(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411904
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】シールドへの防曇シート取り付け構造
(51)【国際特許分類】
A42B 3/24 20060101AFI20181015BHJP
【FI】
A42B3/24
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-12035(P2015-12035)
(22)【出願日】2015年1月26日
(65)【公開番号】特開2016-138340(P2016-138340A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005429
【氏名又は名称】株式会社SHOEI
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】石川 道彦
【審査官】
姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−252258(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0072563(US,A1)
【文献】
特開2013−091882(JP,A)
【文献】
実開昭48−111850(JP,U)
【文献】
実開昭63−064732(JP,U)
【文献】
特開2014−224341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/24
A42B 3/00
H05K 7/16
A44B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド(3)の内面を覆う防曇シート(4)の周縁部に形成される複数の座部(6)と、前記座部(6)との対応位置で前記シールド(3)に設けられる複数の支持孔(7)と、前記支持孔(7)に支持されながら前記座部(6)に着座することで防曇シート(4)を保持する複数の保持部材(8)とよりなり、
前記保持部材(8)を、前記シールド(3)の外面に当接する頭部(9a)を一端に有して前記支持孔(7)に回転自在に嵌合する主軸(9)と、前記主軸(9)の他端に偏心して一体に連設されて前記座部(6)に着座し得る、前記主軸(9)より小径の偏心軸(10)と、前記偏心軸(10)の外端に一体に連設され、前記主軸(9)と協働して前記偏心軸(10)周りに環状溝(12)を画成する、前記支持孔(7)を通過可能な膨大端部(11)とよりなる合成樹脂製の単一部品に構成し、
前記主軸(9)に、一端が前記頭部(9a)に開口して他端が前記偏心軸(10)へ向かって開口する凹部(13)を形成するとともに、一端が前記頭部(9a)にヒンジ部(14)を介して接続された係止部材(15)に係止爪(15c)を突設し、前記係止部材(15)が前記ヒンジ部(14)周りに回動して前記凹部(13)に嵌合したとき、前記係止爪(15c)は前記シールド(3)の内面に当接し得るように前記主軸(9)の外周面から径方向外側に突出することを特徴とするシールドへの防曇シート取り付け構造。
【請求項2】
前記保持部材(8)が前記支持孔(7)に支持された状態で、前記頭部(9a)は前記シールド(3)の外面に密着して前記保持部材(8)が前記支持孔(7)の内部に落下するのを阻止するとともに、前記頭部(9a)は前記シールド(3)の内面に密着する前記係止爪(15c)と協働して該シールド(3)を保持することを特徴とする、請求項1に記載のシールドへの防曇シート取り付け構造。
【請求項3】
前記主軸(9)の外周面において、前記凹部(13)と反対側の位置に径方向外側に突出する補助係止爪(9e)を突設し、前記補助係止爪(9e)の突出量を前記係止爪(15c)の突出量よりも小さくしたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のシールドへの防曇シート取り付け構造。
【請求項4】
前記主軸(9)の軸方向中間部の外周に周方向溝(9b)を介して小径部(9c)を形成したことを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のシールドへの防曇シート取り付け構造。
【請求項5】
前記頭部(9a)に、前記偏心軸(10)の前記主軸(9)に対する偏心位置を示す目印(16)を付す一方、前記膨大端部(11)に工具係合部(11a)を形成したことを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のシールドへの防曇シート取り付け構造。
