(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態における振動発生器について説明する。
【0026】
振動発生器は、マグネットを保持する振動子が筐体に対して変位可能に、筐体に支持されている構造を有している。振動子の近くには、コイルが配置されている。コイルには、マグネットによる磁場の中において、振動子の筐体に対する位置及び姿勢のうち少なくとも一方を変化させるための電流が流れる。振動発生器は、コイルに電流が流れるのに応じて振動子を往復運動させることで振動力を発生する、いわゆるリニアタイプのものである。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける振動発生器1を示す斜視図である。
【0029】
以下の説明において、振動発生器1について、
図1で示される座標のX軸方向を左右方向(原点から見てX軸で正となる方向が右方向)、Y軸方向を前後方向(原点から見てY軸で正となる方向が後方向)、Z軸方向(XY平面に垂直な方向)を上下方向(原点から見てZ軸で正となる方向が上方向)ということがある。
【0031】
図1に示されるように、振動発生器1は、全体として、略直方体形状に形成されている。振動発生器1は、例えば、左右方向、前後方向のそれぞれの外形寸法が20ミリメートルから60ミリメートル程度しかない、小型のものである。
【0032】
本実施の形態においては、振動発生器1は、平面視で略正方形形状を有している。なお、振動発生器1の形状はこれに限られるものではない。
【0033】
振動発生器1は、前後左右の側面と上面とのほとんどがカバー4により構成され、他の表面がベース3により覆われた、箱形の筐体2を有している。筐体2の側周面の一部から、接続端子84aが筐体2の外部に飛び出している。そのほかの振動発生器1を構成する部材は、筐体2の内部に収納されている。
【0034】
図2は、振動発生器1の分解斜視図である。
【0035】
図2に示されるように、筐体2は、ベース3とカバー4とに上下に分かれる。ベース3やカバー4は、非磁性金属(例えば、非磁性ステンレス鋼など)製である。ベース3やカバー4は、樹脂等であってもよい。
【0036】
ベース3は、振動発生器1の底面となる略正方形の底板を有している。底板の相対向する2辺には、上方に向けて立ち上がる支持部3aが設けられている。一対の支持部3aは、それぞれ、振動発生器1の側面の一部となる。本実施の形態では、支持部3aは前側と後ろ側とに設けられている。
【0037】
底板の四隅のそれぞれには、円柱形状を有するピン9が配置されている。4つのピン9は、その長手方向が上下方向となるように(すなわち振動子5の運動方向(左右方向)に対して略垂直となる方向となるように)して配置されている。ピン9は、筐体2の内部空間の高さ(底板の上面からカバー4の天面の下面までの距離)よりも若干長い長さを有している。各ピン9は、例えば底板に形成されている圧入孔に圧入されて、緩みのない状態でベース3に固定されている。ピン9のベース3への取付け態様はこれに限られるものではない。例えば、ピン9は、底板に形成された孔に挿入された状態で接着やレーザーを使用した溶接等の方法を用いてベース3に取り付けられていてもよい。なお、このような取り付け態様の場合には、底板に形成されている孔は、挿入孔と称され、圧入孔とは称されない。各ピン9は、例えば鉄などの金属製であるが、これに限られるものではなく、例えば樹脂を用いて成形されたものであってもよい。
【0038】
カバー4は、全体として、底面部が開口する直方体形状を有している。カバー4の角部(各側面間の部位)は、R面状部分を挟んで繋がっている。
図2に示されるように、カバー4は、ベース3の上方からベース3の上面を覆うように配置され、ベース3に取り付けられている。
【0039】
カバー4の側面の一部には、切り欠き部4aが形成されている。カバー4がベース3に取り付けられたとき、切り欠き部4aのほとんどの部分を埋めるように支持部3aが位置する。換言すると、切り欠き部4aは、支持部3aに干渉しないように、支持部3aの形状に対応する形状に形成されている。本実施の形態では、切り欠き部4aは、カバー4の側面の前側と後ろ側とに設けられている。
【0040】
