特許第6411482号(P6411482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411482
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】窒素含有化合物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/08 20060101AFI20181015BHJP
   A61K 31/439 20060101ALI20181015BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20181015BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20181015BHJP
   A61K 31/43 20060101ALI20181015BHJP
   A61K 31/431 20060101ALI20181015BHJP
   A61K 31/424 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   C07D471/08CSP
   A61K31/439
   A61K45/00
   A61P31/04
   A61K31/43
   A61K31/431
   A61K31/424
【請求項の数】15
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-521668(P2016-521668)
(86)(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公表番号】特表2016-532661(P2016-532661A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】IB2014065195
(87)【国際公開番号】WO2015052682
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2017年8月18日
(31)【優先権主張番号】3216/MUM/2013
(32)【優先日】2013年10月11日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】506224012
【氏名又は名称】ウォックハート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】デシュパンデ プラサド ケシャヴ
(72)【発明者】
【氏名】パワール シヴァジ サンパトラオ
(72)【発明者】
【氏名】バウサール サティシュ
(72)【発明者】
【氏名】イェオレ ラヴィンドラ ダッタトラヤ
(72)【発明者】
【氏名】バグワット サチン
(72)【発明者】
【氏名】パテル マヘシュ ヴィタルバイ
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/038330(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02921559(EP,A1)
【文献】 特表2012−505195(JP,A)
【文献】 特表2012−504593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、Mは、カチオンである)
の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される
【請求項2】
Mは、水素、ナトリウムまたはカリウムである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンまたはその立体異性体もしくは薬学的に許容されるである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬品組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のベータ−ラクタマーゼ阻害剤または薬学的に許容されるそのをさらに含む、請求項4に記載の医薬品組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の抗菌剤または薬学的に許容されるそのをさらに含む、請求項4または5に記載の医薬品組成物。
【請求項7】
前記抗菌剤は、アミノグリコシド系抗菌剤、アンサマイシン系抗菌剤、カルバセフェム系抗菌剤、セファロスポリン系抗菌剤、セファマイシン系抗菌剤、リンコサミド系抗菌剤、リポペプチド系抗菌剤、マクロライド系抗菌剤、モノバクタム系抗菌剤、ニトロフラン系抗菌剤、ペニシリン系抗菌剤、ペネム系抗菌剤、カルバペナム系抗菌剤、ポリペプチド系抗菌剤、キノロン系抗菌剤、スルホンアミド系抗菌剤、テトラサイクリン系抗菌剤またはオキサゾリジノン系抗菌剤からなる群から選ばれる、請求項6に記載の医薬品組成物。
【請求項8】
前記抗菌剤は、ベータラクタム系抗菌剤である、請求項6に記載の医薬品組成物。
【請求項9】
前記抗菌剤は、セファロチン、セファロリジン、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファゾリン、セファレキシン、セフラジン、セフチゾキシム、セフォキシチン、セファセトリル、セフォチアム、セフォタキシム、セフスロジン、セフォペラゾン、セフメノキシム、セフメタゾール、セプファログリシン、セホニシド、セフォジジム、セフピロム、セフタジジム、セフトリアキソン、セフピラミド、セフブペラゾン、セフォゾプラン、セフェピム、セフォセリス、セフルプレナム、セフゾナム、セフピミゾール、セフクリジン、セフィキシム、セフチブテン、セフジニル、セフポドキシムアウキセチル、セフポドキシムプロキセチル、セフテラムピボキシル、セフェタメトピボキシル、セフカペンピボキシル、セフジトレンピボキセル、セフロキシム、セフロキシムアウキセチル、ロラカルバセフ、セフタロリン、セフトロザン、ラタモキセフ、ピペラシリン、エルタペネム、ドリペネム、メロペネムおよびイミペネムからなる群から選ばれる、請求項6に記載の医薬品組成物。
【請求項10】
前記ベータ−ラクタマーゼ阻害剤は、スルバクタム、タゾバクタム、クラブラン酸、または薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選ばれる、請求項5に記載の医薬品組成物。
【請求項11】
(a)(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンまたはその立体異性体もしくは薬学的に許容されると、(b)スルバクタムまたは薬学的に許容されるそのと、を含む請求項5に記載の医薬品組成物。
【請求項12】
対象における細菌感染症を処置するための医薬を調製するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項13】
対象における細菌感染症を処置するための請求項4〜6のいずれか一項に記載の医薬品組成物
【請求項14】
感染が1種以上のベータ−ラクタマーゼ酵素を産生する細菌によって引き起こされる、請求項13に記載の医薬品組成物。
【請求項15】
式(XI)
【化2】
の(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンの調製のためのプロセスであって、
(a)式(II)
【化3】
の化合物を式(III)
【化4】
の化合物へ変換するステップと;
(b)式(III)の化合物を塩基の存在下でp−ニトロフェニルスルホニルクロリドと反応させて式(IV)
【化5】
の化合物を得るステップと;
(c)式(IV)の化合物をアジ化ナトリウムと反応させて式(V)
【化6】
の化合物を得るステップと;
(d)式(V)の化合物を式(VI)
【化7】
の化合物へ変換するステップと;
(e)式(VI)の化合物を水素化分解して式(VII)
【化8】
の化合物を得るステップと;
(f)式(VII)の化合物をスルホン化剤と反応させ、次に硫酸水素テトラブチルアンモニウムと反応させて式(VIII)
【化9】
の化合物を得るステップと;
(g)式(VIII)の化合物を式(IX)
【化10】
の化合物へ変換するステップと;
(h)式(IX)の化合物を適当な溶媒中でトリフルオロ酢酸と反応させて式(X)
【化11】
の化合物を得るステップと;
(i)式(X)の化合物を式(XI)の化合物へ変換するステップと
を含むプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願
本出願は、2013年10月11日に出願されたインド特許出願第3216/MUM/2013号の権利を主張する。同出願の開示全体が本明細書に再び完全に記載されたかのように参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、窒素含有化合物と、その調製と、感染症の予防または処置におけるその使用と、に関する。
【背景技術】
【0003】
既知の抗菌剤に対する細菌抵抗性の出現は、細菌感染症の処置において重大な問題になりつつある。細菌感染症、特に耐性菌によって引き起こされるものを処置する1つの進め方は、細菌抵抗性を克服することができるより新しい抗菌剤を開発することである。非特許文献1は、新しい抗生物質の開発への新規な手法を概説している。しかし、新しい抗菌剤の開発は、困難な課題である。たとえば、非特許文献2は、抗菌剤の発見における困難な点を概説している。
【0004】
