特許第6411314号(P6411314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6411314液体VOCの燃焼処理装置及び燃焼処理方法
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  • 特許6411314-液体VOCの燃焼処理装置及び燃焼処理方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411314
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】液体VOCの燃焼処理装置及び燃焼処理方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/04 20060101AFI20181015BHJP
   F23C 99/00 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   F23G7/04 601G
   F23G7/04ZAB
   F23G7/04 603K
   F23G7/04 603A
   F23C99/00 332
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-233158(P2015-233158)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-101839(P2017-101839A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】516267566
【氏名又は名称】株式会社環境コンサルティング
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】宇治 茂一
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−298393(JP,A)
【文献】 特開2009−233617(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/019131(WO,A1)
【文献】 特開2010−133682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G7/04−7/06
F23C99/00
F23K5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体VOCを水蒸気により加熱して気化させる気化手段と、前記気化手段により生成した気体VOCを水蒸気と混合する混合手段と、前記混合手段により生成した混合ガスを燃焼する燃焼手段とを備え、前記気化手段において液体VOCの気化に使用された水蒸気の余剰分が前記混合手段において気体VOCと混合されるように構成されたことを特徴とする液体VOCの燃焼処理装置。
【請求項2】
液体VOCを水蒸気により加熱して気化させる気化ステップと、前記気化ステップにより生成した気体VOCを水蒸気と混合する混合ステップと、前記混合ステップにより生成した混合ガスを燃焼する燃焼ステップとを備え、前記気化ステップにおいて液体VOCの気化に使用された水蒸気の余剰分を前記混合ステップにおいて気体VOCと混合することを特徴とする液体VOCの燃焼処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化回収された液体VOCを燃料として有効利用するための、燃焼処理装置及び燃焼処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
VOC(揮発性有機化合物;Volatile Organic Compounds)は、塗料溶剤(シンナー等)、接着剤、インキ、一部の洗浄剤等に含まれおり、その種類は、トルエン、キシレン、酢酸エチルなど主なもので約200種ある。VOCは固定発生源から大気中に年間約100万トン排出されており、浮遊粒子状物質(SPM)や光化学オキシダントの原因物質の一つにもなっている。このため、2006年に大気汚染防止法によりVOCの排出規制が施行されている。
【0003】
VOCの排出を規制する方法としては、燃焼処理により分解、無害化した後に廃棄する方法が一般的である。しかし、この場合、VOC自身の燃焼熱が無駄に廃棄されるばかりでなく、燃焼処理のための補助燃料(プロパンガス等)の燃焼熱も無駄に廃棄されるという問題があった。
【0004】
また、VOCを含有する排気をボイラの燃焼用空気として使用することで、VOCの燃焼熱を有効利用する方法も知られている。しかし、この場合、VOC濃度は高くても数千ppmと非常に希薄であるため、有効活用の効果が少ないという問題があった。
【0005】
一方、活性炭回収方法等で回収したVOCをボイラのバーナ近傍に注入し、ボイラ燃料の一部として使用する方法がある。この方法によれば、大幅なボイラ燃料経費の削減、省エネの実現を図ることができる。しかし、VOCの多くは、フェニル基(芳香族)、カルボニル基(−C=O)等の二重結合をもつ分子が多く、これらを従来の方法で燃焼させると、バーナへのカーボンの堆積や、黒煙を発生させる場合が多いという問題や、VOCは炭素/水素比が比較的大きく、燃焼火炎が輻射の多い輝炎となるため、バーナ等の高温部の寿命が短くなる可能性が高いという問題、さらには、NO発生が増加する傾向にあるといった問題があった。
【0006】
また、上記のVOCをボイラ燃料の一部として使用する方法の問題を解決する方法として、水蒸気流中に液体VOCを噴霧し、水蒸気とVOCとの直接的な熱交換により、VOCと水蒸気の混合ガスを生成し、それをガスタービンの燃焼器に注入した例がある。しかし、この場合、水蒸気の一部はその潜熱をVOCの気化に利用され、凝縮液化して凝縮水を生成するが、以下の不都合を発生させる。
