(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッド2を備える記録装置1の概略を示す側面図である。
図1(b)は、記録装置1の概略を示す平面図である。なお、
図5の二次供給流路20および二次回収流路24の延びる方向を第1方向と称し、
図4の一次供給流路22および一次回収流路26の延びる方向を第2方向と称し、第2方向に直交する方向を第3方向と称する。
【0010】
記録装置1は、記録媒体である印刷用紙Pを搬送ローラ80aから搬送ローラ80bへと搬送することにより、印刷用紙Pを液体吐出ヘッド2に対して搬送方向に相対的に移動させている。制御部88は、画像や文字のデータに基づいて、液体吐出ヘッド2を制御して、液体吐出ヘッド2から記録媒体Pに向けて液体を吐出させ、印刷用紙Pに液滴を着弾させて、印刷用紙Pに印刷などの記録を行なう。具体的には、制御部88は、液体吐出ヘッド2に搭載されたドライバIC93(
図2参照)の駆動を制御している。
【0011】
本実施形態では、液体吐出ヘッド2は記録装置1に対して固定されており、記録装置1はいわゆるライン記録装置となっている。本発明の記録装置の他の実施形態としては、いわゆるシリアル記録装置があげられる。
【0012】
記録装置1には、印刷用紙Pとほぼ平行するように平板状のフレーム70が固定されている。フレーム70には図示しない20個の孔が設けられており、20個の液体吐出ヘッド2がそれぞれの孔に搭載されている。液体吐出ヘッド2の液体を吐出する部位は、印刷用紙Pに面するようになっている。液体吐出ヘッド2と印刷用紙Pとの間の距離は、例えば0.5〜20mm程度とされる。5つの液体吐出ヘッド2は、1つのヘッド群72を構成しており、記録装置1は、4つのヘッド群72を有している。
【0013】
液体吐出ヘッド2は、第2方向に細長い長尺形状を有している。1つのヘッド群72内において、3つの液体吐出ヘッド2は、第2方向に沿って並んでおり、他の2つの液体吐出ヘッド2は、3つの液体吐出ヘッド2と第2方向にずれた位置で、3つの液体吐出ヘッド2の間にそれぞれ一つずつ並んでいる。
【0014】
液体吐出ヘッド2は、各液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲が、液体吐出ヘッド2の長手方向に繋がるように、あるいは端が重複するように配置されており、印刷用紙Pの幅方向に隙間なく印刷することが可能になっている。
【0015】
4つのヘッド群72は、搬送方向に沿って配置されている。各液体吐出ヘッド2には、図示しない液体タンクから液体(インク)が供給される。1つのヘッド群72に属する液体吐出ヘッド2には、同じ色のインクが供給されるようになっており、4つのヘッド群72で4色のインクが印刷できる。各ヘッド群72から吐出されるインクの色は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。このようなインクを、制御部88で制御して印刷すれば、カラー画像が印刷できる。
【0016】
記録装置1に搭載される液体吐出ヘッド2の個数は、単色で、1つの液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲を印刷するのなら1つでもよい。ヘッド群72に含まれる液体吐出ヘッド2の個数、あるいはヘッド群72の個数は、印刷する対象や印刷条件により適宜変更できる。例えば、さらに多色の印刷をするためにヘッド群72の個数を増やしてもよい。また、同色で印刷するヘッド群72を複数配置して、搬送方向に交互に印刷することで、印刷速度(搬送速度)を速くすることができる。また、同色で印刷するヘッド群72を複数準備して、第2方向にずらして配置して、印刷用紙Pの幅方向の解像度を高くしてもよい。
【0017】
さらに、色の付いたインクを印刷する以外に、印刷用紙Pの表面処理をするために、コーティング剤などの液体を印刷してもよい。
【0018】
記録装置1は、印刷用紙Pに印刷を行なう。印刷用紙Pは、給紙ローラ80aに巻き取られた状態になっており、2つのガイドローラ82aの間を通った後、フレーム70に搭載されている液体吐出ヘッド2の下側を通り、その後2つの搬送ローラ82bの間を通り、最終的に回収ローラ80bに回収される。印刷する際には、搬送ローラ82bを回転させることで印刷用紙Pは、一定速度で搬送され、液体吐出ヘッド2によって印刷される。回収ローラ80bは、搬送ローラ82bから送り出された印刷用紙Pを巻き取る。搬送速度は、例えば、75m/分とされる。各ローラは、制御部88によって制御されてもよいし、人によって手動で操作されてもよい。
【0019】
