特許第6411912号(P6411912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411912
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】点検口装置
(51)【国際特許分類】
   E04F 19/08 20060101AFI20181015BHJP
   E06B 3/968 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   E04F19/08 101C
   E06B3/968 B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-28384(P2015-28384)
(22)【出願日】2015年2月17日
(65)【公開番号】特開2016-151115(P2016-151115A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 紀生
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】上田 修一
(72)【発明者】
【氏名】品川 智博
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 直武
(72)【発明者】
【氏名】幸谷 栄治
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−191866(JP,A)
【文献】 特開2000−179141(JP,A)
【文献】 米国特許第03286405(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/08
E06B 3/96−3/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間と壁裏空間とを仕切る壁材に形成された点検口の周縁に沿って設けられる枠部材と、
前記枠部材が有する開口を塞ぐように取り付けられる板状の蓋部材と、を備える点検口装置であって、
前記枠部材は、前記点検口の周縁の一辺に沿って延びる第1辺部材と、前記点検口の周縁の他辺に沿って延び、前記第1辺部材と所定の角度をもって交差する第2辺部材と、前記第1辺部材及び前記第2辺部材を互いに連結するために前記第1辺部材及び前記第2辺部材の接合部分に設けられるコーナー連結部材と、を有し、
前記第1辺部材及び第2辺部材はそれぞれ、前記点検口の周縁に対向するように設けられた側壁と、前記側壁の壁裏空間側の端部から前記点検口の中心方向に延出する基底部と、前記側壁の室内空間側の端部から前記点検口の中心と反対側の方向に延出する延出部と、を有し、
前記側壁は、壁裏空間側の端部に被嵌合部を有し、
前記コーナー連結部材は、前記基底部の壁裏空間側に当接する基底接触部と、前記被嵌合部に嵌合する嵌合部と、前記延出部の壁裏空間側に当接する延出接触部と、を一体に有することを特徴とする、点検口装置。
【請求項2】
前記被嵌合部は、壁裏空間側に開放面を有する凹溝であり、
前記嵌合部は、前記被嵌合部の間隙よりも厚みの小さいベース壁と、前記ベース壁の側面の一部を厚み方向に突出させた突起と、を有することを特徴とする請求項1に記載の点検口装置。
【請求項3】
前記被嵌合部の内側面は、前記被嵌合部に嵌合した状態の前記嵌合部を固定するための係止突起を有し、
前記嵌合部は、その側面に前記係止突起に係止される被係止部を有することを特徴とする請求項1に記載の点検口装置。
【請求項4】
前記基底接触部は、前記第1辺部材及び前記第2辺部材の前記基底部に溶着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の点検口装置。
【請求項5】
前記延出接触部は、前記第1辺部材及び前記第2辺部材の前記延出部に溶着されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の点検口装置。
【請求項6】
