【実施例】
【0087】
[実施例1]
細胞とポリペプチドを含む培養液にアルギニンを添加する事でポリペプチドの還元を防止する方法の例
CHO−K1細胞を宿主細胞とする組換え宿主細胞を培養することにより、組換え宿主細胞と、該細胞から分泌されたIgG1抗体を約2〜3g/Lの濃度で含む細胞培養液を用意した。
【0088】
この培養液に、アルギニン塩酸塩(味の素社製)の2mol/L水溶液(以下、2mol/Lアルギニン塩酸塩水溶液)を添加することにより、終濃度0.1mol/Lまたは0.5mol/Lのアルギニンを含む培養液をそれぞれ調製した。また、コントロールとして、2mol/Lアルギニン塩酸塩水溶液の代わりに水を添加した培養液も調製した。
【0089】
それぞれの培養液を2個の容器に分け入れ、片方に含まれる細胞について、ホモゲナイザーを用いてすべて破砕した。細胞を破砕した培養液と細胞を破砕していない培養液を4:6で混合した。アルギニンを0.5、0.1または0(コントロール)mol/L含む、これら混合した培養液を、6410×gで15分間遠心することにより、細胞および大きな細胞断片等を沈降させて上清を回収した。更に、それぞれStericup−GP(製品番号SCGPU02RE、ミリポア社製)を用いてろ過することにより、微小な細胞断片を除去した溶出液を得た。
【0090】
得られた溶出液に対して、無水クエン酸(製品番号26046−2001、純正化学株式会社製)の1mol/L水溶液(以下、1mol/Lクエン酸水溶液)またはトリス(トリスヒドロキシアミノメタン、製品番号40326−09、関東化学株式会社製)の3mol/L水溶液(以下、3mol/Lトリス水溶液)をそれぞれ添加する事により、pHを7.0へ調整した。
【0091】
各溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。各溶出液から、pHを7.0へ調整した12、24、36、48時間後に、それぞれ0.04mLずつサンプリングした。
【0092】
得られた被検体は、実際の精製工程において、アルギニンを培養液に添加した後、該培養液から組換え宿主細胞または該細胞断片を除去し、クロマトグラフィー工程に供するまで室温で放置した状態を模倣するものである。
【0093】
サンプリングした各被検体をSDS−PAGEで解析した。その結果、コントロールの被検体では、すべてのサンプルにおいて、抗体の著しい還元が認められた。一方、終濃度0.1mol/Lのアルギニンを含む被検体では、窒素ガス封入開始後24時間後以降のサンプルにおいて、抗体の還元が認められたが、その程度は、コントロールと比較すると軽微であった。
【0094】
また、終濃度0.5mol/Lのアルギニンを含む被検体では、窒素ガス封入開始後48時間後のサンプルでも、抗体の還元は認められなかった。これらの結果は、アルギニンを培養液に添加する事により、組換え宿主細胞から培養液中に分泌されたポリペプチドの還元を防止できることを示している。
【0095】
[実施例2]
培養上清にアルギニンを添加する事でポリペプチドの還元を防止する方法の例
CHO−K1細胞を宿主細胞とする組換え宿主細胞を培養することにより、組換え宿主細胞と、該細胞から分泌されたIgG1抗体を約2〜3g/Lの濃度で含む細胞培養液を用意した。
【0096】
この培養液を2個の容器に分け入れ、片方に含まれる細胞について、ホモゲナイザーを用いてすべて破砕した。細胞を破砕した培養液と細胞を破砕していない培養液を4:6で混合した。
【0097】
この混合した培養液を6410×gで15分間遠心することにより、細胞および大きな細胞断片等を沈降させて上清を回収した。更に、それぞれStericup−GP(製品番号SCGPU02RE、ミリポア社製)を用いてろ過することにより、微小な細胞断片を除去した溶出液を得た。
【0098】
得られた溶出液に、2mol/Lアルギニン塩酸塩水溶液を添加することにより、終濃度0.1mol/Lまたは0.5mol/Lのアルギニンを含む培養液をそれぞれ調製した。また、コントロールとして、2mol/Lアルギニン塩酸塩水溶液の代わりに水を添加した培養液も調製した。
【0099】
アルギニンを添加した溶出液とコントロールに対して、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液をそれぞれ添加する事により、pHを7.0へ調整した。各溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。
【0100】
各溶出液から、pHを7.0へ調整した12、24、36、48時間後に、それぞれ0.04mLずつサンプリングした。得られた被検体は、実際の精製工程において、培養液から組換え宿主細胞または該細胞断片を除去した後、アルギニンを添加し、クロマトグラフィー工程に供するまで室温で放置した状態を模倣するものである。
