(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るホームドア装置について、その一実施形態を
図1〜8に基づいて説明する。
<第1の実施形態>
本実施形態のホームドア装置(以下、「ホームドア」と呼ぶ)1は、
図1及び
図3に示すように、電車等の軌道車両に乗降する駅構内のプラットホームHに設置されて乗降客を保護する装置である。なお、
図1はホームドア1を軌道側から見た図であり、
図3(b)はホーム側から見た図であり、従って、
図3(a)においては紙面上側が軌道側となり、紙面下側がホーム側となる。
【0019】
すなわち、このホームドア1は、軌道車両が走行する軌道側と乗降客の乗降に使用するプラットホームH側との間を遮断するように、プラットホームH上に立設されている壁面2に乗降用の開口部3を形成し、さらに、軌道車両への乗降時に乗降通路となる開口部3を開閉するため、戸袋10に収納された1枚の扉部30を電動機及びラック&ピニオン等の駆動機構によりスライドさせるように構成されている。この場合、戸袋10は、隣接する開口部3を開閉する扉部30を幅方向にずらして収納するように構成されている。
なお、略直方体形状を有する戸袋10は、その外壁面が扉部30とともに壁面2の一部を形成している。
【0020】
ホームドア1は、扉部30で開口部3を閉じた状態にする開口部閉状態において、壁面2が軌道側とプラットホームH側とを遮断するので、乗降客が軌道上へ転落することや、乗降客が走行する軌道車両に接触することを防止し、乗降客を保護して安全を確保することができる。また、ホームドア1は、扉部30を戸袋10内に収納することで開口部3を開いた状態にする開口部開状態において、開口部3を軌道車両に乗降する乗降客の乗降通路として使用できる。
【0021】
さて、上述したホームドア1は、1枚の扉部30を駆動機構によりスライドさせて乗降用の開口部を開閉するため、すなわち、戸袋10に対して扉部30をスライド可能に支持するため、スライド支持部材及びスライドレールにより構成されるスライド機構を備えている。本実施形態のスライド機構は、開閉方向へ2段階に伸縮するリニアガイドスライド機構(以下、「リニアスライド機構」と呼ぶ)50を採用している。このリニアスライド機構50は、扉部30の安定したスライドを可能にするため、戸袋10及び扉部30の上下に2段(上下一対)のリニアスライド機構50A,Bを設けているが、扉部30の高さ等に応じて3段以上を設置する構造としてもよい。
【0022】
リニアスライド機構50は、例えば
図4〜8に示すように、戸袋10側に固定支持された第1段スライドレール支持部材51(以下、「第1段レール支持部」と呼ぶ)及びこの第1段レール支持部51に摺動可能に支持された第1段スライドレール(以下、「第1段リニアガイド」と呼ぶ)52を備えている第1段リニアガイドスライド機構(以下、「第1段スライド機構」と呼ぶ)53と、第1段リニアガイド52に固定支持された第2段スライドレール支持部材(以下、「第2段レール支持部」と呼ぶ)54及びこの第2段レール支持部54に摺動可能に支持された第2段スライドレール(以下、「第2段リニアガイド」と呼ぶ)55を備えている第2段リニアガイドスライド機構(以下、「第2段スライド機構」と呼ぶ)56とを具備して構成され、第2段スライド機構56の第2段リニアガイド55が扉部30の一面に固定されている2段リニアスライド機構である。
なお、
図4及び
図8(a)の紙面上側が軌道側、紙面下側がホーム側であり、
図5〜7及び
図8(c)の紙面右側が軌道側、紙面左側がホーム側である。
【0023】
上段のリニアスライド機構50Aにおいて、第1段リニアガイドスライド機構53は、左右一対の第1段レール支持部51が戸袋10の内側適所に固定支持されている。第1段レール支持部51は、第1段リニアガイド52の3面(上面、下面及び一側面)を囲むように係合して摺動可能に支持する略断面コ字状の部材であり、左右一対が扉部30のスライド方向と平行な直線上に配置されている。なお、図示の構成例では、第1段レール支持部51から第1段リニアガイド52が離脱することを防止するため、上下の面を凹凸により係合させている。
