特許第6411929号(P6411929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411929
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】MOSFET
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20181015BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20181015BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   H01L29/78 652F
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 652B
   H01L29/78 652D
   H01L29/78 658A
   H01L29/78 652T
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-60633(P2015-60633)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-181588(P2016-181588A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 行彦
(72)【発明者】
【氏名】宮原 真一朗
【審査官】 棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−069940(JP,A)
【文献】 特開2001−284584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiCからなる半導体基板と、
前記半導体基板の表面に形成されている表面電極を備えているMOSFETであって、
前記半導体基板は、
n型のドリフト領域と、
前記ドリフト領域の表面側に形成されているp型のベース領域と、
前記半導体基板の表面から前記ベース領域を貫通して前記ドリフト領域に達する位置まで延びているゲートトレンチと、
前記ベース領域の表面側で前記半導体基板の表面に露出する範囲に形成されているn型のソース領域と、
前記ベース領域の表面側で前記半導体基板の表面に露出する範囲に形成されているp型の第1コンタクト領域と、
前記ベース領域の表面側で前記半導体基板の表面に露出する範囲に形成されているp型の第2コンタクト領域を備えており、
前記第2コンタクト領域の底部の位置が前記ベース領域の底部の位置よりも前記半導体基板の表面側に位置しており、
前記半導体基板の表面を上面視したときに、前記ソース領域と前記第1コンタクト領域が前記ゲートトレンチの側面に接する範囲で前記ゲートトレンチに沿う方向に隣り合う状態で互いに接触して形成されており、前記第2コンタクト領域が前記ゲートトレンチから離れた範囲で前記ソース領域と前記第1コンタクト領域との両方に隣り合う状態で接触して形成されており、
前記第1コンタクト領域の不純物濃度が前記第2コンタクト領域の不純物濃度より低い、MOSFET。
【請求項2】
SiCからなる半導体基板と、
前記半導体基板の表面に形成されている表面電極を備えているMOSFETであって、
前記半導体基板は、
n型のドリフト領域と、
前記ドリフト領域の表面側に形成されているp型のベース領域と、
前記半導体基板の表面から前記ベース領域を貫通して前記ドリフト領域に達する位置まで延びているゲートトレンチと、
前記ベース領域の表面側で前記半導体基板の表面に露出する範囲に形成されているn型のソース領域と、
前記ベース領域の表面側で前記半導体基板の表面に露出する範囲に形成されているp型の第1コンタクト領域と、
前記ベース領域の表面側で前記半導体基板の表面に露出する範囲に形成されているp型の第2コンタクト領域を備えており、
前記半導体基板の表面を上面視したときに、前記ソース領域と前記第1コンタクト領域が前記ゲートトレンチの側面に接する範囲で前記ゲートトレンチに沿う方向に隣接して形成されており、前記第2コンタクト領域が前記ゲートトレンチから離れた範囲で前記ソース領域と前記第1コンタクト領域に隣接して形成されており、
前記第1コンタクト領域の不純物濃度が前記第2コンタクト領域の不純物濃度より低く、
前記第1コンタクト領域の不純物濃度が前記ベース領域の不純物濃度より低い、MOSFET。
