(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
包装材(Wa)に内容物(Wc)を収容して一部がシールされた被検査物(W)を搬送させて該被検査物に電磁波を照射し、その透過量を検出して得られる透過画像に基づいて前記包装材のシール部領域(Wd)内の検査を行う物品検査装置(1)において、
前記シール部領域には、噛み込みを検査するための複数の噛み込み検査領域(E)が前記包装材の端縁部から内側に向かって設定されるとともに、前記噛み込み検査領域ごとに異なる面積閾値が設定されており、
前記面積閾値を超える透過画像から前記噛み込みの有無を判別する信号処理部(6)を備えたことを特徴とする物品検査装置。
前記信号処理部(6)は、噛み込み候補を検出するための輝度閾値を超える透過画像の総面積を前記噛み込み検査領域(E)ごとに算出し、この算出した前記噛み込み検査領域ごとの総面積が前記面積閾値を超えたか否かの結果の論理和により前記噛み込みの有無を判別することを特徴とする請求項1記載の物品検査装置。
前記包装材(Wa)の端縁部と前記噛み込み検査領域(E)との間には、噛み込みの検査を行わない非検査領域(E0)が設定されることを特徴とする請求項1又は2記載の物品検査装置。
前記透過画像から前記包装材(Wa)内の内容物(Wc)の境界を算出し、算出した境界に基づく仮想直線を基準とし、該仮想直線から前記包装材の対向する端縁部に向かって所定幅の領域を前記内容物に一番近い噛み込み検査領域(E)として設定することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の物品検査装置。
前記噛み込み検査領域(E)ごとの設定値と、前記噛み込み検査領域ごとの噛み込み状態を含む前記被検査物(W)の平面画像を表示する表示部(7)を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の物品検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、被検査物が例えばレトルトパウチ食品などの場合には、長期保存に耐え得るように、内容物の気密性を保持しつつシール品質を十分に確保する必要がある。その際、被検査物のシール強度は、シール部領域の外縁端からの寸法によって決まるため、ある程度余裕を持った寸法に設定管理されている。
【0007】
一方で、シール部領域に内容物の噛み込みがある被検査物であっても、噛み込み部分が外見上目立たずシール強度が十分に確保されている場合は、シール部の不良なしと判定し、良品として取り扱うことで歩留りをある程度確保することができる。
【0008】
しかしながら、上述した従来のX線検査装置では、シール部領域の中に被検査物の内容物の画像の濃淡レベルと同等以上の濃淡レベルが存在すれば、全てシール不良ありと判別する。このため、シール強度が十分に確保された被検査物であっても、シール部領域の中に少しでも内容物の噛み込みがあればシール不良ありと判別されてしまい、良品として取り扱うことができず、歩留りの低下を招くという問題があった。
【0009】
また、上述した従来のX線検査装置では、X線透過画像から抽出される被検査物の外形領域の端部が雑音になりやすく、この雑音が影響してシール部領域の中に内容物の画像の濃淡レベルと同等以上の濃淡レベルであれば、その被検査物をシール不良ありと誤検出するおそれがあった。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、内容物の気密性を保持しつつ、誤検出を低減することができる物品検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された物品検査装置は、包装材Waに内容物Wcを収容して一部がシールされた被検査物Wを搬送させて該被検査物に電磁波を照射し、その透過量を検出して得られる透過画像に基づいて前記包装材のシール部領域Wd内の検査を行う物品検査装置1において、
前記シール部領域には、噛み込みを検査するための複数の噛み込み検査領域Eが前記包装材の端縁部から内側に向かって設定されるとともに、前記噛み込み検査領域ごとに異なる面積閾値が設定されており、
