(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411023
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】モジュラー設計の内燃エンジン
(51)【国際特許分類】
F02F 1/00 20060101AFI20181015BHJP
F02F 1/24 20060101ALI20181015BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20181015BHJP
F01L 1/02 20060101ALI20181015BHJP
F01L 1/04 20060101ALI20181015BHJP
F01L 1/12 20060101ALI20181015BHJP
F01L 1/14 20060101ALI20181015BHJP
F01L 1/18 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
F02F1/00 A
F02F1/00 S
F02F1/24 F
F02F7/00 F
F01L1/02 B
F01L1/04 D
F01L1/12 E
F01L1/14
F01L1/18 M
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-251931(P2013-251931)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2014-129813(P2014-129813A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】10 2012 023 836.3
(32)【優先日】2012年12月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・エープラー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ゼンゲン
【審査官】
木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】
特表平09−502235(JP,A)
【文献】
国際公開第95/003485(WO,A1)
【文献】
実開昭58−180356(JP,U)
【文献】
特公昭48−040601(JP,B1)
【文献】
特開平09−151746(JP,A)
【文献】
特開昭56−167819(JP,A)
【文献】
特表2008−520907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00
F01L 1/02
F01L 1/04
F01L 1/12
F01L 1/14
F01L 1/18
F02F 1/24
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュラー設計の内燃エンジンであって、
シリンダークランクケース(11,11’,11”)であって、その中で、クランクシャフト(12)および少なくとも一つのカムシャフト(13,14,15)がガイドされるシリンダークランクケース(11,11’,11”)を備え、
それぞれが複数のシリンダー(18,18’,18”)を備える複数のシリンダーバンク(16,17)であって、各シリンダーは、給気のための少なくとも一つのインレットバルブ(20)と、排気のための少なくとも一つのエキゾーストバルブ(22)と、燃料のための少なくとも一つのインレットバルブ(21)と、を備えたシリンダーヘッド(37)を備えている複数のシリンダーバンク(16,17)を備え、
前記あるいは各カムシャフト(13,14,15)と相互作用するバルブ制御部であって、各シリンダーに関して、前記各シリンダーの吸気のための前記あるいは各インレットバルブ(20)を作動させるためのプッシュロッド(26)によって作動させられるロッカーアーム(27)と、前記各シリンダーの排気のための前記あるいは各エキゾーストバルブ(22)を作動させるためのさらなるプッシュロッド(28)によって作動させられるロッカーアーム(29)と、を備えるバルブ制御部を備え、
前記プッシュロッド(26,28)は、プッシュロッドガイド(33,34)と共に、前記各シリンダーのロッカーアームボックス(32)内で実際にガイドされるが、前記各シリンダーの前記シリンダーヘッド(37)内ではガイドされず、