カバー4の上面には、4つの圧入孔4cが形成されている。各圧入孔4cは、ピン9に対応する位置に設けられている。カバー4がベース3の上部に配置された状態で、各ピン9の上端部は、各圧入孔4cに圧入され、緩みのない状態でカバー4に固定されている。ピン9のカバー4への固定態様は、ピン9のベース3への取付け態様と同様、これに限られるものではない。例えば、ピン9は、カバー4に形成された孔に挿入されることによってカバー4に固定されるものであってもよい。このような固定態様の場合には、カバー4に形成された孔は、挿入孔4cと称され、圧入孔4cとは称されない。
【0041】
なお、カバー4の側面のR面状部分の上方には、孔部4dが形成されている。すなわち、孔部4dは、筐体2のうち、ピン9が固定されている部位の近傍の部位に形成されている。孔部4dを介して、筐体2の内部と外部とが連通している。この孔部4dを介して、弾性部材10の挿入孔に挿入された状態のピン9をカバー4の挿入孔4cに挿入するときに、カバー4の外側からピンセット等でピン9の先端部を挿入孔4cへ導くことができる。したがって、容易に、ピン9の先端部が正確に挿入孔4cに挿入されるようにして、振動発生器1の組立作業を行うことができる。
【0042】
筐体2の内部には、振動子5と、弾性部材(支持構造の一例)10と、コイル組立体8とが配置されている。
【0043】
振動子5は、4つの弾性部材10により、筐体2に対して変位可能に支持されている。4つの弾性部材10は、筐体2の4隅(右前部、左前部、右後部、左後部)に配置されている。本実施の形態において、振動発生器1は、振動子5を左右方向に往復運動させることにより、振動を発生させる。振動子5の詳細については、後述する。
【0044】
コイル組立体8は、振動子5の上下中央部に設けられた間隙部5aに配置される。すなわち、詳しくは後述するように、コイル組立体8は、第1のマグネット31と第2のマグネット32との間に配置されている。
【0045】
図3は、コイル組立体8の構造を示す分解斜視図である。
【0046】
図3に示されるように、コイル組立体8は、2つのコイル81,82と、回路基板(以下、単に基板ということがある)84と、固定板86とを有している。コイル組立体8には、最下層の固定板86の上面に基板84が配置され、基板84の上面にコイル81,82が配置されて構成されている。各部材は、例えば接着等の方法で固定されている。
【0047】
2つのコイル81,82は、いずれも、略同一構成を有している。すなわち、コイル81,82は、巻回軸方向の寸法が、巻回軸方向に直交する方向の寸法よりも小さい薄型コイルである。コイル81,82は、例えば導線を巻回してなる、全体として楕円形で平板状の空芯コイルである。なお、コイル81,82は、金属箔を巻回したものをスライスしてなるものであったり、シートコイルを積層したものであったりしてもよい。また、コイル81,82は、平面視で、円形や、四角形形状などの多角形形状を有していてもよい。
【0048】
各コイル81,82の巻回端部は、基板84の上面に設けられている端子部84bに接続されている。2つのコイル81,82は、振動子5の運動方向(左右方向)に沿って並ぶように配置されている。コイル81,82は、平面視でコイル81が右側に位置するように、左右に並んで設けられている。コイル81,82は、巻回軸方向が上下方向となるようにして、基板84の上面に配置されている。コイル81,82と底板とは、絶縁されている。コイル81,82には、基板84を通じて、振動子5を振動させるための電流が流れる。
【0049】
基板84は、例えばフレキシブルプリント基板(FPC)である。基板84は、固定板86上に、コイル81,82と固定板86との間に挟まれるようにして配置されている。基板84には、コイル81,82に接続される端子部84bや、接続端子84a等が設けられている。接続端子84aには、基板84に電源等を接続するための端子などが設けられている。接続端子84aは、上述のように、筐体2(ベース3、カバー4)の外部に引き出されている。
【0050】
固定板86は、例えば非磁性ステンレス鋼などの非磁性材料を用いて構成されている。固定板86は、樹脂製であってもよい。固定板86の前縁部と後縁部とのそれぞれには、所定の幅で前後に突出する凸部86aが設けられている。