【請求項3】
前記第2コンタクト領域の不純物濃度が前記ベース領域の不純物濃度より高い、請求項1又は2に記載のMOSFET。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、MOSFETに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているMOSFETは、SiCからなる半導体基板と、半導体基板の表面に形成されている表面電極を備えている。半導体基板は、n型のドリフト領域と、ドリフト領域の表面側に形成されているp型のベース領域と、半導体基板の表面からベース領域を貫通してドリフト領域に達する位置まで延びているゲートトレンチを備えている。また、半導体基板は、ベース領域の表面側で半導体基板の表面に露出する範囲に形成されているn型のソース領域と、ベース領域の表面側で半導体基板の表面に露出する範囲に形成されているp型のコンタクト領域を備えている。半導体基板を上面視したときに、ソース領域がゲートトレンチの側面に接する範囲でゲートトレンチに沿う方向に形成されている。また、コンタクト領域がゲートトレンチから離れた範囲でソース領域に隣接して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−142240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、MOSFETがオンになっているときにゲートトレンチに接する範囲のp型のベース領域にチャネルが形成されている。そして、電子が、ソース領域からベース領域に形成されたチャネルを介してドリフト領域に流れる。一方、MOSFETがターンオフすると、半導体基板に瞬間的に大きなサージ電圧が順方向に印加されることがある。そうすると、半導体基板に大きな電圧が印加されることによって、アバランシェ効果により半導体基板中で多量の正孔が生成される。生成された正孔は、半導体基板のベース領域からコンタクト領域を介して表面電極に流れる。このとき、半導体基板のコンタクト領域が小さいと、多量の正孔が流れる領域が小さくなるので、ベース領域からコンタクト領域を介して表面電極に正孔が流れにくくなる。また、SiCからなる半導体基板では、正孔の移動度が他の材質に比べて小さいので、正孔がコンタクト領域を介して表面電極に更に流れにくくなる。これによって、アバランシェ効果によって生じた多量の正孔がコンタクト領域を介して表面電極に流れにくくなるので、アバランシェ耐量が低くなるという問題があった。
【0005】
また、半導体基板のコンタクト領域を大きくすることも考えられるが、単純にコンタクト領域を大きくすると、コンタクト領域に隣接しているソース領域が小さくなり、その分、MOSFETがオンになっているときの抵抗が高くなってしまう。
【0006】
そこで本明細書は、オンのときの抵抗を低くしつつ、ターンオフしたときのアバランシェ耐量を高くすることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示するMOSFETは、SiCからなる半導体基板と、半導体基板の表面に形成されている表面電極を備えている。半導体基板は、n型のドリフト領域と、ドリフト領域の表面側に形成されているp型のベース領域と、半導体基板の表面からベース領域を貫通してドリフト領域に達する位置まで延びているゲートトレンチを備えている。また、半導体基板は、ベース領域の表面側で半導体基板の表面に露出する範囲に形成されているn型のソース領域と、ベース領域の表面側で半導体基板の表面に露出する範囲に形成されているp型の第1コンタクト領域と、ベース領域の表面側で半導体基板の表面に露出する範囲に形成されているp型の第2コンタクト領域を備えている。半導体基板の表面を上面視したときに、ソース領域と第1コンタクト領域がゲートトレンチの側面に接する範囲でゲートトレンチに沿う方向に隣接して形成されており、第2コンタクト領域がゲートトレンチから離れた範囲でソース領域と第1コンタクト領域に隣接して形成されている。第1コンタクト領域の不純物濃度が第2コンタクト領域の不純物濃度より低い。
【0008】
