特許第6410880号(P6410880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6410880
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】血液浄化システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/14 20060101AFI20181015BHJP
【FI】
   A61M1/14 100
   A61M1/14 110
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-116953(P2017-116953)
(22)【出願日】2017年6月14日
【審査請求日】2018年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】青田 尚之
(72)【発明者】
【氏名】豊田 将弘
(72)【発明者】
【氏名】萩原 泰伸
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−289481(JP,A)
【文献】 特開2014−004194(JP,A)
【文献】 特表2015−519133(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/113069(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14 − A61M 1/16
A61M 1/34 − A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対して血液浄化治療を施すことができる血液浄化装置と、
前記血液浄化装置との間で通信して血液浄化治療に関する情報を送受信可能とされるとともに、当該血液浄化治療に関する情報を治療経過に沿って時系列的に記憶して治療毎の過去情報として蓄積可能な記憶手段を具備した管理装置と、
前記血液浄化装置又は管理装置に配設されるとともに、血液浄化治療に関する情報を表示可能な表示手段と、
を具備した血液浄化システムであって、
前記過去情報には、血液浄化治療中において非定常的に発生した特定事項が含まれるとともに、
前記記憶手段に蓄積された前記過去情報を検索し、所望の前記特定事項を抽出可能な抽出手段と、
前記抽出手段で抽出された前記特定事項が所定回数以上発生した時間を多発時間として算出し得る算出手段と、
前記算出手段で算出された多発時間を現在の血液浄化治療中に前記表示手段にて表示させ得る表示制御手段と、
を具備したことを特徴とする血液浄化システム。
【請求項2】
前記特定事項は、血液浄化治療中における患者の行為に関する非定常的な事項若しくは患者の状態に関する非定常的な事項、血液浄化治療中に発生した装置に関する非定常的な事項を含むことを特徴とする請求項1記載の血液浄化システム。
【請求項3】
前記表示制御手段は、現在の血液浄化治療に関する情報を時間経過に伴ってグラフとして表示させ得るとともに、前記算出手段で算出された多発時間を当該グラフの時間軸に対応させて表示させ得ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液浄化システム。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記算出手段で算出された多発時間を前記時間軸に対応させた帯状のグラフとして表示させ得ることを特徴とする請求項3記載の血液浄化システム。
【請求項5】
複数の前記特定事項のうち任意の前記特定事項を選択して入力可能な入力手段を具備するとともに、前記算出手段は、当該入力手段で入力された特定事項に関する多発時間を算出することを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【請求項6】
前記入力手段で複数の特定事項が入力された場合、前記表示制御手段は、前記特定事項の種類を識別可能な状態で前記多発時間を表示させ得ることを特徴とする請求項5記載の血液浄化システム。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記特定事項が発生した頻度を識別可能な状態で前記多発時間を表示させ得ることを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に対して血液浄化治療を施すことができる血液浄化装置と、血液浄化装置との間で通信して血液浄化治療に関する情報を送受信可能とされた管理装置とを具備した血液浄化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