【0101】
サンプリングした各被検体をSDS−PAGEで解析した。その結果、コントロールの被検体では、すべてのサンプルにおいて、抗体の著しい還元が認められた。一方、終濃度0.1mol/Lのアルギニンを含む被検体では、窒素ガス封入開始後24時間後以降のサンプルにおいて、抗体の還元が認められたが、その程度は、コントロールと比較すると軽微であった。
【0102】
また、終濃度0.5mol/Lのアルギニンを含む被検体では、窒素ガス封入開始後48時間後のサンプルでも、抗体の還元は認められなかった。これらの結果は、培養上清にアルギニンを添加する事により、組換え宿主細胞から培養液中に分泌されたポリペプチドの還元を防止できることを示している。
【0103】
[実施例3]
酸沈殿を実施した組換え宿主細胞とポリペプチドを含む培養液にアルギニンを添加する事でポリペプチドの還元を防止する方法の例
CHO−K1細胞を宿主細胞とする組換え宿主細胞を培養することにより、組換え宿主細胞と、該細胞から分泌されたIgG1抗体を約2〜3g/Lの濃度で含む細胞培養液を用意した。この培養液に、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを5.1へ調整し、酸沈殿を行った。
【0104】
酸沈殿を行った培養液に、2mol/Lアルギニン塩酸塩水溶液を添加することにより、終濃度0.1mol/Lのアルギニンを含む培養液を調製した。また、コントロールとして、2mol/Lアルギニン塩酸塩水溶液の代わりに水を添加した培養液も調製した。
【0105】
それぞれの培養液を2個の容器に分け入れ、片方に含まれる細胞について、ホモゲナイザーを用いてすべて破砕した。細胞を破砕した培養液と細胞を破砕していない培養液を4:6で混合した。
【0106】
アルギニンを0.1または0(コントロール)mol/L含む、これら混合した培養液を、6410×gで15分間遠心することにより、細胞および大きな細胞断片等を沈降させて上清を回収した。更に、それぞれStericup−GP(製品番号SCGPU02RE、ミリポア社製)を用いてろ過することにより、微小な細胞断片を除去した溶出液を得た。
【0107】
得られた溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。窒素ガスの封入はpHを5.1へ調整した時点から6時間後まで継続した。窒素ガスの封入を終えた溶出液に対して、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液をそれぞれ添加する事により、pHを6.0へ調整した。
【0108】
各溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。各溶出液から、pHを6.0へ調整した18、30、42時間後に、それぞれ0.04mLずつサンプリングした。
【0109】
得られた被検体は、実際の精製工程において、酸沈殿を行った後、アルギニンを添加し、さらに培養液から組換え宿主細胞または該細胞断片を除去し、pHを6.0へ調整してからクロマトグラフィー工程に供するまで室温で放置した状態を模倣するものである。
【0110】
サンプリングした各被検体をSDS−PAGEで解析した。その結果、コントロールの被検体では、pHを6.0へ調整した18時間後以降のサンプルにおいて、抗体の還元が認められた。一方、終濃度0.1mol/Lのアルギニンを含む被検体では、すべてのサンプルにおいて、抗体の還元は認められなかった。
【0111】
これらの結果は、酸沈殿実施後、培養液から組換え宿主細胞を除去する工程の前にアルギニンを該培養液に添加する事により、該細胞から該培養液中に分泌されたポリペプチドの還元を防止できることを示している。
【0112】
[実施例4]
酸沈殿を実施した培養上清にアルギニンを添加する事でポリペプチドの還元を防止する方法の例
CHO−K1細胞を宿主細胞とする組換え宿主細胞を培養することにより、組換え宿主細胞と、該細胞から分泌されたIgG1抗体を約2〜3g/Lの濃度で含む細胞培養液を用意した。この培養液に、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを5.1へ調整し、酸沈殿を行った。
【0113】
酸沈殿を行った培養液を2個の容器に分け入れ、片方に含まれる細胞について、ホモゲナイザーを用いてすべて破砕した。細胞を破砕した培養液と細胞を破砕していない培養液を4:6で混合した。
【0114】
この混合した培養液を6410×gで15分間遠心することにより、細胞および大きな細胞断片等を沈降させて培養上清を回収した。更に、Stericup−GP(製品番号SCGPU02RE、ミリポア社製)を用いてろ過することにより、微小な細胞断片を除去した溶出液を得た。
【0115】
