(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6412368
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】直流遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 33/59 20060101AFI20181015BHJP
H01H 73/02 20060101ALI20181015BHJP
H01H 73/06 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
H01H33/59 C
H01H73/02 Z
H01H73/06 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-166040(P2014-166040)
(22)【出願日】2014年8月18日
(65)【公開番号】特開2016-42430(P2016-42430A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2017年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和記
【審査官】
澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/171903(WO,A1)
【文献】
特表2002−517064(JP,A)
【文献】
特開平05−012976(JP,A)
【文献】
特開平05−067425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00 − 69/01
H01H 71/00 − 83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースの後部に電源側端子が、前部に負荷側端子がそれぞれ一対配置されて、前記電源側端子から前記負荷側端子に亘り一対の電路が配設され、前記電路はそれぞれ2つの固定接触子と、両固定接触子間に掛け渡されて前記電路の一部を成して前記電路の接続/遮断を実施する可動接触子とを有し、更に前記可動接触子を操作する操作ハンドルと、前記電路に流れる異常電流を検知して前記可動接触子を遮断操作させる遮断機構部とを具備した2極4接点構造の直流遮断器において、
前記可動接触子は中央に回動支点を有し、回動して両端に設けられた可動接点と前記固定接触子に設けた固定接点とが接触/解離動作して電路の接続/遮断を実施する一方、
前記遮断機構部は、前記電路に流れる異常電流を検知する異常電流検知部と、前記異常電流検知部の検知動作に加えて前記操作ハンドルの操作を前記可動接触子に伝達する開閉機構部とを有し、
前記一対の電路は、前記電源側端子から前記負荷側端子に亘り前記本体ケース内に形成された絶縁壁により分離形成された一対の電路配設空間にそれぞれ配設され、
前記操作ハンドル及び前記開閉機構部は、前記一対の電路配設空間のうちの一方の空間に配置されて成り、
更に前記異常電流検知部が双方の電路に設けられ、当該異常電流検知部の検知動作を前記開閉機構部に伝達して遮断動作させる伝達部材は、双方の前記異常電流検知部に係合する係合腕片と、前記開閉機構部を開操作する操作片と、前記係合腕片と前記操作片との間に掛け渡された胴部とを有し、
前記胴部が、前記絶縁壁内に形成された空間に配設されて成ることを特徴とする直流遮断器。
【請求項2】
前記絶縁壁内に形成された空間は断面スリット状に形成されると共に、前記伝達部材の胴部は板状を成し、
前記絶縁壁は、前記係合腕片を左右に突出させる開口部を有する一方、前記胴部は前記開口部を閉塞するために前記係合腕片の周囲に張り出し形成した閉塞部を有することを特徴とする請求項1記載の直流遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流遮断器に関し、特に1極に対して2接点を備えた2極4接点構造の直流遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電流は交流電流のように電流零点がないため交流電流より遮断が難しい。そのため、電路を開閉するための接点を直列に複数、例えば2接点配置して、1接点のみに比べて解離距離を2倍にすると共に解離速度も2倍にして、電流零点がなくても良好な遮断動作を可能とする遮断器が提案されている。例えば特許文献1では、4極4接点構造の回路遮断器を使用して端子間を直列接続して2極4接点の回路遮断器を形成している。
また、1極に対して2接点を備えた回路遮断器としては、特許文献2に開示された構成のものがある。特許文献2では、1つの電路上にて固定接点を2カ所設けると共に、両端に可動接点を備えた可動接触子を両固定接点間に配置し、可動接触子の中央を回動させて、双方の接点の接触/解離を同時に行うよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−138173号公報(
図7)
【特許文献2】特開平1−166429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記4極4端子構造の回路遮断器を使用して2極4端子の回路遮断器を形成する形態は、回路遮断器自体が大型なため広い設置スペースを必要とした。
