【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の詳細
本発明の目的は、低漂遊インダクタンスのパワーモジュールを提供することである。
【0010】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。さらなる例示的な実施形態は、従属請求項および以下の説明から明らかである。
【0011】
本発明のある態様は、ハーフブリッジを設けるパワーモジュールに関する。パワーモジュールは、複数の半導体スイッチを電気的におよび機械的に相互接続する装置であり得る。通常、パワーモジュールは基板を備え、該基板は、半導体スイッチが接合される1面または両面に金属化層を有し得る。基板および1つ以上の金属化層は、DBC(ダイレクトボンド銅)基板でもよい。さらに、パワーモジュールは端子を備えてもよく、これらの端子は金属化層に接合され得る。基板、半導体スイッチ、および端子は、入れ物に鋳込むことができる。
【0012】
ハーフブリッジは電気回路でもよく、2つのDC接続点の間で直列に接続されてその中間にAC接続点を設ける2つのスイッチ素子を備える。DC接続点およびAC接続点は、パワーモジュールの端子に電気的に接続され得る。各スイッチ素子は、並列に電気的に接続された1つ以上の半導体スイッチで構成し得る。
【0013】
パワーモジュールは電気変換器で使用可能で、たとえば、DCリンクまたは電気自動車のバッテリなどのバッテリに供給されるDC電圧を整流し得る。インバータは、電気自動車のモータなどの電気モータに供給されるAC電圧を生成することも可能である。パワーモジュールは、電気自動車、オートバイ、バス、オフロード建設車両、トラック、および充電所など、自動車関係の用途で使用し得る。
【0014】
パワーモジュールは、10Aを超える電流を処理するようにできる。パワーモジュールは、1kVより低い電圧を処理するようにされた低電圧モジュール、または、1kV〜30kVの間の電圧を処理するようにされた中間電圧モジュールでもよい。
【0015】
本発明のある実施形態によると、パワーモジュールは、少なくとも1つの基板と、内側金属化領域と、2つの中間金属化領域と、2つの外側金属化領域とを備え、これらの各々は基板の縦方向に延在する。金属化領域は1つ以上の基板の1つの側に配置されてもよく、および/または、1つの金属化層によって設けられてもよい。なお、金属化領域は基板上で互いに切断されていてもよく、すなわち、金属化層において溝によって分離されていてもよい。しかしながら、2つの中間金属化領域および/または2つの外側金属化領域のように、金属化領域のなかには、パワーモジュール内でたとえばワイヤボンドを介して、電気的に相互接続されているものもあり得る。
【0016】
2つの中間金属化領域は少なくとも1つの基板の横方向に対して内側金属化領域のそばに配置され、各外側金属化領域は横方向に対して2つの中間金属化領域のうちの1つのそばに配置されている。一般に、パワーモジュールは、内側、中間、および外側金属化領域が実質的に延在する縦方向と、これらの領域が並べて配置されている横方向とを有し得る。1つの外側金属化領域、1つの中間金属化領域、内側金属化領域、他の1つの中間金属化領域、および他の1つの外側金属化領域は、横方向にこの順番に配置され得る。
【0017】
さらに、パワーモジュールは半導体スイッチの2つの内側の組を備える。半導体スイッチの各内側の組は、半導体スイッチの内側の組がハーフブリッジの第1の腕を形成するように、中間金属化領域に接合されて内側金属化領域に電気的に接続されている。パワーモジュールは半導体スイッチの2つの外側の組も備え、半導体スイッチの各外側の組は、半導体スイッチの外側の組がハーフブリッジの第2の腕を形成するように、外側金属化領域に接合されて中間金属化領域に電気的に接続されている。内側の組および/または外側の組からなる半導体スイッチは、内側金属化領域および/または対応する中間金属化領域とワイヤボンドを介して接続され得る。各内側および各外側の組の半導体スイッチは、金属化領域さらには電気接続(ワイヤボンドなど)を介して電気的に互いに並列に接続され得る。さらに、内側の組は互いに並列に接続され、外側の組は、外側金属化領域を互いに、および/または、中間金属化領域を互いに相互接続する更なる電気相互接続によって、並列に接続され得る。
【0018】
半導体スイッチの各々は、たった1つのチップに設けられてもよく、および/または、たとえば、主にSiCからなるワイドバンドギャップスイッチであってもよい。半導体スイッチは、IGBTおよび/またはMOSFETでもよい。
【0019】
このように、2つのほぼ鏡像対称な半導体スイッチ/金属化領域の配置は形成され、これらは内側金属化領域を共有している。これにより、電気相互接続が少ない設計が可能で、電流のバランスを改善し得る。シミュレーションによって、対応する方法では、上で述べた配置と比べてパワーモジュールの内部漂遊インダクタンスが低下することが分かっている。そのような配置では、同一の(ただし、鏡像対称ではない)ユニットは並列にされている。
【0020】
