(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
MRIは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF:radio frequency)パルスで磁気的に励起し、この励起に伴って発生する核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)信号から画像を再構成する撮像法である。MRIによる撮像では、RFコイルを用いて、核磁気共鳴を起こすためのRFパルスを撮像部位に送信する。
【0003】
当該周波数領域では被検体の体温上昇が生じるため、送信されるRFパルスの出力電力について、安全面から例えばIEC(international electrotechnical commission)規格等によって上限値(制限値)が定められている。単位時間、単位質量当りのRFパルスの吸収量を比吸収率(SAR:specific absorption ratio)として算出し、SARが制限値を超えないように管理する必要がある。なお、管理すべきSARは、全身SAR、身体部分SAR、頭部SAR、及び局所SARである。
【0004】
具体的には、送信用コイルに供給されるRFパルス信号の出力電力(RFパワー)が取得され、このRFパワーがSARの計算に用いられる。従来の全身SAR(SAR
W)は、事前撮像で得られるRFパワーと撮像条件とから予測される有負荷状態におけるRFパワーP
Wと、無負荷状態におけるRFパワーP
eと、被検体の全体重量W
Wとに基づいて、次の式(1)を用いて算出される。従来の身体部分SAR(SAR
I)は、有負荷状態におけるRFパワーP
Wの身体部分P
Iと、無負荷状態におけるRFパワーP
eと、部分重量W
Iとに基づいて、次の式(2)を用いて算出される。従来の頭部SAR(SAR
H)は、有負荷状態におけるRFパワーP
Wの頭部部分P
Hと、無負荷状態におけるRFパワーP
eと、頭部重量W
Hとに基づいて、次の式(3)を用いて算出される。
【数1】
【0005】
上記(1)〜(3)に基づいて全身SAR、身体部分SAR、及び頭部SARが算出される場合、無負荷状態におけるRFパワーP
eがそれぞれ用いられる。無負荷状態におけるRFパワーP
eとしては、送信用コイルから見て負荷とならない疑似的な人体モデル(ファントム)を計測した場合の固定値が使用される。
【0006】
なお、本発明に関連する従来技術として、アーチファクト及びSARを低減するMRI装置に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態のMRI装置
及びSAR算出方法について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施形態のMRI装置のハードウェア構成を示す概略図である。
【0013】
図1は、被検体(患者)Pの撮像部位に対して撮像を行なう本実施形態のMRI装置10を示す。このMRI装置10は、大きくは、撮像システム11と制御システム12とから構成される。
【0014】
撮像システム11は、静磁場磁石21、傾斜磁場コイル22、傾斜磁場電源装置23、寝台24、寝台制御部25、送信用コイル(送信用のRFコイル)26、送信部27、受信用コイル(受信用のRFコイル)28a〜28e、受信部29、及びシーケンサ(シーケンスコントローラ)30を備える。
【0015】
静磁場磁石21は、架台(図示しない)の最外部に中空の円筒形状に形成されており、内部空間に一様な静磁場を発生する静磁場発生部である。静磁場磁石21としては、例えば永久磁石、常伝導磁石、及び超伝導磁石等が使用される。
【0016】
傾斜磁場コイル22は、中空の円筒形状に形成されており、静磁場磁石21の内側に配置され、内部空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生部である。傾斜磁場コイル22は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源装置23から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。
【0017】
ここで、傾斜磁場コイル22によって発生するX,Y,Z軸の各軸の傾斜磁場は、例えば、リードアウト用傾斜磁場Gr、位相エンコード用傾斜磁場Ge、及びスライス選択用傾斜磁場Gsにそれぞれ対応している。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてNMR(nuclear magnetic resonance)信号の周波数を変化させるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じてNMR信号の位相を変化させるために利用される。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。
【0018】
傾斜磁場電源装置23は、シーケンサ30から送られるパルスシーケンス実行データに基づいて、傾斜磁場コイル22に電流を供給する。
