特許第6411779号(P6411779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411779
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】浴用剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/362 20060101AFI20181015BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20181015BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20181015BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20181015BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   A61K8/362
   A61K8/19
   A61K8/86
   A61K8/34
   A61Q19/10
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-118929(P2014-118929)
(22)【出願日】2014年6月9日
(65)【公開番号】特開2015-231963(P2015-231963A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2017年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】原田 涼子
(72)【発明者】
【氏名】田辺 雄一
【審査官】 木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−007303(JP,A)
【文献】 特開2012−131740(JP,A)
【文献】 特開平04−128218(JP,A)
【文献】 特開2011−184361(JP,A)
【文献】 特開2009−062319(JP,A)
【文献】 特開2011−132136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)有機酸、
(B)炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの質量比(炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム)が0.2〜3である炭酸塩、
(C)ノニオン界面活性剤、及び
(D)炭素数12以上のアルコール
を含有し、成分(C)全体の平均HLBが11以上であり、成分(D)に対する成分(C)の質量比((C)/(D))が1以上250以下である浴用剤組成物。
【請求項2】
成分(C)の含有量が、1質量%以上10質量%以下である請求項1に記載の浴用剤組成物。
【請求項3】
成分(D)が、炭素数22未満のアルコールで、直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を有する請求項1又は2に記載の浴用剤組成物。
【請求項4】
成分(C)が、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の浴用剤組成物。
【請求項5】
さらに油剤(E)を含有し、成分(C)と成分(E)の質量比((C)/(E))が、1以上40以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の浴用剤組成物。
【請求項6】
成分(A)、(C)及び(D)を含む造粒物(X)、並びに成分(B)を含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の浴用剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機酸と炭酸塩を配合した浴用剤は、浴水中で炭酸ガスが発生するため、かかる炭酸ガスによって血行が促進されて温まり感が増強される等の効果が得られることから、優れた浴用剤として広く知られている。例えば、特許文献1には、有機酸、水溶性バインダー及び特定量の非イオン界面活性剤を含む造粒物と、炭酸塩を含有する粒状浴用剤組成物が開示されており、炭酸ガスの泡を微細化することで、入浴後に優れた温まり感をもたらすことを課題としている。
【0003】
こうした界面活性剤を用いた浴用剤は、炭酸ガスの発生とともに界面活性剤による泡を浴水面で発生させ、快適な使用感をもたらす、いわゆる「バブルバス」というカテゴリーの商品にも適用し得る、有用な技術である。例えば、特許文献2には、起泡性界面活性剤、有機酸及び水溶性高分子を含む造粒物と、特定の炭酸塩を含有する粉末バブルバス組成物が開示されており、炭酸ガスの泡を微細化することで浴水面での泡持続性を高め、良好な使用感等を付与することを課題としている。また、特許文献3には、炭酸塩及び酸を特定量で含有しつつ、特定の界面活性剤及び油性成分を特定の量比で含有する固形状バブルバス組成物が開示されており、浴湯面での泡の感触を高めるとともに、浴後の肌にしっとり感を付与することを課題としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−131740号公報
【特許文献2】特開2012−131739号公報
【特許文献3】特開平9−12443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バブルバスタイプの浴用剤を得るべく、例えば、特許文献1に記載の技術を採用した場合、浴水面において十分に微細化された泡を発生することはできるものの、かかる技術は泡を持続させるためのものではない。また、特許文献2の組成物では、微細な泡を発生させることが可能ではあるものの、かかる泡の持続性の点では課題があることが判明した。さらに、特許文献3の組成物では、泡は豊富に起つものの、浴水面の泡は粗いという課題がある。
【0006】