また、特許文献2の接点構成を2極の回路遮断器に適用する場合、直列に2接点を配置できるため、回路遮断器の小型化が可能となるが、電路に流れる異常電流を検知して2本の電路を同時に遮断する引き外し機構、及び操作ハンドルの操作で電路の開閉を操作する開閉機構部は2本の電路に対して設ける必要があるため、左右の電路に跨がって機構を形成することになり、電路間の絶縁が難しく、アークの遮蔽が難しかった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、1極あたり2つの接点を備えた構成であっても2極間を良好に絶縁できる2極4端子構造の回路遮断器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、本体ケースの後部に電源側端子が、前部に負荷側端子がそれぞれ一対配置されて、電源側端子から負荷側端子に亘り一対の電路が配設され、電路はそれぞれ2つの固定接触子と、両固定接触子間に掛け渡されて電路の一部を成して電路の接続/遮断を実施する可動接触子とを有し、更に可動接触子を操作する操作ハンドルと、電路に流れる異常電流を検知して可動接触子を遮断操作させる遮断機構部とを具備した2極4接点構造の直流遮断器において、可動接触子は中央に回動支点を有し、回動して両端に設けられた可動接点と固定接触子に設けた固定接点とが接触/解離動作して電路の接続/遮断を実施する一方、遮断機構部は、電路に流れる異常電流を検知する異常電流検知部と、異常電流検知部の検知動作に加えて操作ハンドルの操作を可動接触子に伝達する開閉機構部とを有し、一対の電路は、電源側端子から負荷側端子に亘り本体ケース内に形成された絶縁壁により分離形成された一対の電路配設空間にそれぞれ配設され、操作ハンドル及び開閉機構部は、一対の電路配設空間のうちの一方の空間に配置されて成り
、更に異常電流検知部が双方の電路に設けられ、当該異常電流検知部の検知動作を開閉機構部に伝達して遮断動作させる伝達部材は、双方の異常電流検知部に係合する係合腕片と、開閉機構部を開操作する操作片と、係合腕片と操作片との間に掛け渡された胴部とを有し、胴部が、絶縁壁内に形成された空間に配設されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、1つの電路に2つの固定接点と可動接点の組みを備えた構成、即ち1極あたり2つの接点を備えた構成であっても、操作ハンドル及び開閉機構部を一方の電路配設空間に配置するため、双方の電路に連通する開口部のない絶縁壁を設けることが可能となり、双方の電路を良好に絶縁できる。
【0007】
また、伝達部材は絶縁壁内に配設されるため、一方の電路配設空間が狭くなったり、絶縁壁に伝達部材配設のための開口部を設ける必要がなく、電路間の良好な絶縁を維持できる。
【0008】
請求項
2の発明は、請求項
1に記載の構成において、絶縁壁内に形成された空間は断面スリット状に形成されると共に、伝達部材の胴部は板状を成し、絶縁壁は、係合腕片を左右に突出させる開口部を有する一方、胴部は開口部を閉塞するために係合腕片の周囲に張り出し形成した閉塞部を有することを特徴とする。
この構成によれば、伝達部材の係合腕片を突出させる開口部を絶縁壁に貫通形成しても、胴部に形成された閉塞部が係合腕片の周囲の隙間を閉塞するため、左右の電路配設空間の絶縁を維持できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1つの電路に2つの固定接点と可動接点の組みを備えた構成、即ち1極あたり2つの接点を備えた構成であっても、操作ハンドル及び開閉機構部を一方の電路配設空間に配置するため、双方の電路の間に開口部のない絶縁壁を設けることが可能となり、双方の電路を良好に絶縁できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る直流遮断器の一例を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図4】伝達部材を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【
図6】伝達部材以外の遮断器構成部材を取り除いたB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る直流遮断器の一例を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。1は電源側端子、2は負荷側端子、3は電路を開閉操作する操作ハンドルであり、双方の端子は2端子で構成され、カバー4aと基台4bとで構成された本体ケース4の内部には電源側端子1から負荷側端子2に亘り一対の電路が配設されている。
電源側端子1と負荷側端子2とは本体ケース4の対向する端部に配置され、電源側端子1の配置部を後部、負荷側端子2の配置部を前部、操作ハンドル3の配置部を上部として以下説明する。
【0012】
図2はA−A線断面図を示し、一方の電路の構成を示している。
図2において、10は操作ハンドル3の操作を受けて電路の接続/遮断を実施する開閉機構部、11は異常電流を検知する異常電流検知部、12は異常電流検知部の検知動作を開閉機構部10に伝達する伝達部材、13は回動して電路上の接点の接触/解離を行う可動接触子である。
尚、開閉機構部10と異常電流検知部11と伝達部材12とで、異常電流の発生を受けて電路を遮断する遮断機構部を構成している。またLは電路を示し、電路Lは電源側端子1から負荷側端子2に亘り配設されている。
【0013】
電路Lは、固定接点(第1固定接点15a,第2固定接点16a)を先端に備えた2つの固定接触子(第1固定接触子15,第2固定接触子16)と、両固定接触子15,16の間に掛け渡されて後端及び前端の双方に可動接点13a,13bを備えた可動接触子13とを備えている。また、電路Lの負荷側端子2の近傍には、異常電流検知部11を構成するバイメタル片17、電磁装置18等が組み付けられている。
【0014】