得られた溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。窒素ガスの封入はpHを5.1へ調整した時点から6時間後まで継続した。
【0116】
窒素ガスの封入を終えた溶出液に2mol/Lアルギニン塩酸塩水溶液を添加する事により、終濃度0.1mol/Lのアルギニンを含む溶出液を調製した。更に、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを6.0へ調整した。
【0117】
また、コントロールとして、2mol/Lアルギニン塩酸塩水溶液の代わりに水を添加した溶出液も調製した。このコントロールも、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを6.0へ調整した。各溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。
【0118】
各溶出液から、pHを6.0へ調整した18、30、42時間後に、それぞれ0.04mLずつサンプリングした。得られた被検体は、実際の精製工程において、酸沈殿を行った後、培養液から組換え宿主細胞または該細胞断片を除去し、さらにアルギニンを添加し、pHを6.0へ調整してからクロマトグラフィー工程に供するまで室温で放置した状態を模倣するものである。
【0119】
サンプリングした各被検体をSDS−PAGEで解析した。その結果、コントロールの被検体では、pHを6.0へ調整した18時間後以降のサンプルにおいて、抗体の還元が認められた。一方、終濃度0.1mol/Lのアルギニンを含む被検体では、すべてのサンプルにおいて、抗体の還元は認められなかった。
【0120】
これらの結果は、酸沈殿を行い、培養液から組換え宿主細胞を除去する工程の開始後にアルギニンを培養液に添加する事により、該細胞から該培養液中に分泌されたポリペプチドの還元を防止できることを示している。
【0121】
[実施例5]
細胞分離工程での膜ろ過性に対するアルギニンの添加順序の影響
CHO−K1細胞を宿主細胞とする組換え宿主細胞を培養することにより、組換え宿主細胞と、該細胞から分泌されたIgG1抗体を約2〜3g/Lの濃度で含む細胞培養液を用意した。
【0122】
この細胞培養液を培養液Aとした。培養液Aに2mol/Lアルギニン塩酸塩水溶液を添加することにより、終濃度0.1mol/Lのアルギニンを含む培養液を調製し、培養液Bとした。培養液Bに更に1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを5.1へ調整し、培養液Cとした。
【0123】
培養液Aに1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを5.1へ調整し、培養液Dとした。培養液Dに更に2mol/Lアルギニン塩酸塩水溶液を添加することにより、終濃度0.1mol/Lのアルギニンを含む培養液を調製し、培養液Eとした。調製した各培養液を2090×gで10分間遠心することにより、細胞および大きな細胞断片等を沈降させて培養上清を回収した。
【0124】
次に、各培養上清をMillex−GP(製品番号SLGP033RS、ミリポア社製)を用いてろ過することにより、各培養上清の膜ろ過性を評価した。なお、この膜ろ過性とは細胞分離工程での膜ろ過性を模倣するものである。その結果、培養液A、B、C、D、E由来の培養上清は、それぞれ約8.8mL、8.3mL、16.8mL、33.7mL、33.1mLろ過した時点で膜閉塞した。
【0125】
培養液AおよびBの結果から、細胞分離工程での膜ろ過性は、培養液へのアルギニンの添加により低下しないことが明らかとなった。また、培養液DおよびEの結果から、細胞分離工程での膜ろ過性は、酸沈殿実施後の培養液へのアルギニンの添加により低下しないことが明らかとなった。
【0126】
さらに、培養液B、CおよびEの結果から、細胞分離工程での膜ろ過性は、酸沈殿実施前の培養液へのアルギニンの添加でも、酸沈殿実施後の培養液へのアルギニンの添加でも、酸沈殿非実施時に比べ向上することが明らかとなった。ただし、アルギニンを培養液に添加するのは、酸沈殿実施前でもよいが、酸沈殿実施後がより好ましいことが明らかとなった。
【0127】
[実施例6]
組換え宿主細胞とポリペプチドを含む培養液にリジンを添加する事でポリペプチドの還元を防止する方法の例
CHO−K1細胞を宿主細胞とする組換え宿主細胞を培養することにより、組換え宿主細胞と、該細胞から分泌されたIgG1抗体を約2〜3g/Lの濃度で含む細胞培養液を用意した。この培養液に、リジン塩酸塩(製品番号123−01461、和光純薬工業社製)の2mol/L水溶液(以下、2mol/Lリジン塩酸塩水溶液)を添加することにより、終濃度0.1mol/Lまたは0.5mol/Lのリジンを含む培養液をそれぞれ調製した。
【0128】