記録媒体は、印刷用紙P以外に、布、あるいはタイル等の建築材料でもよい。また、記録装置1を、印刷用紙Pの代わりに搬送ベルトを搬送する形態にし、記録媒体は、ロール状のもの以外に、搬送ベルト上に置かれた、枚葉紙や裁断された布、木材、タイルなどにしてもよい。さらに、液体吐出ヘッド2から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。またさらに、液体吐出ヘッド2から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤や化学薬剤を含んだ液体を吐出させて、反応させるなどして、化学薬品を作製してもよい。
【0020】
また、記録装置1に、位置センサ、速度センサ、温度センサなどを取り付け、制御部88が、各センサからの情報から分かる記録装置1の各部の状態に応じて、記録装置1の各部を制御してもよい。特に、液体吐出ヘッド2から吐出される液体の吐出特性(吐出量や吐出速度など)が外部の影響を受けるようであれば、液体吐出ヘッド2の温度や液体タンクの液体の温度、液体タンクの液体が液体吐出ヘッド2に加えている圧力に応じて、液体吐出ヘッド2において液体を吐出させる駆動信号を変えるようにしてもよい。
【0021】
次に、本発明の一実施形態の液体吐出ヘッド2について
図2〜6を用いて説明する。なお、
図2においては、配線基板94を支える支持板、および第2部材96を省略して示している。
【0022】
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aと、一次流路部材6と、信号伝達部材92と、配線基板94と、押圧部材97と、筺体91と、断熱部91eと、放熱板90とを備えている。なお、一次流路部材6と、信号伝達部材92と、配線基板94と、押圧部材97は必ずしも設けなくてもよい。ヘッド本体2aは、二次流路部材4と、二次流路部材4上に設けられたアクチュエータ基板40とを有している。
【0023】
ヘッド本体2aの二次流路部材4上には一次流路部材6が配置されており、一次流路部材6がヘッド本体2aに液体を供給している。一次流路部材6は、主走査方向の両端部に開口6bが設けられており、外部から液体が開口6bに供給され、一次流路部材6に液体が供給されている。一次流路部材6は、内部に一次供給流路22(
図4参照)および一次回収流路26(
図4参照)が設けられており、一次供給流路22および一次回収流路26を介して、二次流路部材4に液体が供給されている。
【0024】
ヘッド本体2aの上方には配線基板94が配置されており、ヘッド本体2aから引き出された信号伝達部材92が配線基板94に電気的に接続されている。筺体91は信号伝達部材92および配線基板94を覆うように配置されており、放熱板90が配置されている。
【0025】
ヘッド本体2aは、液体を吐出するための吐出孔8(
図5参照)を有している。また、ヘッド本体2aは、一次流路部材6と二次流路部材4とアクチュエータ基板40とを備えている。ヘッド本体2aは第2方向に長く設けられており、二次流路部材4上にアクチュエータ基板40が設けられている。アクチュエータ基板40を取り囲むように一次流路部材6が配置されており、信号伝達部材92が開口6aから上方へ引き出されている。
【0026】
筺体91は、ヘッド本体2a上に配置されている。筐体91は、第2方向に長く設けられており、第1開口91aと、第2開口91bと、第3開口91cと、第4開口91dとを備えている。筐体91は、第3方向に対向する側面に、第1開口91aおよび第2開口91bを有している。また、筐体91は、下面に第3開口91cを有している。また、筐体91は、上面に第4開口91dを有している。
【0027】
断熱部91eは、第1開口91aおよび第2開口91bに隣り合うように配置されており、断熱部91e上に放熱板90が配置されている。断熱部91eは、筺体90と一体的に形成されており、第3方向に対向する筺体90の側面から外側へ向けて突出するように設けられている。断熱部91eは、第2方向に延びるように形成されている。そのため、放熱板90は、断熱部91eおよび一次流路部材6を介してヘッド本体2a上に設けられている。
【0028】
筺体91は、上方から信号伝達部材92および配線基板94を覆うようにヘッド本体2a上に載置されることにより、信号伝達部材92および配線基板94を封止している。筐体91は、信号伝達部材92、ドライバIC93および配線基板94を覆うように配置されている。筺体91は、樹脂あるいは金属により形成することができる。
【0029】
第1開口91aには第1放熱板90aが第1開口91aを塞ぐように配置されており、第1放熱板90aは断熱部91e上に配置されている。第2開口91bには第2放熱板90bが第2開口91bを塞ぐように配置されており、第2放熱板90bは断熱部91e上に配置されている。放熱板90は、樹脂等の接着剤、あるいは螺子等により筐体91に固定されている。そのため、放熱板90が固定された筐体91は、第3開口91cが開口した箱形状をなしている。
