(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ジオフォンはコイルをスプリングで固定し、筐体とともに動く永久磁石との相互運動によって誘導起電力を生じ、振動をとらえるもので、低周波の検知を不得意とするという問題がある。また、MEMSセンサも同様である。さらに、人工的に発生した磁気信号を用いた地中探査技術も開発がすすみ、多様なセンシング技術の融合が求められている。
【0006】
したがって、振動センサ及び振動センシングシステムにおいて、低周波振動を高精度に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示する一観点からは、固定部材と、前記固定部材に機械的に固定した超電導量子干渉計とを有し、振動源からの振動を、前記振動によって生じた前記超電導量子干渉計を鎖交する
外部磁場の変化として二次的に検知することを特徴とする振動センサが提供される。
【0008】
また、開示する別の観点からは、上述の振動センサと、前記振動源に対して前記振動センサより遠隔に設置して前記振動に起因しない地磁気の変化分を検知する磁力計と、前記振動センサの出力から前記磁力計の出力を減算して振動による地磁気の変化分のみを差分として抽出する抽出手段とを備えたことを特徴とする振動センシングシステムが提供される。
【0009】
また、開示する別の観点からは、上述の振動センサと、前記振動センサの近傍に設置して地磁気以外の磁気を検知する磁力計と、前記磁力計の振動を抑制する除振機構とを備えたことを特徴とする振動センシングシステムが提供される。
【0010】
また、開示する別の観点からは、固定部材と、前記固定部材に
機械的に固定した超電導量子干渉計とを有する振動センサを収容した筐体を地中に埋設した磁化
された鋼管内に設置し、前記鋼管の発する磁場を磁場発生源として利用することを特徴とする振動センシングシステムが提供される。
【0011】
また、開示するさらに別の観点からは、固定部材と、前記固定部材に
機械的に固定した超電導量子干渉計とを有する振動センサを収容した磁気信号の遮断周波数が1kHz以上となるシールドを外装に備えた筐体を地中に埋設した鋼管内に設置したことを特徴とする振動センシングシステムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
開示の振動センサ及びセンシングシステムによれば、低周波振動に対する高精度に検出することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施の形態の振動センサ及び振動センシングシステムを説明する。
図1は本発明の実施の形態の振動センサの説明図であり、超電導量子干渉計1を収容した容器2を固定部材3に
機械的に固定して振動センサの本体部を形成する。超電導量子干渉計1としては、Yなどの希土類材料, Ba, Cuを主原料とする高温超電導体で構成し、液体窒素温度77Kで動作するものであれば良い。また、超電導量子干渉計1に用いられるSQUIDの素子構造としては、ランプエッジ型ジョセフソン素子やステップエッジ型ジョセフソン素子、バイクリスタル型など、種々の高温超電導接合を用いることができる。
【0015】
また、超電導量子干渉計1を、固定部材3に対してxyz直交座標系のx方向、y方向及びz方向の3方向に
機械的に固定することが望ましい。このように、x方向、y方向及びz方向の3方向に
機械的に固定した各超電導量子干渉計1により振動源の方向を特定することができる。また、各超電導量子干渉計1の出力を合波して振動解析することによって、振動源の位置によらず、精度の高い振動検知が可能になる。
【0016】
この時、固定部材3の固定軸径及び長さを、固定軸が固定点4に対して振り子運動が可能なサイズにしても良く、それにより、
鎖交する磁場の変化が大きくなるので、固体部材3の個有振動周辺の周波数に対する感度をより高くすることができる。例えば、固定軸の直径を25mm以下にし、長さを100mm以上にする。
【0017】
図2は本発明の実施の形態の振動センサの検知原理の説明図である。
図2(a)は初期状態を示す図であり、超電導量子干渉計1は磁場5と所定の角度で
鎖交している。
図2(b)に示すように、振動源からの振動によって超電導量子干渉計1が振動すると、超電導量子干渉計1と磁場5の相対位置が変化し、それに伴って超電導量子干渉計1に
鎖交する磁場5が変化する。
【0018】
図2(c)に示すように、この磁場の変化を超電導量子干渉計1で測定することによって、振動を二次的に検出することができる。この場合、超電導量子干渉計1は、DCから100kHzまで高感度な性能を持っているので、低周波の振動を感度よく検知することができる。
