(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411251
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】集水用配管及び補強管及びゴム材シートの配設方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/12 20060101AFI20181015BHJP
E03F 5/02 20060101ALI20181015BHJP
E21D 11/40 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
E02D29/12 E
E03F5/02
E21D11/40 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-52510(P2015-52510)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2016-172959(P2016-172959A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2017年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】000230526
【氏名又は名称】日本ヴィクトリック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(74)【代理人】
【識別番号】100096895
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 淳平
(72)【発明者】
【氏名】増 澤 伸 司
(72)【発明者】
【氏名】本 田 市 仁
(72)【発明者】
【氏名】石 川 哲
(72)【発明者】
【氏名】野 田 祐 司
【審査官】
亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−083741(JP,A)
【文献】
特開2009−299452(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3049767(JP,U)
【文献】
特開2000−054414(JP,A)
【文献】
実開昭61−152085(JP,U)
【文献】
実開平04−084494(JP,U)
【文献】
特開平04−108929(JP,A)
【文献】
特開2002−038575(JP,A)
【文献】
実開平07−029085(JP,U)
【文献】
欧州特許出願公開第01640500(EP,A1)
【文献】
登録実用新案第3151620(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12
E02D 29/045
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
E03F 5/00−5/04
E03F 5/046、5/06
E03F 5/10
E03F 5/14−5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の複数のセグメントを円周方向および長手軸線方向に沿って連結して構成され入水口から放入されて流入する水を流すための集水用配管装置であって、
放入される水が衝突する位置の前記セグメントの内壁面上に配設されるゴム材シートと、
隣接する前記セグメント同士を連結する複数の連結用ボルトナットが格納されるボルトボックス内に取り付けられ前記ゴム材シートの裏面と前記連結用ボルトナットとを掛け渡す複数の第1取付部と、
前記ゴム材シートの表面側に位置し各第1取付部とともに前記ゴム材シートを前記内壁面上に固定する第2取付部と、
を備え、
前記複数の連結用ボルトナットは円周方向を向く連結用ボルトナットと、長手軸線方向を向く連結用ボルトナットとを有し、円周方向を向く連結用ボルトナットに対応する第1取付部と、長手軸線方向を向く連結用ボルトナットに対応する第1取付部は互いに直交する、ことを特徴とする集水用配管装置。
【請求項2】
前記第1取付部は、前記連結用ボルトナットに取り付けられるブラケットと、前記ブラケットに設けられた固定ナットまたは固定ボルトとを有し、
前記第2取付部は、前記固定ナットと螺合可能な固定ボルトまたは前記固定ボルトと螺合可能な固定ナットを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の集水用配管装置。
【請求項3】
前記ゴム材シートは、内部に層設された金属材シートを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の集水用配管装置。
【請求項4】
コンクリート製の複数のセグメントを連結して構成され入水口から放入されて流入する水を流すための集水用配管装置において、放入される水が衝突する位置の前記セグメントの内壁面上にゴム材シートを配設するゴム材シートの配設方法であって、
