特許第6411152号(P6411152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411152
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】現金取扱装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20181015BHJP
   G07D 13/00 20060101ALI20181015BHJP
   G07F 19/00 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   G07D9/00 456A
   G07D9/00 321Z
【請求項の数】6
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-196690(P2014-196690)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-71411(P2016-71411A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】長田 繁幸
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−293297(JP,A)
【文献】 特開2012−137982(JP,A)
【文献】 特開平09−035110(JP,A)
【文献】 特開2006−215748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
G07D 13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬性を備えた筐体と、
前記筐体内に設けられて、現金を出金可能に収納する現金収納部と、
前記現金収納部に収納された現金のうち、所定額の現金を出金する出金指示を受け付ける指示受付部と、
自装置の現在位置を検出する位置検出部と、
前記指示受付部が出金指示を受け付けた場合、前記位置検出部によって検出された現在位置があらかじめ設定された稼動条件に合致するか否かを判断する第1判断部と、
前記第1判断部が自装置の現在位置が稼動条件に合致すると判断した場合に、前記出金指示に基づいて、前記現金収納部に収納された現金のうち前記所定額の現金を出金するよう前記現金収納部を駆動制御する出金制御部と、
前記出金制御部の駆動制御によって出金された現金に基づいて、前記現金収納部に収納されている現金の残高を管理する現金残高管理部と、
前記現金残高管理部によって管理されている現金の額が所定の下限額を下回ったか否かを判断する第2判断部と、
前記第2判断部が現金の額が所定の下限額を下回ったと判断した場合に、自装置に対する入金を喚起する喚起部と、
を備えたことを特徴とする現金取扱装置。
【請求項2】
前記喚起部は、自装置から所定範囲内に存在する利用者の端末装置を介して、自装置の存在および自装置への入金要求を報知することにより、自装置に対する入金を喚起することを特徴とする請求項1に記載の現金取扱装置。
【請求項3】
前記出金指示は、あらかじめ指定された指定額を出金する指示であることを特徴とする請求項1または2に記載の現金取扱装置。
【請求項4】
前記現金収納部に対する現金の入金を受け付ける入金受付部と、
前記入金受付部によって現金の入金が受け付けられるごとに、前記現金収納部によって収納される現金の額を計数する現金額計数部と、
を備え、
前記現金残高管理部は、前記現金額計数部によって計数された現金に基づいて、前記現金収納部に収納されている現金の残高を管理し、
前記第2判断部は、前記現金残高管理部によって管理されている現金の額が所定の上限額を上回ったか否かを判断し、
前記喚起部は、前記第2判断部が現金の額が所定の上限額を上回ったと判断した場合、自装置から所定範囲内に存在する利用者の端末装置を介して、自装置の存在および自装置からの出金要求を報知することにより、自装置からの出金を喚起することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の現金取扱装置。
【請求項5】
自装置の振動を検出する振動検出部と、
前記振動検出部によって振動が検出されたことに基づいて、警報を出力する警報出力部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の現金取扱装置。
【請求項6】
自装置に入金された現金に所定のマーキングを施すマーキング部と、
前記出金制御部の駆動制御によって出金される現金に施された前記マーキングを消去するマーキング消去部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の現金取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、現金取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関やコンビニエンスストアなどの商業施設に設置され、ホストコンピュータと通信回線を介して接続されることによってシステムを構成するATM(Automated Teller Machine)があった。ATMは、利用者による操作を受け付けると、ホストコンピュータに記憶された利用者の識別情報やこれに関連付けられた各種の情報に基づいて認証をおこなった結果、利用者によるATMに対する現金の入出金を可能としている(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0003】
また、近年、トラックやバスを改造して車内に銀行の店舗機能を設置した移動銀行窓口車が実用化されている。移動銀行窓口車は、たとえば、金融機関から遠く交通の便が悪い地域などにおいて金融機関の窓口業務などに利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−242647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術は、ATMが設置してある金融機関や商業施設に利用者がおもむかなくてはならず、煩雑であり、利便性に劣るという問題があった。また、上述した従来の技術は、ATMが建物と一体化されており、移動銀行窓口車は車両と一体化されているため、臨時的に特定の屋内で利用する、すなわち状況に応じて利用場所を変えるということが難しく、利便性に劣るという問題があった。仮に、移動銀行窓口車を体育館などの屋内で利用する場合にも、搬入などが大がかりになり利便性に劣るという問題があった。
【0006】
また、たとえば、地震や洪水などの天災によって地域一帯が大きく被害を受けた場合、既存のATMが使えないばかりか、あらたなATMを設置する場所を確保することが難しい。このため、上述したように、建物あるいは車両などと一体化されているために比較的大型になりやすい従来の技術は、あらたなATMを設置することが難しい。一方で、このような場合こそ、現金が必要であり、現金を入手できる環境の整備が望まれる。
【0007】
また、イベントは、その会場が常時設営されているとは限らない。たとえば、イベントに供される場所として人気が高い場所では、高い頻度で何らかのイベントを開催していることもあるが、イベントによって集客力に差があること、イベント非開催日などにおける防犯性などを考慮すると、ATMを常時設置しておくことが必ずしも望ましいものではない。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、利用者の利便性の向上を図ることができる現金取扱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる現金取扱装置は、可搬性を備えた筐体と、前記筐体内に設けられて、現金を出金可能に収納する現金収納部と、前記現金収納部に収納された現金のうち、所定額の現金を出金する出金指示を受け付ける指示受付部と、前記指示受付部が出金指示を受け付けた場合、当該出金指示に基づいて、当該現金収納部に収納された現金のうち前記所定額の現金を出金するよう前記現金収納部を駆動制御する出金制御部と、前記出金制御部の駆動制御によって出金された現金に基づいて、前記現金収納部に収納されている現金の残高を管理する現金残高管理部と、前記現金残高管理部によって管理されている現金の額が所定の下限額を下回ったか否かを判断する判断部と、前記判断部が現金の額が所定の下限額を下回ったと判断した場合に、自装置に対する入金を喚起する喚起部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる現金取扱装置は、上記の発明において、前記喚起部が、自装置から所定範囲内に存在する利用者の端末装置を介して、自装置の存在および自装置への入金要求を報知することにより、自装置に対する入金を喚起することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる現金取扱装置は、上記の発明において、前記喚起部が、所定の金融機関への移動を喚起することにより、自装置に対する入金を喚起することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる現金取扱装置は、上記の発明において、前記出金指示が、あらかじめ指定された指定額を出金する指示であることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる現金取扱装置は、上記の発明において、前記現金収納部に対する現金の入金を受け付ける入金受付部と、前記入金受付部によって現金の入金が受け付けられるごとに、前記現金収納部によって収納される現金の額を計数する現金額計数部と、を備え、前記現金残高管理部が、前記現金額計数部によって計数された現金に基づいて、前記現金収納部に収納されている現金の残高を管理することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる現金取扱装置は、上記の発明において、前記判断部が、前記現金残高管理部によって管理されている現金の額が所定の上限額を上回ったか否かを判断し、前記喚起部が、前記判断部が現金の額が所定の上限額を上回ったと判断した場合、自装置から所定範囲内に存在する利用者の端末装置を介して、自装置の存在および自装置からの出金要求を報知することにより、自装置からの出金を喚起することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明にかかる現金取扱装置によれば、利用者の利便性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置の外観を示す説明図である。
図2】この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
図3】利用者の端末装置による現金取扱装置の位置特定方法について説明する説明図である。
図4】この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置の機能的構成を示すブロック図である。
図5】この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置の処理手順を示すフローチャート(その1)である。
図6】この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置の処理手順を示すフローチャート(その2)である。
図7】この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置の処理手順を示すフローチャート(その3)である。
図8】この発明にかかる別の実施の形態の現金取扱装置の外観を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる現金取扱装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
(現金取扱装置の外観)
