(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による電気的接触子及び電気的接続装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
まず、第1の実施形態の電気的接触子が適用されている第1の実施形態の電気的接続装置を含む検査装置(プローバと呼ばれることが多い)について、
図1を参照しながら説明する。検査装置は、
図1のように設置されるものに限定されないが、
図1及び後述する他の図面の説明における「上下方向」は、
図1の上下方向を表している。
【0018】
検査装置10は、主に、装置本体11と、XYZθステージ12と、チャック13と、カード状接続装置(プローブカードと呼ばれることが多い)14と、接続装置保持部15とを有する。
【0019】
装置本体11は、XYZθステージ12、カード状接続装置14等を支持するための部材である。装置本体11は、主に、下部ベース16と、上部ベース17と、これら下部ベース16及び上部ベース17の間を支持する複数の支柱18とを備えている。上部ベース17の中央には開口
17Aが設けられている。開口
17Aは、円形や矩形など(以下では円形として説明する)、カード状接続装置14の外形と近似した形をしている。開口
17Aの内周縁の上側には、接続装置保持部15を取り付けるための段状凹部
17Bが設けられている。
【0020】
XYZθステージ12は、チャック13をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に沿って移動させたり、チャック13を回転させたりするためのステージである。チャック13は、ウェハ等の検査対象物19を真空吸着等の手段で保持するための機構である。
【0021】
カード状接続装置14は、検査対象物19と試験装置(図示を省略している)を電気的に接続するための部材である。カード状接続装置14は、円盤状の配線基板21と、接触子支持基板(第1の実施形態の電気的接続装置に該当する)22とを有する。
【0022】
配線基板21は、電気的接触子20に繋がる信号線等を配設すると共に、接続装置保持部15を介して装置本体11に取り付けられて、下方に設けられた
接触子支持基盤22全体を支持するための部材である。
【0023】
接触子支持基板22は、多数の電気的接触子20を支持するための部材である。接触子支持基板22は、円形や矩形等の形状に形成され、その上側面が配線基板21の下側面と一体的に設けられている。接触子支持基板22には、多数の電気的接触子20が取り付けられている。
【0024】
各電気的接触子20は、例えば、検査対象物19上に形成された半導体デバイスの電極パッド(図示せず)に対応した位置に設けられている。電気的接触子20が、XYZθステージ12で制御されたチャック13の上側面に載置された検査対象物19の電極パッドなどに接触して検査が実行される。
【0025】
図2は、接触子支持基板22の概略構成を説明するための縦断面図である。
図2では、説明の簡単化のために9本の電気的接触子20を示しているが、上述したように、接触子支持基板22は、多数の電気的接触子20を支持している。また、
図2では、電気的接触子20の一群を取り付ける空洞(キャビティ)が1つの場合を示しているが、接触子支持基板22が、複数の空洞を備え、各空洞がそれぞれ、電気的接触子20の一群を取り付けるようにしても良い。各空洞のそれぞれにおいて、複数の電気的接触子20の配列は1列に限定されず、上下方向から見てマトリックス状の配置など、任意に配置されていても良い。さらに、電気的接触子20の詳細構成は後述する
図3に示しており、
図2では、電気的接触子20の配置を示すことに重点を置いており、
図2は、電気的接触子20の構成を正確に表していない。
【0026】
接触子支持基板22は、ボトムガイド板30と、下側絶縁シート31と、中間スペーサ32と、上側絶縁シート33と、トップガイド板34と、ガイドピン35と、固定ネジ36とを有する。
【0027】
ボトムガイド板30は、各電気的接触子20の下部を位置決めして保持し、電気的接触子20の摺動を許すための支持部材である。すなわち、ボトムガイド板30は、各電気的接触子20の下部の位置保持ガイドである。ボトムガイド板30は、中央に下方に向かう凹部30aを有する平板状に形成されている。凹部30aには、電気的接触子20の下部が貫通されて支持される下部支持穴30bが設けられている。下部支持穴30bは、検査対象物19の各電極パッド19aと整合する位置に、各電極パッド19aにそれぞれ対応するように設けられている。これにより、各下部支持穴30bに各電気的接触子20の下部が嵌り込むことで、各電気的接触子20の下端部が検査対象物19の各電極パッド19aと接触するようになっている。各電気的接触子20の後述する伸縮機能により、各電気的接触子20の下部は、電気的接触子20の伸縮に伴って、各下部支持穴30bを貫通している状態で摺動するようになっている。ボトムガイド板30は、例えば、セラミックで成形されていて絶縁性を有する。
