(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411500
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】タービンエンジンおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
F02C 9/28 20060101AFI20181015BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20181015BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20181015BHJP
F02C 9/00 20060101ALI20181015BHJP
F02C 9/56 20060101ALI20181015BHJP
F02C 3/10 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
F02C9/28 D
F01D25/00 V
F01D25/00 W
F02C7/00 A
F02C9/00 A
F02C9/56
F02C3/10 501
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-532045(P2016-532045)
(86)(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公表番号】特表2016-538467(P2016-538467A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】FR2014052849
(87)【国際公開番号】WO2015075346
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2017年10月17日
(31)【優先権主張番号】1361353
(32)【優先日】2013年11月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516235451
【氏名又は名称】サフラン・ヘリコプター・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランフォール,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】レシェル,ファビアン
【審査官】
山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06321525(US,B1)
【文献】
英国特許出願公開第02214331(GB,A)
【文献】
特表2013−530348(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0098042(US,A1)
【文献】
特開2005−315237(JP,A)
【文献】
特開2013−032707(JP,A)
【文献】
特開2012−167550(JP,A)
【文献】
特開2012−145034(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02570617(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 9/28
F01D 25/00
F02C 3/10
F02C 7/00
F02C 9/00
F02C 9/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのタービンエンジン(5)を調整する調整方法であって、少なくとも、
圧縮機(8)と、
圧縮機より下流の燃焼室(9)と、
燃焼室より下流の第1および第2タービン(10、12)と、
少なくとも前記圧縮機および前記第1タービンとともに回転させられる第1回転シャフト(11)と、
第2タービンとともに回転させられる第2回転シャフト(13)であって、そうは言っても第1回転シャフトに対しては自由に回転できる、第2回転シャフト(13)と、
燃焼室への燃料の供給を制御するためのレギュレータ(15)と、
を備え、
前記レギュレータは、第2タービン(12)によって燃焼ガスから抽出される機械動力に関連付けられた少なくとも1つの指標的物理パラメータに応じて変動する最大閾値(N2,max)を前記第2回転シャフトの回転速度(N2)が上回った場合に、燃焼室への燃料の供給を遮断し、
