【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年5月13日から平成26年5月16日に西川産業本社ショウルームにて開催された「西川ホームファッションフェア2014」 平成26年10月7日から平成26年10月10日に西川産業本社ショウルームにて開催された「西川ホームファッションフェア2015」 [刊行物等] 平成26年9月1日,西川産業株式会社ホームページ http://www.nishikawasangyo.co.jp/documents/maroyakafuton_release.pdf http://www.nishikawasangyo.co.jp/r/categories/%E6%8E%9B%E3%81%91%E3%81%B5%E3%81%A8%E3%82%93/items http://www.nishikawasangyo.co.jp/r/categories/%E6%8E%9B%E3%81%91%E3%81%B5%E3%81%A8%E3%82%93/items/7886−FN4510−%E3%81%B5%E3%82%8F%E3%82%8A%EF%BD%9E%E3%81%AA%E6%8E%9B%E3%81%91%E3%81%B5%E3%81%A8%E3%82%93 http://fuwarina.jp/ [刊行物等] 株式会社ストアーズ社が平成26年9月3日に発行した週刊デパートニューズ [刊行物等] 平成26年9月12日,日経プレスリリース http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=369408&lindID=4 [刊行物等] 平成26年9月15日,マイナビニュース http://news.mynavi.jp/news/2014/09/15/013/ 平成26年9月15日,YAHOO JAPAN ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140915−00000007−mycomj−life 平成26年9月15日,ネタりか http://netallica.yahoo.co.jp/news/20140915−00000006−cobs 平成26年9月15日,garoll http://garoll.net/entry/266591 [刊行物等] 平成26年9月16日,iemo http://iemo.jp
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
寝具としてキルト縫製で製造された掛け布団がある。キルト縫製は、表側地と裏側地との間に綿や羽毛等の詰物を収納し、詰物を間に挟んで、表側地と裏側地とをキルト用糸で縫い合わせものである。キルト用糸で縫い合わされた跡にはキルト線が平面視で形成されており、このキルト線で区画された領域毎に詰物が収納されることになる。そのため、キルト縫製で製造された掛け布団は、詰物の偏りが少なくなるので、保温性が向上する。
【0003】
従来の掛け布団として、掛け布団の長さ方向の中心線に向かって膨らむ曲線状のキルティングをしたものがある(特許文献1)。
特許文献1の従来例では、身体を掛け布団に潜り込ませると、掛け布団の中央部が盛り上がる。掛け布団の中央部が盛り上がって側部が中央に引っ張られても、曲線状のキルティングによって、掛け布団が屈曲できるので、掛け布団の側部が身体側に引き寄せられて密着することになる。
【0004】
他の従来の掛け布団として、表生地と裏生地とから袋状に形成された外側布地内の横幅方向を、就寝者の上にかけるための掛け部と両側部とに縦キルト線で区画し、縦キルト線を略つつみ状に形成したものがある(特許文献2)。
特許文献2の従来例では、掛け部の縦方向の両端端縁は、就寝者の腕部分又は脚部分が相当する部分であり、縦方向の中央部分は就寝者の胴部分が相当する部分である。特許文献2の従来例では、腕部分又は脚部分が相当する部分が胴部分に相当する部分より幅広に形成されているため、寝返りをうつ際に、腕部分や脚部分の動きを妨げることがなく、快適な睡眠を得られる。そして、特許文献2の従来例の掛け布団は、中布と表生地との間に形成された上層と、中布と裏生地との間に形成された下層との2層構造とされており、上層の縦キルト線と下層の縦キルト線とは平面視で互いにずれた位置に形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で示される従来例では、就寝者との密着性が考慮されるに過ぎず、保温性は考慮されていない。さらに、特許文献1で示される従来例は、表裏の布地に綿等の詰物が収納されるという単層構造であるため、この点からも保温性に限界がある。