隣接する前記セグメント同士を連結する複数の連結用ボルトナットが格納されるボルトボックス内に、前記ゴム材シートの裏面と前記連結用ボルトナットとを掛け渡す第1取付部を取り付け、
前記ゴム材シートの表面側に前記第1取付部とともに前記ゴム材シートを前記内壁面上に固定する第2取付部を位置させ、
放入される水が衝突する位置の内壁面上にゴム材シートを配設し、
前記第2取付部と前記第1取付部とを組んで前記ゴム材シートを前記内壁面上に固定することを備え、
前記複数の連結用ボルトナットは円周方向を向く連結用ボルトナットと、長手軸線方向を向く連結用ボルトナットとを有し、円周方向を向く連結用ボルトナットに対応する第1取付部と、長手軸線方向を向く連結用ボルトナットに対応する第1取付部は互いに直交する、
ことを特徴とするゴム材シートの配設方法。
【請求項5】
前記第1取付部は、前記連結用ボルトナットに取り付けられるブラケットと、前記ブラケットに設けられた固定ナットまたは固定ボルトとを有し、
前記第2取付部は、前記固定ナットと螺合可能な固定ボルトまたは前記固定ボルトと螺合可能な固定ナットを有する
ことを特徴とする請求項4に記載のゴム材シートの配設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の複数のセグメントを連結して構成される集水用配管装置とそれに用いられるゴム材シートの配設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、地上に降った雨水等は、
図8に示すように、地中100に埋設されたコンクリート材からなる例えばシールドトンネル型の集水用配管装置101へ、導管102の落下口103から落下して流入し、集水用配管装置101を流れて河川等へ導かれる。
【0003】
この場合、落下口103から落下する水を受ける位置の集水用配管装置101の内壁104には、落下する水によってたたき付けられ騒音が発生し、また内壁104が損傷する問題が生じていた。また、シールドトンネル型の集水用配管装置101に限らず、組み立て式のマンホール型の集水用配管装置においても、マンホールの側壁部に放水された水が直接的に衝突したり側壁部に衝突した後に底部に落下衝突しマンホールの側壁部や底部が損傷する問題が生じていた。
【0004】
この問題に対応するために、騒音の吸収と内壁の保護のために、ゴム材シート105が落下口103に対応する集水用配管装置101の内壁104上に配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−52269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、ゴム材シート105を集水用配管装置101の内壁104上に配設することは、アンカーボルト106をゴム材シート105上から集水用配管装置101へ打ち込むことによって行われていた。
【0007】
このために、集水用配管装置101を構成するコンクリート材にひび割れが生じることがあり、ひび割れを介して雨水等が集水用配管装置101から漏れ出たり集水用配管装置101の弱体化がすすむという問題があった。
【0008】
そこで、本願発明は上記従来技術の有する問題を解消し、コンクリート材を損傷させることなくゴム材シートを取り付け可能な集水用配管装置とゴム材シートの配設方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本願発明に係る集水用配管装置は、コンクリート製の複数のセグメントを連結して構成され入水口から放入されて流入する水を流すための集水用配管装置であって、放入される水が衝突する位置の内壁面上に配設されるゴム材シートと、隣接する前記セグメント同士を連結する連結用ボルトナットが格納されるボルトボックス内に取り付けられ前記ゴム材シートの裏面側部と前記連結用ボルトナットとを掛け渡す第1取付部と、前記ゴム材シートの表面側に位置し前記第1取付部と組んで前記ゴム材シートを前記内壁面上に固定する第2取付部とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記第1取付部は、前記連結用ボルトナットに取り付けられるブラケットと、前記ブラケットに設けられた固定ナットまたは固定ボルトとを有し、前記第2取付部は、前記固定ナットと螺合可能な固定ボルトまたは前記固定ボルトと螺合可能な固定ナットを有することを特徴とする。
【0011】
また、前記ゴム材シートは、内部に層設された金属材シートを有することを特徴とする。
【0012】