前記各シリンダーのための吸気供給部は、前記各シリンダーの前記シリンダーヘッド(37)を通って延在するが、前記各シリンダーの前記ロッカーアームボックス(32)を通って延在しておらず、
前記各シリンダー(18,18’,18”)の前記シリンダーヘッド(37)の幾何学的外側輪郭は、前記各シリンダーのシリンダーライナー(19)の長手方向軸線に関して対称に形成され、
給気のための前記インレットバルブ(20)及び前記エキゾーストバルブ(22)が、前記シリンダーライナー(19)の長手方向軸線に関して対称に配置され、
給気のための前記インレットバルブ(20)を作動させるための前記プッシュロッド(26)及び前記エキゾーストバルブ(22)を作動させるための前記プッシュロッド(28)が、前記シリンダーライナー(19)の長手方向軸線に関して対称に配置されることを特徴とする内燃エンジン。
【請求項2】
前記各シリンダー(18,18’,18”)の前記シリンダーヘッド(37)の前記幾何学的外側輪郭は、前記各シリンダーの前記シリンダーライナー(19)の長手方向軸線に関して回転対称であり、
給気のための前記インレットバルブ(20)及び前記エキゾーストバルブ(22)が、前記シリンダーライナー(19)の長手方向軸線に関して回転対称に配置され、
給気のための前記インレットバルブ(20)を作動させるための前記プッシュロッド(26)及び前記エキゾーストバルブ(22)を作動させるための前記プッシュロッド(28)が、前記シリンダーライナー(19)の長手方向軸線に関して回転対称に配置されることを特徴とする請求項1に記載の内燃エンジン。
【請求項3】
各シリンダーが給気用の複数のインレットバルブ(20)と、排気用の複数のエキゾーストバルブ(22)と、を備える場合、前記対応するロッカーアーム(27,29)は、ヨークブリッジ(30,31)を介して、前記各ガス交換バルブ(20,22)に対して結合されることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃エンジン。
【請求項4】
前記内燃エンジンがガスエンジンとして、あるいは直結式燃料ポンプを備えたディーゼルエンジンとして設計される場合、前記内燃エンジンは、燃料用の全てのインレットバルブ(21)および全てのガス交換バルブ(20,22)を作動させる単一カムシャフトを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の内燃エンジン。
【請求項5】
前記内燃エンジンが直結式燃料ポンプを持たないディーゼルエンジンとして設計される場合、前記内燃エンジンは、二つあるいは三つのカムシャフトを備え、前記内燃エンジンが二つのカムシャフトを備える場合、それぞれシリンダーバンク(16,17)のための一つの外側カムシャフト(13,14)はそれぞれ、燃料用の前記インレットバルブ(21)と、前記各シリンダーバンク(16,17)の前記ガス交換バルブ(20,22)を作動させ、一方、前記内燃エンジンが三つのカムシャフト(13,14,15)を備える場合、シリンダーバンク(16,17)のための一つの外側カムシャフト(13,14)はそれぞれ、前記各シリンダーバンク(16,17)の燃料用の前記インレットバルブ(21)を作動させ、かつ、両シリンダーバンク(16,17)用の中間カムシャフト(15)は前記ガス交換バルブ(20,22)を作動させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の内燃エンジン。
【請求項6】
内燃エンジン用のモジュラーシステムであって、
シリンダークランクケース(11,11’,11”)であって、その中で、クランクシャフト(12)それぞれおよび少なくとも一つのカムシャフト(13,14,15)がガイドされるシリンダークランクケース(11,11’,11”)を備え、
そのそれぞれが複数のシリンダー(18,18’,18”)を備えるシリンダーバンク(16,17)であって、各シリンダーは、給気のための少なくとも一つのインレットバルブ(20)と、排気のための少なくとも一つのエキゾーストバルブ(22)と、燃料のための少なくとも一つのインレットバルブ(21)と、を備えたシリンダーヘッド(37)を備えているシリンダーバンク(16,17)を備え、
前記あるいは各カムシャフト(13,14,15)と相互作用するバルブ制御部であって、各シリンダーに関して、前記各シリンダーの吸気のための前記あるいは各インレットバルブ(20)を作動させるためのプッシュロッド(26)によって作動させられるロッカーアーム(27)と、前記各シリンダーの排気のための前記あるいは各エキゾーストバルブ(22)を作動させるためのさらなるプッシュロッド(28)によって作動させられるロッカーアーム(29)と、を備えるバルブ制御部を備え、