【請求項6】
前記防曇シート(4)の外面に、その周縁に沿い無端状に延びて前記シールド(3)の内面に密接するシール部材(5)を付設して、前記シールド(3)および前記防曇シート(4)間に前記シール部材(5)に囲まれる密閉空隙(17)を画成したことを特徴とする、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のシールドへの防曇シート取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメット等に装着されるシールドの内面に防曇シートを取り付ける構造に関し、特に、シールドの内面を覆う防曇シートの周縁部に形成される複数の座部と、これら座部との対応位置でシールドに設けられる複数の支持孔と、これら支持孔に支持されながら前記座部に着座することで防曇シートを保持する複数の保持部材とよりなる、シールドへの防曇シート取り付け構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなシールドへの防曇シート取り付け構造は、本出願人の出願に係る下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−252258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたものは、シールドに防曇シートを保持する保持部材が、シールドの支持孔に嵌合する主軸と、この主軸に偏心して一体に連設された偏心軸とを備えており、支持孔に嵌合する主軸を180°回転させて偏心軸を防曇シートの座部に着差させることで、防曇シートをシールドに着脱自在に固定するようになっている。
【0005】
このとき、保持部材の主軸を、偏心軸に連なる主軸主部と、主軸主部にスリットを介して接続された弾性片とに区分するとともに、弾性片の自由端に係止爪を設け、主軸を支持孔に挿入するときに、弾性片の弾性変形により係止爪が支持孔を通過し、支持孔を通過した後に弾性片の弾発力で係止爪が支持孔の縁に係合することで、保持部材をシールドに脱落不能に支持することができる。
【0006】
しかしながら、保持部材は合成樹脂製の小さい部材であるため、それをシールドの支持孔に挿入する際に傾いたりすると、主軸の弾性片に無理な応力が加わって変形したり折損したりする可能性があった。
【0007】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、シールドに防曇シートを保持する保持部材の耐久性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、シールドの内面を覆う防曇シートの周縁部に形成される複数の座部と、前記座部との対応位置で前記シールドに設けられる複数の支持孔と、前記支持孔に支持されながら前記座部に着座することで防曇シートを保持する複数の保持部材とよりなり、前記保持部材を、前記シールドの外面に当接する頭部を一端に有して前記支持孔に回転自在に嵌合する主軸と、前記主軸の他端に偏心して一体に連設されて前記座部に着座し得る、前記主軸より小径の偏心軸と、前記偏心軸の外端に一体に連設され、前記主軸と協働して前記偏心軸周りに環状溝を画成する、前記支持孔を通過可能な膨大端部とよりなる合成樹脂製の単一部品に構成し、前記主軸に、一端が前記頭部に開口して他端が前記偏心軸へ向かって開口する凹部を形成するとともに、一端が前記頭部にヒンジ部を介して接続された係止部材に係止爪を突設し、前記係止部材が前記ヒンジ部周りに回動して前記凹部に嵌合したとき、前記係止爪は前記シールドの内面に当接し得るように前記主軸の外周面から径方向外側に突出することを特徴とするシールドへの防曇シート取り付け構造が提案される。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記保持部材が前記支持孔に支持された状態で、前記頭部は前記シールドの外面に密着して前記保持部材が前記支持孔の内部に落下するのを阻止するとともに、前記頭部は前記シールドの内面に密着する前記係止爪と協働して該シールドを保持することを特徴とするシールドへの防曇シート取り付け構造が提案される。
【0010】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記主軸の外周面における前記凹部と反対側の位置に径方向外側に突出する補助係止爪を突設し、前記補助係止爪の突出量を前記係止爪の突出量よりも小さくしたことを特徴とするシールドへの防曇シート取り付け構造が提案される。
【0011】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記主軸の前記頭部直下の外周に周方向溝を介して小径部を形成したことを特徴とするシールドへの防曇シート取り付け構造が提案される。
