(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係るレーザ発振器を構成するLDモジュールユニット1を示す概略断面図である。
LDモジュールユニット1は、1個もしくは複数個のLD光源を有するLDモジュール10を備えている。LDモジュール10は、LD(Laser Diode)11を有しており、LD電源(図示せず)から電力が供給されることにより、レーザを放射する。LDモジュールユニット1がDDL(Direct Diode Laser)により構成される場合には、レーザは直接加工等に用いられ、LDモジュールユニット1がファイバレーザにより構成される場合には、レーザは励起光として用いられる。安定したビーム品質を長期間維持するために、LDモジュール10は、冷却されることが重要であり、冷却板21上に設置される。
【0014】
具体的には、LDモジュール10は、伝熱性絶縁部材23の上に設置されている。伝熱性絶縁部材23は、冷却板21の上に設置されている。伝熱性絶縁部材23としては、フィラーが添加されて熱伝導性が強化されたバイトンやパーフロロエラストマー等のゴム材料や、セラミック等が用いられる。
【0015】
LDモジュール10は、冷却板21に固定される弾性絶縁部材25を介して、冷却板21に対して固定されている。弾性絶縁部材25は、LDモジュール10を覆うようにしてLDモジュール10のモジュール本体13の上部にLDモジュール10の上方から当接している。モジュール本体13の上部に当接している弾性絶縁部材25の部分251は、適切な押圧力でLDモジュール10を伝熱性絶縁部材23及び冷却板21に対して押し付けることができるように、弾性絶縁部材25の他の部分と比較して、肉厚に構成されている。
【0016】
また、LDモジュール10は、弾性絶縁部材25で下方へ押さえ付けられている。弾性絶縁部材25の冷却板21への固定は、弾性絶縁部材25と冷却板21との間を絶縁する必要がないため、弾性絶縁部材25の下部の冷却板21への固定には、絶縁性を有する樹脂ネジ等は不要であり使用されない。弾性絶縁部材25の下部は、鉄ネジ31により冷却板21に固定されている。弾性絶縁部材25の冷却板21への固定は、鉄ネジ31に限定されず、例えば、冷却板21に予め設けられたフック状の突起物に、弾性絶縁部材25に予め設けられた穴が掛けられることにより係止されてもよい。
【0017】
弾性絶縁部材25としては、例えば、バイトンやパーフロロエラストマー等のゴム材料が用いられる。弾性絶縁部材25は、弾性を有することにより、LDモジュール10や冷却板21の寸法公差を吸収し、弾性絶縁部材25の弾性によって適切な力でLDモジュール10を固定する。LDモジュール10、伝熱性絶縁部材23、弾性絶縁部材25、及び、鉄ネジ31は、格納筐体27によって覆われて格納されている。
【0018】
以上のように、本実施形態によれば、1個もしくは複数個のLD光源を有するLDモジュール10を備えるLDモジュールユニット1では、LDモジュール10は、冷却板21の上に設置された伝熱性絶縁部材23の上に設置され、冷却板21に固定される弾性絶縁部材25を介して、冷却板21に対して固定される。
【0019】
これにより、LDモジュール10の固定には、絶縁を確保するために、PPS(ポリフェニレンサルファイド)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのエンプラ製の絶縁性ネジの使用は不要となり、鉄ネジ31等の金属製ネジを使用して弾性絶縁部材25を冷却板21に固定して絶縁を確保するとともに、LDモジュール10を、冷却板21に対して絶縁を確保した状態で固定することが可能となる。また、弾性絶縁部材25が弾性を有しているため、LDモジュール10の正確な位置決めが不要となる。これらにより、耐久性、コスト、及び、絶縁固定作業の作業性に優れた絶縁固定により、LDモジュール10が冷却板21に対して固定されたLDモジュールユニット1を提供することができる。
【0020】
次に、本発明の第2実施形態によるレーザ発振器について
図2を参照しながら説明する。
図2は、第2実施形態に係るレーザ発振器を構成するLDモジュールユニット1Aを示す概略断面図である。
【0021】