【0028】
下側絶縁シート31は、隣接する電気的接触子20間でのショートを防止すると共に各電気的接触子20の垂直性を保持するための部材である。下側絶縁シート31は、耐摩耗性及び耐熱性に優れた合成樹脂製フィルム、例えばポリイミドフィルム等で薄く構成されている。
【0029】
下側絶縁シート31には、ボトムガイド板30の各下部支持穴30bに整合する位置に、各下部支持穴30bにそれぞれ対応するガイド穴31aが設けられている。ガイド穴31aの径は、電気的接触子20の外径とほぼ同じに設定されている。これにより、電気的接触子20が、ガイド穴31aに挿入されて、がたつくことなく確実に支持されるようになっている。下側絶縁シート31は、各電気的接触子20の下寄りの中間部を支持している。
【0030】
下側絶縁シート31は、その周縁部が、ボトムガイド板30と中間スペーサ32とで挟まれて支持されている。下側絶縁シート31の上下方向の位置については、後述の電気的接触子20の具体的構成の説明の中で明らかにする。
【0031】
中間スペーサ32は、下側絶縁シート31と上側絶縁シート33とを所定の間隔に保つと共に、下側絶縁シート31及び上側絶縁シート33をボトムガイド板30及びトップガイド板34と共に挟んで支持するための部材である。中間スペーサ32は、肉厚の環状に形成されている。中間スペーサ32は、ボトムガイド板30の形状に合わせて、円環や矩形環等に形成されている。中間スペーサ32の厚さは、下側絶縁シート31及び上側絶縁シート33の上下方向の位置を所定位置にするように選定されている。
【0032】
上側絶縁シート33は、下側絶縁シート31と同様に、隣接する電気的接触子20間でのショートを防止すると共に、各電気的接触子20の垂直性を保持するための部材である。上側絶縁シート33も、耐摩耗性及び耐熱性に優れた合成樹脂製フィルム、例えばポリイミドフィルム等で薄く構成されている。
【0033】
上側絶縁シート33には、下側絶縁シート31の各ガイド穴31aに整合する位置に、各ガイド穴31aにそれぞれ対応するガイド穴33aが設けられている。ガイド穴33aの径は、電気的接触子20の外径とほぼ同じに設定されている。これにより、電気的接触子20が、ガイド穴33aに挿入されて、がたつくことなく確実に支持されるようになっている。上側絶縁シート33は、各電気的接触子20の上寄りの中間部を支持している。
【0034】
上側絶縁シート33は、その周縁部が、中間スペーサ32とトップガイド板34とで挟まれて支持されている。上側絶縁シート33の上下方向の位置については、後述の電気的接触子20の具体的構成の説明の中で明らかにする。
【0035】
トップガイド板34は、各電気的接触子20の上部を位置決めして保持し、電気的接触子20の摺動を許すための支持部材である。すなわち、トップガイド板34は、各電気的接触子20の上部の位置保持ガイドである。トップガイド板34は、中央に上方に向かう凹部34aを有する平板状に形成されている。凹部34aには、電気的接触子20の上部が貫通されて支持される上部支持穴34bが設けられている。上部支持穴34bは、上側絶縁シート33の各ガイド穴33aに整合する位置で、しかも、配線基板21の図示しない各電極と整合する位置に、配線基板21の各電極にそれぞれ対応するように設けられている。これにより、各上部支持穴34bに各電気的接触子20の上部が嵌り込むことで、各電気的接触子20の上端部が配線基板21の各電極と接触するようになっている。各電気的接触子20の後述する伸縮機能により、各電気的接触子20の上部は、電気的接触子20の伸縮に伴って、各上部支持穴34bを貫通している状態で摺動するようになっている。トップガイド板
34は、例えば、セラミックで成形されていて絶縁性を有する。
【0036】
なお、トップガイド板34に代えて、円環や矩形環等に形成されているスペーサを適用するものであっても良い(特開2011−145279号公報参照)。
【0037】
ガイドピン35は、少なくともボトムガイド板30と中間スペーサ32とトップガイド板34とを重ね合わせるときに、互いに正確に位置決めされるようにするためのピンである。なお、ガイドピン35が、カード状接続装置14の図示しない他の構成要素をも貫通して位置決めするものであっても良い。
【0038】
