【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の製本装置は、
表紙を搬送する搬送装置と、栞紐を外周中に保持しつつ回転する回転体と、栞紐を切断する切断装置とを備え、
回転体は、複数の判型に適した栞紐の長さで栞紐を連続的に切断可能な位置に、外周に沿って複数の凹部を有する歯車状であり、ステッピングモータ又はサーボモータにより駆動が制御され、
切断装置は、凹部位置で栞紐を切断する切断部とスライド部を備え、
スライド部が、好ましくは回転体に沿って円弧状に切断部を摺動させることが可能なスライド溝と、切断部を所定の位置に固定可能な固定手段を複数箇所備えていることからなる。
【0011】
また、回転体の回転速度及び回転角を制御する手段と、切断を表紙への栞紐の糊付けと同期して指示する手段とを備えた制御装置を備えていることが好適である。
また、固定手段が判型入力手段を兼ねていることが好適である。
また、切断部が、切断部を摺動させる手動のハンドルを備えていることが好適である。
【0012】
さらに本発明は、上記の製本装置を使用し、切断部の位置を固定手段により固定するステップと、回転体を所定の速度で回転させるステップと、表紙への栞紐の糊付けと切断を同期して行うステップとからなる栞紐のついた並製本表紙の製造方法からなり、当該製造方法により製造された並製本表紙とそれを使用した機械製本書籍を含む。
【0013】
すなわち、本発明は、書籍の本文の背に栞紐を付するのではなく、1つの装置であらゆる並製本の表紙に栞紐を付することを可能にしたものである。本発明の製本装置を使用すれば、時間あたりおよそ五千枚程度の表紙の生産が可能であり、生産効率が飛躍的に上がる。
さらに、当該製本装置で製造された表紙を従来の並製本ライン上に使用することで、ワンライン上で並製本を機械製本することが可能になり、生産効率が飛躍的に向上し、数万部単位以上の栞紐のついた機械製本による並製本を容易かつ効率的に提供することが可能になる。
さらには、表紙に栞紐がついた、文庫判以外の並製本の機械製本書籍を提供することが可能になるため、製本デザインの自由度も向上するものである。
【0014】
より具体的に説明すると、本発明の製本装置は、表紙を搬送する搬送装置を備える。これは従来の技術と同様であり、表紙を所定の速度で回転体に向けて搬送することが可能である。回転体との接点の下部には、糊付け装置が組み込まれ、下部から糊付け装置が押し上がることにより栞紐と表紙を糊付けすることが可能である。例えば、前段階で糊が吹き付けられた表紙と栞紐を、糊付け装置が押しつける形態とすることもできる。
【0015】
回転体は、外周に沿って複数の判型に適した栞紐の長さを連続的に切断可能な位置に凹部を有する歯車状をしており、栞紐をその外周中に保持しつつ回転することが可能である。外周中への保持は、好ましくは回転体の内部との圧力差を使用して栞紐を凸部に吸着する手段により実現される。例えば、回転体内部は真空ポンプと連結され、凸部に設けられた孔を介して、圧力差を利用して栞紐を回転体に吸着する。必要であれば、さらに外部からスプリング等を利用した押圧機構を設けても良い。
【0016】
凹部は、所望の判型に必要な栞紐の長さを設定し、設定された一定の長さに連続的に切り取ることを可能とすべく設けられる。この構成は、本発明のその他の構成と相俟って、例えばA6判又はA5判など望む長さを選択し、連続的に切り取り表紙に貼り付けることが可能である。
【0017】
栞紐の長さは、表紙と栞紐の貼り付け位置、すなわち回転体と搬送部との接点から、切断部による切断位置までの長さとなる。この長さで連続的に切断可能な位置に凹部が設けられる。例えば、所望の長さが90度位置(例えばA6に相当)と120度(例えばA5に相当)で与えられる場合、30度毎に設けられる。
【0018】
別の観点から述べると、必要とされる複数の角度の公約数、好ましくは最大公約数の角度毎に設けられることが好ましい。凹部の幅及び深さは、切断部が栞を切断するのに十分な深さ及び幅があれば良く、適宜設計されることが可能である。例えば、A4, A5, A6, B5, B6,および新書判が全て選択可能な位置に凹部が設けられ、十分な汎用性を得るためには、半径100mm以上(好ましくは140mm)で560mm以下程度であり、凹部が60個(又は6度毎)以上設けられることが好ましい。
【0019】
判型について、一般的な判型サイズ(mm)や主な用途は、既に公知のものではあるが、下記の通りである。
B4判 257×364画集・グラフ雑誌など