方法は、前記指標的物理パラメータが高閾値を上回るとき、および前記指標的物理パラメータが低閾値の下を通るときに、第2回転シャフトの回転速度の前記最大閾値が低下することを特徴とする、調整方法。
【請求項2】
前記指標的物理パラメータは、第2回転シャフトによって伝達されるトルクである、請求項1に記載の調整方法。
【請求項3】
前記指標的物理パラメータは、第1回転シャフトの回転速度である、請求項1に記載の調整方法。
【請求項4】
第2回転シャフトの回転速度の前記最大閾値は、少なくとも第1回転シャフトの前記回転速度に応じて、ならびに周囲圧力および/または温度(p0、T0)に応じて変動する、請求項3に記載の調整方法。
【請求項5】
前記指標的物理パラメータは、前記圧縮機(8)より下流の圧力である、請求項1に記載の調整方法。
【請求項6】
前記指標的物理パラメータは、前記燃焼室(9)より下流の温度である、請求項1に記載の調整方法。
【請求項7】
前記指標的物理パラメータは、燃焼室(9)に供給される燃料の流量である、請求項1に記載の調整方法。
【請求項8】
前記指標的物理パラメータは、前記圧縮機(8)を通る空気の流量である、請求項1に記載の調整方法。
【請求項9】
前記指標的物理パラメータは、エンジン(5)を制御するための制御部材(25)の運動である、請求項1に記載の調整方法。
【請求項10】
第1回転シャフトの回転速度の前記高閾値未満では、その最大閾値よりかなり低い警告閾値(N2,avert)を前記指標的物理パラメータが上回った場合に警告が記録される、請求項1から9のいずれか一項に記載の調整方法。
【請求項11】
第2回転シャフトの回転速度の前記最大閾値は、中間閾値とその高閾値との間で前記指標的物理パラメータの増加とともに徐々に低下する、請求項1から10のいずれか一項に記載の調整方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の調整方法を実行するために、プログラマブルデジタルレギュレータによって実行されるのに適した命令のセットを含む、データ媒体。
【請求項13】
タービンエンジン(5)であって、少なくとも、
圧縮機(8)と、
圧縮機より下流の燃焼室(9)と、
燃焼室より下流の第1および第2タービン(10、12)と、
少なくとも前記圧縮機および前記第1タービンとともに回転させられる第1回転シャフト(11)と、
第2タービンとともに回転させられる第2回転シャフト(13)であって、そうは言っても第1回転シャフトに対しては自由に回転できる、第2回転シャフト(13)と、
燃焼室への燃料の供給を制御するための、前記第2タービン(12)によって燃焼ガスから抽出される機械動力に関連付けられた少なくとも1つの指標的物理パラメータに応じて変動する最大閾値(N2,max)を前記第2回転シャフトの回転速度(N2)が上回った場合に前記供給を遮断するように構成されている、レギュレータ(15)と、
を備え、
エンジンは、前記指標的物理パラメータが高閾値を上回るとき、および前記指標的物理パラメータが低閾値の下を通るときに、第2回転シャフトの回転速度の前記最大閾値が低下することを特徴とする、タービンエンジン(5)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンエンジンの分野、およびこれらの調整に関する。
【背景技術】
【0002】
用語「タービンエンジン」は、本文脈において、タービン内の作動流体を膨張させることによって前記作動流体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換するためのあらゆる機械を指定するために、使用される。より具体的には、作動流体は、第1回転シャフトを介してタービンによって駆動される圧縮機内で空気が圧縮された後、燃焼室での空気との燃焼化学反応から生じる燃焼ガスであってもよい。このため、本文脈において理解されるように、タービンエンジンは、とりわけバイパスまたは非バイパスターボジェット、ターボプロップ、ターボシャフトエンジン、およびガスタービンを含む。以下の説明において、用語「上流」および「下流」は、このようなタービンエンジンを通る作動流体の通常の流れ方向に対して定義される。
【0003】
