特許第6412444号(P6412444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6412444
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】サージ保護素子の劣化監視装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 9/04 20060101AFI20181015BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20181015BHJP
   H01T 4/02 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   H02H9/04 A
   H02H7/00 C
   H01T4/02 F
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-36306(P2015-36306)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-158445(P2016-158445A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】見澤 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】林 智仁
【審査官】 早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−273362(JP,A)
【文献】 特開2011−223645(JP,A)
【文献】 特開平10−253685(JP,A)
【文献】 特開平02−111003(JP,A)
【文献】 特公昭51−009894(JP,B1)
【文献】 特開2001−281270(JP,A)
【文献】 特開平07−280845(JP,A)
【文献】 特開平08−178990(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/058318(WO,A1)
【文献】 特開平06−276674(JP,A)
【文献】 特開2014−048188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H7/00
H02H7/10−7/20
H02H9/00−9/08
H01T1/00−4/20
H01T7/00−23/00
H01C7/02−7/22
H01F27/42
H01F38/20−38/40
G01R19/00−19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保護回路へのサージ電流の侵入を防止するサージ保護素子の劣化の度合いを監視するサージ保護素子の劣化監視装置において、
前記サージ保護素子と直列に接続され、前記サージ保護素子を通して流れるサージ電流の供給を受けて磁界を発生するコイルと、
前記コイルの近傍に配置され、前記コイルが発生する磁界によって渦電流が生じる導電体と、
前記導電体に生じる渦電流の大きさを検出する渦電流検出部と、
前記渦電流検出部によって検出された渦電流の大きさに基づいて、前記サージ保護素子にサージ電流が流れた回数を積算し、その積算した回数に基づいて前記サージ保護素子の劣化の度合いを判定する劣化度合い判定部とを備え、
前記劣化度合い判定部は、
前記渦電流検出部によって検出された渦電流の大きさが所定の閾値を超えた直後に再び所定の閾値以内に収まった時を1回として、前記サージ保護素子にサージ電流が流れた回数を積算する
ことを特徴とするサージ保護素子の劣化監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたサージ保護素子の劣化監視装置において、
前記コイルと前記導電体とは、所定の距離を保って絶縁部材によって覆われている
ことを特徴とするサージ保護素子の劣化監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたサージ保護素子の劣化監視装置において、
前記コイルと前記導電体とを覆う絶縁部材は、さらに金属シールドで覆われている
ことを特徴とするサージ保護素子の劣化監視装置。
【請求項4】
請求項1に記載されたサージ保護素子の劣化監視装置において、
前記劣化度合い判定部は、
前記積算した回数が前記サージ保護素子に対して定められている使用可能な限界値に達したときを前記サージ保護素子の寿命がつきたと判定する