既知の抗菌剤への細菌抵抗性を克服する別の手法は、細菌が抵抗性を獲得し、維持するのを助ける細菌機序を標的とすることである。たとえば、いくつかの細菌は、典型的なベータ−ラクタム抗菌剤のベータ−ラクタム環を加水分解する酵素(ベータ−ラクタマーゼ酵素)を産生することが知られている。ベータ−ラクタム環が加水分解されれば抗菌剤はそれらの細菌に対する効果を失う。全体に、ベータ−ラクタマーゼ阻害剤として知られるいくつかの化合物は、1種以上のベータ−ラクタマーゼ酵素の活性を阻害し、それによって従来のベータ−ラクタム抗菌剤の効力を取り戻すことができる。ベータ−ラクタマーゼ阻害剤の典型的な例は、スルバクタム、タゾバクタムおよびクラブラン酸を含む。非特許文献3は、ベータ−ラクタマーゼ阻害の主題を概説している。特許文献1および特許文献2は、複素環コアを含有するいくつかの化合物と抗菌剤としてのそれらの使用を開示している。本発明者らは、今や驚くべきことに、抗菌性活性を有する窒素含有化合物を発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,112,592号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20100092443号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】コーツ(Coates)ら、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Br.J.Pharmacol.)、2007年、152巻8号、p.1147〜1154
【非特許文献2】グウィン(Gwynn)ら、アナルズ・オブ・ザ・ニューヨーク・アカデミー・オブ・サイエンセズ(Annals of the New York Academy of Sciences)、2010年、1213巻、p5〜19
【非特許文献3】ドローズ(Drawz)ら、クリニカル・マイクロバイオロジー・レビューズ(Clinical Microbiology Reviews)、2010年1月、23巻1号、p160〜201
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
よって、窒素含有化合物と、これらの化合物の調製のための方法と、これらの化合物を含む医薬品組成物と、これらの化合物を用いて対象における細菌感染症を予防または処置するための方法と、が提供される。
【0008】
1つの一般的な側面において、式(I)
【化1】
(式中、Mは、カチオンである)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体が提供される。
【0009】
別の一般的な側面において、式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体を含む医薬品組成物が提供される。
【0010】
別の一般的な側面において、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。別の一般的な側面において、対象における細菌感染症であって、1種以上のベータ−ラクタマーゼ酵素を産生する細菌によって引き起こされる感染症を予防または処置するための方法であって、式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0011】
別の一般的な側面において、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体を含む医薬品組成物の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0012】
別の一般的な側面において、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種のベータ−ラクタマーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその誘導体と、を含む医薬品組成物が提供される。別の一般的な側面において、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種の抗菌剤または薬学的に許容されるその誘導体と、を含む医薬品組成物が提供される。別の一般的な側面において、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種のベータ−ラクタマーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその誘導体と、(c)少なくとも1種の抗菌剤または薬学的に許容されるその誘導体と、を含む医薬品組成物が提供される。
【0013】
別の一般的な側面において、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種のベータ−ラクタマーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその誘導体と、を含む医薬品組成物の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0014】
別の一般的な側面において、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種の抗菌剤または薬学的に許容されるその誘導体と、の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0015】
別の一般的な側面において、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種のベータ−ラクタマーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその誘導体と、(c)少なくとも1種の抗菌剤または薬学的に許容されるその誘導体と、の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0016】
別の一般的な側面において、対象における抗菌剤の抗菌有効性を増加させるための方法であって、前記抗菌剤または薬学的に許容されるその誘導体を式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体の薬学的に有効な量と同時投与するステップを含む方法が提供される。
【0017】
下記の説明において、本発明の1つ以上の実施形態の詳細が示される。本発明のその他の特徴、目的および利点は、請求項を含む以下の説明から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態例を参照し、本明細書において実施形態例を記載するために特定の文言を用いる。ただし、それによって本発明の範囲を限定するものではないと理解するべきである。当分野において通常の知識を有し、本開示を受けた者が想到するであろう、本明細書に例示される本発明の特徴の変化形および今後の改変形は、発明の範囲にあるとみなすべきである。なお、請求項を含めて本明細書内で用いられる単数形「1つの(a)、(an)」および「前記(the)」は、特に断らない限り複数の参照物を含む。特許、特許出願および文献を含む本明細書において引用されるすべての参考文献は、参照によって全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0019】
本発明者らは、驚くべきことに、抗菌特性を有する新規な窒素含有化合物を発見した。
【0020】
本明細書において用いられる用語「立体異性体」は、同一の化学構造を有するが、空間における原子または基の配置が異なる化合物を指す。式(I)の化合物は、不斉中心すなわちキラル中心を含み、したがって異なる立体異性形で存在することができる。特に断らない限り、式(I)の化合物のすべての立体異性形ならびにラセミ混合物を含むその混合物は、本発明の一部を形成するものとする。さらに、本発明は、すべての幾何異性体および位置異性体(シス−形およびトランス−形を含む)、ならびにそれらの混合物を本発明の範囲に包含する。一般に、化合物への参照は、その立体異性体とさまざまな立体異性体の混合物とを包含するものとする。
【0021】
本明細書において用いられる用語「薬学的に許容される誘導体」は、対象に投与されると(直接または間接に)親化合物を提供することができる、本明細書に記載されている化合物のあらゆる薬学的に許容される塩、プロドラッグ、代謝物、エステル、エーテル、水和物、多形、溶媒和物、錯体(complexe)および付加体を指し、かつ含む。たとえば、用語「抗菌剤または薬学的に許容されるその誘導体」は、対象に投与されると(直接または間接に)抗菌剤を提供することができる、抗菌剤のすべての誘導体(たとえば塩、プロドラッグ、代謝物、エステル、エーテル、水和物、多形、溶媒和物、錯体および付加体)を含む。
【0022】
本明細書において用いられる用語「薬学的に許容される塩」は、遊離化合物の所望の薬理活性を備え、生物的にもその他の面でも望ましくないものではない、所定の化合物の1種以上の塩を指す。一般に、用語「薬学的に許容される塩」は、ヒトおよび動物の組織と接触する使用に適し、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などがなく、妥当な利点/リスク比の範囲にある塩を指す。薬学的に許容される塩は、当分野において周知である。たとえば、参照によって全体が本明細書に組み込まれるS.M.バージ(Berge)ら、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンセズ(J.Pharmaceutical Sciences)、1977年、66巻、p1〜19は、さまざまな薬学的に許容される塩を詳細に記載している。
