(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、電流容量の大きい電線を採用するとコスト高になり、電線も太くなることから付設工事も難しくなる。また、負荷の増設などで負荷電流が増加した場合、多条敷設の電線に対して不足分の電流容量の電線(条)を追加することになるが、追加する条の電線は、既設の電線と同じ電流容量の電線だけでなく、異なる電流容量の電線を追加することがあり、その場合であっても、各条の電線に流れる負荷電流にアンバランスが生じないようにしなければならない。
【0006】
そこで、本出願人は、各電線に流れる電流がバランスするように各電線のインピーダンスを整合させて各電線に流れる電流のアンバランスを抑制できるものを開発し、特願2013−105833号として出願した。
【0007】
これは、特願2013−105833号の請求項5に示される通り、中央部に貫通孔を有し貫通孔を貫通した電線の電流により磁気回路を形成する閉じた鉄心を設け、n(n=2、3、4、…)条の電線の2つの電線の組合せ
nC
2のうちから必ずn条の各条の電線を含む少なくともn−1個の組合せを選択し、選択した2つの電線を組にして2つの電線の電流により発生する磁束が互いに打ち消される方向にそれぞれ組ごとに別々の鉄心の貫通孔に貫通させるものである。
【0008】
この特願2013−105833号のものは、鉄心の貫通孔には2つの電線を貫通させ、2つの電線の電流により発生する磁束が互いに打ち消される方向に2つの電線を貫通するものであることから、2つの電線を鉄心の貫通孔に逆方向から貫通させなければならない。従って、施工性に改善の余地がある。
【0009】
本発明の目的は、多条敷設の各電線に流れる電流のアンバランスを抑制でき、しかも施工性の向上を図ることができる電線インピーダンス整合装置及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電線インピーダンス整合装置は、n(n=2、3、4、…)条の電線の1条めの電線からn条めの電線にそれぞれ対応して設けられたn個の閉じた鉄心と、前記閉じた鉄心を貫通した1条めの電線からn条めの電線を流れる電流による磁束の総和を打ち消す方向に前記n個の閉じた鉄心を貫通して設けられたループ電線とを備え、一次側の巻線が巻き数1で二次側の巻線が巻き数1の変成器を形成し、
二次側である前記ループ電線に流れる電流を調整し一次側である鉄心を貫通した電線に流れる電流を調整するための電流調整手段である可変抵抗を設け、前記電流調整手段は、前記一次側であるn条の電線に流れる電流を定格状態にするときは前記可変抵抗の抵抗値を所定値に保ち、前記一次側であるn条の電線に流れる電流を不平衡状態に模擬するときは前記抵抗値を∞状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、n条の電線の1条めの電線からn条めの電線を各々の閉じた鉄心に貫通させ、各々の鉄心に貫通して設けられたループ電線を有し、一次側の巻線が巻き数1で二次側の巻線が巻き数1の変成器を形成し、1条めの電線からn条めの電線を流れる電流による磁束の総和を打ち消す方向に電流を発生させるので、磁束を互いに打ち消すことができ多重敷設の各電線のインピーダンスを整合させることができる。従って、各電線に流れる電流のアンバランスを抑制できる。また、各々の電線を各々の鉄心に貫通させるだけであるので、施工性が大幅に改善される。
電流調整手段である可変抵抗の抵抗値を変化させることによって、ループ電線を流れる電流Ixを調整し、一次側であるn条の電線に流れる電流を不平衡状態に模擬できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電線インピーダンス整合装置の構成図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る電線インピーダンス整合装置を1相の電線が4条である電路に適用した場合の回路図。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る電線インピーダンス整合装置を1相の電線が4条である電路に適用した場合の電流のアンバランス抑制の説明図。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る電線インピーダンス整合装置の構成図。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る電線インピーダンス整合装置の構成図。
【
図6】本発明の第4実施形態に係る電線インピーダンス整合装置の構成図。
【
図7】本発明の第5実施形態に係る電線インピーダンス整合システムの構成図。
【
図8】本発明の第6実施形態に係る電線インピーダンス整合システムの構成図。
【
図9】本発明の第7実施形態に係る電線インピーダンス整合システムの構成図。
【
図10】本発明の第8実施形態に係る電線インピーダンス整合システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る電線インピーダンス整合装置の構成図である。電線インピーダンス整合装置は、n個の閉じた鉄心と、n個の閉じた鉄心を貫通して設けられたループ電線とから構成される。
図1では1相の電線が4条であり、4個の閉じた鉄心11a〜11dを有したものを示している。
【0014】
鉄心11a〜11dには、各々の鉄心11a〜11dを貫通したループ電線12が設けられている。また、各々の鉄心11a〜11dには、4条の電線13a〜13dが1条ずつ貫通する。各々の電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idは、各電線の接続の接触抵抗や他の条からの相互インダクタンスの影響によりアンバランスが生じていると考えられる。