前記プッシュロッド(26,28)は、プッシュロッドガイド(33,34)と共に、前記各シリンダーのロッカーアームボックス(32)内で実際にガイドされるが、前記各シリンダーの前記シリンダーヘッド(37)内ではガイドされず、
前記各シリンダーのための吸気供給部は、前記各シリンダーの前記シリンダーヘッド(37)を通って延在するが、前記各シリンダーの前記ロッカーアームボックス(32)を通って延在しておらず、
前記各シリンダー(18,18’,18”)の前記シリンダーヘッド(37)の幾何学的外側輪郭は、前記各シリンダーのシリンダーライナー(19)の長手方向軸線に関して対称に形成され、
給気のための前記インレットバルブ(20)及び前記エキゾーストバルブ(22)が、前記シリンダーライナー(19)の長手方向軸線に関して対称に配置され、
給気のための前記インレットバルブ(20)を作動させるための前記プッシュロッド(26)及び前記エキゾーストバルブ(22)を作動させるための前記プッシュロッド(28)が、前記シリンダーライナー(19)の長手方向軸線に関して対称に配置されることを特徴とする内燃エンジン用のモジュラーシステム。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項あるいは複数項に記載の特徴を備える請求項6に記載のモジュラーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモジュラー設計の内燃エンジンに関する。本発明はさらに、内燃エンジン用のモジュラーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、内燃エンジンは、常に、既定の作動目的および既定の要件のために別個に設計された内燃エンジンであった。内燃エンジンが新たに開発される場合、そのアセンブリの全ては、原則として、新しい開発の影響下に置かれる。現在まで、既存のコンポーネントを内燃エンジンの新たな開発において利用することは、そしてこれらを改変を伴わずに利用し続けることは不可能であり、あるいは非常に限定された範囲内でのみ可能であった。これは不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした状況に鑑みて、本発明は、新規なタイプの内燃エンジンを提供するという目的に基づく。この目的は、請求項1に記載のモジュラー設計の内燃エンジンによって達成される。モジュラー設計の内燃エンジンは、その中でクランクシャフトおよび少なくとも一つのカムシャフトがガイドされるシリンダークランクケースを備える。さらに、モジュラー設計の内燃エンジンは、それぞれが複数のシリンダーを備える一つ(L型エンジン)あるいは複数(V型)のシリンダーバンクを備え、各シリンダーは、給気のための少なくとも一つのインレットバルブと、排気のための少なくとも一つのエキゾーストバルブと、燃料のための少なくとも一つのインレットバルブとを備えるシリンダーヘッドを備える。さらにモジュラー設計の内燃エンジンは、上記あるいは各カムシャフトと相互作用するバルブ制御部を備え、これは、各シリンダーに関して、各シリンダーの吸気のための上記あるいは各インレットバルブを作動させるためのプッシュロッドによって作動させられるロッカーアームと、さらなるプッシュロッドによって作動させられる各シリンダーの排気のための上記あるいは各エキゾーストバルブを作動させるためのロッカーアームとを備える。
【課題を解決するための手段】
【0004】
プッシュロッドは、プッシュロッドガイドと共に、確かに、各シリンダーのロッカーアームボックス内でガイドされるが、各シリンダーのシリンダーヘッド内ではガイドされない。各シリンダーのための吸気供給は各シリンダーのシリンダーヘッド内でガイドされるが、各シリンダーのロッカーアームボックス内ではガイドされない。各シリンダーのシリンダーヘッドの幾何学的外側輪郭は、各シリンダーのシリンダーライナーの長手方向軸線に関して対称に設計される。
【0005】