ここで、可動接触子13と固定接触子15,16とを具体的に説明する。第1固定接触子15は後端が電源側端子1に接続され、前方が本体ケース4の底部に配置され、第1固定接点15aはその先端において上向きに設けられている。一方、第2固定接触子16は本体ケース4の中間位置に配置され、前方はバイメタル片17に接続され、第2固定接点16aが後端において下向きに設けられている。尚、隣接して配設された他方の電路Lも同様に構成されている。
【0015】
可動接触子13は
図7に示すように構成されている。
図7は左右の可動接触子を連結した状態の説明図であり、
図7に示すように可動接触子13は2本の電路Lに対応して左右に一対配置され、双方は支持軸20で連結されている。そして、後端には第1可動接点13aが下向きに配置され、前端には第2可動接点13bは上向きに配置されている。
この支持軸20を中心に一体に回動し、第1可動接点13aが第1固定接点15aに対して接触/解離し、第2可動接点13bが第2固定接点16aに対して接触/解離し、所謂2極4接点構造を構成している。
尚、可動接触子13は、開閉機構部10に連結されたケーシング21に保持されており、開閉機構部10の開閉動作がケーシング21を介して可動接触子13に伝達される。
【0016】
図3は
図1のカバー4aを外した直流遮断器の平面図を示している。
図3(及び
図1)に示すように、操作ハンドル3は一方の電路L上に配置され、この操作ハンドル3の下部に開閉機構部10が
図2に示すように配置されている。即ち開閉機構部10も一方の電路L上に配置されている。
一方、異常電流検知部11は双方の電路Lに設けられ、異常電流を検知したら伝達部材12を前方へ押圧するよう配置されている。
【0017】
図4は伝達部材12を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図である。伝達部材12は、左右に延びて異常電流検知部11と係合する係合腕片12aと、開閉機構部10を開動作、即ち遮断動作させる棒状の操作片12bと、係合腕片12aと操作片12bとを連結する胴部12cとを有している。胴部12cは、縦及び前後に広く形成され、左右方向に薄く板状に形成されている。
この胴部12cは、係合腕片12aの周囲に張り出すように形成した閉塞部Wを有し、後述する絶縁壁23の第2開口部23cに隙間が発生するのを防止している。尚、操作片12bは開閉機構部10を配置した一方の電路Lの方向のみに突設されている。
【0018】
図5は遮断器構成部材を取り除いた本体ケース4のB−B線断面を示している。
図5に示すように、本体ケース4の内部は中央に絶縁壁23が立設され、本体ケース4の内部が前後に亘り左右が分離され、独立した2つの電路配設空間C(C1,C2)が形成されている。電路Lはこのそれぞれの電路配設空間C1,C2に配設されている。尚、上記
図2のA−A線断面図は
図5に示す左側の電路配設空間C1を示している。
そして、23aは絶縁壁23内に形成された断面スリット状の空間であり、この空間23aに伝達部材12の胴部12cが前後に摺動可能に収容されている。
【0019】
図6は、遮断器構成部材を取り除いた本体ケース4のA−A線断面を示し、絶縁壁23の状態を示している。但し、伝達部材12は装着した状態で示している。
図6において、1aは電源側端子配置部、2aは負荷側端子配置部であり、絶縁壁23は電源側端子1から負荷側端子2に至る本体ケース3の全体に亘り形成されている。
そして、23bは可動接触子13の支持軸20を挿通するために絶縁壁23に貫通形成した第1開口部、23cは伝達部材12の係合腕片12aを左右に突出させるために絶縁壁23に貫通形成した第2開口部であり、絶縁壁23には左右に貫通する2つの穴が形成されている。また、23dは伝達部材12の操作片12bを一方の電路配設空間C1に突出させるための操作孔であり、この操作孔23dは絶縁壁23の一方の面のみ形成されている。
【0020】
こうして形成された2つの孔に対して、第1開口部23bは、可動接触子13を組み付ける際に支持軸20が挿通されて閉塞される。また、第2開口部23cは
図6に示すように絶縁壁23内に配置された伝達部材12の閉塞部Wにより閉塞され、第1開口部23b及び第2開口部23cは共に遮断器構成部材を組み付けることで閉塞される。
【0021】
このように、1つの電路Lに2つの固定接点15a,16aと可動接点13a,13bの組みを備えた構成、即ち1極あたり2つの接点を備えた構成であっても、開閉機構部10及び操作ハンドル3を一方の電路配設空間Cに配置するため、双方の電路Lに連通する開口部のない絶縁壁23を設けることができ、双方の電路Lを良好に絶縁できる。
また、伝達部材12は絶縁壁23内に配設されるため、一方の電路配設空間Cが狭くなったり、絶縁壁23に伝達部材12を配設するための開口部を設ける必要がなく、電路間の良好な絶縁を実施できる。
更に、伝達部材12の係合腕片12aを突出させる開口部23cを絶縁壁23に貫通形成しても、胴部12cに形成された閉塞部Wが係合腕片12aの周囲の隙間を閉塞するため、左右の電路配設空間Lの絶縁を維持できる。
【0022】
尚、上記実施形態は、異常電流検知部11は伝達部材12を前方に押圧して、開閉機構部10を遮断動作させる構成であるが、伝達部材12を反対方向の後方へ押圧して遮断動作させても良い。
【符号の説明】
【0023】
1・・電源側端子、2・・負荷側端子、3・・操作ハンドル、4・・本体ケース、10・・開閉機構部、11・・異常電流検知部、12・・伝達部材、12a・・係合腕片、12b・・操作片、12c・・胴部、13・・可動接触子、15・・第1固定接触子、16・・第2固定接触子、20・・支持軸(回動支点)、23・・絶縁壁、23c・・第2開口部(開口部)、C・・電路配設空間、L・・電路、W・・閉塞部。