【0007】
第一に、VOCがトルエン等の非水溶性の物質であれば問題ないが、近年使用が増えている、酢酸エチル、MEK(メチルエチルケトン)等の水溶性物質の場合、前述の凝縮水はそれらの物質の一部を溶解して排出されることになるため、排水処理の新たな問題を引き起こすことになる。
【0008】
第二に、水蒸気流中に液体VOCを噴霧する場合、その雰囲気は常に飽和状態に保たれた気化、凝縮のバランスとなる。したがって、バーナまでの配管で外気への放熱が少しでもあると、混合ガスの一部が凝縮液化することになり、これも排水処理の新たな問題を引き起こすことになる。
【0009】
さらに、液体VOCを冷却水と混合して燃焼器で燃焼させる方法も開示されている(特許文献1)。しかし、この場合、上記のVOCと水蒸気の混合ガスを生成する方法において問題となる排水処理の問題は生じないものの、液体VOCと冷却水の気化熱により燃焼器の温度が低下し、安定した燃焼が望めないという問題があった。また、液体VOCが疎水性の場合は、液体VOCと冷却水を均一に混合することが困難であるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−133682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上記の問題を解決して液体VOCを燃料として有効利用するために、VOCの燃焼の際に煙の発生を抑制し、バーナ等の高温部の寿命を延し、NOの発生を減少させ、排水処理の問題を引き起こすこともなく、さらに、VOCを安定して燃焼させることのできる、液体VOCの燃焼処理装置及び燃焼処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の液体VOCの燃焼処理装置は、液体VOCを水蒸気により加熱して気化させる気化手段と、前記気化手段により生成した気体VOCを水蒸気と混合する混合手段と、前記混合手段により生成した混合ガスを燃焼する燃焼手段とを備え、前記気化手段において液体VOCの気化に使用された水蒸気の余剰分が前記混合手段において気体VOCと混合されるように構成されたことを特徴とする。
【0013】
本発明の液体VOCの燃焼処理方法は、液体VOCを水蒸気により加熱して気化させる気化ステップと、前記気化ステップにより生成した気体VOCを水蒸気と混合する混合ステップと、前記混合ステップにより生成した混合ガスを燃焼する燃焼ステップとを備え、前記気化ステップにおいて液体VOCの気化に使用された水蒸気の余剰分を前記混合ステップにおいて気体VOCと混合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、気体VOCと水蒸気の混合ガスを燃焼するので、VOCの燃焼の際に煙の発生を抑制し、バーナ等の高温部の寿命を延ばし、NOの発生を減少させることができる。また、液体VOCの気化に使用された水蒸気の余剰分を気体VOCと混合するので、液体VOCを水蒸気流中に噴霧して気化させる場合のように混合ガスが凝縮液化して排水処理の問題を引き起こすことがない。さらに、気体VOCと水蒸気を混合して生成した混合ガスを燃焼するので、VOCの種類によらずVOCを安定して燃焼させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の液体VOCの燃焼処理装置の一実施例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の液体VOCの燃焼処理装置及び燃焼処理方法について具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
【実施例1】
【0017】
はじめに、本発明の液体VOCの燃焼処理装置の構成について説明する。
【0018】
本発明の液体VOCの燃焼処理装置の一実施例を示す図1において、1はボイラであり、ボイラ1には、給水ポンプ2と流量計3を備えた給水ライン4が接続している。ボイラ1は、送風機5を備えたバーナ6を有しており、バーナ6には、流量計7と燃料ポンプ8を備えた主燃料ライン9が接続している。また、ボイラ1は、蒸気ライン10と排気ライン11を備えている。さらに、ボイラ1は、給水ポンプ2,燃料ポンプ8などを制御するための制御盤12を備えている。
【0019】
13は複数のバッフルプレートを備えた、多管式の熱交換器であり、熱交換器13の上部には、弁14と流量計15を備えた蒸気ライン16が接続している。なお、蒸気ライン16は、本実施例1では、蒸気ライン10から分岐しているが、他の蒸気源に別途接続される蒸気ラインでもよい。熱交換器13の下部には、ドレンライン17と余剰蒸気ライン18が接続している。一方、熱交換器13の底部には、流量調整ダイアル付のVOC送液ポンプ19と弁20を備えた液体VOCライン21が接続し、熱交換器13の頂部には、気体VOCライン22が接続している。
【0020】
23はインラインミキサーであり、余剰蒸気ライン18と気体VOCライン22が接続している。また、インラインミキサー23とバーナ6には、混合気ライン24が接続している。
【0021】
なお、図1中、一点鎖線で囲まれた範囲が、本発明の液体VOCの燃焼処理装置の主要な部分となる。
【0022】
つぎに、動作について説明する。
【0023】
ボイラ1において、主燃料ライン9から供給された灯油などの主燃料をバーナ6で燃焼させ、給水ライン4から供給された水を加熱して水蒸気を発生させる。ボイラ1で発生した水蒸気は、蒸気ライン10から各設備(図示せず)へ供給されるほか、蒸気ライン16から熱交換器13に供給される。
【0024】