【0030】
第3開口91cは、下面に設けられており、一次流路部材6と対向するように設けられている。第3開口91cは、信号伝達部材92、配線基板94、および押圧部材97が挿通され、信号伝達部材92、配線基板94、および押圧部材97を筐体91内に配置している。
【0031】
第4開口91dは、上面に設けられており、配線基板94に設けられたコネクタ(不図示)を挿通するために設けられている。コネクタと第4開口91dとの間は、樹脂等により封止されることが好ましい。それにより、筐体91の内部に液体、あるいはゴミが侵入することを抑制することができる。
【0032】
放熱板90は、第1放熱板90aと第2放熱板90bとを備えている。放熱板90は、第2方向に長く設けられており、放熱性の高い金属あるいは合金により形成されている。放熱板90は、ドライバIC93が接するように設けられており、ドライバIC93に生じた熱を放熱する機能を有している。
【0033】
信号伝達部材92は、第1放熱板90a側に設けられた第1信号伝達部材92aと、第2放熱板90b側に設けられた第2信号伝達部材92bとを備えている。信号伝達部材92は、外部から送られた信号をヘッド本体2aに伝達している。
【0034】
信号伝達部材92の一端部は、アクチュエータ基板40と電気的に接続されている。信号伝達部材92の他端部は、一次流路部材6の開口6aを挿通するように上方に引き出されており、配線基板94に電気的に接続されている。それにより、アクチュエータ基板40と外部とが電気的に接続されている。信号伝達部材92としては、FPC(Flexible Printed Circuit)を例示することができる。
【0035】
信号伝達部材92上にはドライバIC93が設けられている。ドライバIC93は、第1信号伝達部材92a上に設けられた第1ドライバIC93aと、第2信号伝達部材92b上に設けられた第2ドライバIC93bとを備えている。ドライバIC93は、制御部88(
図1参照)から送られた信号に基づいて、アクチュエータ基板40を駆動させ、液体吐出ヘッド2を駆動させている。
【0036】
配線基板94は、支持板によりヘッド本体2aの上方に配置されている。配線基板94は、ドライバIC93に信号を分配する機能を有している。
【0037】
押圧部材97は、第1部材95と第2部材96(
図3(b)参照)とを備えている。押圧部材97は、弾性部材98および信号伝達部材92を介して放熱板90にドライバIC93を押圧している。それにより、ドライバIC93が駆動により生じた熱を放熱板90へ効率よく放熱することができる。
【0038】
第1部材95は、第1押圧部95a1と、第2押圧部95b1と、接続部95a2,95b2と、第1傾斜部95a3と、第2傾斜部95b3とを備えている。
【0039】
第1押圧部95a1は、第1ドライバIC93aに対向して設けられている。第2押圧部95b1は、第2ドライバIC93bに対向して設けられている。接続部95a2,95b2は、一次流路部材6上に設けられている。第1傾斜部95a3は、第1押圧部95aと接続部95a2,95b2との間の少なくとも一部に設けられ、かつ内側へ傾斜するように設けられている。第2傾斜部95b3は、第2押圧部95aと接続部95a2,95b2との間の少なくとも一部に設けられ、かつ内側へ傾斜するように設けられている。
【0040】
第1部材95は、断面視して、上側が開口したUの字形状に設けられており、第1放熱板90a側に第1押圧部95a1が設けられ、第2放熱板90b側に第2押圧部95b1が設けられている。そして、第1押圧部95a1が第1ドライバIC93aを第1放熱板90aに押圧し、第2押圧部95b1が第2ドライバIC93bを第2放熱板90bに押圧している。
【0041】
押圧部95a1,95b1は、ドライバIC93と対向するように設けられており、上下方向に延びるように設けられている。なお、押圧部95a1,95b1は、第1部材95のうち、ドライバIC93に対向するように設けられている領域を示している。
【0042】
接続部95a2,95b2は、一次流路部材6上に設けられており、螺子等により、一次流路部材6に固定されている。
【0043】
傾斜部95a3,95b3は、押圧部95a1,95b1と接続部95a2,95b2とを接続するように設けられており、押圧部95a1,95b1と接続部95a2,95b2との間のうち少なくとも一部が上下方向および水平方向に対して傾斜して設けられている。
【0044】