具体的には、説明は、少なくとも圧縮機と、圧縮機より下流の燃焼室と、燃焼室より下流の第1および第2タービンと、少なくとも前記圧縮機および前記第1タービンとともに回転させられる第1回転シャフトと、第2タービンとともに回転させられる第2回転シャフトであって、そうは言っても第1回転シャフトに対しては自由に回転できる、第2回転シャフトと、燃焼室への燃料の供給を制御するためのレギュレータと、を備えるタービンエンジンを調整する方法に関する。このようなタービンエンジンは、特に固定的な用途では「ガスタービン」として、第2回転シャフトが推進プロペラを駆動するために使用されるときには「ターボプロップ」として、または乗物に搭載されているが推進プロペラ以外の推進装置を駆動するために使用されるときには「ターボシャフトエンジン」として、知られている。このため、ターボシャフトエンジンは、航空機の回転翼を駆動するために、使用される。
【0004】
この分野において、およびより具体的には航空機ターボシャフトエンジンおよびターボプロップ向けに、および具体的には回転翼を駆動するためのターボシャフトエンジン向けに、第2タービンまたは「自由」タービンからの動力伝達の不慮の中断は、第2タービンを危険なほど急加速させる可能性がある。このような急加速の結果としてより深刻な損傷を回避するために、前記第2回転シャフトの回転速度が最大閾値を超過した場合に、レギュレータが燃焼室への燃料の供給を遮断するという提案がなされてきた。
【0005】
とは言うものの、この最大閾値を設定することは、大きな技術的妥協を要する。特定の用途において、エンジンの特定の動作条件の間に第2シャフトの著しい超過速度に到達することが、望ましい。このため、回転翼航空機の分野において、これは、航空機が厳しい操作を実行する場合に、回転翼の回転速度の過渡的ピークを許容するのに役立てる。とは言うものの、第2回転シャフトの回転速度の高い最大閾値は、安定した条件、具体的には連続最大出力(MCP)条件または最大離陸出力(TOP)条件の下で第2回転シャフトによってもたらされる最大トルクと比較して、第2タービンおよび第2回転シャフトの著しい過大寸法も必要とする。このような過大寸法は通常、エンジンの性能を犠牲にして、その重量の著しい増加に関連してのみ達成可能であり、このような増加は、航空分野においては特に望ましくない。
【0006】
少なくとも2つのこのようなエンジンを有する複数エンジン動力プラントのこの不都合に直面して、従来技術で提案された解決法の1つは、前記最大速度閾値が第2回転シャフトによって超過された結果として両方のエンジンへの供給が同時に遮断されるのを回避するのに役立つ交差抑制装置を、動力プラントに組み込むことである。とは言うものの、この解決法は、特に事故の際に両方のエンジンより下流の動力伝達が中断した場合に、別の不都合を呈する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの不都合を改善しようとするものである。具体的には、本明細書は、それでもなお自発的速度ピークのための障害物を構成することも、自由タービンまたはその下流の動力伝達の過剰な過大寸法を要することもなく、下流の動力伝達の中断の場合にその自由タービンが危険なほど急加速するのを回避できるようにする、タービンエンジンを調整する方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
少なくとも1つの実施例において、この目的は、第2回転シャフトの回転速度の最大閾値が、第2タービンによって燃焼ガスから抽出される機械動力に関連付けられた少なくとも1つの指標的物理パラメータに応じて変動し、第2回転シャフトの回転速度の前記最大閾値は、前記指標的物理パラメータが高閾値を上回るとき、および前記指標的物理パラメータがより低い閾値を下回るときに低下するという事実によって、達成される。
【0009】
これらの提供により第2回転シャフトの回転速度のこの最大閾値は、自由タービンより下流の動力伝達の中断から生じる超過速度について、および自由タービンの速度の自発的かつ過渡的な変動について、異なる可能性がある。
【0010】
いくつかの異なる物理パラメータは、第2タービンによって燃焼ガスから抽出される機械動力に関連付けられている。このため、一例として、第2回転シャフトによって伝達されるトルクは、その回転速度とともに、前記動力との直接的関係を有する。このため、一例として、方法において使用される指標的物理パラメータは、第2回転シャフトによって伝達されるトルクによって構成されてもよい。
【0011】