それぞれの培養液を2個の容器に分け入れ、片方に含まれる細胞について、ホモゲナイザーを用いてすべて破砕した。細胞を破砕した培養液と細胞を破砕していない培養液を4:6で混合した。
【0129】
リジンを0.1または0.5mol/L含む、これら混合した培養液を、6410×gで15分間遠心することにより、細胞および大きな細胞断片等を沈降させて上清を回収した。更に、それぞれStericup−GP(製品番号SCGPU02RE、ミリポア社製)を用いてろ過することにより、微小な細胞断片を除去した溶出液を得た。
【0130】
得られた溶出液に対して、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液をそれぞれ添加する事により、pHを7.0へ調整した。各溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。
【0131】
各溶出液から、pHを7.0へ調整した12、24、36、48時間後に、それぞれ0.04mLずつサンプリングした。得られた被検体は、実際の精製工程において、リジンを添加した後、培養液から組換え宿主細胞または該細胞断片を除去し、クロマトグラフィー工程に供するまで室温で放置した状態を模倣するものである。
【0132】
サンプリングした各被検体をSDS−PAGEで解析した。その結果、終濃度0.1mol/Lのリジンを含む被検体では、窒素ガス封入開始後24時間後以降のサンプルにおいて、抗体の還元が認められた。
【0133】
一方、実施例1のコントロールでは窒素ガス封入開始後12時間後以降のサンプルにおいて抗体の還元が認められた。また、終濃度0.5mol/Lのリジンを含む被検体では、窒素ガス封入開始後48時間後のサンプルでも、抗体の還元は認められなかった。
【0134】
これらの結果は、リジンを培養液に添加する事により、組換え宿主細胞から該培養液中に分泌されたポリペプチドの還元を防止できることを示している。
【0135】
[実施例7]
組換え宿主細胞とポリペプチドを含む培養液にヒスチジンを添加する事でポリペプチドの還元を防止する方法の例
CHO−K1細胞を宿主細胞とする組換え宿主細胞を培養することにより、組換え宿主細胞と、該細胞から分泌されたIgG1抗体を約2〜3g/Lの濃度で含む細胞培養液を用意した。
【0136】
この培養液に、ヒスチジン塩酸塩一水和物(製品番号088−00705、和光純薬工業社製)の0.75mol/L水溶液(以下、0.75mol/Lヒスチジン塩酸塩水溶液)を添加することにより、終濃度0.1mol/Lのヒスチジンを含む培養液を調製した。
【0137】
この培養液を2個の容器に分け入れ、片方に含まれる細胞について、ホモゲナイザーを用いてすべて破砕した。細胞を破砕した培養液と細胞を破砕していない培養液を4:6で混合した。ヒスチジンを0.1mol/L含むこの混合した培養液を、6410×gで15分間遠心することにより、細胞および大きな細胞断片等を沈降させて上清を回収した。更に、それぞれStericup−GP(製品番号SCGPU02RE、ミリポア社製)を用いてろ過することにより、微小な細胞断片を除去した溶出液を得た。
【0138】
得られた溶出液に対して、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液をそれぞれ添加する事により、pHを7.0へ調整した。溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。
【0139】
溶出液から、pHを7.0へ調整した12、24、36、48時間後に、それぞれ0.04mLずつサンプリングした。得られた被検体は、実際の精製工程において、ヒスチジンを添加した後、培養液から組換え宿主細胞または該細胞断片を除去し、クロマトグラフィー工程に供するまで室温で放置した状態を模倣するものである。
【0140】
サンプリングした各被検体をSDS−PAGEで解析した。その結果、終濃度0.1mol/Lのヒスチジンを含む被検体では、窒素ガス封入開始後24時間後以降のサンプルにおいて、抗体の還元が認められた。
【0141】
一方、実施例1のコントロールでは、窒素ガス封入開始後12時間後以降のサンプルにおいて抗体の還元が認められた。この結果はヒスチジンを培養液に添加する事により、組換え宿主細胞から該培養液中に分泌されたポリペプチドの還元を防止できることを示している。
【0142】
[実施例8]
培養上清にリジンを添加する事でポリペプチドの還元を防止する方法の例
CHO−K1細胞を宿主細胞とする組換え宿主細胞を培養することにより、組換え宿主細胞と、該細胞から分泌されたIgG1抗体を約2〜3g/Lの濃度で含む細胞培養液を用意した。
【0143】