【0051】
図2に戻って、支持部3aの上端縁には、下方に凹むようにして形成された凹部が配置されている。コイル組立体8は、固定板86の前後の凸部86aが凹部にはまるようにして、ベース3に配置される。このようにしてコイル組立体8を支持部3aに支持させることで、容易に、ベース3に対するコイル組立体8の水平方向の位置を位置決めすることができる。
【0052】
上述のようにコイル組立体8がベース3に配置された状態で、カバー4がベース3に取り付けられると、
図1に示されるようになる。すなわち、凸部86aが支持部3aの上端部と切り欠き部4aの端縁部との間で挟まれることにより、コイル組立体8の上下方向の位置が規制される。これにより、コイル組立体8を、筐体2の内部において適正な位置に保持することができる。すなわち、支持部3aの上端部の位置は、コイル81,82の位置が間隙部5a内の適切な位置になるように、設定されている。
【0053】
なお、薄型の基板84及び固定板86でコイル81,82を支持する構造に代えて、ガラスエポキシ製のプリント基板等の上にコイル81,82を配置した構造を採用してもよい。
【0055】
図4は、振動子5の分解斜視図である。
図5は、振動発生器1の平面図である。
図6は、
図5のA−A線断面図である。
【0056】
図5において、筐体2の内部の構成を一部簡略化して二点鎖線により示している。
【0057】
図4に示されるように、振動子5は、上側に位置する第1のマグネット31、第1のヨーク41、及び第1のプレート51と、下側に位置する第2のマグネット32、第2のヨーク42、及び第2のプレート52とが上下に並んだ構成を有している。振動子5の左右両側には、スペーサ61,62が取り付けられている。振動子5の右前部、左前部、右後部、左後部のそれぞれには、弾性部材10が取り付けられている。各弾性部材10は、シャフト20を介して上下のプレート51,52に取り付けられている。
【0058】
弾性部材10は、例えば弾性体製の1つの成形品である。弾性体としては、例えば、熱に強いフッ素系やシリコン系のゴムを用いることができる。このようなゴムを用いて弾性部材10を形成することにより、振動発生器1の耐熱性を向上させることができる。弾性体はこれに限られず、種々のものを用いることができる。
【0059】
図5に示されるように、各弾性部材10において、筐体に取りつけられる筐体取付部15と、アーム部19と、振動子5に取り付けられる振動子取付部17とが互いに繋がって、一体となっている。弾性部材10は、弾性体を用いて一部品として形成された、樹脂製の一体成形品である。すなわち、筐体取付部15、アーム部19、及び振動子取付部17のそれぞれが、弾性部材10の一部を構成する。
【0060】
アーム部19は、筐体取付部15と振動子取付部17とを接続している。弾性部材10は、アーム部19の長手方向が前後方向になるようにして配置される。アーム部19は、筐体取付部15に対して振動子取付部17が主に左右方向に移動するように撓みやすくなっている。そのため、振動子5は、主に左右方向に往復運動可能になっている。
【0061】
筐体取付部15は、筐体2の内部の高さと略同じ上下方向の寸法を有している。筐体取付部15は、ピン9が挿通されて貫通する挿入孔を有している。振動子5は、4つのピン9が各弾性部材10の筐体取付部15を貫通するようにして筐体2に取りつけられている。なお、筐体取付部15の外周形状はカバー4の側面の内面に沿うような形状になっている。筐体取付部15は筐体2の形状に合うように配置され、筐体2に対する弾性部材10の姿勢が大まかに規制されている。
【0062】
本実施の形態において、2つのマグネット31,32(第1のマグネット31及び第2のマグネット32)は、互いに同一の構成を有している。2つのヨーク41,42(第1のヨーク41及び第2のヨーク42)は、互いに同一の構成を有している。2つのプレート51,52(第1のプレート51及び第2のプレート52)は、互いに同一の構成を有している。2つのスペーサ61,62は、互いに同一の構成を有している。
【0063】