前記面積閾値を超える透過画像から前記噛み込みの有無を判別する信号処理部6を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載された物品検査装置は、請求項1の物品検査装置において、
前記信号処理部6は、噛み込み候補を検出するための輝度閾値を超える透過画像の総面積を前記噛み込み検査領域Eごとに算出し、この算出した前記噛み込み検査領域ごとの総面積が前記面積閾値を超えたか否かの結果の論理和により前記噛み込みの有無を判別することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載された物品検査装置は、請求項1又は2の物品検査装置において、
前記包装材Waの端縁部と前記噛み込み検査領域Eとの間には、噛み込みの検査を行わない非検査領域E0が設定されることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載された物品検査装置は、請求項1〜3の何れかの物品検査装置において、
前記透過画像から前記包装材Wa内の内容物Wcの境界を算出し、算出した境界に基づく仮想直線を基準とし、該仮想直線から前記包装材の対向する端縁部に向かって所定幅の領域を前記内容物に一番近い噛み込み検査領域Eとして設定することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載された物品検査装置は、請求項1〜4の何れかの物品検査装置において、
前記噛み込み検査領域Eごとの設定値と、前記噛み込み検査領域ごとの噛み込み状態を含む前記被検査物Wの平面画像を表示する表示部7を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る物品検査装置によれば、被検査物のシール強度を確保して内容物の気密性を保持しつつ、歩留りも考慮して被検査物のシール不良の検査を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る物品検査装置は、搬送ラインの一部や包装装置に組み込まれ、包装材に内容物が包まれた被検査物(物品)を搬送しながら電磁波(X線、近赤外線、可視光線などの光)を照射し、その透過量を検出して得られる透過画像に基づいて包装材のシール部領域内の内容物や異物の噛み込みの有無を検査するものである。
【0019】
まず、本発明に係る物品検査装置の検査対象となる被検査物Wについて
図2を参照しながら簡単に説明する。
【0020】
図2に示すように、被検査物Wは、例えばレトルトパウチ食品などであり、包装材Waの三方(左右と底部分)にシールが施され(三方シール袋)、包装材Waの上部の開口部Wbから内容物Wcをロータリー式充填機により充填した後、開口部Wbがシールされたものである。
【0021】
図2の点線で示す開口部Wbのシール部領域(
図2の点線で示す領域)Wdには、噛み込みを検査するための複数の噛み込み検査領域Eが設定される。
図2の例において、噛み込み検査領域Eは、寸法aの領域E1と寸法bの領域E2に分かれており、包装材Waの開口部Wb側の端縁部から内側に向かって所定寸法cを空けた位置から領域E1、領域E2の順に連続して並んだ状態で設定される。
【0022】
領域E1は、シール強度を確保するため、シビアな検出感度により噛み込みを原則禁止とする領域である。これに対し、領域E2は、シール強度には影響ないが、目立つものは緩い検出感度により検出したい領域である。
【0023】
このため、領域E1と領域E2には、例えば、領域E2よりも領域E1の方が厳しく小さい値となるように異なる面積閾値が設定される。また、領域E1と領域E2には、同一又は異なる輝度閾値が設定される。各領域E1,E2の寸法a,b、面積閾値および輝度閾値は、被検査物Wの種類、包装材Waの材質や厚さなどに応じて予め被検査物W毎に設定したり、各領域E1,E2ごとの寸法a,b、面積閾値、輝度閾値を被検査物Wごとに対応付けてテーブル形式の情報として記憶しておいたり、後述する表示部7に表示される設定画面上から後述する操作手段6aの操作入力により検査の都度設定することができる。
