特許第6411370号(P6411370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6411370腹膜透析システム、腹膜透析装置および腹膜透析カセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411370
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】腹膜透析システム、腹膜透析装置および腹膜透析カセット
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/28 20060101AFI20181015BHJP
【FI】
   A61M1/28 110
   A61M1/28 130
【請求項の数】36
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-552653(P2015-552653)
(86)(22)【出願日】2013年12月23日
(65)【公表番号】特表2016-502911(P2016-502911A)
(43)【公表日】2016年2月1日
(86)【国際出願番号】US2013077424
(87)【国際公開番号】WO2014109900
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2016年12月21日
(31)【優先権主張番号】13/738,144
(32)【優先日】2013年1月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508180910
【氏名又は名称】フレセニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】プラヘイ、カルウィンダー エス.
(72)【発明者】
【氏名】ファレル、ショーン
【審査官】 石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−527308(JP,A)
【文献】 特表2008−531192(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0302844(US,A1)
【文献】 特表2003−530917(JP,A)
【文献】 特開平03−051054(JP,A)
【文献】 特表2011−526175(JP,A)
【文献】 特表2001−510079(JP,A)
【文献】 特開平04−319361(JP,A)
【文献】 特表平09−508302(JP,A)
【文献】 特開2003−284723(JP,A)
【文献】 特表2010−532237(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0299273(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/28
A61M 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本腹膜透析システムと、前記基本腹膜透析システムから独立して作動する腹膜透析流体交換システムと、を備える腹膜透析システムであって、
前記基本腹膜透析システムは、
患者に接続されるように構成された第1患者管路を備えた第1使い捨てユニットと、
腹膜透析装置と、を備え、該腹膜透析装置は、
第1使い捨てユニットを受容するように構成された隔室と、
少なくとも1つのポンプと、を備え、前記ポンプは、第1使い捨てユニットが前記隔室内に配置されるとき、前記ポンプが第1使い捨てユニットと協働して、第1使い捨てユニットの第1患者管路を介して、患者の腹膜腔に透析物を供給し、かつ、患者の腹膜腔から透析物を排出させるように配置されており、
前記腹膜透析流体交換システムは、前記基本腹膜透析システムの大きさおよび重量を下回る大きさおよび重量を有しており、かつ、
第2患者管路を介して患者の腹膜腔に流体を供給し、かつ、患者の腹膜腔から流体を排出させることができるように、患者に接続されるように構成された第2患者管路と、
少なくとも1つの弁座と、を備えた第2使い捨てユニットと、
手で持てるような大きさの流体交換装置と、を備え、該流体交換装置は、
第2使い捨てユニットを受容するように構成された隔室と、
第2使い捨てユニットが前記隔室内に配置されるとき、第2使い捨てユニットの少なくとも1つの弁座と協働するように構成された少なくとも1つの弁部材と、
患者医療データを前記腹膜透析流体交換システムから基本腹膜透析システムに転送するように作動可能なデータ交換インターフェースと、を備え、
前記基本腹膜透析システムは、
患者の治療計画に基づいて、患者の腹膜腔に透析物を自動的に供給し、かつ、患者の腹膜腔から透析物を自動的に排出させ、
前記腹膜透析流体交換システムから転送された前記患者医療データに基づいて、前記患者の治療計画を変更するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記流体交換装置はセンサーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記データ交換インターフェースは送信機であり、前記基本腹膜透析システムは受信機をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記データ交換インターフェースは、前記基本腹膜透析システムから延びるデータ通信ラインへの接続を可能にするように構成された入力/出力ポートである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記腹膜透析流体交換システムは流量計を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記流体交換装置は、第2使い捨てユニットが前記流体交換装置の隔室内に配置されるとき、第2使い捨てユニットに隣接して配置されるセンサーをさらに備え、前記センサーは患者医療データを得るように作動可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記患者医療データは、患者へ移送された流体の量と、患者から排出された流体の量と、を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記腹膜透析流体交換システムは、
前記腹膜透析流体交換システムを通る流体流量を計算し、
前記腹膜透析流体交換システムを通る流体流動の継続時間を計算し、
計算された流体流量と計算された継続時間とを用いて、患者に注入された流体の量および患者から排出された流体の量のうちの少なくとも一方を求めるように構成されたプロセッサーを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサーは、計算された流体流量、計算された継続時間、患者へ移送された流体の量、および患者から排出された流体の量のうちの少なくとも1つを格納するようにさらに構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
第2使い捨てユニットは、
基部と、
可撓性膜であって、前記基部と可撓性膜とが協働して、第2患者管路と連絡するように配置される流体通路を形成するように、前記基部に取り付けられている可撓性膜と、を備え、
前記流体通路は、第1圧力センサー座部と、第2圧力センサー座部と、第1圧力センサー座部と第2圧力センサー座部との間に配置された、流体通路直径が縮小された局所領域と、を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
第2使い捨てユニットは、
基部と、
可撓性膜であって、前記基部と可撓性膜とが協働して、第2患者管路と連絡するように配置される流体通路を形成するように、前記基部に取り付けられており、第2患者管路は、注入管路部および排出管路部に接続された患者管路部を有する、可撓性膜と、を備え、
前記患者管路部は、第1圧力センサー座部と、第2圧力センサー座部と、第1圧力センサー座部と第2圧力センサー座部との間に配置された、流体通路直径が縮小された局所領域とを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記流体交換装置は第1圧力センサーと第2圧力センサーとを備え、
前記流体交換装置は、第1圧力センサーが第1圧力センサー座部に対応する位置に配置され、かつ、第2圧力センサーが第2圧力センサー座部に対応する位置に配置されるような方法で、前記流体交換装置の隔室内に第2使い捨てユニットを受容するように構成されており、
前記流体交換装置は、
制御装置をさらに備え、該制御装置は、
第1圧力センサーおよび第2圧力センサーによって検知された流体圧力データを受信し、受信した流体圧力データに基づいて流体流動データを計算し、
前記流体流動データを前記データ交換インターフェースに転送するように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記注入管路部は注入管路部弁座を備え、
前記排出管路部は排出管路部弁座を備え、
第2使い捨てユニットは、第1圧力センサー座部と、前記注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間に配置されたポンプチャンバを備え、
前記流体交換装置は、
前記注入管路部弁座に対応する位置には注入管路弁が配置され、
前記排出管路部弁座に対応する位置には排出管路弁が配置され、
前記ポンプチャンバに対応する位置には流体ポンプが配置されるような方法で、前記流体交換装置の隔室内に第2使い捨てユニットを受容するように構成されており、前記流体ポンプは前記ポンプチャンバと協働して流体を流体通路内においてポンプ輸送するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記注入管路部は注入管路部弁座を備え、
前記排出管路部は排出管路部弁座を備え、
第2使い捨てユニットは、第1圧力センサー座部と、前記注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間に配置されたポンプチャンバと、前記ポンプチャンバ内に配置されたポンプロータとを備え、
前記流体交換装置は、
前記注入管路部弁座に対応する位置には注入管路弁が配置され、
前記排出管路部弁座に対応する位置には排出管路弁が配置され、
前記ポンプチャンバに対応する位置に誘導コイルが配置されるような方法で、前記流体交換装置の隔室内に第2使い捨てユニットを受容するように構成されており、前記誘導コイルは、前記ポンプロータを駆動して、流体を流体通路内においてポンプ輸送するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