このような構成によれば、MOSFETがオンになっているときにゲートトレンチに接する範囲のp型のベース領域にチャネルが形成されている。同様に、ゲートトレンチに接する範囲のp型の第1コンタクト領域にチャネルが形成されている。ここで、半導体基板に形成されているコンタクト領域では通常、コンタクト抵抗を低くするために不純物濃度を高くしているが、本明細書に開示する技術ではこれとは反対に、第1コンタクト領域の不純物濃度を低くしている。これによって、第1コンタクト領域にチャネルを形成するための閾値が低くなり、第1コンタクト領域にチャネルが形成されやすくなる。そして、半導体基板の第1コンタクト領域とベース領域にチャネルが形成されている状態で、電子が、ソース領域から、第1コンタクト領域に形成されたチャネルとベース領域に形成されたチャネルを介してドリフト領域に流れる。このように、第1コンタクト領域に形成されたチャネルとベース領域に形成されたチャネルを介して電子が流れるので、半導体基板の広い範囲で電子が流れる。これによって、MOSFETがオンになっているときの抵抗を低くすることができる。
【0009】
MOSFETでは単純にコンタクト領域を大きくすると、コンタクト領域に隣接しているソース領域が小さくなり、その分、MOSFETがオンになっているときの抵抗が高くなってしまうが、本明細書に開示する技術では単純にコンタクト領域を大きくするのではなく、第1コンタクト領域の不純物濃度を低くしている。これによって、MOSFETがオンになっているときの抵抗を低くすることができる。
【0010】
一方、MOSFETがターンオフすると、半導体基板に瞬間的に大きなサージ電圧が順方向に印加されることがある。そうすると、アバランシェ効果により生じた多量の正孔が、半導体基板のベース領域からコンタクト領域(第1コンタクト領域と第2コンタクト領域)を介して表面電極に流れる。このとき、半導体基板が第1コンタクト領域と第2コンタクト領域を備えることによってコンタクト領域が大きくなっているので、大きくなったコンタクト領域を介して正孔が流れ、表面電極に正孔が流れやすくなっている。これによって、アバランシェ効果によって生じた多量の正孔がコンタクト領域(第1コンタクト領域と第2コンタクト領域)を介して表面電極に円滑に流れるので、アバランシェ耐量を高くすることができる。MOSFETでは通常、正孔の流れについては着目しないが、本明細書に開示する技術ではアバランシェ効果によって生じた正孔に着目し、正孔が流れやすくなる構成を見出した。
【0011】
以上より、上記のMOSFETによれば、オンのときの抵抗を低くしつつ、ターンオフしたときのアバランシェ耐量を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例に係るMOSFETの平面図である。
図2図1のII−II断面図である。
図3図1のIII−III断面図である。
図4】実施例に係るMOSFETの製造方法を説明する図である(1)。
図5】実施例に係るMOSFETの製造方法を説明する図である(2)。
図6】実施例に係るMOSFETの製造方法を説明する図である(3)。
図7】実施例に係るMOSFETの製造方法を説明する図である(4)。
図8】実施例に係るMOSFETの製造方法を説明する図である(5)。
図9】実施例に係るMOSFETの製造方法を説明する図である(6)。
図10】実施例に係るMOSFETの製造方法を説明する図である(7)。
図11】他の実施例に係るMOSFETの製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図3に示すように、実施例に係るMOSFET2は、半導体基板20と、半導体基板20の表面23に形成されている表面電極5と、半導体基板20の裏面24に形成されている裏面電極6を備えている。なお、図1では、図面を見易くするために表面電極5を省略して示している。
【0014】
表面電極5と裏面電極6は、例えばアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属から形成されている。表面電極5は、半導体基板20の表面23を覆っている。裏面電極6は、半導体基板20の裏面24を覆っている。
【0015】
半導体基板20は、SiC(炭化ケイ素)から形成されている。SiCからなる半導体基板では、正孔の移動度が他の材質に比べて小さい。例えば、SiCからなる半導体基板における正孔の移動度は、約40〜115(cm/V・s)であり、Siからなる半導体基板における正孔の移動度は、約600(cm/V・s)である。
【0016】