本発明のある実施形態によると、半導体スイッチの各内側の組および/または半導体スイッチの各外側の組は縦方向に延在する列に配置されている。したがって、基板に4列の半導体スイッチを設けてもよい。各列は、同じ数の半導体スイッチを備えてもよく、4つの半導体スイッチ(1つの列/組の各々)を横方向に一直線に並べてもよい。
【0021】
本発明のある実施形態によると、パワーモジュールは隣に並べられた少なくとも2つの基板を備え、これらの基板は縦方向に続いている。内側金属化領域、中間金属化領域、および外側金属化領は、少なくとも2つの基板にわたって縦方向に分散および/または延在し得る。1つの基板上の各領域のある部分は、ワイヤボンドを介して隣の基板上の別の部分に電気的に接続され得る。
【0022】
本発明のある実施形態によると、パワーモジュールは隣に並べられた少なくとも2つの基板を備え、これらの基板は横方向に続いている。内側金属化領域は少なくとも2つの基板にわたって横方向に分散し得る。一方の基板の内側金属化領域のある部分は、ワイヤボンドを介してもう一方の基板の別の部分に電気的に接続され得る。
【0023】
本発明のある実施形態によると、2つの外側金属化領域、半導体スイッチの2つの外側の組、2つの中間金属化領域、および半導体スイッチの2つの内側の組の配置は、内側金属化領域の対称軸に対して鏡像対称になっている。たとえば、対称軸は基板および/またはパワーモジュールの中間軸でもよい。既に述べたように、これにより、非常に均衡のとれた電流になり得、漂遊インダクタンスが低下し得る。
【0024】
本発明のある実施形態によると、基板のAC側で、中間金属化領域は、横方向に延在するAC接触領域と電気的に相互接続する。一般に、基板および/またはパワーモジュールは、AC端子が基板に電気的に接続および/または接合し得るAC側と、DC端子が基板に電気的に接続および/または接合し得るDC側とを有し得る。半導体スイッチは、(縦方向に対して)AC側とDC側との中間に配置され得る。AC側では、中間金属化領域は横方向に延在するAC接触領域を介して互いに電気的に相互接続されているが、AC端子と直接接続されていてもよい。
【0025】
本発明のある実施形態によると、中間金属化領域およびAC接触領域は一体型の金属化領域であり得る。しかしながら、AC接触領域を基板上で内側金属化領域から分離し、ワイヤボンドで内側金属化領域と電気的に接続することも可能である。
【0026】
DC側では、DC+端子を電気的に接続および/または接合するための少なくとも1つのDC+接触領域、ならびにDC−端子を電気的に接続および/または接合するためのDC−接触領域が設けられ、これらは内側および/または外側金属化領域の延長部分であってもよい。
【0027】
一般に、パワーモジュールは、2つの外側金属化領域によって設けられた2つのDC接触領域と内側金属化領域によって設けられた1つのDC接触領域とを備え得る。2つの外側接触領域はDC+またはDC−接触領域でもよい。内側接触領域はDC−またはDC+接触領域でもよい。
【0028】
本発明のある実施形態によると、基板および/またはパワーモジュールのDC側では、内側金属化領域は内側DC接触領域を設け、内側DC接触領域は、内側金属化領域のT字形の端部が形成されるように、中間金属化領域にわたって横方向に延在する。このように、2つの外側DC端子に対して2倍の電流容量を有する内側DC端子が基板に接続され得る。
【0029】
本発明のある実施形態によると、基板および/またはパワーモジュールのDC側では、各外側金属化領域は外側DC接触領域を設け、外側DC接触領域は、外側金属化領域のL字形の端部が形成されるように、中間金属化領域にわたって横方向に延在する。これにより、DC端子のための接触領域を設けることがさらに容易になり得る。(金属化/接触領域を分離する空間を除く)DC側の全空間は内側および外側DC接触領域によって覆われていてもよい。
【0030】
2つの外側金属化領域が電気的に相互接続されていない場合、スイッチングの間に望ましくない振動が発生するリスクがある。2つの外側金属化領域は基板の高さで、たとえばワイヤボンドによって電気的に接続され得る。外側金属化領域はパワーモジュールの内部で電気的に接続されて電気的な均衡を改善し得る。
【0031】
本発明のある実施形態によると、外側DC接触領域は、基板のDC側で、内側金属化領域にわたって延在する導電体と電気的に相互接続されている。外側DC接触領域は、ケーブルまたは長いワイヤボンドなどの導電体を介して直接、相互接続され得る。
【0032】
半導体スイッチが外部信号によって制御可能である場合、ゲート制御信号は半導体スイッチに分散されてもよい。ゲート制御信号は、ワイヤボンドおよび基板上のさらなる金属化領域を用いて分散され得る。
【0033】
本発明のある実施形態によると、内側金属化領域と各中間金属化領域との間で、内側ゲート接触領域が基板上に設けられる。半導体スイッチの内側の組は、たとえばワイヤボンドを介して内側ゲート接触領域に接続され得る。両内側ゲート接触領域は基板上に設けられたさらなる金属化領域によって互いに電気的に接続できるため、基板と一体になっていてもよい。本発明のある実施形態によると、外側ゲート接触領域は、各外側金属化領域と隣接した中間金属化領域との間に設けられる。半導体スイッチの外側の組は、たとえばワイヤボンドを介して外側ゲート接触領域に接続され得る。外側ゲート接触領域は、さらにワイヤボンドを介して、たとえば、内側金属化領域のそばに設けられたブリッジ領域を介して、互いに電気的に相互接続され得る。これにより、ハーフブリッジのもう一方の半分において、ゲート信号を均一に分散し得る。