固定ネジ36は、接触子支持基板22全体を一体的に固定するためにネジである。ボトムガイド板30、下側絶縁シート31、中間スペーサ32、上側絶縁シート33及びトップガイド板34は、固定ネジ36によって一体的に固定され、かつ着脱自在に配設されている。これにより、絶縁シート31、33及び中間スペーサ32は適宜付け替えられるようになっている。
【0039】
図3は、第1の実施形態の電気的接触子20の構成を示す断面図であり、電気的接触子20の中心軸を通る平面で切断した縦断面図である。
【0040】
電気的接触子20は、バレル40と、ボトムプランジャー41と、トッププランジャー42とを有する。バレル40、ボトムプランジャー41及びトッププランジャー42は、いずれも導電性の材質で形成されている。
【0041】
バレル40は、概ね円筒形状を有する。第1の実施形態の電気的接触子20におけるバレル40は、上下方向(長手方向)に弾性力を発揮する3つのスプリング部40b、40d及び40fを有し、それ以外の部分は弾性力を発揮しない非スプリング部40a、40c、40e及び40gとなっている。すなわち、バレル40は、下側から、第1の非スプリング部40a、第1のスプリング部40b、第2の非スプリング部40c、第
2のスプリング部40d、第3の非スプリング部40e、第3のスプリング部40f及び第
4の非スプリング部40gを有する。
【0042】
3つのスプリング部40b、40d及び40fにより、上下方向に、所望する弾性力を発揮できる。所望する弾性力を発揮するだけならば、3つのスプリング部40b、40d及び40fの長さの総和と等しい長さを有する1つのスプリング部を設けるようにしても良い。しかし、第1の実施形態では、以下の理由により、3つのスプリング部40b、40d及び40fを設けることとしている。
【0043】
検査対象物19を上昇させて(
図2参照)、電気的接触子20の両端を、検査対象物19の電極パッド19aや配線基板21(
図1)の電極に接触させる際には、接触時点以降も検査対象物19を多少上昇(オーバードライブ)させて接触をより確実なものとしている。このようなオーバードライブ時には、電気的接触子20への抗力も大きくなる。スプリング部の長さが長いような状況では、抗力の方向が多少でも上下方向からずれると、スプリング部の部分で、電気的接触子が上下方向に直交する方向へ変形し易いが、スプリング部の長さが短いほど、このような変形がし難くなる。
【0044】
上述したように、電気的接触子20は、下部及び上部だけでなく、その中間部分も、下側絶縁シート31及び上側絶縁シート33によって垂直性が保持される。下側絶縁シート31又は上側絶縁シート33に接触する電気的接触子20の部分がスプリング部の場合には、オーバードライブやその解放により、電気的接触子20が上下方向に移動するのを妨害する。そのため、下側絶縁シート31又は上側絶縁シート33に接触する電気的接触子20の部分は非スプリング部が好ましい。下側絶縁シート31又は上側絶縁シート33に接触する電気的接触子20の部分を非スプリング部にするには、3つのスプリング部40b、40d及び40fを設けることが適切である。下側絶縁シート31及び上側絶縁シート33に接触する電気的接触子20の部分を同一の非スプリング部にし、スプリング部を2つにすることも考えられるが、この場合は、3つのスプリング部を設けた場合に比較し、上述したオーバードライブ時の変形の恐れが大きくなってしまう。
【0045】
図4は、第1の実施形態の電気的接触子20におけるバレル40を示す正面図である。第1の実施形態の電気的接触子20が上下動に伴う中心軸周りの回転が問題とならないものである場合には、
図4(A)に示すように、バレル40における3つのスプリング部40b、40d及び40f共に、同じ螺旋状のものを適用すれば良い。第1の実施形態の電気的接触子20が上下動に伴う中心軸周りの回転が問題と
なる場合には、
図4(B)に示すように、バレル40における3つのスプリング部40b、40d及び40fとして、異なる方向の螺旋を有する部分の長さが同じになるようにしたものを適用すれば良い。
図4(B)は、スプリング部40bの螺旋が右上がりで、スプリング部40fの螺旋が左上がりで、スプリング部40dが、右上がりの螺旋部分と左上がりの螺旋部分とが半々になっている例を示している。
【0046】
ボトムプランジャー41は概ね円柱形状を有する。ボトムプランジャー41の外径は、バレル40の内径とほぼ一致しており、ボトムプランジャー41がバレル40の下端の開口から上方へ挿通されている。
【0047】