第2使い捨てユニットは、流体の流れがポンプチャンバを通り越して迂回するのを選択的に可能にするバイパス通路を備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
第2使い捨てユニットはバイパス通路を備え、該バイパス通路は、
前記ポンプチャンバと、前記注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間の位置において患者管路部と連絡する第1端部と、
前記ポンプチャンバと第1圧力センサー座部との間の位置において患者管路部と連絡する第2端部と、
バイパス弁座と、を有する、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記流体交換装置は前記バイパス弁座に対応する位置においてバイパス弁を備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記流体通路直径が縮小した局所領域は、前記流体通路内に配置されたオリフィスプレートを含み、前記オリフィスプレートは、その両側の流体通路の部分の内径よりも小さな直径を有する開口を備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記転送された患者医療データは前記基本腹膜透析システムの患者医療データと同期される、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記腹膜透析流体交換システムは、454グラム(1ポンド)未満である重量を有する、請求項に記載のシステム。
【請求項21】
腹膜透析装置であって、
患者に接続されるように構成された患者管路を備える使い捨てユニットを受容するように構成された隔室と、
少なくとも1つのポンプであって、前記使い捨てユニットが前記隔室内に配置されるとき、前記ポンプが前記使い捨てユニットと協働して、患者の治療計画に従って、前記使い捨てユニットの患者管路を介して、患者の腹膜腔に透析物を供給し、かつ、患者の腹膜腔から透析物を排出させるように配置されており、前記患者の治療計画には注入量および排出量が含まれる、少なくとも1つのポンプと、
独立した腹膜透析システムから患者医療データを受信するように構成されたデータ転送インターフェースであって、患者医療データは、前記独立した腹膜透析システムによって実施された腹膜透析中に得られている、データ転送インターフェースと、
受信した患者医療データに基づいて患者の治療計画を自動的に変更する制御装置と、を備える、腹膜透析装置。
【請求項22】
腹膜透析カセットであって、
基部と、
可撓性膜であって、前記基部と可撓性膜とが協働して流体通路を形成するように前記基部に取り付けられており、前記流体通路は、注入管路部および排出管路部に接続された患者管路部を有する、可撓性膜と、を備え、
前記流体通路は、第1圧力センサー座部と、第2圧力センサー座部と、第1圧力センサー座部と第2圧力センサー座部との間に配置された、流体通路直径が縮小された局所領域と、を備え、前記流体通路直径が縮小された局所領域によって前記患者管路部内の流体流量の測定が可能になる、腹膜透析カセット。
【請求項23】
第1圧力センサー座部と、前記注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間の前記流体通路に沿って配置されたポンプチャンバを備える、請求項2に記載の腹膜透析カセット。
【請求項24】
前記ポンプチャンバ内に少なくとも部分的に配置された誘導ポンプを備える、請求項2に記載の腹膜透析カセット。
【請求項25】
流体の流れが前記ポンプチャンバを通り越して迂回するのを選択的に可能にするバイパス通路を備える、請求項2に記載の腹膜透析カセット。
【請求項26】
前記ポンプチャンバと、前記注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間の位置において患者管路部と連絡する第1端部と、
前記ポンプチャンバと第1圧力センサー座部との間の位置において患者管路部と連絡する第2端部と、
バイパス弁座と、を有するバイパス通路を備える、請求項2に記載の腹膜透析カセット。
【請求項27】
前記局所領域は前記流体通路内に配置されたオリフィスプレートを含み、前記オリフィスプレートは、その両側の流体通路の部分の内径よりも小さな直径を有する開口を備える、請求項2に記載の腹膜透析カセット。
【請求項28】
腹膜透析カセットを備えた腹膜透析システムであって、前記腹膜透析カセットは、
基部と、
可撓性膜であって、前記基部と可撓性膜とが協働して流体通路を形成するように前記基部に取り付けられており、前記流体通路は、注入管路部および排出管路部に接続された患者管路部を有する、可撓性膜と、を備え、
前記流体通路は、第1圧力センサー座部と、第2圧力センサー座部と、第1圧力センサー座部と第2圧力センサー座部との間に配置された、流体通路直径が縮小された局所領域と、を備え、前記流体通路直径が縮小された局所領域によって前記患者管路部内の流体流量の測定が可能になる、腹膜透析システム。
【請求項29】
当該腹膜透析システムは、第1圧力センサーと第2圧力センサーとを備えた流体交換装置をさらに含み、
前記流体交換装置は、第1流体圧力センサーが第1圧力センサー座部に対応する位置に配置され、かつ、第2流体圧力センサーが第2圧力センサー座部に対応する位置に配置されるような方法で、前記腹膜透析カセットを支持するように構成されており、
前記流体交換装置は、
第1流体圧力センサーおよび第2流体圧力センサーによって検知された流体圧力データを受信し、受信した流体圧力データに基づいて流体流動データを計算するように構成された制御装置と、
前記流体流動データを当該腹膜透析システムから遠隔位置に転送するように構成されたデータ交換インターフェースと、をさらに備える、請求項2に記載の腹膜透析システム。
【請求項30】
前記注入管路部は注入管路部弁座を備え、
前記排出管路部は排出管路部弁座を備え、
前記腹膜透析カセットは、第1圧力センサー座部と、前記注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間に配置されたポンプチャンバを備え、
前記流体交換装置は、
前記注入管路部弁座に対応する位置にある注入管路弁と、
前記排出管路部弁座に対応する位置にある排出管路弁と、
前記ポンプチャンバに対応する位置にある流体ポンプであって、前記ポンプチャンバと協働して、前記流体通路を介して流体をポンプ輸送するように構成されている流体ポンプと、を備える、請求項29に記載の腹膜透析システム。
【請求項31】
前記注入管路部は注入管路部弁座を備え、
前記排出管路部は排出管路部弁座を備え、
前記腹膜透析カセットは、
第1圧力センサー座部と、前記注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間に配置されたポンプチャンバと、
前記ポンプチャンバ内に配置されたポンプロータと、をさらに備え、
前記流体交換装置は、
前記注入管路部弁座に対応する位置にある注入管路弁と、
前記排出管路部弁座に対応する位置にある排出管路弁と、
前記ポンプチャンバに対応する位置にある誘導コイルであって、前記ポンプロータを駆動して、前記流体通路を介して流体をポンプ輸送するように構成されている誘導コイルと、を備える、請求項29に記載の腹膜透析システム。
【請求項32】
前記腹膜透析カセットは、流体の流れが前記ポンプチャンバを通り越して迂回するのを選択的に可能にするバイパス通路をさらに備える、請求項31に記載の腹膜透析システム。
【請求項33】
前記腹膜透析カセットはバイパス通路をさらに備え、該バイパス通路は、
前記ポンプチャンバと、前記注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間の位置において患者管路部と連絡する第1端部と、
前記ポンプチャンバと第1圧力センサー座部との間の位置において患者管路部と連絡する第2端部と、
バイパス弁座と、を有する、請求項3に記載の腹膜透析システム。
【請求項34】
前記流体交換装置は前記バイパス弁座に対応する位置においてバイパス弁を備える、請求項3に記載の腹膜透析システム。
【請求項35】
前記流体通路直径が縮小した局所領域は、前記流体通路内に配置されたオリフィスプレートを含み、前記オリフィスプレートは、その両側の流体通路の部分の内径よりも小さな直径を有する開口を備える、請求項2に記載の腹膜透析システム。
【請求項36】
前記流体流量は、前記第1圧力センサー座部の位置および前記第2圧力センサー座部の位置で測定された圧力と、前記開口の直径とに基づいて算出される、請求項35に記載の腹膜透析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、腹膜透析システム、並びに関連する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透析は腎機能が不十分な患者を支援するために用いられる治療である。2つの主な透析法は血液透析および腹膜透析である。
血液透析(hemodialysis:「HD」)中、患者の血液は透析装置のダイアライザーに通され、それと同時に透析溶液または透析物もダイアライザーに通される。ダイアライザー内の半透膜はダイアライザー内の透析物から血液を分離し、透析物と血流との間で拡散および浸透交換が行なわれることを可能にする。半透膜を介したこれらの交換は、血液からの尿素およびクレアチニンのような溶質を含む老廃物の除去をもたらす。これらの交換はまた、血液中のナトリウムおよび水のような他の物質の濃度を調整する。このように、透析装置は血液を浄化するための人工腎臓として機能する。
【0003】
腹膜透析(「PD」)中、患者の腹膜腔には、透析溶液または透析物が周期的に注入される。患者の腹膜の膜内層(membranous lining)は、透析溶液と血流との間で拡散および浸透交換が行われることを可能にする天然の半透膜として作用する。HDにおけるダイアライザーを介した連続的な交換のような患者の腹膜を介したこれらの交換は、血液から尿素およびクレアチニンのような溶質を含む老廃物の除去をもたらし、血液中のナトリウムおよび水のような他の物質の濃度を調整する。
【0004】
一般に「サイクラー」と称される多くのPD装置は、「連続サイクラー支援腹膜透析」(continuous cycler−assisted peritoneal dialysis:CCPD)と称されるプロセスにおいて、透析物を自動的に患者の腹膜腔内に注入し、滞留させ、また患者の腹膜腔から排出させるように設計されている。この治療は、多くの場合、使用または消費された透析物を腹膜腔から取り出すための初期排出手順から始まって、典型的には数時間にわたって継続する。シーケンスは、次に一連の注入期、滞留期および排出期を通じて進行する。各期はサイクルと呼ばれる。
【0005】