まず、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置の外観について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置の外観を示す説明図である。図1において、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100は、アタッシュケース状の、開閉可能な箱形形状をなす筐体101を備えている。筐体101は、たとえば、金属材料を用いて形成されていることが好ましい。金属製の筐体101とすることにより、現金取扱装置100の強度を確保し、現金取扱装置100が収納する現金が筐体101の破壊により不正に取り出されることを防止することができる。
【0019】
筐体101は、一面側が開口する略箱形形状をなす一対のケース部材101a、101bによって構成されている。現金取扱装置100は、運搬時などには、一方のケース部材101aにおける開口と他方のケース部材101bにおける開口とを合わせ、閉じた箱形状とされる。一対のケース部材101a、101bのそれぞれには、開口の一辺であって、閉じた状態において重なりあう一辺に設けられた蝶番102を介して、相互に回動可能に連結されている。
【0020】
現金取扱装置100は、使用時などには、一方のケース部材101aの開口が上方を向くように、当該一方のケース部材101aを設置台の上などに設置し、一方のケース部材101aに対して他方のケース部材101bを蝶番102を回動中心として回動させ、一方のケース部材101aに対して他方のケース部材101bが起立するように位置付けることによって筐体101を開いた状態とされる。現金取扱装置100は、運搬時には筐体101を閉めた状態、使用時には筐体101を開いた状態とされる。図1においては、現金取扱装置100における筐体101を開いた状態を示している。
【0021】
筐体101には、カードリーダ103が設けられている。カードリーダ103は、カードを用いた、現金の出金処理あるいは入金処理に際して、カードに記録されたデータを読み出す。カードリーダ103は、ICチップを備えたタイプのカードに記録されたデータの読み出しが可能なものであってもよいし、磁気テープを備えたタイプのカードに記録されたデータの読み出しが可能なものであってもよい。カードリーダ103は、磁気テープを備えたタイプのカードに記録されたデータの読み出しに際して、手動による当該カードのスワイプを受け付けることができる。
【0022】
筐体101には、閉じた状態を維持する留め機構104が設けられている。留め機構104は、たとえば、スナップ錠(パッチン錠)によって実現することができる。また、筐体101には、留め機構104によって閉じられた状態で固定する、図示を省略する鍵が設けられている。鍵は、たとえば、シリンダー錠によって実現することができる。
【0023】
また、鍵は、電気的に施解錠をする電子錠によって実現してもよい。電子錠は、複数の数字キーなどの各種のキーを備え、各種のキーに対する操作に応じて施解錠をする構成であってもよく、カードキーなどの専用の部材を用いて施解錠をする構成であってもよい。また、専用の部材を用いて施解錠をする電子錠においては、非接触式であっても、カードキーなどを用いて施解錠をおこなう接触式であってもよい。
【0024】
筐体101には、閉じた状態において、アタッシュケースのように把持して運搬するための取っ手105が設けられている。取っ手105は、持ち運びがしやすいように、2つ設けられていてもよい。取っ手105には、接触センサが設けられている。筐体101の内側にはバッテリが設けられており、接触センサに対しては、バッテリによって常時電源が供給されている。これにより、現金取扱装置100を運搬し取り扱う者(金融機関の従業員など)が把持していることを検知することができる。
【0025】
接触センサは、取っ手105に設けられているものに限らない。接触センサは、たとえば、金融機関の従業員などが取っ手105を把持した状態で触れる場所以外の場所(たとえば、筐体101の角など)に設けられていてもよい。さらに、接触センサは、取っ手105部分と、筐体101の外表面の所定の位置と、のように異なる位置に、複数設けられていてもよい。
【0026】
現金取扱装置100の筐体101内には、入出金部106が設けられている。入出金部106は、一方のケース部材101aに設けられている。入出金部106は、当該入出金部106に対して入出金される現金の真贋や金種を判定するセンサ(図2を参照)を備えている。センサからの出力信号は、当該センサの検知範囲にある現金の有無に応じて変化する。現金取扱装置100は、センサからの出力信号に基づいて、入金される現金の真贋を判定する。
【0027】
センサは、たとえば、判定対象が紙幣である場合は、紙幣の紙質を検知する可視光センサや、紙幣に塗布された磁気インクを検知する磁気センサ、金種の判定をおこなう赤外線センサなどによって実現することができる。また、判定部が備えるセンサは、たとえば、判定対象が硬貨である場合は、磁気誘導型近接センサなどによって実現することができる。
【0028】
また、入出金部106は、現金を収納する、図示を省略する収納ケースを備えている。現金取扱装置100は、センサからの出力信号に基づいて正規の現金であると判定された現金を、収納ケース内に収納する。現金取扱装置100は、センサからの出力信号に基づいて、正規であると判定された現金を金種ごとに分別して収納する。
【0029】
また、現金取扱装置100は、たとえば、入金された現金を判定部による判定結果に基づいて分別する分別機構や、入金された現金を収納ケースまで搬送する搬送機構などを備えている。分別機構や搬送機構などの構成については、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため、説明を省略する。
【0030】
入出金部106は、現金取扱装置100に対する現金(紙幣や硬貨)の挿入を受け付けたり、現金取扱装置100から現金を払い出したりする入出金口106cを備えている。入出金口106cは、現金取扱装置100が取り扱い可能な現金に応じて、一または複数設けることができる。たとえば、現金として紙幣と硬貨との双方を取り扱う場合は、紙幣用の入出金口106cと硬貨用の入出金口106cとを設けることができる。
【0031】
入出金口106cは、取り扱いが可能な現金の種類に応じて複数設けられていてもよい。具体的には、たとえば、現金取扱装置100が取り扱い可能な現金を紙幣のみとする場合、1000円札の挿入を受け付けるとともに払い出しをおこなうための入出金口106c、5000円札の挿入を受け付けるとともに払い出しをおこなうための入出金口106c、1万円札の挿入を受け付けるとともに払い出しをおこなうための入出金口106c、のように、紙幣の種類ごとに複数設けてもよい。
【0032】
現金取扱装置100においては、取り扱いが可能な金種を限定してもよい。具体的には、たとえば、上記のように紙幣のみを取り扱いの対象としてもよく、1万円のみを取り扱いの対象としてもよい。たとえば、1万円のみを取り扱いの対象とする場合、センサは1万円札の真贋を判定するセンサのみを備え、収納ケースは1種類の紙幣を収納する構成とすればよい。
【0033】
これによって、紙幣を分別する分別機構や紙幣別の収納空間を設ける必要がなくなり、現金取扱装置100の軽量化を図ることができる。この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100は、持ち運ぶことを目的の一つとしているため、軽量化を図ることにより運搬性の向上を図ることができる。
【0034】
収納ケースは、筐体101(一方のケース部材101a)に対して、取り外し可能に設けられていてもよい。収納ケースを取り外し可能とする場合、筐体101に対する収納ケースの取り外し作業は、現金取扱装置100の電源がON状態である場合にのみ可能とすることが好ましい。
【0035】
具体的には、たとえば、電磁石を用いて、電源がOFFされた状態では、筐体101に対する収納ケースの取り外しができないようにロックするロック機構を設けることにより実現することができる。このようなロック機構は、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため説明を省略する。
【0036】
また、現金取扱装置100は、紙幣番号読取部(図2を参照)を備えている。紙幣番号読取部は、たとえば、CIS(Contact Image Sensor)や、CISの読み取り範囲を通過するように現金を搬送する搬送機構などによって実現することができる。CISは、LED(Light Emitting Diode)などの光源、受光レンズ、直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどによって構成することができる。紙幣番号読取部は、CISの読み取り範囲が、入出金口106cと収納ケースとの間であって、現金が搬送される軌道上に位置するように設けられる。
【0037】
紙幣番号読取部は、紙幣番号の読み取り対象とする現金(紙幣)がCISの読み取り範囲を通過するように搬送するとともに、光源を発光させることによる光を当該現金に照射する。現金に照射された光は、当該現金によって反射されてCMOSイメージセンサに入射する。現金取扱装置100においては、CMOSイメージセンサからの出力信号に基づいて紙幣番号を取得することができる。
【0038】
この実施の形態においては、紙幣番号の読み取りのために紙幣を搬送するモータと、入出金部106を構成するモータとを、1台のモータおよび当該モータを駆動制御するモータ制御回路によって兼用することができる。これにより、現金取扱装置100の小型化や軽量化を図り、良好な運搬性の確保に寄与することができる。
【0039】
現金取扱装置100の筐体101内には、表示部107が設けられている。表示部107は、他方のケース部材101bに設けられている。これにより、現金取扱装置100の使用時に筐体101を開いた状態とすると、表示部107を利用者に対峙させることができる。表示部107は、たとえば、電子インク型のディスプレイパネルを用いて実現することができる。
【0040】
電子インク型のディスプレイは、平面上に配置された、外周面が2色に色分けされた複数の微小な球体を備えている。具体的には、各微小な球体は、たとえば、半分(半球)を白、残余の半分(半球)を黒に塗り分けられている。各微小な球体の一部は静電気を帯びている。電子インク型のディスプレイは、各微小な球体を電界によって回転させてディスプレイにおける白と黒との配置を制御することにより、白地に黒い文字を表示したり、黒字に白い文字を表示したりすることができる。電子インク型のディスプレイパネルは、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため、説明を省略する。
【0041】
現金取扱装置100の筐体101には、現金取扱装置100に対する各種の操作を受け付ける操作部108が設けられている。操作部108は、たとえば、表示部107の表面側に積層されたタッチパネルによって実現することができる。操作部108を、表示部107に積層されたタッチパネルによって実現することにより、現金取扱装置100の小型化を図り、良好な運搬性の確保に寄与することができる。
【0042】
また、操作部108を、表示部107に積層されたタッチパネルによって実現することにより、現金取扱装置100の小型化および良好な運搬性を確保しつつ、多様な操作キーを実現することができる。そして、多様な操作キーを実現することにより、複雑な入力要求に対応することができる。
【0043】
これにより、たとえば、現金取扱装置100の動作状態の設定や、現金取扱装置100を利用可能な状態にしたり、利用を制限する状態にするなどの重要な手続きの実行を、複雑な入力操作がおこなわれた場合に限定することができる。具体的には、これらの重要な手続きの実行を、金融機関の従業員などに制限することができる。
【0044】
操作部108は、表示部107に積層されたタッチパネルによって実現するものに限らない。操作部108は、たとえば、一方のケース部材101aに設けられたテンキーによって実現してもよい。操作部108をテンキーによって実現することにより、操作を簡略化するとともに、現金取扱装置100の小型化や軽量化を図り、良好な運搬性の確保に寄与することができる。