【0007】
特許文献2で示される従来例では、縦キルト線を略つつみ状に形成したので、就寝者の寝返りによるずれを抑制することができても、就寝者と掛け布団との密着性が必ずしも十分とはいえない。しかも、特許文献2で示される従来例の掛け布団は、上層と下層との2層構造であるが、上層と下層とに形成される略つつみ形状の縦キルト線は相似形である。そのため、保温性は十分なものとは言えない。
【0008】
本発明の目的は、就寝者との間の密着性がよく、保温性を向上することができる掛け布団及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の掛け布団は、互いに反対側に位置する一対の第一辺縁と、これらの第一辺縁とそれぞれ交差する一対の第二辺縁とで外周縁が形成され表側部と裏側部とが積層される掛け布団であって、前記表側部は、表側地と、表側中間地と、前記表側地と前記表側中間地との間に収納された表側詰物体とを備え、前記表側詰物体を間に挟んで前記表側地及び前記表側中間地のみを貫通するキルト用糸で表側キルト線が形成され、前記裏側部は、前記表側地とは反対側であって就寝者に近接する裏側地と、前記表側部と重ねられた裏側中間地と、前記裏側地と前記裏側中間地との間に収納された裏側詰物体とを備え、前記表側詰物体、前記表側中間地、前記裏側中間地及び前記裏側詰物体を挟んで前記表側地と前記裏側地とを貫通するキルト用糸で貫通キルト線が形成され、前記表側キルト線は、前記表側部の前記第二辺縁の第二辺縁中心点同士を接続する中心線に沿って形成された中央部と前記中央部より前記第一辺縁側にそれぞれ位置する辺縁部とを区画する第一表側キルト線を有し、前記貫通キルト線は、平面視で前記第一表側キルト線より前記第一辺縁側にそれぞれ配置された第一貫通キルト線と、前記第一貫通キルト線の間に配置され前記中心線と交差する方向に沿って形成された第二貫通キルト線と、前記第二貫通キルト線より前記一対の第二辺縁のうち一方の第二辺縁に近接して配置された第三貫通キルト線と、前記第二貫通キルト線より前記一対の第二辺縁のうち他方の第二辺縁に近接して配置された第四貫通キルト線と、を有することを特徴とする。
【0010】
この構成の本発明では、就寝者は、首部が一対の第二辺縁の一方に位置し、足元が一対の第二辺縁の他方に近接するように掛け布団を掛ける。この状態では、第一辺縁が就寝者の脇及び足に沿うようになる。
就寝者の上に掛け布団が掛けられた状態では、掛け布団の全体の表裏面に形成される第一貫通キルト線に沿って掛け布団が屈曲し、就寝者の側部と掛け布団との間に隙間が生じない。さらに、第二貫通キルト線に沿って掛け布団が屈曲し、掛け布団が就寝者の身長に沿った凹凸に沿うものとなる。さらに、第三貫通キルト線によって、首元が確実に囲われることになり、首元と掛け布団との間に隙間が生じない。そして、第四貫通キルト線によって、足元が確実に囲われることになり、足元と掛け布団との間に隙間が生じない。
従って、貫通キルト線で区画された領域によって、就寝者と掛け布団とが密着することになり、保温性が保たれる。
しかも、本発明では、就寝者とは離れた位置にある表側部により、表側キルト線で中央部と辺縁部が区画される。そのため、表側部全体で就寝者全体を包み込むようになり、保温性が向上する。
【0011】
本発明の掛け布団では、前記第一表側キルト線は、前記中心線を挟んで互いに対向配置され、かつ、底部が前記中心線から離れるように凹状に湾曲した第一湾曲部を有し、前記第三貫通キルト線は前記就寝者の首元を囲うように湾曲形成され、第四貫通キルト線は、前記就寝者の足元を囲うように湾曲形成された構成が好ましい。
この構成では、第三貫通キルト線が湾曲しているため、掛け布団の中央部が盛り上がっても、掛け布団が就寝者の首元に密着する。さらに、第四貫通キルト線が湾曲しているため、就寝者の足元が確実に囲われる。
その上、第一表側キルト線は、第一湾曲部を有するため、中央部に多くの詰物体を保持することができる。
【0012】