前記蓋部材を前記枠部材に固定するために前記枠部材に係脱可能に取り付けられるクランプ部をさらに備え、
前記枠部材は、室内空間側に被係合部を有し、
前記クランプ部は、前記被係合部に対して係脱可能に係合する係合部と、前記係合部が前記被係合部に係合している状態において、前記蓋部材の室内空間側の周縁部を押圧する押圧片と、を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の点検口装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋の壁面内、天井裏等に配設された配管等を点検するために形成された点検口に取り付けられる点検口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記点検口装置に関する従来技術として、例えば下記特許文献1が公知である。特許文献1の点検口枠体は、上下左右の枠材と、隣り合う枠材の端部同士を嵌め込むことにより接合一体化するL字状接合部材と、によって正方形状又は長方形状の枠本体を構成している。この枠本体のL字状接合部材を取り付けた側の反対側には、隣り合う枠材の端部同士を係合により取り付けるL字状の蓋板支持片と、隣り合うL字状の蓋板支持片同士の間に取り付けられる直線状の蓋板支持片と、が取り付けられている。これらL字状及び直線状の蓋板支持片によって蓋板を枠本体に固定することにより、点検口を閉口している(特許文献1の図7図9図10等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−123652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の点検口枠は、枠材(辺部材)の室内側と壁裏側の両側にL字状接合部材(コーナー連結部材)を取り付けることで隣り合う枠材同士を一体連結しているが、枠材の両側からL字状の部材を嵌め込む作業が煩雑であった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、隣接する辺部材を簡便かつ強固に連結した枠部材を備える点検口装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、室内空間と壁裏空間とを仕切る壁材に形成された点検口の周縁に沿って設けられる枠部材と、前記枠部材が有する開口を塞ぐように取り付けられる板状の蓋部材と、を備える点検口装置であって、前記枠部材は、前記点検口の周縁の一辺に沿って延びる第1辺部材と、前記点検口の周縁の他辺に沿って延び、前記第1辺部材と所定の角度をもって交差する第2辺部材と、前記第1辺部材及び前記第2辺部材を互いに連結するために前記第1辺部材及び前記第2辺部材の接合部分に設けられるコーナー連結部材と、を有し、前記第1辺部材及び第2辺部材はそれぞれ、前記点検口の周縁に対向するように設けられた側壁と、前記側壁の壁裏空間側の端部から点検口の中心方向に延出する基底部と、前記側壁の室内空間側の端部から前記点検口の中心と反対側の方向に延出する延出部と、を有し、前記側壁は、壁裏空間側の端部に被嵌合部を有し、前記コーナー連結部材は、前記基底部の壁裏空間側に当接する基底接触部と、前記被嵌合部に嵌合する嵌合部と、前記延出部の壁裏空間側に当接する延出接触部と、を一体に有することを特徴とする(請求項1)。
【0007】
本発明によれば、第1辺部材及び第2辺部材(これらを総称し「辺部材」と記すこともある)の突合せ部分の室内側及び壁裏側の両側にコーナー連結部材を設けなくても、壁裏側のみにコーナー連結部材を設けるだけで、辺部材同士を一体に連結することができる。このため、従来のように、辺部材同士の突合せ部分の両側(室内側及び壁裏側)にコーナー連結部材を設けて連結する場合に比して、辺部材同士を連結するときの作業が簡便となる。
【0008】
しかも、コーナー連結部材が辺部材の側壁の壁裏空間側の端部の被嵌合部に嵌合される嵌合部を有するため、コーナー連結部材に辺部材を嵌め込むときに両部材の位置合わせがしやすく、かつ両部材の嵌合固定時に辺部材がコーナー連結部材から外れにくい。
【0009】