本発明によって、モジュラー形態の内燃エンジンを具現化することが初めて提案される。したがって、内燃エンジンの個々のシリンダーおよび内燃エンジンのシリンダーのためのバルブ制御部は、カムシャフトの数、したがってそのポジションとは無関係である。各シリンダーの領域において180°だけ、バルブ制御部あるいはバルブ制御部のロッカーアームボックスを方向転換することで、バルブ制御部は各カムシャフトのポジションに適応することができる。シリンダーヘッドの形態は、バルブ制御部の、そしてバルブ制御部のロッカーアームボックスのこの方向転換を制限しない。これに関して、内燃エンジンの異なる実施形態と共に、同一のシリンダーおよびバルブ制御部を利用することが可能である。
【0006】
好ましくは、各シリンダーのシリンダーヘッドの幾何学的外側輪郭は、各シリンダーのシリンダーライナーの長手方向軸線を通って延在する平面に関して軸対称であるか、あるいは各シリンダーのシリンダーライナーの長手方向軸線に関して点対称である。内燃エンジンのシリンダーのシリンダーヘッドのそうした幾何学的外側輪郭は特に好ましく、各シリンダーの領域において180°だけ、バルブ制御部の、特にそのロッカーアームボックスの制限されない方向転換を可能とする。
【0007】
特に、各シリンダーが給気用の複数のインレットバルブと排気用のエキゾーストバルブを備える場合、対応するロッカーアームは、ヨークブリッジを介して各ガス交換バルブに対して結合される。この形態は特に簡素である。
【0008】
本発明に基づく内燃エンジン用のモジュラーシステムが請求項7において規定される。
【0009】
本発明の好ましいさらなる展開は従属請求項ならびに以下の詳細な説明から得られる。本発明の代表的実施形態について、それに限定されることなく、図面を参照して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に基づくモジュラー設計の第1の内燃エンジンを示す図である。
【
図2】本発明に基づくモジュラー設計の第2の内燃エンジンを示す図である。
【
図2a】
図2の、または
図1の内燃エンジンの第1の細部を示す図である。
【
図2b】
図2の、または
図1の内燃エンジンの第2の細部を示す図である。
【
図3】本発明に基づくモジュラー設計の第3の内燃エンジンを示す図である。
【
図3a】
図3の内燃エンジンの第1の細部を示す図である。
【
図3b】
図3の内燃エンジンの第2の細部を示す図である。
【
図4】
図1ないし
図3の内燃エンジンのさらなる細部の斜視図である。
【
図5】
図1ないし
図3の内燃エンジンのさらなる細部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明はモジュラー設計の内燃エンジンに関するものであり、このものにおいては、内燃エンジンの具体的実施形態に関係なく、当該内燃エンジンの多数のコアコンポーネントは、改変を伴わずに、あるいは形態的モジュラーシステムの意味での最小限の適応を伴って利用可能である。
【0012】
図1ないし
図3は、モジュラー形態での本発明に基づく、さまざまな内燃エンジン(ここでは、LおよびV設計を表すV型)10,10’および10”の斜視図であり、ここで、
図1ないし
図3それぞれに示す内燃エンジンはそれぞれシリンダークランクケース11,11’および11”を備え、この中で、クランクシャフト12および少なくとも一つのカムシャフト13,14および15がそれぞれガイドあるいはマウントされる。
【0013】
図1の代表的実施形態においては、三つのカムシャフト13,14および15がシリンダークランクケース11内にマウントされている。
図2の代表的実施形態においては、二つのカムシャフト13および14がシリンダークランクケース11’内にマウントされている。
図3の代表的実施形態においては、単一のカムシャフト15がシリンダークランクケース11”内にマウントされている。
【0014】
内燃エンジン10,10’および10”のそれぞれは、二つのシリンダーバンク16および17を備え、そのそれぞれは複数の、図示する代表的実施形態では三つのシリンダー(18,18’および18”)を備える。
図2aはシリンダー18および18’を、そして
図3aはシリンダー18”を、それぞれ単独で示している。
【0015】
シリンダー18,18’,18”のシリンダーライナー19が示されているが(このものでは図示していないピストンが各例において動作可能にガイドされている)、図示する代表的実施形態における各シリンダー18,18’,18”は、給気用の二つのインレットバルブ20と、燃料用のインジェクターとして設計されたインレットバルブ21と、各例に関して排気用の二つのエキゾーストバルブ22とを備える。給気は、給気ライン23を介して各シリンダーバンク16および17それぞれのシリンダーへと供給することができ、排気は排気ライン24それぞれを介して各シリンダーバンク16および17のシリンダーから放出される。