【0019】
寝台24は、被検体Pが載置される天板24aを備えている。寝台24は、後述する寝台制御部25による制御のもと、天板24aを、被検体Pが載置された状態で傾斜磁場コイル22の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台24は、長手方向が静磁場磁石21の中心軸と平行になるように設置される。
【0020】
寝台制御部25は、シーケンサ30による制御のもと、寝台24を駆動して、天板24aを長手方向および上下方向へ移動する。
【0021】
送信用コイル26は、傾斜磁場コイル22の内側に配置されており、送信部27からRFパルス信号の供給を受けて、RFパルスを発生する。
【0022】
送信部27は、シーケンサ30から送られるパルスシーケンス実行データに基づいて、ラーモア周波数に対応するRFパルス信号を送信用コイル26に送信する。
【0023】
図2は、送信部27の構成を示す図である。
【0024】
図2に示すように、送信部27は、基準RF発生器41、変調器42、RF電力増幅器43、方向性結合器44、検波器45、及びAD(analog to digital)変換器46を備える。
【0025】
基準RF発生器41は、シーケンサ30による制御の下、基準RF信号(RF搬送波)を発生させる。
【0026】
変調器42は、シーケンサ30による制御の下、基準RF発生器41によって発生された基準RF信号を所定の波形のRFパルス信号に変調する。
【0027】
RF電力増幅器43は、変調器42によって変調されたRFパルス信号を増幅して方向性結合器44を介して送信用コイル26に与える。増幅されたRFパルス信号は送信用コイル26に伝送され、送信用コイル26からRFパルスが被検体Pに放射される。送信用コイル26としては全身用送信コイルと局所送信用コイルが存在する。
【0028】
方向性結合器44は、RFパルス信号の伝送路上に伝送路に非接触で配置され、送信用コイル26に伝送されるRFパルス信号を所要の結合度(カップリング係数)にて減衰させて検波器45に送る。方向性結合器44は、RFパルス信号(進行波及び反射波)の電力を減衰させるための高周波デバイスである。方向性結合器44の出力信号は、MR信号処理基板の検波器45で検波され、AD変換器46でデジタル変換される。AD変換器46の出力データはRFパルス信号としてSARを計算するために使用される。
【0029】
図1の説明に戻って、受信用コイル28a〜28eは、傾斜磁場コイル22の内側に配置されており、高周波磁場の影響によって被検体Pの撮像部位から放射されるNMR信号を受信する。ここで、受信用コイル28a〜28eは、それぞれ、被検体Pの撮像部位から発せられたNMR信号をそれぞれ受信する複数の要素コイルを有するアレイコイルであり、各要素コイルによってNMR信号が受信されると、受信されたNMR信号を受信部29に出力する。
【0030】
受信用コイル28aは、被検体Pの頭部に装着される頭部用のコイルである。また、受信用コイル28b,28cは、それぞれ、被検体Pの背中と天板24aとの間に配置される脊椎用のコイルである。また、受信用コイル28d,28eは、それぞれ、被検体Pの腹側に装着される腹部用のコイルである。
【0031】
受信部29は、シーケンサ30から送られるパルスシーケンス実行データに基づいて受信用コイル28a〜28eから出力されるNMR信号に基づいて、NMR信号データを生成する。また、受信部29は、NMR信号データを生成すると、そのNMR信号データをシーケンサ30を介して制御システム12に送信する。
【0032】
なお、受信部29は、受信用コイル28a〜28eが有する複数の要素コイルから出力されるNMR信号を受信するための複数の受信チャンネルを有している。そして、受信部29は、撮像に用いる要素コイルが制御システム12から通知された場合には、通知された要素コイルから出力されたNMR信号が受信されるように、通知された要素コイルに対して受信チャンネルを割り当てる。
【0033】
シーケンサ30は、傾斜磁場電源装置23、寝台制御部25、送信部27、受信部29、及び制御システム12と接続される。シーケンサ30は、傾斜磁場電源装置23、寝台制御部25、送信部27、及び受信部29を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源装置23に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する。
【0034】
また、シーケンサ30は、記憶した所定のシーケンスに従って寝台制御部25を駆動させることによって、天板24aを架台に対してZ方向に進退させる。さらに、シーケンサ30は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源装置23、送信部27、及び受信部29を駆動させることによって、架台内にX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gz及びRFパルス信号を発生させる。
【0035】
