(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6412410
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】補助リレーの接触抵抗測定器
(51)【国際特許分類】
H01H 49/00 20060101AFI20181015BHJP
【FI】
H01H49/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-227646(P2014-227646)
(22)【出願日】2014年11月10日
(65)【公開番号】特開2016-91908(P2016-91908A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(73)【特許権者】
【識別番号】514284280
【氏名又は名称】株式会社明電O&M
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】内野 博文
(72)【発明者】
【氏名】野田 和宏
【審査官】
山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−074829(JP,A)
【文献】
特開平04−058417(JP,A)
【文献】
特開平02−125270(JP,A)
【文献】
特開2010−025589(JP,A)
【文献】
各種メンテナンスツール,明電時報 No.4,日本,株式会社明電舎,2012年10月25日,通巻337号,p.33−34
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 49/00
G01R 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部からの制御指令により試験電圧,試験電流を発生し、供試ソケットに差し込まれた補助リレーの接触抵抗値を測定し、測定結果を表示部に表示する測定器において、
前記制御部に、低抵抗測定手法を用いて接触抵抗値を算出する低抵抗測定手段と、統計的評価手法を用いて劣化度合いを評価演算する評価手段を設け、
前記低抵抗測定手段は、試験1回毎に供試リレー各接点の接触抵抗値を複数回測定する機能を備え、
前記評価手段は、前記複数回の測定結果の偏差値と、予め設定された測定抵抗値のバラツキにより評価する閾値、および測定抵抗値の絶対値により評価する絶対値評価閾値から、供試リレーの評価・判定を行う機能を備えたことを特徴とした補助リレーの接触抵抗測定器。
【請求項2】
前記測定抵抗値の最大値が絶対値評価閾値を越えたとき警戒状態とすることを特徴とした請求項1記載の補助リレーの接触抵抗測定器。
【請求項3】
前記供試リレーのメーカー,型式に基づいて試験電圧,試験電流を選択し、複数配設された前記供試ソケットのうち選択された供試リレーの差し込まれる供試ソケットを、LEDの点灯で指示することを特徴とした請求項1又は2記載の補助リレーの接触抵抗測定器。
【請求項4】
前記供試リレーのメーカー,型式に基づく試験電圧,試験電流の選択は、接触抵抗測定器に設けられた電圧設定部の上下キーの操作で、且つ電圧設定部の表示部に表示される画面のカーソル操作で選択することを特徴とした請求項1乃至3の何れか1項に記載の補助リレーの接触抵抗測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助リレーの接触抵抗測定器に係わり、特に補助リレーの予防保全や劣化診断などで劣化度合いが評価できる接触抵抗測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リレーの使用目的の一つに補助リレーがある。この補助リレーは保護・制御・調整リレーが目的を達成するに不十分な点を補うために使用され、例えば、接点容量の不足や接点数が不足しているときなどに使用される多接触リレーである。したがって、補助リレーを使用する機器は、発電、送電、配電、受電、蓄電などの各種制御盤や各種機器、上下水処理、及びプラント全般と各分野にわたって使用されおり、また、使用されている補助リレーを製造するメーカーは数社あり、補助リレーの種類も種々な使用目的に対応させるために100種以上が存在している。
【0003】
各種電気機器に使用される補助リレーの健全性や新規設置時の受け入れ検査には非特許文献のような補助リレー試験器が使用される。この補助リレー試験器はプラグイン式で構成され、試験器本体のパネル表面に配置された補助リレー用のソケットに補助リレーを差し込んで試験を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
明電時報、2012 通巻337号 No.4 p33,34 平成24年10月25日発行、(株)明電舎
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような補助リレー試験器は、補助リレーに必要な接点試験機能、各種試験電源、多種類の補助リレーに対応しているため、供試リレーの挿抜を自動検知する機能によって、挿抜を繰返す回数が多くなるような多量の同一の補助リレー試験には極めて短時間で効率よく試験が可能となる利点を有する。また、この試験器は、補助リレー購入時の健全性の有無検査の他に、既に設置されている現場の電機機器の保守・点検時においても、補助リレー劣化の有無検査に使用される。