【0045】
現金取扱装置100は、カメラ(図2を参照)を備えている。カメラは、レンズ109や、レンズ109を通して入射した光が結像される撮像素子、撮像素子から出力される電気信号に基づく画像情報を生成して記憶する画像処理回路などを備えている。撮像素子は、たとえば、入射した光に応じた明暗を電荷の量に光電変換した電気信号を出力するCCD(Charge Coupled Device)などによって実現することができる。
【0046】
たとえば、撮像素子をCCDによって実現する場合、画像処理回路は、CDS(Correlated Double Sampling:相関2重サンプリング)回路、AGC(Automatic Gain Control)回路、ADC(Analog/Digital Converter)によって構成されるAFE(Analog Front End)や、DSP(Digital Signal Processor)などによって構成することができる。AFEは、撮像素子(CCD)に結像された光信号に基づくアナログ信号をデジタル化したデジタル信号を生成する。DSPは、AFEが生成したデジタル信号に基づいてYUV信号を生成する。画像処理回路の構成および処理については、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため、説明を省略する。
【0047】
カメラが備えるレンズ109は、他方のケース部材101bにおける、表示部107の近傍に設けられている。現金取扱装置100を利用する利用者は、表示部107に表示された情報を目視しながら現金の出金操作などをおこなうため、カメラが備えるレンズ109を表示部107の近傍に設けることにより、現金取扱装置100の利用者の顔を確実に撮影することができる。
【0048】
これにより、現金取扱装置100に対して不正をおこなった(あるいは、不正をおこなおうとした)利用者を確実に撮影することができる。また、カメラが備えるレンズ109を表示部107の近傍に設けることにより、現金取扱装置100の利用者に対して「撮影(監視)されている」という意識を持たせ、現金取扱装置100に対する不正を効果的に防止することができる。
【0049】
筐体101には、残高メータ110が設けられている。残高メータ110は、たとえば、公知の各種の表示装置によって実現することができる。残高メータ110を実現する表示装置は、たとえば、現金取扱装置100が収納可能な現金の上限額に対する、現金取扱装置100が現時点で収納している現金の額の割合を、メータ(インジケータ)状に表示する。割合を、インジケータ状に示すことにより、第三者に、現金取扱装置100に収納されている現金の具体的な額を知らせることなく、現金取扱装置100を運搬し取り扱う者に、現金取扱装置100が現時点で収納している現金の多少を案内することができる。
【0050】
あるいは、残高メータ110を実現する表示装置は、たとえば、現金取扱装置100が現時点で収納している現金の額を直接表示するものであってもよい。この場合、現金取扱装置100が現時点で収納している現金の額は、操作部108に対して所定の入力操作がおこなわれた場合、あるいは、当該所定の入力操作がおこなわれてから所定時間以内、などに限定して表示するように、残高メータ110による報知のタイミングや期間を制限してもよい。
【0051】
あるいは、残高メータ110は、現金取扱装置100が現時点で収納している現金の額、あるいは、上記の割合に応じて点灯したり消灯したりするLEDランプなどの発光体によって実現してもよい。具体的には、たとえば、現金取扱装置100が現時点で収納している現金の額が所定の下限額を下回った場合に点灯したり、上記の割合が所定の値を下回った場合に点灯したりすることによって、現金取扱装置100が現時点で収納している現金の額、あるいは、上記の割合を案内してもよい。残高メータ110を、このような発光体によって実現することにより、現金取扱装置100の小型化や軽量化を図り、良好な運搬性の確保に寄与することができる。
【0052】
あるいは、残高メータ110を複数のLEDランプによって実現してもよい。この場合、残高メータ110は、現金取扱装置100が現時点で収納している現金の額、あるいは、上記の割合に応じて、点灯させるLEDランプを異ならせ、LEDランプを選択的に点灯させることによって、現金取扱装置100が現時点で収納している現金の額、あるいは、上記の割合を案内してもよい。
【0053】
(現金取扱装置100のハードウエア構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100のハードウエア構成について説明する。図2は、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100のハードウエア構成を示すブロック図である。
【0054】
図2において、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100は、CPU201と、ROM202と、RAM203と、ブザー204と、振動センサ205と、紙幣番号読取部206と、カメラ207と、メモリ208と、位置検出部209と、無線信号送出部210と、通信I/F211と、プリンタ212と、カードリーダ103と、入出金部106と、表示部107と、操作部108と、残高メータ110と、を備えている。コンピュータ装置が備える各部201〜212、103、106〜108、110は、バス200によってそれぞれ接続されている。
【0055】
CPU201は、現金取扱装置100全体の制御をつかさどる。CPU201は、時間の経過や日時を計時するタイマ機能を備えている。ROM202は、ブートプログラムや各種のプログラムなどを記憶している。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。すなわちCPU201は、RAM203をワークエリアとしながらROM202に記憶された各種のプログラムを実行する。
【0056】
入出金部106は、上記のようにセンサ106aやモータ制御回路106bを備えている。入出金部106のセンサ106aからの出力信号は、CPU201に入力される。CPU201は、入出金部106のセンサ106aからの出力信号に基づいて、現金の真贋あるいは金種の判定をおこなう。そして、CPU201は、入出金部106のセンサ106aからの出力信号すなわち真贋あるいは金種の判定結果に基づいて、モータ制御回路106bを駆動制御し、モータ制御回路106bを介して入出金部106のモータを駆動制御する。
【0057】
具体的には、CPU201は、たとえば、判定対象とする現金が正規の貨幣であった場合、当該現金を収納ケースに向けて搬送するようにモータ制御回路106bを駆動制御する。また、具体的には、CPU201は、たとえば、判定対象とする現金が正規の貨幣ではない場合、当該判定対象を入出金口106cから現金取扱装置100の外部へ排出したり、所定のスタッカーに搬送したりするようにモータ制御回路106bを駆動制御する。
【0058】
ブザー204は、現金取扱装置100においてエラーが発生した場合などに所定のブザー(警報)を出力する。ブザー204は、たとえば圧電ブザー、電子ブザー、電磁ブザーなど公知の各種のブザー204によって実現することができる。
【0059】
具体的には、ブザー204は、たとえば、現金取扱装置100が現時点で収納している現金の額が所定の下限額を下回った場合、あるいは、上記の割合が所定の値を下回った場合に、所定のブザー204を出力する。また、具体的には、ブザー204は、たとえば、判定対象とする現金が正規の貨幣ではない場合に、所定のブザー204を出力してもよい。
【0060】
ブザー204によるブザー204(警報)の出力は、現金取扱装置100に対する所定の操作があった場合に停止することができる。ブザー204の出力を停止するための所定の操作は、たとえば、操作部108に対する所定の入力操作によって実現することができる。
【0061】
あるいは、現金取扱装置100においては、取っ手105部分と筐体101の外表面の所定の位置とのように異なる位置に、複数の接触センサを設けることにより、たとえば、「取っ手105を3回握ってから、筐体101の角を2回なでる」など特定のパターンで接触センサに接触したことが検知された場合に、ブザー204の出力を停止するようにしてもよい。
【0062】
振動センサ205は、バッテリから常時電源が供給されており、現金取扱装置100(筐体101)の振動の有無および振動の強さを検知する。振動センサ205は、公知の各種の振動センサ205を用いることができる。ブザー204は、振動センサ205の検知結果に基づいて、現金取扱装置100に対して所定の強さ以上の振動が加えられた場合に、ブザー204を出力する。
【0063】
これにより、たとえば、現金取扱装置100が奪取されそうになって、金融機関の従業員などと強盗との間で現金取扱装置100を引っ張り合う、強盗が現金取扱装置100を持って走って逃げるなどして現金取扱装置100に対して所定の強さ以上の振動が加えられた場合に、ブザー204によってブザー音声を出力することができる。
【0064】
紙幣番号読取部206は、上記のようにCISを備えている。CISが備えるCMOSイメージセンサからの出力信号は、CPU201に入力される。CPU201は、CMOSイメージセンサからの出力信号に基づいて、当該出力信号に基づく画像の解析をおこない、紙幣番号を認識する処理をおこなう。CMOSイメージセンサからの出力信号に基づく画像の解析は、CPU201がおこなうものに限らない。CMOSイメージセンサからの出力信号に基づく画像の解析は、たとえば、紙幣番号読取部206に画像認識回路を設け、当該画像認識回路においておこなうようにしてもよい。
【0065】
カメラ207は、上記のように、CCDや画像処理回路を備えている。カメラ207において、レンズ109を介してCCDに入射した光は、CCDにおいて光電変換され、アナログの電気信号とされて画像処理回路に入力される。画像処理回路は、アナログ信号に基づいてデジタル信号を生成し、さらに当該デジタル信号に基づいてYUV信号を生成する。画像処理回路が生成したYUV信号は、CPU201に出力される。あるいは、画像処理回路が生成したYUV信号は、CPU201を介して、あるいは直接メモリ208に出力されるものであってもよい。
【0066】
CPU201は、操作部108に対する操作がおこなわれている間、継続してカメラ207を駆動制御して撮像(動画撮影)をおこなってもよく、現金の入出金の操作が開始されてから完了するまでの間の任意のタイミングで撮像(静止画撮像)をおこなってもよい。あるいは、CPU201は、現金の入出金の操作が開始されてから完了するまでの間の任意のタイミングで、複数回、撮像(静止画撮像)をおこなってもよい。これにより、動画を撮影する場合と比較して現金取扱装置100における電池の消耗を抑制するとともに、複数枚の静止画像により操作者を確実に特定可能な画像データを得ることができる。
【0067】
また、CPU201は、収納ケースの取り外しや取り付けに際しても、カメラ207を駆動し、撮像するようにしてもよい。この実施の形態の現金取扱装置100において、現金取扱装置100の電源がON状態である場合にのみ筐体101に対する収納ケースの取り外し作業を可能とした場合、収納ケースの取り外しや取り付けに際して撮像することにより、現金を収納する収納ケースが不正に持ち去られることを防止することができる。
【0068】
メモリ208は、CPU201によって制御され、たとえば、現金取扱装置100が収納する現金の額に関する情報を記憶する。また、メモリ208は、現金取扱装置100における現金の入金および出金をおこなうごとに、当該入金および出金をおこなった日時に関する情報を、現金の額に関する情報に関連付けて記憶してもよい。
【0069】
メモリ208は、現金取扱装置100における現金の入金および出金をおこなうごとに、先に記憶されている現金の額に関する情報を書き換えて、最新の現金の額に関する情報を記憶する。メモリ208は、現金取扱装置100における現金の入金および出金をおこなうごとに、先に記憶されている現金の額に関する情報を書き換えず、最新の現金の額に関する情報を追加して記憶してもよい。
【0070】
