(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411453
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】研削砥石及び該研削砥石を補強する方法
(51)【国際特許分類】
B24D 5/04 20060101AFI20181015BHJP
B24D 3/18 20060101ALI20181015BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20181015BHJP
B24D 18/00 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
B24D5/04
B24D3/18
B24D3/00 340
B24D18/00
【請求項の数】5
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-504521(P2016-504521)
(86)(22)【出願日】2014年2月5日
(65)【公表番号】特表2016-514623(P2016-514623A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2014052211
(87)【国際公開番号】WO2014154386
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年1月20日
(31)【優先権主張番号】13161044.6
(32)【優先日】2013年3月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】306026913
【氏名又は名称】ライスハウアー アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Reishauer AG
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ヘンニ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】パブロヴィック,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ジグリスト,トーマス
【審査官】
上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭48−028595(JP,U)
【文献】
特開平08−174430(JP,A)
【文献】
実開昭50−048292(JP,U)
【文献】
オーストリア国特許発明第00502845(AT,B)
【文献】
特公昭42−023875(JP,B1)
【文献】
登録実用新案第362584(JP,Z2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 5/00− 5/16
B24D 3/00− 3/34
B24D 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削砥石を補強する方法であって、
孔(2)を有する前記研削砥石(1)を水平に位置合わせされた回転軸(6)周りで回転させることと、
特定の量の埋込用樹脂を前記孔(2)に注入することと、
前記研削砥石の回転により生じる遠心力の作用によって前記埋込用樹脂を前記研削砥石の気孔(1’)に注入することで、前記孔(2)を裏張りするリング(2a)及びこのリング(2a)の周囲にある補強層(2b)を形成することとを含み、
前記リング(2a)と前記補強層(2b)とを、異なる種類の材料を注入することにより形成する方法。
【請求項2】
注入された前記埋込用樹脂が自由に流れ出るのを防止するために、密閉要素(8a、8b)を前記研削砥石(1)の外側に取り付けることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リング(2a)の壁厚さ(3)及び前記埋込用樹脂の侵入深さ(4)は、回転速度、注入される前記埋込用樹脂の量及び流動度、並びに/又は使用する前記埋込用樹脂の硬化時間を変えることによって調整できることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記研削砥石(1)は、400rpm(毎分回転数)の略一定の速度で回転することを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記孔(2)に金属リング又はワイヤを挿入し、接着剤をその周りに注入して前記リング(2a)内部に前記金属リング又はワイヤを埋め込むことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは歯車を研削するための、研削砥石を固定する働きをする孔及び補強層を備える研削砥石、並びに該研削砥石を補強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなタイプの研削砥石は例えば、車の歯車機構のための歯車の機械加工時において使用される。研削プロセスの生産性及び経済性を改善するために、連続的なロール研削中に切断速度を絶えず向上させる試みがなされている。ここで安全基準を遵守しなければならず、この安全基準によると、許容可能な切断速度は、研削砥石の爆発速度に対して特定の比率のものでなければならない。
【0003】