ことを特徴とするサージ保護素子の劣化監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被保護回路へのサージ電流の侵入を防止するサージ保護素子の劣化の度合いを監視するサージ保護素子の劣化監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラントのプロセス制御などで使用している電子システムでは、電源配線や通信線路などの線路を伝わって機器内に侵入しようとするサージ電流から機器内の電子回路を保護するために、線路にサージ保護素子を設けている。すなわち、電源配線や通信線路などの線路にサージ保護素子を設けることによって、機器内の電子回路(被保護回路)へのサージ電流の侵入を防止するようにしている。
【0003】
図4にサージ保護素子としてバリスタを用いた例を示す。同図において、1は被保護回路、2はバリスタであり、被保護回路1への線路L1,L2間に被保護回路1に対して並列にバリスタ2を接続している。3はインパルス性のノイズ電圧を示し、Z0はノイズ発生源の内部抵抗やラインインピーダンスを示す。
【0004】
図5にバリスタ2の電圧−電流特性を示す。バリスタ2は、両端子間の電圧が低い場合には電気抵抗が高いが、ある程度以上に電圧が高くなると急激に電気抵抗が低くなる性質を持つ。この急激に電気抵抗が低くなる点の電圧をバリスタ電圧と呼ぶ。
【0005】
図4に示した回路は、ノイズ電圧3がバリスタ電圧以下のときには、図6に示すような回路として表される。これに対して、ノイズ電圧3がバリスタ電圧を超えたときには、図7に示すような回路として表され、バリスタ2にサージ電流が流れることにより、被保護回路1へのサージ電流の侵入が防がれる。
【0006】
バリスタなどのサージ保護素子は、その動作原理上、サージ電流が流れる度に劣化する。例えば、酸化亜鉛(ZnO)バリスタは、主成分を酸化亜鉛とし、この酸化亜鉛に数種類の添加物質を加え、焼成して造られる。酸化亜鉛(ZnO)バリスタでは、1つのZnO結晶粒当たり約3Vの立ち上がり電圧(バリスタ電圧)が得られる。なお、酸化亜鉛(ZnO)バリスタは、図8に示すように、ZnO結晶粒がブロック状に結合している構造とされており、直列に積み上げることでバリスタ電圧を制御できる。また、電極間の面積を変えることで、サージ電流耐量を制御できる。
【0007】
ZnOバリスタは、その構造上、バリスタ電圧の低下と漏れ電流の増加が起こるため、サージ電流が繰り返し流れると、劣化が進む。これは、サージ電流のエネルギーにより境界(高抵抗)層の弱い部分が徐々に破壊(短絡)されて行くためである。ZnOバリスタにおいて、劣化が進むと、最終的には電極間が短絡状態になる。ダイオードについても、過大な電流が加わると、接合部が局所的に発熱する。これにより、接合部が融解し、短絡状態となる。
【0008】
サージ保護素子は、劣化が進む度に、電流が流れ易くなる。劣化が進み短絡状態で大電流が流れると、短絡状態のサージ保護素子は溶融破損し、絶縁状態となる。この絶縁状態でサージ電流が発生した場合、そのサージ電流は全て被保護回路に流れるため、回路保護が達成できなくなる。
【0009】
サージ保護素子が破壊した場合に、それを回路から切り離すように、ヒューズを直列に入れる例もある(例えば、非特許文献1参照)。しかし、サージ保護素子が回路から切り離された状態でサージ電流が流れれば、上記と同様に、そのサージ電流が全て被保護回路に流れるため、回路保護が達成できなくなる。また、ヒューズが断線するまで劣化の度合いが不明である。
【0010】
このために、サージ保護素子の劣化の度合いを監視する必要性が生じ、サージ保護素子の劣化を監視する装置として種々の提案がなされている。例えば、特許文献1では、サージ吸収素子をギャップ式の放電管と非直線抵抗体とで構成し、ギャップ式の放電管に対向して放電光を検出する受光素子を設け、受光素子の検出信号をカウント(サージ侵入回数をカウント)するようにしている。また、特許文献2では、バリスタと接地端子との間に放電ギャップを有するガスアレスタを接続し、このガスアレスタの放電時の発光をフォトトランジスタで検知するようにし、ガスアレスタの発光時間に基づいてバリスタの劣化を判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平05−089938号公報
【特許文献2】特開2012−104598号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】発明協会公開技報2002−500636号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に示された方式では放電管と受光素子とを必要とし、また特許文献2に示された方式ではガスアレスタとフォトトランジスタとを必要とし、回路の構成が複雑となる。また、回路電力を消費し易い。