【0019】
測定対象となる磁場5は、地磁気でも良く或いは人工的な
磁場でも良い。
【0020】
このような、振動センサを用いて振動をセンシングするには、振動に起因しない地磁気の変化分を測定するために、震動源に対して振動センサより遠隔に磁力計を設置することが望ましい。このように、磁力計を別途設け、振動センサの出力から磁力計の出力を減算して振動による地磁気の変化分のみを差分として抽出することにより、地磁気の自然変動に影響されない高精度の検知が可能になる。
【0021】
また、人工的な磁気の影響を排除するために、振動センサの近傍に基準となる磁力計を設置しても良く、この場合には、磁力計を検知したい周波数の振動を除去できる除振機構を介して設置することが望ましい。なお、磁力計としては遠隔配置の場合も含めて、計測精度を保つため、フラックスゲート磁力計、光ポンピング磁力計、超電導量子干渉素子など、感度が1nT以上の磁力計を用いることが望ましい。
【0022】
或いは固定部材3に
機械的に固定した超電導量子干渉計1を有する振動センサを収容した筐体を地中に埋設した磁化
された鋼管内に設置し、鋼管の発する磁場を磁場発生源として利用するようにしても良い。
【0023】
或いは、固定部材3に
機械的に固定した超電導量子干渉計1を有する振動センサを収容した磁気信号の遮断周波数が1kHz以上となるシールドを外装に備えた筐体を地中に埋設した鋼管内に設置しても良い。この場合には、人工的に発信コイルから発信された磁気信号を受信することができるため、電磁探査と地震探査の両方のセンサとして活用することができる。
【0024】
本発明の実施の形態においては、超電導量子干渉計1を用いて振動を磁場の変化として検出しているので、地下資源探査に必要なDCから100kHzまでの低周波の弾性波探査が可能になる。また、電磁探査法も同じセンサシステムを活用することで探査の効率化と高精度化を図ることが可能となり、資源探査や地中モニタリングの技術向上に大きく進展させることができる。
【実施例1】
【0025】
次に、
図3乃至
図5を参照して、本発明の実施例1の振動センサ及び振動センシングシステムを説明する。
図3は、本発明の実施例1の振動センサの説明図であり、ここでは、一部切り欠き斜視図として示している。振動センサ本体部は、固定支柱13にSQUIDを収容した容器12をxyz3軸方向に
機械的に固定したものを用いる。
【0026】
この振動センサ本体部を格納する筐体は、アルミフレーム21からなる外囲器と、外囲器中に防振用発泡ゲル22を介して収容したガラスデュワー23を備えている。このガラスデュワー23はアルミコートメラミンフォーム24を介してシールド用スプリングスパイラル25で封止・固定される。固定支柱13はシールド用スプリングスパイラル25と一体になった蓋部材に取り付けられて、ガラスデュワー23内に注入された液体窒素26中に浸漬される。
【0027】
図4は、本発明の実施例1の振動センサ本体部の説明図であり、SQUID11を収容した容器12を固定支柱13にxyz3軸方向に固定して振動センサの本体部を形成する。ここでは、SQUID11として、イットリウム系およびランタノイド系高温超電導を用いたランプエッジ型ジョセフソン素子を用いたSQUIDとする。
【0028】
図5は、本発明の実施例1の振動センサの設置状態の説明図であり、ここでは、磁場として地磁気40を利用し、制御回路30で振動センサ10を制御して振動の検知を行う。振動センサ10は振動面に固定する。振動面とは例えば地面の振動を検知する場合には地面である。機械的に接続されていない地磁気40を利用することで、機械的な固有振動を極限まで減少させることが可能である。
【0029】
この例では、SQUID11の固定においては測定したい振動の周波数帯域において、SQUID11の固定軸が固定点14を中心とした共振を起こさないように堅固に固定する。例えば、
図4に示すようにSQUID11の固定軸には30mmφ以上の円筒状の固定支柱13を用いる。ここでは、直径dを30mmφ、長さhを80mmとする。
【0030】
このように、本発明の実施例1においては、SQUID11を収容した容器12をxyz3軸方向に固定しているので、振動方向を特定できる。なお、振動強度は、xyz3軸方向に固定した3つのSQUID11の出力を合波して求める。
【実施例2】
【0031】
次に、
図6を参照して、本発明の実施例2の振動センサを説明するが、全体構造は
図3に示した上記の実施例1と同様であるので、振動センサ本体部のみを説明する。
図6は本発明の実施例2の振動センサ本体部の説明図であり、ここでも、SQUID11を収容した容器12を固定支柱15にxyz3軸方向に
