特許第6412034号(P6412034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6412034
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】物品検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/18 20180101AFI20181015BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20181015BHJP
【FI】
   G01N23/18
   G01N23/04
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-19124(P2016-19124)
(22)【出願日】2016年2月3日
(65)【公開番号】特開2017-138193(P2017-138193A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2017年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】302046001
【氏名又は名称】アンリツインフィビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】野崎 隆次
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 将明
(72)【発明者】
【氏名】高田 治
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−48178(JP,A)
【文献】 特開2006−81972(JP,A)
【文献】 特開2011−247672(JP,A)
【文献】 特開2008−296201(JP,A)
【文献】 特開2009−294092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07C 1/00− 9/00、
G01N 23/00−23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次投入される物品を検査して検査信号を出力する検査手段(2)と、
前記検査手段で検査された前記物品を所定の排出方向に振り分ける振分手段(5)と、
前記排出方向に設けられて排出された前記物品が載置される載置部(8)と、
前記検査信号に基づいて前記物品の良否を判定する良否判定手段(12)と、前記検査信号に基づく検査情報を生成する検査情報生成手段(11)と、前記検査情報に基づいて前記振分手段を制御する振分制御手段(14)と、前記検査信号に係る前記物品の前記排出方向と前記検査情報を関連付けて記憶する記憶手段(15)と、を有する制御部(10)と、
前記排出方向の少なくとも一つに対応する位置に設けられて前記検査情報を表示する表示手段(9)と、
を備えた物品検査装置(1)において、
前記載置部に載置された前記物品が前記載置部から搬出されたことを検知して検知信号を出力する検知手段(18)をさらに備え、
前記制御部は、前記検査情報に係る前記物品が前記排出方向に排出されてから前記検知信号が出力されるまでの間、前記検査情報を前記表示手段に表示し、前記検知信号が出力された記録を前記検査情報と関連付けて前記記憶手段に記憶することを特徴とする物品検査装置(1)。
【請求項2】
前記検査手段(2)は、前記物品の画像を検査信号として出力することを特徴とする請求項1に記載の物品検査装置(1)。
【請求項3】
前記検査手段(2)は、前記物品による磁界変動を磁気センサにより検知し、前記磁界変動の分布を検査信号として出力することを特徴とする請求項1に記載の物品検査装置(1)。
【請求項4】
前記検査手段(2)は、前記物品の質量を計量し、前記物品の計量値を検査信号として出力することを特徴とする請求項1に記載の物品検査装置(1)。
【請求項5】
前記検査情報は、前記物品の良否を判定するために前記検査信号に基づいて算出された良否判定情報を含み、
前記表示手段(9)は、前記良否判定情報に含まれる良判定情報と否判定情報を識別可能に表示することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の物品検査装置(1)。
【請求項6】
前記検査情報は、否と判定された前記物品について否と判定された項目を表す否項目情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の物品検査装置(1)。
【請求項7】
