特許第6411154号(P6411154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411154
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】クリック機構
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20181015BHJP
【FI】
   G02B7/02 E
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-200815(P2014-200815)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-71168(P2016-71168A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390022459
【氏名又は名称】京セラオプテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【弁理士】
【氏名又は名称】深井 敏和
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆春
(72)【発明者】
【氏名】内田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰志
【審査官】 渡邉 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−020176(JP,A)
【文献】 実開昭56−069708(JP,U)
【文献】 特開2010−066693(JP,A)
【文献】 特開平04−009908(JP,A)
【文献】 特開平11−352377(JP,A)
【文献】 特開平11−338008(JP,A)
【文献】 特開平10−221584(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0007843(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 − 7/16
G03B 17/02
G03B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にレンズを有する筒形のレンズ枠と、
このレンズ枠の外周面上に嵌着され、レンズ枠と共に周方向に回転する鏡筒と、
この鏡筒の外周面上に周方向に回転可能に嵌着され、径方向外向きに切り起こされた板バネ部を外周面に形成した筒状のフレームと、
このフレームの外周面上に周方向に回転可能に嵌着され、前記レンズ枠の軸方向に対して傾斜したカム溝を有し、内周面に複数のクリック溝を有するカムリングと、
前記カム溝より前記鏡筒を通って前記レンズ枠に螺合され、前記カム溝に係合し、カムリングの回転に伴ってレンズ枠を軸方向に移動させるねじ部と、
前記カムリングの周方向に、少なくとも前記複数のクリック溝にまたがる長さの開口溝が形成され、この開口溝を通って前記フレームに螺合されているストッパーねじと、
前記フレームの板バネ部上に設置され、板バネ部の付勢力により前記カムリングのクリック溝に係合する金属ボールと、を備え
前記ねじ部とストッパーねじとが、互いにカムリングの径に対して対向位置にあり、カムリングの周方向に対して同時に同一方向に移動することを特徴とするクリック機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ、望遠鏡、拡大鏡などのレンズに用いられるクリック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラなどのレンズ鏡筒における絞り環において、レンズの光軸方向に絞り環を進退させる駆動機構としてクリック機構が用いられている。このクリック機構は、樹脂等のモールド品(鋳造品)でフレームや筒体に板バネ部とボール(突起物)とを一体に形成し、絞り環の内周面に形成した複数の溝に前記ボールを係合させて構成されていた。このように、板バネ部とボールとを樹脂等で一体に形成すれば、レンズ鏡筒の径方向の薄肉化および製品のコストダウンとなる。
しかしながら、上記したクリック機構は、樹脂モールドでボールを構成するため、熱や摩耗等に対してのボールの十分な耐久性が確保できなかった。
【0003】
さらに、特許文献1に記載されるようなボールをコイルバネで押す構造のクリック機構は、ボール下にコイルバネとボールを収納するスペースが必要となり、レンズ鏡筒の径方向の薄肉化には不向きであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10‐221584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、高い耐久性を有し、かつ薄肉化させたクリック機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のクリック機構は以下の構成を有する。