熱交換器13では、液体VOCライン21から供給された液体VOCを、熱交換器13の底部から頂部へ向かって伝熱管(図示せず)の内側に流す。一方、蒸気ライン16から供給された水蒸気を、熱交換器13の上部から下部に向かって伝熱管(図示せず)の外側に流す。すなわち、液体VOCを下から上へ向かって、水蒸気を上から下へ向かって流す。これにより、伝熱管(図示せず)の内側の液体VOCと外側の水蒸気の間で熱交換が行われ、液体VOCが気化する。なお、蒸気ライン16から供給される水蒸気の量は、液体VOCを気化するために必要な量よりも多くなっている。
【0025】
液体VOCの気化により生じた気体VOCは、気体VOCライン22からインラインミキサー23へ向かう。液体VOCの気化に使用された水蒸気は凝縮してドレンとなり、ドレンライン17から排出される。なお、このドレンは、給水ライン4からボイラ1に供給され再利用される。また、液体VOCの気化に使用されなかった余剰分の水蒸気は、余剰蒸気ライン18からインラインミキサー23へ向かう。
【0026】
インラインミキサー23では、気体VOCと余剰水蒸気が混合されて混合ガスが生成し、この混合ガスは、混合気ライン24からバーナ6に向かう。そして、混合ガスは、バーナ6の燃焼域に注入されて主燃料とともに燃焼される。なお、インラインミキサー23で混合されるまでは、気体VOC、水蒸気ともにそれぞれ飽和状態となっているが、混合されるとそれぞれの分圧が下がって飽和温度が上昇して過熱蒸気の状態となるため、インラインミキサー23からその後のバーナ6に至るまで、混合ガスは凝縮しにくい状態が保たれる。例えば、混合前の気体VOCが2気圧、水蒸気が2〜4気圧がそれぞれで飽和していたものが、インラインミキサー23で混合するとそれぞれの分圧が0.5気圧となるようになっている。
【0027】
以上のように、本実施例の液体VOCの燃焼処理装置は、液体VOCを水蒸気により加熱して気化させる気化手段としての熱交換器13と、熱交換器13により生成した気体VOCを水蒸気と混合する混合手段としてのインラインミキサー23と、インラインミキサー23により生成した混合ガスを燃焼する燃焼手段としてのバーナ6とを備え、熱交換器13において液体VOCの気化に使用された水蒸気の余剰分がインラインミキサー23において気体VOCと混合されるように構成されたものである。
【0028】
また、本実施例の液体VOCの燃焼処理方法は、液体VOCを水蒸気により加熱して気化させる気化ステップと、前記気化ステップにより生成した気体VOCを水蒸気と混合する混合ステップと、前記混合ステップにより生成した混合ガスを燃焼する燃焼ステップとを備え、前記気化ステップにおいて液体VOCの気化に使用された水蒸気の余剰分を前記混合ステップにおいて気体VOCと混合するものである。
【0029】
本実施例によれば、気体VOCと水蒸気の混合ガスを燃焼するので、VOC燃焼の際に、VOC単独で燃焼した場合に発生する煙の発生を抑制することができる。また、水蒸気との混合ガスを燃焼することにより、VOC単独で燃焼した場合よりも燃焼火炎が透明度の高い輻射の少ないものとなるため、バーナ等の高温部の寿命を延ばすことができる。また、混合ガスを燃焼することにより、VOC単独で燃焼した場合よりも燃焼火炎の温度が低くなるため、NOの発生を減少させることができる。
【0030】
また、本実施例では、液体VOCの気化に使用された水蒸気の余剰分を気体VOCと混合するという、従来技術には見られない構成を有する。なお、従来技術においては、水蒸気加熱による気化器は、例えばLPG気化器等の一般的な機器として知られているが、供給された水蒸気はすべて凝縮液化されるようになっており、飽和水蒸気が取り出されることも、被気化物質と混合されることもない。
【0031】
一方、水蒸気流中に液体VOCを噴霧し、水蒸気とVOCとの直接的な熱交換により、VOCと水蒸気の混合ガスを生成する従来技術においては、水蒸気の一部はその潜熱をVOCの気化に利用され、凝縮液化して凝縮水を生成するが、VOCが水溶性物質の場合、前述の凝縮水はVOCの一部を溶解して排出されることになるため、排水処理の問題を引き起こすことになる。これに対して、本実施例では、熱交換器13を用いた間接的な加熱によりVOCを気化させるため、VOCの気化時に発生する凝縮水にVOCが混入することがなく、このような排水処理の問題を引き起こすことがない。また、本実施例では、熱交換器13で凝縮液化した凝縮水にVOCが混入することがないため、この凝縮水はドレンとして取り出されてボイラ1に供給され再利用することができる。
【0032】
また、水蒸気流中に液体VOCを噴霧する従来技術においては、その雰囲気は常に飽和状態に保たれた気化、凝縮のバランスとなる。したがって、バーナまでの配管で外気への放熱が少しでもあると、混合ガスの一部が凝縮液化することになり、排水処理の問題を引き起こすことになる。これに対して、本実施例では、インラインミキサー23で混合されるまでは、気体VOC、水蒸気ともにそれぞれ飽和状態となっているが、混合されるとそれぞれの分圧が下がって飽和温度が上昇して過熱蒸気の状態になるため、混合ガスは凝縮しにくい乾いた状態が保たれ、このような排水処理の問題を引き起こすことがない。
【0033】
さらに、液体VOCを冷却水と混合して燃焼器で燃焼させる従来技術においては、液体VOCと冷却水の気化熱により燃焼器の温度が低下し、安定した燃焼が望めないという問題があった。また、液体VOCが疎水性の場合は、液体VOCと冷却水を均一に混合することが困難であるという問題もあった。これに対して、本実施例では、気体VOCと水蒸気を混合して生成した混合ガスを燃焼するので、液体VOCと冷却水の気化熱により燃焼器の温度が低下することなく、VOCを安定して燃焼させることができる。また、VOCの種類によらず水蒸気と均一に混合して、VOCを安定して燃焼させることができる。
【符号の説明】
【0034】
6 バーナ(燃焼手段)
13 熱交換器(気化手段)
23 インラインミキサー(混合手段)
図1