【0023】
一般に、本発明による化合物は、塩基性部分(たとえば窒素原子)ならびに酸部分(たとえばMが水素である式(I)の化合物)を含む。当業者は、したがってそのような化合物が酸性塩(無機酸および/または有機酸と形成する)ならびに塩基性塩(無機塩基および/または有機塩基と形成する)を形成できると理解する。そのような塩は、当分野において記載されている手順を用いて調製することができる。たとえば、塩基部分は、適当な量の酸で化合物を処理することによってその塩に変換することができる。そのような適当な酸の典型的、非限定的な例は、塩酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸などを含む。あるいは、酸部分は、適当な塩基で処理することによってその塩に変換することができる。そのような塩基の典型的、非限定的な例は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどを含む。塩に変換することができる複数の官能基を含む化合物の場合、そのような官能基のそれぞれを独立に対応する塩に変換してよい。たとえば、2つの塩基性窒素原子を含む化合物の場合、塩基性窒素の一方は1種の酸と塩を形成することができ、他方の塩基性窒素は別の酸と塩を形成することができる。本発明による化合物の一部は、酸性部分と塩基性部分との両方を含み、したがって内部塩または対応する双性イオンを形成することができる。一般に、酸付加塩、塩基付加塩、双性イオンなどを含む発明による式(I)の化合物のすべての薬学的に許容される塩形は、本発明の範囲内にあるとみなされ、総体として薬学的に許容される塩と呼ばれる。
【0024】
本明細書において用いられる用語「OBn」は、ベンジルオキシを指す。
【0025】
本明細書において用いられる用語「感染症」または「細菌感染症」は、対象の体内または体表における成長が阻害されると対象が利益を得る細菌の存在を含む。したがって、用語「感染」は、細菌の存在を指すことに加えて、望ましくない正常細菌叢の存在も指す。用語「感染症」は、細菌によって引き起こされる感染症を含む。
【0026】
本明細書において用いられる用語「処置する」、「処置すること」または「処置」は、予防および/または治療を目的として医薬品組成物または1つ以上の薬学的に活性な成分を含む薬剤を投与することを指す。用語「予防としての処置」は、まだ感染していないが感染しやすいか、または他の面で感染の危険がある対象を処置する(細菌感染症を予防する)ことを指す。用語「治療としての処置」は、すでに感染症にかかっている対象に処置を提供することを指す。本明細書において用いられる用語「処置する」、「処置すること」または「処置」は、(i)細菌感染症もしくは細菌感染症の1種以上の症状を緩和もしくは完治するため、または(ii)細菌感染症もしく細菌感染症の1種以上の症状の進行を遅延させるため、または(iii)細菌感染症もしくは細菌感染症の1種以上の症状の重さを緩和するため、または(iv)細菌感染症の臨床症状を抑制するため、または(v)細菌感染症の有害な症状の発現を抑制するために、追加の薬学的に活性な成分または不活性な成分の有無にかかわらず、本明細書において考察される組成物または1種以上の薬学的に活性な成分を投与することも指す。
【0027】
本明細書において用いられる用語「薬学的に有効な量」または「治療として有効な量」または「有効な量」は、治療としての効果を有する量を指すか、または対象において治療としての効果を生じるために必要な量である。たとえば、抗菌剤または医薬品組成物の治療としてまたは薬学的に有効な量は、臨床試験結果、モデル動物感染検討および/またはインビトロ検討(たとえば寒天またはブロス培地中)によって判定することができる所望の治療的な効果を生み出すために必要な抗菌剤または医薬品組成物の量である。薬学的に有効な量は、関与する微生物(たとえば細菌)、対象の特性(たとえば身長、体重、性別、年齢および治療歴)、感染症の重さおよび用いられる抗菌剤の特定の型を含むがこれに限定されるものではないいくつかの因子に依存する。予防としての処置の場合、治療としてまたは予防として有効な量は、微生物(たとえば細菌)感染症の予防に有効であると考えられる量である。
【0028】
用語「投与」または「投与すること」は、組成物または1種以上の薬学的に活性な成分の対象への送達を含み、たとえば、組成物もしくはその活性成分または他の薬学的に活性な成分を感染部位に送達するために使用されるいずれかの適切な方法による。投与の方法は、たとえば医薬品組成物の構成成分、または薬学的に活性または不活性な成分の型/性質、可能性のある感染部位または実際の感染部位、関与する微生物、感染症の重さ、対象の年齢および身体条件などのようなさまざまな要因に応じて変化してよい。組成物または薬学的に活性な成分を対象に投与する本発明による方法の非限定的な例の一部は、経口、静脈、局所、呼吸器内、腹膜内、筋肉内、非経口、舌下、経皮、鼻腔、エアロゾル、眼内、気管内、直腸内、膣内、遺伝子銃、真皮パッチ、点眼または口内洗浄を含む。2種以上の成分(活性または不活性)を含む医薬品組成物の場合、そのような組成物を投与する方法の1つは、成分(たとえば錠剤、カプセル、溶液、粉末などのような適当な単位剤形の形で)を混合してから剤形を投与することによる。あるいは、これらの成分が有用な治療レベルに達し、それによって組成物が全体として相乗効果および/または所望の効果を提供する限り、成分を別々に(同時にまたは順に)投与してもよい。
【0029】
本明細書において用いられる用語「成長」は、1種以上の微生物の成長を指し、微生物(たとえば細菌)の増殖または個体数増加を含む。用語「成長」は、微生物を生きた状態に維持するプロセスを含む、進行中の微生物の代謝プロセスの維持も含む。
【0030】
本明細書において用いられる用語「有効性」は、対象において所望の生物的な効果を生み出す処置または組成物もしくは1種以上の薬学的に活性な成分の能力を指す。たとえば、組成物または抗菌剤の用語「抗菌有効性」は、対象において微生物(たとえば細菌)感染症を予防または処置する組成物または抗菌剤の能力を指す。本明細書において用いられる用語「相乗効果の」または「相乗効果」は、組み合わされた効果が個々の効果より大きい、2種以上の薬剤の相互作用を指す。
【0031】
本明細書において用いられる用語「抗菌剤」は、(i)細菌の成長を阻害、低下もしくは妨害するか;(ii)対象において感染症を生じさせる細菌の能力を阻害もしくは低下させるか;または(iii)環境において増殖もしくは感染力を保持する細菌の能力を阻害もしくは低下させることができるいずれかの物質、化合物、または物質の組み合わせもしくは化合物の組み合わせを指す。用語「抗菌剤」は、細菌の感染性または病原性を減少させることができる化合物も指す。
【0032】
本明細書において用いられる用語「ベータ−ラクタム抗菌剤」は、抗菌特性を有し、分子構造中にベータ−ラクタム核を含む化合物を指す。本明細書において用いられる用語「ベータ−ラクタマーゼ」は、ベータ−ラクタム環を分解するいずれかの酵素もしくはタンパク質または他のいずれかの物質を指す。用語「ベータ−ラクタマーゼ」は、細菌によって産生され、ベータ−ラクタム化合物中のベータ−ラクタム環を部分的にかまたは完全にかのどちらかで加水分解する能力を有する酵素を含む。本明細書において用いられる用語「ベータ−ラクタマーゼ阻害剤」は、1種以上のベータ−ラクタマーゼ酵素の活性を部分的にかまたは完全にかのどちらかで阻害することができる化合物を指す。
【0033】
用語「薬学的に不活性な成分」または「キャリアー」または「賦形剤」は、化合物の投与を容易にするために、たとえば化合物の溶解度を増加させるために用いられる化合物または材料を指す。固体キャリアーの典型的、非限定的な例は、デンプン、ラクトース、リン酸二カルシウム、スクロースおよびカオリンを含む。液体キャリアーの典型的、非限定的な例は、無菌水、塩水、緩衝液、非イオン界面活性剤、ならびにピーナッツ油およびゴマ油などの食用油を含む。さらに、当分野において普通に用いられるさまざまな補助剤も含むことができる。文献たとえばメルクインデックス(the Merck Index)、メルク・アンド・カンパニー(Merck & Company)、ニュージャージー(N.J.)、ラーウェイ(Rahway)に、これらおよび他のそのような化合物が記載されている。たとえば、参照によって全体が本明細書に組み込まれるギルマン(Gilman)ら編(1990)、グッドマン(Goodman)およびギルマン:治療薬の薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics)、第8版、パーガモン・プレス(Pergamon Press.)には、医薬品組成物に含まれるさまざまな構成成分についての考察が記載されている。
【0034】
本明細書において用いられる用語「対象」は、脊椎動物または無脊椎動物を指し、哺乳類を含む。用語「対象」は、ヒト、動物、鳥、魚または両生類を含む。「対象」の典型的、非限定的な例は、ヒト、猫、犬、馬、羊、牛、豚、子羊、ネズミ、マウスおよびモルモットを含む。
【0035】
1つの一般的な側面において、式(I)
【化2】
(式中、Mは、カチオンである)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体が提供される。
【0036】
