動作制御器はまた、運転者により入力されたパラメータによらず、システムを動作範囲内に維持するために必要な処理として、自車よりも速く走行している車両や他の所望の特徴のコントラストまたは輝度を強制的に上げるように構成される。
【0039】
本発明の好ましい一実施形態では、システムは、望ましくは図形重畳により、モニタのような画像表示ユニット上に付加的な情報を表示させるように構成される。特に、システムを動作範囲内に維持する上で必要ならば、動作制御器は、撮像ユニットの画像をパンまたはズームする際に、運転者による空間認識及び状況認識の維持を支援するように対応するグラフィカルインジケータを画像表示ユニットに表示するように撮像ユニット制御器に通知するよう構成される。動作制御器は、撮像ユニットの視野において相当小さく写った対象物にズームインしようと運転者が試みている場合に当該挙動を認識するように構成される。このズームのレベルにおいて動作範囲に従えば重畳図形の表示が必要とされる場合には、動作制御器は、距離が異なる複数の対象物の各推定スケールを運転者に示す重畳図形を表示するように、撮像ユニット制御器に対して通知する。また、動作制御器は、GPS(Global Positioning System)、全地球的航法衛星システム(GLONASS:GLObal NAvigation Satellite System)、Galileo(EUによる全地球航法衛星システム)や、他の衛星ナビゲーションシステム、車両速度、他のセンサ、車両同士の無線通信(V2V)または他の利用可能な情報に基づいて、これらの複数の対象物との距離を算出するよう構成されるとともに、動作範囲の要求に従って算出した各距離の値をモニタに表示させるように撮像ユニット制御器に通知を行うよう構成される。更に、動作制御器は、運転者による撮像ユニットの画像のパンニングを認識するように構成される。また、動作制御器は、動作範囲を満たすように、運転者の車両の位置を基準としてまたは当該撮像ユニットの全視野を基準として現在視認されている領域を表示している画面上に、グラフィカルインジケータを描出させる。
【0040】
複数の再フォーマットパラメータは、アスペクト比、ズーム設定、抽出された複数の画像の表示ウインドウの位置、解像度、コントラスト、ワーピング/デワーピング、重畳図形の生成または追加、および他の補正項目(other enhancements)の少なくとも1つ以上を含むことが好ましい。上記他の補正項目には、1画像内における1または2以上の付加的画像を含めてもよい。より多くの情報が複数の再フォーマットパラメータに含まれるほど、必要且つ所望の特徴がモニタ上で更に良好に表示されるので、運転者の空間認識及び状況認識が向上する。
【0041】
本発明の好ましい一実施形態では、撮像ユニットは、たとえばスクールバスにおける乗客を見るための付加的な乗客撮像ユニットによって車内のライブの画像データを動作制御器に提供するために、或いは、周囲環境のライブの画像データを動作制御器に提供するために、動作制御器に直接接続される。或いは、撮像ユニットは、動作制御器にライブの画像データを提供する撮像ユニット制御器に直接接続することも可能である。撮像ユニットは、動作制御器の代わりに単一の制御器で制御される場合には当該単一の制御器に直接接続される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明に係るミラー代替システムの模式図。
図2図1のミラー代替システムの詳細を示す模式図。
図3】ドライバパラメータ及び車両パラメータに依存した再フォーマットパラメータの変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、本発明にかかる車両用ミラー代替システム1の模式図である。ミラー代替システム1は車両に搭載される。ミラー代替システム1は、車体上の撮像ユニット2と、動作制御器3と、撮像ユニット制御器6と、画像表示ユニット7とを備える。画像表示ユニット7は、運転者が運転席に着座した状態で運転者から容易に見ることができるように配置される。動作制御器3は、撮像ユニット2と、撮像ユニット制御器6とに接続される。撮像ユニット制御器6は、画像表示ユニット7に接続される。なお、撮像ユニット2が撮像ユニット制御器6に接続されることもあり得る。