制御システム12は、MRI装置10の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行なう。制御システム12は、インターフェース部31、データ収集部32、データ処理部33、記憶部34、表示部35、入力部36、及び制御部37を有する。
【0036】
インターフェース部31は、シーケンサ30を介して傾斜磁場電源装置23、寝台制御部25、送信部27、及び受信部29に接続されており、これらの接続された各部と制御システム12との間で授受される信号の入出力を制御する。
【0037】
データ収集部32は、インターフェース部31を介して、受信部29から送信されるNMR信号データを収集する。データ収集部32は、NMR信号データを収集すると、収集したNMR信号データを記憶部34に記憶させる。
【0038】
データ処理部33は、記憶部34に記憶されているNMR信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体Pの撮像部位内における所望核スピンのスペクトラムデータ又は画像データを生成する。また、データ処理部33は、位置決め画像の撮像が行なわれる場合には、受信用コイル28a〜28eが有する複数の要素コイルそれぞれによって受信されたNMR信号に基づいて、要素コイルの配列方向におけるNMR信号の分布を示すプロファイルデータを要素コイルごとに生成する。そして、データ処理部33は、生成した各種データを記憶部34に格納する。
【0039】
記憶部34は、データ収集部32によって収集されたNMR信号データと、データ処理部33によって生成された画像データ等を、被検体P毎に記憶する。また、記憶部34は、MRI装置10の据え付け時にAD変換器46(
図2に図示)から得られる無負荷状態のRFパワーや、後述する
図4に示す対応表を記憶する。
【0040】
表示部35は、データ処理部33によって生成された画像データ等の各種の情報や、撮像条件編集画面などを表示する。表示部35としては、液晶表示器等の表示デバイスを利用可能である。
【0041】
入力部36は、操作者から各種操作や情報入力を受け付ける。入力部36としては、キーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0042】
制御部37は、図示しないCPU(central processing unit)又はMPU(micro processor unit)やメモリ等を有し、上述した各部を制御することによってMRI装置10を総括的に制御する。
【0043】
図3は、本実施形態のMRI装置10の機能を示すブロック図である。
【0044】
制御部37(又はシーケンサ30)がプログラムを実行することによって、
図3に示すように、MRI装置10は、操作支援手段61、撮像部位設定手段62、事前画像生成手段63、患者情報設定手段64、係数決定手段65、撮像条件設定手段66、SAR算出手段67、及び本撮像実行手段68として機能する。なお、MRI装置10の構成要素61乃至68をソフトウェアとして機能させる場合として説明するが、構成要素61乃至68の一部又は全部をMRI装置10に回路として設ける場合であってもよい。
【0045】
操作支援手段61は、構成要素62乃至68と、表示部35及び入力部36とを媒介するGUI(graphical user interface)等のインターフェースである。
【0046】
撮像部位設定手段62は、被検体P(
図1に図示)に関する撮像部位(撮像位置)を設定する機能を有する。例えば、撮像部位設定手段62は、撮像条件編集画面上で操作者が入力部36を用いて入力した入力信号に基づいて撮像部位(全身、頭部、胸部、及び腹部など)を設定する。また、例えば、撮像部位設定手段62は、後述する事前画像生成手段63がボリュームスキャンすることで得られたボリュームデータを構造認識することによって撮像部位を設定する。さらに、例えば、撮像部位設定手段62は、受信用コイル28a〜28eのうち、操作者が入力部36を用いて入力した入力信号に基づいて設定された、NMR信号を受信するコイルエレメントと、被検体P(
図1に図示)の架台への進入向き(head first又はfeet first)とに基づいて撮像部位を設定する。
【0047】
事前画像生成手段63は、有負荷状態において、本撮像に先立った事前撮像(本撮像のための撮像条件のパラメータを設定するための撮像)のための撮像条件に従って撮像システム11の動作を制御することによって、撮像部位設定手段62によって設定された撮像部位に対して撮像を行なって、断面画像である元画像をそれぞれ生成する機能を有する。具体的には、事前画像生成手段63は、アキシャル(AX)画像、サジタル(SG)画像、及びコロナル(CO)画像の直交3断面画像のうち1個の断面画像を元画像として生成する。
【0048】
なお、事前画像生成手段63は、SG画像を基に、他の直交3断面画像であるAX画像及びCO画像を再構成してもよい。CO画像及びAX画像は、操作支援手段61を介して表示部35にそれぞれ表示される。
【0049】