この培養液を2個の容器に分け入れ、片方に含まれる細胞について、ホモゲナイザーを用いてすべて破砕した。細胞を破砕した培養液と細胞を破砕していない培養液を4:6で混合した。この混合した培養液を6410×gで15分間遠心することにより、細胞および大きな細胞断片等を沈降させて上清を回収した。更に、それぞれStericup−GP(製品番号SCGPU02RE、ミリポア社製)を用いてろ過することにより、微小な細胞断片を除去した溶出液を得た。
【0144】
得られた溶出液に、2mol/Lリジン塩酸塩水溶液を添加することにより、終濃度0.1mol/Lまたは0.5mol/Lのリジンを含む培養液をそれぞれ調製した。
リジンを添加した溶出液に対して、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液をそれぞれ添加する事により、pHを7.0へ調整した。各溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。
【0145】
各溶出液から、pHを7.0へ調整した12、24、36、48時間後に、それぞれ0.04mLずつサンプリングした。得られた被検体は、実際の精製工程において、培養液から組換え宿主細胞または該細胞断片を除去した後、リジンを添加し、クロマトグラフィー工程に供するまで室温で放置した状態を模倣するものである。
【0146】
サンプリングした各被検体をSDS−PAGEで解析した。その結果、終濃度0.1mol/Lのリジンを含む被検体では、窒素ガス封入開始後24時間後以降のサンプルにおいて、抗体の還元が認められた。
【0147】
一方、実施例2のコントロールでは窒素ガス封入開始後12時間後以降のサンプルにおいて抗体の還元が認められた。また、終濃度0.5mol/Lのリジンを含む被検体では、窒素ガス封入開始後48時間後のサンプルでも、抗体の還元は認められなかった。これらの結果は、培養上清にリジンを添加する事により、組換え宿主細胞から培養液中に分泌されたポリペプチドの還元を防止できることを示している。
【0148】
[実施例9]
培養上清にヒスチジンを添加する事でポリペプチドの還元を防止する方法の例
CHO−K1細胞を宿主細胞とする組換え宿主細胞を培養することにより、組換え宿主細胞と、該細胞から分泌されたIgG1抗体を約2〜3g/Lの濃度で含む細胞培養液を用意した。
【0149】
この培養液を2個の容器に分け入れ、片方に含まれる細胞について、ホモゲナイザーを用いてすべて破砕した。細胞を破砕した培養液と細胞を破砕していない培養液を4:6で混合した。
【0150】
この混合した培養液を6410×gで15分間遠心することにより、細胞および大きな細胞断片等を沈降させて上清を回収した。更に、それぞれStericup−GP(製品番号SCGPU02RE、ミリポア社製)を用いてろ過することにより、微小な細胞断片を除去した溶出液を得た。
【0151】
得られた溶出液に、0.75mol/Lヒスチジン塩酸塩水溶液を添加することにより、終濃度0.1mol/Lのヒスチジンを含む培養液を調製した。ヒスチジンを添加した溶出液に対して、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液をそれぞれ添加する事により、pHを7.0へ調整した。
【0152】
溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。溶出液から、pHを7.0へ調整した12、24、36、48時間後に、それぞれ0.04mLずつサンプリングした。
【0153】
得られた被検体は、実際の精製工程において、培養液から組換え宿主細胞または該細胞断片を除去した後、ヒスチジンを添加し、クロマトグラフィー工程に供するまで室温で放置した状態を模倣するものである。
【0154】
サンプリングした各被検体をSDS−PAGEで解析した。その結果、終濃度0.1mol/Lのヒスチジンを含む被検体では、窒素ガス封入開始後24時間後以降のサンプルにおいて、抗体の還元が認められた。
【0155】
一方、実施例2のコントロールでは窒素ガス封入開始後12時間後以降のサンプルにおいて抗体の還元が認められた。この結果は培養上清にヒスチジンを添加する事により、組換え宿主細胞から培養液中に分泌されたポリペプチドの還元を防止できることを示している。
【0156】
[実施例10]
酸沈殿を実施した組換え宿主細胞とポリペプチドを含む培養液にリジンを添加する事でポリペプチドの還元を防止する方法の例
CHO−K1細胞を宿主細胞とする組換え宿主細胞を培養することにより、組換え宿主細胞と、該細胞から分泌されたIgG1抗体を約2〜3g/Lの濃度で含む細胞培養液を用意した。この培養液に、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを5.1へ調整し、酸沈殿を行った。
【0157】
酸沈殿を行った培養液に、2mol/Lリジン塩酸塩水溶液を添加することにより、終濃度0.1mol/Lのリジンを含む培養液を調製した。