【0014】
なお、他の例として、サージ保護素子の漏れ電流を検知する方式もある。しかし、サージ保護素子の漏れ電流は僅かな値(μAレベル)であるため、被保護回路からサージ保護素子を外し、専用の機器で測定しなくては分からない。
【0015】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、簡単な回路構成で、かつ少ない電力で、簡易にサージ保護素子の劣化を監視することが可能なサージ保護素子の劣化監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような目的を達成するために本発明は、被保護回路へのサージ電流の侵入を防止するサージ保護素子の劣化の度合いを監視するサージ保護素子の劣化監視装置において、サージ保護素子と直列に接続され、サージ保護素子を通して流れるサージ電流の供給を受けて磁界を発生するコイルと、コイルの近傍に配置され、コイルが発生する磁界によって渦電流が生じる導電体と、導電体に生じる渦電流の大きさを検出する渦電流検出部と、渦電流検出部によって検出された渦電流の大きさに基づいて、サージ保護素子にサージ電流が流れた回数を積算し、その積算した回数に基づいてサージ保護素子の劣化の度合いを判定する劣化度合い判定部とを備え、劣化度合い判定部は、渦電流検出部によって検出された渦電流の大きさが所定の閾値を超えた直後に再び所定の閾値以内に収まった時を1回として、サージ保護素子にサージ電流が流れた回数を積算することを特徴とする。
【0017】
この発明において、サージ保護素子にサージ電流が流れると、このサージ保護素子を通して流れるサージ電流の供給を受けてコイルが磁界を発生する。そして、このコイルが発生する磁界によって導電体に渦電流が生じ、この導電体に生じる渦電流の大きさが渦電流検出部によって検出される。渦電流の大きさは、その渦電流によって生じる電圧の値として検出することが可能である。そして、この渦電流検出部によって検出された渦電流の大きさに基づいて、サージ保護素子にサージ電流が流れた回数が積算され、その積算された回数に基づいてサージ保護素子の劣化の度合いが判定される。
【0018】
本発明において、サージ保護素子の劣化の度合いの判定に際しては、渦電流検出部によって検出された渦電流の大きさが所定の閾値を超えた直後に再び所定の閾値以内に収まった時を1回として、サージ保護素子にサージ電流が流れた回数を積算する。
【0019】
このような構成とすることにより、本発明では、放電時の発光を検出する方式と比較して回路構成が簡単となる。また、コイルが発生する磁界によって生じる渦電流を利用するので、電力の消費も少なくなる。また、サージ保護素子の漏れ電流よりも大きな値として得られる渦電流を利用するので、被保護回路に対してサージ保護素子を取り付けたままでの劣化の監視が可能である。
【0020】
本発明において、コイルと導電体とは、所定の距離を保って絶縁部材によって覆うようにするとよい。これにより、コイルと導電体との間の距離が保たれ、コイルが発生する磁界を導電体に確実に作用させることが可能となる。また、コイルと導電体とを覆う絶縁部材を金属シールドで覆うようにするとよい。これにより、外部からの磁気の影響を防ぐことも可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、サージ保護素子を通して流れるサージ電流をコイルに供給し、このコイルが発生する磁界によって導電体に渦電流を生じさせ、この導電体に生じる渦電流の大きさに基づいてサージ保護素子にサージ電流が流れた回数を積算し、その積算した回数に基づいてサージ保護素子の劣化の度合いを判定するようにしたので、簡単な回路構成で、かつ少ない電力で、簡易にサージ保護素子の劣化を監視することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係るサージ保護素子の劣化監視装置の一実施の形態の要部を示す図である。
図2】コイルと導電体とを樹脂(絶縁部材)でモールドするようにした例を示す図である。
図3】コイルと導電体とを覆う樹脂(絶縁部材)を金属シールドで覆うようにした例を示す図である。
図4】被保護回路へのサージ電流の侵入を防止するサージ保護素子としてバリスタを用いた例を示す図である。
図5】バリスタの電圧−電流特性を示す図である。
図6】ノイズ電圧がバリスタ電圧以下のときの状態を表した図である。
図7】ノイズ電圧がバリスタ電圧を超えたときの状態を表した図である。