なお、図中の符号52aは第1段リニアガイド52を支持して一体にスライドするスライド梁、60は戸袋10側で第1段レール支持部51を支持する固定梁、61は上下2段のリニアスライド機構50A,Bに設けられた第1段レール支持部51を一体に連結している上下接続板である。
【0024】
第2段リニアガイドスライド機構56は、左右一対の第2段レール支持部54が第1段リニアガイド51と一体のスライド梁52aに固定支持されている。第2段レール支持部54は、第2段リニアガイド55の3面(上面、下面及び一側面)を囲むように係合して摺動可能に支持する略断面コ字状の部材であり、左右一対が扉部30のスライド方向と平行な直線上に配置されている。なお、図示の構成例では、第2段レール支持部54から第1段リニアガイド55が離脱することを防止するため、上下の面に凹凸を設けて係合させている。
なお、第2段リニアガイド55は、一体にスライドするスライド梁55aを介して、扉部30と連結されている。
【0025】
また、下段のリニアスライド機構50Bにおいて、第1段リニアガイドスライド機構53及び第2段リニアガイドスライド機構56の構成は基本的に同じであり、従って、
図7では同様の構成部材に
図6と同じ番号を付してある。
【0026】
また、
図5,
図7及び
図8において、図中の符号70は扉部30の駆動機構であり、電動機71により回転するピニオンギア72と噛合するラックギア73が扉部30の下端部に取り付けられている。この場合、電動機71及びピニオンギア72は、戸袋10内の下端部側で、かつ、扉部30が出入りする側端部の近傍に配置されている。このような配置は、扉部30の重量が上述したリニアガイドスライド機構50に支持されているため可能となり、この結果、ラックギア73とともに開閉する扉部30の出代を最大限に確保することができる。
なお、扉部30の駆動機構については、上述した駆動機構70の構成に限定されることはない。
【0027】
以下、上述した構成のリニアスライド機構50を備えたホームドア1について、2段伸縮による扉部30の開閉動作(第1の実施形態)を
図2に基づいて説明する。なお、
図2においては、紙面上側が軌道側であり、ホーム側の戸袋10は図示が省略されている。
図2(a)は、ホームドア1が全開(完全開)の状態を示している。この状態では、扉部30が全て戸袋10内に収納されることで、紙面左側となる乗降用の開口部3が全開となり、乗客の乗降が可能となっている。なお、扉部30の紙面右側については、例えば
図1に示すように、紙面右側にある開口部開閉用の扉部30を幅方向に重ねて収容する戸袋10が存在している。
【0028】
図2(b)は、乗客の乗降が終了した後、ホームドア1の閉動作を開始した状態を示している。この状態では、駆動機構70が動作することにより、扉部30が図中に矢印Scで示す紙面左側の閉方向へ向けてスライドを開始する。このとき、リニアスライド機構50は、第2段リニアガイドスライド機構56が最初に作動して、第2段レール支持部54により摺動可能に支持された第2段リニアガイド55が扉部30と一体に閉方向へ移動する。この結果、扉部30は、第1段階の閉動作を行うこととなる。
このような第1段階の閉動作は、
図2(c)に示すように、第2段リニアガイド55が移動可能限界に到達することにより、ホームドア閉の第1段階が完了する。なお、第2段リニアガイド55の移動可能限界については、例えば図示しないストッパを第2段リニアガイド55の適所(例えば右側端部近傍)に設けて第2段レール支持部54と干渉させるようにすればよい。
【0029】
第1段階の閉動作が完了した後には、
図2(d)に示すように、第2段階の閉動作が行われる。この閉動作は、リニアスライド機構50において、第1段リニアガイドスライド機構53が作動し、第1段レール支持部51により摺動可能に支持された第1段リニアガイド52が第2段レール支持部54及び扉部30と一体に閉方向へ移動する。このような第2段階の閉動作は、例えば上述したストッパ(不図示)と第2段レール支持部54とが干渉することにより、駆動機構70により閉動作する扉部30に引きずられるように第2段レール支持部54が閉方向へ移動して開始される。