したがって、本発明は、浴水面において微細な泡を発生させて、その泡の持続性を高め、肌に良好な泡の感触を与えることのできる浴用剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、種々検討したところ、有機酸及び炭酸塩を含有し、さらに特定のノニオン界面活性剤とアルコールとを特定の量比で含有することにより、浴水面において極めて微細な泡をもたらしつつ、かかる泡の持続性を顕著に高め、肌に与えるスキンケア効果を長時間にわたり作用させることのできる浴用剤組成物が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)有機酸、
(B)炭酸塩、
(C)ノニオン界面活性剤、及び
(D)炭素数6以上のアルコール
を含有し、成分(C)全体の平均HLBが11以上であり、成分(D)に対する成分(C)の質量比((C)/(D))が1以上250以下である浴用剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、浴水面において微細な泡を発生し、その泡の持続性の高い浴用剤組成物とすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「泡」とは、浴水中において成分(A)有機酸及び成分(B)炭酸塩により発生し、成分(C)のノニオン界面活性剤及び成分(D)のアルコールにより浴水面にもたらされる「泡」を意味し、単に成分(C)により浴水面で泡立てた際に生ずる泡を意味しない。
【0011】
本発明の浴用剤組成物は、成分(A)の有機酸を含有する。成分(A)を含有することにより、後述する成分(B)とともに浴水中に炭酸ガスを発生させることができ、良好な温まり感を付与することが可能となる。かかる有機酸としては、例えば、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸、マレイン酸、フタル酸、グルタル酸、シュウ酸等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、保存安定性を確保する観点から、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸が好ましく、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、クエン酸がより好ましく、フマル酸が殊更好ましい。
【0012】
成分(A)の含有量は、炭酸ガス発生量を確保して良好な温浴効果を発揮する観点から、本発明の浴用剤組成物中に、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。また、成分(A)の含有量は、本発明の浴用剤組成物中に、好ましくは10〜80質量%であり、より好ましくは20〜70質量%であり、さらに好ましくは30〜60質量%である。
【0013】
本発明の浴用剤組成物は、成分(B)の炭酸塩を含有する。かかる炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらの炭酸塩は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、より良好な発泡性を付与する観点から、炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、保存安定性の観点から炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを併用するのがより好ましい。また、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを併用する場合、微細な泡を発生させる観点から、本発明の浴用剤組成物中のこれらの質量比(炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム)は、0.2〜50とするのが好ましく、0.3〜30とするのがより好ましく、0.4〜3とするのがさらに好ましい。
【0014】
成分(B)の含有量は、成分(A)とも相まって炭酸ガス発生量を確保し、良好な温浴効果を発揮する観点から、本発明の浴用剤組成物中に、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。また、成分(B)の含有量は、本発明の浴用剤組成物中に、好ましくは10〜70質量%であり、より好ましくは15〜60質量%であり、さらに好ましくは20〜50質量%である。
【0015】
本発明の浴用剤組成物中の成分(A)と成分(B)の質量比((A)/(B))は、適度な炭酸ガス発生量を確保する観点及び温まり感を持続させる観点から、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.8以上であり、また、好ましくは8以下であり、より好ましくは4以下であり、さらに好ましくは3以下である。さらに、本発明の浴用剤組成物中の成分(A)と成分(B)の質量比((A)/(B))は、好ましくは0.3〜8であり、より好ましくは0.5〜4であり、さらに好ましくは0.8〜3である。
【0016】
本発明の浴用剤組成物は、成分(C)のノニオン界面活性剤を含有し、成分(C)全体の平均HLBが11以上である。HLBは、Griffinの式により求められる値であり、後述するように、成分(C)として1種単独のノニオン界面活性剤を用いる場合はそのもの単独のHLBの値を意味し、2種以上のノニオン界面活性剤を組み合わせて用いる場合は、Griffinの式及び各々の含有量を元に求められるこれら複数のノニオン界面活性剤全体の平均HLBの値を意味し、一部のものがHLB11未満であっても、全体の平均HLBが11以上であればよい。成分(C)を含有し、かつ後述するように成分(D)との間で特定の質量比を有することにより、浴水中において成分(A)及び成分(B)により発生した泡を微細にしつつ、浴水面におけるかかる泡の持続性を高めることができるので、泡の肌への密着性(まとわりつき)に優れ、微細な泡を良好に保持させて長時間にわたり入浴中におけるスベスベした優れた肌感触をもたらすことができる。成分(C)の、成分全体の平均HLBは11以上であって、微細な泡を実現する観点、及び泡の肌への密着性を高めて良好な肌感触をもたらす観点から、好ましくは12以上であり、より好ましくは13以上であり、さらに好ましくは14以上である。成分(C)の、成分全体の平均HLBは、入浴後における肌のかさつきを抑制して良好な肌感触を実現する観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは19.5以下であり、さらに好ましくは18以下である。また、成分(C)の、成分全体の平均HLBは、好ましくは11〜20であり、より好ましくは12〜19.5であり、さらに好ましくは13〜19.5であり、またさらに好ましくは14〜18である。