とは言うものの、エンジンのその他の物理パラメータもまた、燃焼ガスによって第2タービンに伝達される機械動力に関連付けられることが可能である。具体的には、ガス発生器の速度もまたこの動力と緊密に関連付けられている。このため、一例として、方法において使用される指標的物理パラメータはまた、第1回転シャフトの回転速度であってもよい。このような状況下において具体的に、第2回転シャフトの回転速度の前記最大閾値は、少なくとも第1回転シャフトの前記回転速度のみならず、周囲圧力および/または温度にも応じて、明確に異なってもよい。具体的には、周囲圧力および/または温度は、第2回転シャフトの回転速度の前記最大閾値を決定するための機能において第1回転シャフトの前記回転速度を正規化するために、使用されてもよい。
【0012】
第2回転シャフトによって伝達されるトルクおよび/または第1回転シャフトの回転速度の代わりに、またはこれらに加えて、第2タービンによって燃焼ガスから抽出される動力に関連付けられ、方法における指標的物理パラメータとしての使用に適したその他の物理パラメータは、たとえば:前記圧縮機より下流の圧力;前記燃焼室より下流の温度;燃焼室に供給される燃料の(質量または体積)流量;前記圧縮機を通る空気の(質量または体積)流量;および/またはエンジンを制御するための制御部材の運動を、含む。
【0013】
第2回転シャフトの回転速度の前記最大閾値はこのように、前記指標的物理パラメータが高閾値を上回るときに、生成される。第2タービンによって燃焼ガスから抽出される機械動力に関連付けられた指標的物理パラメータの高閾値を超える第2回転シャフトの回転速度の最大閾値におけるこのような低下は、自由タービンより下流の動力伝達の中断に続いて、またはエンジンの速度の制御不能な上昇を招いた燃料供給の調整における失敗に起因して、燃料の供給がより速く遮断されることを可能にする。同時に、指標的物理パラメータのこの高閾値より低い第2シャフトの回転速度の高い最大閾値は、より低いガス発生器の速度で自由タービンの過渡的超過速度を適合させられるようにする。とは言うものの、指標的物理パラメータの前記高閾値未満で、たとえばいずれかのこのような過渡的超過速度の後にエンジンの検査を始める目的のため、第2回転シャフトの回転速度がその最大閾値よりも著しく低い警告閾値を上回る場合に、警告が記録されてもよい。
【0014】
加えて、第2回転シャフトの回転速度の前記最大閾値は、第1回転シャフトの回転速度の中間閾値とその高閾値との間の前記指標的物理パラメータの増加とともに、徐々に減少してもよく、これにより、第2回転シャフトの最大回転速度を、第2タービンによって燃焼ガスから抽出されて第2回転シャフトによって通常通りに伝達される、動力の増加に適合させる。これは、第2タービンおよび第2回転シャフトの寸法決めを最適化できるようにする。
【0015】
さらに、指標的物理パラメータの低閾値未満で、第2回転シャフトの超過速度は、重大な故障を表す可能性がある。具体的には、第2回転シャフトによって伝達されるトルクが特定の閾値未満である場合、第2回転シャフトより下流の動力伝達の中断によって第2回転シャフトの超過速度が生じている可能性が非常に高い。使用される指標的物理パラメータがその他何らかのパラメータであったとしても、指標的物理パラメータの低閾値未満である間の第2回転シャフトの超過速度は、特に指標的物理パラメータを測定するために使用される(1つまたは複数の)センサにおける故障を示す可能性がある。第2タービンによって燃焼ガスから抽出される動力に関連付けられた指標的物理パラメータがこの低閾値未満である場合には、第2回転シャフトは超過速度しており、これは具体的には、指標的物理パラメータについて測定された値が真の値ではないことを意味する。前記指標的物理パラメータがその低閾値を下回るときの第2回転シャフトの速度の前記最大閾値における低下は、第2タービンによって燃焼ガスから抽出される動力の量が実際には不明確であったとしても、第2回転シャフトの回転速度の高い最大閾値を維持できるようにする。
【0016】
本発明はまた、このような調整方法を実行するために、プログラマブルデジタルレギュレータによって実行されるのに適した命令のセットを含むデータ媒体も提供する。本文脈において、用語「データ媒体」は、コンピュータシステムによって、具体的にはプログラマブル電子レギュレータなどのプロセッサによって読み取り可能な、いずれのデータ記憶装置にも及ぶ。このようなデータ媒体は具体的には、磁気ディスクまたはテープなどの磁気データ記憶装置、光ディスクなどの光データ記憶装置、あるいは揮発性または不揮発性電子メモリなどの電子データ記憶装置であってもよい。このため本明細書はまた、コンピュータプログラムおよびソフトウェア製品などの命令のセットも提供する。