第1部材95は、第1押圧部95a1と、第2押圧部95b1と、接続部95a2,95b2と、第1傾斜部95a3と、第2傾斜部95a3とが一体的に設けられている。そして、接続部95a2,95b2が一次流路部材6に接続されている。そのため、第1傾斜部95a3および第2傾斜部95b3を第2部材96を介して、ヘッド本体2aに向けて押圧することにより、第1押圧部95a1が第1ドライバIC93aを第1放熱板90aに押圧するとともに、第2押圧部95b1が第2ドライバIC93bを第2放熱板90bに押圧することができる。
【0045】
第1部材95は、弾性変形可能に構成されていることが好ましく、例えば、金属、合金、または樹脂により形成することができる。放熱性を向上させるためにアルマイト処理を行っていてもよい。
【0046】
第2部材96は、平面視して矩形状をなしており、第1部材95の第1傾斜部95a3と、第2傾斜部95b3とにまたがって設けられている。すなわち、第2部材96の長辺が傾斜部95a3,95b3上に設けられており、第2部材96をヘッド本体2a側に押圧することにより、傾斜部95a3,95b3をヘッド本体2a側に押圧することができる。
【0047】
第2部材96は、第1部材95を弾性変形するために第1部材95よりも高い剛性を有していることが好ましい。第2部材96は、例えば、金属、合金、あるいは樹脂材料により形成することができる。
【0048】
弾性部材98は、押圧部95a1,95b1上に設けられており、信号伝達部材92と押圧部95a1,95b1との間に配置されている。弾性部材98を設けることにより、押圧部95a1,95b1が信号伝達部材92を破損させる可能性を低減することができる。弾性部材98としては、例えば、発泡体両面テープを例示することができる。なお、弾性部材98は必ずしも設ける必要はない。
【0049】
次に、液体吐出ヘッド2の製造方法について説明する。
【0050】
二次流路部材4にアクチュエータ基板40を接合し、ドライバIC93が搭載された信号伝達部材92の一端部が、アクチュエータ基板40に電気的に接続する。そして、信号伝達部材92の他端部を一次流路部材6の開口6aを挿通した状態で、一次流路部材6と二次流路部材4とを接合する。ヘッド本体2aおよび一次流路部材6を作製する。
【0051】
次いで、一次流路部材6上に押圧部材97の第1部材95を接合する。第1部材95の接続部95a2,95b2をヘッド本体2aの幅方向における中央部に載置し、接続部95a2,95b2をヘッド本体2aに螺子止めする。続いて、第2部材96を第1押圧部95a1と第2押圧部95b1の間に位置するように第1部材95上に載置する。このとき、第2部材96は、ヘッド本体2a側に向けて変位可能な状態で載置されている。
【0052】
次いで、支持部(不図示)上に配線基板94を載置し、信号伝達部材92の他端部を配線基板94に設けられたコネクタ(不図示)に嵌合させる。
【0053】
次いで、上方からヘッド本体2a上に筐体91を載置する。その際に、筐体91の下面に設けられた第3開口91cに、信号伝達部材92および配線基板94が配置されるように筐体91をヘッド本体2a上に載置する。それにより、ドライバIC93を筐体91に収容することができる。この時、第2部材96は、第1部材95の傾斜部95a3,95b3を押圧していないため、押圧部95a1,95b1が側方へ向けて突出しない構成となっている。それゆえ、筐体91の枠体91aとドライバIC93とが接触しにくい構成となり、ドライバIC93に破損が生じる可能性を低減することができる。
【0054】
次いで、筐体91の第1開口91aおよび第2開口91bを介して第2部材96をヘッド本体2a側へ押圧する。それにより、第1部材95に変形が生じて、押圧部95a1,95b1が側方へ向けて変形する。それにより、押圧部材97が、押圧部95a1,95b1が側方へ突出した状態で固定されることとなる。
【0055】
次いで、筐体91の第1開口91aおよび第2開口91bに対向するように放熱板90を配置し、断熱部91e上に放熱板90を配置する。そして、放熱板90を筐体91に螺子止めして、放熱板90を筐体91に固定する。それにより、ドライバIC93は、放熱板90により中央に向けて押圧され、放熱板90と接触しながら中央に向けて変位することとなる。その結果、ドライバIC93は、押圧部材97によって放熱板90に向けて押圧されることとなる。
【0056】
このように、ドライバIC93を筐体91に収容してから、第2部材96をヘッド本体2a側へ押圧することにより、押圧部95a1,95b1を放熱板90側へ押圧することができる。その結果、液体吐出ヘッド2の組み立て時に、筐体91とドライバIC93とが接触して、ドライバIC93に破損が生じる可能性を低減することができる。
【0057】