【0044】
撮像ユニット2は、たとえばカメラ(イメージセンサ)であり、主ミラーに対応する視野IIと、広角ミラーに対応する視野IVとを撮像して各画像を生成するように構成される。図1において破線で示すように、2つまたは3つ以上の撮像ユニット2が設けられてもよい。これら1つまたは2つ以上の撮像ユニット2は、カメラである。撮像ユニット2に適したカメラは、たとえば、CCDセンサまたはCMOSセンサを搭載したデジタルビデオカメラであり、好ましくは高解像度(HD:high definition)のデジタルビデオカメラである。但し、法定視野のモニタリングに適応したカメラであれば、如何なる他のカメラでも撮像ユニット2として用いることができる。
【0045】
撮像ユニット制御器6は、1つまたは2つのカメラ2の設置に応じたカメラ制御器である。
【0046】
画像表示ユニット7は、モニタであり、好ましくは液晶表示装置(LCD)、薄膜トランジスタモニタまたはLED(発光ダイオード)モニタである。モニタ7は、車内または車外の運転者に見えるように設置される。車内にモニタ7を設置する場合、1本若しくは複数本の指、手のひらまたはジェスチャーを介して運転者が情報を入力可能なタッチパネルを備えてもよい。また、モニタ7として、たとえばフロントピラーまたは他の部材に対して画像を投影するような画像表示装置を利用してもよい。
【0047】
動作制御器3は、運転者と相互作用するドライバセンサ4、及び車両と相互作用するドライバセンサ4に更に接続される。特に、ドライバセンサ4は、運転者から入力されたデータ(複数のドライバパラメータ)を検出及び受信し、車両センサ4は、複数の車両パラメータを検出及び受信する。
【0048】
動作制御器3は、1つまたは2つ以上のカメラ2からライブの画像データを受信するように構成される。1つまたは2つ以上のカメラ2がカメラ制御器6に接続されている場合、動作制御器3は、カメラ制御器6からライブの画像データを受信する。
【0049】
図2に示すように、ドライバセンサ4は、運転者の入力に依存する複数のドライバパラメータ8を動作制御器3に伝達するように構成される。たとえば、運転者は、運転者の設定を動作制御器3に伝達するために、ズーム、複数の表示ウインドウの各位置、及び1または2以上の画像の解像度をレバー、ジョイスティックまたはボタンにより変更しうる。また、運転者は、これらズーム、表示ウインドウの各位置、及び画像の解像度を、視線追跡、音声制御、予めプログラムされた設定またはモニタ7上若しくは別途設けられたタッチパッド上でのタッチ入力によっても変更しうる。これらの設定には、特定のモニタにおいて運転者が何を見たいかまたは見たくないか、及び運転者がどのようにしてそれを見たいのかが含まれる。
【0050】
車両センサ5は、車両情報または車両動作状態に依存する複数の車両パラメータ9を動作制御器3に伝達するように構成される。上記車両情報には、車両進行方向、車両速度、車両位置、トレーラの有無が含まれ得るが、湿ったまたは乾いた路面状態や外部温度などの気象状態も含まれてもよい。上記車両動作状態には、ブレーキ若しくはアクセルペダルの操作または方向指示灯のオンなどの運転者による運転操作の状態が含まれ得る。
【0051】
動作制御器3は、システムの動作範囲と、対応する複数の再フォーマットパラメータ10の再フォーマット範囲とを規定するように構成され、カメラ制御器6に複数の再フォーマットパラメータ10を伝達するように構成される。再フォーマット範囲は、必須として予め決められた他の情報または法定視野を運転者が確実に見ることができるようにするために、即ち、システムを動作範囲に収めるために、つまり、表示視野を動作範囲に収めるために、複数の再フォーマットパラメータ10が常に収まらなければならない範囲である。
【0052】
動作範囲の定義には、規則、車両参照情報、車両における1または2以上の撮像ユニットによる撮像画像を常時表示する条件、が含まれ得る。上記規則には、ISO16505等のISO規格、バックミラーに関するUN/ECEの協定規則第46号等の欧州経済連合から送られた国際連合の規則が含まれ得るが、顧客車両規則が含まれてもよい。上記車両基準には、車両の寸法やトレーラの有無が含まれ得る。