【0017】
さらに、本発明はまた、少なくとも圧縮機と、圧縮機より下流の燃焼室と、燃焼室より下流の第1および第2タービンと、少なくとも前記圧縮機および前記第1タービンとともに回転させられる第1回転シャフトと、第2タービンとともに回転させられる第2回転シャフトであって、そうは言っても第1回転シャフトに対しては自由に回転できる、第2回転シャフトと、燃焼室に燃料を供給するための回路と、燃焼室への燃料の供給を制御するための、前記第2回転シャフトの回転速度が最大閾値を上回る場合に前記供給を遮断するように構成された、レギュレータと、を備えるタービンエンジンも、提供する。この方法の少なくとも1つの実施例において、第2回転シャフトの回転速度の前記最大閾値は、第2タービンによって燃焼ガスから抽出される機械動力に関連付けられた少なくとも1つの指標的物理パラメータに応じて変動する。
【0018】
本発明はまた、少なくとも2つのこのようなタービンエンジンを含む動力プラント、ならびに少なくとも1つ、可能であれば少なくとも2つのこのようなタービンエンジンを含む航空機、具体的には回転翼航空機も、提供する。
【0019】
非限定例として提供される以下の実施形態の詳細な説明を読むことで、本発明はより良く理解され、その利点が明らかとなる。説明は、以下の添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】2つのターボシャフトエンジンを有する、
図1の航空機の動力プラントの概略図である。
【
図3】
図2のエンジンのうちの1つの自由タービンに固定された回転シャフトの回転速度の最大閾値が、自由タービンの回転シャフトによって伝達されるトルクに応じて、または同じエンジンのガス発生器の回転シャフトの回転速度に応じて、どのように変動するかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、回転翼航空機1、より具体的には、これらを駆動するために動力プラント4に連結された主回転翼2および反トルク尾部回転翼3を有するヘリコプタを、示す。図示される動力プラント4は、2つのターボシャフトエンジン5を備える。より具体的には、これらのエンジン5は、主回転翼2および尾部回転翼3を駆動するための主伝達ギアボックス7に接続された動力取り出しシャフト6を各々が有する、ターボシャフトエンジンである。
【0022】
動力プラント4のエンジン5のうちの1つが、
図2により詳細に示されている。各エンジン5は、圧縮機8と、燃焼室9と、第1回転シャフト11によって圧縮機8に接続された第1タービン10と、「自由」タービンとして知られる、動力取り出しシャフト6に同様に連結された第2回転シャフト13に連結された、第2タービン12と、を備える。圧縮機8、燃焼室9、第1タービン10、および回転シャフト11によって形成されたアセンブリは、「ガス発生器」としても知られる。供給回路14は、ガス発生器GGの各々において燃焼室9に燃料を供給するのに役立つ。供給回路14は、通常はフルオーソリティデジタルエンジン制御(FADEC)として知られる類の、デジタルレギュレータ15に制御目的のため接続された少なくとも1つの弁14aを、含む。レギュレータ15は具体的には、エンジン5の動作を調整するための命令のセットを含む電子メモリを有する、プログラマブル電子プロセッサを備えてもよい。レギュレータ15はまた、具体的には、第1回転シャフト11の回転速度を検知するためのセンサ16、第2回転シャフト13の回転速度を検知するためのセンサ17、それぞれ周囲温度および圧力を検知するためのセンサ18および19、第2回転シャフト13のねじれを検知するためのセンサ20、燃焼室9と第1タービン10との間の温度を検知するためのセンサ21、それぞれ圧縮機8と燃焼室9との間の空気の圧力および流量を検知するためのセンサ22および23、ならびに燃焼室9に送達される燃料の流量を検知するためのセンサ24を含む、1組のセンサにも接続されている。最後に、レギュレータ15はまた、各エンジン5の動作速度を制御するために、航空機1のパイロットによる操作のための制御レバー25にも接続されてもよい。
【0023】
一例として、センサ20は、ねじれにおけるその変形を測定することで第2回転シャフトによって伝達されるトルクM
2を測定する、仏国特許出願公開第2972256号および仏国特許出願公開第2931552号に開示された類の、ねじれトルク計であってもよい。温度センサ18および21は具体的には熱電対であってもよいが、しかしたとえばセンサ21は同様に高温計であってもよい。センサ24は、流量測定スピナ、または燃料供給回路内の計測ユニットの位置を検知するためのセンサであってもよい。