本発明の掛け布団では、前記表側キルト線は、前記側部と前記第一辺縁に接する辺縁部とを区画する第二表側キルト線を有し、前記第二表側キルト線は、前記第一湾曲部と対向し前記第一湾曲部とは反対側に向けて湾曲する第二湾曲部と、前記第一表側キルト線と接続する接続部とを有し、前記第一貫通キルト線は、平面視で第一湾曲部と前記第二湾曲部との間であって前記中心線を挟んでそれぞれ対向配置され前記第二湾曲部と同じ方向に向いて湾曲した第三湾曲部を有する構成が好ましい。
この構成では、第一貫通キルト線が中心線に向けて凸となるように湾曲しているため、掛け布団の中央部が盛り上がっても、辺側部が就寝者側に引き寄せられることになり、掛け布団が就寝者の側面に密着する。
しかも、就寝者の直上には、第一表側キルト線によって区画された中央部があり、就寝者の両側近傍の上には、第二表側キルト線によって区画された側部があり、就寝者の両側横には第二表側キルト線によって区画された辺縁部がある。そのため、表側部全体で就寝者全体を包み込むようになり、保温性が向上する。
その上、第二表側キルト線は、中心線に向けて凸となるように湾曲する第二湾曲部を有するので、掛け布団の中央部が盛り上がっても、掛け布団が引き寄せられることになり、密着性が確保される。さらに、第二表側キルト線は第一表側キルト線と接続する接続部を有するため、第二表側キルト線が表側詰物体の周囲を囲うことになる。そのため、掛け布団の中央部が高く盛り上がったとしても、第二表側キルト線で囲われた表側詰物体は、側部に保持されたままとなり、保温性が損なわれない。
【0013】
本発明の掛け布団では、前記表側詰物体と前記裏側詰物体とはそれぞれ繊維から形成され、前記表側地は前記表側詰物体と対向する面が起毛された布帛である構成が好ましい。
この構成では、表側地の表側詰物体と対向する面が起毛されているので、繊維から形成される表側詰物体との摩擦が大きくなる。そのため、表側地と表側中間地との間に収納された表側詰物体が表側地に対してずれることがない。
【0014】
本発明の掛け布団では、前記裏側地はニットであり、前記裏側地と前記裏側詰物体との間に不織布が積層される構成が好ましい。
この構成では、裏側地はニットからなるので、掛け布団全体が容易に撓むことが可能となるので、この点からも、就寝者と掛け布団との間に隙間が生じにくいものとなる。ニットから構成される裏側地には裏側詰物体を構成する繊維が抜ける隙間が生じることもあるが、本発明では、裏側地と裏側詰物体との間に不織布が積層されているので、不織布によって、繊維が掛け布団の外に抜け出ることを防止できる。
【0015】
本発明の掛け布団の製造方法は、前述の構成の掛け布団を製造する方法であって、前記表側地と前記表側中間地との間に表側詰物体を収納して積層体を形成し、この積層体をキルト用糸で縫製して前記表側部を縫製する第一縫製工程と、前記表側部の上に、前記裏側地と前記裏側中間地との間に裏側詰物体を収納して形成された積層体を積層し、前記裏側詰物体を間に挟んだ前記裏側地及び前記裏側中間地と、前記裏側中間地に積層された前記表側部とをキルト用糸で縫製する第二縫製工程とを備え、前記第二縫製工程では、前記第一貫通キルト線と、前記第二貫通キルト線と、前記第三貫通キルト線と、前記第四貫通キルト線とがそれぞれ交差しないように縫製されることを特徴とする。
この構成の本発明では、前述の効果を奏することができる掛け布団を製造することができる他、表側部の上に裏側部を配置し、その状態で、全体の縫製を行うので、掛け布団の製造を効率的に行うことができる。
さらに、キルト線同士が交差した状態で縫製されると、交差した箇所から伝線が生じやすくなるが、本発明では、第二縫製工程では、第一貫通キルト線と、第二貫通キルト線と、第三貫通キルト線と、第四貫通キルト線とがそれぞれ交差しないように縫製されるため、伝線が生じることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から
図8には第1実施形態の全体構成が示されている。
図1から
図8において、本実施形態の掛け布団は、長方形の外周縁1が形成され、表側部10が裏側部20の上に積層される二重構造である。外周縁1は縫製されている。
図1から
図4において、外周縁1は、長辺方向に沿って形成され互いに反対側に位置する一対の第一辺縁1Aと、第一辺縁1Aとそれぞれ直交する一対の第二辺縁1Bとから形成される。なお、本実施形態では、掛け布団の使用にあたり、第一辺縁1Aを就寝者(図示せず)の脇部や足に沿うようにし、第二辺縁1Bの一方(