その上、コーナー連結部材の基底接触部が基底部の壁裏空間側に当接するため、基底部の脆弱性を基底接触部によって補うことができ、以って壁材に枠部材を取り付けたときの取付強度を高め得る。
【0010】
前記構成において、好ましくは、被嵌合部は、壁裏空間側に開放面を有する凹溝であり、嵌合部は、前記被嵌合部の間隙よりも厚みの小さいベース壁と、前記ベース壁の側面の一部を厚み方向に突出させた突起と、を有している(請求項2)。
【0011】
辺部材の被嵌合部に嵌合部を嵌合させるときに、ベース壁全面が被嵌合部の内側面と接触するような場合は、当該接触によって生じる摩擦が大きくなり、嵌合部を被嵌合部に嵌合させることが困難になるが、上記構成によれば、ベース壁の側面の一部に突設された突起が被嵌合部の内側面に接触するため、嵌合部と被嵌合部との接触面積が減るとともに、生じる摩擦も減少し、辺部材にコーナー連結部材を取り付けやすくなる。
【0012】
前記とは別の態様として、前記嵌合部の内側面は、前記被嵌合部に嵌合した状態の前記嵌合部を固定するための係止突起を有し、前記嵌合部は、その側面に前記係止突起に係止される被係止部を有していてもよい(請求項3)。
【0013】
この構成によれば、辺部材の被嵌合部に嵌合部を嵌合させた状態において、辺部材の被嵌合部の内側面に設けられた係止突起が、嵌合部に設けられた被係止部に係止されるため、辺部材がコーナー連結部材から外れにくくなる。
【0014】
前記構成において、好ましくは、基底接触部は、前記第1辺部材及び前記第2辺部材の前記基底部に溶着されている(請求項4)。
【0015】
この構成によれば、コーナー連結部材と辺部材の接触面のうちの幅広い領域において、コーナー連結部材と辺部材とが溶着されるため、両部材の接合強度を高めることができ、枠部材の強度を高めることができる。しかも、辺部材の基底部の脆弱性をコーナー連結部材の基底接触部が補う効果も得られる。
【0016】
前記構成において、好ましくは、延出接触部は、前記第1辺部材及び前記第2辺部材の前記延出部に溶着されている(請求項5)。
【0017】
この構成によれば、コーナー連結部材と辺部材の接触面のうちの端部を溶着しているため、コーナー連結部材から辺部材を外れにくくすることができるとともに枠部材の強度を高めることができる。
【0018】
前記構成において、好ましくは、前記蓋部材を前記枠部材に固定するために前記枠部材に係脱可能に取り付けられるクランプ部をさらに備え、前記枠部材は、室内空間側に被係合部を有し、前記クランプ部は、前記被係合部に対して係脱可能に係合する係合部と、前記係合部が前記被係合部に係合している状態において、前記蓋部材の室内空間側の周縁部を押圧する押圧片と、を有する(請求項6)。
【0019】
この構成によれば、クランプ部を枠部材に固定するときに、クランプ部の押圧片が蓋部材の周縁部を押圧した状態となる。このため、クランプ部が蓋部材を枠部材に対してロックし、蓋部材が枠部材内でがたつくのを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、隣接する辺部材を簡便かつ強固に連結した枠部材を備える点検口装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る第1実施形態の点検口装置を示す正面図である。
図2図1の点検口装置の背面図である。
図3図2のIII−III線断面図である。
図4図2のIV−IV線断面図である。
図5】(A)は枠部材の一部切欠き斜視図であり、(B)はコーナー連結部材の斜視図である。
図6】(A)は図5(B)のコーナー連結部材の上面図であり、(B)は(A)のVIB−VIB線断面図である。
図7図2に示す点検口装置取付時の、蓋部材を枠部材に取り付ける前の状態を示す断面図である。
図8図2に示す点検口装置取付時の、蓋部材を枠部材の開口に挿入した状態を示す断面図である。
図9】本発明に係る第2実施形態の点検口装置の部分断面図であり、第1実施形態の図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0023】
<第1実施形態:点検口装置の構成>