半導体基板20には、半導体素子が形成されている。半導体基板20には、複数のゲートトレンチ30が形成されている。また、半導体基板20には、裏面24側から表面23側に向かって順に、ドレイン領域13、ドリフト領域15、ベース領域12が形成されている。また、半導体基板20には、ソース領域11とコンタクト領域14(第1コンタクト領域141及び第2コンタクト領域142)が形成されている。
【0017】
図1に示すように、半導体基板20の表面23を上面視したときに、各ゲートトレンチ30がy方向に延びている。複数のゲートトレンチ30は、y方向に平行に延びている。複数のゲートトレンチ30は、x方向に等間隔で形成されている。図2及び図3に示すように、半導体基板20を断面視したときに、ゲートトレンチ30は、半導体基板20の表面23から裏面24側に(z方向に)延びている。図2に示す断面では、ゲートトレンチ30は、半導体基板20の表面23からソース領域11とベース領域12を貫通してドリフト領域15に達する位置まで延びている。図3に示す断面では、ゲートトレンチ30は、半導体基板20の表面23から第1コンタクト領域141とベース領域12を貫通してドリフト領域15に達する位置まで延びている。ゲートトレンチ30の内部には、ゲート電極32とゲート絶縁膜31が形成されている。
【0018】
ゲート電極32は、例えばアルミニウムやポリシリコンから形成されている。ゲート電極32は、ゲートトレンチ30の内部に収容されている。ゲート電極32は、ゲート絶縁膜31より内側に収容されている。ゲート電極32の上に層間絶縁膜33が配置されている。層間絶縁膜33は、ゲート電極32と表面電極5を絶縁している。
【0019】
ゲート絶縁膜31は、例えば酸化シリコン(SiO)から形成されている。ゲート絶縁膜31は、ゲートトレンチ30の内面に形成されている。ゲート絶縁膜31は、ゲートトレンチ30の側面301と底面302を覆っている。ゲート絶縁膜31は、ゲート電極32と半導体基板20の間に配置されている。ゲート絶縁膜31は、ゲート電極32と半導体基板20を絶縁している。
【0020】
ドレイン領域13は、n型の領域である。ドレイン領域13は、不純物濃度が高い。ドレイン領域13は、ドリフト領域15の裏面側に形成されている。ドレイン領域13は、半導体基板20の裏面24に露出する範囲に形成されている。ドレイン領域13は、裏面電極6にオーミック接触している。
【0021】
ドリフト領域15は、n型の領域である。ドリフト領域15の不純物濃度は、ドレイン領域13の不純物濃度より低い。ドリフト領域15は、ドレイン領域13の表面側に形成されている。ドリフト領域15は、ベース領域12とドレイン領域13の間に形成されている。
【0022】
ベース領域12は、p型の領域である。ベース領域12は、不純物濃度が低い。ベース領域12は、ドリフト領域15の表面側であって、ゲートトレンチ30に接する範囲に形成されている。ゲート電極32がオン電位になると、ゲートトレンチ30に接するベース領域12にチャネルが形成される。
【0023】
ソース領域11は、n型の領域である。ソース領域11は、不純物濃度が高い。ソース領域11は、ベース領域12の表面側であって、ゲートトレンチ30に接する範囲に形成されている。ソース領域11は、半導体基板20の表面23に露出する範囲に島状に形成されている。ソース領域11は、表面電極5にオーミック接触している。
【0024】
コンタクト領域14は、第1コンタクト領域141と第2コンタクト領域142を備えている。コンタクト領域14(第1コンタクト領域141と第2コンタクト領域142)は、p型の領域である。第1コンタクト領域141の不純物濃度は、ベース領域12の不純物濃度より低い。第2コンタクト領域142の不純物濃度は、ベース領域12の不純物濃度より高い。第1コンタクト領域141の不純物濃度は、第2コンタクト領域142の不純物濃度より低い。すなわち、第2コンタクト領域142の不純物濃度>ベース領域12の不純物濃度>第1コンタクト領域141の不純物濃度の関係になっている。
【0025】
第1コンタクト領域141は、ベース領域12の表面側であって、ゲートトレンチ30に接する範囲に形成されている。第2コンタクト領域142は、ベース領域12の表面側であって、ゲートトレンチ30から離れた範囲に形成されている。コンタクト領域14(第1コンタクト領域141と第2コンタクト領域142)は、半導体基板20の表面23に露出する範囲に形成されている。第1コンタクト領域141は、表面電極5に接触する。第2コンタクト領域142は、表面電極5にオーミック接触している。第2コンタクト領域141の不純物濃度が第1コンタクト領域142の不純物濃度よりも低いので、第1コンタクト領域141と表面電極5の間の接触抵抗は第2コンタクト領域142と表面電極5の間の接触抵抗よりも高い。