透析治療などで用いられる血液浄化装置としての透析装置は、病院等の医療施設内に設けられた透析室に複数設置され、当該透析室内で多数の患者に対する透析治療(血液浄化治療)が施されるようになっている。また、それぞれの透析装置は、例えば特許文献1にて開示されているように、サーバを有した中央監視装置(管理装置)と接続され、当該サーバが保持した患者に関する種々情報を受信し得るよう構成されている。また、近時においては、中央監視装置のサーバにおいて、透析治療に関する情報(例えば、患者に関する過去の治療データ等)を保持させるとともに、必要に応じて任意の情報を表示手段に表示させて医師等の医療従事者に把握させ得るようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−4194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の血液浄化システムにおいては、サーバで蓄積された情報を表示させて医療従事者等に把握させることができるものの、その情報に基づいて治療中に的確且つ素早い対応を行うためには熟練が必要とされるという問題があった。例えば、治療中において非定常的に発生した特定事項があった場合、その特定事項をサーバに記憶して次回以降の治療時に単に表示させたとしても、特定事項がどの程度の頻度で発生するのか、或いはどのタイミングで発生することが多いのかを把握することができず、実際に特定事項が発生した場合、素早く且つ適切に対応するのが困難になってしまう虞があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、血液浄化治療中に記憶されて蓄積された過去情報を有効活用することができるとともに、非定常的に発生する特定事項に対する対応を素早く且つ適切に行わせることができる血液浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、患者に対して血液浄化治療を施すことができる血液浄化装置と、前記血液浄化装置との間で通信して血液浄化治療に関する情報を送受信可能とされるとともに、当該血液浄化治療に関する情報を治療経過に沿って時系列的に記憶して治療毎の過去情報として蓄積可能な記憶手段を具備した管理装置と、前記血液浄化装置又は管理装置に配設されるとともに、血液浄化治療に関する情報を表示可能な表示手段とを具備した血液浄化システムであって、前記過去情報には、血液浄化治療中において非定常的に発生した特定事項が含まれるとともに、前記記憶手段に蓄積された前記過去情報を検索し、所望の前記特定事項を抽出可能な抽出手段と、前記抽出手段で抽出された前記特定事項が所定回数以上発生した時間を多発時間として算出し得る算出手段と、前記算出手段で算出された多発時間を現在の血液浄化治療中に前記表示手段にて表示させ得る表示制御手段とを具備したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化システムにおいて、前記特定事項は、血液浄化治療中における患者の行為に関する非定常的な事項若しくは患者の状態に関する非定常的な事項、血液浄化治療中に発生した装置に関する非定常的な事項を含むことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液浄化システムにおいて、前記表示制御手段は、現在の血液浄化治療に関する情報を時間経過に伴ってグラフとして表示させ得るとともに、前記算出手段で算出された多発時間を当該グラフの時間軸に対応させて表示させ得ることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の血液浄化システムにおいて、前記表示制御手段は、前記算出手段で算出された多発時間を前記時間軸に対応させた帯状のグラフとして表示させ得ることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、複数の前記特定事項のうち任意の前記特定事項を選択して入力可能な入力手段を具備するとともに、前記算出手段は、当該入力手段で入力された特定事項に関する多発時間を算出することを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の血液浄化システムにおいて、前記入力手段で複数の特定事項が入力された場合、前記表示制御手段は、前記特定事項の種類を識別可能な状態で前記多発時間を表示させ得ることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記表示制御手段は、前記特定事項が発生した頻度を識別可能な状態で前記多発時間を表示させ得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、記憶手段に蓄積された過去情報を検索し、所望の特定事項を抽出可能な抽出手段と、抽出手段で抽出された