図1及び図2はそれぞれ、本実施形態の点検口装置(枠部材1に蓋部材2を取り付けた状態)を示す正面図及び背面図であり、図3及び図4はそれぞれ、図2におけるIII−III線断面図及びIV−IV線断面図である。本実施形態の点検口装置100は、図1図3に示すように、室内空間S1と壁裏空間S2とを仕切る壁材K(図3のみ図示)に形成された略四角形状の点検口T1の周縁に沿って設けられる略四角形状の枠部材1と、枠部材1が有する開口T2を塞ぐように取り付けられる板状の蓋部材2と、蓋部材2を枠部材1に固定するために枠部材1に係脱可能に取り付けられるクランプ部5と、を備えている。
【0024】
壁材Kは、図3に示すように下地桁材SKに固定されており、床と天井とを接続する上下方向に平行な横壁である。点検口T1は、壁材Kに形成された四角形状の開口である。枠部材1は、点検口T1の周縁に沿って設けられ、開口T2を有する。蓋部材2は、枠部材1の開口T2を塞ぐことができる所定厚みの略四角形の平板状の板材である。図1中、破線は蓋部材2の外周を意味する。クランプ部5は、蓋部材2の周縁を室内空間S1側から押圧することで、蓋部材2を枠部材1内に固定している。クランプ部5は、枠部材1の各辺(後述する辺部材1a〜1d)の室内空間S1側に1つずつ計4つ取り付けられている。
【0025】
枠部材1は、図2に示すように、背面視で中央に開口T2を有する四角形状であり、当該四角形の各辺を構成する辺部材(上辺部材1a、下辺部材1b、左辺部材1c及び右辺部材1d)と、辺部材1a〜1dそれぞれを連結するために枠部材1の四隅に設けられるコーナー連結部材3a〜3dと、を備えている。辺部材1a〜1dはいずれも両端が斜め45°の角度で切り落とされた長尺状の等脚台形であり、各辺部材1a〜1dの突合せ部分をコーナー連結部材3a〜3dで連結して一体化している。以下、コーナー連結部材3a〜3dを「コーナー連結部材3」と記すこともある。
【0026】
上記4つの辺部材1a〜1dのうち互いに交差する任意の辺部材の組は、請求項にいう「第1辺部材」及び「第2辺部材」に相当する。例えば、互いに交差する上辺部材1a及び右辺部材1dの組については、そのいずれか一方が「第1辺部材」に、他方が「第2辺部材」に相当する。このことは、右辺部材1dと下辺部材1bの組、下辺部材1bと左辺部材1cの組、及び左辺部材1cと上辺部材1aの組においても同様である。
【0027】
辺部材1a〜1d及びコーナー連結部材3はいずれも、蓋部材2を支持する強度を有する硬質材料で構成される。硬質材料としては、例えば、硬質の塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アルミニウム又はアルミニウム合金が挙げられる。
【0028】
枠部材1を構成する辺部材1a〜1dはそれぞれ、図4に示すように、点検口T1の周縁に対向するように設けられた側壁4と、側壁4の壁裏空間S2側の端部から点検口T1の中心側に延出する基底部4zと、基底部4zの表裏をネジ又は釘の固定部材等が貫通するように形成された挿通孔7と、側壁4の室内空間S1側の端部から点検口T1の中心とは反対側に延出する延出部4xと、基底部4zにおける点検口T1の中心側の端部から室内空間S1側及び壁裏空間S2側の双方に延びる蓋部材支持部4fと、側壁4の点検口T1の中心側の側面から点検口T1の中心側に延びる蓋縁支持部4gと、蓋部材2を枠部材1に嵌め込んだ状態で、蓋部材2の外周部を覆うように延びる舌片4iと、を有する。
【0029】
側壁4は、その壁裏空間S2側の端部に凹溝(被嵌合部)4yを有する。側壁4は、外側壁4aと、外側壁4aよりも内側に外側壁4aに略平行に離間して配置された内側壁4bと、外側壁4aと内側壁4bとを内外に連結する連結壁4cとを有する。
【0030】
辺部材1a〜1dの外側壁4a及び内側壁4bの壁裏空間S2側の端部が凹溝(被嵌合部)4yとなる。凹溝4yは、壁裏空間S2側に開放された形状を有し、辺部材1a〜1dの長手方向の全体に亘って設けられている。この辺部材1aの凹溝4yに、コーナー連結部材3の後述する嵌合部3yが挿入されることにより、辺部材1a〜1dがコーナー連結部材3に固定される。