機械的に固定して振動センサの本体部を形成する。
【0032】
この実施例2においては、SQUID11の固定には敢えて軸揺れを起こす柔軟性を持たせている。このように柔軟性を持たせることにより、固有振動の制約をうける一方、軸の固定点16を中心とした振り子運動をする。そのため振動センサは地磁気に対してより大きく傾くことになり、
鎖交する磁場の変化が大きくなるため、固有振動周辺の周波数に対してより高感度に検知できる。
【0033】
低周波の磁場の変化を高感度に検知するため、固定軸には25mmφ以下で、100mm以上の長さの円筒状の固定支柱15を用いる。ここでは、直径dを20mmφ、長さhを120mmとする。
【実施例3】
【0034】
次に、図
7を参照して、本発明の実施例
3の振動センシングシステムを説明する。図
7は本発明の実施例
3の振動センシングシステムの概念的構成図であり、ここでは、人工的に振動を発生させる弾性波診断の例として説明する。まず、抗井の内壁となるボーリングケーシング54内に振動センサ51〜53を挿入し、振動センサ51〜53を制御回路55で制御する。ここでは、日常的に変動する地磁気そのものの変化を振動による地磁気の相対変化と区別するために、基準となる基準フラックスゲート56を別途設ける。
【0035】
なお、この場合の振動センサ51〜53としては、上記の実施例1の振動センサを用いても良いし、或いは、SQUIDを1個だけ筐体に収容した振動センサを用いても良い。この場合には、例えば、振動センサ51においてはSQUIDをx方向に固定し、振動センサ52においてはSQUIDをy方向に固定し、振動センサ53においてはSQUIDをz方向に固定すれば良い。
【0036】
上述のように、地磁気の変化は日常的に一日あたり100nT程度変化し、また、地磁気の大きさは、100km程度の範囲内では差がほとんど認められない。そこで、人工的に振動を発生させる弾性波診断の場合には、振動検知用の振動センサ51〜53から遠方に数km、例えば、3km離した位置に感度が1nT以上の基準フラックスゲート56を設置する。なお、フラックスゲートの代わりに、光ポンピング磁力計、超電導量子干渉素子などの磁力計を用いても良い。
【0037】
人工震源57により地震波58を発生させると、ボーリングケーシング54内に収容されてセントライザで固定されている振動センサ51〜53は地殻とともに振動するため、各SQUIDと地磁気59の相対位置が変化する。それに伴ってSQUIDに
鎖交する磁場が変化するので、この磁場の変化を検知することで振動を検知することができる。
【0038】
この時、検知出力から基準フラックスゲート56で検出した地磁気59の日常的な変化分を減算することで、正確に振動を検知することができる。
【実施例4】
【0039】
次に、図
8を参照して、本発明の実施例
4の振動センシングシステムを説明する。図
8は本発明の実施例
4の振動センシングシステムの概念的構成図であり、基本的な構成は上記の実施例
3と同様であるが、ここでは、振動センサの近傍に基準SQUIDを設けている。
【0040】
ここでも、人工的に振動を発生させる弾性波診断の例として説明する。まず、抗井の内壁となるボーリングケーシング54内に振動センサ51〜53を挿入し、振動センサ51〜53を制御回路55で制御する。ここでは、商用電源などの人工的な磁気変化を除去するために、振動センサ51〜53の設置位置の近傍に基準となる基準SQUID60を設置する。この場合には基準SQUID60で検知したい周波数領域の振動を除去できる防振機構61を用いて基準SQUID60を設置して、振動以外の磁場変化を除去することが望ましい。この場合にも、日常的に変動する地磁気そのものの変化を振動による地磁気の相対変化と区別するために、基準となる基準フラックスゲート56を併設しても良い。
【実施例5】
【0041】
次に、図
9を参照して、本発明の実施例
5の振動センシングシステムを説明する。図
9は本発明の実施例
5の振動センシングシステムの概念的構成図であり、基本的な構成は上記の実施例
3と同様であるが、ここでは、地磁気ではなく磁化した鋼管から発生した磁場を用いる。鋼管62を磁化するためには、人工的に磁化しても良いし、地磁気による自然磁化を利用しても良い。
【0042】
ここでも、人工的に振動を発生させる弾性波診断の例として説明する。まず、抗井の内壁となるボーリングケーシングとして、磁化した鋼管62を用い、この鋼管62内に振動センサ51〜53を挿入し、振動センサ51〜53を制御回路55で制御する。この時、振動センサ51〜53は、セントラライザで鋼管62内のほぼ中央に保持しつつも、微小な鋼管62の振動を検知できるよう鋼管62と振動センサ51〜53には遊びを設ける。