特定事項が所定回数以上発生した時間を多発時間として算出し得る算出手段と、算出手段で算出された多発時間を現在の血液浄化治療中に表示手段にて表示させ得る表示制御手段とを具備したので、医療従事者に対して特定事項の多発時間を予め把握させることができ、血液浄化治療中に記憶されて蓄積された過去情報を有効活用することができるとともに、非定常的に発生する特定事項に対する対応を素早く且つ適切に行わせることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、特定事項は、血液浄化治療中における患者の行為に関する非定常的な事項若しくは患者の状態に関する非定常的な事項、血液浄化治療中に発生した装置に関する非定常的な事項を含むので、医療従事者に対して種々の特定事項の多発時間を予め把握させることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、表示制御手段は、現在の血液浄化治療に関する情報を時間経過に伴ってグラフとして表示させ得るとともに、算出手段で算出された多発時間を当該グラフの時間軸に対応させて表示させ得るので、現在の血液浄化治療に関する情報と多発時間との比較を視覚的に行わせることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、表示制御手段は、算出手段で算出された多発時間を時間軸に対応させた帯状のグラフとして表示させ得るので、現在の血液浄化治療に関する情報と多発時間との比較をより円滑且つ視覚的に行わせることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、複数の特定事項のうち任意の特定事項を選択して入力可能な入力手段を具備するとともに、算出手段は、当該入力手段で入力された特定事項に関する多発時間を算出するので、必要とされる特定事項の多発時間を任意選択的に表示させることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、入力手段で複数の特定事項が入力された場合、表示制御手段は、特定事項の種類を識別可能な状態で多発時間を表示させ得るので、必要とされる複数の特定事項の多発時間を併せて表示させることができる。
【0019】
請求項7の発明によれば、表示制御手段は、特定事項が発生した頻度を識別可能な状態で多発時間を表示させ得るので、発生頻度に応じた特定事項に対する対応を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係る血液浄化システムを示すブロック図
図2】同血液浄化システムにおける血液浄化装置を示す外観図
図3】同血液浄化システムにおける血液浄化装置の内部構成及び血液回路を示す模式図
図4】同血液浄化システムにおける抽出手段による抽出及び算出手段による算出を説明するための表
図5】同血液浄化システムにおける抽出手段による抽出及び算出手段による算出を説明するための表
図6】同血液浄化システムにおける抽出手段による抽出及び算出手段による算出を説明するための表
図7】同血液浄化システムにおける表示制御手段により表示された表示内容を示すグラフ
図8】同血液浄化システムにおける表示制御手段による他の表示内容を示す図
図9】本発明の第2の実施形態に係る血液浄化システムを示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る血液浄化システムは、患者に対して血液浄化治療としての透析治療を施し得るもので、図1に示すように、血液浄化装置1と、管理装置2とを具備して構成されている。また、血液浄化装置1及び管理装置2は、LANケーブルLを介して電気的に接続されており、当該血液浄化装置1と管理装置2との間で通信して血液浄化治療に関する情報を送受信可能とされている。
【0022】
血液浄化装置1は、図3に示すように、透析液を導入するための透析液導入ラインL1及び透析液排液を排出する透析液排出ラインL2が延設されており、これら透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2に跨って複式ポンプ12が配設されている。また、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2には、ダイアライザ11(血液浄化器)が接続されており、当該ダイアライザ11には、患者の血液を体外循環させるための血液回路9が接続されるようになっている。そして、血液ポンプ10を駆動させることにより、血液回路9にて体外循環する患者の血液に対して、ダイアライザ11にて血液浄化治療が可能とされている。
【0023】