図8】バリスタの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は本発明に係るサージ保護素子の劣化監視装置の一実施の形態の要部を示す図である。同図において、図4と同一符号は図4を参照して説明した構成要素と同一或いは同等の構成要素を示し、その説明は省略する。
【0025】
この実施の形態では、被保護回路1への線路L1,L2間に、被保護回路1に対して並列にバリスタ2とコイル4との直接接続回路を接続し、コイル4の近傍に導電体5を配置している。
【0026】
また、導電体5に生じる渦電流の大きさを渦電流検出部6によって検出し、劣化判定度合い判定部7へ送り、この劣化判定度合い判定部7での判定結果を判定結果報知部8へ送るようにしている。
【0027】
渦電流検出部6や劣化度合い判定部7などは、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現される。
【0028】
このサージ保護素子の劣化監視装置では、線路L1,L2間にノイズ電圧NZが印加されると、被保護回路1へ侵入しようとするサージ電流がバリスタ2を通してコイル4に流れ、コイル4が磁界を発生する。
【0029】
コイル4が磁界を発生すると、このコイル4が発生する磁界によって、コイル4の近傍に配置されている導電体5に渦電流が流れる。この導電体5に流れる渦電流の大きさは、渦電流検出部6によって検出される。この場合、渦電流検出部6は、導電体5に流れる渦電流の大きさを、この渦電流によって生じる電圧の値として検出する。
【0030】
渦電流検出部6によって検出された渦電流の大きさは劣化度合い判定部7へ送られる。劣化度合い判定部7は、渦電流検出部6によって検出された渦電流の大きさが所定の閾値thを超えた直後に再び所定の閾値th以内に収まった時を1回として、バリスタ2にサージ電流が流れた回数を積算する。
【0031】
そして、劣化度合い判定部7は、バリスタ2にサージ電流が流れた回数の積算値(積算回数)をNとし、この積算回数Nとバリスタ2に対して使用可能な積算回数の限界値として定められているNmaxとを比較し、積算回数Nが限界値Nmaxに達したときをバリスタ2に寿命がつきたと判定する。この劣化度合い判定部7での判定結果は判定結果報知部8へ送られる。
【0032】
判定結果報知部8は、劣化度合い判定部7からの判定結果を受けて、その判定結果を保守員などに知らせる。例えば、バリスタ2に寿命がつきたとする判定結果を受けて、LED(Light Emitting Diode)を点灯したり、LCD( Liquid Crystal Display)に寿命がつきた旨のメッセージを表示したり、ブザーを鳴動させたりする。
【0033】
保守員は、判定結果報知部8からの知らせを受けることにより、バリスタ2が寿命に到達しているか否かを即座に確認することができる。そして、バリスタ2が寿命に到達している場合には、例えば、その場でバリスタ2の交換作業を行ったり、メーカ等に交換を依頼したりする。
【0034】
以上の説明から分かるように、本実施の形態のサージ保護素子の劣化監視装置によれば、バリスタ2にコイル4を直列に接続し、コイル4の近傍に導電体5を配置するのみでよく、放電時の発光を検出する方式と比較して回路構成が簡単となる。また、コイル4が発生する磁界によって生じる渦電流を利用するので、電力の消費も少なくなる。また、バリスタ2の漏れ電流よりも大きな値として得られる渦電流を利用するので、被保護回路1に対してバリスタ2を取り付けたままでの劣化の監視が可能となる。
【0035】
なお、上述した実施の形態では、コイル4の近傍に導電体5を単に配置するものとしたが、図2に示すように、コイル4と導電体5とを樹脂(絶縁部材)9でモールドするようにし、コイル4と導電体5との間の距離を所定の距離Lに保つようにしてもよい。これにより、コイル4と導電体5との間の距離が保たれ、コイル4が発生する磁界を導電体5に確実に作用させることが可能となる。
【0036】
また、図3に示すように、図2に示した構成において、さらに、コイル4と導電体5とを覆う樹脂(絶縁部材)9を金属シールド10で覆うようにすると、外部からの磁界の影響を防ぐことも可能となる。
【0037】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…被保護回路、2…バリスタ、4…コイル、5…導電体、6…渦電流検出部、7…劣化度合い判定部、8…判定結果報知部、9…樹脂(絶縁部材)、10…金属シールド、L1,L2…線路、NZ…ノイズ電圧。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8