第2実施形態によるLDモジュールユニット1Aにおいては、伝熱性絶縁部材23Aが、第1実施形態による伝熱性絶縁部材23とは異なる。これ以外の構成については、第1実施形態によるLDモジュールユニット1の構成と同様であるため、第1実施形態における各構成と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0022】
LDモジュールユニット1Aの伝熱性絶縁部材23Aは、粘着性を有する材料により構成されている。粘着性を有する材料としては、ゴム系粘着材、アクリル系粘着材、シリコン系粘着材等が用いられ、本実施形態では、耐熱性や耐候性に優れるシリコーン系粘着材が用いられる。これにより、LDモジュール10は、伝熱性絶縁部材23Aの上に設置されて、伝熱性絶縁部材23Aに粘着し固定されている。伝熱性絶縁部材23Aは、冷却板21の上に設置されて、冷却板21に粘着し固定されている。
【0023】
以上のように、本実施形態によれば、伝熱性絶縁部材23Aは粘着性を有する。これにより、LDモジュール10を伝熱性絶縁部材23Aに配置したときの、伝熱性絶縁部材23Aに対するLDモジュール10の位置ずれ、及び、冷却板21に対する伝熱性絶縁部材23Aの位置ずれを防止することができ、伝熱性絶縁部材23Aに対するLDモジュール10の位置決め、及び、冷却板21に対する伝熱性絶縁部材23Aの位置決めを容易とすることができ、LDモジュールユニット1Aの組立を容易とすることが可能となる。
【0024】
次に、本発明の第3実施形態によるレーザ発振器について
図3を参照しながら説明する。
図3は、第3実施形態に係るレーザ発振器を構成するLDモジュールユニット1Bを示す概略断面図である。
【0025】
第3実施形態によるLDモジュールユニット1Bにおいては、弾性絶縁部材が、絶縁部材25Bと、バネ性のある金属製の板26Bと、から構成される点で、第2実施形態とは異なる。これ以外の構成については、第2実施形態によるLDモジュールユニット1Aの構成と同様であるため、第2実施形態における各構成と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0026】
絶縁部材25Bは、LDモジュール10のモジュール本体13の上部に載置されており、LDモジュール10の上方からモジュール本体13の上板131に当接している。金属製の板26Bは、
図3に示すように、LDモジュール10、及び、モジュール本体13の上板131に載置された絶縁部材25Bを覆うようにして、絶縁部材25Bの上方から絶縁部材25Bに当接している。金属製の板26Bの下部は、鉄ネジ31により冷却板21に固定されている。即ち、金属製の板26Bの弾性により、絶縁部材25Bを介してLDモジュール10を下方へ押さえ付けることにより、LDモジュール10は、伝熱性絶縁部材23Aを介して、冷却板21に固定されている。金属製の板26Bは、例えばバネ鋼などが用いられる。また、金属製の板は、多段の折りを有する構成としてもよい。これにより、金属製の板のバネ性を強化することができる。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、弾性絶縁部材は、弾性変形可能な金属製の板26Bと、絶縁部材25Bとを有する。これにより、弾性変形によるバネ性を有する金属製の板26Bで、LDモジュール10を押さえ付けて固定することにより、当該押さえ付けによりLDモジュール10へ加わる力を分散させながら、確実にLDモジュール10を冷却板21に対して固定することができる。
【0028】
次に、本発明の第4実施形態によるレーザ発振器について
図4を参照しながら説明する。
図4は、第4実施形態に係るレーザ発振器を構成するLDモジュールユニット1Cを示す概略断面図である。
【0029】
第4実施形態によるLDモジュールユニット1Cにおいては、金属製の板は、LDモジュール10を格納する格納筐体27Cの一部により構成される点で、第3実施形態とは異なる。これ以外の構成については、第3実施形態によるLDモジュールユニット1Bの構成と同様であるため、第3実施形態における各構成と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0030】