治療は長く、PD装置のサイズが大きく、また治療に大量の透析物が必要となるために、治療は患者の睡眠中に自宅で実施され得る。夜間CCPD治療は一部の患者には十分であるが、他の患者は日中に1回以上の付加的な流体交換を必要とする。患者が自宅外で通常の日常生活を送ることを可能にするために、透析流体のバッグを患者の腹腔カテーテルに接続し、腹膜腔に約1〜3リットルの透析物を供給することによって、連続携行式腹膜透析(continuous ambulatory peritoneal dialysis:CAPD)が行われる。透析物を所定期間にわたって腹膜腔内に滞留させた後、透析物は腹膜腔から排出される。患者は、典型的には、日中の交換の回数および日中の交換中に使用した透析物の量を監視および記録する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記した腹膜透析装置をより向上させた腹膜透析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、腹膜透析システムは、基本腹膜透析システムと、基本腹膜透析システムから独立して作動する腹膜透析流体交換システムとを備える。基本腹膜透析システムは、患者に接続されるように構成された第1患者管路を含む第1使い捨てユニットと、腹膜透析装置とを備える。腹膜透析装置は、第1使い捨てユニットを受容するように構成された隔室と、少なくとも1つのポンプとを備え、ポンプは、第1使い捨てユニットが隔室内に配置されるとき、ポンプが第1使い捨てユニットと協働して、第1使い捨てユニットの第1患者管路を介して、患者の腹膜腔に透析物を供給し、かつ、患者の腹膜腔から透析物を排出させるように配置されている。腹膜透析流体交換システムは、第2患者管路を介して、患者の腹膜腔に流体を供給し、かつ、患者の腹膜腔から流体を排出させることができるように患者に接続されるように構成された第2患者管路を備えた第2使い捨てユニットと、流体交換装置とを備える。流体交換装置は、第2使い捨てユニットを受容するように構成された隔室と、腹膜透析流体交換システムから基本腹膜透析システムへ患者医療データ(patient treatment data)を転送するように作動可能なデータ交換インターフェースとを備える。
【0008】
実施例は、以下の特徴のうちの1つ以上を備え得る。
いくつかの実施例において、基本腹膜透析システムは、患者の治療計画に基づいて、透析物を患者の腹膜腔に自動的に供給し、かつ、透析物を患者の腹膜腔から自動的に排出させ、腹膜透析流体交換システムから転送された患者医療データに基づいて患者の治療計画を変更するように構成されている。
【0009】
いくつかの実施例において、データ交換インターフェースは送信機であり、基本腹膜透析システムは受信機をさらに備える。
いくつかの実施例において、データ交換インターフェースは、基本腹膜透析システムから延びるデータ通信ラインへの接続を可能にするように構成された入力/出力ポートである。
【0010】
いくつかの実施例において、腹膜透析流体交換システムは流体流量計を備える。
いくつかの実施例において、流体交換装置は、第2使い捨てユニットが流体交換装置の隔室内に配置されるとき、第2使い捨てユニットに隣接して配置されるセンサーをさらに備え、センサーは患者医療データを得るように作動可能である。
【0011】
いくつかの実施例において、患者医療データは、患者へ移送された流体の量(volume)と、患者から排出された流体の量とを含む。
いくつかの実施例において、腹膜透析流体交換システムは、腹膜透析流体交換システムを通る流体流量(fluid flow rates)を計算し、腹膜透析流体交換システムを通る流体流動の継続時間を計算し、計算された流体流量と計算された継続時間とを用いて、患者に注入された流体の量および患者から排出された流体の量のうちの少なくとも一方を求めるように構成されたプロセッサーを備える。
【0012】
いくつかの実施例において、プロセッサーは、計算された流体流量、計算された継続時間、患者へ移送された流体の量、および患者から排出された流体の量の少なくとも1つを格納するようにさらに構成されている。
【0013】
いくつかの実施例において、第2使い捨てユニットは、基部と可撓性膜とを備え、可撓性膜は、基部と可撓性膜とが協働して、第2患者管路と連絡するように配置される流体通路を形成するように、基部に取り付けられており、流体通路は、第1圧力センサー座部と、第2圧力センサー座部と、第1圧力センサー座部と第2圧力センサー座部との間に配置された、流体通路直径が縮小された局所領域とを備える。
【0014】
いくつかの実施例において、第2使い捨てユニットは、基部と可撓性膜とを備え、可撓性膜は、基部と可撓性膜とが協働して、第2患者管路と連絡するように配置される流体通路を形成するように、基部に取り付けられており、第2患者管路は、注入管路部および排出管路部に接続された患者管路部を有し、患者管路部は、第1圧力センサー座部と、第2圧力センサー座部と、第1圧力センサー座部と第2圧力センサー座部との間に配置された、流体通路直径が縮小された局所領域とを備える。
【0015】
いくつかの実施例において、流体交換装置は第1圧力センサーと第2圧力センサーとを備え、流体交換装置は、第1圧力センサーが第1圧力センサー座部に対応する位置に配置され、かつ、第2圧力センサーは第2圧力センサー座部に対応する位置に配置されるような方法で、第2使い捨てユニットを流体交換装置の隔室内に受容するように構成されており、流体交換装置は制御装置をさらに備える。制御装置は、第1圧力センサーおよび第2圧力センサーによって検知された流体圧力データを受信し、その受信した流体圧力データに基づいて流体流動データを計算し、流体流動データをデータ交換インターフェースに転送するように構成されている。
【0016】
いくつかの実施例において、注入管路部は注入管路部弁座を備え、排出管路部は排出管路部弁座を備える。加えて、第2使い捨てユニットは、第1圧力センサー座部と、注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間に配置されたポンプチャンバを備える。流体交換装置は、注入管路部弁座に対応する位置には注入管路弁が配置され、排出管路部弁座に対応する位置には排出管路弁が配置され、ポンプチャンバに対応する位置には流体ポンプが配置されるような方法で、第2使い捨てユニットを流体交換装置の隔室内に受容するように構成されており、流体ポンプはポンプチャンバと協働して、流体を流体通路内においてポンプ輸送するように構成されている。
【0017】
いくつかの実施例において、注入管路部は注入管路部弁座を備え、排出管路部は排出管路部弁座を備える。加えて、第2使い捨てユニットは、第1圧力センサー座部と、注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間に配置されたポンプチャンバと、ポンプチャンバ内に配置されたポンプロータとを備える。流体交換装置は、注入管路部弁座に対応する位置には注入管路弁が配置され、排出管路部弁座に対応する位置には排出管路弁が配置され、ポンプチャンバに対応する位置には誘導コイルが配置されるような方法で、流体交換装置の隔室内に第2使い捨てユニットを受容するように構成されており、誘導コイルは、ポンプロータを駆動して、流体を流体通路内においてポンプ輸送するように構成されている。
【0018】
いくつかの実施例において、第2使い捨てユニットは、流体の流れがポンプチャンバを通り越して迂回するのを選択的に可能にするバイパス通路を備える。
いくつかの実施例において、第2使い捨てユニットは、ポンプチャンバと、注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間の位置において患者管路部と連絡する第1端部と、ポンプチャンバと第1圧力センサー座部との間の位置において患者管路部と連絡する第2端部と、バイパス弁座とを有するバイパス通路を備える。
【0019】
いくつかの実施例において、流体交換装置はバイパス弁座に対応する位置においてバイパス弁を備える。
いくつかの実施例において、流体通路直径が縮小された局所領域は、流体通路中に配置されたオリフィスプレートを含み、オリフィスプレートは、オリフィスプレートの両側の流体通路の部分の内径よりも小さな直径を有する開口を備える。
【0020】
いくつかの実施例において、転送された患者医療データは、基本腹膜透析システムの患者医療データと同期される。
いくつかの実施例において、腹膜透析流体交換システムは、基本腹膜透析システムの大きさおよび重量を下回る大きさおよび重量を有する。
【0021】
いくつかの実施例において、腹膜透析流体交換システムは、454グラム(1ポンド)未満である重量を有する。
別の態様において、腹膜透析装置は、患者に接続されるように構成された患者管路を備えた使い捨てユニットを受容するように構成された隔室と、少なくとも1つのポンプと、ポンプは、使い捨てユニットが隔室内に配置されるとき、使い捨てユニットと協働して、患者の治療計画に従って、使い捨てユニットの患者管路を介して患者の腹膜腔に透析物を供給し、かつ、患者の腹膜腔から透析物を排出させるように配置されていることと、独立した腹膜透析システムから患者医療データを受信するように構成されたデータ転送インターフェースと、患者データは、独立した腹膜透析システムによって実施された腹膜透析中に得られたことと、受信した患者医療データに基づいて患者の治療計画を自動的に変更する制御装置とを備える。
【0022】
別の態様において、透析治療を提供する方法は、第1腹膜透析システムによって実施された腹膜透析中に患者医療データを得ることと、得られた患者医療データを第1腹膜透析システムから第2腹膜透析システムに転送することと、第1腹膜透析システムから転送された、得られた患者医療データに基づいて、第2腹膜透析システムを用いて、変更された患者治療計画を決定することとを含み、変更された患者治療計画は第2腹膜透析システムによって実施される。
【0023】
実施例は、以下の特徴のうちの1つ以上を備え得る。
いくつかの実施例において、透析治療を提供する方法は、変更された患者治療計画に基づいて、第2腹膜透析システムを用いて、腹膜透析を実施することを含む。
【0024】
いくつかの実施例において、患者医療データを得ることは、第1腹膜透析システムを通る流体流量を測定することと、第1腹膜透析システムを通る流体流動の継続時間を測定することとを含む。
【0025】
いくつかの実施例において、患者医療データを得ることは、第1腹膜透析システムを通る流体流量を測定することと、第1腹膜透析システムを通る流体流動の継続時間を測定することと、測定された流体流量と測定された流体流動の継続時間とを用いて、患者に注入された流体の量および患者から排出された流体の量のうちの少なくとも一方を求めることとを含む。
【0026】
いくつかの実施例において、変更された患者治療計画を決定することは、第1腹膜透析システムを用いて患者に注入された流体の量および患者から排出された流体の量に基づいて、透析治療における注入量および排出量のうちの少なくとも一方を調整することを含む。