一般に、用語「カチオン」は、H、Na、K、Mg、Ca、NH、(CHCHなどを含む。別の一般的な側面において、式(I)(式中、Mは、H、Na、K、Mg、Ca、NHまたは(CHCHである)の化合物が提供される。
【0037】
1つの一般的な側面において、化学的には(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンとして知られている式(XI)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体が提供される。
【0038】
一般に、本発明の化合物は、スキーム1に示される一般的な手順にしたがって調製することができる。当業者であれば記載の方法を変えるかまたはさらに最適化して所望の化合物および関連化合物を提供することができることを了解するであろう。
【0039】
実施形態によっては、スキーム1に記載の一般的な手順を用いて式(I)の化合物(式中、Mは水素である)が調製された。実施形態によっては、式(XI)
【化3】
の(2S、5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンまたはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体の調製のためのプロセスであって、
(a)式(II)
【化4】
の化合物を式(III)
【化5】
の化合物へ変換するステップと;
(b)式(III)の化合物を塩基の存在下でp−ニトロフェニルスルホニルクロリドと反応させて式(IV)
【化6】
の化合物を得るステップと;
(c)式(IV)の化合物をアジ化ナトリウムと反応させて式(V)
【化7】
の化合物を得るステップと;
(d)式(V)の化合物を式(VI)
【化8】
の化合物へ変換するステップと;
(e)式(VI)の化合物を水素化分解して式(VII)
【化9】
の化合物を得るステップと;
(f)式(VII)の化合物をスルホン化剤と反応させ、次に硫酸水素テトラブチルアンモニウムと反応させて式(VIII)
【化10】
の化合物を得るステップと;
(g)式(VIII)の化合物を式(IX)
【化11】
の化合物へ変換するステップと;
(h)式(IX)の化合物を適当な溶媒中でトリフルオロ酢酸と反応させ式(X)
【化12】
の化合物を得るステップと;
(i)式(X)の化合物を式(XI)の化合物へ変換するステップと
を含むプロセスが提供される。
【0040】
典型的には、最初に(2S,5R)トランス−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2−カルボン酸(II)のナトリウム塩をN−メチルモルホリンなどの適当な塩基およびクロロぎ酸エチル(ClCOOEt)などの適当なホルミル化剤で処理して対応する混合無水物を生成させ、これを次に水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元してアルコール化合物(III)(2S,5R)−2−(ヒドロキシメチル)−6−(ベンジルオキシ)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンを得た。
【0041】
式(III)の化合物のヒドロキシル基をトリエチルアミンなどの適当な塩基およびジクロロメタンなどの適当な溶媒の存在下でp−ニトロフェニルスルホニルクロリド(p−NOPhSOCl)と縮合させて(2S,5R)−2−(4−ニトロフェニルスルホナートメチル)−6−(ベンジルオキシ)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(IV)を得た。式(IV)のスルホナート化合物をアジ化ナトリウム(NaN)と反応させ、スルホナート基をアジド基で置換して化合物(2S,5R)−2−(アジドメチル)−6−(ベンジルオキシ)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(V)を得た。
【0042】
化合物(V)をテトラヒドロフランなどの適当な溶媒中でトリフェニルホスフィン(PPh)と反応させ、次に触媒量の水を加えて対応するアミンを得た。このアミノ化合物をさらにトリエチルアミンなどの適当な塩基の存在下でジ−tert−ブチルジカルボナート((Boc)O)でin situ処理してアミノ保護化合物(2S,5R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(VI)を得た。式(VI)の中間体化合物を水素ガスなどの水素源の存在下およびメタノールなどの適当な溶媒中で炭素担持5%または10%パラジウムなどの触媒を用いる水素化分解に付して脱ベンジル化合物(2S,5R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−6−ヒドロキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(VII))を得た。
【0043】
式(VII)の化合物のヒドロキシル官能基を、ジクロロメタンなどの適当な溶媒中、トリエチルアミン(EtN)などの適当な塩基の存在下で三酸化硫黄−ピリジン錯体(SOPy錯体)または三酸化硫黄−ジメチルホルムアミド錯体などの適当なスルホン化剤とさらに反応させて対応する硫酸エステルピリジニウム中間体を得た。この中間体を硫酸水素テトラブチルアンモニウムとさらに反応させてテトラブチルアンモニウム塩(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(VIII)を得た。
【0044】
式(VIII)の化合物を10%テトラヒドロフラン:水混合物などの適当な溶媒に溶解し、ダウエックス(Dowex)50WX8 200 Na樹脂を充填したカラムに流して(2S,5R)−6−スルホキシ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(IX)のナトリウム塩を得た。
【0045】
【化13】
【0046】
式(IX)の化合物をジクロロメタンなどの適当な溶媒中でトリフルオロ酢酸と反応させて6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタンのトリフルオロ酢酸およびナトリウム塩(X)を得た。このトリフルオロ酢酸およびナトリウム塩(X)を水イソプロピルアルコール混合物でさらに処理して双性イオン形(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(XI)を得た。
【0047】
実施形態によっては、式(XI)
【化14】
の(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンの調製のためのプロセスであって、
(a)式(II)
【化15】
の化合物をN−メチルモルホリンの存在下でクロロぎ酸エチルと反応させ、次に水素化ホウ素ナトリウムで処理して式(III)
【化16】
の化合物を得るステップと;
(b)式(III)の化合物をトリエチルアミンの存在下でp−ニトロフェニルスルホニルクロリドと反応させて式(IV)
【化17】
の化合物を得るステップと;
(c)式(IV)の化合物をアジ化ナトリウムと反応させて式(V)
【化18】
の化合物を得るステップと;
(d)式(V)の化合物をトリフェニルホスフィンと反応させ、次にジ−tert−ブチルジカルボナートで処理して式(VI)
【化19】
の化合物を得るステップと;
(e)式(VI)の化合物を炭素担持パラジウム触媒および水素ガスの存在下で水素化分解して式(VII)
【化20】
の化合物を得るステップと;
(f)式(VII)の化合物を三酸化硫黄−ピリジン錯体と反応させ、次に硫酸水素テトラブチルアンモニウムと反応させて式(VIII)
【化21】
の化合物を得るステップと;
(g)式(VIII)の化合物の溶液を、ナトリウム樹脂を充填したカラムに流して式(IX)
【化22】
の化合物を得るステップと;
(h)式(IX)の化合物を適当な溶媒中でトリフルオロ酢酸と反応させて式(X)
【化23】
の化合物を得るステップと;
(i)式(X)の化合物を水イソプロピル混合物で処理することによって式(XI)の化合物へ変換するステップと
を含むプロセスが提供される。
【0048】
実施形態によっては、式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体を含む医薬品組成物が提供される。
【0049】
実施形態によっては、HPLCで定量して97%を超える純度を有する式(X)の化合物が提供される。実施形態によっては、HPLCで定量して97%を超える純度を有する式(X)の化合物を含む医薬品組成物が提供される。実施形態によっては、HPLCによって定量して99%を超える純度を有する式(XI)の化合物が提供される。実施形態によっては、HPLCで定量して99%を超える純度を有する式(XI)の化合物を含む医薬品組成物が提供される。
【0050】
いくつかの他の実施形態においては、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。実施形態によっては、対象における細菌感染症であって、1種以上のベータ−ラクタマーゼ酵素を産生する細菌によって引き起こされる感染症を予防または処置するための方法であって、式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0051】