【0158】
この培養液を2個の容器に分け入れ、片方に含まれる細胞について、ホモゲナイザーを用いてすべて破砕した。細胞を破砕した培養液と細胞を破砕していない培養液を4:6で混合した。
【0159】
リジンを0.1mol/L含む混合した培養液を、6410×gで15分間遠心することにより、細胞および大きな細胞断片等を沈降させて上清を回収した。更に、それぞれStericup−GP(製品番号SCGPU02RE、ミリポア社製)を用いてろ過することにより、微小な細胞断片を除去した溶出液を得た。
【0160】
得られた溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。窒素ガスの封入はpHを5.1へ調整した時点から6時間後まで継続した。
【0161】
窒素ガスの封入を終えた溶出液に対して、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液をそれぞれ添加する事により、pHを6.0へ調整した。溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。溶出液から、pHを6.0へ調整した18、30、42時間後に、それぞれ0.04mLずつサンプリングした。
【0162】
得られた被検体は、実際の精製工程において、酸沈殿を行った後、リジンを添加し、さらに培養液から組換え宿主細胞または該細胞断片を除去し、pHを6.0へ調整してからクロマトグラフィー工程に供するまで室温で放置した状態を模倣するものである。
【0163】
サンプリングした各被検体をSDS−PAGEで解析した。その結果、終濃度0.1mol/Lのリジンを含む被検体では、pHを6.0へ調整した30時間後以降のサンプルにおいて抗体の還元が認められた。
【0164】
一方、実施例3のコントロールの被検体では、pHを6.0へ調整した18時間後以降のサンプルにおいて抗体の還元が認められた。この結果は、酸沈殿実施後、培養液から組換え宿主細胞を除去する工程の前にリジンを培養液に添加する事により、組換え宿主細胞から該培養液中に分泌されたポリペプチドの還元を防止できることを示している。
【0165】
[実施例11]
酸沈殿を実施した組換え宿主細胞とポリペプチドを含む培養液にヒスチジンを添加する事でポリペプチドの還元を防止する方法の例
CHO−K1細胞を宿主細胞とする組換え宿主細胞を培養することにより、組換え宿主細胞と、該細胞から分泌されたIgG1抗体を約2〜3g/Lの濃度で含む細胞培養液を用意した。この培養液に、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを5.1へ調整し、酸沈殿を行った。
【0166】
酸沈殿を行った培養液に、0.75mol/Lヒスチジン塩酸塩水溶液を添加することにより、終濃度0.1mol/Lのヒスチジンを含む培養液を調製した。
【0167】
この培養液を2個の容器に分け入れ、片方に含まれる細胞について、ホモゲナイザーを用いてすべて破砕した。細胞を破砕した培養液と細胞を破砕していない培養液を4:6で混合した。
【0168】
ヒスチジンを0.1mol/L含む混合した培養液を、6410×gで15分間遠心することにより、細胞および大きな細胞断片等を沈降させて上清を回収した。更に、それぞれStericup−GP(製品番号SCGPU02RE、ミリポア社製)を用いてろ過することにより、微小な細胞断片を除去した溶出液を得た。
【0169】
得られた溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。窒素ガスの封入はpHを5.1へ調整した時点から6時間後まで継続した。
【0170】
窒素ガスの封入を終えた溶出液に対して、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液をそれぞれ添加する事により、pHを6.0へ調整した。溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。
【0171】
溶出液から、pHを6.0へ調整した18、30、42時間後に、それぞれ0.04mLずつサンプリングした。得られた被検体は、実際の精製工程において、酸沈殿を行った後、ヒスチジンを添加し、さらに培養液から組換え宿主細胞または該細胞断片を除去し、pHを6.0へ調整してからクロマトグラフィー工程に供するまで室温で放置した状態を模倣するものである。
【0172】
サンプリングした各被検体をSDS−PAGEで解析した。その結果、終濃度0.1mol/Lのヒスチジンを含む被検体では、すべてのサンプルにおいて抗体の還元が認められなかった。一方、実施例3のコントロールの被検体では、pHを6.0へ調整した18時間後以降のサンプルにおいて抗体の還元が認められた。
【0173】