ヨーク41,42は、水平面に平行な略矩形板形状を有している。ヨーク41,42は、例えば鉄などの軟磁性体であり、振動子5のウエイトとしても機能する。ヨーク41,42は、スペーサ61,62に取りつけられていることにより、垂直方向(本実施の形態において上下方向)に互いに間隔が開くようにして配置されている。ヨーク41,42の左右の側縁部には、側方に張り出した張出部47が設けられている。各張出部47の略中央部には、ヨーク41,42の中央に向けて凹んだ凹部48が形成されている。
【0064】
マグネット31,32は、水平面に平行な矩形板形状を有している。第1のマグネット31は、第1のヨーク41の下面に磁気吸着した状態で配置されている。第2のマグネット32は、第2のヨーク42の上面に磁気吸着した状態で配置されている。
【0065】
図6に示されるように、スペーサ61,62は、マグネット31,32やヨーク41,42の左右に配置されている。すなわち、2つのスペーサは、コイルの両側に、互いに対向するようにして配置されている。
【0066】
スペーサ61,62は、例えば非磁性ステンレス鋼や真鍮などの非磁性金属製である。スペーサ61,62は、振動子5のウエイトとしても機能する。なお、スペーサ61,62の材質はこれに限られず、例えば樹脂製であってもよい。
【0067】
スペーサ61,62は、側面視で矩形板形状の本体を有している。スペーサ61,62の本体には、2つの嵌合突起65と、2つの規制突起(規制部の一例)67と、2つの位置決め突起(位置決め部の一例)68とが形成されている。
【0068】
規制突起67は、振動発生器1の中央に向けて突出している。規制突起67は、前後方向が長手方向になる角柱形状を有している。規制突起67は、スペーサ61,62の一方につき、上下に並ぶ2つが設けられている。上側の規制突起67の上面は、水平面になっており、第1のヨーク41の張出部47の下面が当接するようになっている。同様に、下側の規制突起67の下面は、水平面になっており、第2のヨーク42の張出部47の上面が当接するようになっている。
【0069】
規制突起67が上下に並ぶ2つに分かれて設けられていることにより、間隙部5aの左右にスペースを設けることができる。なお、規制突起67は、スペーサ61,62の一方につき、1つが設けられており、その上面と下面とにヨーク41,42の張出部47が当接するようになっていてもよい。
【0070】
規制突起67は、スペーサ61,62に取りつけられた第1のヨーク41と第2のヨーク42との垂直方向の位置を規制する。すなわち、第1のヨーク41の下面の位置と、第2のヨーク42の上面の位置とが規制される。規制突起67が規制する位置は、ヨーク41,42に接する第1のマグネット31と、第2のマグネット32とが、垂直方向に所定の間隔をあけて対向するように設定される。すなわち、規制突起67の位置は、
図6に示されるように、第1のマグネット31の下面と第2のマグネット32の上面との間の間隙部5aが所定の大きさのスペースになるように設定される。
【0071】
位置決め突起68は、振動発生器1の中央に向けて突出している。位置決め突起68の1つは、上側の規制突起67の上方において、スペーサ61,62の本体の表面の矩形部分がヨーク41に向けて張り出した形状を有している。位置決め突起68の他の1つは、下側の規制突起67の下方において、上側と同様に、スペーサ61,62の本体の表面の矩形部分がヨーク42に向けて張り出した形状を有している。
【0072】
位置決め突起68及びヨーク41,42の凹部48は、互いにはまり合うような形状を有している(係合の一例)。
図5に示されるように、ヨーク41,42は、上下の位置決め突起68が凹部48にはまり込んだ状態で、スペーサ61,62に取りつけられている。これにより、ヨーク41,42は、スペーサ61,62に対して、前後方向及び左右方向に位置決めされている。位置決め突起68と凹部48とは、それぞれ、XZ平面に平行な面を有しており、前後方向の位置決めも確実に行われる。
【0073】
図6に示されるように、本実施の形態において、嵌合突起65は、スペーサ61,62の本体の上部と下部とに1つずつ設けられている。上部の嵌合突起(第1の被係合部の一例)65は、上方に向けて突出する円柱形状を有している。下部の嵌合突起(第2の被係合部の一例)65は、下方に向けて突出する円柱形状を有している。嵌合突起65は、プレート51,52に形成された嵌合孔(係合部の一例)55にはまるように構成されている。