【0024】
なお、被検査物Wの内容物Wcに一番近い噛み込み検査領域E(
図2の領域E2)に関しては、被検査物WにX線を照射したときの透過画像から包装材Wa内の内容物Wcの境界を算出し、算出した境界に基づく仮想直線を基準とし、この仮想直線から包装材Waの対向する端縁部に向かう所定幅(設定寸法b)の領域として設定することもできる。
【0025】
また、包装材Waの開口部Wb側の端縁部と噛み込み検査領域Eの端縁部に一番近い領域(
図2の領域E1)との間には、開口部Wb側の端縁部(エッジ部分)が雑音になる影響を防ぐため、所定寸法cの非検査領域E0を設定するのが好ましい。非検査領域E0の寸法cは、予め検査前に後述する操作手段6aの操作により設定する他、上述したテーブル形式の情報とともに記憶しておいたり、後述する表示部7に表示される設定画面上から後述する操作手段6aの操作入力により検査の都度設定することができる。但し、非検査領域E0を設定しない場合には、包装材Waの開口部Wb側の端縁部から寸法cを詰めて噛み込み検査領域Eの領域E1、領域E2の順に設定される。
【0026】
なお、被測定物Wは、
図2の構成に限定されるものではない。例えばチューブ状のフィルムを1袋単位にカットした筒状の包装材の左右(又は上下)の開口部から内容物を充填した後に左右(又は上下)の開口部をシール(二方シール)した被検査物、半分に折りたたまれた包装材に内容物が充填されて3箇所をシール(三方シール)した被検査物、上述の充填方式と異なる方式で内容物が充填された包装材の上下左右4箇所をシール(四方シール)した被検査物であってもよい。さらには、内容物を収容した包装材がシール部を介して複数連続して並ぶ、いわゆる連包品であってもよい。
【0027】
また、
図2の例では、噛み込み検査領域Eが領域E1と領域E2の2つの領域からなるものとしたが、2つの領域に限定されるものではなく、検査する被検査物Wの種類、包装材の材質や厚さなどに応じて領域数を適宜設定することができる。
【0028】
以下では、被検査物Wの開口部Wbがシールされたシール部領域Wd内の内容物Wcや異物の噛み込みの有無(シール不良の有無)を検査する物品検査装置を例にとって説明する。
【0029】
図1に示すように、物品検査装置1は、搬送部2、駆動手段3、検出部4、位置検出部5、信号処理部6、表示部7を含んで概略構成される。
【0030】
搬送部2は、例えば装置本体に対して水平に配置されたベルトコンベアで構成される。搬送部2は、駆動手段3の駆動により、予め設定された所定の搬送速度で検査対象の被検査物Wを搬入口から搬出口に向けて搬送させる(
図1の搬送方向:X)。
【0031】
検出部4は、搬送される被検査物Wに電磁波を照射して透過量を検出するもので、搬送部2の上方に所定高さ離れて設けられるX線発生器4aと、搬送部2内にX線発生器と対向して設けられるX線検出器4bを備えて構成される。
【0032】
X線発生器4aは、特に詳細は図示しないが、金属製の箱体内部に設けられる円筒状のX線管を絶縁油により浸漬した構成であり、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射させてX線を生成する。X線管は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向Xと直交する方向(Y方向)に設けられる。X線管により生成されたX線は、下方のX線検出器に向けて、長手方向に沿ったスリットにより略三角形状のスクリーン状にして照射する。
【0033】
X線検出器4bは、被検査物Wに対してX線が照射されたときに、被検査物Wを透過してくるX線を検出し、この検出したX線の透過量に応じた電気信号を出力する。X線検出器4bは、搬送部2上を搬送される被検査物Wの搬送方向Xと直交するY方向に沿って設けられる。X線検出器4bには、例えばライン状に配列された複数のフォトダイオードと、フォトダイオード上に設けられたシンチレータとを備えたアレイ状のラインセンサが用いられる。
【0034】