いくつかの他の実施形態においては、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体を含む医薬品組成物の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。いくつかの他の実施形態においては、対象における細菌感染症であって、1つ以上のベータ−ラクタマーゼ酵素を産生する細菌によって引き起こされる感染症を予防または処置するための方法であって、式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体を含む医薬品組成物の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0052】
実施形態によっては、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種のベータ−ラクタマーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその誘導体と、を含む医薬品組成物が提供される。いくつかの他の実施形態においては、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種の抗菌剤または薬学的に許容されるその誘導体と、を含む医薬品組成物が提供される。いくつかの他の実施形態においては、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種のベータ−ラクタマーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその誘導体と、(c)少なくとも1種の抗菌剤または薬学的に許容されるその誘導体と、を含む医薬品組成物が提供される。
【0053】
いくつかの他の実施形態においては、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種のベータ−ラクタマーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその誘導体と、を含む医薬品組成物の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0054】
いくつかの他の実施形態においては、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種の抗菌剤または薬学的に許容されるその誘導体と、を含む医薬品組成物の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0055】
いくつかの他の実施形態においては、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種のベータ−ラクタマーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその誘導体と、(c)少なくとも1種の抗菌剤または薬学的に許容されるその誘導体と、を含む医薬品組成物の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0056】
いくつかの他の実施形態においては、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種のベータ−ラクタマーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその誘導体と、の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0057】
いくつかの他の実施形態においては、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種の抗菌剤または薬学的に許容されるその誘導体と、の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0058】
いくつかの他の実施形態においては、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、(a)式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)少なくとも1種のベータ−ラクタマーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその誘導体と、(c)少なくとも1種の抗菌剤または薬学的に許容されるその誘導体と、の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0059】
実施形態によっては、対象における細菌感染症であって、1種以上のベータ−ラクタマーゼ酵素を産生する細菌によって引き起こされる感染症を予防または処置するための方法であって、本発明による化合物、または本発明による化合物と少なくとも1種のベータ−ラクタマーゼ阻害剤との組み合わせ、または本発明による化合物と少なくとも1種の抗菌剤との組み合わせ、または本発明による化合物と、少なくとも1種のベータ−ラクタマーゼ阻害剤と、少なくとも1種の抗菌剤と、の組み合わせの薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。実施形態によっては、対象における細菌感染症であって、1種以上のベータ−ラクタマーゼ酵素を産生する細菌によって引き起こされる感染症を予防または処置するための方法であって、本発明による医薬品組成物の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0060】
実施形態によっては、(a)(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンまたはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)スルバクタムまたは薬学的に許容されるその誘導体と、を含む医薬品組成物が提供される。
【0061】
いくつかの他の実施形態においては、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、(a)(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンまたはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)スルバクタムまたは薬学的に許容されるその誘導体と、の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0062】
いくつかの他の実施形態においては、対象における細菌感染症であって、1種以上のベータ−ラクタマーゼ酵素を産生する細菌によって引き起こされる感染症を予防または処置するための方法であって、(a)(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンまたはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)スルバクタムまたは薬学的に許容されるその誘導体と、の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0063】
いくつかの他の実施形態においては、対象における細菌感染症を予防または処置するための方法であって、(a)(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンまたはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)スルバクタムまたは薬学的に許容されるその誘導体と、を含む医薬品組成物の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0064】
実施形態によっては、対象における細菌感染症であって、1種以上のベータ−ラクタマーゼ酵素を産生する細菌によって引き起こされる感染症を予防または処置するための方法であって、(a)(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンまたはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体と、(b)スルバクタムまたは薬学的に許容されるその誘導体と、を含む医薬品組成物の薬学的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0065】
実施形態によっては、対象における抗菌剤の抗菌有効性を増加させるための方法であって、前記抗菌剤または薬学的に許容されるその誘導体を、式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体の薬学的に有効な量とともに同時投与するステップを含む方法が提供される。
【0066】
実施形態によっては、本発明による組成物および方法は、式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体を少なくとも1種の抗菌剤と組み合わせて用いる。多彩な抗菌剤を用いることができる。抗菌剤の典型的、非限定的な例は、一般にアミノグリコシド系、アンサマイシン系、カルバセフェム系、セファロスポリン系、セファマイシン系、リンコサミド系、リポペプチド系、マクロライド系、モノバクタム系、ニトロフラン系、ペニシリン系、ポリペチド系、キノロン系、スルホンアミド系、テトラサイクリン系、オキサゾリジノン系などとして分類される1種以上の抗菌性化合物を含む。
【0067】