すなわち、筐体91を搭載する際には押圧部95a1,95b1が側方へ突出しておらず、筐体91の搭載後に筐体91の側面の第1開口91aおよび第2開口91bを介して第2部材96をヘッド本体2a側に押圧することにより、押圧部95a1,95b1を側方へ突出させることができる。その結果、ドライバIC93と枠体91aとが接触する可能性を低減しつつ、押圧部材97によりドライバIC93が放熱板90に押圧される構造となり、ドライバIC93の放熱性を向上させることができる。
【0058】
ここで、ドライバIC93は、液体吐出ヘッド2を駆動させることにより発熱する。筐体91を樹脂により形成した場合、筐体91の放熱性が低く、ドライバIC93の熱を放熱するために、ドライバIC93に接するように放熱板90が設けられている。
【0059】
ドライバIC93から放熱板90に伝わった熱は、放熱板90により外部に放熱される一方で、ヘッド本体2aの二次流路部材4の吐出孔8(
図5参照)に向けて熱が伝わるおそれがある。吐出する際の液体の温度は、液体の粘度等に影響するため、30〜60℃程度の低温である必要があり、放熱板90の熱が吐出孔8へ伝わる熱量を抑える必要がある。
【0060】
液体吐出ヘッド2は、放熱板90とヘッド本体2aとの間に、断熱部91eが配置される構成を有している。そのため、ドライバIC93から放熱板90に伝わった熱は、断熱部91eにより断熱され、ヘッド本体2aに伝熱する可能性を低減することができる。それにより、ヘッド本体2aの二次流路部材4の吐出孔8に伝熱する可能性を低減することができ、吐出孔8付近の温度が上昇する可能性を低減することができる。
【0061】
また、液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2a上に設けられた、ヘッド本体2aに液体を供給する液体供給部材である一次流路部材6を備えており、一次流路部材6が、断熱部91eと放熱板90との間に配置されている。そのため、ヘッド本体2aと放熱板90との間に位置する一次流路部材6が、断熱部材として機能し、ドライバIC93から放熱板90に伝わった熱がヘッド本体2aに伝熱する可能性をさらに低減することができる。
【0062】
また、液体吐出ヘッド2は、断熱部91eの熱伝導率が、一次流路部材6の熱伝導率よりも低くなっている。そのため、放熱板90の熱は、熱伝導率の低い断熱部91eにより断熱されることとなり、効率よく放熱板90とヘッド本体2aとを断熱することができる。
【0063】
さらに、断熱部91eが、筺体91と一体的に形成されており、筺体91の熱伝導率が、一次流路部材6の熱伝導率よりも低いことが好ましい。それにより、断熱部91eを別途作成することなく、筺体91と一体的に形成することができ、部材点数を少なくすることができる。
【0064】
筐体91を樹脂で形成した場合、筐体91の熱伝導率は、例えば0.3〜0.8(W/m℃)とすることができる。一次流路部材6を樹脂で形成した場合、一次流路部材6の熱伝導率は、例えば0.5〜1.0(W/m℃)とすることができる。
【0065】
また、液体吐出ヘッド2は、断熱部91eの線膨張率が、一次流路部材6の線膨張率よりも大きくなっている。そのため、放熱板90が熱膨張した場合においても、断熱部91eと放熱板90との間に隙間が生じる可能性を低減することができる。そのため、液体吐出ヘッド2の封止性を保持することができる。
【0066】
さらに、断熱部91eが、筺体91と一体的に形成されており、筺体91の線膨張率が、一次流路部材6の線膨張率よりも大きいことが好ましい。それにより、筺体91の封止性を向上させることができる。
【0067】
筐体91を樹脂で形成した場合、筐体91の線膨張率は、例えば1.5〜2.7×10
−5とすることができる。一次流路部材6を樹脂で形成した場合、一次流路部材6の線膨張率は、例えば0.8〜1.2×10
−5とすることができる。放熱板90をアルマイト処理したアルミニウムで形成した場合、放熱板90の線膨張率は、例えば2.2〜2.4×10
−5となり、放熱板90の線膨張率と、筐体91の線膨張率とを近づけることができ、筐体91の封止性を保持することができる。
【0068】
また、
図3(b)に示すように、一次流路部材6は、ヘッド本体2aに液体を供給する一次供給流路22およびヘッド本体2aから液体を回収する一次回収流路26を有しており、一次供給流路22および一次回収流路26が、断熱部91eとヘッド本体2aとの間に配置されている。それにより、一次供給流路22および一次回収流路26を流れる液体が、断熱部材として機能し、放熱板90に伝わった熱が、ヘッド本体2aに伝熱する可能性をさらに低減することができる。
【0069】