この結果は、酸沈殿実施後、培養液から細胞を除去する工程の前にヒスチジンを培養液に添加する事により、組換え宿主細胞から該培養液中に分泌されたポリペプチドの還元を防止できることを示している。
【0174】
[実施例12]
酸沈殿を実施した培養上清にリジンを添加する事でポリペプチドの還元を防止する方法の例
CHO−K1細胞を宿主細胞とする組換え宿主細胞を培養することにより、組換え宿主細胞と、該細胞から分泌されたIgG1抗体を約2〜3g/Lの濃度で含む細胞培養液を用意した。この培養液に、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを5.1へ調整し、酸沈殿を行った。
【0175】
酸沈殿を行った培養液を2個の容器に分け入れ、片方に含まれる細胞について、ホモゲナイザーを用いてすべて破砕した。細胞を破砕した培養液と細胞を破砕していない培養液を4:6で混合した。
【0176】
この混合した培養液を6410×gで15分間遠心することにより、細胞および大きな細胞断片等を沈降させて培養上清を回収した。更に、Stericup−GP(製品番号SCGPU02RE、ミリポア社製)を用いてろ過することにより、微小な細胞断片を除去した溶出液を得た。
【0177】
得られた溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。窒素ガスの封入はpHを5.1へ調整した時点から6時間後まで継続した。
【0178】
窒素ガスの封入を終えた溶出液に2mol/Lリジン塩酸塩水溶液を添加する事により、終濃度0.1mol/Lのリジンを含む溶出液を調製した。更に、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを6.0へ調整した。
【0179】
溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。溶出液から、pHを6.0へ調整した18、30、42時間後に、それぞれ0.04mLずつサンプリングした。
【0180】
得られた被検体は、実際の精製工程において、酸沈殿を行った後、培養液から組換え宿主細胞または該細胞断片を除去し、さらにリジンを添加し、pHを6.0へ調整してからクロマトグラフィー工程に供するまで室温で放置した状態を模倣するものである。
【0181】
サンプリングした各被検体をSDS−PAGEで解析した。その結果、終濃度0.1mol/Lのリジンを含む被検体では、pHを6.0へ調整した30時間後以降のサンプルにおいて抗体の還元が認められた。
【0182】
一方、実施例4のコントロールの被検体では、pHを6.0へ調整した18時間後以降のサンプルにおいて抗体の還元が認められた。この結果は酸沈殿を行い、培養液から組換え宿主細胞を除去する工程の開始後にリジンを培養液に添加する事により、該細胞から該培養液中に分泌されたポリペプチドの還元を防止できることを示している。
【0183】
[実施例13]
酸沈殿を実施した培養上清にヒスチジンを添加する事でポリペプチドの還元を防止する方法の例
CHO−K1細胞を宿主細胞とする組換え宿主細胞を培養することにより、組換え宿主細胞と、該細胞から分泌されたIgG1抗体を約2〜3g/Lの濃度で含む細胞培養液を用意した。この培養液に、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを5.1へ調整し、酸沈殿を行った。
【0184】
酸沈殿を行った培養液を2個の容器に分け入れ、片方に含まれる細胞について、ホモゲナイザーを用いてすべて破砕した。細胞を破砕した培養液と細胞を破砕していない培養液を4:6で混合した。
【0185】
この混合した培養液を6410×gで15分間遠心することにより、細胞および大きな細胞断片等を沈降させて培養上清を回収した。更に、Stericup−GP(製品番号SCGPU02RE、ミリポア社製)を用いてろ過することにより、微小な細胞断片を除去した溶出液を得た。
【0186】
得られた溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。窒素ガスの封入はpHを5.1へ調整した時点から6時間後まで継続した。
【0187】
窒素ガスの封入を終えた溶出液に0.75mol/Lヒスチジン塩酸塩水溶液を添加する事により、終濃度0.1mol/Lのヒスチジンを含む溶出液を調製した。更に、1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを6.0へ調整した。
【0188】
溶出液を通気可能なビンに入れ、室温で液上面に継続的に窒素ガスを封入しながらスターラーで攪拌する事により、溶出液中の溶存酸素を減少させた。溶出液から、pHを6.0へ調整した18、30、42時間後に、それぞれ0.04mLずつサンプリングした。
【0189】