【0031】
辺部材1a〜1dの外側壁4a及び内側壁4bは、連結壁4cよりも室内空間S1側に凹溝(被係合部)4eを形成している。凹溝4eは、室内空間S1側に開放された形状を有し、辺部材1a〜1dの長手方向の全体に亘って設けられている。さらに、内側壁4bの室内空間S1側の端部には、外側壁4a側に突出する鉤状部(突片)4hが形成されている。この凹溝4eに、後述するクランプ部5の凸部(係合部)5eを挿入することにより凸部5eが凹溝4eに係合し、クランプ部5が枠部材1に固定される。
【0032】
蓋縁支持部4g及び蓋部材支持部4fはそれぞれ、蓋部材2の壁裏空間S2側の外周及び周縁近傍を支持している。
【0033】
舌片4iは、図3に示すように、枠部材1に取り付けられた状態の蓋部材2における室内空間S1側の面と略一致する位置(当該面よりもわずかに室内空間S1側の位置)に設けられており、枠部材1に取り付けた蓋部材2が枠部材1から脱落しないように保持している。舌片4iは、可撓性材料から構成されている。可撓性材料の種類は特に限定されないが、例えば、軟質の塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0034】
次に、図5を参照し、コーナー連結部材による辺部材の連結を説明する。図5(A)は枠部材の一部切欠き斜視図、図5(B)はコーナー連結部材の斜視図である。図5(B)に示すようにコーナー連結部材3aは、その中央で直角をなして折れたくの字型形状をしている。コーナー連結部材3cのくの字形状に延びる各方向に1つずつ計2つの辺部材1a、1dを取り付けることで、図5(A)に示すように2つの辺部材(第1辺部材及び第2辺部材)同士を一体に連結し枠部材1の一隅を形成する。同様にして辺部材1a〜1dの各端部にコーナー連結部材3b〜3dを取り付けることにより、辺部材1a〜1dが一体化されて図1及び図2に示す枠部材1を形成する。
【0035】
図6(A)は、コーナー連結部材の上面図であり、図6(B)は、図6(A)のVIB−VIB線断面図である。コーナー連結部材3はそれぞれ、図5(B)及び図6(A)、(B)に示すように、基底部4zの壁裏空間S2側に当接する基底接触部3zと、辺部材1aの凹溝4y(外側壁4aと内側壁4bとの間)に嵌合する嵌合部3yと、延出部4xの壁裏空間S2側に当接する延出接触部3xと、を一体に有している。
【0036】
嵌合部3yが凹溝4yに挿入されている状態において、基底部4zを基底接触部3zに、延出部4xを延出接触部3xにそれぞれ超音波溶着する。このようにしてコーナー連結部材3aと辺部材1aとが一体に連結される。
【0037】
基底接触部3zは、その端部にコの字型に切り欠いた切欠き部7aを有する。
【0038】
当該切欠き部7aは、辺部材1a〜1dの挿通孔7にネジ又は釘等の固定部材Nを挿入するときに、当該固定部材Nを回避するために設けられるもので、上述の辺部材1a〜1dの挿通孔7相当位置に設けられる。
【0039】
嵌合部3yは、コーナー連結部材3aのくの字を構成する2辺に対応して1つずつ計2つ設けられている平板状の部材である。嵌合部3yは、凹溝(被嵌合部)4yの間隙(内側壁4bと外側壁4aとの間の距離)よりも厚みの小さいベース壁3y1と、当該ベース壁3y1の側面の一部を厚み方向に突出させた突起3y2と、を有している。突起3y2は、ベース壁3y1の長手方向に離間してそれぞれ4つずつ、1つのコーナー連結部材に計8つ設けられている。
【0040】
嵌合部3yは、辺部材1aとコーナー連結部材3aとを一体化した状態(つまり辺部材1aの凹溝4yにコーナー連結部材3aの嵌合部3yを嵌合した状態)において、両部材の嵌合強度を高めるために設けられる。
【0041】
次いで、枠部材1へのクランプ部5の係合による蓋部材2の固定を説明する。
【0042】
クランプ部5は、辺部材1a〜1dの長手方向全体に亘って設けられる平板状のクランプ部本体5aと、クランプ部本体5aと枠部材1の延出部4xとを連結する連結部5bと、クランプ部本体5aの点検口の中心側の端部から基底部4z側に突出している押圧片5cと、クランプ部本体5aの蓋部材2側の面に突設され、凹溝4eに挿入される凸部5eと、を備えている。