【0006】
現場での電機機器に使用されている補助リレーの種類は多数種あり、補助リレー底部に突出するピン(端子)配置が各種で統一されていないことから、検査時にはソケットへの誤挿入による事故防止のために、確認作業に多くの時間を費やしている。そして、測定結果においても接点の良否結果が判定されるのみで、警戒すべき状態なのか、或いは要注意状態なのか接点の劣化評価に関する方法や判定基準が明確にはなっていないため、場合によってはサンプルを持ち帰って分解分析している。このため、多くの時間を要するため分解分析の適用も限定的なものとなっている。
【0007】
本発明が目的とするところは、現場でも迅速に劣化度合の診断を可能とする補助リレーの接触抵抗測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、制御部からの制御指令により試験電圧,試験電流を発生し、供試ソケットに差し込まれた補助リレーの接触抵抗値を測定し、測定結果を表示部に表示する測定器において、
前記制御部に、低抵抗測定手法を用いて接触抵抗値を算出する低抵抗測定手段と、統計的評価手法を用いて劣化度合いを評価演算する評価手段を設け、
前記低抵抗測定手段は、試験1回毎に供試リレー各接点の接触抵抗値を複数回測定する機能を備え、
前記評価手段は、前記複数回の測定結果の偏差値
と、予め設定された測定抵抗値のバラツキにより評価する閾値、および測定抵抗値の絶対値により評価する絶対値評価閾値から、供試リレーの評価・判定を行う機能を備えたことを特徴としたものである。
【0009】
また、本発明は、前記測定抵抗値の最大値が絶対値評価閾値を越えたとき警戒状態とすることを特徴としたものである。
【0010】
また、本発明は、前記供試リレーのメーカー,型式に基づいて試験電圧,試験電流を選択し、複数配設された前記供試ソケットのうち選択された供試リレーの差し込まれる供試ソケットを、LEDの点灯で指示することを特徴としたものである。
【0011】
また、本発明は、前記供試リレーのメーカー,型式に
基づく試験電圧,試験電流
の選択は、接触抵抗測定器に設けられた電圧設定部の上下キーの操作で、且つ電圧設定部の表示部に表示される画面のカーソル操作で選択することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明によれば、健全性や劣化度合いの把握が可能となることで予防保全ができ、メンテナンス業務の質の向上や設備の維持・管理のコスト削減が可能となるものである。また、多数種の供試リレーが組み込まれた電気機器においても、メーカー、型式を選択することで供試ソケットの位置が表示されるため、誤配線を心配することなく短時間で供試ソケットへの供試リレーの差込ができ、誤配線による事故防止が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態を示す接触抵抗測定器の機能構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の接触抵抗測定器の機能構成図、
図2は使用状態図を示したもので、接触抵抗測定器は持ち運びが容易なトランク構造となっており、本体Mとこの本体Mに対する上蓋Cにより構成され、この実施例では上蓋Cにソケット部が配設されて使用時に接続線2を介して両者を接続し信号の授受が行われる。
【0015】
図1において、制御部10は各機能に対して制御指令を発すると共に、測定された接触抵抗値を入力し統計的手法を用いて供試リレーの評価判定を行い、結果を表示部8に表示する。そのため、制御部10には直流二端子・四端子法、交流二端子・四端子法、ホイートストンブリッジ法などの手法を用いて抵抗値を算出する低抵抗測定手段11と、測定値の散布度、偏差、標準偏差など統計的評価手法を用いて供試リレーの評価を行う評価手段12を有している。また、抵抗測定時には、1回毎に供試リレーの常開接点(a接点)、常閉接点(b接点)に対して予め設定される任意回数の測定を行うよう設定される。
【0016】
20は試験電圧発生部で、補助リレーの仕様電圧としてはDC12,24,48,100V,AC24,100,200Vがあり、供試リレーに対応するこれらの電圧を発生する。30はソケット切替部で、後述の上下キー
1aの操作により設定されたメーカー、型式、試験電圧が設定されると、ソケット部9の供試リレーに対応する供試ソケット位置を特定し、供試ソケット位置に設置されたLEDを点灯して供試リレーの差込位置を指定する。また、供試ソケット位置が特定されると、試験電流発生部40は特定された供試ソケット位置に、例えば1mA,10mA,1Aなど指定された測定電流を供給する。50は電圧降下測定時のソケット端子切替部で、順次供試リレーのピン位置を切替える。60は計装アンプでゲインの可変機能を有している。70はA/D変換部で、測定されたアナログ値をデジタル値に変換して制御部10に出力する。
【0017】