【0024】
通常、各エンジン5の構成要素は、エンジン5の明確に定義された動作範囲向けに寸法決めされている。動力プラント4および航空機1の性能を最適化するために、エンジン5の構成要素、具体的にはエンジン5の回転部品の、いかなる過大寸法も回避することが適切である。とは言うものの、安全が脅かされてはならない。このため、これらの回転部品の破損を招く可能性のある超過速度、具体的にはそこからの破片が航空機1の別の構成要素を損傷する可能性のある第2タービン12の超過速度を回避するために、レギュレータ14は、センサ17によって測定された第2回転シャフト13の回転速度N
2が最大閾値N
2,maxを上回る場合に燃焼室9への燃料供給を遮断するように、構成されている。この構成は、レギュレータ15の電子メモリに記憶された命令を用いて実現されてもよい。
【0025】
各エンジン5において、第2タービン12および第2回転シャフト13は、いくつかの異なる理由で超過速度を開始するかも知れない。たとえば、エンジン5が高速で動作している間に第2タービン12より下流の動力伝達が中断した場合、これが第2回転シャフト13、動力取り出しシャフト6、または主伝達ギアボックス7を巻き込んでいようがいまいが、第2タービン12はもはやいかなる知覚可能な抵抗トルクによっても制動されず、急加速してすぐに危険な超過速度に到達する可能性がある。第2回転シャフト13と併せた第2タービン12の危険な超過速度はまた、レギュレータ15の故障によって生じる速度の制御不能な上昇によっても引き起こされる可能性がある。いずれの状況でも、第2回転シャフト13の超過速度は、ガス発生器が高速で動作している間に発生する。
【0026】
さらに、厳しい操作は、第2タービン12および第2回転シャフト13の過渡的超過速度を招く可能性がある。一例として、自動回転に従事するために主回転翼2のコレクティブピッチが急激に変化する場合、主伝達ギアボックス7の中のフリーホイールが焼付けまたは詰まって第2タービン12と主回転翼2との間の動力伝達を一時的に維持する間、第2回転シャフト13および第2タービン12は、主回転翼2によって超過速度させられる可能性がある。これらの過渡的超過速度はこのように、著しく低いガス発生器の速度で生じる可能性がある。
【0027】
航空機1の厳しい操作による第2回転シャフト13のこのような過渡的超過速度を許容するために、第2タービン12より下流の動力伝達の中断によって、またはレギュレータ15の機能不全によって引き起こされる第2回転シャフト13の超過速度の場合にも迅速に反応しながら、第1の実施形態では、センサ17によって測定された第2回転シャフト13の回転速度N
2に適用される最大閾値N
2,limは、第2回転シャフト13上のセンサ20によって測定されたねじれトルクM
2に応じて変動する。
【0028】
このため、
図3に示されるように、ねじれトルクM
2が高閾値M
2,lim3よりも大きいとき、速度N
2に適用される最大閾値N
2,limは、第2タービン12でこの最大トルクM
2,lim3によって到達可能な安定した最大速度N
2,maxstabから第1安全マージンΔN
2,sec1を減じたものに対応するが、その一方でトルクM
2が中間トルクM
2,lim2よりも小さいが低閾値M
2,lim1よりもまだ大きいとき、速度N
2に適用される前記最大閾値N
2,limは、トルクM
2,lim2とともに第2タービン12によって到達可能な最大過渡的速度N
2,maxtransから第2安全マージンΔN
2,sec2を減じたものに対応する、著しく高い値を呈する。
【0029】
第2回転シャフト13によって伝達されるトルクM
2の中間閾値M
2,lim2と高閾値M
2,lim3との間で、レギュレータ15は速度N
2に最大閾値N
2,maxを適用するが、この最大閾値は、トルクM
2の増加とともに漸進的に低下する。
【0030】
さらに、トルクM
2により伝達される第2回転シャフト3が低閾値M
2,lim1より低い間に第2タービン12が超過速度に突入した場合、これは第2タービン12より下流の動力伝達の中断があったこと、またはセンサ20の故障があったことを、意味する。結果的に、第2回転シャフト13の速度N
2の最大閾値N
2,maxが低下する。具体的には、および
図3に示されるように、第2回転シャフト13の速度N
2のこの最大閾値N