【0012】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、前記頭部に、前記偏心軸の前記主軸に対する偏心位置を示す目印を付す一方、前記膨大端部に工具係合部を形成したことを特徴とするシールドへの防曇シート取り付け構造が提案される。
【0013】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項1〜請求項5の何れか1項の構成に加えて、前記防曇シートの外面に、その周縁に沿い無端状に延びて前記シールドの内面に密接するシール部材を付設して、前記シールドおよび前記防曇シート間に前記シール部材に囲まれる密閉空隙を画成したことを特徴とするシールドへの防曇シート取り付け構造が提案される。
【0014】
尚、実施の形態の目印突起16は本発明の目印に対応する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の構成によれば、合成樹脂製の保持部材は、一端の頭部から他端の膨大端部までが一体の単一部品に構成され、これにより防曇シートをシールドに取り付けることができるので、構造が簡単で取り付けが容易な防曇シート取り付け構造を安価に提供することができる。また保持部材の主軸に、一端が頭部に開口して他端がその下方の偏心軸へ向かって開口する凹部を形成するとともに、一端が頭部にヒンジ部を介して接続された係止部材の他端に係止爪を突設したので、主軸を支持孔に挿入した後に係止部材をヒンジ部周りに回動して凹部に嵌合すると、係止爪が主軸の外周面から径方向外側に突出してシールドの内面に係合することで、係止部材を支持孔に脱落不能に支持することができる。しかも、主軸を支持孔に挿入するときに係止爪に応力が加わることがないので、係止爪の変形や折損を防止して保持部材の耐久性を高めることができる。さらに、主軸と係止部材とがヒンジ部を介して一体化しているので、保持部材をシールドに組み付ける際に係止部材を紛失する虞がない。
【0016】
また請求項2の構成によれば、保持部材が支持孔に支持された状態で、頭部はシールドの外面に密着して保持部材が支持孔の内部に落下するのを阻止するとともに、頭部はシールドの内面に密着する係止爪と協働して該シールドを保持するので、シールドが衝撃を受けてシールドから保持部材に応力が加わっても、その応力が頭部と係止爪とに分散されることで保持部材の破損が防止される。
【0017】
また請求項3の構成によれば、主軸の外周面における凹部の他端と反対側の位置に径方向外側に突出する補助係止爪を突設し、補助係止爪の突出量を係止爪の突出量よりも小さくしたので、係止部材の係止爪との協働で保持部材を支持孔に確実に支持することを可能にしながら、保持部材の主軸を支持孔に挿入する際に補助係止爪が邪魔になるのを防止することができる。
【0018】
また請求項4の構成によれば、主軸の軸方向中間部の外周に周方向溝を介して小径部を形成したので、ヘルメットの取り扱い中、シールドが他物との衝撃的な接触により変形して防曇シート間に相対移動が生じ、これに起因する応力が保持部材に加わると、小径部で主軸が弾性変形することで上記応力を吸収して保持部材の破損を防ぐことができる。
【0019】
また請求項5の構成によれば、頭部に、偏心軸の主軸に対する偏心位置を示す目印を付す一方、膨大端部に工具係合部を形成したので、膨大端部の工具係合部に係合した工具により保持部材を回転する際に、頭部に付した目印により、偏心軸の偏心位置、即ち防曇シートに対するアンロック位置およびロック位置を確認することができ、組立性をより一層良好にすることができる。
【0020】
また請求項6の構成によれば、防曇シートの外面に、その周縁に沿い無端状に延びてシールドの内面に密接するシール部材を付設して、シールドおよび防曇シート間にシール部材に囲まれる密閉空隙を画成したので、密閉空隙が断熱空間となってシールドの内外面の温度差を少なくし、その防曇を図ることができるだけでなく、雨天時にシールドおよび防曇シートの対向面への雨滴の付着を防ぎ、雨滴による視界の悪化を極力防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】防曇シート付きシールドを備えるヘルメットの斜視図。
【
図2】シールド、防曇シートおよび保持部材の分解斜視図。
【
図4】
図1の4−4線拡大断面図(保持部材の装着過程で示す)。
【
図5】
図1の4−4線拡大断面図(偏心軸のアンロック位置で示す)。
【
図7】
図1の4−4線拡大断面図(偏心軸のロック位置で示す)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1〜