また、本願発明に係るゴム材シートの配設方法は、コンクリート製の複数のセグメントを連結して構成され入水口から放入されて流入する水を流すための集水用配管装置において、放入される水が衝突する位置の内壁面上にゴム材シートを配設するゴム材シートの配設方法であって、隣接する前記セグメント同士を連結する連結用ボルトナットが格納されるボルトボックス内に、前記ゴム材シートの裏面側部と前記連結用ボルトナットとを掛け渡す第1取付部を取り付け、前記ゴム材シートの表面側に前記第1取付部と組んで前記ゴム材シートを前記内壁面上に固定する第2取付部を位置させ、放入される水が衝突する位置の内壁面上にゴム材シートを配設し、前記第2取付部と前記第1取付部とを組んで前記ゴム材シートを前記内壁面上に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の構成によれば、隣接する前記セグメント同士を連結する連結用ボルトナットが格納されるボルトボックス内に取り付けられゴム材シートの裏面側部と連結用ボルトナットとを掛け渡す第1取付部と、ゴム材シートの表面側に位置し第1取付部と組んでゴム材シートを内壁面上に固定する第2取付部とを備えるので、集水用配管装置を構成するコンクリート材を、例えばアンカーボルトを打ち込むことによる損傷を生じさせることなくゴム材シートを取り付けることが可能になる。
【0014】
また、第1取付部は、連結用ボルトナットに取り付けられるブラケットと、ブラケットに設けられた固定ナットまたは固定ボルトとを有し、第2取付部は、固定ナットと螺合可能な固定ボルトまたは固定ボルトと螺合可能な固定ナットを有するので、簡易にゴム材シートを集水用配管装置の底部内壁面上に取り付けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本願発明に係る集水用配管装置を一実施形態を示し、集水用配管装置を構成するセグメントのボルトボックスの部位を示す断面図。
【
図2】集水用配管装置の底部に配設されたゴム材シートを示す平面図。
【
図4】ゴム材シートの配設方法を示す断面図(a)と側面図(b)。
【
図5】ゴム材シートの配設方法を示す断面図(a)と側面図(b)。
【
図6】ゴム材シートの配設方法を示す断面図(a)と側面図(b)。
【
図7】ゴム材シートの配設方法を示す断面図(a)と側面図(b)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を参照して、本願発明に係る集水用配管装置の実施の形態について説明する。
図1は、雨水等が落下する落下口に対応する集水用配管装置1の底部に配設されたゴム材シート5を示す断面図である。
図2は、集水用配管装置1の底部に配設されたゴム材シート5を示す平面図である。
図3は、
図2の矢視A−Aに関する断面図である。ここでは、集水用配管装置1の例として地面に水平に配設されたシールドトンネル型の集水用配管装置を説明する。
【0017】
集水用配管装置1は、コンクリート製の複数のセグメント2を組合せ連結して構成されている。集水用配管装置1は例えば
図8に示す集水用配管装置101のような形状を有し、直径は例えば1.6m〜10mである。セグメント2は、軸方向に例えば0.7m〜1.5mの長さを有し、例えば75mm〜600mmの肉厚を有する。集水用配管装置1の円周方向には例えば5〜7個のセグメント2が連結される。
【0018】
既知のように、複数のセグメント2はそれぞれの端部側壁にはボルトボックス3が形成されている。ボルトボックス3はセグメント2の例えば端部にほぼ直方体状の凹部を形成するように設けられている。ボルトボックス3には、隣接するセグメント同士2、2を連結する連結用ボルトナット4が格納される。連結用ボルトナット4はボルトボックス3を形成するフランジ2aにボルトとナットとで連結するものである。集水用配管装置1は、その円周方向と長手軸線方向の両方向に渡って、ボルトボックス3に格納された連結用ボルトナット4によって複数のセグメント2が組み合わせ連結されて構成されている。
【0019】
図1に示すように、ゴム材シート5は、内部に層設された金属材シート6を有する。また、隣接するセグメント2、2は、そのフランジ2a、2aが連結用ボルトナット4によって連結される。連結用ボルトナット4は、対面するように位置するボルトボックス3内に格納される。
【0020】
なお、隣接するセグメント同士2、2のボルトボックス3が互いに対面する代わりに一方のフランジ2a側のみにボルトボックス3があるほうにすることも可能である。この場合、他方のフランジ2aには例えばナットが固着されており、一方のフランジ2a側のボルトボックス3を介してボルトを他方のフランジ2a側のナットに螺合するようにすればよい。
【0021】
図1において、ゴム材シート5の裏面側(集水用配管装置1の内壁面と反対側)には第1取付部7、8がボルトボックス4内に取り付けられており、ゴム材シート5の表面側(集水用配管装置1の内壁面側)には、第1取付部7、8と組んでゴム材シート5を内壁面上に固定する第2取付部9が設けられている。
【0022】
第1取付部7、8は、連結用ボルトナット4に一端が取り付けられた断面L字状に形成されたブラケット7と、ブラケット7の他端側に設けられた固定ナット8とを有する。第2取付部9は、固定ナット8と螺合可能な固定ボルト9を有する。なお、第1取付部7、8の固定ナット8を固定ボルトに代え、第2取付部9の固定ボルト9を固定ナットに代えることも可能である。