患者情報設定手段64は、操作支援手段61を介して表示される撮像条件編集画面上で患者情報を設定する機能を有する。撮像条件編集画面上の患者情報(ID、身長、体重、及び体脂肪率など)は、ネットワークを介してHIS(hospital information system)などの外部装置(図示しない)から送信された検査オーダー情報、又は、入力部36からの入力に基づいて設定される。
【0050】
係数決定手段65は、記憶部34に記憶された無負荷状態におけるRFパワーに乗じる係数F(式(4)〜(9)に含まれる「F」)を被検体P(
図1に図示)の大きさに応じて決定する機能を有する。被検体Pの大きさは、被検体Pの体重、被検体Pの身長、及び撮像部位のうち少なくとも1によって表すことが可能である。また、係数決定手段65は、係数を、被検体Pの大きさ、かつ、被検体Pの体脂肪率に従って決定することもでき、その場合、算出されるSARの精度がさらに向上する。
【0051】
被検体Pの大きさを表す撮像部位は、撮像部位設定手段62によって設定されるものである。被検体Pの大きさを表す被検体Pの体重及び身長や、被検体Pの体脂肪率は、患者情報設定手段64によって設定されるものである。
【0052】
図4は、記憶部34に予め記憶される係数Fの対応表の一例を示す図である。
【0053】
図4は、被検体P(
図1に図示)の体重が属する体重区分及び撮像部位の組み合わせによって決定される係数Fの対応表を示すものである。被検体Pの体重が体重区分w1に属し、かつ、撮像部位が「腹部」である場合、係数Fが「F1」と決定される。同様に、被検体Pの体重が体重区分w1に属し、かつ、撮像部位が「頭部」である場合、係数Fが「F2」と決定される。その他の組み合わせについても同様に、体重区分及び撮像部位の組み合わせによって係数Fが、「F3」〜「F12」と決定される。
【0054】
なお、
図4に示す対応表は、シミュレーションによって求められるものとする。また、
図4に示す対応表は、4種類の体重区分と3種類の撮像部位とのそれぞれの組み合わせに応じた12種類の係数「F1」〜「F12」を含むものであるが、12種類の係数に限定されるものではない。
【0055】
図3の説明に戻って、撮像条件設定手段66は、操作支援手段61を介して表示される撮像条件編集画面上で撮像条件を設定する機能を有する。パルスシーケンス、撮像スライス位置、及び天板24a(
図1に図示)の位置決め情報を含む撮像条件は、検査オーダー情報に含まれる撮像条件、又は、入力部36からの入力に基づいて設定される。
【0056】
SAR算出手段67は、記憶部34に記憶された無負荷状態におけるRFパワーに、係数決定手段65によって決定された係数を乗じて得られる値に基づいて、パルスエネルギー法を用いてSARを算出する機能を有する。
【0057】
SAR算出手段67は、SARとして、被検体P全身に関する全身SAR、撮像部位に関する身体部分SAR、頭部に関する頭部SAR、及び局所SARのうち少なくとも1を算出する。例えば、撮像部位設定手段62によって設定された撮像部位が全身である場合には全身SAR及び頭部SARが算出され、撮像部位が全身ではなく頭部を含まない場合には身体部位SARが算出され、撮像領域が全身ではなく頭部を含む場合には頭部SAR及び身体部位SARが算出され、撮像領域が頭部を含まない小領域である場合には局所SAR(身体組織10[g]にわたっての平均値)が算出される。
【0058】
具体的には、SAR算出手段67は、次の式(4)〜(6)を用いて全身SAR(SAR
W´)、身体部分SAR(SAR
I´)、及び頭部SAR(SAR
H´)を算出する。全身SAR
W´は、事前画像生成手段63による事前撮像でAD変換器46(
図2に図示)から得られるRFパワーと撮像条件とから予測される有負荷状態におけるRFパワーP
Wと、記憶部34に記載された無負荷状態におけるRFパワーP
eと、係数決定手段65によって決定された係数Fと、被検体Pの全体重量W
Wとに基づいて、次の式(4)を用いて算出される。身体部分SAR
I´は、有負荷状態におけるRFパワーP
Wの身体部分P
Iと、無負荷状態におけるRFパワーP
eと、係数Fと、部分重量W
Iとに基づいて、次の式(5)を用いて算出される。頭部SAR
H´は、有負荷状態におけるRFパワーP
Wの頭部部分P
Hと、無負荷状態におけるRFパワーP
eと、係数Fと、頭部重量W
Hとに基づいて、次の式(6)を用いて算出される。
【数2】
【0059】
なお、上記式(5)の部分重量W
I及び上記式(6)の頭部重量W
Hは、被検体Pの重量(体重)及び身長などから推測されるものである。また、上記式(5)の身体部分P
Iは、部分重量W
Iと照射割合[%]とが対応付けられた対応表(図示しない)に基づく照射割合[%]を有負荷状態におけるRFパワーP
Wに乗じて得られるものである。さらに、上記式(6)の頭部部分P
Hは、頭部重量W
Hと照射割合[%]とが対応付けられた対応表(図示しない)に基づく照射割合[%]を有負荷状態におけるRFパワーP
Wに乗じて得られるものである。
【0060】
上記式(1)〜(3)に示す無負荷状態のRFパワーP
e[W]としては、固定値が使用されていたが、上記式(4)〜(5)に示す無負荷状態のRFパワーP