【0017】
ノニオン界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤が挙げられる。これらのうち、エチレンオキサイドが付加されたノニオン界面活性剤が好ましく、なかでも、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ノニオン界面活性剤として、少なくともポリオキシエチレンアルキルエーテルを含むのがより好ましい。
【0018】
エチレンオキサイドが付加されたノニオン界面活性剤を用いる場合、エチレンオキサイド平均付加モル数は、好ましくは4〜250であり、より好ましくは20〜160であり、さらに好ましくは20〜80であり、またさらに好ましくは20〜60である。また、ノニオン界面活性剤の脂肪酸部分及びアルキル部分の炭素数は、好ましくは8〜24であり、より好ましくは12〜24である。
【0019】
成分(C)の含有量は、微細な泡を浴水面に一定時間保持する観点、及び泡の肌への密着性を高める観点から、本発明の浴用剤組成物中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上である。成分(C)の含有量は、微細な泡を浴水面に一定時間保持する観点、及び入浴後における肌のかさつきを抑制し、潤いのある肌を実感できる観点から、本発明の浴用剤組成物中に、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは6質量%以下である。また、成分(C)の含有量は、本発明の浴用剤組成物中に、好ましくは1〜10質量%であり、より好ましくは1.5〜8質量%であり、さらに好ましくは2〜6質量%である。
【0020】
さらに、優れた泡立ちを確保してその持続性を高めつつ、各成分の組成物中における良好な溶解性又は分散性を確保する観点から、本発明の浴用剤組成物中に、成分(C)として少なくともポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.1〜8質量%含有するのが好ましく、0.2〜5質量%含有するのがより好ましい。
【0021】
本発明の浴用剤組成物においては、成分(C)以外の界面活性剤としてアニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選択される1種又は2種以上を用いても良い。成分(C)以外の界面活性剤の含有量は、泡の肌への密着性、肌上での良好な泡感触の観点から、本発明の浴用剤組成物中に5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることが殊更に好ましい。
【0022】
本発明の浴用剤組成物は、成分(D)の炭素数6以上のアルコールを含有する。成分(D)を含有することにより、効果的に泡立ちを高め、その他の成分とも相まって浴水面における泡の持続性を効果的に向上させることができる。かかる成分(D)としては、直鎖又は分岐のアルキル基又はアルケニル基を有するアルコールが挙げられる。成分(D)の炭素数は6以上であるが、浴水面における良好な泡立ちとその持続性を確保する観点から、好ましくは10以上であり、より好ましくは14以上であり、また、好ましくは22未満であり、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは18以下である。また、同様の観点から、直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を有するアルコールが好ましく、直鎖アルキル基を有するアルコールがより好ましい。
【0023】
かかるアルコールとしては、具体的には、例えば、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−オクチルドデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘキシルエチルアルコール、及びカルナービルアルコールからなる群から選択される1種又は2種以上が好ましく、ミリスチルアルコール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、及びステアリルアルコールからなる群から選択される1種又は2種以上がより好ましく、これらから選択される2種以上を併用するのがさらに好ましい。
【0024】
成分(D)の含有量は、微細な泡をもたらしつつ、浴水面における良好な泡立ちとその持続性を確保する観点から、本発明の浴用剤組成物中に、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上である。成分(D)の含有量は、浴水面における泡の持続性を高めつつ、各成分の組成物中における良好な溶解性又は分散性を確保する観点から、本発明の浴用剤組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。また、成分(D)の含有量は、本発明の浴用剤組成物中に、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜3質量%であり、さらに好ましくは0.2〜1質量%である。
【0025】