図2において、1は試験電圧を設定する電圧設定部で、電圧の上げ及び下げ操作用の上下キー1a、所定の電圧値になったとき設定値を保持し、且つ保持電圧を解除するロック/解除スイッチ1b、及び上下キー1aの操作による現在のカーソル位置を画面表示する表示部1cを有している。表示部1cには、予め記憶されているメーカー、当該メーカーの型式、仕様電圧(試験電圧)など設定に必要とする情報が表示され、表示画面を見ながら上下キー1aを操作することでカーソルを移動させて供試リレーのメーカー、型式から電圧が選択される。
【0018】
3は外部電源入力端子で、接触抵抗測定器自体の有する電源が何等かの理由で異常となったときに外部電源に接続するもので、供試リレーの動作電圧(試験電圧)を入力する端子3aと、外部電源入力サーキットプロテクタ端子3bを備えている。5はアラーム部で、アラームの選択スイッチがオンの場合には各試験ユニットの試験終了毎、および不良検出時にアラームが鳴動する。6は主電源部で、電源コードを介してAC100V電源に接続するコンセント6a、主電源の入り切りを行う切替スイッチ6bを有する。
【0019】
7は動作モード設定部で、この動作モード設定部7は補助リレーのメーカー、型式を含む動作モードを表示するモード表示部7a、このモード表示部7aを見ながら動作モードを設定する上下キー7b、設定された動作モードをセットするセットスイッチ7c、クリアスイッチ7d、及び設定された接点電流を表示する表示ランプ7eを有している。8は測定結果の表示部で、後述のようにメーカー、型式、接点電流に対応した抵抗値が予め決められた測定回数毎に、供試リレーのピン毎に表示され、且つ測定結果の偏差値や判定(評価)結果が表示される。9は上蓋C側に配列されたソケット部で、メーカーや型式に対応する供試リレーのピンが差し込まれる供試ソケットが複数配列されて、各供試ソケットにはLEDが配設されている。
【0020】
接触抵抗の測定時には、接触抵抗測定器の上蓋Cを本体Mより外して接続線2を介して両者を接続し、AC100V電源に
接続する。例えば現地試験の場合、供試リレーを電気機器より取外してメーカー、型式、仕様電圧、電流などを確認する。この確認結果に基づき電圧設定部1で表示部1cを見ながら上下キー1aを押圧し、カーソルを移動させながら供試リレーのメーカー、及び仕様電圧を選択し、所望の供試リレーとなったときにロック/解除スイッチ4bを押すことで特定する。特定されると供試リレーに対応した供試ソケットが点灯して供試リレーの差込位置を指定する。
【0021】
次に、動作モード設定部7で試験の動作モードが設定され、この動作モードとしては、マニュアルモード、オートモード、強制動作(調整モード)、キープセット/リセットなど任意の動作モードの選択、及び評価判定機能を有し、これらはモード表示部7aの画面を見ながら上下キー
7bを操作して任意に選択する。選択決定時にはセットスイッチ7cで選択項目をセットする。なお、マニュアルモード、オートモード時には複数回の試験が行われ、また、評価判定としては、ここでは警戒、注意、良好の3評価としている。測定されたデータの保存や整理,加工などについては、データ保存部4においてメモリや直接にパソコンPを接続して取得する。
【0022】
図3は表示部8に表示される試験結果図ある。この例の供試リレーは4開閉路を有した各a,b接点の接触抵抗を測定したもので、横軸はピン番号を示し1Aは第1開閉路のa接点、1Bはb接点、2A,2Bは第2開閉路のa,b接点…であり、縦軸の1から10は測定された回数である。また、各ピン番号の平均値、標準偏差σが表示され、標準偏差σの下段には3倍のσ、最大値及び判定項目を有する評価表が表示される。
【0023】
標準偏差σは統計的手段により求められる。散布度を求める統計的手段としては、標準偏差、標準偏差の和、四分位偏差や平均偏差などがあるが、ここでは、例えば標準偏差を(1)式で求める。
【0025】
ただし、xはデータ、x
-は平均、nはデータ数
図3は、標準偏差(バラツキ)3σの評価閾値を0.05Ω、絶対値評価閾値を0.50Ωとし、標準偏差3σの閾値未満のときには良好、閾値以上のときには注意としている。また、絶対値評価では閾値以下では良好、閾値以上で警戒としている。例えば、ピン番号1A−1Cの場合には、バラツキ3σは0.00、最大0.03Ωで評価閾値0.05Ωであることから良好と評価される。また、ピン番号1B−1Cの場合にはバラツキ3σが0.06Ω、最大0.10Ω(測定3回目と6回目)で閾値0.05Ω以上であるが絶対値評価閾値以下であることから
注意と評価される。同様にピン番号3B−3Cの場合には絶対値評価閾値0.50Ω以上の0.64Ωであることから警戒として評価される。この評価用の各閾値や警戒、注意、良好の評価区分は任意に設定されるものである。
【0026】
以上のように、本発明によれば健全性や劣化度合いの把握が可能となることで予防保全ができ、メンテナンス業務の質の向上や設備の維持・管理のコスト削減が可能となるものである。また、多数種の供試リレーが組み込まれた電気機器においても、メーカー、型式を選択することで供試ソケットの位置が表示されるため、誤配線を心配することなく短時間で供試ソケットへの供試リレーの差込ができ、誤配線による事故防止が可能となるものである。
【符号の説明】
【0027】
1… 電圧設定部
2… 接続線
5… アラーム部
6… 主電源部
7… 動作モード設定部
8… 表示部
9… ソケット部
10… 制御部
11… 低抵抗測定手段
12… 評価手段
20… 試験電圧発生部
30… ソケット切替部
40… 試験電流発生部
50… ソケット端子切替部