【0043】
クランプ部本体5aは、枠部材1を構成する辺部材1a〜1dの長手方向に直交する方向に所定の幅を有しており、クランプ部5を枠部材1に固定した状態(つまり凸部5eを凹溝4eに係合した状態)において、開口T2の周縁の蓋部材2を室内空間S1側から保持するように配置される。このようなクランプ部5は、枠部材1の蓋部材支持部4f及び蓋縁支持部4gとともに蓋部材2を挟持することにより、蓋部材2を枠部材1に固定する。
【0044】
連結部5bは、クランプ部本体5aの外側(点検口の中心と反対側)の端部に設けられており、クランプ部本体5aと辺部材1aの延出部4xとを一体に連結している。
【0045】
押圧片5cは、クランプ部5を各辺部材1a〜1dに固定した状態で、押圧片5cの先端が蓋部材2に接するように壁裏空間S2側に突出している。
【0046】
凸部(係合部)5eは、クランプ部本体5aの長手方向全体に亘って設けられ、クランプ部本体5aの蓋部材2と接する側の面から突出する平板状の首部と、首部の先端に一体に設けられた断面略円形状の拡径部と、を備えている。図4に示すように、クランプ部5を閉じた状態では、鉤状部の先端が、拡径部と首部の境界部(括れ部)に係合している。
【0047】
連結部5b、押圧片5c及び凸部5eは、可撓性材料から構成されている。可撓性材料の種類は特に限定されないが、例えば、軟質の塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0048】
<点検口装置の使用方法>
まず、図7に示すように、クランプ部5の凸部5eを辺部材1a、1bの凹溝4eから外した状態の枠部材1を、点検口T1に挿入する。このとき、枠部材1は、外側壁4a及び蓋部材支持部4fの壁裏空間S2側の端部が下地桁材SKに当接する位置まで挿入される。そして、ネジ等の固定部材Nを基底部4zの挿通孔7に挿通して下地桁材SKにねじ込むことにより、枠部材1を下地桁材SKに固定する。
【0049】
次に、図8に示すように、枠部材1の開口T2に蓋部材2を挿入して、蓋部材2の壁裏空間S2側の面が蓋部材支持部4f及び蓋縁支持部4gに当接する位置まで蓋部材2を押し込む。
【0050】
次いで、図3に示すように、クランプ部5の凸部5eを辺部材1a〜1dの凹溝4e内に押し込むことにより、凸部5eの拡径部を鉤状部に係合させる。クランプ部5の凸部5eを凹溝4e内に押し込んだ状態では、押圧片4cの先端部が蓋部材2の室内空間S1側の面に当接する。これにより、枠部材1に蓋部材2が固定される。
【0051】
なお、壁裏空間S2内を点検するために枠部材1から蓋部材2を取り外す際には、上述の枠部材1に蓋部材2を取り付ける順序と逆の順序で作業を行えばよい。具体的には、まず、枠部材1からクランプ部5を外す(図8)。そして、蓋部材2の室内空間S1側の面に設けられた図外の把手を持って、蓋部材2を室内空間S1側に引っ張ることにより、蓋部材2を枠部材1から取り外す(図7)。このようにして、枠部材1の開口T2から壁裏空間S2内を点検し得る。
【0052】
<作用等>
以上説明したように、本実施形態に係る点検口装置100によれば、辺部材1a〜1dの突合せ部分の室内側及び壁裏側の両側にコーナー連結部材を設けなくても、壁裏側のみにコーナー連結部材3を設けるだけで、各辺部材1a〜1dを一体に連結することができる。このため、従来のように、辺部材の突合せ部分の両側(室内側及び壁裏側)に対してコーナー連結部材を設ける場合に比して、辺部材1a〜1d同士を連結するときの作業が簡便となる。
【0053】
しかも、コーナー連結部材3が辺部材1a〜1dの被嵌合部4yに嵌合される嵌合部3yを有するため、コーナー連結部材3に辺部材1a〜1dを嵌め込むときに両部材の位置合わせがしやすく、かつ両部材の嵌合固定時に辺部材1a〜1dがコーナー連結部材3から外れにくい。
【0054】
その上、コーナー連結部材3の基底接触部3zが辺部材1a〜1dの基底部4zの壁裏空間側に当接するため、枠部材1を下地桁材SKに取り付けたときに基底部4zと下地桁材SKとの間に生じる空隙を埋めることができる。これにより下地桁材SKに取り付けたときの基底部4zの脆弱性を基底接触部3zによって補うことができ、以って壁材Kに枠部材1を取り付けたときの取付強度を高めることができる。