複式ポンプ12のポンプ室は、図示しない単一のプランジャにより、透析液導入ラインL1に接続された送液側ポンプ室と、透析液排出ラインL2に接続された排出側ポンプ室とに隔成されており、当該プランジャが往復動することにより、送液側ポンプ室に送られた透析液又は洗浄液をダイアライザ11に供給するとともに、ダイアライザ11内の透析液を排出側ポンプ室に吸入するよう構成されている。
【0024】
さらに、透析液排出ラインL2には、複式ポンプ12をバイパスして接続されたバイパスラインL3が形成されており、このバイパスラインL3の途中に除水ポンプ13が配設されている。かかる除水ポンプ13を駆動させることにより、ダイアライザ11内を流れる患者の血液に対して除水を行わせることが可能とされる。なお、複式ポンプ12に代えて、所謂チャンバ形式のものとしてもよい。
【0025】
また、血液浄化装置1は、表示手段1aを具備するとともに、血液浄化治療(血液透析治療)に関わる種々治療手段(例えば、血液ポンプ、補液ポンプ及びシリンジポンプ等)が配設されている。このような治療手段として、ポンプ等のアクチュエータ類に限らず、電磁弁等のクランプ手段や液圧等の監視手段といった血液浄化治療に使用される種々汎用手段も含まれる。
【0026】
表示手段1aは、血液浄化治療(血液透析治療)に関する所定の情報の表示及び所定の入力を行わせ得るものであり、本実施形態においては、画面の所望位置を触れることにより所定の入力が可能なタッチパネルから成るものである。かかる表示手段1aで表示される血液浄化治療に関する情報として、血液ポンプ10、除水ポンプ13或いは補液ポンプ等の流量を示す設定値、静脈圧センサにて検出される静脈圧、ヘマトクリットセンサ等から検出されるヘマトクリット値等が挙げられる。
【0027】
さらに、血液浄化装置1には、任意の出力(音声又は効果音等の出力)が可能なスピーカが配設されている。このスピーカにより、血液浄化治療を行う機器又は患者における異常状態を周囲に知らせるための警報や警告を発することができるとともに、血液浄化装置の取扱方法や種々の設定方法を操作者に対して音声等で案内することができる。なお、血液浄化装置1には、外部表示灯14(図2参照)が配設されており、当該外部表示灯14を点灯又は点滅させることにより、より確実に警報等を周囲に把握させることができる。
【0028】
管理装置2は、サーバ3及びクライアントPC4を有して構成されている。サーバ3は、血液浄化装置1とLANケーブルLを介して通信するための通信モジュール3bと、データを蓄積し得るデータベースから成る記憶手段3aと、クライアントPC4のクライアントアプリケーション4bを作動させるWebアプリケーションモジュール3cとを有するとともに、抽出手段5及び算出手段6を有して構成されている。なお、クライアントPC4は、血液浄化装置1が設置された治療室に配設されるとともに、サーバ3は、治療室とは別の部屋(コンピュータルーム等)に配設されている。
【0029】
記憶手段3aは、通信モジュール3bを介して各血液浄化装置1と送受信可能とされたもので、血液浄化治療に関する情報を治療経過に沿って時系列的に記憶して治療毎の過去情報として蓄積可能とされている。例えば、管理装置2から各血液浄化装置1に送信される情報(現在の治療に際して必要とされる情報)として、血液浄化装置1の設定情報、後述する非定常的に発生した特定事項を選択可能とするマスタ情報、治療する患者の個人情報(ドライウェイト(DW)、投薬指示情報、検査値など)などが挙げられる。
【0030】
各血液浄化装置1から管理装置2に送信される情報(過去情報)として、血液浄化装置1のモニタ情報(監視情報)、血液浄化装置1で発生した警報や報知、その警報や報知に対して行われた操作履歴を含む動作記録、血液浄化装置1の自己診断情報、血液浄化装置1に付属した血圧計にて測定された患者の血圧や脈拍値情報、血液浄化装置1に対して操作者により入力された患者の体温値情報、医療従事者によりマスタ情報から選択された識別コードなどが挙げられる。
【0031】
ここで、過去情報には、血液浄化治療中において非定常的(突発的)に発生した特定事項が含まれる。かかる特定事項は、例えば血液浄化治療中における患者の行為に関する非定常的な事項(食事の摂取、トイレへの患者の離脱、体位の変化などのイベントや抜針発生などの突発事項など)若しくは患者の状態に関する非定常的な事項(血圧低下、気分不快や痒み等の愁訴など)、血液浄化治療中に発生した装置に関する非定常的な事項(血液浄化装置1の警報や報知に対する処置行為など)を含むものである。
【0032】
また、記憶手段3aは、1治療毎に種々の情報を紐付けして過去情報として蓄積し得るよう構成されている。かかる紐付けされる情報として、非定常的に発生した特定事項の他、治療した患者の氏名、治療した場所及び使用した血液浄化装置、治療中に血液浄化装置1と送受信した情報、治療前後の患者の体重及び除水量や除水速度といった実績値、治療条件、治療中に投与した薬剤の記録、治療に使用した医療材料の記録、看護記録などが挙げられる。