アミノグリコシド系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、アルベカシン、ストレプトマイシン、アプラマイシンなどを含む。アンサマイシン系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、ゲルダナマイシン、ハービマイシンなどを含む。カルバセフェム系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、ロラカルベフなどを含む。カルバペナム系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム、メロペネムなどを含む。
【0068】
セファロスポリン系およびセファマイシン系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、セファゾリン、セファセトリル、セファドロキシル、セファレキシン、セファログリシン、セファロニウム、セファロリジン、セファロチン、セファピリン、セファトリジン、セファゼドン、セファザフルール、セフラジン、セフロキサジン、セフテゾール、セファクロル、セファマンドール、セフミノクス、セホニシド、セフォラニド、セフォチアム、セフプロジル、セフブペラゾン、セフロキシム、セフゾナム、セファマイシン、セフォキシチン、セフォテタン、セフメタゾール、カルバセフェム、セフィキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、セフカペン、セフダロキシム、セフジニル、セフジトレン、セフェタメト、セフメノキシム、セフォジジム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフピミゾール、セフピラミド、セフポドキシム、セフスロジン、セフテラム、セフチブテン、セフィオレン、セフチゾキシム、オキサセフェム、セフェピム、セフォゾプラン、セフピロム、セフキノム、セフトビプロール、セチオフル、セフキノム、セフォベシン、CXA−101、セフタロリン、セフトビプロール、セフォセリス、セフルプレナム、セフクリジン、ロラカルバセフ、セフトロザン、ラタモキセフなどを含む。
【0069】
リンコサミド系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、クリンダマイシン、リンコマイシンなどを含む。マクロライド系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシンなどを含む。モノバクタム系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、アズトレオナムなどを含む。ニトロフラン系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、フラゾリドン、ニトロフラントインなどを含む。ペニシリン系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、テモシリン、コリスチン、ポリミキシンBなどを含む。
【0070】
ポリペチド系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンBなどを含む。キノロン系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジキシン酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシンなどを含む。スルホンアミド系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、マフェニド、スルホンアミドクリソイジン、スルファアセトアミド、スルファジアジン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリムなどを含む。
【0071】
テトラサイクリン系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、チゲサイクリンなどを含む。オキサゾリジノン系抗菌剤の典型的、非限定的な例は、リネゾリド、ランベゾリド、トレゾリド、ラデゾリドなどを含む。ベータ−ラクタマーゼ阻害剤の典型的、非限定的な例は、スルバクタム、タゾバクタムまたはクラブラン酸などを含む。
【0072】
本発明による医薬品組成物は、1種以上の薬学的に許容されるキャリアーまたは賦形剤などを含んでよい。そのようなキャリアーまたは賦形剤の典型的、非限定的な例は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、タルク、セルロース、ナトリウムクロスカルメロース、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウム、濡れ剤、乳化剤、溶解剤、pH緩衝剤、滑沢剤、防腐剤、安定剤、結合剤などを含む。
【0073】
本発明による医薬品組成物は、さまざまな形で存在してよい。実施形態によっては、医薬品組成物は、粉末または溶液の形である。いくつかの他の実施形態においては、本発明による医薬品組成物は、非経口投与前に適合再構成希釈剤の添加によって再構成することができる粉末の形である。そのような適合再構成希釈剤の非限定的な例は、水を含む。いくつかの他の実施形態において、本発明による医薬品組成物は、非経口投与前に適合希釈剤で希釈することができる凍結組成物の形である。いくつかの他の実施形態において、本発明による医薬品組成物は、そのまま非経口投与に使える形である。
【0074】
本発明による方法において、本明細書に開示される医薬品組成物および/またはその他の薬学的に活性な成分は、組成物もしくはその構成要素または有効成分を所望の部位に送達するために用いられるいずれの適切な方法によって投与されてもよい。投与方法は、たとえば医薬品組成物の構成成分、活性成分の性質、可能性のある感染部位または実際の感染部位、関与する微生物(たとえば細菌)、感染症の重さ、対象の年齢および身体条件などのさまざまな要因に応じて変えることができる。本発明によって対象に組成物を投与する非限定的な例の一部は、経口、静脈、局所、呼吸器内、腹膜内、筋肉内、非経口、舌下、経皮、鼻腔内、エアロゾル、眼内、気管内、直腸内、膣内、遺伝子銃、皮膚パッチ、点眼、点耳または口内洗浄を含む。
【0075】
本発明による組成物は、さまざまな剤形に製剤化することができ、剤形中の活性成分および/または賦形剤は一緒に(たとえば混合物として)存在してもよく別々の構成成分として存在してもよい。さまざまな成分が組成物中の混合物として製剤化されれば、そのような組成物は、そのような混合物の投与によって送達することができる。成分が混合物としてではなく別々の構成成分として含まれる組成物または剤形では、そのような組成物/剤形は、いくつかの方法で投与されてよい。可能な1つの方法では、成分は、所望の比率で混合されてもよく、次に、必要に応じて混合物が投与される。あるいは、構成成分または成分(活性または不活性)は、同等な混合物の投与によって実現されたであろう同じまたは同等な治療レベルまたは効果を実現するために、適切な比率で別々に(同時にまたは順次)投与されてもよい。
【0076】
同様に、本発明による方法において、本明細書に開示される有効成分は、要件に応じていくつかの方法で対象に投与されてよい。実施形態によっては、適切な量の活性成分が混合され、次に混合物は個別に投与され、本発明は、キットの形での個別の医薬品組成物の組み合わせをさらに提供する。キットは、それぞれが1種以上の活性成分を含む1種以上の個別の医薬品組成物を含んでよい。そのような個別の組成物のそれぞれが、ビン、バイアル、注射器、箱、袋などの個別の容器中に存在してよい。典型的には、キットは、個別の構成成分の投与のための指示を含む。キット形は、個別の構成成分が好ましくは異なる投与間隔で投与されるとき特に有利である。活性成分は、別々に投与されるとき同時に投与されても順に投与されてもよい。
【0077】
本発明による医薬品組成物または活性成分は、さまざまな剤形に製剤化されてよい。剤形の典型的、非限定的な例は、固体、半固体、液体およびエアロゾル剤形、たとえば錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、坐薬、エアロゾル、顆粒、乳化液、シロップ、エリキシルなどを含む。
【0078】
一般に、本明細書に開示される医薬品組成物および方法は、細菌感染症の予防または処置において有用である。本明細書に開示される組成物および方法は、公知の抗菌剤またはその公知の組成物の1種以上があまり効かないかまたは効かないとされる細菌によって引き起こされる感染症の予防または処置においても有効であり、有利である。さまざまな抗菌剤に対する抵抗性を発生していることが知られているそのような細菌の非限定的な例の一部は、アシネトバクター(Acinetobacter)、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロバクター(Enterobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、シトロバクター(Citrobacter)などを含む。本発明の組成物および/または方法を用いて予防または処置することができる感染症のその他の非限定的な例は、皮膚および軟組織感染症、発熱性好中球減少症、尿路感染症、腹腔内感染症、気道感染症、肺炎(医現性)、敗血症髄膜炎、外科感染症(surgical, infections)などを含む。