この閉動作は、第1段リニアガイド52の移動可能限界に到達することで完了し、ホームドア1は全閉(完全閉)の状態となる。なお、第1段リニアガイド52の移動可能限界についても、例えば図示しないストッパを第1段リニアガイド52の適所(例えば右側端部近傍)に設けて第1段レール支持部51と干渉させるようにしてもよいし、あるいは、扉部30の先端部が隣接する扉部先端部に当接することを利用してもよい。
【0030】
続いて、
図2(d)に示すホームドア1の全閉状態から、扉部30を逆方向へスライドさせる開動作を説明する。
図2(e)は、ホームドア1の扉部30が開口部3を閉じることで乗降できない全閉状態から、乗客の乗降を可能にするため開口部3を開く第1段階の開動作を開始した状態を示している。この状態では、駆動機構70が逆方向へ動作することにより、扉部30が図中に矢印Soで示す紙面右側の開方向へ向けてスライドを開始する。このとき、リニアスライド機構50は、第2段リニアガイドスライド機構56が作動し、第2段レール支持部54により摺動可能に支持された第2段リニアガイド55が扉部30と一体に開方向へ移動する。この結果、扉部30は、第1段階の開動作を行うこととなる。
【0031】
このような第1段階の開動作は、第2段リニアガイド55が逆側の移動可能限界に到達することにより、ホームドア開の動作は第1段階が完了する。なお、第2段リニアガイド55の移動可能限界については、例えば図示しないストッパを第2段リニアガイド55の適所(例えば左側端部近傍)に設けて第2段レール支持部54と干渉させるようにすればよい。
【0032】
第1段階の開動作が完了した後には、
図2(f)に示すように、第2段階の開動作が行われる。この閉動作は、リニアスライド機構50において、第1段リニアガイドスライド機構53が作動し、第1段レール支持部51により摺動可能に支持された第1段リニアガイド52が第2段レール支持部54及び扉部30と一体に開方向へ移動する。このような第2段階の開動作は、例えば上述したストッパ(不図示)と第2段レール支持部54とが干渉することにより、駆動機構70により開動作する扉部30に引きずられるように第2段レール支持部54が開方向へ移動して開始される。
この開動作についても、第1段リニアガイド52が逆側の移動可能限界に到達することで完了し、
図2(g)及び
図2(a)に示すように、ホームドア1は全開(完全開)の状態となる。なお、第1段リニアガイド52の移動可能限界についても、例えば図示しないストッパを第1段リニアガイド52の適所(例えば左側端部近傍)に設けて第1段レール支持部51と干渉させるようにすればよい。
【0033】
このように、本実施形態のリニアスライド機構50は、扉部30の開閉方向に2段階の伸縮をするように構成されているので、開閉駆動機構との連結部となるため出代として利用できない扉部30の幅を低減し、開閉時に出代として有効利用できる扉幅を拡大することができる。なお、扉部30の幅等によっては、2段階以上の複数段に伸縮するものを採用してもよい。
【0034】
扉幅の拡大を具体的に説明すると、本実施形態の扉部30は、全閉状態の
図2(d)において、実質的に第1段リニアガイド52を支持する左右一対の第1段レール支持部51により、開閉駆動機構との連結部幅が概ね規定される。すなわち、全閉状態で戸袋10内に収納されているのは、概ね左右一対の第1段レール支持部51を設置した幅である。
しかし、1枚の扉部30を1段階のリニアスライド機構で開閉する場合に必要な開閉駆動機構との連結部幅は、全閉状態の
図2(d)において、概ね全閉方向(紙面左側)の第2段レール支持部54から全開方向(紙面右側)の第1段レール支持部51までとなるため、大幅に大きくなることが分かる。
【0035】
従って、1枚の扉部30をスライドさせて開閉するホームドア1においては、開閉方向へ複数段に伸縮するリニアスライド機構の採用が戸袋幅の短縮に有効であり、この結果、乗降口として利用できる開口部幅の確保が容易になり、扉数や扉位置の異なる軌道車両が停車するプラットホームHへの設置も容易になる。すなわち、プラットホームHの有効長さに占める全戸袋幅の割合が大きいと、乗降口として利用可能な開口部3の全長は短くなるが、本実施形態のように複数段に伸縮するリニアスライド機構50を採用すれば、全戸袋幅の割合を低減できる。