さらに、浴水面における泡の持続性を高めつつ、各成分の組成物中における良好な溶解性又は分散性を確保する観点から、本発明の浴用剤組成物中に、成分(D)として、少なくとも直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を有する炭素数14〜18のアルコールを合計で0.1〜3質量%含有するのが好ましく、0.2〜1質量%含有するのがより好ましい。
【0026】
成分(C)と成分(D)の質量比((C)/(D))は、微細な泡をもたらしつつ浴水面における良好な泡立ちを確保する観点、及び浴水面における泡の持続性を効果的に高める観点から、1以上であって、好ましくは5以上であり、より好ましくは8以上である。成分(C)と成分(D)の質量比((C)/(D))は、浴水面における泡の持続性を確保しつつ、各成分の組成物中における良好な溶解性又は分散性を高めて微細でクリーミィな泡を実現する観点から、250以下であって、好ましくは100以下であり、より好ましくは50以下であり、さらに好ましくは25以下である。また、成分(C)と成分(D)の質量比((C)/(D))は、1以上250以下であって、好ましくは5〜100であり、より好ましくは8〜50であり、さらに好ましくは8〜25である。
【0027】
本発明の浴用剤組成物は、成分(E)として油剤を含有してもよい。成分(E)を含有することにより、成分(C)とも相まって、微細な泡を実現しつつ泡の肌への密着性(まとわりつき)を高め、入浴中における肌のスベスベ感を高めるとともに、入浴後における肌のかさつきを抑制して潤いに満ちた肌感触を実感することができ、また泡の持続性をも高めることが可能となる。かかる成分(E)としては、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、アジピン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸コレステロール等の脂肪酸エステル;
トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、トリカプリル酸グリセリル等の脂肪酸トリグリセライド;
大豆油、ヌカ油、ホホバ油、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、パーシック油、ヒマシ油、ヤシ油、ミンク油、牛脂、豚脂等の天然油脂、これらの天然油脂を水素添加して得られる硬化油及びミリスチン酸グリセリド、2−エチルヘキサン酸グリセリド等のグリセリド;
流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、スクワラン、スクアレン、ジオクチルシクロヘキサン、ブリスタン等の炭化水素油;
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラノリン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸;
ハッカ油、ジャスミン油、ショウ脳油、ヒノキ油、トウヒ油、リュウ油、テレピン油、ケイ皮油、ベルガモット油、ミカン油、ショウブ油、パイン油、ラベンダー油、ベイ油、クローブ油、ヒバ油、バラ油、ユーカリ油、レモン油、タイム油、ペパーミント油、ローズ油、セージ油、メントール、シネオール、オイゲノール、シトラール、シトロネラール、ボルネオール、リナロール、ゲラーオール、カンファー、チモール、スピラントール、ピネン、リモネン、テルペン系化合物等の精油;
シリコーン油等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0028】
なかでも、成分(C)と相まって、微細な泡を実現しつつ、泡の肌への密着性を高め、入浴後における肌のかさつきを抑制しながら良好な肌感触をもたらす観点から、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル及びパルミチン酸イソステアリルから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0029】
成分(E)の含有量は、入浴後に肌がかさつかず、肌に潤いを与える観点、及び泡の肌への密着性を高めて良好な肌感触を実現する観点から、本発明の浴用剤組成物中に、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上である。成分(E)の含有量は、浴水への良好な溶解性及び分散性を確保する観点から、本発明の浴用剤組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは2.5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。また、成分(E)の含有量は、本発明の浴用剤組成物中に、好ましくは0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.2〜2.5質量%であり、さらに好ましくは0.3〜1質量%である。
【0030】
成分(C)と成分(E)の質量比((C)/(E))は、泡の肌への密着性(まとわりつき)を高め、肌でスベスベ感等の良好な泡の感触を実感することができる観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは4以上である。成分(C)と成分(E)の質量比((C)/(E))は、良好な泡立ちを確保する観点、及び泡の微細化を促進する観点から、好ましくは40以下であり、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは15以下である。また、成分(C)と成分(E)の質量比((C)/(E))は、好ましくは1〜40であり、より好ましくは2〜20であり、さらに好ましくは4〜15である。
【0031】