(1)内部にレンズを有する筒形のレンズ枠と、このレンズ枠の外周面上に嵌着され、レンズ枠と共に周方向に回転する鏡筒と、この鏡筒の外周面上に周方向に回転可能に嵌着され、径方向外向きに切り起こされた板バネ部を外周面に形成した筒状のフレームと、このフレームの外周面上に周方向に回転可能に嵌着され、前記レンズ枠の軸方向に対して傾斜したカム溝を有し、内周面に複数のクリック溝を有するカムリングと、前記カム溝より前記鏡筒を通って前記レンズ枠に螺合され、前記カム溝に係合し、カムリングの回転に伴ってレンズ枠を軸方向に移動させるねじ部と、前記フレームの板バネ部上に設置され、板バネ部の付勢力により前記カムリングのクリック溝に係合する金属ボールと、を備えることを特徴とするクリック機構。
(2)前記カムリングの周方向に、少なくとも前記複数のクリック溝にまたがる長さの開口溝が形成され、この開口溝を通ってストッパーねじが前記フレームに螺合されている(1)に記載のクリック機構。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るクリック機構は、フレームの外周面に形成した板バネ部上に設置された金属ボールが、カムリングの内周面のクリック溝に係合するので、高い耐久性を有し、かつ薄肉化できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るクリック機構の一実施形態を示す透視図である。
図2図1のX方向から見た透視図である。
図3図1のA−A線断面図である。
図4】(a)は図1の側面図であり、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るクリック機構について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
本発明に係るクリック機構100は、図1に示すように、内部にレンズ11を有する筒形のレンズ枠1と、このレンズ枠1の外周面上に嵌着され、レンズ枠1と共に周方向に回転する鏡筒2と、この鏡筒2の外周面上に周方向に回転可能に嵌着される筒状のフレーム3と、このフレーム3の外周面上に周方向に回転可能に嵌着され、前記レンズ枠1の軸方向に対して傾斜したカム溝42を有するカムリング4とからなる。
前記カムリング4には、前記鏡筒2を通って前記レンズ枠1に螺合され、前記カム溝42に係合するねじ部43が設けられる。カムリング4の回転に伴って前記ねじ部43がカム溝42内を移動することで、レンズ枠1が軸方向に移動する。
【0011】
本発明に係るクリック機構100は、図2に示すように、前記フレーム3の外周面に、径方向外向きに切り起こされた板バネ部31がフレーム3と一体に形成され、この板バネ部31上には金属ボール32が設置されている。この金属ボール32は、板バネ部31の付勢力により、前記カムリング4の内周面に複数設けられたクリック溝41に係合するものであり、前記カムリング4の回転に伴って複数のクリック溝41間を移動する。
また、前記カムリング4の周方向には、少なくとも複数のクリック溝41にまたがる長さで形成される開口溝44と、この開口溝44を通り、下端がフレーム3に螺合したストッパーねじ45とを設けている。このストッパーねじ45は、カムリング4を複数のクリック溝41を有する範囲で回転させ、かつカムリング4の回転を制限してフレーム3から脱落を防止する。
【0012】
このクリック機構100は、カムリング4を周方向に回転させることにより、フレーム3の板バネ部31上に設置された金属ボール32をカムリング4の内周面の複数のクリック溝41間において移動させることができる。このカムリング4の回転に伴って、レンズ枠1の軸方向に対して傾斜したカム溝42を、カム溝42に係合するねじ部43が移動する。このねじ部43が挿通されたレンズ枠1および鏡筒2を軸方向に前後に移動させる。このねじ部43の移動は、前記金属ボール32がいずれかのクリック溝41に係合すると停止し、レンズ枠1および鏡筒2が所定位置で固定される。
【0013】
<レンズ枠1>
図1に示すように、レンズ11を有する筒形のレンズ枠1はクリック機構100内に位置し、レンズ枠1の外周面上には、レンズ枠1と共に周方向に回転可能な鏡筒2が嵌着される。また、図3に示すように、レンズ枠1は外周面に、後述するねじ部43が螺合するねじ穴12を有する。このねじ部43がカムリング4のカム溝42を移動することで、レンズ枠1は周方向に回転しながら軸方向の前後に移動することができる。
【0014】
<鏡筒2>
図1、2に示すように、鏡筒2はレンズ枠1の外周面上に嵌着され、その外周面上には挿通されたねじ部43が軸方向の前後に移動可能な溝21が設けられる(図3)。鏡筒2はねじ部43の移動によってレンズ枠1と共に周方向に回転する。
【0015】
<フレーム3>
図1,2に示すように、フレーム3は鏡筒2の外周面上に、鏡筒2と独立に周方向に回転可能に外挿される筒状部材である。このフレーム3は外周面に、径方向外向きに切り起こされた板バネ部31と、前記鏡筒2の溝21と同様に、挿通されたねじ部43が移動可能な溝33とを有する(図3)。
【0016】
前記板バネ部31は、図2に示すように、フレーム3の一部を薄肉にして、フレーム3の径方向外向きに切り起こすことにより形成され、フレーム3の径方向に付勢力を有する。
この板バネ部31は、図4(b)に示すように、下部の鏡筒2の外周面との間に、フレーム3を薄肉化する際に空洞34が形成されている。
【0017】