【0053】
撮像ユニットは、たとえば1つ若しくは2つ以上の乗客カメラまたはカメラ2として構成される。複数の再フォーマットパラメータ10には、縦横比の変更、ズームの変更、複数の表示ウインドウの各位置の変更、解像度の変更、コントラストの変更、ワーピング/デワーピングの変更、通信プロトコルの変更、物理的な通信媒体が含まれ得る。また、複数の再フォーマットパラメータ10には、重畳図形の生成若しくは追加または他の補正項目が含まれてもよい。
【0054】
カメラ制御器6は、動作制御器3から受信した複数の再フォーマットパラメータ10に応じてカメラ2からのライブの画像データをモニタ7での表示に適合するように再フォーマットし、再フォーマットされたデータをモニタ7に送信するように構成される。モニタ7は、カメラ制御器6から受信した再フォーマットされたデータを表示する。好ましくは異なるズーム構成または異なるパンニングの状態で、1つまたは2つ以上のカメラ2により生成されたデータがモニタ7における異なる領域にそれぞれ同時表示されるように、当該モニタ7は構成されてもよい。1つまたは2つ以上のカメラ2により生成されたデータは、分割スクリーン方式で表示されてもよい。なお、各々が1つまたは多数のカメラの視界を表示する多数のモニタ7が設けられることもあり得る。
【0055】
図3は、ドライバパラメータ8及び車両パラメータ依存する複数の再フォーマットパラメータの時間変化を示す(図3の横軸は時間軸)。複数の再フォーマットパラメータ10の再フォーマット範囲は、縦方向(図3における上下方向)に亘り、実線で示す上限及び下限を有する。複数の再フォーマットパラメータは、動作範囲/再フォーマット範囲の境界の内側、即ち、図3の上限と下限との間に常に収まらなければならない。上限は、基本的には、動作範囲の上端に延びる水平な直線として示される。下限は、基本的には、動作範囲の下端に延びる水平な直線として示される。動作範囲の上限と下限との間において、車両パラメータ9及び再フォーマットパラメータ10は、左から右に、即ち、主に横方向に延びる波状の線として示される。左右方向(x軸方向)は、時間に対応する。再フォーマットパラメータ10は、太い実線で示される。車両パラメータ9は、破線で示される。ドライバパラメータ8に基づいて算出される再フォーマットパラメータは、動作範囲の下限の下の領域11を除いて、実際の再フォーマットパラメータ10に一致する。ドライバパラメータ8に基づいて算出される再フォーマットパラメータは、動作範囲の下限の下の領域11では、破線で示される。
【0056】
図3に示すように車両パラメータ9及び再フォーマットパラメータ10の典型的な分布では、車両パラメータ9に基づく表示画像の修正は、当該表示画像を常に動作範囲内に維持する。複数のドライバパラメータ8が複数の再フォーマットパラメータ10を再フォーマット範囲外(即ち、図3における動作範囲の下側の境界よりも下)にしうる期間を除いて、複数のドライバパラメータ8は、描出される全期間において許容範囲内に収まる複数の再フォーマットパラメータ10となる。複数のドライバパラメータ8が動作範囲に収まる条件下において、複数のドライバパラメータ8は、更なる修正無しに、複数の再フォーマットパラメータ10として用いられる。このことは、画像表示ユニット7上の描出に関する運転者の希望が修正無しに完全に反映されることを意味する。たとえば、複数のドライバパラメータ8が下限を下回り、それにより動作範囲から逸脱する場合(図3の斜線領域)、複数のドライバパラメータ8に基づく再フォーマット動作は、表示画像を良好ではないもの、即ち、法定要件を満たさないものにしてしまう。つまり、動作範囲からの逸脱は、動作範囲を逸脱してモニタ7の表示画像を調整及び適合させようと試みた運転者による1または2以上の入力の結果としてもたらされる。この場合、動作制御器3は、動作範囲に留まる条件が満たされるか否かを運転者の入力に基づいてリアルタイムで判定する。この判定の結果、動作範囲に留まる条件が満たされない場合、動作制御器3は、複数のドライバパラメータ8を複数の再フォーマットパラメータ10として使う前に、ドライバパラメータ8をオーバーライドする。これにより、図3の再フォーマット範囲/動作範囲の下側の境界線に一致する再フォーマットパラメータ10の実線部分として示すように、再フォーマットパラメータ10は、常に再フォーマット範囲/動作範囲に収まる。