【0033】
さらに、血液浄化治療中に入力される特定事項は、血液浄化装置1の表示手段1a(タッチパネル)又はクライアントアプリケーション4bの入力手段8により種類(例えば、治療中のイベント、患者の愁訴又は処置など)が選択されて入力可能とされている。本実施形態においては、特定事項の種類毎に識別コードが付与されてマスタ化されており、医療従事者が所定の特定事項を入力する場合、その特定事項に対応する識別コードを入力して選択した後、実際の特定事項を入力し得るようになっている。しかして、記憶手段3aは、識別コードにて特定事項を記憶し得るよう構成されている。
【0034】
なお、血液浄化治療中において血液浄化装置1で発生した警報や報知、その警報や報知に対して行われた操作履歴を含む動作記録についても、その種類毎に識別コードが付与されてマスタ化されており、医療従事者が所定の特定事項を入力する場合、その特定事項に対応する識別コードを入力して選択した後、実際の特定事項を入力し得るようになっている。
【0035】
しかして、記憶手段3aは、図4〜6に示すように、血液浄化治療に関する情報を治療経過に沿って時系列的(例えば、患者が透析室に入室してから治療終了後に退出するまで経時的)に記憶して治療毎(透析日毎)の過去情報として蓄積するとともに、その過去情報の時系列に対応させて特定事項が発生した時刻を特定事項の種類毎に記憶し得るようになっている。これにより、過去の特定の治療において、治療開始から何分経過後に如何なる特定事項が発生したのか記憶することができる。
【0036】
抽出手段5は、記憶手段3aに蓄積された過去情報を検索し、所望の特定事項を抽出可能なものである。本実施形態に係る抽出手段5は、医療従事者により把握が必要とされた所望の特定事項が選択(複数種類の選択も可能)されて表示手段1a又は入力手段8にて入力(具体的には、所望の特定事項に対応する識別コードが入力)されると、記憶手段3aにて記憶及び蓄積された過去情報を検索し、選択された特定事項を抽出し得るよう構成されている。なお、医療従事者により選択される特定事項は、1つに限らず、複数の種類の特定事項を選択して入力することができる。また、患者毎に注意すべき特定事項の種類が異なるため、患者毎に抽出手段5による抽出を行い得るよう構成してもよい。
【0037】
さらに、本実施形態においては、血液浄化治療が行われる患者の過去情報に限った範囲内で抽出手段5による特定事項の抽出が行われているが、他の患者の過去情報も含んで抽出手段5による特定事項の抽出を行わせるようにしてもよい。この場合、他の患者として、類似症例の患者、性別が同一或いは年齢が同一又は近い患者、原疾患が同一或いは類似の患者、DW(ドライウェイト)或いは検査値が同一又は近い患者を複合条件として判断することができる。なお、上記に加え、抽出手段5による抽出に際し、医療従事者が任意に他の患者を含む或いは除外し得るようにしてもよく、特定事項毎に抽出対象として追加する対象患者を選択し得るようにしてもよい。
【0038】
このように抽出された特定事項は、図4〜6に示すように、過去の治療の時系列情報に対応した状態で抽出され、過去の治療(透析日)において如何なるタイミングで発生したか把握可能とされている。同図において、縦方向に透析日順に表示され、横方向に治療時間(時系列)が表示されており、その時間に対応させて特定事項を示すようにプロット(丸印)が付してある。なお、同図においては、1つの特定事項を抽出した場合を示しているが、複数の特定事項を抽出した場合、その種類毎の特定事項が過去の治療の時系列情報に対応した状態で抽出されることとなる。
【0039】
算出手段6は、抽出手段5で抽出された特定事項が所定回数以上発生した時間を多発時間として算出し得るものである。例えば、図4に示すように、算出対象とする期間Mを設定するとともに、その期間M内において抽出された特定事項のうち特定事項P1を基準として前後の時間を含む時間を走査時間Tとし、その走査時間T内に抽出された特定事項が閾値としての所定回数以上あるか否かを判定する。閾値は、任意に設定することができ、例えば3回を閾値とすれば、同図に示すように、走査時間T内に特定事項が2回(特定事項P1、P2の2回)ある場合、特定事項が多発していると判定されない。算定対象とする期間Mは、医療従事者等によって任意に設定でき、無期限とすることもできる。
【0040】
一方、図5に示すように、抽出された特定事項のうち特定事項P3を基準として前後の時間を含む時間を走査時間Tとし、その走査時間T内に抽出された特定事項が4回(特定事項P3〜P6の4回)ある場合、特定事項が多発していると判定される。この場合、図6に示すように、治療の時系列において最も早く発生した特定事項P3の時刻taを基準として余裕時間t1だけ前の時刻と、治療時の時系列において最も遅く発生した特定事項P6の時刻tbを基準として余裕時間t2だけ後の時刻との間の時間を多発時間Rとして算出する。