【0026】
図1に示すように、半導体基板20の表面23を上面視したときに、ソース領域11と第1コンタクト領域141は、ゲートトレンチ30に沿う方向に隣接して形成されている。ソース領域11と第1コンタクト領域141は、y方向に交互に並んで形成されている。y方向において、ソース領域11とソース領域11の間に第1コンタクト領域141が形成されている。第1コンタクト領域141と第1コンタクト領域141の間にソース領域11が形成されている。
【0027】
x方向において、第2コンタクト領域142は、ソース領域11と第1コンタクト領域141に隣接して形成されている。ソース領域11と第2コンタクト領域142は、x方向に並んで形成されている。第1コンタクト領域141と第2コンタクト領域142は、x方向に並んで形成されている。x方向において、ソース領域11とソース領域11の間、及び、第1コンタクト領域141と第1コンタクト領域141の間に第2コンタクト領域142が形成されている。第2コンタクト領域142は、y方向に延びている。
【0028】
上記の構成を備えるMOSFET2を使用するときは、表面電極5と裏面電極6の間に裏面電極6がプラスとなる電圧(順方向の電圧)を印加する。また、ゲート電極32にオン電位(ベース領域12にチャネルが形成されるのに必要な電位以上の電位)を印加する。ゲート電極32にオン電位を印加すると、ゲートトレンチ30に接する範囲のベース領域12にチャネルが形成される。また、ゲートトレンチ30に接する範囲の第1コンタクト領域141にもチャネルが形成される。これにより、MOSFET2がオンになる。そうすると、電子が、表面電極5から、ソース領域11、第1コンタクト領域141に形成されたチャネルとベース領域12に形成されたチャネル、ドリフト領域15、及び、ドレイン領域13を介して、裏面電極6に流れる。
【0029】
一方、ゲート電極32をオフ電位にすると、ベース領域12と第1コンタクト領域141に形成されていたチャネルが消滅する。これにより、MOSFET2がターンオフする。MOSFETがターンオフすると、表面電極5と裏面電極6の間に瞬間的に大きなサージ電圧が順方向に印加されることがある。その結果、半導体基板20に瞬間的に大きな電圧が印加されて、アバランシェ効果によって多量の正孔が生じる。アバランシェ効果によって生じた多量の正孔は、ドリフト領域15、ベース領域12、及び、コンタクト領域14(第1コンタクト領域141と第2コンタクト領域142)を介して、表面電極5に流れる。
【0030】
上記の説明から明らかなように、上記のMOSFET2は、図1に示すように、半導体基板20の表面23においてゲートトレンチ30に接する範囲に、n型のソース領域11だけでなく、p型の第1コンタクト領域141も形成されている。このため、ソース領域11とゲートトレンチ30とが接触している領域が、従来のMOSFETに比べて小さい。しかしながら、このMOSFET2では、低いオン抵抗が実現されている。すなわち、第1コンタクト領域141の不純物濃度が低いので、第1コンタクト領域141にチャネルが形成されやすい。このため、MOSFET2がオンになっているときに、ベース領域12だけでなく、第1コンタクト領域141にもチャネルが形成される。したがって、電子が、ソース領域11から、第1コンタクト領域141に形成されたチャネルとベース領域12に形成されたチャネルを介してドリフト領域15に流れる。このように、第1コンタクト領域141とゲート絶縁膜31の接触部(すなわち、第1コンタクト領域141に形成されたチャネル)も電流経路となるので、半導体基板20の広い範囲で電子が流れる。これによって、MOSFET2がオンになっているときの抵抗を低くすることができる。
【0031】