また、開口部幅の拡大は、定位置停止装置の有無にかかわらず軌道車両の停止条件に必要な開口寸法の余裕設定も容易になる。
【0036】
ところで、上述した実施形態のホームドア1は、
図9(a)に示すように、左右一対設けた柱状戸袋10A,10B間が前後の板状部材11で連結された構成となっている。このような柱状タイプの構成では、柱状戸袋10A,10Bが各々リニアスライド機構50を備え、柱状戸袋10A,10B及び板状部材11により形成される空間に扉部30を両側から収納する。しかし、上述した本実施形態は、
図9(b)に示すように、1つの箱状部材により戸袋10Cを形成する箱状タイプにも適用可能である。
【0037】
<第2の実施形態>
次に、上述したリニアスライド機構50を備えたホームドア1について、2段伸縮による扉部30の開閉動作(第2の実施形態)を
図10〜13に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態では、
図4〜8に基づいて説明したリニアスライド機構50を用い、後述するロック機構80の設置やストッパ機構Sの設置により、開閉動作開始時(第1段階)において扉部30及び第1段リニアガイド52を一体に移動させる点が異なっている。すなわち、本実施形態の開閉動作は、開閉動作を開始する第1段階の開閉動作時において、扉部30側が単独で開閉動作する第1の実施形態と異なり、第1段階の開閉動作時に扉部30及び第1段リニアガイド52を一体に連結した状態で移動させるものとなる。
【0038】
図11に示すロック機構80は、第1段リニアガイド52及びスライド梁52aと扉部30及び第2段リニアガイド55との間を連結(係合)させることにより、両者を一体に開閉動作(スライド)させる「ロック状態」とする装置である。また、このロック機構80は、両者の連結を解除することにより、互いに分離されて独自(単独)の動作が可能となる「ロック解除状態」に切り替えることができる。
【0039】
ロック機構80が「ロック状態」となる位置は、扉部30の「全閉位置」及び「全開位置」に対応する2箇所が設けられている。すなわち、例えばスライド梁52aに一方のロック部材(1箇所)を設けておき、このロック部材を扉部30側に設けた2箇所のロック部材と「全閉位置」及び「全開位置」のいずれか一方で係合させることにより、上述した2箇所のいずれか一方で第1段リニアガイド52のスライド梁52aと扉部30の第2段リニアガイド55との間が連結された「ロック状態」となる。
なお、以下の説明では、全閉位置のロック状態を「全閉ロック状態」と呼び、全開位置のロック状態を「全開ロック状態」と呼ぶ。
【0040】
ここで、
図11に示すロック機構80の構成例を具体的に説明すると、このロック機構80は、スライド梁52a側のロック部材となる係合ストッパ81と、扉部30側のロック部材となる板バネ82とを備えている。
一方の係合ストッパ81は、スライド梁52aの上端面に取り付けられた部材であり、平面視において板材中央付近を山型に折曲して形成された凸部81aを備えている。図示の構成例では、3個の係合ストッパ81が開閉方向に等ピッチで配置されており、各ストパ81の凸部81aは全て扉部30側に向けられている。なお、3個の係合ストッパ81は、上段側及び下段側のスライド梁52aに対しても同様に設けられている。
【0041】
また、板バネ82は、板状バネを略へ字状に折曲した一端を固定して凸部82aを形成したものである。この板バネ82は、扉部30の開閉方向に複数個が略全域にわたって設けられており、板バネ82の凸部82aと係合ストッパ81の凸部81aとは、扉部30の上下位置で各々対向するように配置されている。
そして、板バネ82の開閉方向位置が係合ストッパ81と一致する状態では、板バネ82の凸部82aと係合ストッパ81の凸部81aとが互いに係合する位置関係にある。すなわち、板バネ82は、
図12に矢印83で示すように、一端が紙面上下方向に弾性変形して揺動可能であるから、凸部81a,82aがバネ力により互いに係合する「ロック状態」と、ばね力以上の力を受けて互いの係合が解除された「ロック解除状態」とを切り替えることができる。
【0042】
この場合、
図11に示したロック状態が「全閉ロック状態」であり、係合ストッパ81と、扉部30の開口部3側となる端部近傍(