位置検出部5は、搬送部2の搬入口側に設けられ、搬送部2によって搬送される被検査物Wの通過を検出する。位置検出部5は、例えば搬送部2としてのベルトコンベアの入口側に設けられる一対の投受光器からなるフォトセンサで構成することができる。この構成により、図示はしないが、信号処理部6には、被検査物Wがフォトセンサの前を通過している間において、位置検出部5からオン信号がタイミング信号として入力される。
【0035】
このような構成では、搬送部2上を搬送される被検査物Wに対してX線発生器4aからX線が照射される。そして、被検査物WへのX線の照射に伴って被検査物Wを透過してくるX線をX線検出器4bのシンチレータで受けて光に変換する。シンチレータで変換された光は、その下部に配置されるフォトダイオードによって受光される。そして、各フォトダイオードは、受光した光を電気信号に変換して出力する。これにより、X線検出器4bは、受けたX線の強さに対応したレベルを有する電気信号を信号処理部6に出力する。
【0036】
信号処理部6は、例えばCPU(Central Processing Unit )、DSP(Digital Signal Processor)、MCU(Micro Control Unit)やメモリなどを含んで構成され、位置検出部5が被検査物Wを検出したときのオン信号をタイミング信号として、X線検出器4bからの電気信号を取り込んで各種信号処理を行う。具体的には、検出部4からのX線透過量に応じた電気信号に基づいて被検査物Wの透過画像を取得し、面積閾値を超える透過画像から被検査物Wのシール部領域内の内容物や異物の噛み込みの有無を判別する。このため、信号処理部6は、操作手段6a、駆動制御手段6b、記憶手段6c、画像抽出手段6d、外形領域抽出手段6e、検査領域算出手段6f、判別手段6gを備える。
【0037】
操作手段6aは、例えばユーザが操作する複数のキー、スイッチ、表示部7の表示画面上のソフトキーなどで構成される。操作手段6aは、物品検査装置1の運転の開始や停止の指示、駆動手段3や検出部4のX線発生器4aを駆動制御するための駆動制御手段6bへの指示、搬送部2の搬送速度の設定、被検査物Wの品種や検査数などの設定、噛み込み検査領域Eの領域E1,E2ごとの寸法a,b、輝度閾値、面積閾値の設定、非検査領域E0の有無や寸法cの設定、シール不良の有無を判定するための総面積閾値の設定、信号処理部6の起動などを行う際に操作される。
【0038】
駆動制御手段6bは、操作手段6aの操作に基づく搬送駆動の指示が入力されると、被検査物Wを搬送部2にて搬送方向Xに搬送するように駆動手段3の駆動を制御する。また、駆動制御手段6bは、操作手段6aの操作に基づくX線発生の指示が入力されると、X線発生器4aがX線を発生するようにX線発生器4aの駆動を制御する。
【0039】
記憶手段6cは、各被検査物W毎のX線透過データを格納する。X線透過データは、X線検出器4bからの電気信号を不図示のA/D変換器によりA/D変換したデータを位置検出部5の検出タイミングで取り込むことにより得られる。さらに説明すると、記憶手段6cは、1つの被検査物Wの検査を行う毎に、X線検出器4bの1ライン(Y方向)あたり例えば640個のX線透過データを、少なくとも搬送される被検査物Wの搬送方向(X方向)の長さ(前端から後端までの検出期間に相当)に対応した所定ライン数(例えば480ライン)だけ格納する。
【0040】
画像抽出手段6dは、記憶手段6cに格納されたX線透過データから全体の濃淡画像(搬送部2のベルト面を含む被検査物W毎の全体画像)を作成し、この作成した全体の濃淡画像から内容物Wcの濃淡画像を抽出する。
【0041】
なお、図示はしないが、信号処理部6はフィルタ手段を備えており、被検査物Wの包装形態や内容物に応じて記憶手段6cに格納された被検査物WのX線透過データに対して所定のフィルタ処理を施す。これにより、全体画像を強調してエッジ検出し易くするとともに、検出対象の異物情報をより強調して抽出し易くしている。
【0042】
外形領域抽出手段6eは、記憶手段6cに格納されたX線透過データによる全体画像を元に被検査物Wの輪郭から内側の面積を示す外形領域を抽出する。さらに説明すると、外形領域抽出手段6eは、記憶手段6cに格納されたX線透過データから被検査物Wのデータと、被検査物W以外(実際には搬送部2のベルト面)のデータとに切り分けて2値化し、2値化された被検査物Wのデータを外形領域として抽出する。