【0023】
なお、ここで、第2取付部9が第1取付部7、8と組むとは、第1取付部7、8と第2取付部9とが、互いに螺合しあうことに限らず、互いに引っ張り合う等のように協同的に作用することによって締め付け合う関係にあることをも含むものである。
【0024】
ゴム材シート5には、固定ナット8に螺合するための固定ボルト9を通すための貫通孔10が形成されている。このゴム材シート5に形成された貫通孔10はボルトボックス3が位置に対応する位置に形成されている。また、貫通孔10は、金属材シート6より上側部では固定ボルト9の座部がゴム材シート5に埋設できるように太く形成され、金属材シート6の部分では固定ボルト9の座部が留められ固定ボルト9の軸部だけが貫通するように細く形成され、金属材シート6より下側部では座金11を収納するように太く形成されている。
【0025】
ブラケット7の一端が連結用ボルトナット4に取り付けられ、固定ナット8と固定ボルト9によってゴム材シート5が集水用配管装置1の底部内壁面上に取り付けられる前に、ボルトボックス3内はモルタル12で充填される。
【0026】
なお、上述の説明においては、集水用配管装置1としては、地面に水平に配設されたシールドトンネルを例にして説明したが、本願発明はこれに限らず、例えば、地面に垂直に配設された組み立て式のマンホールに対しても適用することができる。この場合、マンホールの地表に近い位置に入水口があり、この入水口から水平方向に勢いよく水が放入され、放入された水の一部はマンホールの側壁部に衝突し、また、マンホールの側壁部に衝突した水及び放入された水の残部はマンホールの底部に落下して衝突する。このような場合には、放入される水が衝突する位置の内壁面上に配設されるゴム材シートとしては、マンホールの側壁部と底部とに配設するようにすればよい。
【0027】
次に、
図4乃至
図7を参照して、ゴム材シート5の配設方法について説明する。対向するボルトボックス3は片方のみを示す。
【0028】
まず、
図4に示すように、隣接するセグメント2、2同士を連結する連結用ボルトナット4が格納されるボルトボックス3内に取り付けられゴム材シート5の裏面側部と連結用ボルトナット4とを掛け渡す第1取付部として、一端部に固定ナット8が固着された第1取付部7、8のブラケット7を用意する。次に、
図5に示すように、隣接するセグメント同士2、2を連結する連結用ボルトナット4にブラケット7の他端部を取り付ける。次に、
図6に示すように、ボルトボックス3内にモルタル12を充填するとともに、所定位置に貫通孔10が形成されたゴム材シート5と第2取付部9の固定ボルト9を用意する。次に、
図7に示すように、ゴム材シート5の裏面側から貫通孔10に締め付け材としての座金11を配設するとともに、固定ボルト9をゴム材シート5の貫通孔10に通し固定ナット8に螺合しゴム材シート5を集水用配管装置1の底部に取り付ける。このようにして、集水用配管装置1の底部内壁面上にゴム材シート5が取り付けられる。
【0029】
以上のように、本実施の形態によれば、ボルトボックス4内に収納して取り付けられた第1取付部7、8と、第1取付部7、8と組んでゴム材シート5を内壁面上に固定する第2取付部9とを備えるので、セメント材からなるセグメント2にアンカーボルトを打ち込むことをせずに、集水用配管装置1の底部内壁面上にゴム材シート5を取り付けることができ、アンカーボルトを打ち込むことによって生じ得るブラケット7のひび割れを回避することができる。
【0030】
また、セグメント2に予め形成されているボルトボックス3を活用するので、第1取付部7、8を収納するために新たにボルトボックスを作成する必要がない。
【0031】
また、第1取付部7、8は、連結用ボルトナット4に一端が取り付けられたブラケット7とブラケット7の他端側に設けられた固定ナット8とを有し、第2取付部9は固定ナット8と螺合可能な固定ボルト9を有するので、アンカーボルトを用いることなく簡易にゴム材シート5を集水用配管装置1の底部内壁面上に取り付けることができる。
【0032】
また、ゴム材シート5は、内部に層設された金属材シート6を有するので、ゴム材シート5に形成した貫通孔10を金属材シート6の部分では細く形成することにより、固定ボルト9の座部が金属材シート6の上面に留められるようにすることができ、固定ボルト9を簡易に固定ナット8に締め付けることが可能になる。
【0033】
なお、セグメントに形成された連結用ボルトナットが格納されるボルトボックスの形状としては、実質的に連結用ボルトナットの格納が可能であれば、
図1や
図5等に示したものに限らず、例えば、連結用ボルトナットを格納可能なスペースが形成されているだけのものであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 集水用配管装置
2 セグメント
3 ボルトボックス
3a 取付壁部
4 連結用ボルトナット
5 ゴム材シート
6 金属材シート
7 ブラケット
8 固定ナット
9 固定ボルト
10 貫通孔
11 座金
12 モルタル