なお、放熱板90とヘッド本体2aとの間に、一次流路部材6の一次供給流路22のみ配置してもよい。その場合、一次供給流路22を流れる液体を、予備加熱することができる。
【0070】
次に、
図4〜6を用いてヘッド本体2aを構成する各部材および一次流路部材6について説明する。
【0071】
図2に示すように、ヘッド本体2aは、二次流路部材4と、アクチュエータ基板40とを備えている。二次流路部材4の吐出領域32にはアクチュエータ基板40が設けられており、アクチュエータ基板40には信号伝達部材92が電気的に接続されている。
【0072】
一次流路部材6は、第2方向に沿って延びるように形成されており、内部に一次供給流路22および一次回収流路26が設けられている。一次供給流路22および一次回収流路26は第2方向に延びるように設けられている。
【0073】
一次流路部材6は、第2方向に沿って延びる開口6aと、第2方向の両端部に設けられた開口6bとを備えている。開口6aからは信号伝達部材92が上方に向けて引き出されている。一次流路部材6は、開口や溝が形成されたプレートを積層して形成することができ、プレートは金属、合金、あるいは樹脂により形成することができる。なお、樹脂により一体的に形成してもよい。
【0074】
一次供給流路22は、第2方向における一方の開口6bと、二次流路部材4の第1開口20aと連通部(不図示)を介して連通しており、二次流路部材4に外部から液体を供給している。一次回収流路26は、第2方向における他方の開口6bと連通部(不図示)を介して、二次流路部材4の第2開口24aと連通しており、二次流路部材4から液体を回収している。
【0075】
二次流路部材4は、詳細は後述するが、吐出素子30を備えており、液体を吐出するための流路が形成されている。二次流路部材4の表面には第1開口20aと、第2開口24aとが形成されており、第1開口20aおよび第2開口24aが設けられていない領域に、吐出領域32が形成されている。
【0076】
吐出領域32には、アクチュエータ基板40が配置されており、接着剤などにより二次流路部材4と接合されている。アクチュエータ基板40の表面には接続電極46が設けられており、接続電極46が信号伝達部材92と電気的に接続されている。接続電極46は、Ag,Pd,Auなどの金属または合金により形成された半田バンプ、あるいは樹脂バンプにより信号伝達部材92に電気的に接続されている。
【0077】
図5,6を用いて、二次流路部材4およびアクチュエータ基板40について説明する。なお、
図5,6(a)においては、わかりやすくするために破線で示すべき線も実線にて示している。
【0078】
二次流路部材4は、二次流路部材本体4aとノズルプレート4bとを備えており、加圧室面4−1と吐出孔面4−2とが形成されている。加圧室面4−1上にアクチュエータ基板40が配置されており、互いに接合されている。二次流路部材本体4aは、開口や溝が形成されたプレートを積層して形成することができ、プレートは金属、合金、あるいは樹脂により形成することができる。なお、二次流路部材4を樹脂により一体的に形成してもよい。
【0079】
二次流路部材4は、二次供給流路20と、第1開口20aと、二次回収流路24と、第2開口24aと、吐出素子30と、を備えている。二次供給流路20および二次回収流路24は、第1方向に沿って設けられており、第2方向に交互に配置されている。
【0080】
吐出素子30は、二次流路部材4の吐出領域32に、第1方向および第2方向に沿うようにマトリクス状に配置されている。
【0081】
吐出素子30は、加圧室10と、個別供給流路12と、吐出孔8と、個別回収流路14とを備えている。加圧室10は加圧室本体10aと部分流路10bとを備えている。加圧室本体10aと、部分流路10bと、個別供給流路12と、吐出孔8と、個別回収流路14とは、それぞれ連通しており、流体接続されている。
【0082】
加圧室10は、加圧室本体10aと、部分流路10bとを備えている。加圧室本体10aは、加圧室面4−1に面して配置されており、変位素子50からの圧力を受けている。加圧室本体10aは、直円柱形状であり、平面形状は円形状である。平面形状が円形状であることにより変位素子50が同じ力で変形させた場合の変位量、および変位により生じる加圧室10の体積変化を大きくできる。
【0083】
部分流路10bは、加圧室本体10aの下から吐出孔面4−2に開口している吐出孔8に繋がる中空の領域である。部分流路10bは、直径が加圧室本体10aより小さい直円柱形状であり、平面形状は円形状である。また、部分流路10bは、加圧室面4−1から見たときに、加圧室本体10a内に収容されるように配置されている。
【0084】