【0057】
たとえば、運転者は1つのモニタ7において2つまたは3つ以上のカメラ2の視野を表示させることができ、動作制御器3は、運転者が視野を鮮明に観察できるようにするためには各視野がどれ位のサイズでモニタ7に表示されるべきかをリアルタイムに算出する。運転者が1つの特定のカメラ2で更なるズームインを試みる場合、動作制御器3は、カメラ制御器に入力される上記更なるズームインの指令をオーバーライドし、更なるズームインを防止する。他のカメラ2の視野の表示領域を広げるために特定のカメラの視野を縮小しようと運転者が試みる場合、動作制御器3は、運転者による当該指令の入力に応じた動作をオーバーライドし、解像度を望まれる動作範囲内に維持する。動作制御器3は、上記各処理において、モニタ7から運転者までの距離、モニタ7の解像度、その時における運転室の照明条件などを反映してもよい、動作範囲からの逸脱は、車両周囲環境における空間認識及び状況認識を十分維持するために必要な動作範囲の視野を運転者がもはや見ることができないこと意味する。図3において、動作範囲外の領域は、符号11が付された斜線領域として示される。
【0058】
図3に示すように動作範囲から逸脱させる複数のドライバパラメータ8の場合、運転者がモニタ7の表示を不適切に変更する操作をしたものの、動作制御器3は、運転者が空間認識及び状況認識を維持することを支援するために、そのようなドライバパラメータ8をオーバーライドする。即ち、動作制御器3は、複数のドライバパラメータ8に対する補正ユニットとして機能し、動作範囲が維持されるようこれらドライバパラメータ8を補正する。特に、動作制御器3は、複数の再フォーマットパラメータ10が当該下限を下回らないように、ドライバパラメータ8をオーバーライドする。従って、動作制御器3は、ミラー代替システム1が正しい動作範囲内か否かを判定する演算において、変化している複数の車両パラメータ9、及び変化している複数のドライバパラメータ8を用い、複数の再フォーマットパラメータ10を制御することで、その動作を動作範囲内に維持する。ミラー代替システム1は、運転者が何をいつ見たいかという自由を最大化すると共に法定視野内で当該システム1が動作することを確保しつつ、最重要な視野及び情報を鮮明且つ効果的に見ることができるように運転者を支援する。
【0059】
図3に示すように、再フォーマット範囲は、必ずしも常に同一ではない。図3に示すように、再フォーマット範囲の水平な境界線は、直線ではなく、直線から乖離した部分があってもよい。乖離した部分は、たとえば、再フォーマット範囲に適合させるための複数の車両パラメータ9によってもたらされる。このことは、動作範囲が常に満たされるためには、複数のドライバパラメータ8がこのシフトした領域に常に収まらなければならないことを意味する。
【0060】
広義に本発明を実施する上では、以上の詳細な説明で開示した特徴やステップは、組み合わせなくてもよい。以上の詳細な説明で開示した特徴やステップの組合せは、単に本発明の代表的な実施例を説明するため提示したものである。また、より有益な本開示の実施形態を提供するため、以下に示す独立請求項や従属請求項の様々な特徴は当然、上述した代表的な実施例の様々な特徴は、上述の説明では具体的且つ明確に列挙していない方法で組み合わせてもよい。本明細書及び特許請求の範囲に開示された全ての特徴は、実施形態や請求項における特徴の複合とは関係なく、請求項の主題を限定する目的、及び最初の書面による開示の目的で、互いに独立して且つ別々に開示したものである。また、本明細書及び特許請求の範囲での開示において、全ての値の範囲または実体構成群の示唆は、請求項の主題の限定、及び最初の書面としての開示を目的とし、とり得る全ての中間の値またはあり得る全ての中間的な実体構成の開示を意図したものである。
【符号の説明】
【0061】
1 ミラー代替システム
2 撮像ユニット(カメラ)
3 動作制御器
4 ドライバセンサ
5 車両センサ
6 撮像ユニット制御器(カメラ制御器)
7 画像表示ユニット(モニタ)
8 ドライバパラメータ
9 車両パラメータ
10 再フォーマットパラメータ
11 動作範囲外の領域
図1
図2
図3