2,maxは、その低閾値M
2,lim1よりも小さいトルクM
2およびその高閾値M
2,lim3よりも大きいトルクM
2について、実質的に同一であってもよい。
【0031】
加えて、レギュレータ15は、少なくとも第2回転シャフト13上で測定されたトルクM
2がその低閾値M
2,lim1とその高閾値M
2,lim3との間の範囲内にあるときに第2回転シャフト13の回転速度が最大閾値N
2,maxよりも低い警告閾値N
2,avertを上回るときに警告を記録するように、構成されてもよい。このため、レギュレータ15がこの速度で大きな過渡的超過速度を受忍したとしても、これは可能であれば動力プラント4が検査されるようにするために、その事象に関する警告を記録する。この記録は、パイロットの注意を引くための視覚的または聴覚的警告を伴ってもよい。
【0032】
図3において、第2回転シャフト13のトルクM
2および回転速度N
2は、公称最高速度で期待される公称トルクおよび公称回転速度M
2,nomおよびN
2,nomのそれぞれのパーセンテージで表されている。このため、図示される実施例において、第2回転シャフト13上で測定されたトルクM
2が、たとえばその公称最高速度トルクM
2,nomの50%に等しい低閾値M
2,lim1よりも低いか、またはたとえばその公称最高速度N
1におけるそのトルクM
2の105%に等しい高閾値M
2,lim3よりも高いときには、一例として、その回転速度N
2の最大閾値N
2,maxは、その公称最高速度N
2,nomの105%に過ぎない。さらに、トルクM
2が低閾値M
2,lim1と中間閾値M
2,lim2との間にあって、たとえば公称最高速度でのトルクM
2,nomの70%に等しいときには、第2回転シャフト13の回転速度N
2の最大値N
2,maxは実質的により高くなる。一例として、そうすると第2回転シャフト13の回転速度N
2のこの最大閾値N
2,maxは、過渡的超過速度を許容するように、その公称最高速度N
2,nomの121%であってもよい。トルクM
2の中間閾値M
2,lim2を超えると、回転速度N
2の最大閾値N
2,maxは、高閾値M
2,lim3におけるその公称最高速度N
2,nomの112%まで、徐々に低下してもよい。加えて、トルクM
2の低閾値M
2,lim1と高閾値M
2,lim3との間では、レギュレータ15は、トルクM
2のこの範囲の値で最大閾値N
2,maxよりも小さい警告閾値N
2,avertを第2回転シャフト13の回転速度N
2が上回ったときに、警告を記録するように構成されている。たとえば、図示される実施例において、警告閾値N
2,avertは、第1回転シャフト11の測定速度N
1がその低閾値N
1,lim1より低いかまたは高閾値N
1,lim3より高いときに、公称最高速度N
2,nomで、すなわち第2アクチュエータ13の回転速度N
2の最大閾値N
2,maxと同じレベルで、第2回転シャフト13の速度N
2,nomの105%である。これらの数値の各々は純粋に説明のために与えられたものであり、たとえば動力プラント4および航空機1のパラメータに応じて、各閾値についてその他のより適切な値が選択されてもよい。
【0033】
とは言うものの、別の実施例において、第2タービン12によって燃焼ガスから抽出される機械動力に関連付けられたその他の指標的物理パラメータが、トルクM
2の代わりに、またはこれに加えて、使用されてもよい。
【0034】
このため、第2の実施例において、センサ17によって測定された第2回転シャフト13の回転速度N
2に適用される最大閾値N
2,limは、センサ16によって測定される第1回転シャフト11の回転速度N
1に応じて、したがってガス発生器の速度に応じて、変動する。
図3に示されるように、センサ16によって測定される第1回転シャフト11の回転速度N
1に応じたこの最大閾値N
2,limの変動は、第1の実施例におけるトルクM
2に応じたものと似ている。
【0035】
このため、
図3において、回転速度N
1もまた、トルクM
2で使用されるのと同じ軸上の、第1回転シャフト11の公称最高速度N
1,nomでの回転速度のパーセンテージとして表される。第1回転シャフト11の測定速度N
1が、たとえばその公称最高速度N1,nomの50%に等しい低閾値N
1,lim1を下回るか、またはたとえばその公称最高速度N
1,nomの105%に等しい高温N
1,lim3を上回るときには、一例として、第2回転シャフト13の回転速度N
2の最大閾値N
2,maxは、その公称最高速度N