前記検査情報は、前記否項目情報について、良と判定されるために実施すべき指示情報を含むことを特徴とする請求項6に記載の物品検査装置(1)。
【請求項8】
前記載置部(8)は、前記載置部に排出された前記物品を前記指示情報に基づいて作業者が処理するための作業台(8)であることを特徴とする請求項7に記載の物品検査装置。
【請求項9】
前記作業者を識別する作業者識別手段(20)をさらに備え、
前記制御部(10)は、前記作業者識別手段により識別された作業者情報を前記検査情報と関連付けて前記記憶手段(15)に記憶することを特徴とする請求項8に記載の物品検査装置(1)。
【請求項10】
前記制御部(10)は、一の物品を一の排出方向に排出してから前記検知信号が出力されるまでの間、該一の排出方向には、他の物品を排出しないように前記振分手段(5)を制御することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の物品検査装置(1)。
【請求項11】
前記振分手段(5)は、前記物品を複数の振分方向に振り分けるようになっており、
前記制御部(10)は、前記各振分方向に対して所定の順序で前記物品を振り分けるように前記振分手段を制御することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の物品検査装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、順次投入される物品を検査してその良否を判定し、否とされた物品を何れかの排出方向に振り分けて作業台に送り込むとともに、検査情報と排出方向を関連付けて記憶できる物品検査装置に係り、特に、物品が作業台に入ってから、作業者が当該物品を処理する作業が終了して搬出されるまでの間、作業者に当該物品の検査情報を提供するとともに、作業時間の記録を検査情報と関連付けて記録することにより、物品を処理した作業者の情報と、物品の検査情報と、作業に要した時間に関する情報とが結びつけられた有用な作業管理情報が得られる物品検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたX線異物検出システムによれば、搬送方向Xと直交方向に分割された検査レーン11を有しており、検査レーン11ごとに多数の被検査物Wをベルトコンベア6によってばら流しで搬送する。被検査物WにX線発生器31でX線を照射して検査を行い、被検査物Wに混入している異物の有無を検出する。検査レーン11ごとに選別シュート14が設けられ、異物検出された被検査物Wは不良品として選別される。ここで、検査ユニット2を搬送方向Xと直交する方向に複数並列し、複数の検査レーン11の中から一次検査レーン11a〜11cを設定し、残りを二次検査レーン11dとして設定し、一次検査レーン11a〜11cの一次不良品Wを集めて二次検査レーン11dにて再搬送し再検査する。この発明によれば、ばら流しで搬送される被検査物の検査において好適な効率が得られ、不良品をピンポイント選別して歩留りの悪化を防止できることが期待される。
【0003】
下記特許文献2に開示された物品検査装置は、第1搬送コンベア21と、第2搬送コンベア22と、X線検査機器30を有している。第1搬送コンベアは第1方向D1に鶏肉Cを搬送し、第2搬送コンベアは第1方向とは逆の第2方向D2に鶏肉を搬送し、検査機器は鶏肉を検査する。X線検査機器は、第1搬送コンベア上の第1領域と、第2搬送コンベア上の第2領域とを検査対象領域としている。この装置によれば、第1搬送コンベアでの検査で不合格となった鶏肉は、是正処理が行われてから、作業員の手で第1搬送コンベアへ供給され、再検査を受けることとなる。この発明によれば、設備費用及び設備スペースを抑制しながら、物品の再検査を精度よく実施できるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−294092号公報
【特許文献2】特開2014−48178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者等の認識によれば、近年の食品に関する安全意識の高まりを受けて、食品に対する異物混入の管理は厳格さを増しており、その結果、食品の生産現場においては種々の作業改善が試みられるようになっている。例えば、多くの食品生産業者においては、食品生産現場における食材の処理作業を適切に管理して作業効率の向上を図るとともに、生産する食品の安全性を高める方策が模索されている。
【0006】