金属ボール32は、図4(b)に示すように、板バネ部31上に設置され、板バネ部31の付勢力によりカムリング4のクリック溝41に係合するものである。
金属ボール32を前記板バネ部31へ設置するために、板バネ部31上に凹部35を設けて金属ボール32の一部を収容している。
【0018】
<カムリング4>
カムリング4は、図4(a)に示すように、フレーム3の外周面上に周方向に回転可能に嵌着される環状の部材であり、ねじ部43を係合し前記レンズ枠1の軸方向に対して傾斜したカム溝42を有する。また、図4(b)に示すように、カムリング4は内周面に金属ボール32と係合し金属ボール32の一部が嵌入する凹状の溝部である複数のクリック溝41を所定の間隔で有する。
【0019】
図2、3に示すように、カムリング4の周方向に少なくとも複数のクリック溝41にまたがる長さで形成される開口溝44と、この開口溝44を通り、下端がフレーム3に螺合したストッパーねじ45とを設けている。
ストッパーねじ45は開口溝44内を自在に移動することができ、フレーム3に嵌着させたカムリング4を複数のクリック溝41を有する範囲で回転させ、かつカムリング4の回転を制限してフレーム3から脱落を防止する役割を有する。すなわち、前記ストッパーねじ4が開口溝44の両端部にまで移動すると、カムリング4の回転は制限され、フレーム3からの脱落は起こらない。
【0020】
図4(a)に示すように、カム溝42は、その溝内を移動するねじ部43にて固定されたレンズ枠1と鏡筒2とフレーム3とをレンズ枠1の軸方向に対して前後に移動させるため軸方向に対して傾斜して形成されており、このカム溝42に沿ってねじ部43を案内する。
ねじ部43は、図3に示すように、上端が前記カムリング4のカム溝42に係合しており、下端がカム溝42から前記フレーム3の溝33および鏡筒2の溝21を通って前記レンズ枠1に設けたねじ穴12に螺合され、レンズ枠1と鏡筒2とフレーム3とカムリング4とをまとめている。このねじ部43は、カムリング4の回転に伴って、前記カム溝42内を移動し、レンズ枠1を軸方向の前後に移動させることができる。
【0021】
図4(b)に示すように、金属ボール32が係合するクリック溝41は、カムリング4の回転により、金属ボール32から外れ、かつ金属ボール32はカムリング4の内周面に押圧されてフレーム3の軸中心方向の空洞34内に沈む。その後、カムリング4を回転させ金属ボール32が別のクリック溝41に達すると、板バネ部31のフレーム3の径方向への付勢力により、金属ボール32が空洞34から出てクリック溝41に係合する。
【0022】
このように、カムリング4を回転させ、いずれかのクリック溝41とフレーム3上の金属ボール32とが係合することによって、軸方向に移動するレンズ枠1を所定位置に固定することができる。
クリック溝41の数や位置はレンズ枠1内部のレンズ11の軸方向の移動距離や移動したレンズ11の所定位置の数により適宜決定すればよい。また、クリック溝41の形状は、前記金属ボール32と係合可能である限り特に制限はされず、例えば断面が多角形や半円形等であってもよい。
【0023】
すなわち、カムリング4をフレーム3の周方向に回転させることにより、内周面のクリック溝41に係合した金属ボール32が別のクリック溝41へ移動し、ねじ部43もカム溝42内を案内される。この時、ねじ部43はレンズ枠1のねじ穴12に螺合されているため、レンズ枠1内のレンズ11を軸方向の前後へ移動させることができる。さらに、複数のクリック溝41に金属ボール32を係合させることにより、前記レンズ枠1の移動を所定位置にて固定でき、毎回同じ位置にレンズ11を移動させることができる。また、前記金属ボール32と板バネ部31とにより、クリック溝41に金属ボール32が係合すると、使用者は明瞭なクリック感を得ることができる。また、板バネ部31はフレーム3と一体に形成されることでフレーム3を径方向に薄肉化することができる。
カムリング4は、上記したようなレンズ枠1内のレンズ11を軸方向に移動させるので、ズームリング等として使用できる。
【0024】
なお、上記実施形態は、内部にレンズ11を有するレンズ枠1の軸方向の動作に本発明に係るクリック機構100を適用したものであるが、本発明はこれに限定されず、例えば筒状部材にカムリングを配置してクリック機構を設ける装置にはいずれも適用可能である。
【0025】
以上のように、本発明に係るクリック機構100は、カムリング4を回転させると、フレーム3の板ばね部31上の金属ボール32がクリック溝41に係合するので、レンズ枠1内部のレンズ11が軸方向に移動し、所定位置で固定することができ、しかも金属ボール32を使用しているので、クリック機構100は高い耐久性を有する。また、金属ボール32を付勢する板ばね部31はフレーム3と一体に形成されているので、クリック機構100は薄肉化が可能である。そのため、クリック機構100は、狭い場所で頻繁にクリック機構を用いる機器、例えば、手術用小型カメラや口内カメラ等に応用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 レンズ枠
2 鏡筒
3 フレーム
4 カムリング
11 レンズ
12 ねじ穴
21、33 溝
31 板バネ部
32 金属ボール
34 空洞
41 クリック溝
42 カム溝
43 ねじ部
44 開口溝
45 ストッパーねじ
100 クリック機構
図1
図2
図3
図4