【0027】
いくつかの実施例において、得られた患者医療データの転送は、第1腹膜透析システムと第2腹膜透析システムとの間の無線接続を介して行われる。
いくつかの実施例において、得られた患者医療データの転送は、第1腹膜透析システムと第2腹膜透析システムとの間の有線接続を介して行われる。
【0028】
他の態様において、腹膜透析カセットは基部と可撓性膜とを備え、可撓性膜は、基部と可撓性膜とが協働して流体通路を形成するように基部に取り付けられており、流体通路は、注入管路部および排出管路部に接続された患者管路部を有する。流体通路は、第1圧力センサー座部と、第2圧力センサー座部と、第1圧力センサー座部と第2圧力センサー座部との間に配置された、流体通路直径が縮小された局所領域とを備える。
【0029】
実施例は、以下の特徴の1つ以上を備え得る。
いくつかの実施形態において、腹膜透析カセットは、第1圧力センサー座部と、注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間の流体通路に沿って配置されたポンプチャンバを備える。
【0030】
いくつかの実施例において、腹膜透析カセットは、ポンプチャンバ内に少なくとも部分的に配置された誘導ポンプを備える。
いくつかの実施例において、腹膜透析カセットは、流体の流れがポンプチャンバを通り越して迂回するのを選択的に可能にするバイパス通路を備える。
【0031】
いくつかの実施例において、腹膜透析カセットは、ポンプチャンバと、注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間の位置において患者管路部と連絡する第1端部と、ポンプチャンバと第1圧力センサー座部との間の位置において患者管路部と連絡する第2端部と、バイパス弁座とを有するバイパス通路を備える。
【0032】
いくつかの実施例において、局所領域は、流体通路中に配置されたオリフィスプレートを含み、オリフィスプレートは、オリフィスプレートの両側の流体通路の部分の内径よりも小さな直径を有する開口を備える。
【0033】
他の態様において、腹膜透析システムは、基部と可撓性膜とを備えた腹膜透析カセットを含み、可撓性膜は、基部と可撓性膜とが協働して流体通路を形成するように基部に取り付けられており、流体通路は、注入管路部および排出管路部に接続された患者管路部を有する。流体通路は、第1圧力センサー座部と、第2圧力センサー座部と、第1圧力センサー座部と第2圧力センサー座部との間に配置された、流体通路直径が縮小された局所領域とを備える。
【0034】
実施例は、以下の特徴の1つ以上を備え得る。
いくつかの実施例において、腹膜透析システムは、第1圧力センサーと第2圧力センサーとを備えた流体交換装置をさらに含む。流体交換装置は、第1流体圧力センサーが第1圧力センサー座部に対応する位置に配置され、かつ、第2流体圧力センサーは第2圧力センサー座部に対応する位置に配置されるような方法で腹膜透析カセットを支持するように構成されている。流体交換装置は、第1流体圧力センサーおよび第2流体圧力センサーによって検知された流体圧力データを受信し、受信した流体圧力データに基づいて流体流動データを計算するように構成された制御装置と、流体流動データを腹膜透析装置から遠隔位置に転送するように構成されたデータ交換インターフェースとをさらに備える。
【0035】
いくつかの実施例において、注入管路部は注入管路部弁座を備え、排出管路部は排出管路部弁座を備え、腹膜透析カセットは、第1圧力センサー座部と、注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間に配置されたポンプチャンバを備える。加えて、流体交換装置は、注入管路部弁座に対応する位置にある注入管路弁と、排出管路部弁座に対応する位置にある排出管路弁と、ポンプチャンバに対応する位置にある流体ポンプとを備え、流体ポンプはポンプチャンバと協働して、流体通路を介して流体をポンプ輸送するように構成されている。
【0036】
いくつかの実施例において、注入管路部は注入管路部弁座を備え、排出管路部は排出管路部弁座を備え、腹膜透析カセットは、第1圧力センサー座部と、注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間に配置されたポンプチャンバと、ポンプチャンバ内に配置されたポンプロータとをさらに備える。加えて、流体交換装置は、注入管路部弁座に対応する位置にある注入管路弁と、排出管路部弁座に対応する位置にある排出管路弁と、ポンプチャンバに対応する位置にある誘導コイルとを備え、誘導コイルは、ポンプロータを駆動して、流体通路を介して流体をポンプ輸送するように構成されている。
【0037】
いくつかの実施例において、腹膜透析カセットは、流体の流れがポンプチャンバを通り越して迂回するのを選択的に可能にするバイパス通路をさらに備える。
いくつかの実施例において、腹膜透析カセットは、ポンプチャンバと、注入管路部および排出管路部が患者管路部に接続する領域との間の位置において患者管路部と連絡する第1端部と、ポンプチャンバと第1圧力センサー座部との間の位置において患者管路部と連絡する第2端部と、バイパス弁座とを有するバイパス通路をさらに備える。
【0038】
いくつかの実施例において、流体交換装置はバイパス弁座に対応する位置においてバイパス弁を備える。
いくつかの実施例において、流体通路直径が縮小された局所領域は、流体通路中に配置されたオリフィスプレートを含み、オリフィスプレートは、オリフィスプレートの両側の流体通路の部分の内径よりも小さな直径を有する開口を備える。
【0039】
実施例は、以下の利点のうちの1つ以上を備え得る。
いくつかの実施例において、腹膜透析流体交換システムは、CAPD中に交換された流体の量を自動的に測定して記録しながら、CAPDを可能にする。例えば、腹膜透析流体交換システムは、CAPD中に、腹膜腔に供給された流体の量、および腹膜腔から排出された流体の量を求める。腹膜透析流体交換システムは、CAPD中に交換された流体の量を自動的に測定して記録するため、データ収集中における患者の過誤および測定誤差(measurement inaccuracies)を回避することができる。
【0040】
いくつかの実施例において、腹膜透析流体交換システムは、小型軽量の(例えば、手で持てる)装置と、装置内に受容される使い捨て流体管路セットとを含む。腹膜透析流体交換システムは、いくつかの従来のPDサイクラーよりも携帯性に優れ、従って、典型的には外出中に行われる日中の流体交換により便利である。
【0041】
いくつかの実施例において、腹膜透析流体交換システムは、流体ポンプと、CAPD中における透析物の流れの制御の改善を可能にする弁とを備える。腹膜透析流体交換システムを用いてCAPDを実施することにより、CAPD中に腹膜腔への流体の供給および腹膜腔からの流体の排出を行うのに必要とされる時間を短縮することができ、また各CAPDサイクル中に、供給された流体がすべて逐次的に排出されることを保証するのを助けることができる。
【0042】
いくつかの実施例において、腹膜透析システムは、患者の治療計画に従ってCCPDを実施する基本PDシステムと、基本PDシステムから遠隔の位置においてCAPDを実施する腹膜透析流体交換システムとを備える。腹膜透析流体交換システムは、CAPD中に交換された流体の量を含む患者医療データを自動的に測定して記録し、患者医療データを基本PDシステムに自動的に転送する。転送された患者医療データを受信すると、基本PDシステムは患者の治療計画を更新および変更し、変更された患者治療計画に基づいて腹膜透析を実施する。腹膜透析流体交換システムはCAPD中に得られた患者医療データを基本PDシステムに転送するため、患者の治療計画がより高精度で実施されるため、基本PDシステムによって実施されるCCPDの質が改善される。加えて、CAPD中の患者医療データの収集および収集された患者医療データのPDシステムへの転送の間における人的過誤の機会が低減される。他の利点としては、腹膜透析流体交換システムによって日中交換量が自動的に測定されて記録され、基本PDシステムに転送され、基本PDシステムによって実施される患者の治療計画は転送されたデータを反映するように変更されるため、CCPD中における患者の過剰充填の可能性の見込みを低減することが挙げられる。
【0043】
本発明の他の態様、特徴および利点は、本記載、図面、および特許請求の範囲から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】PDサイクラーと、PDサイクラーにデータを転送することができるPD流体交換装置とを備えた腹膜透析(「PD」)システムの斜視図。
図2】携行用カートの上に配置された図1のPDサイクラーの斜視図。
図3図2に示したPDサイクラーとともに用いられるPD流体カセットの分解斜視図。
図4図1のPDシステム内の制御および通信システムを示す概略図。
図5】重力供給式PD流体交換システムの分解斜視図。
図6】開放されたPD流体交換装置内に配置されたPD流体交換カセットを示す図5のPD流体交換システムの斜視図。
図7】閉鎖されたPD流体交換装置内に配置されたPD流体交換カセットを示す図5のPD流体交換システムの斜視図。
図8図5のPDの流体交換カセットの斜視図。
図9図8の9−9線に沿って見た図5のPD流体交換カセットの側断面図。
図10】ポンプ供給式PD流体交換システムの分解斜視図。
図11】重力供給式またはポンプ供給式のいずれかであり得るPD流体交換システムの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1および図2を参照すると、腹膜透析(「PD」)システムは、基本PDシステム101と、腹膜透析流体交換システム201とを備える。腹膜透析流体交換システム201は、基本PDシステム101から独立して作動し、動作中、基本PDシステム101から物理的に遠隔にあってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、腹膜透析流体交換システムは、職場または学校において、CAPDの一部として日中の流体交換を提供するために用いられる。腹膜透析流体交換システムは、腹膜透析流体交換装置(例えばPD流体交換装置)202と、簡易医療用流体カセット(例えば流体交換カセット)212とを備える。PD流体交換装置202は、該装置を容易に持ち運びできるように、PDサイクラー102に比べて小型かつ軽量である。一部の例では、PD流体交換装置202は手で持てるような大きさに形成されている。加えて、PD流体交換装置202は、以下でより詳細に検討するように、流体流量を含む患者医療データを監視および記録する検知器と、PD流体交換装置202によって得られた患者医療データをPDサイクラー102に転送するように作動可能なデータ交換インターフェースとを備える。
【0046】