従来の食品生産の現場では、生産ラインを流れる食品を検査装置で検査し、その結果、不合格となった場合には、当該検査結果を表示装置に表示し、不合格となった食品は作業員が処理して不合格原因を除去し、その後、再度検査ラインに戻して再検査するという手法が通常採用されている。前述した各特許文献に記載の技術もこれと同様であるが、このような検査・処理手法は、必ずしも、検査結果をその他の情報と結びつけて有用な作業管理情報を取得できるようなものではなく、食材の検査・処理作業を適切に管理して作業効率の向上を充分に図れるものとは言えなかった。
【0007】
本発明は、上に説明した従来の技術における課題に鑑みてなされたものであり、物品を検査して良否を判定し、否とされた物品を適当な作業台に振り分けて作業者による処理作業を行わせる物品検査装置において、物品の処理中に作業者に検査情報を提供して作業の便宜を図るとともに、物品を処理した作業者の情報と、物品の検査情報と、作業に要した時間に関する情報とを結びつけた有用な作業管理情報が得られる物品検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された物品検査装置1は、
順次投入される物品を検査して検査信号を出力する検査手段2と、
前記検査手段2で検査された前記物品を所定の排出方向に振り分ける振分手段5と、
前記排出方向に設けられて排出された前記物品が載置される載置部8と、
前記検査信号に基づいて前記物品の良否を判定する良否判定手段12と、前記検査信号に基づく検査情報を生成する検査情報生成手段11と、前記検査情報に基づいて前記振分手段5を制御する振分制御手段14と、前記検査信号に係る前記物品の前記排出方向と前記検査情報を関連付けて記憶する記憶手段15と、を有する制御部10と、
前記排出方向の少なくとも一つに対応する位置に設けられて前記検査情報を表示する表示手段9と、
を備えた物品検査装置1において、
前記載置部8に載置された前記物品が前記載置部8から搬出されたことを検知して検知信号を出力する検知手段18をさらに備え、
前記制御部10は、前記検査情報に係る前記物品が前記排出方向に排出されてから前記検知信号が出力されるまでの間、前記検査情報を前記表示手段9に表示し、前記検知信号が出力された記録を前記検査情報と関連付けて前記記憶手段15に記憶することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載された物品検査装置1は、請求項1に記載の物品検査装置1において、
前記検査手段2は、前記物品の画像を検査信号として出力することを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載された物品検査装置1は、請求項1に記載の物品検査装置1において、
前記検査手段2は、前記物品による磁界変動を磁気センサにより検知し、前記磁界変動の分布を検査信号として出力することを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載された物品検査装置1は、請求項1に記載の物品検査装置1において、
前記検査手段2は、前記物品の質量を計量し、前記物品の計量値を検査信号として出力することを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載された物品検査装置1は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の物品検査装置1において、
前記検査情報は、前記物品の良否を判定するために前記検査信号に基づいて算出された良否判定情報を含み、
前記表示手段9は、前記良否判定情報に含まれる良判定情報と否判定情報を識別可能に表示することを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載された物品検査装置1は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の物品検査装置1において、
前記検査情報は、否と判定された前記物品について否と判定された項目を表す否項目情報を含むことを特徴としている。
【0014】
請求項7に記載された物品検査装置1は、請求項6に記載の物品検査装置1において、
前記検査情報は、前記否項目情報について、良と判定されるために実施すべき指示情報を含むことを特徴としている。
【0015】
請求項8に記載された物品検査装置1は、請求項7に記載の物品検査装置1において、
前記載置部8は、前記載置部8に排出された前記物品を前記指示情報に基づいて作業者Wが処理するための作業台8であることを特徴としている。
【0016】
請求項9に記載された物品検査装置1は、請求項8に記載の物品検査装置1において、
前記作業者Wを識別する作業者識別手段20をさらに備え、