【0043】
検査領域算出手段6fは、外形領域抽出手段6eが抽出した外形領域から検査領域である噛み込み検査領域を算出する。具体的には、外形領域抽出手段6eが抽出した外形領域の画像を、設定された噛み込み検査領域E(非検査領域E0が設定されている場合には、その寸法cの領域を含む)の所定方向の寸法分だけその方向に縮小し、縮小された画像を外形領域の画像から差し引いて噛み込み検査領域Eを算出する。
【0044】
判別手段6gは、噛み込み検査領域Eの領域E1,E2ごとに設定された面積閾値を用いてシール部領域Wd内の噛み込みの有無を判別する。具体的には、検査領域算出手段6fが算出した噛み込み検査領域Eの領域E1,E2ごとに所定の大きさ以上となる塊状の透過画像を抽出し、その塊状の透過画像の総面積を算出し、この算出した噛み込み検査領域Eの領域E1,E2ごとの総面積が総面積閾値を超えるか否かを判定し、その結果の論理和により最終的な噛み込みの有無を判別する。
【0045】
この際、噛み込み検査領域Eの領域E1,E2に輝度閾値(透過画像の濃淡レベルの閾値)が設定されており、各領域E1,E2の透過画像について、濃淡レベルが輝度閾値を超える所定の大きさ以上の小塊の面積を合計して各領域E1,E2ごとに総面積を算出する。
【0046】
そして、判別手段6gは、噛み込み検査領域Eの領域E1の面積閾値を超える小塊の透過画像の総面積(第一の総面積)と、領域E2の面積閾値を超える小塊の透過画像の総面積(第二の総面積)について総面積閾値から面積判定した結果の論理和、すなわち第一の総面積又は第二の総面積が総面積閾値を超えると、その被検査物Wにシール不良ありと判定し、シール不良を示す選別信号を外部出力する。これに対し、第一の総面積及び第二の総面積が総面積閾値を超えなければ、その被検査物Wにシール不良なしと判定し、シール正常を示す選別信号を外部出力する。なお、所定の大きさ以上の小塊の抽出は、ノイズ除去を目的とするものであり、必要に応じて適宜実施すればよく、他の方法でノイズ除去する場合は省略できる。
【0047】
表示部7は、噛み込み検査領域Eの領域E1,E2ごとの設定値(総面積閾値)、判別手段6gの判別結果に基づく噛み込み検査領域Eの領域E1,E2ごとの噛み込み状態や非検査領域E0を含む被検査物Wの平面透過画像、「OK」や「NG」の良否判定結果、総検査数、良品数、NG総数などを操作手段6aのキー操作により選択的に組み合わせて表示する。
【0048】
図3は表示部7の表示画面上に表示される表示内容の一例を示している。
図3の表示画面の右側の領域には、設定内容として、噛み込み検査領域Eの領域E1,E2、面積閾値をパラメータとしたときの値が表示される。
図3の例では、噛み込み検査領域Eの領域E1に関して、面積閾値「2」が設定内容として表示されている。また、噛み込み検査領域Eの領域E2に関しては、面積閾値「200」が設定内容として表示されている。
【0049】
また、
図3の表示画面の左側の領域には、噛み込み検査領域Eの各領域E1,E2を含む被検査物Wの透過画像と各領域E1,E2の検査結果が表示される。
図3の例では、被検査物Wの透過画像において、噛み込み検査領域Eの領域E1に1つの噛み込みw1が表示され、領域E2に2つの噛み込みw2,w3が表示されている。また、検査結果として、噛み込み検査領域Eの領域E1の噛み込みw1の面積(総面積)が「3」と表示され、領域E2の噛み込みw2,w3の面積の総面積が「123」と表示されている。
【0050】
図3において、噛み込み検査領域Eの領域E1は、噛み込みw1の面積(総面積)「3」が総面積閾値「2」よりも大きいので、シール不良ありと判定される。これに対し、噛み込み検査領域Eの領域E2は、噛み込みw2,w3の面積の総面積「123」が総面積閾値「200」よりも小さいので、シール不良なしと判定される。
【0051】
次に、上記構成による物品検査装置1を用いて被検査物Wにおけるシール部領域Wdのシール不良の有無を検査する場合の動作について説明する。
【0052】