【0055】
辺部材1a〜1dの被嵌合部4yに嵌合部3yを嵌合させるときに、ベース壁全面3y1が被嵌合部4yの内側面と接触するような場合は、当該接触によって生じる摩擦が大きくなり、嵌合部3yを被嵌合部4yに嵌合させることが困難になることがあるが、嵌合部3yが突起3y2を有することにより、ベース壁3y1の側面の一部に突設された突起3y2が被嵌合部4yの内側面に接触するため、嵌合部3yと被嵌合部4yの内側面との接触面積が減るとともに、生じる摩擦も減少し、辺部材1a〜1dにコーナー連結部材3を取り付けやすくなる。
【0056】
基底接触部3zが辺部材1a〜1dの基底部4zに超音波溶着されていることにより、コーナー連結部材3と辺部材1a〜1dの接触面のうちの幅広い領域において、コーナー連結部材3と辺部材1a〜1dが溶着されることになるため、両部材の接合強度を高めることができ、枠部材1の強度を高めることができる。しかも、コーナー連結部材3a〜3dの基底接触部3zが基底部4zの壁裏空間側に溶着されるため、辺部材1a〜1dの基底部4zの脆弱性をコーナー連結部材3の基底接触部3zが補うことができる。
【0057】
また、延出接触部3xが辺部材1a〜1dの延出部4xに溶着されていることにより、コーナー連結部材3と辺部材1a〜1dの接触面のうちの端部が溶着されるため、コーナー連結部材3から辺部材1a〜1dを外れにくくすることができるとともに枠部材1の強度を高めることができる。
【0058】
この構成は、上述の基底接触部3zと基底部4zを超音波溶着することと同時に実施することで、従来よりも辺部材1a〜1dとコーナー連結部材3との溶着の作業性を簡便にすることができる。すなわち、従来は辺部材1a〜1dから見て壁裏側と室内側の両側に2つのコーナー連結部材を設けていたため、それらの溶着時においてもその両側から1回ずつ作業を行う必要があったが、本実施形態の点検口装置においては、壁裏側からの一方向からの溶着作業のみで、基底接触部3zと基底部4z及び延出接触部3xと延出部4xの二か所を互いに溶着できるため、従来よりも溶着作業が簡便になる。また、基底接触部3zと基底部4z、及び延出接触部3xと延出部4xの2点で溶着されるため、辺部材1a〜1dがコーナー連結部材3から一層外れにくい。
【0059】
クランプ部5が蓋部材2の室内空間側の周縁部を押圧する押圧片5cを有することにより、クランプ部5の凸部(係合部)5eが辺部材1aの凹溝4eと係合するときに、クランプ部5の押圧片5cが蓋部材2を押圧した状態となる。このため、クランプ部5が蓋部材2を枠部材1に対してロックし、蓋部材2が枠部材1内でがたつくのを防止することができる。
【0060】
クランプ部5の凸部5eは、断面略円形状の拡径部(増厚部)であるため、凸部5eを凹溝4eに対して軽く押し込むことにより、拡径部が鉤状部4hを乗り越え、凸部5eを凹溝4eに容易に嵌合させることができる。また、凸部5eが凹溝4eに嵌合した状態で凸部5eを軽く引っ張ることにより、凸部5eを押し込むときとは反対方向に拡径部が鉤状部4hを乗り越え、凸部5eを凹溝4eから容易に取り外すことができる。従って、凸部5eと凹溝4eの係合および係合解除を容易に行うことができ、これにより、クランプ部5による蓋部材2の固定を容易に行うことができる。
【0061】
また、凸部5eが断面略円形状であるため、対応する凹溝4eに完全に挿入されなくても、凸部5eの先端のみを部分的に凹溝4eに係止させることができる。これは、壁紙等を蓋部材2に貼り付けることにより壁紙を含む蓋部材全体の厚みが厚くなって、クランプ部5の凸部5eが、枠部材1の凹溝4eに到達しにくくなる場合に有効である。
【0062】
第1実施形態において、枠部材1の四隅全てにコーナー連結部材3を設ける場合を説明したが、枠部材1の四隅のいずれか一隅のみに上記構成のコーナー連結部材と同形状のものを用いる限り、他のコーナー連結部材は上記実施形態で説明したものとは別形状であってもよい。辺部材1a〜1dについても同様で、枠部材1の四辺全てに上記実施形態の構成の辺部材を用いる必要はなく、枠部材1を構成する辺部材1a〜1dのうちのいずれか2以上が上記実施形態の構成を有する限り、他の辺部材は別形状であってもよい。