基本PDシステム101は、PDサイクラー102と、2012年4月9日に出願され、参照によって本願に援用される同時係属中の米国特許出願第13/422,184号に記載されているような使い捨てPD流体カセット112とを備える。いくつかの実施形態において、PDサイクラー102およびPDカセット112は連続サイクラー支援腹膜透析を提供するために用いられる。よって、PDサイクラー(PD装置とも称される)102は家庭用に設計されている。その大きさおよび重量により、PDサイクラー102は、家庭環境におけるPDサイクラー102の取り扱いおよび保管のし易さを向上するために用いられるカート104上に支持されて示されている。PDサイクラー102は、ハウジング106、ドア108、およびカセット接触面110を備える。カセット接触面110は、PD流体カセット112がカセット接触面110と閉鎖されたドア108との間に形成されるカセット隔室114内に配置されるとき、使い捨てPD流体カセット112に当接する。ハウジング106の上面には加熱器トレー116が配置されている。加熱器トレー116は、透析溶液のバッグ(例えば、5リットルの透析溶液のバッグ)を収容するような大きさおよび形状に形成されている。PDサイクラー102はまた表示画面118および制御ボタン120を備える。いくつかの実施形態において、表示画面118はタッチスクリーンである。表示画面118および制御ボタン120はユーザー(例えば患者)によって操作され、例えば、PD治療の設定、開始、および/または終了を可能にすることができる。
【0047】
図2に示すように、透析溶液バッグ122は、カート104の側面上の指部から吊るされ、加熱器バッグ124は加熱器トレー116上に配置される。透析溶液バッグ122および加熱器バッグ124は、透析溶液バッグ管路126および加熱器バッグ管路128を介してカセット112にそれぞれ接続される。透析溶液バッグ管路126は、使用の間に透析溶液を透析溶液バッグ122からカセット112へ送出するために用いることができ、加熱器バッグ管路128は使用の間に透析溶液をカセット112と加熱器バッグ124との間で行き来させるために用いることができる。加えて、患者管路130および排出管路132はカセット112に接続されている。患者管路130は、カテーテルを介して患者の腹部に接続され、使用の間にカセット112と患者との間で透析溶液を行き来させるために用いることができる。排出管路132は排液管または排液容器に接続され、使用の間に透析溶液をカセット112から排液管または排液容器に送出するために用いることができる。
【0048】
PDサイクラー102は、カセット接触面110に形成されたピストンアクセスポート136A,136B内において軸線方向に移動させることができるピストンヘッド134A,134Bを有するピストン133A,133Bを備える。ピストン133A,133Bは、ピストンヘッド134A,134Bをピストンアクセスポート136A、136B内において軸線方向に内側および外側に移動させるように操作されるモータに接続されている。下記で検討するように、カセット112がPDサイクラー102のカセット隔室114内に配置され、ドア108が閉鎖されているとき、PDサイクラー102のピストンヘッド134A,134Bは、ピストンヘッド134A,134Bが、ポンプチャンバ138A,138B上に重なるカセット112のドーム型締結部材161A,161Bに機械的に接続されるように、カセット112のポンプチャンバ138A,138Bと整合する。この配置の結果として、治療中、ピストンヘッド134A,134Bのカセット112に向かう運動は、ポンプチャンバ138A,138Bの容積を減少させて、ポンプチャンバ138A,138Bから透析溶液を押し出すことができ、一方、ピストンヘッド134A,134Bがポンプチャンバ138A,138Bから離れて後退することによりカセット112の容積を増大させ、ポンプチャンバ138A,138B内に透析溶液を引き込むことができる。よってモータ、ピストン133A,133Bおよびピストンヘッド134A,34Bは、ポンプチャンバ138A,138Bと協働して、流体をPDカセット112内で推進する流体ポンプ140として機能する。
【0049】
PDサイクラー102はまた、カセット接触面110の膨張可能部材ポート内に配置された多数の膨張可能部材142も備える。膨張可能部材142は、カセット112がPDサイクラー102のカセット隔室114内に配置されるとき、カセット112の押圧可能なドーム領域146と整合する。図1では、膨張可能部材142およびドーム領域146のうちの2つのみが標識されているが、PDサイクラー102が、カセット112の押圧可能ドーム領域146の各々に関連する膨張可能部材を備えることが理解されるはずである。膨張可能部材142は、使用中に透析溶液をカセット112内において所望のように導く弁として作用する。具体的には、膨張可能部材142は、膨張時には、カセット接触面110の表面を越えて外側に膨出し、カセット112の押圧可能ドーム領域146と接触し、収縮時には、膨張可能部材ポート144内へと後退し、カセット112とは接触しなくなる。特定の膨張可能部材142を膨張させて、カセット112上のそれらの関連するドーム領域146を押圧することによって、カセット112内の特定の流体流通路が閉塞される。よって、PD溶液は、ピストンヘッド134A,134Bを作動させることにより、カセット112を通ってポンプ輸送され、かつ膨張可能部材142を選択的に膨張および収縮させることにより、カセット112内の所望の流通路に沿って案内される。
【0050】
図3を参照すると、PD流体カセット112は、トレーのような硬質基部156の周囲に取り付けられた可撓性膜140を備えた使い捨てユニットである。基部156は隆起した突条(raised ridges)167を備える。隆起した突条167は基部156のほぼ平坦な表面から可撓性膜140の内表面に向かって延び、PD流体カセット112がドア108とPDサイクラー102のカセット接触面110との間で圧縮されるとき、可撓性膜140の内表面と接触して一連の流体通路158を形成し、かつ、流体通路158の拡幅部(例えばほぼ円形の拡幅部)である多数の押圧可能ドーム領域146を形成する。流体通路158は、PD流体カセット112の流入口/流出口として作用するPD流体カセット112の流体管路コネクタ160を流体ポンプチャンバ138A,138Bに流体が流れるように接続する(fluidly connect)。上述したように、PDサイクラー102の様々な膨張可能弁部材142は、使用中にPD流体カセット112に作用する。使用中、透析溶液は、ポンプチャンバ138A,138Bに対して、流体通路158およびドーム領域146を通って流入および流出する。それぞれの押圧可能ドーム領域146において、膜140は隆起した突条167が延びる基部156の平坦な表面と接触するように撓められ得る。そのような接触は、そのドーム領域146に関連する通路158の領域に沿った透析溶液の流動を実質的に妨げる(例えば、防止する)ことができる。よって、PD流体カセット112を通る透析溶液の流動は、PDサイクラー102の膨張可能部材142を選択的に膨張させることによって、押圧可能ドーム領域146の選択的な押圧により制御することができる。
【0051】
流体管路コネクタ160はカセット112の下端に沿って配置されている。上述したように、カセット112内の流体通路158は、ポンプ輸送チャンバ138A,138Bから様々なコネクタ160に通じている。コネクタ160は、透析溶液バッグ管路126、加熱器バッグ管路128、患者管路130および排出管路132の端部上の取付具を受容するように構成されている。取付具の一端はそれらの各管路に挿入されて結合され、他端はその関連するコネクタ160に挿入されて結合される。図1および図2に示したように、透析溶液バッグ管路126、加熱器バッグ管路128、患者管路130および排出管路132のPD流体カセット112への接続を可能にすることにより、コネクタ160は、使用中に透析溶液をPD流体カセット112に流入させたり、PD流体カセット112から流出させたりすることができる。
【0052】
図4を参照すると、基本PDシステム101が使用されているとき、PD流体カセット112はPDサイクラー102の隔室114内に配置されている。PCサイクラー102は、患者管路130を介して、患者の腹膜腔に透析物を自動的に供給し、かつ患者の腹膜腔から透析物を自動的に排出させるように、流体ポンプ140および弁142を制御する制御装置180を備える。具体的には、PDサイクラー102の動作は、PDサイクラー102内のメモリ182に予め格納され、制御装置180によって実行される患者の治療計画に基づいて制御される。制御装置180は、メモリ182と、タッチスクリーン118、制御ボタン120およびデータ転送インターフェース184を含むが、これらに限定されない様々な情報入力装置または情報出力装置との間で情報(例えば透析治療を実行するための指示、患者医療データ、など)の転送を可能にするように作動可能である。メモリ182は、ハードディスク、フラッシュメモリー、RAMまたは他のデータ記憶装置のような任意の形態の記録可能媒体であり得る。いくつかの実施形態において、メモリ182は不揮発性であり、よって外部電源が切断されたときに格納した値を保持する。制御装置180は、タッチスクリーン118および/または制御ボタン120を介して患者によって入力された新たな指示またはデータに基づいて、または、以下でさらに検討するように、データ転送インターフェース184を介してPD流体交換システム201から受信した患者医療データに基づいて、予め格納された患者治療計画を自動的に変更するように構成されている。
【0053】
図5図7を参照すると、PD流体交換システム201は、PD流体交換装置202と、流体交換カセット212とを備える。PD流体交換装置は、片手で容易に保持するために小型でかつ十分に軽量である。例えば、いくつかの実施形態において、PD流体交換システム201は、流体を充填する前において454グラム(1ポンド)未満である重量を有する。以下でさらに検討するように、PD流体交換システム201は、日中の流体交換を行い、交換中に得られたデータを患者の家庭用(home−based)PDサイクラー102に通信することを可能にする弁、センサーおよび通信装置を備える。
【0054】
PD流体交換装置202は、その長さおよび幅に比べて薄いハウジング203を備える。ハウジング203は、基部206と、基部206に回転自在に接続されたカバー(ドア)208とを備えた、「クラムシェル」構造を有する。基部206は、底部216と、底部216の周囲から底部216に直交する方向に延びる側壁218とを備える。底部216および側壁218はともに隔室214を画定する。ドア208は、ハウジング203の片側に沿って側壁218に蝶着されており、隔室214を閉鎖するような寸法および形状に形成されている。ドア208は、ドア208が図7に示す閉鎖形態で選択的に保持されることを可能にするラッチ(図示せず)を備える。いくつかの実施形態において、ラッチは磁気ラッチである。