また、メモリ208は、紙幣番号読取部206が撮像し、CPU201の処理によって解析された紙幣番号を記憶する。また、メモリ208は、紙幣番号ごとに、当該紙幣番号によって識別される紙幣が入金された日時(入金日時)に関する情報を記憶してもよい。紙幣番号や入金日時に関する情報は、累積して記憶する。すなわち、一旦入金された紙幣が出金された場合も、当該紙幣の紙幣番号や入金日時に関する情報を消去せずに記憶する。
【0071】
また、メモリ208は、カメラ207が撮像し、CPU201の処理によって解析された画像、すなわち、現金取扱装置100における現金の入金および出金をおこなった人物の画像を記憶する。また、メモリ208は、紙幣番号ごとに、当該紙幣番号によって識別される紙幣が入金された日時(入金日時)に関する情報を記憶してもよい。紙幣番号や入金日時に関する情報は、累積して記憶する。すなわち、一旦入金された紙幣が出金された場合も、当該紙幣の紙幣番号や入金日時に関する情報を消去せずに記憶する。
【0072】
カードリーダ103は、現金の出金処理あるいは入金処理に際して、カードに記録されたデータを読み出し、読み出したデータをCPU201に出力する。CPU201は、カードリーダ103から出力されたデータに基づいて、現金の出金処理あるいは入金処理をおこなう利用者の識別情報を特定する。利用者の識別情報は、たとえば、カード番号によって実現することができる。このカード番号は、カード(利用者)ごとに固有の情報であって、たとえば、カードの発行元となる金融機関によって割り当てられる。
【0073】
操作部108は、当該操作部108に対する入力操作に応じた信号を、CPU201に出力する。CPU201は、操作部108から出力された信号に基づいて、操作内容を判断し、操作内容に応じた処理をおこなう。
【0074】
位置検出部209は、現金取扱装置100自体が存在する位置(現金取扱装置100の現在位置)を検出し、検出結果をCPU201に出力する。具体的には、位置検出部209は、たとえば、GPS(Global Positioning System)を利用することによって実現することができる。GPSは、GPS衛星からの電波を受信し、GPS衛星と現金取扱装置100との幾何学的位置を求めるものであり、GPSを利用することによって地球上どこでも現金取扱装置100の現在位置を計測することができる。
【0075】
GPSにおいて用いられる電波としては、1.575.42MHzの搬送波で、C/A(Coarse and Access)コードおよび航法メッセージが乗っているL1電波を用いておこなわれる。C/Aコードはビット率1.023Mbpsで、コードの長さは1023bit=1msである。また、航法メッセージはビット率50bpsで、コードの長さは、サブフレームが300bit=6sであり、メインフレームが1500bit=30sであり、5サブフレームが1メインフレームであり、25メインフレームが1マスターフレームである。
【0076】
無線信号送出部210は、ビーコンなどによるパケット信号を、現金取扱装置100の周囲に送出する。パケット信号は、現金取扱装置100の現在位置を示す情報を含んでいる。パケット信号は、電波または赤外線によって送出される。送出されたパケット信号は、現金取扱装置100の周囲に存在する利用者の端末装置において受信される。
【0077】
この実施の形態において、現金取扱装置100は、パケット信号(電波または赤外線)を送出するだけの無線局であって、送出されたパケット信号を受信した利用者の端末装置が、当該パケット信号に基づいて自装置に対する現金取扱装置100の位置(方位や方向および現金取扱装置100までの距離など)を特定し、特定した現金取扱装置100の位置を報知する。この実施の形態において、利用者の端末装置には、現金取扱装置100から送出されたパケット信号を受信し、当該パケット信号に基づいて現金取扱装置100の現在位置を特定するアプリケーションプログラムがあらかじめインストールされているものとする。
【0078】
通信I/F211は、現金取扱装置100は、外部装置とのインターフェイスとして機能し、外部装置との間におけるデータの入出力を制御する。現金取扱装置100は、たとえば、金融機関のサーバコンピュータなどと通信をおこない、メモリ208に記憶した各種のデータを当該サーバコンピュータに送信したり、サーバコンピュータから送信されたデータを受信してもよい。
【0079】
プリンタ212は、操作部108に対する入力操作に応じて現金取扱装置100がおこなった入金や出金のサービスの結果を記録媒体に印刷した明細書を出力する。具体的には、プリンタ212は、たとえば、操作部108に対して預貯金口座から現金を引き出す入力操作がおこなわれた場合に、預貯金残高や取引明細などを印刷した明細書を所定の明細書発行口から発行する。記録媒体は、所定幅の長尺状のロール紙を用いることができる。記録媒体として長尺状のロール紙を用いる場合、プリンタ212はロール紙を所定の位置で切断するためのカッタ機構を備えていてもよい。
【0080】
プリンタ212は、たとえば感熱発色性を備えた記録媒体に対する印刷をおこなうサーマルプリンタなどによって実現することができる。プリンタ212は、サーマルプリンタによって実現する場合、印刷するデータを展開するメモリ、記録媒体を搬送するモータ、発熱素子を備えたサーマルヘッドなどを備えて構成される。
【0081】
(利用者の端末装置による現金取扱装置100の位置特定方法)
つぎに、利用者の端末装置による現金取扱装置100の位置特定方法について説明する。図3は、利用者の端末装置による現金取扱装置100の位置特定方法について説明する説明図である。
【0082】
この実施の形態において、ビーコンは、たとえば、iBeaconによって実現することができる。iBeacon(登録商標)は、iOS(登録商標)の位置情報サービスを拡張する新しい技術であって、iBeaconによるビーコン情報を発するコンピュータ装置の設置場所に近づいたり離れたりしたことを、iOSが、利用者の端末装置にインストールされている所定のアプリケーションを介して当該利用者に通知することができる。iBeacon では、位置情報を明らかにするために緯度と経度ではなく、BLE(Bluetooth Low Energy)信号を用いている。利用者の端末装置は、BLE信号を検出する。なお、Bluetoothは登録商標である。
【0083】
図3において、利用者の端末装置による現金取扱装置100の位置特定に際しては、ビーコン情報を管理するビーコン情報管理サーバ310は、まず、(1)現金取扱装置100に対してビーコン情報を発信する。ビーコン情報管理サーバ310は、複数のビーコン情報管理サーバ310を管理するサーバコンピュータと接続されている。
【0084】
ビーコン情報は、(2)uuid(Universally Unique Identifier)、major(major value)、minor(minor value)を含んでいる。uuidは、Distributed Computing Environment(DCE)の一部としてOpen Software Foundation(OSF)が標準化した、ソフトウェアを一意に識別するための識別子であって、ビーコンの分散システム上においていずれかのコンピュータ装置が統制を取らなくてもビーコン情報の送信元を一意に特定することができる。majorは、16ビットの符号無し整数値であって、UUIDが同じビーコンを区別するために用いられる。minorは、majorと同じく16ビットの符号無し整数値であって、UUIDおよびmajor valueが同じビーコンを区別するために用いられる。
【0085】
ビーコン情報を受信した現金取扱装置100は、受信したビーコン情報に基づいて、無線信号送出部210によりビーコン情報を送出する。現金取扱装置100が送出するビーコン情報は、自装置にあらかじめ割り当てられたID番号と、入金要求または出金要求に基づいて生成されるminorを含んでいる。
【0086】
つぎに、(3)利用者の端末装置300は、現金取扱装置100から送信されたビーコン情報を受信すると、受信したビーコン情報に基づいて、(4)ビーコン情報管理サーバ310に対して、当該ビーコン情報の送出元の現金取扱装置100の位置する領域の問い合わせをおこなう。そして、(5)ビーコン情報管理サーバ310は、利用者の端末装置300からの問い合わせに応じて該当する情報を送信する。
【0087】
これにより、利用者の端末装置300を介して、現金取扱装置100の位置する領域を利用者に通知することができる。iBeaconを利用した現金取扱装置100の位置の特定は、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため詳細な説明を省略する。
【0088】
(現金取扱装置100の機能的構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100の機能的構成について説明する。図4は、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100の機能的構成を示すブロック図である。
【0089】
図4において、現金取扱装置100の機能は、現金残高管理部401と、現金収納部402と、指示受付部403と、出金制御部404と、入金受付部405と、現金額計数部406と、判断部407と、喚起部408と、によって実現される。現金取扱装置100の機能を実現する各部401〜408は、筐体101に設けられ、当該筐体101とともに移動することができる。
【0090】
現金残高管理部401は、記憶部401aを備えている。記憶部401aは、現金取扱装置100においておこなった入金の処理や出金の処理などの取り引きに関する情報(取引情報)を記憶する。記憶部401aは、たとえば、メモリ208によって実現することができる。また、記憶部401aは、たとえば、現金取扱装置100への入金や現金取扱装置100からの出金が必要な場合に、現金取扱装置100を運搬し取り扱う者が迅速に該当する金融機関に移動することができるように、地図情報などを記憶していてもよい。
【0091】
現金残高管理部401は、出金制御部404の駆動制御によって出金された現金に基づいて、現金収納部402に収納されている現金の残高を管理する。この実施の形態においては、CPU201、ROM202、RAM203によって、現金残高管理部401の機能を実現することができる。
【0092】
現金収納部402は、現金を出金可能に収納する。現金収納部402は、筐体101内に設けられることが好ましい。現金収納部402は、少なくとも収納ケースが、外部から直接視認することが難しい位置であって、たとえば、筐体101を構成する一方のケース部材101aの中に設けられていることが好ましい。現金収納部402を、筐体101の内側であって外部から直接視認することが難しい位置に設けることにより、現金を収納する収納ケースの盗難や強盗の発生を抑制する効果が期待できる。
【0093】
この実施の形態においては、収納ケース、現金の真贋や金種を判定するセンサ106a、分別機構、搬送機構などにより構成される入出金部106、および、これらを制御するCPU201、ROM202、RAM203によって、現金収納部402の機能を実現することができる。
【0094】
指示受付部403は、たとえば、所定額の現金を出金する出金指示や、現金の入金を受け付ける入金指示の操作を受け付ける。また、指示受付部403は、出金指示とともに、出金する現金の額を指定する操作を受け付ける。出金指示は、あらかじめ指定された指定額の出金を指示するものであってもよい。指定額は、「1000円」、「1万円」などのように、現金取扱装置100を管理する金融機関などによって任意に設定することができる。この場合、利用者は、出金指示の操作をおこなうだけの簡易な操作によって、指定額の現金を手にすることができる。
【0095】
また、指示受付部403は、たとえば、金融機関において、金融機関の従業員などが収納ケースに現金を補充した場合に、補充した現金の額、あるいは、現金を補充した時点において収納ケースに収納されている現金の額を入力する操作を受け付ける。これにより、センサ106aによって検知されない、入出金口106cを経由せずに収納ケースから現金が出し入れされた場合にも、収納ケースに収納される現金の額を常に正確に管理することができる。