【0063】
第1実施形態において、基底部4zと基底接触部3zとの溶着、及び、延出部4xと延出接触部3xとの溶着手法は、超音波溶着に限定されず、例えば接着剤による接着を用いてもよい。
【0064】
第1実施形態において、点検口装置100を横壁の点検口T1に配置したが、天井の点検口又は床の点検口に配置してもよい。
【0065】
さらに、コーナー連結部材3の嵌合部3yを辺部材1a〜1dの凹溝4yに嵌合した状態を固定する手法は、嵌合部3yの側面に突起3y2を設ける手法のみに限られない。そこで、嵌合部3yの側面に突起3y2を設ける手段以外の嵌合状態の固定手段を、以下の第2実施形態において説明する。
【0066】
<第2実施形態>
図9は、本発明の第2実施形態を説明するための図である。図9は、辺部材とコーナー連結部材との連結部分を示す拡大断面図であり、第1実施形態の図4相当図である。本実施形態の点検口装置は、第1実施形態の嵌合部3yの側面に設ける突起3y2に代えて、図9に示すように、嵌合部3yの内側壁4b側の側面に被係止部3pを設け、かつ当該被係止部3pに係止される係止突起4pを内側壁4bの外側に設けることが異なる他は、第1実施形態のそれと同様のものである。
【0067】
第2実施形態の構成によれば、図9に示すように、辺部材4’の被嵌合部4yにコーナー連結部材3’の嵌合部3yを嵌合させた状態において、辺部材4’(内側壁4bの外側壁4a側)に設けられた係止突起4pが、嵌合部3yに設けられた被係止部3pに係止されるため、辺部材4’がコーナー連結部材3’から外れにくくなる。
【0068】
図9には明示されていないが、係止突起4pは、辺部材4’の長手方向(図9中、紙面手前から紙面奥)に沿って内側壁4bの外側全体に亘って設けられていてもよいし、コーナー連結部材3’に接触する部分のみの内側壁4bに設けられていてもよいし、長手方向に沿って内側壁4bの外側に断続的に設けられていてもよい。係止突起4pの形態がいずれであるにせよ、嵌合部3yの側面に設けられる被係止部3pは、係止突起4pの形態に合わせた凹溝とすることが好ましい。ただし、被係止部3p及び係止突起4pのいずれもが長手方向に断続的に設けられる場合は、係止突起4pと被係止部3pとの位置合わせが困難になる懸念がある。
【0069】
第2実施形態においては、内側壁4bの外側壁4a側に係止突起4pを設ける場合を説明したが、外側壁4aの内側壁4b側に係止突起4pを設けてもよい。この場合、嵌合部3yに設けられる被係止部3pも、嵌合部3yの内側壁4b側ではなく、嵌合部3yの外側壁4a側に形成する必要がある。
【0070】
第2実施形態においては、嵌合部3yに被係止部3pを形成し、辺部材1a(内側壁4bの外側壁4a側)に係止突起4pを形成したが、逆に、嵌合部3yに係止突起4pを形成し、辺部材1aに被係止部3pを形成してもよい。
【0071】
第1実施形態と第2実施形態を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 枠部材
1a、1b、1c、1d 辺部材(第1辺部材及び第2辺部材の例)
2 蓋部材
3、3a、3b、3c、3d コーナー連結部材
3p 被係止部
3x 延出接触部
3y 嵌合部
3y1 ベース壁
3y2 突起
3z 基底接触部
4 側壁
4a 外側壁
4b 内側壁
4c 連結壁
4e 凹溝(被係合部の一例)
4f 蓋部材支持部
4g 蓋縁支持部
4i 舌片
4p 係止突起
4x 延出部
4y 凹溝(被嵌合部の一例)
4z 基底部
5 クランプ部
5a クランプ部本体
5b 連結部
5c 押圧部
5e 凸部(係合部の一例)
7 挿通孔
100 点検口装置
S1 室内空間
S2 壁裏空間
T1 点検口
T2 開口
K 壁材
SK 下地桁材
N 固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9