【0079】
驚くべきことに、本発明による化合物、組成物および方法は、1種以上のベータ−ラクタマーゼ酵素を産生する細菌によって引き起こされる細菌感染症の予防または処置においても有効である。本発明による組成物および方法は、典型的なベータ−ラクタム抗菌剤でそのような耐性菌を処置することができるため、当分野における顕著な改善を表す。
【0080】
一般に、本発明による式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体は、対象における抗菌剤の抗菌有効性の増加にも有用である。1種以上の抗菌剤の抗菌有効性は、たとえば、前記抗菌剤または薬学的に許容されるその誘導体を、本発明による式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される誘導体の薬学的に有効な量とともに同時投与することによって増加させることができる。
【0081】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく本明細書において開示される発明にさまざまな置き換えおよび改変を施してもよいことは、当業者に直ちに了解される。たとえば、当業者は、記載された包括的な記載の範囲内でさまざまな異なる化合物を用いて本発明が実施されてもよいことを認識するであろう。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、現在もっともよく知られている本発明の実施形態を例示する。しかし、以下は、本発明の原理の適用の例または例示でしかないことを理解するべきである。多数の改変形および代替組成物、方法およびシステムが本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって考案されることが可能である。添付の請求項は、そのような改変形および構成形を包含するものとする。したがって、本発明は、上記に具体的に記載されているが、以下の実施例は、現在のところもっとも実際的であって好ましい本発明の実施形態と考えられるものと関連してさらなる詳細を示す。
【0083】
(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(XI))の合成
ステップ1:(2S,5R)−6−(ベンジルオキシ)−2−(ヒドロキシメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(III)の調製:
(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2−カルボン酸(II)のナトリウム塩(50g、0.16モル、インド特許出願第699/MUM/2013号に記載されている手順に従って調製した)をテトラヒドロフラン(500ml)に懸濁させた。撹拌しながら懸濁液にN−メチルモルホリン(18.4ml、0.16モル)を加えた。反応混合物を約−10℃に冷却し、滴下ロートによってクロロぎ酸エチルを加え、約−10℃で1時間撹拌した。撹拌しながら反応混合物にNaBH(9.56g、0.25モル)を何回かに分けて加えた。薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて反応を監視した。反応の完了後、反応物に水(500ml)、次いで酢酸エチル(500ml)を加えた。反応混合物を30分間撹拌し、層分離させた。有機層を塩水(200ml)で洗浄した。真空下で溶媒を蒸発乾固して(2S,5R)−6−(ベンジルオキシ)−2−(ヒドロキシメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(III)43gを淡黄色の油として得た(99%収率)。
分析:
質量:263.2[M+1];分子式:C1418;および分子量:262.3に対応。
H NMR(CDCl):δ 7.28〜7.49(m、5H)、4.96(dd、2H)、4.10〜4.16(m、1H)、3.60〜3.74(m、3H)、3.55〜3.59(m、2H)、1.92〜2.02(m、2H)、1.54〜1.58(m、2H)、1.36〜1.41(m、1H)。
【0084】
ステップ2:(2S,5R)−6−(ベンジルオキシ)−2−(4−ニトロフェニルスルホニルオキシ−メチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(IV)の調製:
ジクロロメタン(240ml)中の(2S,5R)−6−(ベンジルオキシ)−2−(ヒドロキシメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(24g、0.091モル)の溶液を約10℃に冷却した。上記溶液にトリエチルアミン(38.2ml、0.274モル)、次いでp−ニトロフェニルスルホニルクロリドを加えた。この反応混合物を同じ温度で2時間撹拌してから水(200ml)で反応停止させた。反応混合物を15分間撹拌し、層分離させた。有機層を塩水(200ml)で洗浄した。真空下で溶媒を蒸発させて(2S,5R)−2−(4−ニトロフェニルスルホニルオキシ−メチル)−6−(ベンジルオキシ)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(IV)35.3gを淡黄色の固体として得た(85%収率)。
分析:
質量:448.2[M+1];分子式:C2021Sおよび分子量:447.5に対応。
H NMR(CDCl):δ 8.39(d、2H)、8.11(d、2H)、7.35〜7.40(m、5H)、5.00(dd、2H)、3.73〜4.21(m、2H)、3.33(m、1H)、2.98〜3.16(m、3H)、1.70〜2.00(m、2H)、1.51〜1.61(m、2H)。
【0085】
ステップ3:(2S,5R)−6−(ベンジルオキシ)−2−(アジドメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(V)の調製:
N,N−ジメチルホルムアミド(150ml)中の(2S,5R)−6−(ベンジルオキシ)−2−(4−ニトロフェニルスルホニルオキシ−メチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(30g、0.067モル)の溶液に、NaN(8.7g、0.134モル)を加え、反応混合物を約65℃で4時間加熱した。TLCで見て反応が完結した後、反応混合物を約25℃から30℃に冷却し、水(750ml)、次いで酢酸エチル(300ml)を加えた。反応物を15分間撹拌した。有機層を分離し、水(200ml)、次いで塩水(200ml)で洗浄した。真空下で溶媒を蒸発させて(2S,5R)−2−(アジドメチル)−6−(ベンジルオキシ)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(V)14gを固体として得た(72%収率)。
分析:
質量:288.1[M+1];分子式:C1417;および分子量:287.3に対応。
H NMR(CDCl):δ 7.28〜7.42(m、5H)、4.94(dd、2H)、3.48〜3.57(m、2H)、3.29〜3.33(m、2H)、2.92(d、2H)、1.93〜2.02(m、2H)、1.41〜1.59(m、2H)。
【0086】
ステップ4:(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(VI)の調製:
テトラヒドロフラン(130ml)中の(2S,5R)−6−(ベンジルオキシ)−2−(アジドメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(13g、0.045モル)の溶液に、トリフェニルホスフィン(23.7g、0.19モル)を加え、反応混合物を約25〜30℃で12時間撹拌した。反応混合物に水(1ml)を加え、25〜30℃で約2時間撹拌した。2時間後、トリエチルアミン(19ml、0.135モル)、次いでピロ炭酸ジ−tert−ブチル(20.5ml、0.95モル)を加え、混合物を約25〜30℃で4時間撹拌した。TLCで見て反応が完結した後水(130ml)、次いで酢酸エチル(130ml)を加え、反応物を15分間撹拌した。有機層を分離し、塩水(200ml)で洗浄した。真空下で溶媒を蒸発させ、酢酸エチル:ヘキサン(2:8)の混合物を用いるシリカゲル(60〜120メッシュ)カラムクロマトグラフィーによって残留物を精製して(2S,5R)−6−ベンジルオキシ(benzylozy)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(VI)8gを固体として得た(49%収率。
分析:
質量:362.1[M+1];分子式:C1927および分子量:361.4に対応。
H NMR(CDCl):δ 7.28〜7.45(m、5H)、5.03(d、1H)、4.97(bs、1H)、4.89(d、1H)、3.43〜3.46(m、1H)、3.26〜3.36(m、3H)、2.84〜2.96(m、2H)、1.94〜2.04(m、3H)、1.57〜1.61(m、1H)、1.42(s、9H)。
【0087】
ステップ5:(2S,5R)−6−ヒドロキシ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(VII)の調製:
メタノール(60ml)中の(2S,5R)−6−ベンジルオキシ(benzylozy)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(8g、0.022モル)の溶液にチャコールに担持した10%パラジウムを加え、60psi圧力の水素ガス下この混合物を約25〜30℃で3時間水素化した。セライト床フィルターを通して反応混合物を濾過して触媒を除去し、真空下で濾液を濃縮して(2S,5R)−6−ヒドロキシ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(VII)6gを白色の固体として得た(100%収率)。
分析:
質量:272.1[M+1];分子式:C1221;および分子量:271.3に対応。
H NMR(CDCl):δ 4.92(bs、1H)、3.29〜3.73(m、3H)、2.75〜2.98(m、2H)、2.35〜2.65(m、3H)、1.96〜2.02(m、2H)、1.67〜1.73(m、1H)、1.47(s、9H)。
【0088】
ステップ6:(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−7−オキソ−1、6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(VIII)のテトラブチルアンモニウム塩の調製:
アルゴン雰囲気下約30℃において撹拌しながらジクロロメタン(60ml)中の(2S,5R)−6−ヒドロキシ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(6g、0.022モル)の溶液にトリエチルアミン(9.2ml、0.066モル)、次いで三酸化硫黄−ピリジン錯体(7g、0.044モル)を加えた。反応混合物を2時間撹拌してから0.5Nリン酸二水素カリウム緩衝液(120ml)中に投入した。有機層を分離して捨てた。水層に固体の硫酸水素テトラブチルアンモニウム(6.75g、0.0.19モル)を加え、約30℃で2時間撹拌した。ジクロロメタン(60ml×2)で反応混合物を抽出した。層分離させた。有機層を一緒にし、真空下40℃より低温で蒸発させて(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(VIII)のテトラブチルアンモニウム塩10gを白色の固体として得た(87%収率)。
分析:
質量:(M−1):350.1遊離スルホン酸として;分子式:C1221S.N(C;および分子量:592.9に対応。
H NMR(CDCl):δ 4.94(bs、1H)、3.28〜3.37(m、11H)、2.72〜2.95(m、3H)、2.32〜2.64(m、3H)、1.62〜1.78(m、11H)、1.40〜1.49(m、16H)、0.98〜1.02(m、12H)。
【0089】
ステップ7:(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(IX)のナトリウム塩の調製:
(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンのテトラブチルアンモニウム塩(9g)を10%テトラヒドロフラン:水に溶解し、ダウエックス50WX8 200 Na樹脂を充填したカラム(長さ45cmおよび直径2.0cm)を通してこの溶液を流した。10%テトラヒドロフラン:水混合物(250ml)でカラムを溶離した。化合物を有する画分を一緒にし、真空下(4mmHg)で蒸発させて(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(IX)のナトリウム塩2.9gを白色固体として得た(72%収率)。この中間体を次の反応のために用いた。
分析:
質量:(M−1):373.1遊離スルホン酸として;分子式:C1220SNa;および分子量:374.74に対応。
【0090】
ステップ8:(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(X)のナトリウムおよびトリフルオロ酢酸塩の調製:
(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンのナトリウム塩(2.4g、0.006モル)をジクロロメタン(6ml)に懸濁させ、この反応混合物に約0〜5℃でトリフルオロ酢酸(6ml)をゆっくり加えた。反応混合物を約0〜5℃の間でさらに2時間撹拌した。真空下40℃より低温で溶媒および過剰のトリフルオロ酢酸を元の体積の大体1/3まで蒸発させて淡黄色の油状残留物を得た。この油状残留物をジエチルエーテルでほぐし、エーテルをデカンテーションした(40ml×2)。粗製の固体を再びジクロロメタン(40ml×2)でほぐし、溶媒をデカンテーションした。真空下40℃より低温で最終的な固体を乾燥して(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(X)のナトリウムおよびトリフルオロ酢酸塩2.2gを得た(90%収率)。
分析:
質量:(M−1):250.1遊離スルホン酸として;分子式:C13SNaCFCOO;および分子量:387.26に対応。
H NMR(DMSO−d6):δ 7.82(br.s、3H)、4.00(d、1H)、3.35〜3.40(m、3H)、2.28〜2.91(m、2H)、1.74〜1.79(m、3H)、1.44〜1.47(m、1H);および
HPLCで定量した純度:97.64%。
【0091】
ステップ9:(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(XI)の調製:
(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタンのナトリウムおよびトリフルオロ酢酸塩(2g、0.005モル)を蒸留水(2ml)に溶解し、約25℃においてこの透明な溶液にイソプロピルアルコール(14ml)をゆっくり加えた。反応混合物を12時間撹拌した。沈殿物を吸引濾過して固体を分離し、真空下40℃より低温で乾燥して(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(XI)1.2gを得た(92%収率)。
分析:
質量:252(M+1)、250(M−1);分子式:C14S;および分子量:251.3に対応。
H NMR(DMSO−d6):δ 7.78(br.s、3H)、4.24(s、1H)、3.62〜3.65(m、1H)、3.20〜3.42(m、4H)、2.00〜2.18(m、2H)、1.81〜1.98(m、1H)、1.60〜1.65(m、1H);
13C NMR(DO):18、20、40、43、56、60、171;および
HPLCで定量した純度:99.77%。
【0092】
生物活性データ
本発明による代表的な化合物のさまざまな細菌株に対する生物活性を検討した。典型的な検討において、一夜成長させた細菌培養物を適切に希釈し、試験化合物の2倍希釈物を含有する寒天培地に接種した。環境空気中35±2℃における16〜20時間のインキュベーション後に成長したかまたは成長しなかったかの観察を行った。手順全体を、クリニカル・アンド・ラボラトリー・スタンダーズ・インスティチュート(Clinical and Laboratory Standards Institute)(CLSI)勧告(クリニカル・アンド・ラボラトリー・スタンダーズ・インスティチュート(CLSI)、抗菌物質感染性試験のための性能基準、補遺情報第20(Perfomance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing, 20th Information Supplement)M 100−S20、30巻、1号、2010年)に従って行った。これらの検討の結果を表1および2にまとめる。これらの表においては抗菌活性を最小発育阻止濃度(MIC)として表す。表1は、(2S,5R)−6−スルホオキシ−2−(アミノメチル)−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(化合物XI)の抗菌活性プロファイルを公知の抗菌剤と比べて示す。化合物(X)の遊離双性イオン形である化合物(XI)の抗菌活性プロファイルも調べた。化合物(XI)は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、大腸菌および緑膿菌(P.aeruginosa)といった抵抗性ESBL菌株に対して良好な抗菌活性を示す。化合物(XI)の活性プロファイルは、試験されたすべての細菌株に対してセフタジジムおよびセフェピムより良好であることを見いだした。化合物(XI)は、抵抗性ESBL菌株である肺炎桿菌および緑膿菌に対してイミペネムより良好な活性を示した。
【0093】
化合物(XI)の抗菌活性を他のベータ−ラクタム抗菌剤との組み合わせでも調べた。表2のデータは、セフタジジムと組み合わせた化合物(XI)の存在下におけるESBL酵素阻害の結果を示す。セフタジジムだけを用いて得られた結果を対照として用いた。化合物(XI)(4μg/ml)とセフタジジムとの組み合わせの抗菌活性を(i)セフタジジムとアビバクタム(4μg/ml)との組み合わせ;および(ii)イミペネム単独と比較した。結果は、化合物(XI)とセフタジジムとの組み合わせが抵抗性菌株に対して良好な抗菌活性を示すことを示した。セフタジジムと組み合わせた化合物(XI)の存在は、セフタジジム単独のMIC値を顕著に低下させた。表2の結果から、化合物(XI)とセフタジジムとを含む組み合わせは、相乗作用を示し、セフタジジム単独では効果がないことが見いだされている抵抗性菌株に対して強力な抗菌阻害を示したようである。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】