図3の上方)を就寝者の首元に位置させ、第二辺縁1Bの他方(
図3の下方)を就寝者の足元に位置させる。ここで、足元の位置とは、就寝者が体をまっすぐにして横たわった際の足元の位置である。また、互いに反対側に位置する第二辺縁1Bの中心点をそれぞれ第二辺縁中心点1Cとし、これらの第二辺縁中心点1Cを結ぶ線を中心線Cとする。
【0018】
図7及び
図8において、表側部10は、表側地11と、表側中間地12と、表側地11と表側中間地12との間に収納された表側詰物体13とを備えて構成されている。
表側部10は、表側詰物体13を間に挟んで表側地11及び表側中間地12のみを貫通するキルト用糸Fで縫製されている。このキルト用糸Fで縫製された跡が表側部10の平面及び裏面に表側キルト線Tとして形成されることになる(
図1及び
図3参照)。
図1及び
図3に示される通り、表側キルト線Tは、表側部10の中心線Cに沿って形成された中央部10Aと中央部10Aより第一辺縁側にそれぞれ位置する側部10Bとを区画する第一表側キルト線T1と、側部10Bと第一辺縁1Aに接する辺縁部10Cとを区画する第二表側キルト線T2とから構成される。
【0019】
図3に詳細に示される通り、第一表側キルト線T1は、中心線Cを挟んで2本が互いに対向配置されている。これらの第一表側キルト線T1は、それぞれ中央部分に位置する第一湾曲部t11と、第一湾曲部t11の端部のうち就寝者の首元側に接続された曲線部t12と、第一湾曲部t11のうち就寝者の足側の端部に接続された直線部t13とから構成されている。
第一湾曲部t11は、中心線Cを挟んで互いに対向配置されており、かつ、底部が中心線Cから離れるように凹状に形成されている。
曲線部t12は、底部が就寝者の首元側から離れるように凹状に形成されている。
直線部t13は、第一湾曲部t11との接続部分から足元側の第二辺縁1Bに向かうに従って中心線Cから離れるように形成されている。
【0020】
第二表側キルト線T2は、第一湾曲部t11と対向し第一湾曲部t11とは反対側に向けて湾曲する第二湾曲部t21と、第一表側キルト線T1と接続する接続部t22とからなる。
接続部t22は、曲線部t12の端部と第二湾曲部t21の一端部とを接続する第一接続部t221と、直線部t13の端部と第二湾曲部t21の他端部とを接続する第二接続部t222と、第一湾曲部t11の両端部と第二湾曲部t21の両端部とをそれぞれ接続する第三接続部t223とから構成されている。
第一接続部t221は、第一辺縁1Aと平行に伸びる直線部に底部が外周縁1の角部から離れるように凹状に形成された湾曲部が接続された屈曲形状である。
第二接続部t222は、第一辺縁1Aと平行に伸びる直線部に底部が外周縁1の角部に向けて突出するように凸状に形成された湾曲部が接続された屈曲形状である。
第三接続部t223は、底部が第二辺縁1Bに向けて突出する凸状に形成されている。
本実施形態では、側部10Bは、第一湾曲部t11、第二湾曲部t21及び第三接続部t223で区画される領域と、第三接続部t223、曲線部t12及び第一接続部t221で区画された領域と、第三接続部t223、直線部t13及び第二接続部t222で区画された領域とに分割される。なお、表側キルト線Tを構成する各線は、互いに交差するものではない。
【0021】
図7及び
図8において、裏側部20は、裏側地21と、表側部10と重ねられた裏側中間地22と、裏側地21と裏側中間地22との間に収納された裏側詰物体23と、裏側地21と裏側詰物体23との間に配置された不織布24(
図9参照)とを備えて構成されている。なお、
図7及び
図8では、不織布24の図示が省略されている。
裏側地21は、表側地11とは反対側であって就寝者に近接する位置に配置される。
表側部10と裏側部20とは表裏面の全体がキルト用糸Fで縫製される。つまり、表側詰物体13、表側中間地12、裏側中間地22及び裏側詰物体23を挟んで表側地11と裏側地21とがキルト用糸Fで貫通される。キルト用糸Fで縫製された跡が表側部10の平面と裏側部20の裏面とに貫通キルト線Qとして形成されることになる(
図1から
図4参照)。
【0022】
図1から