図8に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1および
図2において、自動二輪車、バギー等の乗車用ヘルメット1には、その前面窓2を覆うシールド3が着脱可能に装備される。このシールド3は、透光性かつ硬質の合成樹脂(例えばポリカーボネート)で成形されており、このシールド3に、その内面を広い範囲で覆う防曇シート4が取り付けられる。この防曇シート4は透光性および親水性を有する合成樹脂(例えばプロピオン酸セルロース)で成形されていて、ヘルメット1を装着したユーザの呼気による曇りを発生させないようになっている。
【0024】
シールド3および防曇シート4は、ヘルメット1の外周面に倣うよう左右方向中央部が前方に向かって膨らむように湾曲しており、防曇シート4の外面には、その周縁に沿って無端状に延びるシール部材5が接着される。この防曇シート4の左右両端縁には、U字状に切欠いた一対の座部6が形成され、これら座部6に対応してシールド3には一対の支持孔7(
図2には左側の座部6および支持孔7のみを示す。)が設けられる。これら支持孔7に支持される保持部材8が座部6に係合することで、防曇シート4がシールド3に取り付けられるようになっている。
【0025】
図3〜
図6に示すように、各保持部材8は、シールド3の外面に当接する頭部9aを一端に有してシールド3の支持孔7に回転自在に嵌合する主軸9と、この主軸9の他端にその中心軸線Yに対し一定量e偏心して一体に連設されて防曇シート4の座部6に対向する偏心軸10と、この偏心軸10の外端に一体に連設される膨大端部11とよりなる合成樹脂製の単一部品に構成される。
【0026】
偏心軸10は主軸9より小径に形成され、また膨大端部11は、主軸9と同軸状にかつそれと同径若しくはそれより僅かに小径に形成され、そして主軸9と協働して偏心軸10周りに環状溝12を画成する。そして、これら膨大端部11および偏心軸10は、支持孔7を通過可能になっている。また偏心軸10は、座部6から充分に離間したアンロック位置(
図5および
図6参照)と、座部6に着座するロック位置(
図7および
図8参照)との間を180°回転することができる。
【0027】
主軸9の中心軸線Y方向の中間部には、周方向溝9bにより直径が減少した弾性変形可能な小径部9cが形成される。また主軸9には、一端が頭部9aに開口して他端が外周面に開口する凹部13が形成されるとともに、頭部9aの外周には薄肉に形成されたヒンジ部14を介して係止部材15が一体に形成される。係止部材15は、頭部9aに形成した円形の壁部9dの内周に嵌合可能な円板状の蓋部15aと、蓋部15aの内面に設けられた本体部15bと、本体部15bの先端から突出する係止爪15cとを備える。ヒンジ部14を介して係止部材15を180°回動すると、本体部15bが主軸9の凹部13内に隙間なく嵌合し、係止爪15cが主軸9の外周面を超えて径方向外側に突出し、また蓋部15aは頭部9aに形成した壁部9dの内周に嵌合する。
【0028】
主軸9の外周面から前記係止爪15cが突出する位置の反対側には、主軸9の外周面に沿って円弧状に延びる補助係止爪9eが突設される。補助係止爪9eの主軸9の外周面からの突出量は、係止爪15cの主軸9の外周面からの突出量よりも小さく設定される。
【0029】
さらに主軸9の頭部9aには、偏心軸10の位置を示す目印突起16が形成される。図示例では、目印突起16は、頭部9aの外周より偏心軸10の偏心方向と反対側に突出するように配置される。頭部9aと反対側の膨大端部11の外周には六角形の工具係合部11aが形成される。
【0030】
次に、この実施形態の作用について説明する。
【0031】
防曇シート4をシールド3に取り付けるに当たっては、先ず、係止部材15が未だ主軸9の凹部13に嵌合していない状態のまま、保持部材8をシールド3の外面側から各支持孔7に膨大端部11を先頭にして挿入する。このとき、主軸9に設けた補助係止爪9eが支持孔7と干渉する可能性があるが、主軸9の外径は支持孔7の内径よりも僅かに小さく、また補助係止爪9eの突出量は小さく、かつ補助係止爪9eは弾性変形が可能であるため、保持部材8の主軸9は支持孔7に容易に挿入可能である。
【0032】
続いて、主軸9の頭部9aをシールド3の外面に押し付けた状態で、係止部材15をヒンジ部14周りに180°回動させて凹部13に嵌合すると、係止部材15の先端に設けた係止爪15cが主軸9の外周面から径方向外側に突出し、シールド3の内面に係合する。その結果、シールド3の支持孔7の周縁部の外面側に頭部9aに当接し、かつシールド3の支持孔7の周縁部の内面側に係止爪15cおよび補助係止爪9eが当接することで、保持部材8が支持孔7に脱落不能に支持される。