2,nomのわずか105%であってもよい。さらに、第1回転シャフト11の速度N
1が、たとえばその公称最高速度N
1,nomの50%に等しい、低閾値N
1,lim1と中間閾値N
1,lim2との間にあるときには、第2回転シャフト13の回転速度N
2の最大閾値N
2,maxは実質的により高い。一例として、すると第2回転シャフト13の回転速度N
2のこの最大閾値N
2,maxは、過渡的超過速度を許容するように、その公称最高速度N
2,nomの121%に等しくてもよい。第1回転シャフト11の速度N
1の中間閾値N
1,lim2を超えると、第2回転シャフト13の回転速度N
2の最大閾値N
2,maxは、第2回転シャフト13によって伝達されるトルクの増加を考慮するように、たとえば高閾値N
1,lim3でのその公称最高速度N
2,nomの112%まで、徐々に低下してもよい。加えて、第1回転シャフト11の回転速度N
1の低閾値N
1,lim1と高閾値N
1,lim3との間では、レギュレータ15は、第1回転シャフト11の速度N
1のこの範囲内で最大閾値N
2,maxよりも小さい警告閾値N
2,warnを第2回転シャフト13の回転速度N
2が上回ったときに、警告を記録するように構成されている。たとえば、図示されるように、第1回転シャフト11の測定速度N
1がその低閾値N
1,lim1より低いかまたは高閾値N
1,lim3より高いとき、警告閾値N
2,avertは、公称最高速度N
2,nomで、すなわち第2回転シャフト13の回転速度N
2の最大閾値N
2,maxと同じレベルで、第2回転シャフト13の速度N
2の105%である。これらの数値の各々は純粋に説明のために与えられたものであり、たとえば動力プラント4および航空機1のパラメータに応じて、各閾値についてその他のより適切な値が選択されることが可能である。
【0036】
このため
図3に示される曲線もまた、不変の周囲圧力および温度p
0およびT
0での第1回転シャフト11の測定速度N
1に応じて、第2回転シャフト13の回転速度N
2の最大閾値N
2,maxの変動を再現する。とは言うものの、この最大閾値N
2,maxもまた、センサ18、19によって検知される周囲圧力および温度p
0、T
0に応じて変動する可能性がある。たとえば、第2回転シャフト13の回転速度N
2の最大閾値N
2,maxは、回転速度N
1に周囲圧力p
0をかけた積を周囲温度T
0の平方根で割ったものとして表される、ガス発生器の正規過速度NGの関数として表されてもよい。
【0037】
トルクM
2または回転速度N
1の代わりに、またはこれらに加えて、別の指標的物理パラメータも使用されてよい。このため、別の実施例において、一例として最大閾値N
2,maxは、圧縮機8より下流のエンジン5を通る空気の流れの中のセンサ22、23によって測定される空気の圧力p
3または流量Q
a、燃焼室9と第1タービン10との間のセンサ21によって測定される燃焼ガスの温度T
45、燃料供給回路内のセンサ24によって測定された燃料流量Q
c、および/またはその中立位置に対する制御レバー25の位置に応じて、変動してもよい。これら指標的物理パラメータの各々に応じた第2回転シャフト13の回転速度N
2の最大閾値N
2,maxの変動は、トルクM
2または速度N
1に応じて
図3に示されるものと似ていてもよい。
【0038】
上述の実施例の各々において、少なくとも1つの指標的物理パラメータに応じた最大閾値N
2,maxの変動は、レギュレータ15内のマップとして記憶されてもよい。このマップは具体的にはレギュレータ15の中のデータ媒体に記憶されてもよく、これはエンジン5を調整するこの方法を実行するための一連の命令を含むコンピュータプログラムによって使用されてもよく、場合によりこの実施例についてレギュレータ15のプロセッサによって読み取られるのに適したデータ媒体に記憶されてもよい。とは言うものの、レギュレータ15は、プログラマブルデジタルレギュレータ以外の形態であってもよい。このため、一例として、これは同様に機械的、流体的、または配線論理を用いる電子的レギュレータであってもよい。
【0039】
本発明は特定の実施例を参照して記載されているものの、請求項によって定義される本発明の一般的な範囲を逸脱することなく、これらの実施例に対して様々な改変および変更がなされてもよいことは、明らかである。加えて、記載された様々な実施例の個々の特徴は、追加実施例において組み合わせられてもよい。結果的に、説明および図面は、限定的ではなくむしろ説明的な意味で解釈されるべきである。