複数ある加圧室10は、第1方向に沿った複数の加圧室列11Aを構成しているとともに、第2方向に沿った複数の加圧室行11Bを構成している。各吐出孔8は、対応する加圧室本体10aの中心に位置している。複数ある吐出孔8も、加圧室10と同様に、第1方向に沿った複数の吐出孔列9Aを構成しているとともに、第2方向に沿った複数の吐出孔行9Bを構成している。第1方向は第2方向に対して傾斜しており、第1方向と第2方向のなす角は45〜90°であることが好ましい。
【0085】
図5において、吐出孔8を第2方向と直交する方向に投影すると、仮想直線Rの範囲に32個の吐出孔8が投影され、仮想直線R内で各吐出孔8は360dpiの間隔に並ぶ。これにより、仮想直線Rに直交する方向に印刷用紙Pを搬送して印刷すれば、360dpiの解像度で印刷できる。
【0086】
二次流路部材4の上面には、変位素子50を含むアクチュエータ基板40が接合されており、各変位素子50が加圧室10上に位置するように配置されている。アクチュエータ基板40は、吐出素子30が配置された吐出領域32と略同一の形状の領域を占有している。また、各加圧室本体10aの開口は、流路部材4の加圧室面4−1にアクチュエータ基板40が接合されることで閉塞される。
【0087】
アクチュエータ基板40は、ヘッド本体2aと同じく第2方向に長い長方形状をなしている。また、詳細は後述するが、アクチュエータ基板40には、各変位素子50に信号を供給するための信号伝達部材92が接続されている。
【0088】
アクチュエータ基板40は、圧電セラミックス層40a,40bと、共通電極42と、個別電極44と、接続電極46とを有している。アクチュエータ基板40は、圧電セラミックス層40bと、共通電極42と、圧電セラミックス層40aと、個別電極44とが積層されて構成されており、圧電セラミックス層40aを介して共通電極42と個別電極44とが対向する領域が変位素子50として機能する。
【0089】
共通電極42は、圧電セラミックス層40a,40bの間に設けられており、圧電セラミックス層40a,40bの全域にわたって設けられている。個別電極44は、個別電極本体44aと引出電極44bとを有している。個別電極本体44aは加圧室10上に配置されており、加圧室10に対応して設けられている。引出電極44bは、個別電極本体44aから加圧室10より外側まで引き出されている。
【0090】
引出電極44b上の加圧室10と対向する領域外に引き出された部分には、接続電極46が形成されている。接続電極46は例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。また、接続電極46は、信号伝達部材92に設けられたバンプと電気的に接続されている。
【0091】
液体吐出ヘッド2における液体の流れについて説明する。外部より供給された液体は、一次流路部材6の開口6bから供給され一次供給流路22を流れる。一次供給流路22を流れる液体は、二次流路部材4の第1開口20aに供給される。そのため、一次供給流路22を流れる液体は、第1開口20aに向けて個別に分流されることとなる。
【0092】
第1開口20aに供給された液体は、第1方向に沿って二次供給流路24を流れる間に、各個別供給流路12に流れることとなる。そのため、二次供給流路24を流れる液体は、各吐出素子30に向けて個別に分流されることとなる。
【0093】
個別供給流路12に流れた液体は、加圧室本体10aに流れ込み、変位素子50により圧力を加えられ、部分流路12を下方に向けて流れることとなる。そして、部分流路12の先に液体が到達すると、吐出孔8から液体が吐出される。
【0094】
吐出孔8から吐出されなかった液体は、個別回収流路14を流れて二次回収流路24に回収される。二次回収流路24は第1方向に沿って流れる間に各個別回収流路14から液体を回収する。そして、第2開口24aを流れ出た液体は、一次流路部材6の一次回収流路26に回収されることとなる。そして、一次回収流路26を第2方向に沿って流れながら、各第2開口24aから液体が回収され、回収された液体は、開口6bから外部へ排出される。
【0095】
<第2の実施形態>
図7を用いて第2の実施形態に係る液体吐出ヘッド102について説明する。なお、同一の部材については同一の符号を付している。
【0096】
液体吐出ヘッド102は、伝熱部材99をさらに備えており、伝熱部材99と、放熱板90と、筐体91とは螺子101により螺子止めされている。
【0097】
筐体91は、第2方向における両端部に第1固定部91fおよび第2固定部91gを有している。第1固定部91fは、第1放熱板90aに隣り合うように設けられており、第2固定部91gは、第2放熱板90bに隣り合うように設けられている。
【0098】