図11の紙面左側)に配置した板バネ82とが係合している。そして、上述した「全開ロック状態」は、係合ストッパ81が、扉部30の戸袋10側となる端部近傍(
図11の紙面右側)に配置した板バネ82と係合した状態となる。このようなロック状態への移行時には、扉部30が乗降客を挟み込んだ場合と同様に、駆動機構70の電動機71を停止するための安全装置として設けられたセンサー(不図示)がトルク変動を検出するが、そのトルク変動は、乗降客を挟み込んだ場合よりかなり小さな値となるため、ストッパの干渉と乗降客の挟み込みとの区別が容易になる。
【0043】
ところで、図示の係合ストッパ81は、3個の係合ストッパ81が開閉方向に等ピッチで配置されている。これは、扉部30を閉じて全閉状態になると、先端部が戸当たりすることの反動により、扉部30が開方向へ向けて一度バックすることにより生じる問題への対策である。
すなわち、扉部30の全閉により「ロック状態」となった凸部81a,82aは、扉部30が開方向へバックすることによって係合状態から離間する。このため、扉部30は再度全閉方向へ動き始めるが、このとき、扉部30と一体に動作する板バネ82が最初に接触する係合ストッパ81までの距離が長ければ、扉部30及び板バネ82が加速した状態で最初の係合ストッパ81にぶつかることとなる。
【0044】
こうして加速した扉部30の板バネ82は、バネ力が負けて弾性変形することにより、ぶつかった係合ストッパ81を乗り越えてしまうことがある。そこで、複数(図示の例では3個)の係合ストッパ81を一定の短い間隔で配置することにより、板バネ82が加速する距離(時間)を短縮できるので、ロック機構80を確実に機能させることができる。
なお、加速した板バネ82が係合ストッパ81を乗り越える問題は、板バネ82のバネ力を増すことによっても解決可能であるが、バネ力を強くしすぎるとロック機構80の動作や扉部30のスムーズな開閉移動も困難になる。
【0045】
次に、ストッパ機構Sは、第1段スライド機構53における第1段リニアガイド52の移動可能範囲を規定するとともに、上述したロック機構80のロック状態を解除して、開閉動作を第1段階から第2段へ切り替えるための部材である。
すなわち、ストッパ機構Sは、ロック機構80で一体に開閉動作している開閉動作の開始時(第1段階)において、扉部30と一体に移動している第1段リニアガイド52の移動範囲を規制することにより、ロック機構80の「ロック状態」を解除して、第1段リニアガイド52から分離された扉部30の単独移動(開閉動作)を可能にするものである。換言すれば、第1段リニアガイド52の移動がストッパ機構Sにより阻止され、かつ、駆動機構70による扉部30の開閉動作が継続されているので、ロック機構80には所定値以上の力が作用することとなり、この結果、ロック機構80は「ロック解除状態」に切り替わる。
【0046】
図13に示すストッパ機構Sの構成例では、固定側となる戸袋10の上段側に1箇所のストッパS1が設けられ、さらに、戸袋10の下段側に2箇所のストッパS2,S3が設けられている。また、移動側となる第1段リニアガイド52と一体のスライド梁52aには、上段側に2箇所のストッパS4,S5が設けられ、さらに、スライド梁52aの下段側に2箇所のストッパS6,S7が設けられている。この場合、ストッパS1は、開閉方向の両面が使用される。
なお、戸袋10側のストッパS1〜S3は、例えば第1段レール支持部51を支持する固定梁60や上下接続板61等に設けることができる。
【0047】
このようなストッパ機構Sにおいては、ストッパS1,S5及びストッパS3,S7の係合により扉部30の第1段階の閉動作完了位置を規定し、ストッパS1,S4及びストッパS2,S6の係合により扉部30の第1段階の開動作完了位置を規定する。
なお、ストッパSの数や位置については図示の構成例に限定されることはなく、スライド梁52aの移動を所定の範囲内に規定するとともに、所定位置でロック機構80を解除できればよい。
【0048】
以下、上述した構成のリニアスライド機構50を備えたホームドア1について、2段伸縮による扉部30の開閉動作(第2の実施形態)を
図10に基づいて説明する。なお、
図10においては、上述した