一方、上記の構成によれば、MOSFET2がターンオフしたときに、アバランシェ効果によって半導体基板20内に多量の正孔が生じることがある。しかしながら、半導体基板20には、ゲートトレンチ30から離れた位置に第2コンタクト領域142が形成されているだけでなく、ゲートトレンチ30に接する位置に第1コンタクト領域141が形成されている。それによってコンタクト領域14が大きくなっているので、コンタクト領域14を介して正孔が表面電極5に流れやすくなる。MOSFET2がターンオフしたときにアバランシェ効果によって多量の正孔が生じたとしても、コンタクト領域14(第1コンタクト領域141と第2コンタクト領域142)を介して正孔が表面電極5に円滑に流れるので、アバランシェ耐量を高くすることができる。よって、上記のMOSFET2によれば、オンのときの抵抗を低くしつつ、ターンオフしたときのアバランシェ耐量を高くすることができる。
【0032】
また、上記のMOSFET2では、第1コンタクト領域141の不純物濃度がベース領域12の不純物濃度より低い。このような構成によれば、第1コンタクト領域141にチャネルを形成するための閾値が、ベース領域12にチャネルを形成するための閾値より低いので、ベース領域12にチャネルが形成されるよりも先に第1コンタクト領域141にチャネルが形成される。これによって、電子が第1コンタクト領域141に流れやすくなり、半導体基板20の広い範囲で電子が流れるので、MOSFET2がオンになっているときの抵抗を低くすることができる。
【0033】
また、上記のMOSFET2では、第2コンタクト領域142の不純物濃度がベース領域12の不純物濃度がより高い。このような構成によれば、第2コンタクト領域142と表面電極5の間の抵抗が低くなるので、正孔が第2コンタクト領域142を介して表面電極5に流れやすくなり、アバランシェ耐量を高くすることができる。
【0034】
次に、MOSFETの製造方法の一例について説明する。MOSFETを製造するときは、図4に示すように、n+型SiC基板13の表面上にSiCからなるn型のドリフト領域15およびSiCからなるp型のベース領域12を形成する。ドリフト層領域15およびベース領域12は、エピタキシャル成長によってドリフト領域15の上に形成される。
【0035】
次に、図5に示すように、半導体基板20の表面23にマスク91を形成する。マスク91には、開口部911が形成されている。開口部911は、半導体基板20のソース領域11が形成される範囲に形成されている。また、半導体基板20の表面23にn型の不純物を注入する。n型の不純物は、高濃度で注入される。n型の不純物は、マスク91の開口部911を通して、p型のベース領域12の一部に注入される。これによって、高濃度のn型のソース領域11が形成される。ソース領域11は、半導体基板20の表面23に露出する範囲に形成される。なお、図5に示す断面は、図2に示す断面に相当する。
【0036】
次に、図6に示すように、半導体基板20の表面23にマスク92を形成する。マスク92には、開口部921が形成されている。開口部921は、半導体基板20の第1コンタクト領域141が形成される範囲に形成されている。また、半導体基板20の表面23にn型の不純物を注入する。n型の不純物は、低濃度で注入される。n型の不純物は、マスク92の開口部921を通して、p型のベース領域12の一部に注入される。p型のベース領域12に低濃度のn型の不純物が注入されることによって、p型不純物とn型不純物の濃度差が小さくなる。その結果、ベース領域12内の実効的なp型の不純物濃度(正孔濃度)が薄くなる。これによって、p型の第1コンタクト領域141が形成される。第1コンタクト領域141は、半導体基板20の表面23に露出する範囲に形成される。なお、図6に示す断面は、図3に示す断面に相当する。
【0037】
次に、図7に示すように、半導体基板20の表面23にマスク93を形成する。マスク93には、開口部931が形成されている。開口部931は、半導体基板20の第2コンタクト領域142が形成される範囲に形成されている。また、半導体基板20の表面23にp型の不純物を注入する。p型の不純物は、高濃度で注入される。p型の不純物は、マスク93の開口部931を通して、p型のベース領域12の一部に注入される。これによって、高濃度のp型の第2コンタクト領域142が形成される。第2コンタクト領域142は、半導体基板20の表面23に露出する範囲に形成される。なお、図7に示す断面は、図3に示す断面に相当する。
【0038】