本発明の浴用剤組成物には、その他上記成分以外の成分として、通常浴用剤に用いられる成分を適宜含有させてもよい。かかる成分としては、例えば、水溶性高分子等の増粘剤;塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸鉄、リン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の、上記成分(B)以外の無機塩;エタノール、ステアリルアルコール、イソプロピルアルコール、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール等のアルコール;ケイ酸カルシウム、ブドウ糖等の賦形剤;生薬等の薬効成分;色素;香料等が挙げられる。なかでも、浴水面における泡の持続性をさらに高める観点から、上記成分以外の成分として水溶性高分子等の増粘剤を含有させるのが好ましい。
【0032】
水溶性高分子等の増粘剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンフェノールエーテル等のポリオキシエチレン合成高分子;カラギーナン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム等の天然高分子;カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ベンジルセルロース及びこれらのナトリウム塩等のセルロース誘導体などが挙げられる。これらのうち、セルロース誘導体の1種又は2種以上が好ましく、なかでも、ヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースがより好ましく、ヒドロキシエチルセルロースがさらに好ましい。
【0033】
本発明の浴用剤組成物は、押出造粒等の圧縮造粒方法や、プレス打錠機やブリケットマシーンを用いた圧縮成形法等の常法に従って製造することができ、その形態は粉末、顆粒、粒状、ブリケット錠、錠剤等のいずれであってもよく、また成分の一部を予め造粒あるいは成型してその余の成分と混合した後に成形した形態であってもよい。なかでも、浴水面における泡の微細化を図りつつ、泡の持続性を効果的に高める観点から、成分(A)、(C)及び(D)を含む造粒物(X)と、成分(B)を含有する浴用剤組成物とするのが好ましく、この場合、予め成分(A)、(C)及び(D)を造粒し、得られた造粒物と成分(B)及び必要に応じてその余の成分を混合して製造すればよい。このように、本願発明の浴用剤組成物は、成分(A)、(B)、(C)及び(D)、並びに必要に応じてその他の成分を全て一の剤として含有する組成物であって、一部の成分が分離された浴用剤とは異なるものであり、微細な泡を長時間にわたり発生させることのできるだけでなく、使用時における利便性も高い浴用剤を実現するものである。
【実施例】
【0034】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0035】
[実施例1〜19、比較例1〜5]
表1〜3に示す処方にしたがって、各浴用剤を得た。
なお、形態が粉末のものについては、まず成分(A)、ヒドロキシエチルセルロース及びぶどう糖を混合し、45℃まで昇温させた。これに、あらかじめ調製した成分(C)、成分(D)、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル及びPEG6000の混合物を65℃で添加し、混合した。次いで、ドームグラン(ダルトン製、φ0.8mmスクリーン、回転数40rpm)を用いて押出造粒を行い、冷却した後、カッターミル(φ3.0mm)で整粒して造粒物を得た。得られた造粒物、成分(B)、及びその他の成分を混合して粉末入浴剤を得た。
形態が錠剤のものについては、上記粉末入浴剤を打錠セルに入れ、成形圧を10MPaに設定して30秒間圧縮した。
小型錠剤については、1個あたりの重量を1gとした以外、上記錠剤と同様の方法により製造した。
得られた浴用剤を用い、以下に示す方法にしたがって各評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0036】
《浴水面における泡の微細さ》
200mLビーカーに100mLの浴水(40℃)を入れ、各浴用剤0.5gを投入した。次いで、厚さ1mmのスライドガラスの一方の端に、10×10mmのカバーガラスをスライドガラスの端から5mmはみ出すようにスライドガラスの両面に貼り付け、2枚のカバーガラスの間の空間に泡が発生した浴水を保持させた。浴水を保持させた部分を光学顕微鏡で観察し、ランダムに20個の泡を選択し、泡の粒径を測定してそれらの平均値を算出し、泡の平均粒径とした。得られた値を指標とし、下記基準にしたがって浴水面における泡の微細さを評価した。
A:平均粒径が100μm未満であった。
B:平均粒径が100μm以上500μm未満であった。
C:平均粒径が500μm以上1000μm未満であった。
【0037】
《浴水面における泡立ち》
150Lの浴水(40℃)に各浴用剤50gを投入し、完全に溶解した後の浴水面の様子を目視により観察し、下記基準にしたがって泡立ちを評価した。
A:浴水面全体を泡が厚く覆っている。
B:浴水面全体を泡が覆っている。
C:浴水面の一端で泡の切れ目が認められる。
【0038】
《浴水面における泡の持続性》
150Lの浴水(40℃)に各浴用剤50gを投入し、完全に溶解した後に20分経過した時点での浴水面の様子を目視により観察し、下記基準にしたがって泡立ちを評価した。
A:泡が浴水面全体を覆っている。
B:泡が浴水面の80%以上を覆っている。
C:泡が浴水面の60%以上80%未満覆っている。
D:泡が浴水面の60%未満覆っている。
【0039】
《泡立ち高さ(簡易系)、及び泡残り》
500mLのメスシリンダーに各浴用剤7gを投入した後、さらに40℃200mLの蒸留水を投入した。蒸留水を投入して1分経過した時点の泡の高さ(cm)を測定した。次いで、蒸留水を投入して5分経過した時点の泡の高さ(cm)を測定した。5分経過後の泡の高さが高いほど、時間が経過しても泡が残っている、すなわち泡の持続性に優れることを示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
上記表1〜3の結果より、実施例の浴用剤は、比較例の浴用剤に比し、成分(A)及び成分(B)により発生する泡を微細化しつつ長時間これを保持することができることが確認された。