図2の第1の実施形態と同様に、紙面上側が軌道側となり、ホーム側の戸袋10は図示が省略されている。
図10(a)は、ホームドア1が全開(完全開)の状態を示しており、この場合、ロック機構80は「全開位置ロック」の状態(
図10の符号80F)となっている。この状態では、扉部30が全て戸袋10内に収納されることで、紙面左側となる乗降用の開口部3が全開となり、乗客の乗降が可能となっている。この場合、扉部30の紙面右側については、例えば
図1に示すように、紙面右側にある開口部開閉用の扉部30を幅方向に重ねて収容する戸袋10が存在している。
【0049】
図10(b)は、乗客の乗降が終了した後、ホームドア1の閉動作を開始した状態を示している。この状態では、駆動機構70が動作することにより、扉部30が図中に矢印Scで示す紙面左側の閉方向へ向けてスライドを開始する。このとき、リニアスライド機構50は、ロック機構80が全開位置ロック80Fの状態にあるので、第1段リニアガイド52及び第2段リニアガイド55は、扉部30とともに戸袋10に対して第1段階の閉動作を開始する。この閉動作は、第1段レール支持部51に摺動可能に支持された第1段リニアガイド52が移動してなされる。
【0050】
このような第1段階の閉動作は、
図10(c)に示すように、第1段リニアガイド52が所定の移動可能限界に到達することにより、すなわち、ストッパS1,S5及びストッパS3,S7が係合することにより、第1段階の閉動作完了位置でロック機構80が解除されて「ロック解除状態」となることで完了する。このような「ロック解除状態」のロック機構80は、「全閉ロック状態」及び「全開ロック状態」がともに解除されてフリーとなっている。
【0051】
第1段階の閉動作が完了した後には、
図10(d)に示すように、第2段階の閉動作が行われる。この閉動作は、ロック機構80が解除されて「ロック解除状態」にあるため、第1段リニアガイド52及び第2段リニアガイド55の間は連結が解除された分離状態にある。従って、リニアスライド機構50においては、第2段リニアガイドスライド機構56が単独で作動し、第2段レール支持部54により摺動可能に支持された第2段リニアガイド55は、移動可能限界に到達した第1段リニアガイド52を残して扉部30と一体に閉方向へ移動する。
【0052】
このような第2段階の閉動作は、第2段リニアガイド55に設定された移動可能限界に到達し、ホームドア1が全閉(完全閉)の状態になることで完了する。
そして、ホームドア1が全閉になると、上述したロック機構80は「全閉位置ロック」の状態(
図10の符号80R)となる。この状態では、扉部30の出代を全て戸袋10から出すことにより、乗降用の開口部3が全閉となって乗客の乗降は不可となる。
【0053】
続いて、
図10(d)に示すホームドア1の全閉状態から、扉部30を逆方向へスライドさせる開動作を説明する。
図10(e)は、ホームドア1の扉部30が開口部3を閉じることで乗降できない全閉状態から、乗客の乗降を可能にするため開口部3を開く第1段階の開動作を開始した状態を示している。この状態では、駆動機構70が逆方向へ動作することにより、扉部30が図中に矢印Soで示す紙面右側の開方向へ向けてスライドを開始する。このとき、ロック機構80は全閉位置ロック80Rの状態にあり、リニアスライド機構50の第1段リニアガイドスライド機構53が作動する。この結果、第1段リニアガイド52及び第2段リニアガイド55は、扉部30とともに戸袋10に対して第1段階の開動作を開始する。この開動作は、第1段レール支持部51に摺動可能に支持された第1段リニアガイド52が移動してなされる。
【0054】
このような第1段階の開動作は、第1段リニアガイド52が逆側の移動可能限界に到達することにより、すなわち、ストッパS1,S4及びストッパS2,S6が係合することにより、第1段階の開動作完了位置でロック機構80が解除されて「ロック解除状態」となることにより完了する。この状態のロック機構80は、「全閉ロック状態」及び「全開ロック状態」がともに解除されてフリーとなっている。
【0055】
第1段階の開動作が完了した後には、