【0055】
ドア208の内面は、流体交換カセット212がハウジング206内に形成されたカセット隔室214内に配置されるときに、使い捨て流体交換カセット212に当接するカセット接触面210を提供する。PD流体交換装置202は、カセット接触面210の弁ポート内に配置された硬質弁部材242を備える。弁部材は電気的に制御される。例えば、弁部材242はソレノイド(図示せず)におけるアーマチュアとして機能し得る。電気的状態に応じて、ソレノイドは、弁部材242をその各弁ポートから前進させるため、または弁部材をその各弁ポートに後退させるために用いられる。流体交換カセット212がPD流体交換装置202のカセット隔室214内に配置されるとき、弁部材242は流体交換カセット212の押圧可能な弁座ドーム領域246と整合する。PD流体交換装置202は、流体交換カセット212の弁座ドーム領域246の各々に関連する弁部材242を備える。例えば、図5および図6に示す実施形態において、PD流体交換装置202は、流体交換カセット212の対応する弁座ドーム領域246に係合するように配置された2つの弁部材242を備える。
【0056】
弁部材242は、使用中、透析溶液を流体交換カセット212内において所望のように導く。具体的には、弁部材242は、作動時には、カセット接触面210の表面を越えて外部に突出し、流体交換カセット212の押圧可能な弁座ドーム領域246と接触し、後退時には、弁部材ポート244内に後退して、流体交換カセット212と接触しなくなる。特定の弁部材242を作動させて、カセット212上のそれらの関連する弁座ドーム領域246を押圧することにより、カセット212内の特定の流体流通路を閉塞することができる。よって、流体ポンプ250を作動させることにより、カセット212を通してPD溶液をポンプ輸送することができ、弁部材242を選択的に前進および後退させることにより、PD溶液を流体交換カセット212内の所望の流通路に沿って案内することができる。
【0057】
カセット接触面210はまた、第1圧力センサー262および第2圧力センサー264を支持する。第1圧力センサーおよび第2圧力センサー262,264は、流体交換カセット212がPD流体交換装置202のカセット隔室214内に配置されるとき、流体交換カセット212のセンサー座部ドーム領域248と整合し、該領域248に直接接触する。この配置は、流体交換カセット212の通路258内の流体圧力の検知を可能にする。
【0058】
図4を再び参照すると、PD流体交換装置202は、ユーザー(例えば患者)が操作して、例えば、流体交換の設定、開始、および/または終了を可能にすることができる制御ボタン220を備える。加えて、PD流体交換装置202はバッテリー駆動であってもよいし、または外部電力への有線接続によって動力が供給されてもよい。バッテリー電源を使用することにより可動性が増大するが、外部電力を使用すると、バッテリーと比べて、比較的軽量かつ低コストの装置が可能となる。
【0059】
PD流体交換装置202には、検知された流体圧力に対応する第1圧力センサーおよび第2圧力センサー262,264からのデータを受信し、その受信データを装置202内に収容された記憶媒体(メモリ)282上に格納する制御装置280が備えられている。制御装置280は、検知した圧力と既知のオリフィス径とに基づいて、流体通路258を通る流体流量を計算し、また計算された流体流量(fluid flow rates)と、注入手順または排出手順の間に制限部を通る流動の継続時間(duration of flow)とに基づいて流動量(flow volumes)を計算するように構成されている。計算値は記憶媒体上に格納される。例えば、各注入手順または排出手順について、記憶媒体282は、少なくとも、計算された流体流量と、計算された流体流動の継続時間と、患者へまたは患者から移送された流体の量とを格納する。
【0060】
PD流体交換装置202はまたデータ転送インターフェース284も備え、制御装置280は、データ交換インターフェース284を介して、格納された患者情報データを基部PDサイクラー102に転送するように構成されている。格納された患者情報データは、検知した圧力、注入手順および/または排出手順中の流動継続時間、計算された流動流体流量および計算された流体量のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態において、データ転送インターフェース284は、PDサイクラー102と無線通信する。例えば、データ転送インターフェース284は、ブルートゥース(登録商標)、セキュアwi−fiおよびセルラーネットワークのような無線規格および/または技術を用いて、PDサイクラーデータ転送インターフェース184と通信することができる。データ転送のタイミングは、用いられる無線通信技術の通信距離に依存するであろう。例えば、無線通信技術が長距離の能力を有する場合には、PD流体交換装置202からPDサイクラー102へのデータ転送は、データが得られたとき、および/または日中の流体交換の完了直後に行われ得る。無線通信技術が短距離の能力しか有さない場合には、PD流体交換装置202からPDサイクラー102へのデータ転送は、PD流体交換装置202が指定範囲内に移動されたときに行われ得る。他の実施形態において、データ転送インターフェース284は、ユニバーサルシリアルバス(USB)、シリアルケーブル、または他の直接接続などの有線接続を用いて、PDサイクラー102と通信する。
【0061】
図8および図9を参照すると、流体交換カセット212は、トレー状の硬質な基部256の周囲に取り付けられた可撓性膜240(図8では図示せず)を備えた使い捨てユニットである。基部256は隆起した突条267を備える。隆起した突条267は、基部256のほぼ平坦な表面から可撓性膜240の内表面に向かって延び、流体交換カセット212がドア208と流体交換装置202のカセット接触面210との間で圧縮されるときに可撓性膜240の内表面と接触して、一連の流体通路258を形成する。流体交換カセット212において、流体通路258は、患者管路部258aが流体供給管路部258bと流体排出管路部258cとに移行する分岐部268を有する患者管路部258aを含む「Y」形をしている。流体通路258a,258b,258cは流体交換カセット212の流体管路コネクタ260に流体が流れるように接続しており、流体管路コネクタ260は、流体交換カセット212の流入口/流出口として作用する。
【0062】
突条267はまた、流体通路258の拡幅部(例えば、ほぼ円形の拡幅部)である、2つの押圧可能な弁座ドーム領域246と、2つのセンサー座部ドーム領域248とを形成する。弁座ドーム領域246は流体通路258内において弁座として機能する。弁座ドーム領域246は、流体供給管路部258bおよび流体排出管路部258cの各々に設けられており、かつ、分岐部268と対応する流体管路コネクタ260との間に位置する。
【0063】
図5を再び参照すると、流体交換カセット212の一端252では、患者管路230が流体コネクタ260を介して患者管路部258aに接続されている。流体交換カセット212の反対側の端部254では、透析溶液バッグ管路226が流体コネクタ260を介して流体供給管路部258bに接続されており、かつ、排出管路232が流体コネクタ260を介して流体排出管路部258cに接続されている。患者管路230は、カテーテルを介して患者の腹部に接続され、使用の間に流体交換カセット212と患者との間で透析溶液を行き来させるために用いられる。透析溶液バッグ管路226は透析溶液バッグに接続されて、使用の間に透析溶液を透析溶液バッグから流体交換カセット212に送出するために用いられる。排出管路232は排液管または排液容器に接続され、使用の間に透析溶液を流体交換カセット212から排液管または排液容器へ送出するために用いられる。
【0064】
流体交換カセット212を通る流体の流動は、透析溶液バッグが患者より高く配置され、排液管または排液容器は患者より低く配置されているときに重力を受けて生じるため、流体交換カセット212は「重力供給(gravity feed)」カセットである。
【0065】
上述したように、流体交換カセット212がPD流体交換装置202内に配置されている場合、PD流体交換装置202の弁部材242は、使用中に流体交換カセット212に対して作用する。使用中、透析溶液は、流体通路258、およびドーム領域246,248を通って流れる。それぞれの弁座ドーム領域246において、膜240は隆起した突条267が延びる基部256の平坦な表面と接触するように撓められる。そのような接触は、その弁座ドーム領域246と関連する通路258の領域に沿った透析溶液の流動を実質的に妨げる(例えば、防止する)ことができる。よって、流体交換カセット212を通る透析溶液の流動は、PD流体交換装置202の弁部材242を選択的に作動させることによって、弁座ドーム領域246の選択的な押圧を通じて制御することが可能である。
【0066】
センサー座部ドーム領域248は、流体通路258内においてセンサー座部として機能する。双方のセンサー座部ドーム領域248は、分岐部と対応する流体管路コネクタ260との間の患者管路部258aに位置する。突条267はまた、流体通路直径が縮小された局所領域(例えば縮径領域)270を形成する。いくつかの実施形態において、突条267はこの位置においてオリフィスプレートを形成し、このオリフィスプレートは、その両側で隣接する通路258aの直径よりも小さい所定の直径を有する開口部272を備える。縮径領域270は、センサー座部ドーム領域248の間の患者管路部258aに配置されている。
【0067】
流体交換カセット212がPD流体交換装置202内に配置されるとき、圧力センサー262,264はセンサー座部ドーム領域248の各々に配置される。圧力センサー262,264は、流体流の外部の通路258内の流体圧力を検知する。具体的には、圧力センサー262,264は、可撓性膜240に接触しており、よって圧力検知中に通路258内に流れる流体とは直接接触しない。加えて、縮径領域270の両側に位置するセンサー座部ドーム領域248内に圧力センサー262,264を配置することにより、縮径領域270の両側の通路258内における流体圧力の測定が可能となる。測定された圧力は、開口部272の既知の寸法と共に、患者管路部258aにおける流体流量の測定を可能にする。この流体流量は、流体交換中の患者への流体流量および患者からの流体流量に対応する。よって、流体交換カセット212とPD流体交換装置202とは、PD流体交換システム201内において流量計を形成するように協働する。PD流体交換システム201において用いられる圧力に基づく流体流量測定の方法はまた、動的な流量の監視(例えば、状態によって変化するような流体流量の測定)を可能にし、正確な流量測定値をもたらす。さらに、患者へのおよび患者からの流体流量、並びに流体流動の継続時間を測定することにより、流体交換中に注入および排出される流体の量の計算が可能となる。