【0041】
クライアントPC4は、パーソナルコンピュータから成るもので、血液浄化治療に関する情報を表示可能な液晶画面やタッチパネルから成る表示手段4aと、クライアントアプリケーション4bとを有して構成されている。クライアントアプリケーション4bは、サーバ3のWebアプリケーションモジュール3cに接続されて血液浄化治療に関する情報を入出力可能とされたもので、表示制御手段7と、入力手段8とを有して構成されている。
【0042】
入力手段8は、複数の特定事項(例えば、血液浄化治療中における患者の行為に関する非定常的な事項若しくは患者の状態に関する非定常的な事項、血液浄化治療中に発生した装置に関する非定常的な事項等、複数の種類の特定事項)のうち任意の特定事項を選択して入力可能なもので、本実施形態においては、かかる入力手段8にて入力された特定事項に関する多発時間を算出手段6にて算出して表示制御手段7にて表示させ得るようになっている。なお、入力手段8に代えて、血液浄化装置1の表示手段1a(タッチパネル等)にて入力してもよい。
【0043】
表示制御手段7は、抽出手段5で抽出された過去情報に基づく種々情報を表示手段4aにて表示させ得るもので、本実施形態においては、算出手段6で算出された多発時間を現在の血液浄化治療中に表示手段4aにて表示させ得るものである。具体的には、本実施形態に係る表示制御手段7は、図7に示すように、現在の血液浄化治療に関する情報を時間経過に伴ってグラフ(同図において、横軸を時間軸とするとともに、上段にΔBV、中段にPRR及び除水速度、下段にURR及びKt/Vをそれぞれ示す折れ線グラフ)として表示させ得るとともに、算出手段6で算出された多発時間Rを当該グラフの時間軸に対応させて表示させ得るようになっている。
【0044】
特に、本実施形態に係る表示制御手段7は、同図に示すように、算出手段6で算出された多発時間Rを時間軸(現在の血液浄化治療に対する時間軸)に対応させた帯状のグラフとして表示させ得るようになっている。このように帯状のグラフにて多発時間Rを表示することにより、多発時間Rの開始時刻と終了時刻とを同時且つ視覚的に把握させることができるとともに、現時点Wから多発時間Rに達するまでどの程度時間があるか視覚的に把握させることができる。
【0045】
さらに、上記実施形態に係る表示制御手段7は、現在の血液浄化治療に関する情報を時間経過に伴ってグラフとして表示させ得るとともに、算出手段6で算出された多発時間Rを当該グラフの時間軸に対応させた帯状のグラフとして表示させているが、これに代えて、図8に示すように、算出手段6で算出された多発時間(R1、R2)を現在の血液浄化治療中に表示手段4aに数字で表示させ得るものとしてもよい。この場合、多発時間(R1、R2)は、「血圧低下」を特定事項とした多発時間及び「静脈圧に関する警報」を特定事項とした多発時間とされているが、他の特定事項を他の形態にて表示するようにしてもよい。
【0046】
また、入力手段8(又は表示手段1a)で複数の特定事項が入力された場合、表示制御手段7は、特定事項の種類を識別可能な状態で多発時間を表示させるよう構成してもよい。この場合、多発時間を示す表示(グラフ等)を色分け(濃淡を分けることも含む)することにより、特定事項の種類を識別させることができる。またさらに、表示制御手段7は、特定事項が発生した頻度を識別可能な状態で多発時間を表示させるよう構成してもよい。この場合、頻度毎に多発時間を示す表示(グラフ等)を色分け(濃淡を分けることも含む)することにより、特定事項が発生する頻度が高い多発時間と頻度が低い多発時間とを識別させることができる。
【0047】
しかるに、抽出手段5による特定事項の抽出及び算出手段6による多発時間の算出は、入力手段8にて入力された特定事項を変更したとき、1治療における患者の過去情報の記録が終了して確定したとき、或いは深夜等の本血液浄化システムが稼働する時間外に行うようにするのが好ましい。勿論、処理速度が極めて速いクライアントPC4を用いるようにすれば、血液浄化治療が開始される直前に、抽出手段5による特定事項の抽出及び算出手段6による多発時間の算出を行わせるようにしてもよい。
【0048】
上記実施形態によれば、記憶手段3aに蓄積された過去情報を検索し、所望の特定事項を抽出可能な抽出手段5と、抽出手段5で抽出された特定事項が所定回数以上発生した時間を多発時間として算出し得る算出手段6と、算出手段6で算出された多発時間を現在の血液浄化治療中に表示手段4aにて表示させ得る表示制御手段7とを具備したので、医療従事者に対して特定事項の多発時間を予め把握させることができ、血液浄化治療中に記憶されて蓄積された過去情報を有効活用することができるとともに、非定常的に発生する特定事項に対する対応を素早く且つ適切に行わせることができる。