図10(f)に示すように、第2段階の開動作が行われる。この開動作は、ロック機構80が解除されて「ロック解除状態」にあるため、第1段リニアガイド52及び第2段リニアガイド55の連結は解除されている。従って、リニアスライド機構50においては、第2段リニアガイド55が移動可能限界に到達した第1段リニアガイド52から分離して第2段リニアガイドスライド機構56が作動し、第2段レール支持部54により摺動可能に支持された第2段リニアガイド55が扉部30と一体に開方向へ移動する。
【0056】
このような第2段階の開動作は、
図10(g)に示すように、第2段リニアガイド55が所定の移動可能限界に到達し、ホームドア1が全開(完全開)の状態になることで完了する。
こうしてホームドア1が全開になると、上述したロック機構80が「全開位置ロック」の状態(
図10の符号80F)となる。すなわち、
図10(g)に示すホームドア1の全開状態は、上述した
図10(a)の状態に戻ったものであり、扉部30が全て戸袋10に収納され、乗降用の開口部3が全開となって乗客の乗降は可能となる。
なお、これ以降のホームドア開閉操作については、上述した動作の繰り返しとなる。
【0057】
このように、本実施形態のリニアガイドスライド機構50は、第1段リニアガイド52及び第2段リニアガイド55を連結して連動させるロック状態と、第1段リニアガイド52及び第2段リニアガイド55の連結を解除して非連動とするロック解除状態との選択切替を行うロック機構80と、第1段スライド機構53が開閉方向へスライドする移動可能範囲を規定するとともに、ロック機構80のロック状態を解除するストッパ機構Sとを具備している。そして、ロック機構80のロック状態は、閉操作時にロック状態となる全閉ロック状態位置と、開操作時にロック状態となる全開ロック状態位置とを備えている。
【0058】
このため、開閉操作の開始時となる第1段階の開閉操作時には、ロック機構80により連結状態にある第1段リニアガイド52及び第2段リニアガイド55が一体にスライドして扉部30を開閉する。そして、ストッパ機構Sは、第1段スライド機構53の第1段リニアガイド52がスライドする移動可能範囲を規定するとともに、ロック機構80のロック状態を解除するので、第1段リニアガイド52から分離された第2段リニアガイド55は、第2段階の開閉操作を単独で継続することができる。
このような構成のリニアガイドスライド機構50は、万が一全閉操作時に乗降客を挟み込んだ場合の安全対策、すなわち、電動機71を停止するセンサーの設定が容易になる。
【0059】
また、このような本実施形態のホームドア装置1は、1枚の扉部30を駆動機構70によりスライドさせて乗降用の開口部3を開閉するリニアガイドスライド機構50を備え、このリニアガイドスライド機構50が開閉方向へ複数段に伸縮するので、リニアガイドスライド機構50について、開閉操作の開始時に第1段スライド機構53の第1段リニアガイド52及び第2段スライド機構56の第2段リニアガイド55を一体に連結してスライドさせる扉部30の開閉方法が可能となる。
なお、リニアガイド機構50が3段以上となる場合には、少なくとも最終段(3段伸縮の場合は3段)を含む複数段を一体に連結してスライドさせてもよい。
【0060】
このような開閉方法によれば、リニアガイドスライド機構50が、開閉操作の開始時に少なくとも最終段を含む複数段を一体に連結してスライドさせるため、万が一全閉操作時に乗降客を挟み込んだ場合において、ロック機構80を用いた本実施形態は、ロック機構80が作動する場合のトルク変動と差が大きくなるため、電動機71を停止するセンサーの設定が容易になる。
【0061】
ところで、上述したロック機構80は、
図14〜16に基づいて以下に説明する種々の変形例が可能である。なお、
図14(a)は、扉部30及びロック機構80を軌道側から見た正面図である。
図14(b)は
図14(a)のD−D断面図であり、第1変形例のロック機構80を示している。このロック機構80は、スライド梁52aの上端面に支持部材81を介してゴムや樹脂等の摩擦部材82を取り付けたものである。この場合、摩擦力の大きい摩擦部材82と扉部30側の接触面との間に生じる摩擦力によりロック状態とし、スライド梁52aと扉部30との開閉移動(スライド)を同期させる。また、ストッパ機構Sの係合により摩擦力以上の力が作用した場合には、扉部30がスライド梁52aから分離してロック解除の状態となる。