図4に示される通り、貫通キルト線Qは、平面視で第一湾曲部t11と第二湾曲部t21との間に配置される第一貫通キルト線Q1と、第一貫通キルト線Q1の間にそれぞれ配置された4本の第二貫通キルト線Q2と、第二貫通キルト線Q2より就寝者の首元側に配置される第三貫通キルト線Q3と、第二貫通キルト線Q2より就寝者の足元を囲うように湾曲形成された第四貫通キルト線Q4とから構成される。第一貫通キルト線Q1、第二貫通キルト線Q2、第三貫通キルト線Q3及び第四貫通キルト線Q4は、互いに交差するものではなく、各々の間には所定の隙間が形成されている。
なお、表側地11には表側キルト線Tと貫通キルト線Qとの双方が表示され、裏側地21には貫通キルト線Qのみが表示される。
【0023】
第一貫通キルト線Q1は、中心線Cを挟んでそれぞれ対向配置されており、第二湾曲部t21と同じ方向に向いて湾曲した第三湾曲部q11と、第三湾曲部q11の一端から第三貫通キルト線Q3に向けて延びる第一延長線部q12と、第三湾曲部q11の他端から第四貫通キルト線Q4に向けて延びる第二延長線部q13と、第一延長線部q12の端部に接続される第三延長部q14と、第二延長線部q13の端部に接続される第四延長部q15とから構成される。
第三延長部q14は、基端が第一延長部q12に接続され第一接続部t221と交差する線部と先端が第一辺縁1Aに向いた線部とを有する平面逆L形形状である。第四延長部q15は、基端が第二延長線部q13に接続され第二接続部t222と交差する線部と先端が第一辺縁1Aに向いた線部とを有する平面L形形状である。
4本の第二貫通キルト線Q2は、それぞれ中心線Cと交差する方向に沿って形成され、かつ、互いに所定間隔離して配置されている。4本の第二貫通キルト線Q2のうちそれぞれ第一辺縁1Aに近い位置にある2本の第二貫通キルト線Q2は、第三接続部t223と同じ円弧上にある。第三接続部t223と第二貫通キルト線Q2との間には隙間がある。
4本の第二貫通キルト線Q2のうち残り2本の第二貫通キルト線Q2は、平面視において、それぞれ第一表側キルト線T1と交差し、かつ、互いに反対側に湾曲している。
第三貫通キルト線Q3は、第二貫通キルト線Q2より一方の第二辺縁1Bに近接して配置されており、就寝者の首元を囲うように円弧状に形成されている。
第四貫通キルト線Q4は、第二接続部t222と同じ円弧上にある。第二接続部t222と第四貫通キルト線Q4との間には隙間がある。
【0024】
掛け布団の断面構造の詳細を
図9に基づいて説明する。
図9において、表側地11は、表側詰物体13と対向する面が起毛された布帛である。布帛として、レーヨン40%、綿30%、ポリエステル30%の布帛を例示できる。
裏側地21はニットであり、ニットは、ポリエステル100%のニットを例示できる。
表側詰物体13と裏側詰物体23とはそれぞれ繊維、例えば、ポリエステル100%の繊維等から形成される。
本実施形態では、表側詰物体13を構成する繊維として、3次元クリンプで「ふっくらさ」と「嵩高性」に優れた繊維を例示できる。3次元クリンプであるため、表側詰物体13に空気を含むことになり、暖かさと気密性を保つことができる。
裏側詰物体23を構成する繊維として、伸縮性の優れた柔らかい綿を例示できる。この繊維として、例えば、帝人株式会社製のソロテックス(登録商標)を例示できる。
表側中間地12及び裏側中間地22は、それぞれ不織布から形成されている。これらの不織布と不織布24とは同じ材質から形成されてもよい。
【0025】
掛け布団の製造方法を
図10に基づいて説明する。
[第一縫製工程]
まず、
図10(A)に示される通り、表側地11と表側中間地12との間に表側詰物体13を収納して積層体を形成し、この積層体をキルト用糸Fで縫製して表側部10を縫製する。そのため、表側地11の上に表側詰物体13を配置し、その上に、表側中間地12を配置し、この状態で、図示しないソーイングマシーンで縫製作業を行う。なお、当該積層体の外周縁は表側詰物体13を収納した後に縫製しておく。
第一縫製工程を実施する際、表側部10の表裏面に、第一表側キルト線T1と、第二表側キルト線T2とが形成されるが、これらの第一表側キルト線T1と第二表側キルト線T2とが交差しないようする。
【0026】
[第二縫製工程]
その後、