検査対象の被検査物Wが搬送部2にて導入搬送されると、この被検査物Wに対してX線発生器4aからX線を照射する。X線検出器4bは、被検査物Wに対してX線が照射されると、被検査物Wを透過したX線を検出し、被検査物Wを透過したX線の強さに対応したレベルを有する電気信号を信号処理部6に出力する。
【0053】
信号処理部6は、X線検出器4bから電気信号が入力されると、この電気信号に基づいて被検査物Wの透過画像を取得し、各被検査物W毎のX線透過データを記憶手段6cに格納する。
【0054】
次に、信号処理部6の画像抽出手段6dは、記憶手段6cに格納されたX線透過データから全体の濃淡画像を作成し、この作成した全体の濃淡画像から内容物の濃淡画像を抽出する。
【0055】
また、信号処理部6の外形領域抽出手段6eは、記憶手段6cに格納されたX線透過データによる全体画像を元に被検査物Wの輪郭から内側の面積を示す外形領域を抽出する。
【0056】
そして、信号処理部6の検査領域算出手段6fは、外形領域抽出手段6eが抽出した外形領域から設定情報(噛み込み検査領域Eの各領域E1,E2の寸法a,b)を元に噛み込み検査領域Eの各領域E1,E2を算出する。
【0057】
次に、信号処理部6の判別手段6gは、検査領域算出手段6fが算出した噛み込み検査領域Eの領域E1,E2ごとに小塊の透過画像の総面積を算出する。
【0058】
そして、算出した噛み込み検査領域Eの領域E1の面積閾値を超える小塊の透過画像の総面積(第一の総面積)と領域E2の面積閾値を超える小塊の透過画像の総面積(第二の総面積)とが総面積閾値を超えるか否かを判定した結果の論理和により噛み込みの有無を判別する。
【0059】
その結果、第一の総面積と第二の総面積の少なくとも一方が総面積閾値を超えると、その被検査物Wにシール不良ありと判定し、シール不良を示す選別信号を外部出力する。これに対し、第一の総面積と第二の総面積の両方が総面積閾値を超えなければ、その被検査物Wにシール不良なしと判定し、シール正常を示す選別信号を外部出力する。
【0060】
次に、上述した物品検査装置1を用いた場合の噛み込み検査領域Eを複数(領域E1,E2)に分けることの有効性について説明する。
【0061】
図4(a)は噛み込み検査領域Eの2つの領域E1,E2に跨がって内容物Wcが噛み込んだ状態の一例を示し、
図4(b)は
図4(a)と略同一面積の内容物が噛み込み検査領域に噛み込んだ状態の一例を示している。
【0062】
図4(a)に示す被検査物Wの透過画像の場合には、噛み込みw4が噛み込み検査領域Eの領域E2から領域E1に及んでいるため、領域E1でのシビアな検出感度によりシール不良ありと判定される。
【0063】
これに対し、
図4(b)に示す被検査物Wの透過画像の場合には、噛み込みw5が
図4(a)の噛み込みw4と面積自体は同程度であるが、領域E1に及ばす領域E2内に存在するため、領域E2での緩い検出感度によりシール不良なしと判定される。
【0064】
なお、噛み込み検査領域Eを複数の領域E1,E2に分けずに1つの領域において噛み込みの面積のみからシール不良の有無を判定した場合には、
図4(a),(b)何れの被検査物Wの透過画像においても噛み込みの面積が同程度であるため、シール不良ありと判定してしまうことになる。
【0065】
次に、上述した物品検査装置1において面積値を用いてシール不良の有無を判別することの有効性について説明する。
【0066】
図5(a)は透過率が低く面積が小さい1つの内容物w6と透過率が高く面積が大きい複数(図では2つ)の内容物w7,w8が噛み込み検査領域に噛み込んだ状態の一例を示し、
図5(b)は透過率が低く面積が小さい1つの内容物w6が噛み込み検査領域に噛み込んだ状態の一例を示し、
図5(c)は透過率が高く面積が大きい1つの内容物w9が噛み込み検査領域に噛み込んだ状態の一例を示している。
【0067】
図5(a)に示す被検査物Wの透過画像の場合、透過率が比較的低いわずかな(面積の小さい)1つの噛み込みw6と透過率が比較的高い2つの噛み込みw7,w8が混在して存在し、見た目に噛み込みが目立つ状態である。この場合、透過率が比較的低く噛み込みw6の面積が小さく目立たないが、全体として噛み込みが目立つと判断し、噛み込みw6,w7,w8の総面積を用いることによりシール不良ありと判定される。