【0015】
ループ電線12には、鉄心11a〜11dを貫通した電線13a〜13dを流れる電流Ia〜Idによる磁束の総和を打ち消す方向に電流Ixが流れる。これは、鉄心11a〜11dを貫通した4条の電線13a〜13dが一次側の巻線であり、ループ電線12が二次側の巻線とする変成器が形成されるためである。4条の電線13a〜13dやループ電線12は鉄心を貫通するだけであるので、鉄心11a〜11dへの巻き数は1であるとする。従って、鉄心11a〜11dの変流比は同じものとなり、各電線13a〜13dに流れる電流13a〜13dは均等になる。
【0016】
図2は、本発明の第1実施形態に係る電線インピーダンス整合装置を1相の電線が4条である電路に適用した場合の回路図である。電源14から負荷15までの電線13が4条の電線13a〜13dであり、電線13a〜13dは、インダクタンスLa〜Ld、抵抗Ra〜Rdを有している。鉄心11a〜11dには、4条の電線13a〜13dが1条ずつ貫通し、また、ループ電線12が共通して貫通している。
【0017】
電源14からの負荷電流I0は、電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idに分流する。この場合、電線13a〜13dのインダクタンスLa〜Ld、抵抗Ra〜Rdなどの影響により、電線13a〜13dに流れる各電流Ia〜Idの間に差分ΔI(ΔIab=Ia−Ib、ΔIbc=Ib−Ic、ΔIcd=Ic−Id、ΔIda=Id−Ia)が発生するが、ループ電線12には、鉄心11a〜11dを貫通した電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idによる磁束の総和を打ち消す方向に電流Ixが流れるので、その差分ΔI(=ΔIab、ΔIbc、ΔIcd、ΔIda)は最終的に零に近づく。従って、電線13a〜13dに流れる電流がバランスするように各電線13a〜13dのインピーダンスを整合させることができ、電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idのアンバランスを抑制できる。
【0018】
図3は、本発明の第1実施形態に係る電線インピーダンス整合装置を1相の電線が4条である電路に適用した場合の電流のアンバランス抑制の説明図であり、
図3(a)は、本発明の第1実施形態に係る電線インピーダンス整合装置を用いた場合の電流波形図、
図3(b)は電線インピーダンス整合装置を用いなかった場合の電流波形図である。
【0019】
図3(b)に示すように、電線インピーダンス整合装置を用いなかった場合には、4条の各電線に流れる電流は大きさ及び位相がずれているが、本発明の第1実施形態に係る電線インピーダンス整合装置を用いた場合には、4条の各電線に流れる電流は大きさ及び位相はほぼ同じとなり、各電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idのアンバランスを抑制できることがわかる。
【0020】
図4は本発明の第2実施形態に係る電線インピーダンス整合装置の構成図である。この第2実施形態は、
図1に示した第1実施形態に対し、ループ電線12に流れる電流を調整するための電流調整手段16を設けたものである。
図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0021】
前述したように、閉じた鉄心11a〜11dに4条の電線13a〜13d及びループ電線12を貫通させると、一次側の巻線が巻き数1の4条の電線13a〜13d、二次側の巻線が巻き数1のループ電線12である変成器が形成される。ここで、変成器には、動作特性として定電流範囲と定電圧範囲とがある。定電流範囲とは、二次電流として定電流を出力し定電流源として動作する範囲であり、一方、定電圧範囲とは、二次電圧として定電圧を出力し定電圧源として動作する範囲である。定電流範囲を使用すると変流器となり、定電圧範囲を使用すると変圧器となる。
【0022】
本発明の第2実施形態では、鉄心11a〜11dは定電流範囲と定電圧範囲との中間領域で使用する。変成器が定電流範囲(変流器)であるときは、定電流源として動作するので、二次側回路の電流Ixは一次側電流の総和(Ia+Ib+Ic+Id)で定まり、二次側電圧は二次側の回路状態により変化することになる。一方、変成器が定電圧範囲(変圧器)であるときは、定電圧源として動作するので、二次側回路の電圧は一次側電圧で定まり、二次側電流は二次側回路状態により変化することになる。
【0023】
本発明の第2実施形態では、鉄心11a〜11dは定電流範囲と定電圧範囲との中間領域で使用するので、変流器と変圧器との双方の特性を有することになる。すなわち、変流器の特性から、鉄心11a〜11dを貫通した電線13a〜13dを流れる電流Ia〜Idによる磁束の総和を打ち消す方向に電流Ixが流れ、その差分ΔI(=ΔIab、ΔIbc、ΔIcd、ΔIda)も最終的に零に近づく。一方、変圧器の特性から二次側の回路状態を変化させることにより二次側電流Ixを変化させることができる。
【0024】
そこで、本発明の第2実施形態では、鉄心11a〜11dの二次側回路のループ電線12に流れる電流を調整するための電流調整手段16を設け、二次側回路であるループ電線12を流れる電流Ixを調整可能とする。電流調整手段16としては、例えば、可変抵抗を用いる。電流調整手段16である可変抵抗の抵抗値を変化させることによって、ループ電線12を流れる電流Ixを調整し、一次側である4条の電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idを調整する。
【0025】
これにより、一次側である4条の電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idを、不平衡、軽負荷〜定格〜過負荷を模擬することができる。