前記制御部10は、前記作業者識別手段20により識別された作業者情報を前記検査情報と関連付けて前記記憶手段15に記憶することを特徴としている。
【0017】
請求項10に記載された物品検査装置1は、請求項1から請求項9のいずれかに記載の物品検査装置1において、
前記制御部10は、一の物品を一の排出方向に排出してから前記検知信号が出力されるまでの間、該一の排出方向には、他の物品を排出しないように前記振分手段5を制御することを特徴としている。
【0018】
請求項11に記載された物品検査装置1は、請求項1から請求項10のいずれかに記載の物品検査装置1において、
前記振分手段5は、前記物品を複数の振分方向に振り分けるようになっており、
前記制御部10は、前記各振分方向に対して所定の順序で前記物品を振り分けるように前記振分手段5を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された物品検査装置1によれば、検査手段2は、順次投入される物品を検査して検査信号を出力する。制御部10では、良否判定手段12が、検査信号に基づいて物品の良否を判定し、検査情報生成手段11が、検査信号に基づいて検査情報を生成し、振分制御手段14が、検査情報に基づいて振分手段5を制御し、これにより検査手段2で検査された物品は所定の排出方向に振り分けられる。また、制御部10の記憶部15は、検査信号に係る物品の排出方向と検査情報を関連付けて記憶する。振分制御手段14により振り分けられた物品は、その排出方向に設けられた載置部8に載置され、作業者Wによる処理に供せられる。ここで、制御部10は、検査情報に係る物品が排出方向に排出されてから、物品が前記載置部8から搬出されて検知信号が出力されるまでの間、作業者Wによる処理の便宜のため、排出方向に設けられた表示手段9に検査情報を表示し、また、検知信号が出力された記録を検査情報と関連付けて記憶手段15に記憶する。これにより、物品の排出方向と、検査情報と、検知信号が出力された時間的な記録とが、互いに関連付けられた有益な管理情報を得ることができる。
【0020】
請求項2に記載された物品検査装置1によれば、物品の画像である検査信号に関して、上述したような有益な管理情報を得ることができる。
【0021】
請求項3に記載された物品検査装置1は、磁気センサにより検知された物品による磁界変動に基づく磁界変動の分布である検査信号に関して、上述したような有益な管理情報を得ることができる。
【0022】
請求項4に記載された物品検査装置1は、物品の計量値である検査信号に関して、上述したような有益な管理情報を得ることができる。
【0023】
請求項5に記載された物品検査装置1によれば、検査情報から算出された良否判定情報に含まれる良判定情報と否判定情報を、作業者Wが識別できるように表示手段9で表示することができるので、載置部8における物品の処理を能率よく適切に行うことができる。
【0024】
請求項6に記載された物品検査装置1によれば、検査情報に含まれる否項目情報を参照すれば、良否判定手段12が否と判定した物品において否と判定された項目を容易に知得することができるので、載置部8における物品の処理を作業者Wが能率よく適切に行うことができる。
【0025】
請求項7に記載された物品検査装置1によれば、検査情報に含まれる否項目情報について、良と判定されるために実施すべき処理の指示情報が含まれているので、この指示情報を参照すれば、載置部8における物品の処理を作業者Wが能率よく適切に行うことができる。
【0026】
請求項8に記載された物品検査装置1によれば、物品が排出されてくる載置部8を、排出されてきた物品を作業者Wが指示情報に基づいて処理するための作業台8として使用することができる。
【0027】
請求項9に記載された物品検査装置1によれば、物品の処理を行う作業者Wを作業者識別手段20が識別するので、制御部10は、作業者識別手段20により識別された作業者情報を検査情報と関連付けて記憶手段15に記憶することができる。このため、物品の排出方向にある載置部8において識別された作業者Wと、当該物品の検査情報と、当該物品が前記載置部8から搬出されて検知信号が出力された時間的な記録とが、互いに関連付けられた有益な管理情報を得ることができる。
【0028】
請求項10に記載された物品検査装置1によれば、一の物品が一の排出方向に排出されてから検知信号が出力されるまでの間、当該一の排出方向に他の物品が排出されることはない。すなわち、当該排出方向での物品の処理作業が終了しないうちに次の物品が投入されることはなく、作業者W員は余裕をもって能率よく適切に処理作業を行うことができる。
【0029】