【0033】
このとき、係止爪15cおよび補助係止爪9eは主軸9の直径方向両端に位置するため、両者の協働により保持部材8を確実に支持することができる。しかも、保持部材8を支持孔7に挿入した後に、主軸9の凹部13に係止部材15を嵌合することで係止爪15cをシールド3の内面に係合するので、係止爪15cが支持孔7と干渉して変形したり折損したりする虞がなくなり、保持部材8の耐久性が向上する。
【0034】
次いで、左右の保持部材8の主軸9の頭部9aの目印突起16をシールド3の左右中央部へ向けるように回転して、左右の偏心軸10を主軸9の中心軸線Yからシールド3の左右外側へ向ければ、左右の偏心軸10は、それらの軸間距離を最大にしたアンロック位置を占めることになる。そこで、防曇シート4を左右にずらしながら、その左右両端部を左右の保持部材8の環状溝12に順次挿入して、シールド3の左右の座部6を、それぞれ対応する偏心軸10の外周面に対向させる(
図5および
図6参照)。
【0035】
次に、各保持部材8において、膨大端部11の工具係合部11aにボックスレンチやスパナ等の工具18を係合し、その工具18により保持部材8を略180°回転すれば(その回転角度は、目印突起16の回転位置から確認することができる。)、それと一体に回転する偏心軸10は座部6に着座すると同時に押圧することになるので、元々前方へ凸状に湾曲した防曇シート4は、更に湾曲してシール部材5をシールド3の内面に充分に密着させることになる。このような状態になると、座部6の偏心軸10に対する反力の作用線が偏心軸10の中心軸線Yもしくはその近傍を通るようになるので、偏心軸10はロック状態となり、保持部材8の妄りな回転を防ぐことができる。
【0036】
このように、防曇シート4が一対の保持部材8を介してシールド3に取り付けられ、無端状のシール部材5がシールド3の内面に密接すると、シールド3および防曇シート4間にシール部材5に囲まれた密閉空隙17が画成され、これが断熱空間となってシールド3の内外面の温度差を少なくし、シールド3の曇り止めを図ることができるのみならず、雨天時、シールド3および防曇シート4の対向面への雨滴の付着を防ぎ、雨滴による視界の悪化を極力防ぐことができる。
【0037】
ところで、合成樹脂製の保持部材8は、上記のように、一端の頭部9aから他端の膨大端部11までが一体の単一部品に構成されるので、構造が簡単で取り付けが容易な防曇シート取り付け構造を安価に提供することができる。
【0038】
しかも、ヘルメット1の取り扱い中、シールド3が他物との衝撃的な接触により変形することで、シールド3および防曇シート間に急激な相対移動が生じ、これに起因する応力が保持部材8に加わると、主軸9の小径部9cが曲げや伸びの弾性変形により上記応力を吸収し、保持部材8の破損を防ぐことができる。したがって、保持部材8は、その耐久性の向上により、長期に亙り防曇シート4を確実に保持することができる。
【0039】
また保持部材8をシールド3の支持孔7に支持した状態では、頭部9aがシールド3の外面に密着するため、保持部材8が支持孔7の内部に落下するのを阻止することができる。しかも、頭部9aはシールド3の内面に密着する係止爪15cと協働してシールド3を保持するので、シールド3が衝撃を受けたときにシールド3から保持部材8に応力が加わっても、その応力が頭部9aと係止爪15cとに分散されることで保持部材8の破損が防止される。
【0040】
さらに、主軸9と係止部材15とがヒンジ部14を介して一体化しているので、保持部材8をシールド3に組み付ける際に係止部材15を紛失する虞がない。
【0041】
防曇シート4をシールド3から取り外すときは、上記の取り付け操作と反対の操作をすればよい。
【0042】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0043】
例えば、六角形の工具係合部11aに代えて、膨大端部11の端面にプラスまたはマイナスドライバを係合させるプラスまたはマイナス溝を形成することもできる。
【0044】
また目印突起16は、偏心軸10の偏心方向に向かって頭部9aに形成することもできる。
【0045】
また本発明はゴーグル用のシールドへの防曇シートの取り付けにも適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
3 シールド
4 防曇シート
5 シール部材
6 座部
7 支持孔
8 保持部材
9 主軸
9a 頭部
9b 周方向溝
9c 小径部
9e 補助係止爪
10 偏心軸
11 膨大端部
11a 工具係合部
12 環状溝
13 凹部
14 ヒンジ部
15 係止部材
15c 係止爪
16 目印突起(目印)
17 密閉空隙