LDモジュールユニット1Cにおいて、金属製の板は、バネ性のある格納筐体27Cの一部により構成されている。また、上下方向における格納筐体27Cの高さは、第1実施形態〜第3実施形態における格納筐体27の上下方向における高さよりも低く構成されている。絶縁部材25Bの上面は、格納筐体27Cの天板273Cの下面に当接している。従って、LDモジュール10は、格納筐体27Cを介して、冷却板21に固定されている。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、金属製の板がLDモジュール10を格納する格納筐体27Cの一部により構成される。これにより、金属製の板を格納筐体27Cが兼ねており、格納筐体27Cとは別個に金属製の板を設ける必要がなくなり、LDモジュールユニット1Cにおいて、LDモジュール10を冷却板21に対して固定するための構成にかかる部品点数を削減できる。
【0032】
次に、本発明の第5実施形態によるレーザ発振器について
図5を参照しながら説明する。
図5は、第5実施形態に係るレーザ発振器を構成するLDモジュールユニット1Dを示す概略断面図である。
【0033】
第5実施形態によるLDモジュールユニット1Dにおいては、弾性絶縁部材を構成する絶縁部材25Dが熱伝導性を備える点で、第4実施形態とは異なる。これ以外の構成については、第4実施形態によるLDモジュールユニット1Cの構成と同様であるため、第4実施形態における各構成と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0034】
絶縁部材25Dは、熱伝導性を備えており、絶縁部材25Dを通してLDモジュール10から放熱することができるように構成されている。これにより、絶縁部材25Dを通してLDモジュール10の熱を格納筐体27Cに伝達する構造とすることができ、LDモジュール10の冷却を強化することができる。
【0035】
次に、本発明の第6実施形態によるレーザ発振器について
図6を参照しながら説明する。
図6は、第6実施形態に係るレーザ発振器を構成するLDモジュールユニット1Eを示す概略断面図である。
【0036】
第6実施形態によるLDモジュールユニット1Eにおいては、LDモジュール10Eのモジュール本体13Eの上部は開放された構造を有する点で、第5実施形態とは異なる。これ以外の構成については、第5実施形態によるLDモジュールユニット1Dの構成と同様であるため、第5実施形態における各構成と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0037】
図6に示すように、LDモジュール10Eのモジュール本体13Eの上部は、開口131Eが形成されており、解放された構成を有している。弾性絶縁部材を構成する絶縁部材25Eは、第5実施形態における絶縁部材25Bよりも肉厚に構成されており、熱伝導性を備えている。絶縁部材25Eの下面は、モジュール本体13Eの上部の開口131Eを塞いでおり、絶縁部材25Eの上面は、格納筐体27Cの天板273Cの下面に当接している。従って、モジュール本体13Eは、格納筐体27Cを介して、冷却板21に固定されている。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、LDモジュール10Eのモジュール本体13Eの上部は開放された構造を有するため、LDモジュール10Eのモジュール本体13Eに上板131(
図3参照)は必要なくなり、LDモジュール10Eのモジュール本体13Eに、上板131を設ける工程を削減することができる。また、モジュール本体13Eを構成する部品点数を減らし、また、上板131と側壁134との間のシールを行うシール工程を省くことができる。また、開口131Eを絶縁部材25Eで塞ぐため、LDモジュール10Eにおいて開口131Eを有するモジュール本体13Eを、絶縁部材25Eにより密閉した構成とすることができる。
【0039】
次に、本発明の第7実施形態によるレーザ発振器について
図7を参照しながら説明する。
図7は、第7実施形態に係るレーザ発振器を構成するLDモジュールユニット1Fを示す概略断面図である。
【0040】
第7実施形態によるLDモジュールユニット1Fにおいては、LDモジュール10Eを格納する格納筐体27Cが上方向に重ねられている点で、第6実施形態とは異なる。これ以外の構成については、第6実施形態によるLDモジュールユニット1Eの構成と同様であるため、第6実施形態における各構成と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0041】