【0096】
この実施の形態においては、操作部108、および、操作部108を制御するCPU201、ROM202、RAM203によって、指示受付部403の機能を実現することができる。さらに、指示受付部403の機能は、操作部108の操作位置を案内する表示部107を含めて実現されるものであってもよい。
【0097】
出金制御部404は、指示受付部403が出金指示を受け付けた場合、当該出金指示に基づいて、当該現金収納部402に収納された現金のうち所定額の現金を出金するよう現金収納部402を駆動制御する。具体的には、出金制御部404は、CPU201から現金収納部402を構成する各部に対して制御信号を出力することにより、出金指示によって特定される額の現金を計数し、計数した現金を入出金口106cから現金収納部402の外へ送り出す。この実施の形態においては、CPU201、ROM202、RAM203によって、出金制御部404の機能を実現することができる。
【0098】
入金受付部405は、現金収納部402に対する現金の入金を受け付ける。具体的には、たとえば、操作部108が入金指示の操作を受け付け、かつ、センサ106aが入出金口106cにおける現金を検知した場合に、センサ106aからの出力信号に基づいてCPU201によって金種を判定するとともに入金された現金の額を計数し、さらに、CPU201から現金収納部402を構成する各部に対して制御信号を出力し、入金された正規の現金を入出金口106cから現金収納部402内へ搬送する。この実施の形態においては、入出金部106、操作部108、CPU201、ROM202、RAM203などによって、入金受付部405の機能を実現することができる。
【0099】
現金額計数部406は、出金制御部404の駆動制御によって現金が出金されるごとに、出金制御部404の駆動制御によって出金された現金の額に基づいて、現金収納部402に収納されている現金の額を計数する。出金指示に基づいて出金した現金の額と、出金する前に現金収納部402が収納していた現金の額と、に基づいて、現金収納部402によって収納される現金の額を計数する。上記の現金残高管理部401は、現金額計数部406によって計数された現金に基づいて、現金収納部402に収納されている現金の残高(現金の額)を管理する。
【0100】
また、現金額計数部406は、入金受付部405によって現金の入金が受け付けられるごとに、現金収納部402によって収納される現金の額を計数する。現金額計数部406は、現金の入金に際して入金受付部405によって受け付けられた、入金された現金の額と、入金を受け付ける前に現金収納部402が収納していた現金の額と、に基づいて、現金収納部402によって収納される現金の額を計数する。この実施の形態においては、CPU201、ROM202、RAM203などによって、現金額計数部406の機能を実現することができる。
【0101】
上記のように、現金取扱装置100においては、金融機関において、金融機関の従業員などが収納ケースに現金を補充した場合、補充した現金の額、あるいは、現金を補充した時点において収納ケースに収納されている現金の額が入力されるため、現金額計数部406による現金の額の計数に際しては、入金された現金の額と、入力された額とを考慮する。
【0102】
判断部407は、現金額計数部406によって計数された現金の額に基づいて、現金収納部402に収納されている現金の額が所定の下限額を下回ったか否かを判断する。所定の下限額は、現金取扱装置100に対する入金が必要と判断される額であって、たとえば、現金取扱装置100を管理する金融機関などによって任意に設定することができる。また、たとえば、出金指示に応じて出金する現金の額が指定額とされている場合、指定額を所定の下限額とすることができる。この実施の形態においては、CPU201、ROM202、RAM203などによって、判断部407の機能を実現することができる。
【0103】
現金取扱装置100は、出金のみをおこなう態様で用いてもよい。このように現金取扱装置100を出金のみをおこなう態様で用いる場合、判断部407は、出金制御部404の駆動制御によって出金された現金の額に基づいて、現金収納部402に収納されている現金の額が所定の下限額を下回ったか否かを判断する。
【0104】
また、判断部407は、現金額計数部406によって計数された現金の額に基づいて、現金収納部402に収納されている現金の額が所定の上限額を上回ったか否かを判断する。所定の上限額は、現金取扱装置100に対する入金が必要と判断される額であって、たとえば、現金取扱装置100を管理する金融機関などによって任意に設定することができる。
【0105】
喚起部408は、判断部407によって判定された判定結果に基づいて、現金収納部402に収納されている現金の額が所定の下限額を下回った場合、自装置に対する入金を喚起する。喚起部408は、たとえば、自装置から所定範囲内に存在する利用者の端末装置300を介して、自装置の存在および自装置への入金要求を報知することにより、自装置に対する入金を喚起する。具体的には、たとえば、上記のようにminorに自装置のIDと入金要求とを含むビーコン情報を、無線信号送出部210から送出し、当該ビーコン情報を受信した利用者の端末装置300において、自装置に対する入金を要求するメッセージを表示させることによって自装置に対する入金を喚起することができる。
【0106】
あるいは、喚起部408は、所定の金融機関への移動を喚起することにより、自装置に対する入金を喚起するものであってもよい。具体的には、たとえば、残高メータ110を実現する表示装置に、現金取扱装置100が現時点で収納している現金の額、あるいは、上記の割合を、メータ(インジケータ)状に表示することによって、自装置に対する入金を喚起することができる。
【0107】
また、喚起部408は、現金額計数部406によって計数された現金の額に基づいて、現金収納部402に収納されている現金の額が所定の上限額を上回ったと判断した場合、自装置から所定範囲内に存在する利用者の端末装置300を介して、自装置の存在および自装置からの出金要求を報知する。喚起部408は、たとえば、上記の入金要求の報知と同様に、自装置から所定範囲内に存在する利用者の端末装置300を介して、自装置の存在および自装置への出金要求を報知することにより、自装置からの出金を喚起する。この実施の形態においては、残高メータ110、CPU201、ROM202、RAM203などによって、喚起部408の機能を実現することができる。
【0108】
(現金取扱装置100の処理手順)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100の処理手順について説明する。図5図6および図7は、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100の処理手順を示すフローチャートである。図5のフローチャートに示した処理手順は、現金取扱装置100の電源をON状態とする操作を受け付けた場合に開始される。
【0109】
図5のフローチャートにおいて、まず、起動処理をおこなう(ステップS501)。ステップS501においては、たとえば、ブートプログラムの起動、各センサ106aの接続状態の確認などをおこなう。つぎに、メモリ208を参照して、前回電源OFF時の状態を抽出する(ステップS502)。
【0110】
つぎに、ステップS502において抽出した、前回電源OFF時の状態に基づいて、前回電源をOFFする入力操作を受け付けた時点において、筐体101から収納ケースが取り外されていたか否かを判断する(ステップS503)。ステップS503において、前回電源をOFFする入力操作を受け付けた時点において、筐体101から収納ケースが取り外されていなかった、すなわち、収納ケースが筐体101に取り付けられた状態で電源をOFFした場合(ステップS503:No)、一連の処理を終了する。
【0111】
一方、ステップS503において、前回電源をOFFする入力操作を受け付けた時点において、筐体101から収納ケースが取り外されていた場合(ステップS503:Yes)、筐体101に収納ケースが取り付けられるまで待機する(ステップS504:No)。そして、ステップS504において、筐体101に収納ケースが取り付けられた場合(ステップS504:Yes)、後述する図6におけるステップS604へ移行する。
【0112】
図6のフローチャートに示した処理は、現金取扱装置100の電源がONされている間、常時実行される。図6のフローチャートにおいて、まず、筐体101から収納ケースが取り外されたか否かを判断する(ステップS601)。ステップS601においては、たとえば、筐体101に対して収納ケースが取り付けられているか否かに応じて出力が変化する、図示を省略する着脱センサからの出力信号に基づいて、筐体101から収納ケースが取り外されたか否かを判断することができる。
【0113】
ステップS601において、筐体101から収納ケースが取り外されていない場合(ステップS601:No)、取り外されたと判断するまで待機する。一方、ステップS601において、筐体101から収納ケースが取り外された場合(ステップS601:Yes)、表示部107を駆動制御して、当該表示部107に、「収納ケースが取り外されています」などのメッセージを表示する(ステップS602)。ステップS602においては、たとえば、表示部107に、「収納ケースが取り外されています。ご確認ください。」などのメッセージを表示してもよい。
【0114】
つぎに、ステップS601:Yesにおいて筐体101から取り外されたと判断された収納ケースが筐体101に取り付けられたか否かを判断する(ステップS603)。ステップS603においては、上述したステップS601と同様に、着脱センサからの出力信号に基づいて、筐体101に収納ケースが取り付けられたか否かを判断することができる。ステップS603において、収納ケースが筐体101に取り付けられていない場合(ステップS603:No)、ステップS607へ移行する。
【0115】
一方、ステップS603において、収納ケースが筐体101に取り付けられた場合(ステップS603:Yes)、表示部107を駆動制御して、当該表示部107に、「金額を入力してください」などのメッセージを表示する(ステップS604)。ステップS604においては、たとえば、表示部107に、「現在、収納ケースに収納されている現金の合計額を入力してください」などのメッセージを表示してもよい。
【0116】
また、ステップS604においては、「金額を入力してください」などのメッセージとともに、収納ケースに収納されている現金の額の入力欄を表示してもよい。これにより、現金取扱装置100を運搬し取り扱う者は、収納ケースに収納されている現金の額の入力が求められていることを容易に理解することができ、入力を失念することにより、以降、収納ケースに収納されているとして記憶する現金の額が、実際に収納ケースに収納されている現金の額と相違してしまうことを回避できる。
【0117】
つぎに、収納ケースに収納されている現金の額の入力を受け付けたか否かを判断する(ステップS605)。ステップS605においては、たとえば、上記のように、「金額を入力してください」などのメッセージとともに表示部107に表示した、収納ケースに収納されている現金の額の入力欄への数字の入力および確定の操作を受け付けたか否かを判断することによって、収納ケースに収納されている現金の額の入力を受け付けたか否かを判断することができる。
【0118】
これにより、一旦、筐体101から取り外されて、再度取り付けられた収納ケースに収納されている現金の額が、実際に収納ケースに収納されている現金の額と相違してしまうことにより、以下に説明する「入金の要求」や「出金の要求」を送出するタイミングが遅くなり、現金取扱装置100の有用性が低下することを防止できる。
【0119】
ステップS605において、一旦、筐体101から取り外されて、再度取り付けられた収納ケースに収納されている、現在の現金の額の入力を受け付けた場合(ステップS605:Yes)、現金取扱装置100が収納している現在の現金の額を更新して(ステップS606)、一連の処理を終了する。ステップS606においては、たとえば、メモリ208における、現在の現金の額を更新する。
【0120】