ボトムプランジャー41の下部41aは、バレル40の下端から下方へ突出している。下部41aの突出量は、ボトムガイド板30の下部支持穴30bを貫通し、検査対象物19の電極パッド19aと接触し得る長さに選定されている。ボトムプランジャー41がバレル40の下端から突出することにより、バレル40の下端にできる段差が、ボトムガイド板30の下部支持穴30b周辺の上面(内面)部分と係合することにより、電気的接触子20が下部支持穴30bから抜けないようになっている。ボトムガイド板30の下部支持穴30bの径は、ボトムプランジャー41の外径とほぼ同じになっている。
【0048】
バレル40の最も下の非スプリング部40aの所定高さの位置(周方向の1点ではなく、数点又は円を表している;ここでの点は、微小な点に限定されず、例えば長手方向に長い長円などの接合領域をかせぐ領域であっても良い)PBにおいて、非スプリング部40aとボトムプランジャー41とが、例えば、抵抗溶接(スポット溶接)、レーザ溶接又はかしめによって接合されて互いに固定されている。抵抗溶接を適用する場合には、抵抗溶接による接合が強固になるように、バレル40の内周面の全域若しくは一部領域や、ボトムプランジャー41の外周面の一部領域等に同一材質(例えば金)によるメッキを施すようにしていても良い。
【0049】
ボトムプランジャー41の上端は、電気的接触子20に上下方向の外力が印加されていない状態においても、最も上方に位置している非スプリング部40gの内部に達している。ボトムプランジャー41における固定点PBより上の大半の部分は、スプリング部40b、40d及び40fの伸縮により、バレル40内を相対的に摺動する。
【0050】
トッププランジャー42は概ね円柱形状を有する。トッププランジャー42の外径は、バレル40の内径とほぼ一致しており、トッププランジャー42がバレル40の上端の開口から下方へ挿通されている。トップガイド板34の上部支持穴34bの径は、トッププランジャー42の外径とほぼ同じになっている。
【0051】
トッププランジャー42の概ね上半部42aは、バレル40の上端から上方へ突出している。上半部42aの突出量は、配線基板21(
図1)の電極と接触する部分が、バレル40ではなく、トッププランジャー42であることを保証できる量に選定されている。バレル40の最も上の非スプリング部40gの所定高さの位置PTにおいて、非スプリング部40gとトッププランジャー42とが接合されて互いに固定されている。バレル40とトッププランジャー42との接合方法は、上述したバレル40とボトムプランジャー
41との接合方法と同様である。
【0052】
電気的接触子20に上下方向の外力が印加されていない状態で、トップガイド板34の上部支持穴34bを、バレル40の最も上の非スプリング部40gが貫通しているように、上部支持穴34bや非スプリング部40gの長さが選定されている。また、仮に、電気的接触子20に上下方向の外力が加わり、トッププランジャー42の上端が、トップガイド板34の上面とほぼ同じになったとしても、バレル40の最も上の非スプリング部40gの一部が上部支持穴34b内に位置しているように、上部支持穴34bや非スプリング部40gの長さが選定されている。
【0053】
図5は、第1の実施形態の電気的接触子におけるトッププランジャー42の上端近傍を示す正面図である。
【0054】
第1の実施形態の電気的接触子20は、従来の電気的接触子とは異なり、バレルの上端ではなく、トッププランジャー42の上端が配線基板21の電極と接触する。そのため、配線基板21の電極の形状などに応じて、トッププランジャー42の上端形状を選定すれば良い。従来の電気的接触子では、配線基板の電極に接触するのが、バレルの上端、すなわち円環であるため、配線基板の電極の形状などに応じて、バレルの上端形状を選定する余地はない。第1の実施形態の場合、トッププランジャー42の上端が配線基板21の電極と接触するため、接触する上端の形状を選定することができる。例えば、トッププランジャー42の上端を、
図5(A)に示すようにフラットにしても良く、また、
図5(B)に示すようにフラットの角を面取りした形状としても良く、さらに、
図5(C)に示すように半球状にしても良い。
【0055】
トッププランジャー42の下端は、電気的接触子20に上下方向の外力が印加されていない状態において、最も上方に位置している非スプリング部40gの内部に位置している。
【0056】
ボトムプランジャー41の上端とトッププランジャー42の下端との隙間は、電気的接触子20に上下方向の外力が印加されていない状態において最も大きい。電気的接触子20に上下方向の外力が最も印加された上述したオーバードライブ状態においても、ボトムプランジャー41の上端とトッププランジャー42の下端との間に隙間があるように、ボトムプランジャー41の長さや上端位置、トッププランジャー42の長さや下端位置、並びに、非スプリング部40gの長さなどが選定されている。
【0057】