【0068】
図10を参照すると、別のPD流体交換システム301は、PD流体交換装置302と、流体交換カセット312とを備えている。以前の実施形態におけるように、PD流体交換装置302は、片手で容易に保持するために小型でかつ十分に軽量である。以前の実施形態に記載した弁、センサーおよび通信装置を備えることに加えて、PD流体交換システム301はまた、以下で検討するように、一体型流体ポンプ輸送部(integrated fluid pumping)も備える。
【0069】
流体交換カセット312は流体交換カセット212に類似しており、以下の記載において、同様の部品は共通の参照番号を有し、再び説明されない。流体交換カセット212の特徴に加えて、流体交換カセット312はまた、縮径領域270と分岐部268との間の流体通路258に配置されたポンプチャンバ338と、ポンプチャンバ338内に存在するローターアセンブリ354とを備える。具体的には、通路258を形成する隆起した突条267は、ポンプチャンバ338を形成する拡幅部369を有する。例示した実施形態において、ポンプチャンバ338は押圧可能ドーム領域246よりはるかに大きい。ローターアセンブリ354は、ローター歯357を有する一対のローター356を備えてもよく、ローター356は、ローター歯357が緊密にかみ合うように配置されており、それによって、流体は拡幅部369の内表面371に沿って、ローター歯357外周のまわりのポンプチャンバ338を通って推進される。加えて、拡幅部369はローターアセンブリ354の周囲に適合する外周形状および寸法を有する。ローター歯が緊密にかみ合わされ、ポンプチャンバがローターアセンブリの周囲に適合する配置の結果として、ローターアセンブリ354を作動させた時のみ、ポンプチャンバ338を通る流体の流動が生じる。
【0070】
PD流体交換装置302はPD流体交換装置202に類似しており、以下の記載において、同様の部品は共通の参照番号を有し、再び説明されない。PD流体交換装置202の特徴に加えて、PD流体交換装置302はまた、ハウジング底部216に形成された空所内に配置されたアクチュエータ352を備える。アクチュエータ252は、ローター356がピン355のまわりで回転するように、PD流体交換カセット312に設けられたポンプチャンバ238内に配置されたローターアセンブリ254に係合する。アクチュエータ352は、ローターアセンブリ354およびポンプチャンバ338と共に、PD流体交換カセット312を介して流体をポンプ輸送するための流体ポンプ350を形成する。例示した実施形態において、流体ポンプ350は誘導駆動型磁気ポンプ(induction driven magnetic pump)であり、アクチュエータ352は、ローターアセンブリ354を駆動するために用いられる回転磁界を生成する誘導コイルである。加えて、制御装置280は、アクチュエータ352によってローター356の方向および速度を制御するように構成されている。
【0071】
PD流体交換システム301は一体型ポンプ輸送システムを備えているため、該システムは流体を重力に逆らってポンプ輸送することができ、患者に対して透析溶液バッグを手動で持ち上げたり、排液管を手動で下げたりする必要をなくす。加えて、流体交換の速度を制御することができ、いくつかの場合には、重力供給を用いて実施した場合よりも速い流体交換をもたらす。
【0072】
図11を参照すると、別のPD流体交換システム401は、PD流体交換装置402と、流体交換カセット412とを備える。以前の実施形態におけるように、PD流体交換装置402は、片手で容易に保持するために小型でかつ十分に軽量であり、以前の実施形態に記載したポンプ輸送部、弁、センサーおよび通信装置を備える。加えて、以下で検討するように、PD流体交換システム401はまた、重力供給流体交換とポンプ供給流体交換との間の選択を可能にするために、バイパス通路458を備える。
【0073】
PD流体交換装置402はPD流体交換装置302に類似しており、以下の記載において、同様の部品は共通の参照番号を有し、再び説明されない。PD流体交換装置302の特徴に加えて、PD流体交換装置402はまた、カセット接触面210の対応する弁部材ポート内に配置された付加的な弁部材242を備える。付加的な弁部材442は、流体交換カセット412がPD流体交換装置402のカセット隔室214内に配置されるとき、バイパス通路458の押圧可能な弁座ドーム領域446と整合される。以前の実施形態におけるように、PD流体交換装置402は、流体交換カセット412の弁座ドーム領域246の各々に関連する弁部材242を備える。例えば図11に示した実施形態において、PD流体交換装置402は、流体交換カセット412の対応する弁座ドーム領域246,446に係合するように配置された3つの弁部材242を備え、使用中に、透析溶液を流体交換カセット412内において所望のように導くための弁として作用する。流体交換カセット412上のその関連する弁座ドーム領域446を押圧するために第3弁部材242を作動させる(例えば、前進させる)ことによって、流体交換カセット412内のバイパス流体通路458を閉塞することができる。第3弁部材242がバイパス流体通路458を閉鎖するように作動される場合には、流体交換カセット412を通るPD溶液の流れは、流体ポンプ350を制御することによって制御される。例えば、流体通路458が閉鎖されている場合、アクチュエータ352の動作は流体がポンプチャンバ338を通って流れるようにし、アクチュエータ352を停止することにより、流体交換カセット412を通る流体の流動は停止する。これに代わって、第3弁部材242がバイパス流体通路458を開放するように後退され、アクチュエータ352が停止された場合には、PD溶液はバイパス流体通路458を経由して流体交換カセット412を通って重力供給される。
【0074】
流体交換カセット412は流体交換カセット312に類似しており、以下の記載において、同様の部品は共通の参照番号を有し、再び説明されない。流体交換カセット312の特徴に加えて、流体交換カセット412はまた、流体流を、ポンプチャンバ338を通り越して迂回させることを選択的に可能にするバイパス通路部分458を備える。この目的のために、バイパス流体通路458は、ポンプチャンバ338と分岐部268との間の位置において患者管路部258aと交差して流体が流れるように連絡する第1端部460と、ポンプチャンバ338と隣接した圧力センサー座部248との間の位置において患者管路部258aと交差して流体が流れるように連絡する第2端部462とを有する。加えて、以前に検討したように、バイパス流体通路458は弁部材を受容するように構成されたバイパス弁座446を備える。
【0075】
流体交換カセット412がバイパス弁座446を有するバイパス流体通路458を備えているため、PD流体交換システム401は、重力供給交換またはポンプ供給交換のいずれかである日中流体交換を提供することができる。
【0076】
次に、基本PDシステム101および腹膜透析流体交換システム201,301,401を有する医療用流体ポンプ輸送システム100を用いて透析治療を提供する方法について記載する。
【0077】
CAPDは腹膜液交換システム201,301,401を用いて実施され、患者医療データは日中流体交換中に得られる。具体的には、制御装置280は、日中流体交換の注入部および排出部の間に流体圧力センサー262,264によって検知されたセンサーデータを受信し、日中流体交換に対応する患者医療データを求める。例えば、縮径領域270の上流および下流で検知された圧力と、縮径領域270の開口部の既知のサイズとに基づいて、制御装置280はカセット流体通路258の患者管路部258a内の流体流量を計算する。タイマー290によって測定されるような流体交換の継続時間に基づいて、流体交換中に患者に送達された流体の量および/または患者から排出された流体の量も計算される。いくつかの実施形態において、PD流体交換装置202,302,402によって得られる患者医療データとしては、流体交換中の検知圧力、流体交換の継続時間、計算された流体交換中の流体流量、流体交換中に患者へ移送された流体の量、流体交換中に患者から排出された流体の量、流体交換の時間および流体交換の日付が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、患者医療データは、PD流体交換装置202,302,402のメモリ282に格納される。
【0078】
得られた患者医療データは、腹膜液交換装置202,302,402のデータ交換インターフェース284からPDサイクラー102のデータ交換インターフェース184に転送される。いくつかの実施形態において、得られた患者医療データは、一定の時間遅延後に、PD流体交換装置202,302,402のメモリ282からPDサイクラー102に転送される。他の実施形態では、得られた患者医療データは、PD流体交換装置202,302,402のメモリ282におけるその格納と同時に、基本PDシステム101のPDサイクラー102に転送される。さらに別の実施形態では、得られた患者医療データは、PD流体交換装置202,302,402のメモリ282に格納されることなく、基本PDシステム101のPDサイクラー102に転送される。以前に検討したように、データ転送は、PD流体交換装置202,302,402のデータ交換インターフェース284とPDサイクラー102のデータ交換インターフェース184との間において、無線で、または直接有線接続を介して、行われる。
【0079】
転送された患者医療データは、PDサイクラー102のデータ交換インターフェース184によって受信され、PDサイクラー102のメモリ182に格納される。PDサイクラー102の制御装置180は、転送された患者データをデータ交換インターフェース184から受信するか、または転送された患者データをメモリ182から読み取る。いくつかの実施形態において、転送された患者医療データは、PDサイクラー102を用いてCCPD中に得られた患者医療データを含む、PDサイクラー102の既に格納されている患者医療データと同期される。転送された患者医療データはまた、既に格納されている患者治療計画と同期されてもよい。本願において「同期される」という用語は、転送された患者医療データをPDサイクラーメモリ182に挿入し、すべての患者医療データの時間順序が得られるように、既に格納されている患者医療データおよび他の情報と組み合わせることを指す。次に、PDサイクラー制御装置180は、PD流体交換システム201,301,401から転送された、得られた患者医療データに少なくとも部分的に基づいて、基部腹膜透析システム101を用いて、変更された患者治療計画を決定する。
【0080】