【0062】
また、
図14(c)に示す第2変形例のロック機構80は、バネ83等の弾性部材による付勢を与えて摩擦部材82を押圧する構造となっている。
また、
図14(d)に示す第3変形例のロック機構80は、マグネット84を用いた構造となっている。この場合、扉部30がアルミニウム製となることから、表面に滑りの良いシール等を貼り付けた鉄板85を適所に取り付けた構造としてもよい。
【0063】
図15に示す第4変形例のロック機構80は、支持部材81Aに支持軸Ruを揺動可能に取り付けたローラユニット86を用いている。ローラユニット86のローラ87には、ゴム等の摩擦部材が用いられている。このローラユニット86を揺動させて適宜取り付けることにより、ローラ回転中心Rcを扉部30側へxだけ近づけて押圧された状態(図中の符号86´,87´を参照)とすることができ、従って、xの値を適宜調整して摩擦力を最適化することが可能である。
【0064】
図16に示す第5変形例のロック機構80は、
図12に示した板バネ82に代えて、コイルバネ88で回転方向に付勢した回転爪89を用いている。この回転爪89は、ストッパ81と係合するように設置されており、所定位置以上の力が作用した場合に回転してロック状態が解除される。
【0065】
図17に示す第6変形例のロック機構80は、扉部30に固定して設けたタイミングベルト90の凹部90aと、スライド梁52aの上端面に支持部材81Bを介して取り付けられているコロユニット91のコロ本体91aとを係合させるものである。この場合、上下2本のタイミングベルト90は、扉部30の開閉方向において略全域(全幅)にわたって設けられている。
また、コロユニット91は、一端部側が支持部材81Bにより支持されている上下2本のシャフト91bに対し、他端先端部側で軸方向の移動が可能となるように取り付けられている。このコロユニット91は、シャフト91bの外周に介在させたコイルバネ91cにより、タイミングベルト90側へ向けて付勢されている。なお、コイルバネ91cによる付勢力は、シャフト91bの一端部側に設けたネジ部と螺合するナット91dの締め込みにより調整可能である。
【0066】
このような構成のロック機構80は、コイルバネ91cの付勢を受けるコロ本体91aがタイミングベルト90の凹部90aに入り込んで係合することでロック状態となる。そして、コイルバネ91cの付勢を超える所定値以上の力が作用した場合には、コロ本体91aがタイミングベルト90の凹部90aから押し出されることにより、係合が外れてロックが解除された状態となる。
【0067】
図18に示す第7変形例のロック機構80は、上述したタイミングベルト90に代えてワイヤ92を扉部30の開閉方向へ取り付けている。そして、スライド梁52aの上端には、コロユニット91に代えてワイヤ挟持部93が取り付けられている。このワイヤ挟持部93は、一対の板状部材93a,93bの対向面にゴム等の摩擦部材93cを貼り付けたものである。この場合、扉部30側の板状部材93aはシャフト91bの先端に固定されているが、スライド梁52a側の板状部材93bはシャフト91bの軸方向に移動可能とされ、コイルバネ91cから板状部材93a側へ向けた付勢を受けている。
【0068】
このような構成のロック機構80は、コイルバネ91cの付勢を受ける板状部材93bの摩擦部材93cと固定された板状部材93bの摩擦部材93cとの間にワイヤ92を挟持し、摩擦力によるワイヤ92との係合によりロック状態を維持する。しかし、コイルバネ91cの付勢力や摩擦部材93cの摩擦力等により規定される摩擦力を超える力が作用した場合には、摩擦力によるワイヤ92の挟持ができなくなるので、ワイヤ挟持部93に対してワイヤ93がスライドするロック解除の状態となる。
【0069】
また、ロック機構80は、駆動機構70の電動機71に作用するトルクを検出し、予め定めた設定値により操作するようにしてもよい。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、例えば船舶用のボーディングブリッジ等にも適用可能であるなど、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。