円柱形状を有するボトムプランジャー41及びトッププランジャー42は、中実のものであっても良く中空のものであっても良い。また、ボトムプランジャー41とトッププランジャー42とで材質が異なっていても良い。
【0058】
新たな検査対象物19の検査を行う際には、検査対象物19が、それを保持したチャック13と共にXYZθステージ12によって上動され、やがて検査対象物19の電極パッド19aが電気的接触子20のボトムプランジャー41の下端と接触し、また、電気的接触子20のトッププランジャー42の上端と配線基板21の電極ともより接触する。これ以降、検査対象物19が所定量だけ上動されてオーバードライブ状態となる。位置PBでボトムプランジャー41に固定されていると共に、位置PTでトッププランジャー42に固定されているバレル40のスプリング部40b、40d、40fはオーバードライブにより圧縮され、弾性力により上下方向に抗力を発揮する。そのため、検査対象物19の電極パッド19aと電気的接触子20のボトムプランジャー41の下端との接触や、トッププランジャー42の上端と配線基板21の電極との接触が十分なものとなる。このような接触状態では、検査対象物19の電極パッド19aと配線基板21の電極とは、ボトムプランジャー41、バレル40及びトッププランジャー42を介して電気的に接続される。
【0059】
今回の検査対象の検査対象物19の検査が終了すると、検査対象物19が下動され、検査対象物19の電極パッド19aと電気的接触子20のボトムプランジャー41の下端とが非接触となる。これに伴い、バレル40のスプリング部40b、40d、40fが待機状態まで伸長し、次の検査対象物19の検査を待ち受ける状態に変化する。
【0060】
第1の実施形態によれば、配線基板側との接触を担当するトッププランジャーを設けたので、十分な電気的接触性を実現することができ、製品ばらつきも小さくなった。従来の電気的接触子の接触抵抗を多数のサンプル(500個以上)について測定した所、接触抵抗は1〜13Ω(抵抗値を1Ω単位で測定)の範囲でばらつき、最頻値は3Ωであった。一方、第1の実施形態の電気的接触子20の接触抵抗を多数のサンプル(500個以上)について測定した所、接触抵抗は1〜2Ωの範囲でばらつき、最頻値は1Ωであった。
【0061】
その結果、測定値にシビアな電気的特性を特定する箇所にも、第1の実施形態の電気的接触子を適用することができる。
【0062】
また、第1の実施形態の電気的接触子は、構成要素として、従来よりトッププランジャーが多くなったが、それでも部品数は僅か3個であり、電気的接触子の製造は容易である。
【0063】
さらに、第1の実施形態によれば、バレル40が3つのスプリング部を備え、ボトムプランジャー41が、バレル40における全てのスプリング部40b、40d、40fを通っているので、オーバードライブされても上下方向に直交する方向等への変形を防止することができる。
【0064】
本願発明者は、バレルに設けるスプリング部の数と変形量との関係を測定した。
図6は、その結果を示す説明図である。
【0065】
長さ5.7mm、外径70μm、内径54μmの純ニッケル(純Ni)で形成された、スプリング部の数が異なる測定用バレルを5種類用意した。その製作は、特許文献1に記載の方法を適用した。スプリング部の数はそれぞれ、1、2、3、4、5であり、全てのスプリング部の長さの総和がどの種類のバレルでも3.2841mmとなるようにした。なお、スプリング部の数を除き、測定用バレルは、概ね実製品のスペックと同様なものである。そして、測定用バレルの一端を固定し、他端からバレルの長手方向に対して200μmだけ押し込んだ。
図6は、バレルの中心軸から直交方向に最も離れた箇所までの距離(以下、変形量と呼ぶ)を表しており、バレルの中心軸から直交方向に最も離れた箇所は、どの種類の測定用バレルでもスプリング部における中央部分の箇所であった。
【0066】
スプリング部が1個の測定用バレルの変形量は442.34μmであり、スプリング部が2個の測定用バレルの変形量は170.51μmであり、見た目にも変形が分かるものであった。スプリング部が3個の測定用バレルの変形量は10.75μmであり、スプリング部が2個の測定用バレルの変形量の1/16であった。スプリング部が4個の測定用バレルの変形量は7.20μmであり、スプリング部が5個の測定用バレルの変形量は4.28μmであった。スプリング部が3個以上の測定用バレルの変形量では、見た目で変形を認識できない程度である。
【0067】
バレル40の内部の大半にボトム
プランジャー41が挿通され、ボトム