図10(B)に示される通り、表側部10の上に、裏側地21と裏側中間地22との間に裏側詰物体23を収納して形成された積層体を積層し、裏側詰物体23を間に挟んだ裏側地21及び裏側中間地22と、裏側中間地22に積層された表側部10とを前述のソーイングマシーンで縫製作業をする。なお、裏側地21、裏側中間地22及び裏側詰物体23は裏側部20を構成するものであり、これらの外周縁を適宜縫製する。
第二縫製工程では、第一貫通キルト線Q1と、第二貫通キルト線Q2と、第三貫通キルト線Q3と、第四貫通キルト線Q4とがそれぞれ交差しないようにする。
【0027】
従って、本実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)表側キルト線Tは、表側部10の中心線Cに沿って形成された中央部10Aと辺縁部10Cとを区画する第一表側キルト線T1から形成される。そのため、就寝者の直上には、第一表側キルト線T1によって区画された中央部10Aがあり、就寝者の両側横には辺縁部10Cがあるため、表側部10の全体で就寝者全体を包み込むようになり、保温性が向上する。
【0028】
(2)第一表側キルト線T1は、中心線Cを挟んで互いに対向配置され凹状に湾曲した第一湾曲部t11を有する。第一湾曲部t11により、中央部10Aに多くの表側詰物体13を保持することができるので、この点からも保温性が向上する。
【0029】
(3)貫通キルト線Qは、平面視で第一表側キルト線T1より第一辺縁1A側にそれぞれ配置された第一貫通キルト線Q1と、中心線Cと交差する方向に沿って形成された第二貫通キルト線Q2と、就寝者の首元を囲うように湾曲形成された第三貫通キルト線Q3と、就寝者の足元を囲うように湾曲形成された第四貫通キルト線Q4と、を備えている。そのため、掛け布団の全体の表裏面に形成される第一貫通キルト線Q1に沿って掛け布団が屈曲し、就寝者の側部と掛け布団との間に隙間が生じない。さらに、第二貫通キルト線Q2に沿って掛け布団が屈曲し、掛け布団が就寝者の身長に沿った凹凸に沿うものとなる。さらに、第三貫通キルト線Q3によって、首元が確実に囲われることになり、首元と掛け布団との間に隙間が生じない。第四貫通キルト線Q4によって、足元が確実に囲われることになり、足元と掛け布団との間に隙間が生じない。しかも、第三貫通キルト線Q3が湾曲しているため、掛け布団の中央部が盛り上がっても、掛け布団が就寝者の首元に密着する。さらに、第四貫通キルト線Q4が湾曲しているため、就寝者の足元が確実に囲われる。
【0030】
(4)側部10Bと辺縁部10Cとが第二表側キルト線T2で区画されているから、この点からも、表側部10の全体で就寝者全体を包み込むようになり、保温性が向上する。しかも、第二表側キルト線T2は、第一湾曲部t11と対向し第一湾曲部t11とは反対側に向けて湾曲する第二湾曲部t21と、第一表側キルト線T1と接続する接続部t22とから形成される。第二湾曲部t21は、中心線Cに向けて凸となるように湾曲するので、掛け布団の中央部が盛り上がっても、掛け布団が引き寄せられることになり、密着性が確保される。接続部t22により、第二表側キルト線T2が表側詰物体13の周囲を囲うことになるため、掛け布団の中央部が高く盛り上がったとしても、第二表側キルト線T12で囲われた表側詰物体13が側部に保持されたままとなり、保温性が損なわれない。
【0031】
(5)第一貫通キルト線Q1は、第三貫通キルト線Q3に向けて延びる第一延長線部q12と、第四貫通キルト線Q4に向けて延びる第二延長線部q13と、第一延長線部q12の端部に接続される第三延長部q14と、第二延長線部q13の端部に接続される第四延長部q15とを備えている。第三延長部q14は、第一接続部t221と交差する線部と先端が第一辺縁1Aに向いた線部とを有する平面逆L形形状である。第四延長部q15は、第二接続部t222と交差する線部と先端が第一辺縁1Aに向いた線部とを有する平面L形形状である。そのため、キルトによる抑え部分を増加させることで、表側詰物体13や裏側詰物体23を構成する綿等が切断されることを防止でき、耐洗濯性が向上する。
【0032】
(6)表側地11は、表側詰物体13と対向する面が起毛された布帛であるので、繊維等から形成される表側詰物体との摩擦が大きくなり、表側地11と表側中間地12との間に収納された表側詰物体13が表側地11に対してずれることがない。そのため、使用中に表側詰物体13が偏ったりすることを防止できる。
【0033】