【0074】
プレート51,52は、水平面に平行な板形状を有している。プレート51,52は、平面視で、振動子5の上面及び下面のうち弾性部材10の一部(振動子取付部17及びアーム部19)以外の部分を覆うような形状を有している。プレート51,52は、例えば非磁性ステンレス鋼や真鍮などの非磁性金属製である。プレート51,52は、振動子5のウエイトとしても機能する。なお、プレート51,52の材質はこれに限られず、例えば樹脂製であってもよい。また、プレート51、52の材質は、磁性材料であってもよい。プレート51、52が磁性材料で構成されている場合、バックヨークとしての機能が期待できるため、ヨーク41、42の厚さを薄くすることが可能である。
【0075】
図6に示されるように、第1のプレート51は、第1のヨーク41の上面に隣接した状態で配置されている。第1のプレート51は、第1のヨーク41を第1のマグネット31とともに挟むようにして配置されている。同様に、第2のプレート52は、第2のヨーク42の下面に隣接した状態で配置されている。第2のプレート52は、第2のヨーク42を第2のマグネット32とともに挟むようにして配置されている。
【0076】
プレート51,52は、2つの嵌合孔55と、4つの圧入孔57とを有している。嵌合孔55は、スペーサ61,62の嵌合突起65に対応する位置に形成されている。圧入孔57は、弾性部材10が取り付けられる右前部、左前部、右後部、左後部に形成されている。
【0077】
図6に示されるように、第1のプレート51は、スペーサ61,62の上部の嵌合突起65が嵌合孔55にはまり合った状態で、スペーサ61,62に取りつけられている。この状態で、第1のヨーク41の上下方向の位置は、規制突起67と第1のプレート51とにより規制された状態になっている。また、この状態で、第1のヨーク41の左右方向の位置は、位置決め突起68により規制された状態になっている。
【0078】
また、第2のプレート52は、スペーサ61,62の下部の嵌合突起65が嵌合孔55にはまり合った状態で、スペーサ61,62に取りつけられている。この状態で、第2のヨーク42の上下方向の位置は、規制突起67と第2のプレート52とより規制された状態になっている。また、この状態で、第2のヨーク42の左右方向の位置は、位置決め突起68により規制された状態になっている。
【0079】
シャフト20は、円柱形状を有している。4つのシャフト20は、その長手方向が上下方向となるように(すなわち振動子5の運動方向(左右方向)に対して略垂直となる方向となるように)して配置されている。シャフト20は、スペーサ61,62に取りつけられている状態の第1のプレート51の上面から第2のプレート52の下面までの距離より若干短い長さ(すなわち、嵌合突起65を除くスペーサ61,62の上下方向の寸法より若干長い長さ)を有している。各シャフト20は、上下の端部がプレート51,52の圧入孔57に圧入されて、緩みのない状態でプレート51,52に固定されている。シャフト20のプレート51,52への取付け態様はこれに限られるものではない。例えば接着や溶接等の方法を用いてシャフト20が取り付けられていてもよい。各シャフト20は、例えば鉄などの金属製であるが、これに限られるものではなく、例えば樹脂を用いて成形されたものであってもよい。シャフト20のプレート51,52への固定態様は、これに限られるものではない。例えば、シャフト20は、プレート51,52に形成された孔に挿入されることによってプレート51,52に固定されるものであってもよい。このような固定態様の場合には、プレート51,52に形成された孔は、挿入孔57と称され、圧入孔57とは称されない。
【0080】
図4に示されるように、振動子取付部17は、シャフト20が貫通可能な貫通孔を有している。振動子取付部17は、シャフト20が貫通するようにして、第1のプレート51と第2のプレート52との間に配置されている。振動子取付部17の上下方向の寸法は、スペーサ61,62に取りつけられている状態の第1のプレート51の下面から第2のプレート52の上面までの距離と同じかそれより若干長い長さ(すなわち、嵌合突起65を除くスペーサ61,62の上下方向の寸法より若干長い長さ)になっている。そのため、振動子取付部17は、プレート51,52により挟まれていることにより、しっかりとプレート51,52に取りつけられている。