請求項11に記載された物品検査装置1によれば、検査の結果、処理が必要な物品が多数生じたとしても、良否判定情報の内容、否項目情報、処理の指示情報の内容に応じた所定の順序で、振分手段5の複数の振分方向に対して物品を適宜振り分けることができるため、作業者Wは余裕をもって能率よく適切に処理作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態である物品検査装置の全体構成を模式的に示す平面図である。
図2】実施形態である物品検査装置の機能ブロック図である。
図3】実施形態の物品検査装置における検査フロー図である。
図4】実施形態の物品検査装置における振分先決定フロー図である。
図5】実施形態の物品検査装置における作業者登録情報の一例を示す表図である。
図6】実施形態の物品検査装置において振分ルール設定画面で振分ルールを設定する際の説明図である。
図7】実施形態の物品検査装置における作業時のログインフロー図である。
図8】実施形態の物品検査装置における検査情報のデータ出力イメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態を図1図8を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る物品検査装置1の概略構造を平面視で示す図である。
図1に示すように、本実施形態の検査手段であるX線検査手段2の上流には第1コンベア3が設けられ、検査対象の物品である鶏肉を搬送し、X線検査手段2に搬入している。
【0032】
図1に示すように、X線検査手段2の下流には第2コンベア4が設けられ、X線検査手段2から出た検査済みの鶏肉を下流の排出方向に搬送するようになっている。ここでX線検査手段2から鶏肉が排出されていく排出方向は、良品を第2コンベア4によって次工程にそのまま搬送していく搬送方向と、不良品を搬送方向から外して作業者に処理作業を行わせるため、この搬送方向から側方に分岐する複数の振分方向を含んでいる。すなわち、第2コンベア4を挟む両側には、第2コンベア4が搬送してくる鶏肉を振分方向に振り分ける複数の振分手段5が設けられている。これらの振分手段5は、第2コンベア4の両縁部に近い位置に設けられた支点6と、この支点6を中心に第2コンベア4の搬送ベルトの直上の水平面内を所定角度範囲で往復して揺動するバー7を備えている。図1の例では、第2コンベア4の両側に、搬送方向に沿って2カ所ずつの位置に合計4基の振分手段5が設けられている。
【0033】
図1に示すように、第2コンベア4の各近傍位置であって、各振分手段5によって振り分けられた鶏肉の送り出し先には、鶏肉の載置部となる作業台8が設けられている。作業台8は、検査の結果、NGと判定された鶏肉を載置し、これを作業者Wが処理するためのスペースとして使用される。また、各作業台8の近傍には、表示手段9(モニター)が設置されており、作業台8の前に立つ作業者Wに必要な情報を表示するが、さらに作業者Wが必要な情報を入力できるタッチパネル形式の入力手段を兼ねていてもよい。
【0034】
図2は、実施形態に係る物品検査装置1の機能ブロック図である。
図2に示すように、物品検査装置1の制御部10は、前述したX線検査手段2を制御するとともに、そこから出力される検査信号の入力を受けて後述するような情報の加工及び蓄積を行い、さらに、前述したように第1及び第2コンベア3,4を制御し、振分手段5及び作業台8に設けられた表示手段9の制御を行う。
以下、制御部10及びこれに付随するさらなる構成とその作用を、図2を参照してさらに詳しく説明する。
【0035】
実施形態のX線検査手段2が出力する検査信号は鶏肉の鶏肉の透過画像である。この検査信号は、検査情報生成手段11と良否判定手段12に入力され、良否判定手段12は当該鶏肉の良否を判定する。良否判定手段12による判定結果は、当該鶏肉の良否を判定するために検査信号に基づいて算出された良否判定情報を含むとともに、当該鶏肉について否と判定された項目を表す否項目情報を含む。例えば、許容できない大きさの骨や、金属その他の異物の混入がある場合には判定は否となり、否項目情報は「骨」又は「金属」等となる。
【0036】
この判定結果は、検査情報生成手段11と排出方向判定手段13に入力され、排出方向判定手段13は判定結果の良否判定情報及び否項目情報に従って排出方向に関する情報を出力する。すなわち、良否判定情報が良であれば振分手段5を作動させずに当該鶏肉を第2コンベア4に沿って次工程に搬送させる。否であれば、後に制御手順の説明で詳述するように、振分制御手段14によって適当な振分手段5を作動させ、当該鶏肉を処理するのに適した振分方向に当該鶏肉を振り分け、対応する作業台8に送り出す。
【0037】