【0049】
すなわち、医療従事者が注意すべきと判断される所望の特定事項が多発するタイミング(多発時間)を現在の血液浄化治療中に事前に把握することができるので、それに備えた準備や確認を予め行うことができ、その特定事項が発生した際の対応を素早く且つ適切に行わせることができるのである。また、作業者の手作業によらず自動で特定事項が多発する多発時間を集計することができるので、手間を省くことができる。さらに、経験豊富で熟練度が高い医療従事者の観点に基づいて多発時間とするための閾値や走査時間T等を任意に設定することができるので、経験が浅く熟練度が低い医療従事者に対しても、注意すべき特定事項の多発時間を把握させることができる。
【0050】
特に、特定事項は、血液浄化治療中における患者の行為に関する非定常的な事項(食事の摂取、トイレへの患者の離脱、体位の変化などのイベントや抜針発生などの突発事項など)若しくは患者の状態に関する非定常的な事項(血圧低下、気分不快や痒み等の愁訴など)、血液浄化治療中に発生した装置に関する非定常的な事項(血液浄化装置1の警報や報知に対する処置行為など)を含むので、医療従事者に対して種々の特定事項の多発時間を予め把握させることができる。
【0051】
また、表示制御手段7は、現在の血液浄化治療に関する情報を時間経過に伴ってグラフとして表示させ得るとともに、算出手段6で算出された多発時間を当該グラフの時間軸に対応させて表示させ得るので、現在の血液浄化治療に関する情報と多発時間との比較を視覚的に行わせることができる。さらに、本実施形態に係る表示制御手段7は、算出手段6で算出された多発時間を時間軸に対応させた帯状のグラフとして表示させ得るので、現在の血液浄化治療に関する情報と多発時間との比較をより円滑且つ視覚的に行わせることができる。
【0052】
またさらに、複数の特定事項のうち任意の特定事項を選択して入力可能な入力手段8を具備するとともに、算出手段6は、当該入力手段8で入力された特定事項に関する多発時間を算出するので、必要とされる特定事項の多発時間を任意選択的に表示させることができる。また、入力手段8で複数の特定事項が入力された場合、表示制御手段7は、特定事項の種類を識別可能な状態で多発時間を表示させるようにすれば、必要とされる複数の特定事項の多発時間を併せて表示させることができる。さらに、本実施形態に係る表示制御手段7により、特定事項が発生した頻度を識別可能な状態で多発時間を表示させるようにすれば、発生頻度に応じた特定事項に対する対応を行わせることができる。
【0053】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係る血液浄化システムは、第1の実施形態と同様、患者に対して血液浄化治療としての透析治療を施し得るもので、図9に示すように、血液浄化装置1と、管理装置2とを具備して構成されている。また、血液浄化装置1及び管理装置2は、LANケーブルLを介して電気的に接続されており、当該血液浄化装置1と管理装置2との間で通信して血液浄化治療に関する情報を送受信可能とされている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0054】
本実施形態に係る管理装置2におけるクライアントアプリケーション4bには、除外手段fが配設されている。かかる除外手段fは、記憶手段3aに蓄積された過去情報のうち任意の過去情報を抽出手段5の検索対象から除外し得るものである。しかして、本実施形態に係る抽出手段5は、記憶手段3aに蓄積された過去情報のうち除外手段fで除外されたもの以外の過去情報を検索することにより特定事項を抽出可能とされている。
【0055】
本実施形態に係る除外手段fは、例えば医療従事者等がクライアントアプリケーション4bにおける操作によってチェックボックスなどをオン又はオフすることによって、検索対象(すなわち、記憶手段3aに蓄積された過去情報)から除外する対象を任意に選択して指定可能とされている。かかる除外手段fによる除外対象として、例えば血液浄化治療をこれから行う患者以外の過去情報、その患者以外であって、性別が異なる或いは年齢が違う患者、原疾患が同一或いは類似でない患者、DW(ドライウェイト)或いは検査値が同一又は近くない患者等が挙げられる。
【0056】
また、除外手段fは、過去情報毎に指定して抽出手段5による検索対象から除外し得るよう構成してもよく、この場合、1治療の過去情報を全て検索対象から除外することができ、確度の高い抽出を行う上で好ましくない情報を治療単位で除外することができる。さらに、除外手段fは、過去情報に含まれる対象データ毎(本実施形態においては特定事項の種類毎)に指定して検索対象から除外することができ、この場合、より細かな除外対象の指定を行わせることができる。またさらに、対象データ毎の除外に加え、治療日毎の除外等の指定を可能とすることができ、その場合、マトリックス形式の画面にて除外指定を可能とするようにしてもよい。