【0081】
図7は、マグネット31,32の着磁態様を示す側断面図である。
【0082】
図7において、マグネット31,32及びコイル81,82の他の部材については、図示を簡略化している。
【0083】
図7に示されているように、マグネット31,32は、着磁態様についても同じ構成を有しており、上下で同じ姿勢で並ぶようにして配置されている。マグネット31,32の磁極は、中央部35と、両側部(右側部37及び左側部38)37,38との3つの部分に分かれて設けられている。すなわち、マグネット31,32は、振動子5の運動方向(左右方向)に沿って並ぶ3つの部分を有している。両側部37,38のそれぞれの着磁方向は、中央部35の着磁方向とは反対の方向である。すなわち、本実施の形態においては、中央部35は、下面側がN極になり、両側部37,38は、上面側がN極になっている。これにより、マグネット31,32及びヨーク41により、左右2つの磁気回路が構成される(
図7において矢印つきの破線で示す)。なお、各部の磁極の組合せは、これと反対でもよい。
【0084】
振動子5は、2つのコイル81,82に、平面視で互いに逆向きの交番電流が流れることにより、左右方向に往復運動する。これにより、振動発生器1が振動を発生させる。すなわち、
図7に示されているように、間隙部5aにおいて、コイル81の巻線の左側部分とコイル82の巻線の右側部分とがある中央部35間の磁界は、下向きである。また、コイル81の巻線の右側部分がある右側部37間の磁界と、コイル82の巻線の左側部分がある左側部38間の磁界とは、上向きである。したがって、2つのコイル81,82に、平面視で互いに逆向きの交番電流が流れることで、各コイル81,82の巻線の右側部分と左側部分とに、同じ向きの力(ローレンツ力)が発生する。コイル81,82は基板84と固定板86とを介して筐体2に支持されているので、これにより、筐体2に対して振動子5が左右方向に移動することになる。
【0085】
2つのコイル81,82があるのに対して、各マグネット31,32は3つの磁極部分に分かれている。2つの磁極部分に分ける場合よりも効率的に振動発生器1を駆動させることができる。また、4つ又はそれ以上に分ける場合よりも、隣り合う磁極との間に生じる磁束の量が少なくなるので、より効率的に振動発生器1を駆動させることができる。
【0086】
図8は、コイル81,82の接続態様について説明する図である。
【0087】
図8において、上段と下段とで互いに異なるコイル81,82の接続態様が平面視で示されている。すなわち、上段では両コイル81,82が並列に基板84に接続されている例が示されており、下段では、両コイル81,82が直列に基板84に接続されている例が示されている。図の黒塗り矢印は、電流の向きの一例を示す。上段と下段とのいずれの場合においても、本実施の形態においては、2つのコイル81,82に、平面視で互いに逆向きの電流が流れるようになっている。したがって、接続端子84aに交番電流が流されることによって、2つのコイルに互いに逆向きの交番電流が流れる。
【0088】
コイル81,82が並列に接続されている場合と、直列に接続されている場合とでは、2つのコイル81,82全体での抵抗値が異なる。すなわち、各コイル81,82の抵抗値(コイル抵抗)をrとすると、並列接続された2つのコイル81,82全体の抵抗値は1/2r(コイル抵抗の2分の1倍)になり、直列接続された2つのコイル81,82の全体の抵抗値は2r(コイル抵抗の2倍)になる。換言すると、同じ駆動電圧で駆動する場合において、並列接続の場合にはモータ電流(コイル81,82に流れる電流)が大きくなり、振動発生器1の出力が大きくなり、直列接続の場合にはモータ電流が小さくなり、振動発生器1の出力が小さくなる。したがって、例えば電流よりも出力を優先するような用途では並列接続を採用するようにするなど、振動発生器1の用途等に応じて、適宜並列接続と直列接続とを使い分けることができる。
【0089】
このような接続態様は、基板84の端子部84b同士を接続するパターンを適宜配置することにより、実現可能である。なお、2つのコイル81,82が直列に接続される場合は、両コイル81,82の一端部同士が互いに直接繋げられていたり、両コイルが1本の導線を用いて構成されたりしていてもよい。