【0016】
図3の代表的実施形態において(これはガスエンジンである)、燃料としてのガスは、ガス供給ライン25それぞれを経てシリンダー群16,17の個々のシリンダー18”に対して供給可能である。
【0017】
図1の代表的実施形態において(このものでは内燃エンジンは三つのカムシャフト13,14および15を備える)、二つの外側カムシャフト13および14は、燃料用のインレットバルブを作動させるために、したがって各シリンダーバンク16および17のインジェクター21を作動させるために機能し、一方、中間カムシャフト15は、両シリンダーバンク16および17のシリンダー18のガス交換バルブ20および22を作動させるために機能する。
図2の代表的実施形態において(このものでは内燃エンジン10’のシリンダークランクケース11’内に二つのカムシャフト13および14が収容されている)、カムシャフト13および14のそれぞれは、ガス交換バルブ20および22ならびに各シリンダー群16および17のシリンダー18’のインジェクター21を作動させるために機能する。
図3の代表的実施形態では(このものでは単一のカムシャフト15が存在する)、カムシャフト15は、両シリンダー群あるいはシリンダーバンク16および17の全てのシリンダー18”の全てのガス交換バルブ20および22を作動させるために機能する。
【0018】
内燃エンジン10,10’および10”はさらにバルブ制御部(これはカムシャフトの少なくとも一つと相互作用する)を備え、各シリンダー18,18’,18”用のバルブ制御部は、各シリンダーの吸気のための上記あるいは各インレットバルブ20を作動させるためのプッシュロッド26によって作動させられるロッカーアーム27と、各シリンダーの排気のための上記あるいは各エキゾーストバルブ22を作動させるためのさらなるプッシュロッド28によって作動させられるロッカーアーム29とを備える。特に、代表的実施形態において示すように、給気用の二つのインレットバルブ20および排気用の二つのエキゾーストバルブが各シリンダーに存在する場合、ロッカーアーム27および29は、各ガス交換バルブ上のヨークブリッジ30,31に作用する。
【0019】
図4から最も明らかであるように、バルブ制御部のロッカーアーム27および29は、いわゆるロッカーアームハウジング32内に収容されている。プッシュロッド26および28は、いわゆるプッシュロッドガイド33および34内でそれぞれガイドされる。ロッカーアーム27および29と反対側に置かれた端部において、プッシュロッド26および28は、それぞれ、いわゆるカムフォロア35および36を介して、各カムシャフトに作用する。
【0020】
図1ないし
図3に示すモジュラー形態で具現化された内燃エンジン10,10’,10”は、全て、同一のバルブおよび同一のバルブ制御部を利用し、ここで、これは、バルブ制御部のプッシュロッド26および28が、プッシュロッドガイド33および34と共に、各シリンダーの各ロッカーアームボックス32内でガイドされるが、各シリンダーのシリンダーヘッド37内ではガイドされないために可能となっている。
【0021】
これに関して、さらに、各シリンダーへの給気供給部が各シリンダーのシリンダーヘッド37を経て延在するが、各シリンダーのロッカーアームボックス32を経ていないことが重要である。
【0022】
これに加えて、各シリンダーのシリンダーヘッド37の幾何学的外側輪郭は、各シリンダーのシリンダーライナー19の長手方向軸線に関して、対称に形成される。
【0023】
これによって、バルブ制御部、特にロッカーアームボックス32は、ロッカーアーム27および29とプッシュロッド26および28とプッシュロッドガイド33および34と共に、各シリンダーヘッド37に関して、したがって各シリンダーに関して、180°だけ向きを変更可能であることを達成することができる。これは、
図2aおよび
図3aの比較から分かることであり、
図2aにおいては、バルブ制御部は、第1の相対ポジションにおいて各シリンダーあるいはシリンダーヘッド37に作用し、そして
図3aにおいては、180°だけ向きが変わった第2の相対ポジションにおいてそれを行う。
【0024】
これはまた
図2bおよび
図3bから分かることであり、ここでは、ロッカーアームボックス32は180°だけ向きが変わった相対ポジションで示されている。シリンダーヘッド37の外部でのシリンダーヘッド37に対するプッシュロッド26および28の異なる相対ポジションが