【0057】
本実施形態によれば、記憶手段3aに蓄積された過去情報のうち所定条件を満たす過去情報を検索して抽出可能な抽出手段5と、記憶手段3aに蓄積された過去情報のうち任意の過去情報を抽出手段5の検索対象から除外し得る除外手段fと、抽出手段5で抽出された過去情報に基づく種々情報を表示手段4aにて表示させ得る表示制御手段7とを具備したので、抽出手段5によって抽出される情報として好ましくないものを記憶手段3aによる蓄積情報から除外することができ、医療従事者が必要とする情報を精度よく表示して把握させることができる。
【0058】
例えば、血液浄化装置1にて警報が発生され、対処中の対応が不適切だった場合、連続して警報が発生してしまうことがある。この場合、特定事項(警報の発生)が1回発生したと記憶すべきであるが、発生回数分だけ過去情報内に記憶されてしまう。かかる不具合を避けるため、当該特定事項のうち1回目以降の特定事項を除外手段fにて除外することにより、抽出手段5による抽出を精度よく行わせることができ、表示される多発時間の信頼性を向上させることができる。
【0059】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えばLANケーブルLの如き配線を介さず管理装置2のサーバ3と接続されたもの(例えば無線にて各血液浄化装置1とサーバ3とが通信可能なもの)であってもよい。また、各血液浄化装置1と接続される管理装置2のサーバ3は、透析治療に関わる部屋以外に設置された他の独立したサーバ(例えば、同一病院内の他の診療科(合併症に関わる内科等、透析室とは異なる部屋)の治療情報(電子カルテ)や投薬情報を格納したシステム、患者の看護を目的とした看護支援システム、或いは予約又は会計システム等、種々のシステムに搭載されたサーバ)と接続することができ、当該サーバ3に対して種々の患者情報を互いに送受信し得るものとしてもよい。
【0060】
さらに、本実施形態に係る表示制御手段7は、算出手段6で算出された多発時間を現在の血液浄化治療中においてクライアントPC4の表示手段4aにて表示させ得るものとされているが、算出手段6で算出された多発時間を現在の血液浄化治療中において各血液浄化装置1の表示手段1aにて表示させ得るものとしてもよい。またさらに、本実施形態においては、クライアントアプリケーション4bを作動させるためのWebアプリケーションモジュール3cがサーバ3内に配設されているが、クライアントPC4内に配設するようにしてもよい。
【0061】
なお、本実施形態においては、血液透析(HD)、ECUM又はHDF(血液透析濾過)の如き治療形態が可能とされた血液透析装置に適用しているが、これに代えて他の血液浄化治療(例えば、血液濾過(HF)又は持続緩徐式血液濾過(CHF)等の治療)を施すことが可能な血液浄化装置に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
過去情報には、血液浄化治療中において非定常的に発生した特定事項が含まれるとともに、記憶手段に蓄積された過去情報を検索し、所望の特定事項を抽出可能な抽出手段と、抽出手段で抽出された特定事項が所定回数以上発生した時間を多発時間として算出し得る算出手段と、算出手段で算出された多発時間を現在の血液浄化治療中に表示手段にて表示させ得る表示制御手段とを具備した血液浄化システムであれば、他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 血液浄化装置
1a 表示手段
2 管理装置
3 サーバ
3a 記憶手段
3b 通信モジュール
3c webアプリケーションモジュール
4 クライアントPC
4a 表示手段
5 抽出手段
6 算出手段
7 表示制御手段
8 入力手段
9 血液回路
10 血液ポンプ
11 ダイアライザ(血液浄化器)
12 複式ポンプ
13 除水ポンプ
14 外部表示灯
R 多発時間
f 除外手段
【要約】
【課題】血液浄化治療中に記憶されて蓄積された過去情報を有効活用することができるとともに、非定常的に発生する特定事項に対する対応を素早く且つ適切に行わせることができる血液浄化システムを提供する。
【解決手段】記憶手段3aに記憶された過去情報には、血液浄化治療中において非定常的に発生した特定事項が含まれるとともに、記憶手段3aに蓄積された過去情報を検索し、所望の特定事項を抽出可能な抽出手段5と、抽出手段5で抽出された特定事項が所定回数以上発生した時間を多発時間として算出し得る算出手段5と、算出手段5で算出された多発時間を現在の血液浄化治療中に表示手段4aにて表示させ得る表示制御手段7とを具備した血液浄化システムである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9