【0090】
以上説明したように振動発生器1が構成されているので、振動子5において間隙部5aを挟んで上下のマグネット31,32及びヨーク41,42により磁気回路が構成される。そのため、コイルの片側のみにマグネット及びヨークが配置されている場合と比較して、筐体2の外部への磁束漏れが大きく削減される。したがって、周囲に及ぶ磁気の影響を小さくすることができ、振動発生器が搭載される機器の設計性を向上させることができる。また、2つのマグネット31,32の磁束を間隙部5aで有効に活用でき、振動発生器1で効率良く大きな振動を発生させることができる。
【0091】
振動子5は、以下のように、基本的には磁気吸引力を利用したり、各部の位置決めを行ったりして、容易に組み立てることができる。また、同一形状の部材を複数用いて構成されている部分が多く、そのような部材の製造コストを低減し、振動発生器1の製造コストを低減することができる。
【0092】
マグネット31,32とヨーク41,42を吸着させ、スペーサ61,62をヨーク41,42を介して挟み込むことにより、マグネット31,32の磁力のみで部品を固定することができる。すなわち、ヨーク41,42とマグネット31,32とは、マグネット31,32の吸着力で固定される。ヨーク41,42が取りつけられた上下のマグネット31,32は、互いの吸引力を利用してスペーサ61,62に固定される。ヨーク41,42がスペーサ61,62に対して位置決めされるので、上下マグネット31,32間のギャップが確保される。
【0093】
プレート51,52がスペーサ61,62に係合して取りつけられるので、第1のスペーサ61に対する第2のスペーサ62の位置精度を容易に確保することができる。
【0094】
スペーサ61,62とヨーク41,42との間に、水平方向に起伏する互いに対応する形状の凹凸が設けられている。したがって、スペーサ61,62に対してヨーク41,42の位置決めを容易に行うことができる。
【0095】
なお、振動子5を構成する各部材は、上述のような磁気吸着による方法に加えて、接着や溶接など、他の方法を用いて組み付けられていてもよい。プレート51,52は、嵌合突起65が嵌合孔55に圧入されて緩みのない状態でスペーサ61,62に固定されていてもよいし、嵌合突起65が嵌合孔55にはまった状態で溶接や接着などの方法でスペーサ61,62に固定されていてもよい。
【0096】
振動発生器1は、ピン9やシャフト20が圧入される弾性部材10により振動子5を保持している。したがって、容易に製造することができる。ピン9やシャフト20は、上下の両端部で支持されている。したがって、ピン9やシャフト20を用いた振動子5の取り付け構造の強度を向上させることができる。
【0098】
なお、振動発生器の構造は上述のものに限られない。例えば、コイルの数や振動子の運動方向等は適宜変更することができる。
【0099】
図9は、本実施の形態の一変型例に係る振動発生器201の分解斜視図である。
図10は、振動発生器1の平面図である。
図11は、
図10のB−B線断面図である。
【0100】
各図において、上述の振動発生器1と同様の部材は同様の機能を有する部位には同一の符号を付し、以下での説明を省略する。
図9に示されるように、本変形例に係る振動発生器201は、上述の振動発生器1と比較して、次の点で相違する。
【0101】
振動発生器201は、前後方向に長い縦長の底面を有する略直方体形状を有している。ベース203、カバー204、振動子205、及びコイル組立体208のそれぞれの形状が、これに合わせて変更されている。
【0102】
振動子205は、前後に配置されたスペーサ261,262を有している。すなわち、振動子205は左右に往復運動するところ、運動方向とスペーサ261,262が対向し合う方向との関係が、振動発生器1とは異なっている。また、着磁態様が異なるマグネット231,232が用いられている。スペーサ261,262は、上下のそれぞれに2つずつの嵌合突起65を有している。プレート251,252には、前後のそれぞれに2つずつの嵌合孔55が形成されており、嵌合突起65がはまり込むようになっている。その他の部材や各部材に設けられている部位は、形状は振動発生器201の縦横比の違い等に応じて異なるものの、大まかな構成や機能は振動発生器1のものと同様である。