プランジャー41が長手方向(上下方向)に直交する方向の変形を防止する機能を果たすとは言え、バレル40自体が変形に対する耐性が高いことが好ましく、それにより、変形を防止することができる。すなわち、第1の実施形態のバレル40のようにスプリング部が非スプリング部を挟むことで3つのスプリング部に分割されていることや、バレルがそれより多くのスプリング部に分割されていることが好ましい。
【0068】
第1の実施形態によれば、ボトムガイド板30及びトップガイド板34だけでなく、バレル40における非スプリング部40c及び40eを保持する下側絶縁シート31及び上側絶縁シート33によっても、電気的接触子20を保持するようにしたので、電気的接触子20を安定に垂直に保持でき、その結果、電気的接触子20への外力方向を上下方向に安定できて変形を防止することができる。
【0069】
(B)他の実施形態
上記第1の実施形態の説明においても種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0070】
第1の実施形態においては、ボトムプランジャー41の上端とトッププランジャー42の下端とが、バレル40の最も上方に位置している非スプリング部40gの内部に達するように、ボトムプランジャー41及びトッププランジャー42の長さ等が選定されているものを示したが、ボトムプランジャー41の上端とトッププランジャー42の下端とが、バレル40の他の非スプリング部40a、40c又は40eの内部に達するように、ボトムプランジャー41及びトッププランジャー42の長さ等が選定されていても良い。例えば、
図7に示すように、ボトムプランジャー41の上端とトッププランジャー42の下端とが、バレル40の上から2番目の非スプリング部40eの内部に達するように、ボトムプランジャー41及びトッププランジャー42の長さ等が選定されていても良い。
【0071】
第1の実施形態では、配線基板21の電極に接触する、電気的接触子20の部材として円柱状のトッププランジャー42を示したが、バレル
40の上端に代わって配線基板21の電極に接触する部材であれば良く、その形状等は限定されないものである。例えば、
図8(A)に示すような円柱状の上端部が外径より大きな頭デッカチな部材であっても良く、また、
図8(B)に示すようなバレル
40の上端開口を塞ぐような蓋体であっても良く、さらに、
図8(C)に示すようなバレル
40の上端円環を面に変換するための栓状部材であっても良い。特許請求の範囲では、蓋体や栓状部材を含めて「第2のプランジャー」と呼んでいる。
【0072】
第1の実施形態の電気的接触子20は、配線基板21の電極との電気的接触性を高めるトッププランジャー42を設けたこと(第1の特徴)、及び、バレル40のスプリング部の数が3個であること(第1の実施形態の効果の説明で言及したように3個に限らず3個以上であれば良い;第2の特徴)を大きな特徴とするものである。これら2つの特徴のうち、いずれか一方の特徴だけを適用して電気的接触子を構成するようにしても良い。
【0073】
例えば、第1の特徴を適用しているならば、スプリング部の数が1個や2個であっても良い。バレル40の材質や肉厚等によって変形の恐れが小さい場合であれば、電気的接触性を高めるために、トッププランジャーを設けることだけを導入するようにしても良い。
図9は、2個のスプリング部を有する電気的接触子が適用された接触子支持基板(電気的接続装置)の概略構成を示しており、描画の簡易化を期して、1個の電気的接触子だけを適用しているように描いている。
図9に示す接触子支持基板は、ボトムガイド板と、中間絶縁シートと、トップガイド板とによって、電気的接触子を保持するものであり、中間絶縁シートは、電気的接触子の中間の非スプリング部の部分を保持する。
【0074】
また例えば、第2の特徴を適用しているならば、電気的接触子がトッププランジャーを備えていなくても良い。測定信号がデジタル信号であって、アナログ信号の場合と異なり、電気的接触子に要求される信号の伝達性能がシビアでない場合には、変形を防止し得るバレルのスプリング部が3個以上にすることだけを導入するようにしても良い。例えば、検査に供する信号がアナログ信号の場合には第1の実施形態の電気的接触子を適用し、検査に供する信号がデジタル信号の場合にはトッププランジャーを備えないスプリング部が3個以上のバレルを有する電気的接触子を適用するようにしても良い。
【0075】
第1の実施形態では、断面円形の電気的接触子を示したが、矩形や楕円形など、他の断面形状を有する電気的接触子であっても良い。
【0076】
本発明の電気的接触子は、配線基板や半導体集積回路等に備えられた電極などに接触される装置全般に用いることができる。また、本発明の電気的接続装置は、本発明の電気的接触子を少なくとも一部に用いた装置であり、装置の用途は検査装置に限定されるものではない。