【0034】
さらに、外側ゲート接触領域は、横方向に延在する中間部を有する1つの外側ゲート接触金属化領域によって設けられ得る。たとえば、中間部はAC接触領域のそばのAC側に設けてもよく、中間金属化領域を相互接続している。
【0035】
一般に、ゲート接触領域はパワーモジュールの対称軸に対して鏡像対称に配置され得る。なお、ゲート信号の分散は半導体スイッチの内側の組および外側の組について異なっていてもよく、各組はハーフブリッジの側/半分を形成する。
【0036】
本発明のある実施形態によると、内側金属化領域はハーフブリッジのDC−接触を設け、外側金属化領域はハーフブリッジのDC+接触を設ける。これにより、内側DC−端子が2つのDC+端子と一直線に並んだ配置になり得る。一般に、内側DC端子はDC+端子でもよい。
【0037】
本発明のある実施形態によると、パワーモジュールは、内側金属化領域に電気的に接続された内側DC端子と、2つの外側DC端子とをさらに備え、各外側DC端子は外側金属化領域に電気的に接続される。この結果、1つの平面に並べられた3つのパワー端子を含む同軸パワー端子配置になり得、同じ電位の2つの外部端子は別の電位の内部端子のそばに配置される。
【0038】
本発明のある実施形態によると、内側DC端子および2つの外側DC端子は1つの平面において延在、および/または、基板から縦方向に突出している。
【0039】
本発明のある実施形態によると、パワーモジュールは、内側金属化領域に電気的に接続された少なくとも2つの内側DC端子をさらに備える。換言すれば、内側DC端子は2つ以上の素子で構成されてもよい。
【0040】
本発明のある実施形態によると、パワーモジュールは、外側金属化領域の1つと電気的に接続された少なくとも2つの外側DC端子をさらに備える。また、外側DC端子の各々は2つ以上の素子で構成されていてもよい。
【0041】
内側、中間、および外側金属化領域の配置によって、パワーモジュールは同軸端子配置と組み合わせることができる。これによって、同軸(またはインターリーブ)配置がない、一方の側にプラス端子を、もう一方の側にマイナス端子を有する既存の端子設計と比べて、端子漂遊インダクタンスが大幅に低くなる。同軸端子によって、外部のバスバーシステムに対する低誘導性パワーモジュールの接続が可能になる。
【0042】
端子配置は、たとえば、自動車関係の用途において、積層されたバスバーの使用が不可であるかもしれない場合(コストの問題により)、積層されたバスバーの使用が困難であるかもしれない場合、および/または、端子がキャパシタ端子に直接接続されているかもしれない場合など、端子の長さが非常に長い場合の用途に有益であり得る。
【0043】
DC端子は、リードフレームを基板に、特にDC接触領域に接合することによって実現可能である。
【0044】
本発明のある実施形態によると、デカップリングキャパシタが内側DC端子および外側DC端子に搭載され、これらと電気的に接続されている。DC端子には1つ以上のデカップリングキャパシタが設けられてもよく、これは、端子導体に直接搭載される(たとえば、小さな)キャパシタでもよい。たとえば、各外側DC端子は、デカップリングキャパシタを介して内側DC端子に接続されてもよい。
【0045】
本発明のさらなる態様は、上記および下記で述べるような少なくとも1つのパワーモジュールを備える、パワーモジュールおよびキャパシタの配置に関する。たとえば、この配置は2つ以上、特に3つのパワーモジュールを備えてもよく、各パワーモジュールは多相インバータの脚を設ける。さらに、パワーモジュールは、DCリンクのキャパシタを含むDCリンクキャパシタ素子に搭載可能で、インバータに電気的に接続され得る。
【0046】
本発明のある実施形態によると、パワーモジュールおよびキャパシタの配置は、各内側DC端子のために第1のDC端子を、各外側DC端子のために2つの第2のDC端子を設けるDCリンクキャパシタ素子を備える。1つのパワーモジュールの外側DC端子に接続された2つの第2のDC端子は、このパワーモジュールの内側DC端子に接続されたDC端子のそばに配置される。すなわち、並列状の複数のキャパシタを含み得るDCリンクキャパシタ素子は、DCリンクキャパシタ素子の筐体に搭載可能な1つまたは複数のパワーモジュールに適合させたDC端子を設け得る。さらに、パワーモジュールの外側DC端子はDCリンクキャパシタ素子の内側で電気的に相互接続可能で、その第2のDC端子は同じDC電位に接続できる。
【0047】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下で説明される実施形態から明らかであり、これらの実施形態を参照して説明される。
【0048】
本発明の主題は、添付の図面に示される例示的な実施形態を参照して、以下でより詳細に説明される。