孔の領域において研削砥石を補強することにより、許容可能な切断速度をより高くすることができるが、これは同様により高い製造コストを伴う。これは特許文献1による公知の研削砥石にも当てはまり、多層ネットを用いた上記公知の研削砥石の補強は、製造するのにコストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000153464
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対照的に、本発明の目的は、研削砥石の動作中に爆発速度を向上させることができる、冒頭に明示したタイプの研削砥石を考案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、この目的は、少なくとも1つの注入されたプラスチックを用いて、上記孔を裏張りするリング及び研削砥石の気孔内のこの補強層の両方を形成することによって達成される。2成分ポリウレタン系は埋込用樹脂として特に適切であることが証明されている。
【0007】
適切な埋込用樹脂を用いて研削砥石を補強することにより、埋込用樹脂と研削砥石の多孔質材料との間に密接な接続が確立される。というのも、研削砥石の最も微細な気孔に流れ込むこの埋込用樹脂が、研削砥石の材料との確実な結合を保証するためである。回転する研削砥石の孔に埋込用樹脂を注入することにより、製造中の補強材料の侵入深さの調節を達成しやすい。このようにして、孔を裏張りする補強リングの厚さを、特定の限界値内で変化させることもできる。
【0008】
砥石補強を行うために、本発明による研削砥石は、好ましくは水平に位置合わせされた回転軸を有して、及び例えば400rpm(毎分回転数)で回転するよう設定され、特定の量の埋込用樹脂が孔に注入され、これにより、回転速度並びに/又は使用する埋込用樹脂の量、流動度及び硬化時間を適合させることによって、研削砥石への接着剤の侵入深さ及び特定の限界値内の補強リングの厚さを調整できる。
【0009】
ここで密閉要素を研削砥石の外側に取り付けると有利であり、その目的は、注入された埋込用樹脂が側部において自由に流れ出るのを防止することである。
【0010】
本発明を、図面を参照しながら例示的な実施形態を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、埋込用樹脂を用いて研削砥石を補強するための構成の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1による構成は、多孔質セラミック材料で作製された、好ましくはコランダムから製造された研削砥石1を示す。当然のことながら、コランダムの代わりに、同様の多孔質構造を有する他のセラミック材料も使用できる。研削砥石1はここでは、特に工作機械のスピンドルに研削砥石1を固定するための、孔2を備える。
【0013】
本発明によると、孔2を裏張りするリング2a及びこの補強層2bは両方とも、研削砥石の気孔1’に注入される少なくとも1つのプラスチックで形成される。研削砥石は、有利には50容量パーセント超の多孔性を有する、開放性かつ極めて多孔性の構造から製造される。
【0014】
研削砥石を補強するために提供されたプラスチックのために、2成分ポリウレタン系で構成される埋込用樹脂を使用すると有利であり、これはその物理的特性に関して、またその経済性により、リング2aを製造するための、及びリング状補強層2bの領域において研削砥石の気孔1’を充填するための埋込用樹脂の使用に特に適している。言うまでもなく、他の好適な埋込用樹脂も使用できる。
【0015】
埋込用樹脂は、注入デバイスを用いて研削砥石1の孔2に注入される。注入デバイスの供給ノズル5のみが図示されており、これは埋込用樹脂を孔2の領域へと案内する。孔2の中に注がれた後に埋込用樹脂が自由に流れ出るのを防止するために、密閉要素8a、8bを研削砥石1の外側に配設する。
【0016】
孔2を取り囲むリング2aと、研削砥石1の研削砥石の気孔1’の補強層2bとを製造するために、研削砥石1は駆動装置(図示せず)によって水平に位置合わせされた回転軸6の周りで回転するよう設定され、一方で特定の量の埋込用樹脂が供給ノズル5を有する注入デバイスを用いて導入される。研削砥石1はここでは例えば400rpm(毎分回転数)の速度で回転し、埋込用樹脂は遠心力によって研削砥石の気孔1’に注入され、そのセラミック材料と結合する。
【0017】
ここで達成できる侵入深さ4及びリング2aの壁厚さ3は、回転速度及び注入される量、並びに使用する埋込用樹脂の流動度及び硬化時間によって決まる。これらの値を変えることにより、壁厚さ3及び埋込用樹脂の侵入深さ及び補強層2bの厚さを特定の限界値内で調節できる。
【0018】
更に高い爆発速度を達成するために、研削砥石を接着された金属リングによって更に補強することも基本的には可能であるものの、装置及び製造コストがこれに応じて高くなるという代償が必要となる。埋込用樹脂を注入する際に1つ又は複数の金属リング、ワイヤ等を孔に挿入し、接着剤をその周りに注入して、リング2a内で硬化した後に埋め込んでよい。
【0019】
原理的に、リング及び研削砥石の気孔内の補強層を形成するために注入されたプラスチックは、層ごとに異なる埋込用材料又は接着材料を注入することにより形成してよい。
【0020】
例えば圧力鋳造による又は遠心力プロセスとの組み合わせによる、本発明による研削砥石を製造するための別の方法を基本的に用いてもよい。