ステップS607においては、基準となる時点から、所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS607)。たとえば、ステップS605において、現在の現金の額の入力を受け付けていない場合(ステップS605:No)、ステップS607においては、ステップS603:Yesにおいて収納ケースが筐体101に取り付けられてから所定時間が経過したか否かを判断する。あるいは、たとえば、ステップS603において収納ケースが筐体101に取り付けられていない場合(ステップS603:No)、ステップS607においては、収納ケースが筐体101に取り付けられてから所定時間が経過したか否かを判断する。
【0121】
ステップS607において、所定時間が経過した場合(ステップS607:Yes)、ブザー204を制御してブザー音声を出力し(ステップS608)、現金取扱装置100に対する、ブザー204の出力を解除する解除操作を受け付けるまで待機する(ステップS609:No)。ブザー204の出力を解除する解除操作を受け付けるまでは、ステップS608に戻り、ブザー204の出力を継続する。このように、ブザー204の出力を解除する解除操作を受け付けるまでは、ブザー204の出力を継続しておこなうことにより、現金取扱装置100を不正に使用する者を排除し、セキュリティ性の確保を図ることができる。ステップS609において、解除操作を受け付けた場合(ステップS609:Yes)、ブザー204の出力を解除するなどの所定の処理をおこなって一連の処理を終了する。
【0122】
一方、ステップS607において、所定時間が経過していない場合(ステップS607:No)、現金取扱装置100に対して電源OFFの操作があったか否かを判断する(ステップS610)。ステップS610においては、基準となる時点から、所定時間が経過するまでの間に、現金取扱装置100に対する電源OFFの操作があったか否かを判断する。
【0123】
ステップS610において、基準となる時点から、所定時間が経過するまでの間に、現金取扱装置100に対する電源OFFの操作があった場合(ステップS610:Yes)、電源OFFの操作があった時点における現金取扱装置100の状態を記憶し(ステップS611)、その後現金取扱装置100の電源をOFFにして(ステップS612)、一連の処理を終了する。
【0124】
一方、ステップS610において、基準となる時点から、所定時間が経過するまでの間に、現金取扱装置100に対する電源OFFの操作がない場合(ステップS610:No)、収納ケースが筐体101に取り付けられているか否かを判断する(ステップS613)。ステップS613において、収納ケースが筐体101に取り付けられている場合(ステップS613:Yes)、ステップS604へ移行して、現金の額の入力を待機する。一方、ステップS613において、収納ケースが筐体101に取り付けられていない場合(ステップS613:No)、ステップS602へ移行して、収納ケースが筐体101から取り外されている旨のメッセージを表示部107に表示する。
【0125】
図7のフローチャートにおいて、まず、利用者の識別情報を取得したか否かを判断する(ステップS701:No)。ステップS701においては、たとえば、カードリーダ103の読み取り結果に基づいて、金融機関が発行したキャッシュカードなどのカードに記憶された利用者の識別情報を取得したか否かを判断する。ステップS701において、利用者の識別情報を取得していない場合(ステップS701:No)、ステップS703へ移行する。
【0126】
ステップS701において、利用者の識別情報を取得した場合(ステップS701:Yes)、ステップS701:Yesにおいて取得された利用者の識別情報を記憶する(ステップS702)。ステップS702においては、利用者の識別情報の記憶に先立ち、まず、ステップS701:Yesにおいて取得された利用者の識別情報に基づいて、認証処理をおこなう。
【0127】
認証処理は、ステップS701:Yesにおいて取得された利用者の識別情報が、正規な(金融機関に口座を開設している)利用者の識別情報であるか否かを判断する。具体的には、たとえば、利用者の識別情報を取得するごとに、取得された利用者の識別情報の認証要求を、金融機関のサーバコンピュータに対して送信する。そして、当該認証要求に応じてサーバコンピュータから送信される認証応答を受信し、受信した認証応答に基づいて、ステップS701:Yesにおいて取得された利用者の識別情報にかかる入金あるいは出金の処理を許可するか否かを判断する。
【0128】
そして、ステップS702においては、たとえば、認証処理の結果、入金あるいは出金の処理を許可すると判断した利用者の識別情報のみを記憶する。あるいは、ステップS702においては、たとえば、認証処理の結果と関連付けて、ステップS701:Yesにおいて取得された利用者の識別情報をすべて記憶してもよい。
【0129】
また、ステップS702においては、ステップS701:Yesにおいて取得された利用者の識別情報をメモリ208に記憶してもよいし、RAM203に記憶してもよい。RAM203に記憶する場合、図7のフローチャートに示した処理の途中で停電が発生した場合、記憶した情報が消えてしまうことが想定される。このため、ステップS702においては、ステップS701:Yesにおいて取得された利用者の識別情報は、メモリ208に記憶することが好ましい。
【0130】
なお、たとえば、利用者の識別情報と当該利用者に関する情報とを関連付けた利用者データベースなどのように、利用者の識別情報に基づいて利用者を特定可能なデータを、現金取扱装置100のメモリに記憶しておき、この利用者データベースを参照して、現金取扱装置100内で認証処理をおこなってもよい。これにより、たとえば、通信I/F211による通信圏外においても、認証処理を確実におこなうことができる。
【0131】
つぎに、操作部108からの出力信号に基づいて、現金取扱装置100に対する入金を指定する操作を受け付けたか否かを判断する(ステップS703)。ステップS703において、現金取扱装置100に対する入金を指定する操作を受け付けた場合(ステップS703:Yes)、再度、利用者の識別情報を取得したか否かを判断する(ステップS704)。ステップS704においては、利用者の識別情報を取得したことを確認するまで待機する(ステップS704:No)。
【0132】
ステップS704において、利用者の識別情報を取得した場合(ステップS704:Yes)、取得した利用者の識別情報を記憶する(ステップS705)。ステップS705においては、上記のステップS702と同様に、利用者の識別情報の記憶に先立って、取得した利用者の識別情報の認証処理をおこなう。そして、認証処理の結果、許可された利用者の識別情報にかかる取り引きをおこなう。ステップS704、ステップS705の処理により、たとえ、上記のステップS701において利用者の識別情報を取得する前に、入金を指定する操作を受け付けた場合にも、確実に利用者の識別情報を取得することができる。
【0133】
つぎに、センサ106aの出力信号が変化したか否かを判断する(ステップS706)。上記のように、センサ106aからの出力信号は、当該センサ106aの検知範囲にある現金の有無に応じて変化するため、入金を指定する操作を受け付けた後のセンサ106aの出力信号の変化の有無に基づいて、現金取扱装置100に対して現金が入金されたか否かを判断することができる。ステップS706においては、センサ106aの出力信号が、現金が入金されたと判断しうる、所定量以上変動したか否かを判断する。ステップS706において、センサ106aの出力信号が変化していない場合(ステップS706:No)、センサ106aの出力信号が変化するまで待機する。
【0134】
ステップS706において、センサ106aの出力信号が変化した場合(ステップS706:Yes)、当該出力信号の変化に基づいて、ステップS706:Yesにおいて入力された現金の真贋を判定する(ステップS707)。ステップS707においては、たとえば、センサ106aの出力信号の変化のパターンや変化量が、測定などにより既知のパターンおよび変化量に合致するか否かを判断することにより、ステップS706:Yesにおいて入力された現金の真贋を判定することができる。
【0135】
つぎに、ステップS707における真贋の判定結果に基づいて、ステップS706:Yesにおいて入力された現金が正規の貨幣であるか否か判定する(ステップS708)。ステップS708において、ステップS706:Yesにおいて入力された現金が正規の貨幣である場合(ステップS708:Yes)、当該現金の金種を特定する(ステップS709)。
【0136】
ステップS709においては、たとえば、ステップS707における真贋の判定結果に際しての、センサ106aの出力信号の変化のパターンや変化量に基づいて、当該センサ106aの出力信号の変化のパターンや変化量が、測定などにより既知のパターンおよび変化量に合致するか否かを判断することによって、金種を特定することができる。
【0137】
つぎに、ステップS709において特定した、ステップS706:Yesにおいて入力された現金の金種に基づいて、モータを正転駆動する(ステップS710)。ステップS710においては、モータを正転駆動することによって、ステップS706:Yesにおいて入力された現金を、収納ケース内へ搬送することができる。
【0138】
現金取扱装置100においては、ステップS710において現金を収納ケース内に搬送(入金)した後、明細票を発行してもよい。明細書には、たとえば、入金した日時や場所に関する情報を印刷する。入金した日時「いつ」や場所「どこで」を明細書に印刷して記録に残すことにより、現金取扱装置100の利用者を安心させることができる。
【0139】
そして、ステップS709において特定した現金の金種に基づいて、現金取扱装置100が収納する現金の額を更新する(ステップS711)。ステップS711においては、たとえば、ステップS709において特定した現金の金種に基づいて、ステップS706:Yesにおいて入金された現金の額を算出し、算出した額を、現金取扱装置100が収納する現金の額として記憶していた数値に加算することによって、現金取扱装置100が収納する現金の額を更新する。
【0140】
また、ステップS701:YesあるいはステップS704:Yesにおいて取得された利用者の識別情報と、入金された現金の額とを関連付けた取引情報を記憶する(ステップS712)。ステップS712においては、たとえば、ステップS709において特定した現金の金種に基づいて、入金された現金の額を算出することができる。また、ステップS712においては、ステップS710において現金を搬送している際に、紙幣番号読取部206によって読み取った紙幣番号を、ステップS701:YesあるいはステップS704:Yesにおいて取得された利用者の識別情報に関連付けて、取引情報として記憶する。
【0141】
つぎに、ステップS711において更新した現金の額、すなわち、現金取扱装置100における現在の現金の額が、所定の上限額を上回ったか否かを判断する(ステップS713)。ステップS713において、現金取扱装置100における現在の現金の額が、所定の上限額を上回った場合(ステップS713:Yes)、出金要求を出力して(ステップS714)、一連の処理を終了する。
【0142】
ステップS714においては、たとえば、自装置から所定範囲内に存在する利用者の端末装置300を介して、自装置の存在および自装置からの出金要求を報知することによって出金要求を出力する。具体的には、ステップS714においては、たとえば、上記のようにminorに自装置のIDと出金要求とを含むビーコン情報を、無線信号送出部210から送出することによって出金要求を出力する。これにより、ビーコン情報を受信した利用者の端末装置300において、自装置からの出金を要求するメッセージを表示させることによって自装置からの出金を喚起することができる。
【0143】
また、ステップS714においては、金融機関に開設した利用者自身の預金口座からの出金に限らず、キャッシングの利用を要求する出金要求を出力してもよい。現金取扱装置100が出力した出金要求に応じてキャッシングをおこなった利用者については、キャッシングの利率を低下させる運用をおこなってもよい。低下させる利率は、金融機関側で任意に設定することができる。