いくつかの場合において、腹膜液交換装置202,302,402を用いた日中流体交換中における患者に注入された流体の量、患者から排出された流体の量および/または流体交換の継続時間を考慮して、PDサイクラー制御装置180は、日中流体交換中に不十分な流体交換が実施されたことを判定する。この場合、PDサイクラー制御装置180は、例えば次のCCPDの間に流体交換を増大させることによって不足を是正するように、次のCCPDの間にPDサイクラー102によって実施されるべき患者の治療計画を変更してもよい。不足を是正するために、PDサイクラー制御装置180は、注入量の増大、注入継続時間の延長、排出量の低減、排出継続時間の短縮、またはこれらの組み合わせを行う。また日中流体交換中に不十分な流体交換が実施された場合には、ユーザーもまた装置によって警告される。
【0081】
他の場合において、腹膜液交換装置202,302,402を用いた日中流体交換中における患者に注入された流体の量、患者から排出された流体の量、および/または流体交換の継続時間を考慮して、PDサイクラー制御装置180は、日中流体交換中に過剰な流体交換が実施されたことを判定する。この場合、PDサイクラー制御装置180は、例えば次のCCPD中に交換される流体の量を低減することによって過剰を是正するように、次のCCPD中にPDサイクラー102によって実施されるべき患者の治療計画を変更してもよい。過剰を是正するために、PDサイクラー制御装置180は、注入量の低減、注入継続時間の短縮、排出量の増大、排出継続時間の延長、またはこれらの組み合わせを行う。また日中流体交換中に過剰な流体交換が実施された場合には、ユーザーもまた装置によって警告される。
【0082】
さらに他の場合には、腹膜液交換装置202,302,402を用いた日中流体交換中における患者に注入された流体の量、患者から排出された流体の量、および/または流体交換の継続時間を考慮して、PDサイクラー制御装置180は、日中流体交換中に適切な流体交換が実施されたことを判定し、次のCCPDの間にPDサイクラー102によって実施されるべき患者の治療計画は変更されなくてもよい。
【0083】
さらに他の場合において、腹膜液交換装置202,302,402を用いた日中流体交換中における患者に注入された流体の量、患者から排出された流体の量、および/または流体交換の継続時間を考慮して、PDサイクラー制御装置180は、日中交換中に患者からの流体の排出が不十分であったことを判定する。この場合には、PDサイクラー制御装置180は、例えば次のCCPDの第1サイクル中に注入される流体の量を低減するか、または次のCCPDの第1サイクル前に排出工程を追加することによって不十分な流体の排出を是正するように、次のCCPD中にPDサイクラー102によって実施されるべき患者の治療計画を変更する。
【0084】
次に、PDサイクラー制御装置180によって計画に対してなされた任意の変更を含む患者の治療計画に従って、PDサイクラー102を用いてCCPDが実施される。
PDサイクラー102は、本願において、メモリ182と、データ転送インターフェース184を含む様々な情報入力装置または情報出力装置との間において情報(例えば透析治療を実行するための指示、患者医療データ、など)の転送を可能にするように作動可能であると記載されている。PD流体交換装置202,302,402からPDサイクラーへの情報の転送が検討されているが、情報をPDサイクラー102からPD流体交換装置202,302,402に転送することもできる。例えば、能動ポンプ輸送機構が存在する実施形態において、PDサイクラー102は、PD流体交換装置202,302,402に対して、流量、圧力、充填量(fill volume)、および排出量を含むが、これらに限定されない事前設定パラメータを通信し得る。有利なことに、転送された情報を有するPD流体交換装置202,302,402を用いるためには、PD流体交換装置に流体交換カセットを挿入し、流体バッグおよびカテーテル管路を接続して、PD流体交換装置202,302,402を作動させるだけでよいため、この特徴は患者がPD流体交換装置202,302,402にデータを入力する必要性を最小限にする。いくつかの実施例において、交換パラメータはすべてPDサイクラー102によって事前にプログラムされ、PDサイクラー102は交換パラメータをPD流体交換装置202,302,402に通信する。その結果として、PD流体交換装置202,302,402は、患者と相互作用することなく、所望の充填、滞留、および排出シーケンスを自動的に行うことができる。
【0085】
流体交換装置202の流体ポンプ250は、本願では誘導駆動型磁気ポンプとして記載されており、そして、アクチュエータ252は、流体通路258内に位置するローターアセンブリ254を駆動するために用いられる回転磁界を発生する誘導コイルである。ローターアセンブリ254が流体通路258内に配置されているこの種の流体ポンプは、誘導型の駆動系が小型軽量であるために有利であり、これは流体交換装置202の小型化および可搬性に寄与する。しかしながら、流体ポンプ250は誘導駆動型磁気ポンプに限定されるものではない。例えば、流体のポンプ輸送は、PDサイクラー102において用いられる流体ポンプ150または蠕動ポンプのような、ポンプ輸送機構が流体通路250の外部に存在するポンプ輸送システムを用いて行われてもよい。
【0086】
PD流体交換装置はカセット接触面210の弁ポートに対して前進および後退する硬質弁部材242を備えると記載されているが、PD流体交換装置は、カセット流体通路の流体の流動を選択的に閉塞するために硬質弁部材を用いることに限定されない。一例において、カセット流体通路の流体の流動を選択的に閉塞するために、作動可能なクランプまたはロッドのような他の機械装置がカセット接触面上に提供されてもよい。別の例では、弁部材は、カセット接触面210の膨張可能部材ポート内に配置された膨張可能部材であってもよい。加えて、本願では硬質弁部材242は電気的に制御されると記載されているが、他の方法を用いて弁部材242を作動させてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、弁部材は空気圧または液圧によって制御されてもよい。
【0087】
PDサイクラー102は、ポンプチャンバ138A,138Bに重なるカセット112のドーム型固定部材161A,161Bに機械的に接続されるピストン133A,133Bを備え、モータ、ピストン133A,133Bおよびピストンヘッド134A,134Bは、ポンプチャンバ138A,138Bと協働して、PDカセット112を介して流体を駆動する流体ポンプ140として機能するが、PDサイクラー102およびPDカセット112はこれらの形態に限定されるものではなく、PDサイクラーは他の流体ポンプおよびポンプ輸送システムを実現することができる。例えば、PDサイクラー102は、ピストン133A,133Bおよびカセット112と協働して、カセットポンプチャンバ138A,138B内の体積変化を得る真空システムを備えてもよい。
【0088】
本願ではPDサイクラー102はPDカセット112とともに用いられると記載されているが、PDサイクラー102は様々な他の種類のカセットのうちのいずれとともに用いられてもよい。例えば、PD流体カセットは、代わりに、3つ以上または1つ以下のポンプチャンバを有することができる。別の例として、PD流体カセットは、フレームの各対向側面上に可撓性膜を有するラーメン構造(rigid frame)から形成されてもよい。さらに、いくつかの実施形態において、PDサイクラーはカセットを用いない種類のものであってもよい。
【0089】
PDサイクラー102およびPDカセット112を備えた基本PDシステム101は、家庭用に設計されていると記載されているが、これらの装置はクリニックのような他の環境において用いられ得る。
【0090】
PD流体交換装置202は、本願では、片手で容易に保持するために小型でかつ十分に軽量であると記載されているが、いくつかの実施形態では、PD流体交換装置は、依然としてPDサイクラーよりは可搬性に優れるが、片手で容易に保持されなくてもよい。
【0091】
PD流体交換装置202は、本願では、オリフィスプレート270と、対応するセンサー262,264とを含む、圧力に基づいた流量計を用いて流量を測定すると記載されているが、PD流体交換装置はこの流量測定構造に限定されるものではなく、流量を測定するための他の技術および/または構造を備えてもよい。いくつかの実施形態において、圧力センサー262,264の間にベンチュリノズルのような他の流動制限構造が配置されてもよい。他の実施形態では、流体通路内において流量を測定するために、機械式または光学式流量計が用いられてもよい。さらに別の実施形態では、流量計は省略されてもよく、また流体の流動は、例えばローター356の回転を追跡し、ポンプチャンバ338内のローター356の動作によって排出される既知の体積に基づいて流量を計算することによって間接的に測定されてもよい。
【0092】
PD流体交換カセットは、本願では、硬質基部256の周囲に取り付けられた可撓性膜240を備えると記載されている。いくつかの実施形態において、流体通路を画定する隆起した突条の存在を補うために、硬質基部はわずかに隆起した外側リム(図示せず)を有して形成されてもよく、そのとき膜240は外側リムに取り付けられる。硬質基部256の周縁部のまわりに膜240を取り付ける配置は、硬質基部256の周囲は通常形状が滑らかであり、よってシールすることがより容易であるため、有利である。しかしながら、いくつかの実施形態において、膜240は、流体通路を画定する隆起した突条に取り付けられてもよい。
【0093】
PDシステム100は、本願では、腹膜透析を行うために用いられると記載されているが、このシステムは、血液透析を含むが、これに限定されない他の流体ポンプ輸送用途において用いることができる。例えば、PDシステム100は、流体を清潔かつ正確にポンプ輸送することができる携帯型装置を必要とする任意の用途において用いられる。
【0094】
上記のシステムの多くは透析溶液をポンプ輸送するために用いられると記載されているが、他の種類の透析流体がPD流体交換カセットを通ってポンプ輸送されてもよい。一例として、血液透析装置とともに用いられるカセットの場合には、血液がこのカセットを介してポンプ輸送され得る。加えて、上述した様々な異なるシステムおよび技術を用いて、塩水のようなプライミング液が同様にカセットを通ってポンプ輸送され得る。同様に透析流体の代替として、カセットが用いられる医療用流体ポンプ装置の種類に応じて、様々な他の種類の医療用流体が上述のカセットを通ってポンプ輸送され得る。
【0095】
本発明の多数の実施形態について説明してきた。しかしながら、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされてもよいことが理解されるだろう。従って、他の実施形態は以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
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