検査情報生成手段11は、X線検査手段2が出力する鶏肉の透過画像である検査信号を加工し、また検査信号に基づく各種制御情報を生成・出力する。すなわち、この検査情報には、良否判定情報を含む判定結果と、当該鶏肉の排出方向(振分先を含む)に関する情報と、「骨」又は「金属」等の否項目情報が含まれる他、当該否項目情報の内容に応じて決まる処理手法についての指示情報、例えば否項目情報が「骨」又は「金属」等であれば「除去」等の指示情報も含まれる。
【0038】
制御部10は記憶手段15を有している。
記憶手段15は、検査されたある鶏肉の排出方向と、その検査情報を関連付けて記憶することができ、またその記憶内容は、表示制御手段16を介して前述した各表示手段9に表示させることができる。
【0039】
記憶手段15は、上記のほか、後に制御手順の説明で詳述するように、この鶏肉の振分先、その振分先での処理作業を担当した作業者Wの作業者ID、さらにその作業に要した時間情報の記録等も合わせて互いに紐付けして記憶することができる。記憶手段15には、このような時間情報の取得のため、計時手段17(タイマ)が接続されており、外部から入力される信号の入力時間差から必要な計時を行うことができるようになっている。
【0040】
図1には示さないが、各作業台8の近傍の位置であって、処理された鶏肉が作業台8から出て行く際に通過する位置には、図2に示すように鶏肉を検知する検知手段18が設けられている。この検知手段18は、作業台8に載置された鶏肉が作業台8から搬出されたことを検知し、制御部10に検知信号を出力する。
【0041】
制御部10は、鶏肉が排出方向に排出された後、具体的には振分手段5で振り分けられた後、検知信号が出力されるまでの間、当該振分方向に対応する表示手段9に、当該鶏肉の検査情報を表示する。この表示が行なわれる時間帯は、作業台8において作業者Wが運び込まれた鶏肉を処理する時間帯であるため、作業者Wは表示手段9の検査情報を見ながら適切に処理作業を行なうことができる。
【0042】
検査情報を表示手段9に表示する場合、良否判定情報に含まれる良判定情報と否判定情報は、種々の色彩による文字及び記号等により、判定内容が容易に視認及び識別可能となるように表示することが好ましい。例えば、OKを青で示し、NGを赤で示し、またNGであっても合格範囲の上限を越え又は下限を下回ったことを黄色の±NGで示す等、文字の色により高い視覚効果で合否を一目瞭然に表示することができる。また、種々のグラフ等で表示してもよい。
【0043】
制御部10は、検知信号が出力された記録を検査情報と関連付けて記憶手段15に記憶する。鶏肉が振分手段5で振り分けられた時間から計時手段17による計時をスタートさせることにより、その後、処理が終了して鶏肉が検知手段18を通過して検知信号が出力されるまでの時間を計時すれば、鶏肉の処理に要した作業時間に関する情報を取得することができるので、これを検査情報及び作業者IDと関連付けて記憶手段15に記憶することができる。
【0044】
図1には示さないが、各作業台8の近傍には、図2に示すように作業者識別手段20が設けられている。この作業者識別手段20は、とある作業台8で作業する作業者Wを識別して作業者情報を制御部10に送る。制御部10は、作業者識別手段20から送られた作業者情報を、検査情報と関連付けて記憶手段15に記憶することができる。
【0045】
作業者識別手段20は、例えば作業者Wが携帯するIDカードとカードリーダで作業者IDを入力するシステムでもよいし、作業台8の近傍に設けたカメラで作業者Wの顔画像を取得し、制御部10が顔認証を行なう顔認証システムであってもよい。また、表示手段9がタッチパネルとして作業者IDの入力が可能な入力手段でもあるなら、この表示手段9が作業者識別手段20を兼ねることとなる。
【0046】
図1には示さないが、制御部10には操作パネル21が接続されている。操作パネル21を操作することにより、制御部10を操作し、また制御部10に接続された構成各部を制御部10を介して操作することができる。
【0047】
図3図7を参照して、実施形態に係る物品検査装置1の作動順序又は制御動作について説明する。
まず、図3の検査フロー図を参照して、検査作業の全体の流れを説明する。
図3において、前段の第1コンベア3から被検査品である鶏肉がX線検査手段2に順次投入されると(S1)、X線検査手段2では検査工程が実行される(S2)。すなわち、X線検査手段2による検査が行なわれ、良否判定手段12による良否判定が行なわれ、その結果に基づいて振分先決定がなされる(S2)。振分先決定の詳細は後述する。
【0048】