【0144】
ステップS713において、現金取扱装置100における現在の現金の額が、所定の上限額を上回っていない場合(ステップS713:No)、現金取扱装置100における現在の現金の額が、所定の下限額を下回ったか否かを判断する(ステップS715)。ステップS715において、現金取扱装置100における現在の現金の額が、所定の下限額を下回っていない場合(ステップS715:No)、一連の処理を終了する。一方、ステップS715において、現金取扱装置100における現在の現金の額が、所定の下限額を下回った場合(ステップS715:Yes)、入金要求を出力して(ステップS716)、一連の処理を終了する。
【0145】
ステップS716においては、たとえば、自装置から所定範囲内に存在する利用者の端末装置300を介して、自装置の存在および自装置に対する入金要求を報知することによって入金要求を出力する。具体的には、ステップS716においては、たとえば、上記のようにminorに自装置のIDと入金要求とを含むビーコン情報を、無線信号送出部210から送出することによって入金要求を出力する。これにより、ビーコン情報を受信した利用者の端末装置300において、自装置に対する入金を要求するメッセージを表示させることによって自装置に対する入金を喚起することができる。
【0146】
また、ステップS716においては、入金要求に応じて現金取扱装置100を利用した利用者に対しては、次回の取り引きにおける手数料を割り引く手数料割引サービスなど、各種のサービスの提供があることを案内する情報を含む入金要求を出力してもよい。提供される各種のサービスとしては、たとえば、現金取扱装置100が備える電源から、利用者の端末装置300(スマートフォンや携帯型電話機など)への充電をおこなうサービスなどであってもよい。
【0147】
ステップS708において、ステップS706:Yesにおいて入力された現金が正規の貨幣ではない場合(ステップS708:No)、ブザー204を駆動制御して、ブザー音声を出力する(ステップS717)。ブザー204の出力は、ブザー204の出力を停止させる所定の解除操作を受け付けるまで(ステップS718:No)、継続しておこなう。ステップS718において、解除操作を受け付けた場合(ステップS718:Yes)、一連の処理を終了する。
【0148】
解除操作は、複数のキーを所定の順序で操作するような複雑な内容とすることができる。これにより、解除するまでに或る程度の時間を要し、現金取扱装置100に偽札が入金されそうになっていることを、現金取扱装置100の周囲に知らせることができる。不正の意図がない利用者の場合、ブザー204が出力されても動揺することなく、取り引きが完了するまでその場にいると考えられるが、不正の意図がある利用者の場合、ブザー204が出力されると当該ブザー204を停止させようとして操作部108などに触れることが想定される。これにより、偽札を流通させる不正行為者の指紋などを採ることができる。
【0149】
ステップS708において、入力された現金が正規の貨幣ではない場合は、ブザー204の出力とあわせて、カメラ207を駆動し、現金取扱装置100の周囲を撮影するようにしてもよい。これにより、不正がおこなわれた現場の様子や、当該不正に関与している利用者の画像を取得することができる。ステップS708において、入力された現金が正規の貨幣ではない場合は、ブザー204の出力とあわせて、金融機関のサーバや警察のサーバなどに偽札の使用があることを通知するようにしてもよい。
【0150】
金融機関のサーバや警察のサーバなどに偽札の使用があることを通知する場合、ブザー204の出力に代えて、表示部107における表示内容を、たとえば「現金を計数しています。お待ちください。」などのように、正常に処理をしているようなメッセージを表示してもよい。これにより、金融機関から応援が来たり、警察から派遣された警察官が到着するまでの時間を確保することができ、警察官などが到着するまでの間、偽札を流通させようとしている不正行為者を、現金取扱装置100の周辺にとどめておくことができる。
【0151】
ステップS703において、現金取扱装置100に対する入金を指定する操作を受け付けていない場合(ステップS703:No)、現金取扱装置100に対する出金を指定する操作を受け付けたか否かを判断する(ステップS719)。ステップS719において、出金を指定する操作は、出金の処理を指定する操作、および、当該出金の処理において出金する現金の額を指定する操作を含む。
【0152】
現金取扱装置100においては、処理1回あたりの出金額を一定の指定額に固定してもよい。この場合、出金を指定する操作は、出金の処理を指定する操作のみでよく、当該出金の処理において出金する現金の額を指定する操作は含まない。これにより、出金の操作にかかる処理を簡易化することができる。
【0153】
ステップS719において、現金取扱装置100に対する出金を指定する操作を受け付けていない場合(ステップS719:No)、ステップS701へ移行する。一方、ステップS719において、現金取扱装置100に対する出金を指定する操作を受け付けた場合(ステップS719:Yes)、再度、利用者の識別情報を取得したか否かを判断する(ステップS720)。ステップS720においては、利用者の識別情報を取得したことを確認するまで待機する(ステップS720:No)。
【0154】
そして、利用者の識別情報を取得した場合(ステップS720:Yes)、取得した利用者の識別情報を記憶する(ステップS721)。ステップS720、ステップS721の処理により、上記のステップS704、ステップS705の処理と同様に、たとえば、上記のステップS701において利用者の識別情報を取得する前に、入金を指定する操作を受け付けた場合にも、確実に利用者の識別情報を取得することができる。
【0155】
つぎに、ステップS719:Yesにおいて受け付けた出金を指定する操作に基づいて、モータを逆転駆動する(ステップS722)。ステップS722においては、出金を指定する操作において指定された現金の額を、収納ケースから入出金口106cに搬送し、入出金口106cから出金するためにモータを逆転駆動する。そして、ステップS711へ移行する。
【0156】
現金取扱装置100においては、ステップS722において現金を収納ケースから搬送(出金)した後、明細票を発行してもよい。明細書には、たとえば、出金した日時や場所に関する情報を印刷する。出金した日時「いつ」や場所「どこで」を明細書に印刷して記録に残すことにより、現金取扱装置100の利用者を安心させることができる。
【0157】
図7のステップS712において記憶された取引情報は、現金取扱装置100が金融機関のサーバと通信をおこなうことによって当該サーバに転送される。サーバは、現金取扱装置100から転送された取引情報に基づいて、取り引きをおこなった利用者を特定し、特定された利用者の識別情報に、入金された現金の額に関する情報や取り引きがおこなわれた日時に関する情報などを関連付けて、所定のデータベースに記憶する。
【0158】
現金取扱装置100からサーバへの取引情報の転送は、たとえば、金融機関の従業員などが金融機関に現金取扱装置100を持ち込み、当該金融機関に設置されているサーバ(あるいはサーバに接続された別のコンピュータ装置(店舗別サーバなど))と現金取扱装置100とを有線接続した状態でおこなうことができる。この場合、サーバから現金取扱装置100に対して、転送を指示する情報を出力し、現金取扱装置100からの取引情報の転送は、サーバからの指示に基づいてのみおこなわれるようにしてもよい。これにより、現金取扱装置100が記憶する取引情報が不用意に外部に流出することを防止し、現金取扱装置100においておこなう取り引きの安全性や信頼性を確保することができる。
【0159】
あるいは、現金取扱装置100から金融機関のサーバへの取引情報の転送は、たとえば、現金取扱装置100から無線通信を介しておこなわれるものであってもよい。これにより、たとえば、該当する金融機関が周辺にない地域において現金取扱装置100を用いた取り引きをおこなう場合にも、転送情報を金融機関のサーバに転送することができる。無線通信を介して取引情報を転送する場合、現金取扱装置100は、取引情報を暗号化してから転送する。
【0160】
この実施の形態の現金取扱装置100は、取り引きにかかる情報を記録した明細票の発行をおこなわない。運用上、取り引きにかかる情報は、利用者が、別途インターネットなどを介して所定のウェブページにおいて確認することができるものとする。明細票の発行をおこなわない運用とすることにより、明細票の発行にかかる印刷機構や被記録媒体などを不要とすることができる。これにより、現金取扱装置100の軽量化および小型化を図ることができる。
【0161】
なお、現金取扱装置100は、取り引きをおこなうごとに、当該取り引きにかかる情報を記録した明細票を発行するものであってもよい。この場合、現金取扱装置100は、明細票の発行にかかる印刷機構や被記録媒体などを、上記の構成に加えてさらに備える。取り引きをおこなうごとに当該取り引きにかかる情報を記録した明細票を発行することにより、利用者に、取り引きが正常におこなわれたことを証明することができ、利用者を安心させることができる。
【0162】
移動式の現金取扱装置100は、金融機関などの店舗から離れた場所において、現金を取り扱う取り引きをおこなう。このため、利用者によっては、取り引きの安全性に不安をもつことが想定される。この実施の形態の現金取扱装置100において、取り引きにかかる情報を記録した明細票を発行することにより、取り引きの証拠となる書類を利用者に渡すことができる。これにより、利用者を安心させることができる。
【0163】
なお、この実施の形態においては、入出金口106cに対して、単数の貨幣が現金として入金される場合を想定して処理をおこなう例について説明したが、現金取扱装置100は、一度に複数の貨幣の入金を受け付け可能なものであってもよい。具体的には、たとえば、紙幣の入金を受け付ける入出金口106cの近傍に、紙幣を1枚ずつ繰り出すためのローラを設け、複数枚の紙幣が重ねた状態で入出金口106cに入金された場合には当該ローラによって1枚ずつ繰り出し、上記の真贋の判定や金種の特定を紙幣1枚ずつおこなうようにしてもよい。そして、入出金口106cに挿入された現金がなくなった場合に、入金額を確定するようにしてもよい。
【0164】
この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100は、利用できる場所や時間を制限するようにしてもよい。たとえば、現金取扱装置100において、当該現金取扱装置100が稼働する場所(範囲)や時間(時間帯)などの稼働条件をあらかじめ設定しておく。現金取扱装置100は、電源がON状態とされている間、あらかじめ設定された稼働条件に該当するか否かを判断する。そして、あらかじめ設定された稼働条件に合致する場合に、入金の処理や出金の処理をおこなう。
【0165】
また、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100は、GPSを備えているため、自装置の位置や現在時刻を正確に認識することができる。これにより、上記のように利用できる場所や時間を制限する運用において、現金取扱装置100を稼働条件に忠実に動作させることができる。なお、自装置の位置や現在時刻の認識は、GPSに限るものではない。たとえば、既設のATMが備えるセンサ106aや、既存のWIFIを利用して自装置の位置や現在時刻を認識するものであってもよい。
【0166】
この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100は、上述した実施の形態で説明した構成に加えて、入金された現金(紙幣)にマーキングを施す、マーキング機構を備えていてもよい。マーキング機構は、現金取扱装置100に入金された現金に対してマーキングをおこなうスタンプと、当該スタンプに用いるインクを貯留するインクタンクと、を備えて構成することができる。マーキング機構が用いるインクは、たとえば、アルコールや有機溶剤(シンナー)などの汎用性の高い溶剤では消すことができない特殊なインクとする。これにより、現金取扱装置100に入金された現金を容易かつ確実に区別することができる。