図5に示されており、
図5から、シリンダーヘッド37の幾何学的寸法あるいは輪郭は、180°だけ、ロッカーアームボックス32を回転させるのを、したがって各シリンダーのバルブ制御部を回転させるのを妨げないことが分かる。
【0025】
したがって、シリンダー群16及び17のシリンダーのガス交換バルブ20及び22が外側カムシャフト13および14によって作動させられたとき、各シリンダーのバルブ制御部は
図2aおよび
図2bに示す相対ポジションを呈する。対照的に、ガス交換バルブ20,22が(両シリンダーバンク間に配置された)中間カムシャフト15によって作動させられたとき、バルブ制御部およびロッカーアームボックス32は、各シリンダーの領域において、
図3aおよび
図3bに示す相対ポジションを呈する。
【0026】
図5から最もよく分かるように、シリンダーヘッド37の幾何学的外側輪郭は対称、すなわちシリンダーライナー19の長手方向軸線を通って延びる平面に関して軸対称あるいはシリンダーライナーの長手方向軸線に関して点対称である。
【0027】
シリンダーヘッド37の幾何学的外側輪郭のこの対称性によって、各シリンダーのバルブ制御部、すなわち各シリンダーのロッカーアームボックス32は、プッシュロッド26および28と共に、それによってバルブ制御部をカムシャフト(これは各プッシュロッド26および28を作動させるために機能する)のポジションに適合させるために、シリンダーヘッド37に対して、したがって各シリンダーに対して、180°だけ向きを変えることができる。
【0028】
したがって、本発明に基づく内燃エンジン10,10’,10”はモジュラー形態で具現化される。内燃エンジン10,10’,10”に関して対応するモジュラーシステムはシリンダークランクケース11,11’,11”をそれぞれ備え、これは、型の交換によって、鋳造の間、カムシャフト13,14および15の数およびポジションに適応させられる必要がある。シリンダーバンク16および17のシリンダー18,18’,18”、特にシリンダーのシリンダーヘッド37、およびガス交換バルブ20および22を作動させるためのバルブ制御部は、しかしながら同一であり、これらは、カムシャフトの数およびポジションに対する適合を実施するために、180°だけその相対ポジションに関して互いに対して向きを変えることができる。各シリンダーの領域において、ロッカーアームボックス32は、プッシュロッド26および28ならびにプッシュロッドガイド33および34のガイドおよび幾何学的ポジションがいかなる制限を受けこともなく、シリンダーヘッド37に対して180°だけ向きを変えることができる。プッシュロッド26および28は、実際、ロッカーアームボックス32内でプッシュロッドガイド33および34と共にガイドされるが、シリンダーヘッド37内ではそうされない。各シリンダーへの吸気供給は、実際、各シリンダーヘッド37内でガイドされるが、各ロッカーアームボックス32内ではそうされない。シリンダーヘッド37の幾何学的外側輪郭は、シリンダーヘッド37の対称性によって、シリンダーヘッド37に対して、ロッカーアームボックス32の方向転換を可能とする。
【0029】
そうしたモジュラーシステムによって設計された内燃エンジンは数多くの利点を有する。すなわち、アセンブリは数多くの内燃エンジン形態において利用可能であり、この結果、内燃エンジン用のアセンブリ異形体が削減される。内燃エンジンの別個のアセンブリは、別なエンジンサイズに容易にサイズ変更して組み込むことができる。加えて、製造業者および顧客が保管する交換部品が削減される。顧客のトレーニング労力が削減される。製造業者および顧客の双方において経済性が増大する。
【符号の説明】
【0030】
10,10’,10” 内燃エンジン
11,11’,11” シリンダークランクケース
12 クランクシャフト
13,14,15 カムシャフト
16,17 シリンダーバンク
18,18’,18” シリンダー
19 シリンダーライナー
20 インレットバルブ(ガス交換バルブ)
21 インレットバルブ(インジェクター)
22 エキゾーストバルブ(ガス交換バルブ)
23 給気ライン
24 排気ライン
25 ガス供給ライン
26 プッシュロッド
27 ロッカーアーム
28 プッシュロッド
29 ロッカーアーム
30,31 ヨークブリッジ
32 ロッカーアームボックス
33,34 プッシュロッドガイド
35,36 カムフォロア
37 シリンダーヘッド