振分先決定の結果に従い(S2)、作業は「振分先が追加処理工程の場合」と「振分先が次工程の場合」とに分かれる。「振分先が追加処理工程の場合」とは、検査結果がNGであるため、当該鶏肉を適当な作業台8に振り分けて処理(骨の除去等)を行なう場合を意味する。「振分先が次工程の場合」とは、検査結果がOKであるため、当該鶏肉を処理する必要がなく、振り分けは行なわずに、第2コンベア4でそのまま次工程に搬送する場合を意味する。
【0049】
振分先が追加処理工程の場合には、選択された振分先の振分手段5を振分制御手段14が適当なタイミングで作動させ、第2コンベア4で搬送されている鶏肉を当該振分先の作業台8に排出させる(S3)。
【0050】
制御部10は、この作業台8に配置されている表示手段9に、対応する鶏肉の検査情報の表示を開始する(S4)。
【0051】
振分先の作業台8では、作業者Wが表示手段9(モニタ)で検査情報を見ながら追加処理を行なう(S5)。
【0052】
作業者Wによる追加処理が完了すると、作業者Wは処理済みの鶏肉を作業台8から搬出する。鶏肉は検知手段18に検知され、検知手段18が検知信号を出力し、この検知信号が制御部10に入力されると、これが追加処理完了入力となり(S6)、制御部10は対応する表示手段9(モニタ)による検査情報の表示を終了し(S7)、処理済みの鶏肉は次工程へ搬送される(S8)。
【0053】
振分先が次工程の場合には、X線検査手段2から排出されたOK判定の鶏肉は、第2コンベア4によって、そのまま次工程に搬送されていく(S9)。
【0054】
次に、図4の振分先決定フロー図と、図5及び図6を参照して、図3のS2における振分先決定手順について説明する。
図4において、振分先決定手順が開始されると(S21)、記憶手段15にある作業者登録情報が参照される(S22)。作業者登録情報は、例えば図5に示すようなテーブル形式で管理、維持、更新されるようになっており、振分先ごとに、作業者ID、当該作業者Wが行なえる作業内容を示す作業コード、当該振分先において現に作業が行なわれているか否かを示す作業中フラグを含んでいる。
【0055】
作業コードが「骨除去」は鶏肉の処理として骨の除去を行なうことを示し、作業コードが「骨/金属除去」は鶏肉の処理として骨と金属の両方の除去を行なうことを示している。作業中フラグが「Yes」は、現に作業中であるとの意味であり、この振分先には鶏肉を送り込めないことを示し、「No」は、現に作業中ではないとの意味であり、この振分先には鶏肉を送り込むことができることを示している。
【0056】
振分ルールが参照される(S23)。振分ルールは、例えば図6に示す「振分ルール設定画面」のように、検査が始まる前に操作パネル21の画面から予め設定・入力しておくことができる。図6に示す設定例では、振分ルールの選択肢として、「1.振分先番号」、「2.作業時間」、「3.作業個数」、「4.作業内容」、…、「9.ランダム」のように9項目が挙げられており(一部省略)、この例では「3.作業個数」の選択マークが黒転して選択されていることを示している。この状態でOKボタンを押下すれば、振分ルールとして「作業個数」が設定される。
【0057】
なお、各振分ルールにおいて、「振分先番号」は、図5に示した作業者登録情報の「振分先」の番号CH1…の数字が若い順に振分先として割り当てていくことを意味する。「作業時間」は、記憶手段15に記憶された過去の情報から、作業にかかる時間が短い作業者Wから順に振分先として割り当てていくことを意味する。「作業個数」は、記憶手段15に記憶された過去の情報から、適宜に設定した期間中に処理した鶏肉の個数が少ない作業者Wから順に振分先として割り当てていくことを意味する。「作業内容」は、図5に示した作業者登録情報の「作業コード」が、検査情報に含まれるNGの内容に適合した振分先を割り当てていくことを意味する。図5の例において、NGの内容が「骨/金属」であれば、振分先としてCH5(作業コードが「骨/金属除去」)を選択する。「ランダム」であれば、振分先は無作為に設定される。さらに、振分ルールとして、ここに説明したもの以外の理由に基づいて、各振分方向に対して所定の順序で鶏肉を振り分けるようにしてもよい。
【0058】
なお、図6に示すように、振分ルールを何に設定したとしても、画面の下方に表示されているように、「作業中フラグがNOのCHに優先して振り分ける」ものとする。すなわち、一の鶏肉を一の排出方向(一の作業台8)に排出してから検知信号が出力されるまでの間、該一の排出方向には、他の鶏肉を排出しないように振分手段5を制御するものとする。このような制御を行なえば、特定の作業台8、特定の作業者Wに鶏肉処理の業務が集中することがなくなり、他の作業者Wに業務を分散させることができる。
【0059】
良否判定結果の内容に基づき、作業者登録情報と振分ルールを参照して振分先が決定され(S24)、これにより振分先決定の手順は終了する(S25)。
【0060】