【0167】
また、現金取扱装置100は、現金取扱装置100から出金する現金(紙幣)から、マーキング機構のスタンプによって施したマーキング(スタンプ)を消去する、マーキング消去機構を備えていてもよい。マーキング消去機構は、現金取扱装置100から出金される現金に、マーキング機構によってなされたマーキングを消去するための消去用インクを塗布する塗布機構や、当該塗布機構に用いるインクを貯留するインクタンクと、を備えて構成することができる。これにより、現金取扱装置100に入金された現金であっても、出金された後は、その他の通常流通している現金と同じに戻すことができる。
【0168】
このように、マーキング機構およびマーキング消去機構を備えることにより、現金取扱装置100内に収納されている現金を、その他通常流通している現金と区別することができる。これにより、現金取扱装置100ごと盗難されて、収納ケースをこじ開けて現金を入手した場合、当該現金にはマーキング機構によるマーキング(スタンプ)がなされたままであるため、当該現金が不正に入手した現金であることを容易かつ確実に特定することができる。
【0169】
(別の現金取扱装置100の外観)
図8は、この発明にかかる別の実施の形態の現金取扱装置100の外観を示す説明図である。図8においては、図1に示した現金取扱装置100とは外観の異なる現金取扱装置100を示している。図8において、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100は、筐体101を開いた状態において筐体101の側方部分を覆う、覗き見防止壁801を備えていてもよい。
【0170】
覗き見防止壁801は、筐体101の開閉に連動して、筐体101が開いた状態にある場合は図8に示したように筐体101の側方を覆い、筐体101が閉じられた状態にある場合は筐体101内で折り畳まれる。これにより、筐体101を開閉するだけで、表示部107が周囲から見られないようにするための覗き見防止壁801を容易に設営することができ、当該覗き見防止壁801を容易に収納することができる。
【0171】
上述した実施の形態においては、アタッシュケース状の、金融機関の従業員などが手に提げて運搬できる現金取扱装置100について説明したが、現金取扱装置100の形状はこれに限るものではない。たとえば、底部にキャスターを備えた、キャリーバッグ状の外観をなす現金取扱装置100であってもよい。
【0172】
このような現金取扱装置100とする場合、当該現金取扱装置100を金融機関の従業員などが手に提げて運搬する必要がないので、バッテリを大型化することができる。また、この場合、手動発電機構(ダイナモを回転させるハンドルなど)を搭載していてもよい。また、この場合、キャリーバッグ状の外観をなす現金取扱装置100の外壁面にソーラーパネルを取り付けてもよい。あるいは、高速充電機能を備えていてもよい。
【0173】
(現金取扱装置100の利用場面)
つぎに、現金取扱装置100の利用場面について説明する。上述した実施の形態において説明した現金取扱装置100を含み、この発明にかかる現金取扱装置100は、たとえば、イベント会場において利用することができる。イベント会場において利用する場合、現金取扱装置100は、たとえば、イベント会場への入り口周辺に設置することが好ましい。これにより、イベントに参加するため気持ちが高まっている利用者に、当該イベントをより楽しんでもらうべく、資金調達の容易性の観点から利用者を支援することができる。
【0174】
また、この発明にかかる現金取扱装置100は、たとえば、ホテルなどの宿泊施設において利用することができる。具体的には、たとえば、ホテルなどの宿泊施設のフロントにおいて利用することができる。これにより、利用者は、フロントチェックの順番を待っている間などに、入金や出金をおこなうことができる。
【0175】
また、具体的には、たとえば、ホテルなどの宿泊施設におけるルームサービスにおいて利用することができる。これにより、利用者は、宿泊施設に滞在期間中はいつでも都合のよいタイミングで自室にホテルマンなどを呼んで、自室において入金や出金をおこなうことができる。
【0176】
また、この発明にかかる現金取扱装置100は、たとえば、家電量販店、観光バス/長距離バス、カジノ、葬祭会場など、各種の場所において利用することができる。この発明にかかる現金取扱装置100を、たとえば、近年増加する外国人観光客が大量に商品を購入する家電量販店に設置した場合、外国人観光客に、どこにあるかわからないATMを探して時間を浪費させることなく、直ちに現金を入手させることができる。これによって、店舗の売り上げ向上を期待することができる。
【0177】
外国人観光客の利用を想定した場合、表示部107においては、外国語で表示してもよく、さらに、外国人観光客が自国の金融機関で開設している預金口座から、日本円に換算した現金を取得できるようにしてもよい。この場合、表示部107に、換算レートや、換算にかかるサービス料などをあわせて表示してもよい。
【0178】
また、この発明にかかる現金取扱装置100は、たとえば、店舗の売り上げを収納する仮の金庫のように用いてもよい。これにより、店舗の売り上げを、当該店舗において金融機関に仮設した預金口座に入金することができ、かつ、入金した現金のセキュリティ性を確保することができる。
【0179】
カジノにおいて利用する場合は、現金で出金されるものではなく、当該カジノにおいて流通するコインを払い出すようにしてもよい。あるいは、軽量化を図るため、コインに相当する金券としてのクーポンを発行するようにしてもよい。これにより、クーポンの発行にかかる印刷機構などを別途追加するものの、大量の現金を移動させることなく、直ちに現金が入手できるという利便性を提供することができる。
【0180】
また、葬祭会場において使用する場合は、現金を直接出金するのではなく、不祝儀袋に入れた状態の現金を出金するようにしてもよい。さらに、不祝儀袋に氏名を印刷するようにしてもよい。これにより、不祝儀袋を保持したり、当該不祝儀袋に氏名を印刷するための印刷機構などを別途追加するものの、常設されていない葬祭会場において現金の入金や出金をおこなうことができるという高い利便性を提供することができる。
【0181】
上述したように、この発明にかかる現金取扱装置100は、小型のATMであって、ATMと同等のサービスを場所を制限することなく提供することができる。この発明にかかる現金取扱装置100を利用することにより、「ATMに行く」という発想から「ATMが来る」、「ATMがどこにでもある」という発想への転換を促すことができ、生活における利便性の向上を図ることができる。
【0182】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100は、現金を収納して、可搬性を備え、出金した現金の額が所定の下限額を下回った場合、自装置に対する入金を喚起するようにしたことを特徴としている。
【0183】
この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100によれば、たとえば、被災地などのように既設のATMが使用できない場所や、イベント会場などのように常時ATMが設置されていない場所において、利用者に現金を出金させることができる。これにより、利用者自身が、現金を手にするために移動することが難しい状況においても、当該利用者に現金を手にさせることができ、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【0184】
また、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100は、自装置から所定範囲内に存在する利用者の端末装置300を介して、自装置の存在および自装置への入金要求を報知することにより、自装置に対する入金を喚起するようにしたことを特徴としている。
【0185】
この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100によれば、現金取扱装置100が収納する現金が所定の下限額を下回った場合には、自装置の周囲の利用者に入金を呼びかけることで、再び現金取扱装置100の利用を可能とすることができる。これにより、可搬性を高めるため小型化した現金取扱装置100においても、長時間にわたって現金の入出金のサービスを提供することができる。
【0186】
また、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100は、所定の金融機関への移動を喚起することにより、自装置に対する入金を喚起するようにしたことを特徴としている。
【0187】
この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100によれば、現金取扱装置100が収納する現金が所定の下限額を下回った場合には、最寄りの金融機関など、所定の金融機関への移動を喚起することにより、現金取扱装置100を運搬し取り扱う者が、現在の現金の額を計数していなくても、適切なタイミングで、現金取扱装置100に現金を補充するようアナウンスすることができる。
【0188】
また、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100においては、たとえば、「1000円」、「1万円」などのように、あらかじめ指定された指定額を出金するものであってもよい。
【0189】
この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100によれば、操作の簡易化を実現することができる。また、金額を限定することにより、1回あたりの手続きにかかる時間を短く抑えることができる。これにより、たとえば、イベント会場などにおいてたくさんの利用者が現金取扱装置100の利用を待機している場合にも、各利用者に順番が早く回るようにすることができ、利便性の向上を図ることができる。
【0190】
また、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100は、現金の入金を受け付けるごとに、現金取扱装置100が収納する現金の額を計数し、計数された現金の額に基づいて、現金取扱装置100が収納する現金の残高を管理するようにしたことを特徴としている。
【0191】
この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100によれば、現金の入金を受け付けるごとに、現金取扱装置100が収納する現金の残高を管理することにより、現金が不足する事態を発生しにくくし、利用者が利用できない事態を回避することができる。
【0192】
また、この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100は、現金の額が所定の上限額を上回った場合、自装置から所定範囲内に存在する利用者の端末装置を介して、自装置の存在および自装置からの出金要求を報知することにより、自装置からの出金を喚起するようにしたことを特徴としている。
【0193】
この発明にかかる実施の形態の現金取扱装置100によれば、現金取扱装置100が収納する現金の額が所定の上限額を上回った場合は、当該現金取扱装置100からの出金を促すことにより、現金取扱装置100に現金が貯まりすぎることを回避することができる。これにより、現金取扱装置100が収納する現金を、効率よく流通させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0194】
以上のように、この発明にかかる現金取扱装置は、現金の入金や出金が可能な現金取扱装置に有用であり、特に、被災地やイベント会場などのようにATMが常設されにくい場所や状況において使用する現金取扱装置に適している。
【符号の説明】
【0195】
100 現金取扱装置
110 残高メータ
400 現金残高管理部
401a 記憶部
402 現金収納部
403 指示受付部
404 出金制御部
405 入金受付部
406 現金額計数部
407 判断部
408 喚起部
図1
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図8