【0103】
振動発生器201の左右方向の幅が狭く、スペーサ261,262の位置が前後になっているため、コイル組立体208は、振動子205の右側から間隙部5aに配置される。コイル組立体208は、ベース203の左右両端部に配置された支持部3aにより間隙部5aの適正な位置に置かれた状態で支持される。
【0104】
図12は、本変形例におけるマグネット231,232の着磁態様を示す側断面図である。
【0105】
図12は、上述の
図7と同様の方法で記載されている。
図12に示されるように、本変形例においては、1つのコイル81が用いられている。そのため、上下のマグネット231,232の磁極は、左右で2分割されている。例えば、右側が、下面がN極になる部位であり、左側が、上面がN極になる部位である。これにより、マグネット231,232及びヨーク41,42により、1つの磁気回路が構成される。
【0106】
本変形例においても、上述の振動発生器1と同様の効果を得られる。本変形例においては、上下のそれぞれにおいて、嵌合突起65がはまり込む嵌合孔55が4箇所に設けられている。したがって、プレート251,252を基準にしてスペーサ261,262の位置と向きとを位置決めすることができ、容易に精度よく振動発生器201を組み立てることができる。
【0108】
上述の実施の形態やその変形例における個別の特徴点を、適宜組み合わせて振動発生器を構成してもよい。
【0109】
弾性部材の数は、2つ以上であればよい。上述の実施の形態における弾性部材に相当する部材として、一体成形されたものではなく、複数の部材を組み付けて構成されたものが用いられていてもよい。
【0110】
上下のプレートは、設けられていなくてもよいし、上下いずれか一方に設けられていてもよい。スペーサは、1つだけが設けられていてもよい。
【0111】
支持構造は、上述のような弾性部材を用いたものに限られない。
【0112】
図13は、本実施の形態の他の変形例に係る振動発生器301の平面図である。
【0113】
図13に示されているように、振動発生器301は、上述の振動発生器201と、振動子205を支持する支持構造部分の構造が異なっており、その他の部分は振動発生器201と同様に構成されている。すなわち、振動発生器301は、弾性部材に代えて、前後に1つずつ設けられたレール部材310と、前後に1組ずつ設けられた付勢部材311とを有している。
【0114】
レール部材310は、例えば円柱形状のシャフトである。レール部材310は、筐体2に取り付けられており、スペーサ261,262に設けられた軸受を左右に貫通するように配置されている。前後のスペーサ261,262がレール部材310に対して摺動可能である。すなわち、レール部材310は、振動子205が筐体2に対して左右方向に往復移動可能になるように、振動子205を筐体2に対して支持している。
【0115】
付勢部材311は、例えばコイルばねである。付勢部材311は、例えばレール部材310が貫通するようにして、スペーサ261,262の左右両側に配置されている。付勢部材311は、筐体2とスペーサ261,262との間に配置されており、振動子205の位置に応じて圧縮されることで、スペーサ261,262に力を加える。
【0116】
このような構成であっても、上述と同様に、容易に製造することができ、かつ、磁束漏れ低減効果を得ることができる。
【0117】
なお、このように2本のレール部材で振動子を支える構造とする場合、振動子のシャフトを通す軸受のピッチの寸法に厳しい精度が求められる。これに鑑み、振動子の各部を接着や溶接などで硬く固定せず、マグネットの力のみで固定することにより、組立後でも軸受のピッチをある程度調整することができる。したがって、組立された個々の振動発生器毎に上述のピッチを調整し、適正に駆動可能にすることができる。
【0118】
振動発生器は、上記で例示したような小型のものに限られない。基本的構成を同一とする大型な振動発生器を構成してもよく、その場合であっても、上述と同様の効果を得られる。
【0119】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。