次に、図8に示すように、半導体基板20の表面23にマスク94を形成する。マスク94には、開口部941が形成されている。開口部941は、半導体基板20のゲートトレンチ30が形成される範囲に形成されている。また、半導体基板20の表面23をエッチングする。マスク94の開口部941から露出している半導体基板20がエッチングされる。これによって、ゲートトレンチ30が形成される。ゲートトレンチ30は、半導体基板20の表面23から第1コンタクト領域141とベース領域12を貫通してドリフト領域15に達する深さまで形成される。また、ゲートトレンチ30は、半導体基板20の表面23からソース領域11を貫通する位置にも形成される(図示省略)。なお、図8に示す断面は、図3に示す断面に相当する。
【0039】
次に、図9に示すように、ゲートトレンチ30の内部にゲート絶縁膜31とゲート電極32を形成する。また、ゲート電極32の上に層間絶縁膜33を形成する。
【0040】
次に、図10に示すように、半導体基板20の表面23に表面電極5を形成する。また、半導体基板20の裏面24に裏面電極6を形成する。このようにして、MOSFET2が形成される。
【0041】
以上、一実施例について説明したが、具体的な態様は上記実施例に限定されるものではない。以下の説明において、上述の説明における構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。上記の実施例では、ドリフト領域15の上にエピタキシャル成長によってベース領域12を形成していたが、ベース領域12を形成する方法は上記の実施例に限定されるものではない。また、p型のベース領域12にn型の不純物を低濃度で注入することによって第1コンタクト領域141を形成していたが、第1コンタクト領域141を形成する方法は上記の実施例に限定されるものではない。他の実施例では、図11に示すように、半導体基板20にp型の不純物を多段的に注入することによって、p型のベース領域12とp型の第1コンタクト領域141を形成してもよい。この場合、半導体基板20のドリフト領域15の表面側の深い範囲201にp型の不純物を注入する。これによって、ドリフト領域15の表面側にベース領域12が形成される。次に、半導体基板20のドリフト領域15の表面側の浅い範囲202にp型の不純物を注入する。これによって、ベース領域12の表面側に第1コンタクト領域141が形成される。浅い範囲202に注入されるp型の不純物の濃度は、深い範囲201に注入されるp型の不純物の濃度より低い。
【0042】
また、上記の実施例では第1コンタクト領域141の不純物濃度がベース領域12の不純物濃度より低い構成であったが、この構成に限定されるものではなく、第1コンタクト領域141の不純物濃度とベース領域12の不純物濃度が同じであってもよい。
【0043】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0044】
以下に本明細書が開示する技術要素の一例について説明する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものである。
【0045】
1.第1コンタクト領域の不純物濃度がベース領域の不純物濃度より低くてもよい。
【0046】
このような構成によれば、第1コンタクト領域にチャネルを形成するための閾値が、ベース領域にチャネルを形成するための閾値より低いので、ベース領域にチャネルが形成されるよりも先に第1コンタクト領域にチャネルが形成される。これによって、電子が第1コンタクト領域に流れやすくなり、半導体基板の広い範囲で電子が流れるので、MOSFETがオンになっているときの抵抗を低くすることができる。
【0047】
2.第2コンタクト領域の不純物濃度がベース領域の不純物濃度より高くてもよい。
【0048】
このような構成によれば、第2コンタクト領域と表面電極の間の抵抗が低くなるので、正孔が第2コンタクト領域を介して表面電極に流れやすくなり、アバランシェ耐量を高くすることができる。
【符号の説明】
【0049】
2 :MOSFET
5 :表面電極
6 :裏面電極
11 :ソース領域
12 :ベース領域
13 :ドレイン領域
14 :コンタクト領域
15 :ドリフト領域
20 :半導体基板
23 :表面
24 :裏面
30 :ゲートトレンチ
31 :ゲート絶縁膜
32 :ゲート電極
33 :層間絶縁膜
91 :マスク
92 :マスク
93 :マスク
94 :マスク
141 :第1コンタクト領域
142 :第2コンタクト領域
301 :側面
302 :底面
911 :開口部
921 :開口部
931 :開口部
941 :開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11