【0068】
図5(b)に示す被検査物Wの透過画像の場合、透過率が比較的低いわずかな(面積の小さい)1つの噛み込みw6が領域E2に存在する状態である。この場合、透過率が比較的低くても噛み込みw6の面積が小さいために目立たないと判断し、シール不良なしと判定される。
【0069】
図5(c)に示す被検査物Wの透過画像の場合、透過率が比較的高い(面積の大きい)1つの噛み込みw9が領域E2に存在する状態である。この場合、透過率が比較的高くても噛み込みw9の面積が大きく目立つと判断し、噛み込みw9の総面積を用いることによりシール不良ありと判定される。
【0070】
なお、透過率(透過画像の輝度・濃度)だけで判定しようとすると、
図5(b)の透過率が比較的低い噛み込みw6がある被測定物Wをシール不良なしと判定とした場合、
図5(a)の透過率が比較的高い噛み込みw7,w8がある被測定物Wもシール不良なしと判定してしまう。本実施の形態の物品検査装置1では、透過率に加え、面積(総面積)で判定することで、見た目に目立つもの(それに近い感覚のもの)はシール不良ありとして判定することができる。
【0071】
このように、本実施の形態の物品検査装置は、噛み込みを検査するための複数の噛み込み検査領域E(領域E1、領域E2)が包装材Waの端縁部から内側に向かってシール部領域Wdに設定されるとともに、噛み込み検査領域Eの領域E1,E2ごとに異なる面積閾値が設定され、面積閾値を超える透過画像から噛み込みの有無を判別する。すなわち、所定の濃淡レベル範囲の透過画像の総面積を噛み込み検査領域Eの領域E1,E2ごとに算出し、この算出した噛み込み検査領域Eの領域E1,E2ごとの総面積に対して面積閾値を用いた面積判定の判定結果の論理和により噛み込みの有無を判別する。これにより、被検査物のシール強度を確保して内容物の気密性を保持しつつ、歩留りも考慮して被検査物のシール不良の検査を行うことができる。
【0072】
また、本実施の形態の物品検査装置において、包装材Waと噛み込み検査領域Eとの間には、噛み込みの検査を行わない所定寸法cの非検査領域E0が包装材Waの内側に向かって設定される。これにより、雑音になりやすい透過画像の端部を検査から除外し、雑音の影響による誤検出を低減することができる。
【0073】
さらに、本実施の形態の物品検査装置は、透過画像から包装材Wa内の内容物Wcの境界を算出し、算出した境界に基づく仮想直線を基準とし、この仮想直線から包装材Waの対向する端縁部に向かって所定幅の領域を内容物Wcに一番近い噛み込み検査領域E(領域B)として設定する。これにより、噛み込み検査領域Eの領域の一部を計算により自動的に算出して設定でき、設定の手間を省くことができる。
【0074】
また、本実施の形態の物品検査装置において、表示部7には、噛み込み検査領域Eの領域E1,E2ごとの設定値、噛み込み検査領域Eの領域E1,E2ごとの噛み込み状態を含む被検査物Wの平面画像を表示している。これにより、ユーザは、表示部7の表示内容から現在の設定状態や被検査物Wにおけるシール部領域Wdの状態(内容物Wcや異物の噛み込みの有無)を目視により確認することができる。
【0075】
ところで、上述した実施の形態では、被検査物Wに照射される電磁波としてX線を例にとって説明したが、これに限定されるものではない。例えば被検査物Wの包装材が透光性を有するものであれば、近赤外線や可視光線を被検査物Wに照射し、被検査物Wを透過した光を検出する構成としてもよい。この場合、検出部4は、近赤外線や可視光線を被検査物Wに照射する光源と、近赤外線や可視光線の照射に伴って被検査物Wを透過した光を検出して透過量に応じた電気信号を出力する受光器から構成される。これにより、被検査物Wを通過した光の透過量に応じた電気信号を信号処理部6に出力し、信号処理部6が上述した構成及び手法によって被検査物Wのシール不良の有無を判別する。
【0076】
以上、本発明に係る物品検査装置の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。