次に、図7のログインフロー図を参照して、図3のS5における追加作業に先立って行なうログインの手順について説明する。
図7に示すように、作業者Wによるログインが開始されると(S31)、作業者識別手段20を介して作業者IDを作業者Wが制御部10に入力する(S32)。次に、パスコードの入力があり(S33)、このパスコードが記憶手段15にあるものと一致すれば(S34、YES)、ログインは終了する(S35)。一致しなければ(S34、NO)、作業者Wに再入力を促して入力を待ち(S36)、再入力がなければ(S36、NO)、ログインせずに終了する(S35)。再入力があれば(S36、YES)、再入力されたパスコードが記憶手段15にあるものと一致するか再び判断する(S33、S34)。
【0061】
次に、図8を参照して、実施形態の物品検査装置1にて得られる検査情報について説明する。図8は、制御部10の記憶手段15に記憶された検査情報を、モニタ画面への表示又は紙面へのプリントのようなデータ出力時のイメージ図として示したものである。
図8の左図は、検査情報を、検査された個々の鶏肉ごとに示したHTML形式のイメージ図であり、検査信号、すなわち鶏肉の透過写真(写真は模式的に示す。)と、検査の日付及び時刻と、鶏肉の品種(番号で示した部位名等)と、判定結果(OK又はNG)と、処理(トリミング)に要した時間(作業時間)と、作業者名等が表示されている。なお、判定結果については、OKの文字は背景を緑で示し、NGについてはNGの内容(「異物」等)も併せ示すとともに、背景を赤で示すことにより、視認をより容易にした。
【0062】
図8の右図は、検査情報を、検査の日付時刻順のリスト状となるように示したCSV形式のイメージ図であり、検査の日付及び時刻、鶏肉の品種、判定結果(OK又はNG)、検査信号である透過画像の画像ファイル名、処理(トリミング)に要した時間(作業時間)、作業者名等が順に表示されている。
【0063】
このように、本実施形態の物品検査装置1によれば、制御部10の記憶手段15は、検査信号に係る鶏肉の排出方向と検査情報を関連付けて記憶することができ、また、作業者識別手段20により識別された作業者IDを検査情報と関連付けて記憶手段15に記憶することもできる。その結果として、鶏肉の排出方向にある作業台8で識別された作業者W(作業者ID)と、当該鶏肉の検査情報と、当該鶏肉が前記作業台8から搬出されて検知信号が出力された時間的な記録、例えば作業時間とが互いに関連付けられた、作業者W及び製品である鶏肉に関する有益な管理情報を得ることができる。
【0064】
すなわち、物品の種類と、その物品に対する検査の種類と、検査の結果(OK又はNG)と、処理を行った場合には処理の種類(内容)と、処理を行った作業者Wの氏名と、処理に要した作業時間等が、互いに関連付けられて記憶手段15に保存されるので、この検査情報を利用すれば、例えば検査対象の物品が食品である場合には、当該食品の生産・検査ラインにおいて、食品の検査及び処理作業が良好に管理されて作業効率が向上するとともに、異物混入の危険性が低減し、安全性を含めた食品の品質が向上することが期待できる。
【0065】
有益な管理情報及びその活用例を例示すれば、次の通りである。
・その作業者が得意な処理指示(指示情報)に係る物品をその作業者に優先して担当させる。
・ある種類の作業について作業時間が長いと判断される作業者については、当該種類の処理作業のトレーニングを行なう。
・処理指示と作業時間から、ある作業者が苦手とする作業の種類が分かるので、当該作業者にとって苦手な作業を克服するトレーニングに優先的に時間をさくことができ、効率的なトレーニングができる。
・複数の作業者が相当の作業時間をかけて行なっている処理指示があれば、当該処理に係る物品の部位を検査の前処理で予め除去しておく。
【0066】
なお、以上説明した実施形態では、X線検査手段2で鶏肉を検査し、検査信号として透過画像を取得したが、具体的な検査の態様は別にこれに限るものではない。例えば、検査手段は、物品による磁界変動を磁気センサにより検知し、磁界変動の分布を検査信号として出力するものでもよいし、また物品の質量を計量し、物品の計量値を検査信号として出力するものでもよい。検査対象の物品の種類も任意であり、必ずしも鶏肉等の食品に限るものではない。
【符号の説明】
【0067】
1…物品検査装置
2…検査手段としてのX線検査手段
5…振分手段
8…載置部としての作業台
9…表示手段
10…制御部
11…検査情報生成手段
12…良否判定手段
14…振分制御手段
15…記憶手段
18…検知手段
20…作業者識別手段
W…作業者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8