得られた被検体は、実際の精製工程において、酸沈殿を行った後、培養液から組換え宿主細胞または該細胞断片を除去し、さらにヒスチジンを添加し、pHを6.0へ調整してからクロマトグラフィー工程に供するまで室温で放置した状態を模倣するものである。
【0190】
サンプリングした各被検体をSDS−PAGEで解析した。その結果、終濃度0.1mol/Lのヒスチジンを含む被検体では、すべてのサンプルにおいて抗体の還元が認められなかった。
【0191】
一方、実施例4のコントロールの被検体では、pHを6.0へ調整した18時間後以降のサンプルにおいて抗体の還元が認められた。この結果は酸沈殿を行い、培養液から組換え宿主細胞を除去する工程の開始後にヒスチジンを培養液に添加する事により、該細胞から該培養液中に分泌されたポリペプチドの還元を防止できることを示している。
【0192】
[実施例14]
細胞分離工程での膜ろ過性に対するアルギニン、リジンまたはヒスチジンの添加順序の影響
CHO−K1細胞を宿主細胞とする組換え宿主細胞を培養することにより、組換え宿主細胞と、該細胞から分泌されたIgG1抗体を約2〜3g/Lの濃度で含む細胞培養液を用意した。
【0193】
この培養液を培養液Aとした。培養液Aに2mol/Lアルギニン塩酸塩水溶液を添加することにより、終濃度0.1mol/Lのアルギニンを含む培養液を調製し、培養液Bとした。培養液Aに2mol/Lリジン塩酸塩水溶液を添加することにより、終濃度0.1mol/Lのリジンを含む培養液を調製し、培養液Cとした。
【0194】
培養液Aに0.75mol/Lヒスチジン塩酸塩水溶液を添加することにより、終濃度0.1mol/Lのヒスチジンを含む培養液を調製し、培養液Dとした。培養液Bに更に1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを5.1へ調整し、培養液Eとした。
【0195】
培養液Cに更に1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを5.1へ調整し、培養液Fとした。培養液Dに更に1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを5.1へ調整し、培養液Gとした。
【0196】
培養液Aに1mol/Lクエン酸水溶液または3mol/Lトリス水溶液を添加する事により、pHを5.1へ調整し、培養液Hとした。培養液Hに更に2mol/Lアルギニン塩酸塩水溶液を添加することにより、終濃度0.1mol/Lのアルギニンを含む培養液を調製し、培養液Iとした。
【0197】
培養液Hに更に2mol/Lリジン塩酸塩水溶液を添加することにより、終濃度0.1mol/Lのリジンを含む培養液を調製し、培養液Jとした。培養液Hに更に0.75mol/Lヒスチジン塩酸塩水溶液を添加することにより、終濃度0.1mol/Lのヒスチジンを含む培養液を調製し、培養液Kとした。
【0198】
調製した各培養液を2090×gで10分間遠心することにより、細胞および大きな細胞断片等を沈降させて培養上清を回収した。次に、各培養上清をMillex−GP(製品番号SLGP033RS、ミリポア社製)を用いてろ過することにより、各培養上清の膜ろ過性を評価した。なお、この膜ろ過性とは細胞分離工程での膜ろ過性を模倣するものである。
【0199】
その結果、培養液A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K由来の培養上清は、それぞれ約16.2mL、17.5mL、18.1mL、18.4mL、24.9mL、23.0mL、22.2mL、26.8mL、27.3mL、26.8mL、28.2mLろ過した時点で膜閉塞した。
【0200】
培養液A、B、CおよびDの結果から、細胞分離工程での膜ろ過性は、培養液へのアルギニン、リジン、またはヒスチジン添加により低下しないことが明らかとなった。また、培養液H、I、J、およびKの結果から、細胞分離工程での膜ろ過性は、酸沈殿実施後の培養液へのアルギニン、リジン、またはヒスチジン添加により低下しないことが明らかとなった。
【0201】
さらに、培養液B、C、Dと培養液E、F、G、そして培養液I、J、Kの結果から、細胞分離工程での膜ろ過性は、酸沈殿実施前の培養液へのアルギニン、リジン、またはヒスチジン添加でも、酸沈殿実施後の培養液へのアルギニン、リジン、またはヒスチジン添加でも、酸沈殿非実施時に比べ向上することが明らかとなった。ただし、アルギニン、リジン、またはヒスチジンを培養液に添加するのは、酸沈殿実施前でもよいが、酸沈殿実施後がより好ましいことが明らかとなった。
【0202】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2012年10月3日付けで出願された米国仮出願(61/709,311号)に基づいており、その全体が引用により援用される。