図7に示すように、LDモジュールユニット1Fは、冷却板21に固定され格納筐体27Cに覆われた複数のLDモジュール10Eを有するLDモジュールユニット1Eが、上下方向に計3つ積層されて構成されている。中段のLDモジュールユニット1Eの冷却板21の下面は、最下段のLDモジュールユニット1Eの格納筐体27Cの天板273Cの上面に載置されている。最上段のLDモジュールユニット1Eの冷却板21の下面は、中段のLDモジュールユニット1Eの格納筐体27Cの天板273Cの上面に載置されている。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、LDモジュール10Eを格納する格納筐体27Cが上方向に重ねられている。このため、格納筐体27Cの天板273Cの上面に載置された冷却板21から、格納筐体27Cの天板273Cの冷却の効果を得ることができ、より冷却効率を高めて、LDモジュール10Eの冷却を強化することができる。
【0043】
次に、本発明の第8実施形態によるレーザ発振器について
図8を参照しながら説明する。
図8は、第8実施形態に係るレーザ発振器を構成するLDモジュールユニット1Gを示す概略断面図である。
【0044】
第8実施形態によるLDモジュールユニット1Gにおいては、一のLDモジュール10E(
図8における下側のLDモジュール10E)の弾性絶縁部材は、他のLDモジュール10E(
図8における上側のLDモジュール10E)と、絶縁部材25Eとを有する点で、第7実施形態とは異なる。そして、第8実施形態によるLDモジュールユニット1Gにおいては、一のLDモジュール10Eに対して他のLDモジュール10Eは、天地逆転されて、絶縁部材25Eを介して一のLDモジュール10Eに重ねられている点で、第7実施形態とは異なる。これ以外の構成については、第7実施形態によるLDモジュールユニット1の構成と同様であるため、第7実施形態における各構成と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0045】
図8に示すように、LDモジュールユニット1Gの格納筐体27Gは、天板273C(
図7参照)を有していない。一の格納筐体27G(
図8における下側の格納筐体27G)の上端は、開口271Gを有しており、解放されている。一の格納筐体27Gの上端の開口271Gに、他の格納筐体27G(
図8における上側の格納筐体27G)の上端(
図8においては、天地逆転されているため、下端)の開口271Gが当接させられて接続されている。また、一のLDモジュール10Eのモジュール本体13Eの開口131Eを塞いでいる絶縁部材25Eの上面が、他のLDモジュール10Eのモジュール本体13Eの開口131Eを塞ぐように、他のLDモジュール10Eは、天地逆転されて絶縁部材25Eの上面に接続されている。即ち、一のLDモジュール10Eの弾性絶縁部材は、他のLDモジュール10Eと、絶縁部材25Eとにより構成されている。そして、一のLDモジュール10Eは、絶縁部材25Eと、他のLDモジュール10Eと、
図8の上側の伝熱性絶縁部材23A及び冷却板21と、
図8の上側及び下側の格納筐体27Gとにより、
図8の下側の伝熱性絶縁部材23A及び下側の冷却板21に押し付けられて固定されている。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、一のLDモジュール10Eの弾性絶縁部材は、他のLDモジュール10Eと、絶縁部材25Eとを有する。このため、格納筐体27Gにおいて天板273C(
図7参照)が不要となり、LDモジュール10E同士で押さえつけ合う構造となるため、LDモジュール10Eを冷却板21に固定する構成を、部品点数が少ない構成とすることが可能になる。また、冷却板21がLDモジュール10Eの上下に配置されるため、LDモジュール10Eが上下から冷却され、LDモジュール10E付近の気体も循環しやすくなるため、冷却が強化される。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
例えば、レーザ発振器の構成、より具体的には、LDモジュールを冷却板に対して固定する構成は、上述した実施形態における各部の構成に限定されない。
【0048】
例えば、第8実施形態によるLDモジュールユニット1Gにおいては、弾性絶縁部材としての絶縁部材25Eは熱伝導性を備えていたが、この構成に限定されない。