e´としては、
図4に示す対応表の係数Fに基づく変動値が用いられることになる。
【0061】
ここで、記憶部34に記憶された無負荷状態におけるRFパワーP
eがMRI装置10の据え付け時にAD変換器46(
図2に図示)から得られるRFパワーのピーク値であり、有負荷状態におけるRFパワーP
Wが90度条件の場合のRFパワーのピーク値である場合、デューティーサイクル(単位時間当たりのRFパルスの照射時間)Dを用いて、上記式(4)〜(6)は次の式(7)〜(9)のように変形される。
【数3】
【0062】
上記式(7)〜(9)に示す無負荷状態におけるRFパワーP
e´としては、上記式(4)〜(6)に示す無負荷状態におけるRFパワーP
e´と同様に、変動値が用いられることになる。
【0063】
そして、SAR算出手段67は、SARを、操作支援手段61を介して表示部35に表示させる。また、撮像条件設定手段66は、SAR算出手段67によって算出されるSARがIEC規格等による上限値(制限値)以下となるように、撮像条件を変更して再設定してもよい。
【0064】
本撮像実行手段68は、インターロック機能を有し、SAR算出手段67によって算出された全てのSARが、それぞれの上限値(リミット)以下(又は未満)である場合、撮像部位設定手段62によって設定された撮像部位において、撮像条件設定手段66によって設定された撮像条件に従って撮像システム11の動作を制御することによって、診断に供する本撮像を実行する機能を有する。また、本撮像実行手段68は、SAR算出手段67によって算出されたいずれかのSARが、上限値を超える(又は以上)である場合、本撮像を禁止する機能を有する。
【0065】
続いて、本実施形態のMRI装置10の動作について、
図1及び
図5を用いて説明する。
【0066】
図5は、本実施形態のMRI装置10の動作を示すフローチャートである。
【0067】
MRI装置10は、被検体Pに関する撮像部位を設定する(ステップST1)。MRI装置10は、有負荷状態において、本撮像に先立った事前撮像のための撮像条件に従って撮像システム11の動作を制御することによって、ステップST1によって設定された撮像部位に対して撮像を行なって、断面画像である元画像を生成する(ステップST2)。元画像は、表示部35に表示される。
【0068】
MRI装置10は、表示される撮像条件編集画面上で、患者情報を設定する(ステップST3)。MRI装置10は、上記式(4)〜(9)における係数Fを、ステップST1によって設定された撮像部位、ステップST3によって設定された患者情報に含まれる被検体Pの体重及び身長のうち少なくとも1に応じて決定する(ステップST4)。
【0069】
MRI装置10は、本撮像における撮像条件を設定する(ステップST5)。撮像条件は、ネットワークを介してHISなどの外部装置(図示しない)から送信された検査オーダー情報や、入力部36からの入力に基づいて設定される。
【0070】
MRI装置10は、ステップST2による事前撮像でAD変換器46(
図2に図示)から得られるRFパワーとステップST5によって設定された撮像条件とから予測される有負荷状態におけるRFパワーP
Wと、記憶部34に記憶された無負荷状態におけるRFパワーP
eにステップST4によって決定された係数Fを乗じて得られる無負荷時におけるRFパワーP
e´(変動値)とに基づいて、上記式(4)〜(9)からSARを算出する(ステップST6)。ステップST6において、MRI装置10は、SARとして、全身SAR、身体部分SAR、頭部SAR、及び局所SARのうち少なくとも1を算出する。MRI装置10は、ステップST6によって算出されたSARを表示部35に表示させる(ステップST7)。
【0071】
MRI装置10は、ステップST6によって算出された全てのSARが上限値以下であるか否かを判断する(ステップST8)。ステップST8にてYES、すなわち、全てのSARが上限値以下であると判断される場合、MRI装置10は、ステップST1によって設定された撮像部位において、ステップST5によって設定された撮像条件に従って撮像システム11の動作を制御することによって、診断に供する本撮像を実行する(ステップST9)。
【0072】
一方、ステップST8にてNO、すなわち、SARのいずれかが上限値を超えると判断される場合、MRI装置10は、本撮像を禁止する(ステップST10)。そして、MRI装置10は、ステップST5によって設定された撮像条件の再設定を要求し(ステップST11)、ステップST5に戻る。
【0073】
本実施形態のMRI装置10によると、無負荷状態におけるRFパワーP
eに、前記被検体の大きさに応じた係数を乗じて得られるRFパワーP
e´(変動値)を用いてSARを算出することで、SARを正確に精度よく算出することができる。そして、正確で精度のよいSARを用いることで、撮像が過度に制限されてしまって利便性が低下したり、撮像が過度に許容されてしまって安全性が低下したりするという欠点が解消される。
【0074】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。