(7)裏側地21はニットからなるので、掛け布団全体が容易に撓むことが可能となるので、この点からも、就寝者と掛け布団との間に隙間が生じにくいものとなる。しかも、裏側地21と裏側詰物体23との間に不織布24が積層されているので、不織布24によって、裏側詰物体23を形成する繊維が掛け布団の外に抜け出ることを防止できる。
【0034】
(8)表側地11と表側中間地12との間に表側詰物体13を収納し、これらをキルト用糸Fで縫製して表側部10を製造し、その後、表側部10の上に、裏側地21と裏側中間地22との間に裏側詰物体23を収納したものを積層し、これらをキルト用糸Fで縫製して掛け布団を製造する。そのため、表側部の上に裏側部を配置し、その状態で、全体の縫製を行うので、掛け布団の製造を効率的に行うことができる。しかも、第一表側キルト線T1と、第二表側キルト線T2とを交差しないように縫製し、第一貫通キルト線Q1と、第二貫通キルト線Q2と、第三貫通キルト線Q3と、第四貫通キルト線Q4とがそれぞれ交差しないように縫製するので、伝線が生じることを防止できる。
【0035】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を
図11及び
図12に基づいて説明する。
第2実施形態は、表面キルト線T及び貫通キルト線Qの平面形状が第1実施形態とは異なるもので、他の構成は第1実施形態と同じである。第2実施形態では、第1実施形態と同一構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
図11及び
図12において、表側キルト線Tは、第一表側キルト線T1と、第一表側キルト線T1より第一辺縁1A側に位置する第三表側キルト線T3とから構成されている。
第三表側キルト線T3は、一端が第一表側キルト線T1の第一湾曲部t11と曲線部t12との接続部分の近傍に位置し、他端が第一辺縁1Aに向けて位置する。
【0036】
貫通キルト線Qは、第一貫通キルト線Q1、第二貫通キルト線Q2、第三貫通キルト線Q3及び第四貫通キルト線Q4の他に、第五貫通キルト線Q5を備えている。
第一貫通キルト線Q1は、それぞれ第三表側キルト線T3より第一辺縁1Aに配置されている。これらの第一貫通キルト線Q1は、第一辺縁1Aの長さ方向に沿って互いに離れて配置されている。
第五貫通キルト線Q5は、第一表側キルト線T1を構成する第一湾曲部t11より、第一辺縁1A側にそれぞれ3本ずつ配置されている。第五貫通キルト線Q5は第二辺縁1Bに平行に伸びて形成されている。
【0037】
第2実施形態における掛け布団の断面構造及び製造方法は第1実施形態と同じである。
第2実施形態では、第1実施形態の(1)(2)(5)〜(8)と同様の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(9)貫通キルト線Qは、第二辺縁1Bに平行に伸びて形成された複数の第五貫通キルト線Q5を備えているので、第五貫通キルト線Q5に沿って掛け布団が屈曲し、掛け布団が就寝者の身長に沿った凹凸に沿うものとなる。そのため、保温性がより高いものとなる。
【0038】
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、表側地11を起毛された布帛から構成したが、本発明では、必ずしも起毛させることを要しない。仮に、起毛させる場合でも、表側詰物体13と対向する面に限定されるものではなく、装飾を考慮して表面に形成してもよい。
しかも、本発明では、裏側地21をニットから形成することを要せず、表側部10と同様の構成としてもよい。
さらに、表側詰物体13と裏側詰物体23とは羽毛から構成するものでもよく、両者の材質を同じにしてもよい。
また、本発明では、第一表側キルト線T1は、必ずしも中心線Cを挟んで互いに対向配置された構成に限定されるものではなく、第一表側キルト線T1をそれぞれ半分の長さとし、一方の第一表側キルト線を首元側に配置し、他方の第一表側キルト線を足元側に配置した構成としてもよい。さらに、第一表側キルト線T1は直線状に形成してもよく、あるいは、蛇行した形状としてもよい。凹状に湾曲させる場合であっても、底部が中心線Cに近接する構成としてもよい。
さらに、第三貫通キルト線Q3と第四貫通キルト線Q4との少なくとも一方は、直線状に形成するものであってもよい。
また、第1実施形態では、第三延長部q14及び第四延長部q15を必ずしも設けることを要しない。