【0043】
人工震源57によって、地震波58を発生させると、鋼管62が振動し、この鋼管62の振動に伴って振動センサ51〜53と
鎖交する鋼管62から生じる磁気信号をSQUIDで検知することにより振動を検知することができる。なお、鋼管62は磁気シールドとなるので、振動センサ51〜53に対する地磁気の影響をシールドすることができる。
【実施例6】
【0044】
次に、図
10を参照して、本発明の実施例6の振動センシングシステムを説明する。図
10は本発明の実施例
6の振動センシングシステムの概念的構成図であり、基本的な構成は上記の実施例
3と同様であるが、ここでは、人工的に磁気信号を発生させている。
【0045】
ここでも、人工的に振動を発生させる弾性波診断の例として説明する。まず、抗井の内壁となるボーリングケーシング54内に振動センサ51〜53を挿入し、振動センサ51〜53を制御回路55で制御する。ここでも、日常的に変動する地磁気そのものの変化を振動による地磁気の相対変化と区別するために、基準となる基準フラックスゲート56を別途設ける。なお、振動センサ51〜53の筐体として、遮断周波数が1kHz以上のRFシールド材を用いてシールドする。また、別の抗井の内壁となるボーリングケーシング63内に発振コイル64を挿入し、発振コイル64を発振回路65で制御して、磁気信号66を発生させる。
【0046】
この実施例
6における振動検知は、実施例
3と全く同様であり、人工震源57により地震波58を発生させると、振動センサ51〜53は地殻とともに振動するため、各SQUIDと地磁気59の相対位置が変化する。それに伴ってSQUIDに
鎖交する磁場が変化するので、1kHz以上の高周波成分を除いた低周波の磁場の変化を検知することで振動を検知することができる。
【0047】
また、振動検知以外に、ボーリングケーシング63内に挿入した発振コイル64により磁気信号66を発生させ、振動センサ51〜53でこの磁気信号66を検知することで、
比抵抗構造を分析する電磁検層としてのセンサ機能を持たせることができる。
【0048】
本発明の実施例
6の振動センシングシステムにおいては、弾性波検層と電磁検層を同じセンサを用いて行うことが可能となる。その結果、設備の利用効率や作業効率を向上し、複数の検層を同時に行うことで、より詳細な地下構造の分析が可能となる。
【0049】
ここで、実施例1乃至実施例6を含む本発明の実施の形態に関して、以下の付記を付す。
(付記1)固定部材と、前記固定部材に機械的に固定した超電導量子干渉計とを有し、振動源からの振動を、前記振動によって生じた前記超電導量子干渉計を鎖交する
外部磁場の変化として二次的に検知することを特徴とする振動センサ。
(付記2)前記超電導量子干渉計を、固定部材に対してxyz直交座標系のx方向、y方向及びz方向の3方向に機械的に固定したことを特徴とする付記1に記載の振動センサ。
(付記3)前記x方向、y方向及びz方向の3方向に機械的に固定した各超電導量子干渉計の出力を合波して振動解析することを特徴とする付記2に記載の振動センサ。
(付記4)前記固定部材の固定軸径及び長さを、前記固定軸が固定点に対して振り子運動が可能なサイズにしたことを特徴とする付記2または付記3に記載の振動センサ。
(付記5)前記磁場の変化が、前記超電導量子干渉計が地磁気中を振動することによって生じる、地磁気の変化であることを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか1に記載の振動センサ。
(付記6)付記1乃至付記5のいずれか1に記載の振動センサと、前記振動源に対して、前記振動センサより遠隔に設置して前記振動に起因しない地磁気の変化分を検知する磁力計と、前記振動センサの出力から前記磁力計の出力を減算して振動による地磁気の変化分のみを差分として抽出する抽出手段とを備えたことを特徴とする振動センシングシステム。
(付記7)付記1乃至付記5のいずれか1に記載の振動センサと、前記振動センサの近傍に設置して地磁気以外の磁気を検知する磁力計と、前記磁力計の振動を抑制する除振機構を備えたことを特徴とする振動センシングシステム。
(付記8)固定部材と、前記固定部材に機械的に固定した超電導量子干渉計とを有する振動センサを収容した
容器を地中に埋設した磁化された鋼管内に設置し、前記鋼管の発する磁場を磁場発生源として利用することを特徴とする振動センシングシステム。
(付記9)固定部材と、前記固定部材に機械的に固定した超電導量子干渉計とを有する振動センサを収容した磁気信号の遮断周波数が1kHz以上となるシールドを外装に備えた筐体を地中に埋設した鋼管内に設置したことを特徴とする振動センシングシステム。