伝熱部材99は、第1放熱板90aに隣り合う第1固定部91fと、第2放熱板90bに隣り合う第2固定部91gとの間に配置されている。伝熱部材99は、第1部位99aと、第2部位99bと、連結部99cとを有している。第1部位99aは、第1固定部91fに対向するように設けられている。第2部位99bは、第2固定部99gに対向するように設けられている。連結部99cは、第1部位99aと第2部位99bとを連結しており、一次流路部材6上に設けられている。
【0099】
図7(b)に示すように、放熱板90と、伝熱部材99と、筐体91とは、螺子101により螺子止めされている。具体的には、第1固定部91fおよび第2固定部91gは、放熱板90と伝熱部材99とにより挟持されている。それにより、第1放熱板90aと、第2放熱板90bとは、伝熱部材99により熱的に接続されている。
【0100】
すなわち、第1放熱板90aと、第1放熱板90aに対向する第1部位99aとが螺子101により熱的に接続され、第2放熱板90bと、第2放熱板90bに対向する第2部位99bとが螺子101により熱的に接続されている。そして、伝熱部材99は、第1部位99aおよび第2部位99bが、連結部99cにより熱的に接続されている。それにより、第1放熱板90aと、第2放熱板90bとが、伝熱部材99により熱的に接続されている。
【0101】
伝熱部材99は、金属、あるいは合金により形成することができ、例えば、SUSにより形成することができる。螺子101は、金属、あるいは合金により形成することができる。
【0102】
ここで、液体吐出ヘッド102は、印画する画像によって、ドライバIC93(
図3参照)の発熱量が異なる場合がある。すなわち、第1ドライバIC93aが、多くの液滴を吐出させるために、駆動信号をヘッド本体2aに供給し、第2ドライバIC93bが、ほとんど駆動信号をヘッド本体2aに供給しない状況を考えると、第1ドライバIC93aの発熱が、第2ドライバIC93bの発熱よりも多くなる場合がある。その場合、第1放熱板90aには多く熱が放熱され、第2放熱板90bにはほとんど放熱されない可能性がある。そのため、放熱板90に放熱される熱量が、第1放熱板90aと第2放熱板90bとで異なる場合がある。
【0103】
これに対して、液体吐出ヘッド102は、第1放熱板90aと第2放熱板90bとが、伝熱部材99により熱的に接続される構成を有している。そのため、第1放熱板90aの熱量が多い場合に、第1放熱板90aの熱が、伝熱部材99を通じて第2放熱板90bに伝熱することとなる。その結果、第1放熱板90aの熱を第2放熱板90bにより放熱することができ、放熱板90の放熱性を向上させることができる。
【0104】
また、伝熱部材99は、第1部位99aと、第2部位99bと、連結部99cとを有しており、筐体91が、第1固定部91fと第2固定部91gとを備えており、第1固定部91fが第1放熱板90aおよび第1部位99aに挟持されており、第2固定部91gが第2放熱板90bおよび第2部位99bに挟持されている。
【0105】
そのため、放熱板90と、筐体91と、伝熱部材99とを同時に接合することができる、そのため、少ない工程で液体吐出ヘッド102を作成することができ、液体吐出ヘッド102の製造コストを低減することができる。
【0106】
また、放熱板90と伝熱部材99とを螺子101により接合することにより、放熱板90と伝熱部材99とを熱的に接続することができる。特に、断熱部91eと筐体91とを一体的に形成した場合、第1固定部91fおよび第2固定部91gが断熱部として機能することとなるが、螺子101が、第1固定部91fおよび第2固定部91gを貫通しているため、放熱板90と伝熱部材99とを容易に熱的に接続することができる。
【0107】
さらに、筐体91を樹脂材料により形成し、放熱板90および伝熱部材99を金属材料により形成した場合、放熱板90と伝熱部材99とを螺子により接合することにより、放熱板90と伝熱部材99との接合を強固なものとすることができる。
【0108】
以上、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0109】
例えば、加圧部として、加圧室10を圧電アクチュエータの圧電変形によりを加圧する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、加圧室10ごとに発熱部を設け、発熱部の熱により加圧室10の内部の液体を加熱し、液体の熱膨張により加圧する加圧部としてもよい。
【0110】
また、一次供給流路22に外部から液体を供給し、一次回収流路26から液体を外部に回収する例を示したがこれに限定されるものではない。一次回収流路26に外部から液体を供給し、一次供給流路22から液体を外部に回収するようにしてもよい。また、ヘッド本体2aの内部を液体が循環しない構造としてもよい。