(a)不平衡状態にするには、電流調整手段(可変抵抗)16の抵抗値を∞状態(開放)にする。
(b)軽負荷状態にするには、電流調整手段(可変抵抗)16の抵抗値を大きくする。
(c)定格状態にするには、電流調整手段(可変抵抗)16の抵抗値を所定値に保ち変化させない。
(d)過負荷状態にするには、電流調整手段(可変抵抗)16の抵抗値を小さくする。
【0026】
第2実施形態によれば、電流調整手段16である可変抵抗の抵抗値を変化させることによって、ループ電線12を流れる電流Ixを調整し、一次側である4条の電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idを調整するので、一次側である4条の電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idを、不平衡、軽負荷〜定格〜過負荷を模擬することができる。
【0027】
図5は本発明の第3実施形態に係る電線インピーダンス整合装置の構成図である。この第3実施形態は、
図1に示した第1実施形態に対し、閉じた鉄心11a〜11dへのループ電線12の巻き数を異ならせて閉じた鉄心11a〜11dの変流比を異ならせたものである。
図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0028】
4条の電線13a〜13dの電流容量が同一であり、閉じた鉄心11a〜11dの変流比が同一である場合には、二次側のループ電線12に流れる電流Ixにより、電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idのアンバランスを抑制できる。一方、4条の電線13a〜13dの電流容量が異なり、閉じた鉄心11a〜11dの変流比が同一である場合には、二次側のループ電線12に流れる電流Ixにより、電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idのアンバランスを抑制することになるので、電流容量が異なる4条の電線13a〜13dに均等に電流が流れるように作用する。この場合、電流容量が小さい電線に電流容量を超えた電流が流れる恐れがある。
【0029】
そこで、第3実施形態では、電線13a〜13dの電流容量に応じて、鉄心11a〜11dへのループ電線12の巻き数を異ならせて鉄心11a〜11dの変流比を異ならせ、電流容量が小さい電線に電流容量を超えた電流が流れないようにする。
図5において、鉄心11aは変流比が1、鉄心11bは変流比が3、鉄心11cは変流比が2、鉄心11dは変流比が4の場合を示している。これにより、電線13bは電線13aの1/3の電流容量の電線を使用でき、電線13cは電線13aの1/2の電流容量の電線を使用でき、電線13dは電線13aの1/4の電流容量の電線を使用できる。このように、第3実施形態によれば、電流容量が異なる電線13a〜13dを使用でき、電流容量が小さい電線に電流容量を超えた電流が流れないようにできる。
【0030】
図6は、本発明の第4実施形態に係る電線インピーダンス整合装置の構成図である。この第4実施形態は、
図5に示した第3実施形態に対し、
図4に示した第2実施形態の電流調整手段16を設けたものである。
図5と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0031】
図6において、電流調整手段16は、ループ電線12に流れる電流を調整するものであり、例えば、可変抵抗が用いられる。これにより、第2実施形態及び第3実施形態の効果を併せ持つ電線インピーダンス整合装置を得ることができる。
【0032】
図7は、本発明の第5実施形態に係る電線インピーダンス整合システムの構成図である。この第5実施形態は、
図1に示した第1実施形態の電線インピーダンス整合装置を多段に設けたものである。多段に設けることにより、第1実施形態の効果に加え、各電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idのアンバランスをより抑制できる。
【0033】
図8は、本発明の第6実施形態に係る電線インピーダンス整合システムの構成図である。この第6実施形態は、
図4に示した第2実施形態の電線インピーダンス整合装置を多段に設けたものである。多段に設けることにより、第2実施形態の効果に加え、各電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idのアンバランスをより抑制できる。
【0034】
図9は、本発明の第7実施形態に係る電線インピーダンス整合システムの構成図である。この第7実施形態は、
図5に示した第3実施形態の電線インピーダンス整合装置を多段に設けたものである。多段に設けることにより、第3実施形態の効果に加え、各電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idのアンバランスをより抑制できる。
【0035】
図10は、本発明の第8実施形態に係る電線インピーダンス整合システムの構成図である。この第8実施形態は、
図6に示した第4実施形態の電線インピーダンス整合装置を多段に設けたものである。多段に設けることにより、第4実施形態の効果に加え、各電線13a〜13dに流れる電流Ia〜Idのアンバランスをより抑制できる。
【0036】
以上の説明では、1相の電線13が4条の電線13a〜13dに対して電線インピーダンス整合装置及び電線インピーダンス整合システムを適用した場合について説明したが、n(n=2、3、4、…)条の電線に対して適用できる。
【0037】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。