A4判 210×297 写真集など
B5判 182×257 週刊誌・雑誌など
A5判 148×210 総合雑誌・教科書など
B6判 128×182 単行本など
A6判 105×148 文庫本など
新書判 103×182 新書本・漫画単行本など
四六判 127×188 単行本など
である。ただし、本発明は上記の判型のみならず、AB判 210×257,三五判 84×148,菊判 150×220 などあらゆる判型に適用が可能である。さらに、所望の栞紐の長さは判型に応じて経験的にほぼ決まっているものであるが、本発明によれば、凹部や固定手段の位置を変更又は調整することで、決まった組み合わせだけでなく、通常より長い(又は短い)栞紐を付することも可能であるため、並製本のデザインの自由度を向上できる。
【0020】
本願発明において、回転体を駆動するモータは、コントローラから発信されるパルス信号に応じて、モータコイルに流す電流を順次切り替える事によって一定角度毎に回転させるステッピングモータか、モータに取り付けられたエンコーダから現在位置・速度をフィードバックし、動作指令パルスとの誤差を修正しながら回転するサーボモータが用いられる。この構成により、必要な回転角度に応じて正確な位置決めを高速で制御することが可能となるため、本願発明の目的を達成することが出来る。
【0021】
切断装置は、切断部とスライド部を備える。切断部は、回転体の凹部において栞紐を切断することが可能である。このため、好ましくは挟状の切断刃により構成される。また、切断の制御は公知の様々な手段により可能であるが、切断制御を高速で行うべく、電磁コイル式開閉器(ソレノイド)を使用することが好ましい。
【0022】
スライド部は、回転体に沿って円弧状に切断部を摺動させることが可能なスライド溝と、切断部を所定の位置に固定可能な固定手段を複数箇所備えている。
切断部は、スライド溝上の摺動機構と手動で摺動させることが可能なハンドルを備えていることが好ましい。この構成により、手動で容易に切断位置を変化させることが可能である。そして、スライド部は切断部を所定の位置に固定可能な、判型指定手段を兼ねた固定手段を備えている。具体的には、栞紐の貼り付け位置から各種判型に応じた角度で切断可能な位置に、例えばピン・ピンホールや嵌合機構などにより、切断部を固定する。固定手段は、スライド部上に各種判型に応じて複数設けられており、必要とされる長さで連続的に切断が可能である。
【0023】
本発明の製本装置の制御装置としては、CPU・ROM・RAMなど公知の構成を有する制御装置を使用し、判型に応じて回転体の回転速度及び回転角度を制御する手段と、切断を表紙への栞紐の糊付けと同期して指示する手段とを備える。特に、前記固定手段が、制御装置への入力手段(判型指定手段)を兼ねていることが好適であり、切断部を固定することにより、事前に設定された、判型に応じた制御の選択が自動的に行われることで、より効率的に製造を行うことが可能である。例えば、固定手段としてピンを採用し、スライド部にはピンホールを設け、ピンホールの底部にセンサー又はスイッチを設け、ピンを差し込むことで切断部の固定と制御装置の判型指定を同時に行う構成を採用することができる。ただし、実施形式は上記の形式のみに限定されず、制御装置において別途判型を入力する形式や、判型を入力すると自動的に切断装置が所定の場所に移動する形式など、様々な実施形式を採用することが可能である。
【0024】
本発明の製本装置を使用する具体的な手順を述べる。なお、制御装置には、表紙が搬送される速度・タイミングに応じて、判型に応じて必要とされる回転体の回転速度及び回転角度があらかじめ記録されている。
まず、必要とされる判型に応じて切断部の位置を固定する。切断部が固定されると、自動的に判型が選択され制御装置に入力される。
そして、表紙の搬送を行いながら、回転体を所定の速度で回転させ、表紙への栞紐の糊付けと切断を同期して行い、この行程を連続的に繰り返す。
【0025】
本発明の上記の構成により、栞紐がついた同品質の表紙を連続的に大量に製造することが可能となる。そして、当該表紙を使用することで、並製本すべてのサイズに渡り、同一の並製本製造ライン上で、栞紐のついた並製本を効率的に大量に製造することが可能となる。
このため、これまで効率的に見合わず製造されていなかった、例えば栞紐を設けた数万部以上発行されるA4判の写真集など、新しい形態の機械製本書籍を提供することが可能となる。なお、最終的に栞紐を切断しないように当該機械製本書籍の天はアンカットとされ、栞紐の付された新書版と同様のアンカットの風合いを有する。