特許第6412711号(P6412711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6412711
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】エンジン外装体
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/12 20060101AFI20181015BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20181015BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   F01P11/12 A
   B60K11/06
   F01P11/12 Z
   F01P5/06 510A
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-82343(P2014-82343)
(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公開番号】特開2015-203332(P2015-203332A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢司
(72)【発明者】
【氏名】松原 泰司
(72)【発明者】
【氏名】大坪 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】老松 章斗
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−196356(JP,A)
【文献】 実開平05−018594(JP,U)
【文献】 特開2007−120477(JP,A)
【文献】 特開2007−046569(JP,A)
【文献】 特開平08−068326(JP,A)
【文献】 実開昭53−079944(JP,U)
【文献】 実開昭54−090539(JP,U)
【文献】 実開昭55−036952(JP,U)
【文献】 実開昭51−029138(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0019710(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/12
F01P 5/06
B60K 11/06
F02B 77/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体に装着される枠体と、
前記枠体の表面に突設される軸部と、
前記軸部に抜け止め状態で遊嵌される孔部を有しエンジン本体からの動力伝達を受けること無くエンジン本体動作時に前記軸部に伝わる振動によって前記軸部周りに回転する回転体を備え
前記回転体は、バランス位置に前記孔部を備え、前記回転体の背面側が前記枠体の表面に対して面接触しないように前記軸部に対して軸支されており、前記軸部が前記孔部の内面に片当たりすることで回転することを特徴とするエンジン外装体。
【請求項2】
前記枠体はエンジン本体に装備された冷却風取り入れ口を有するカバーであり、
前記回転体は前記カバーの冷却風取り入れ口表面に沿って回転することを特徴とする請求項1記載のエンジン外装体。
【請求項3】
前記回転体は、前記孔部を中心に備える長辺部材であることを特徴とする請求項1又は2記載のエンジン外装体。
【請求項4】
前記回転体が熱伝導性の高い材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のエンジン外装体。
【請求項5】
前記軸部の外径寸法に対する前記孔部の内径寸法の比を1.10〜1.20にしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジン外装体。
【請求項6】
前記回転体は、回転方向に対面する側面が回転方向に沿った傾斜面又は湾曲面を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエンジン外装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン本体に装着されるエンジン外装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンは、内部燃焼によって給気・排気部やピストンシリンダを含むエンジン本体が高温に加熱されるため、このエンジン本体に直接人手が触れないようにカバーなどの外装体を装着することが一般になされている。また、クランク軸の回転によって駆動する駆動輪(駆動プーリ)や冷却ファンに対しても、これらに人手が触れないように、これらを覆う外装体が装備されている。
【0003】
下記特許文献1には、前述した外装体の一つであるファンカバーにおける防塵装置が示されている。この従来技術は、ファンカバーの冷却風取り入れ口の全面に、その冷却風取り入れ口の全体にわたって往復または回転によって動作する防塵体を設けたものであり、防塵体は、ファンカバーの内部に設けられる冷却ファンと一体に高速回転することで、冷却風取り入れ口に塵が詰まるのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭48−21025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
草刈り機などの作業機に用いられるエンジンは、エンジン本体に装着される外装体に塵が付着することが問題になる。冷却ファンを覆うカバーに塵が付着すると冷却風の取り入れが妨げられることになり、また、キャブレターに接続されるエアクリーナ周辺に塵が付着するとエアクリーナのメンテナンスを頻繁に行うことが必要になる。このような塵の付着に対しては、従来技術に示されるような防塵体を設けてこれを回転させることが有効である。しかしながら、従来技術のようにエンジンの出力回転を動力伝達して防塵体を回転させようとすると、防塵体の装着箇所が限定的にならざるを得ず、また、冷却ファンと一体に高速回転する防塵体がカバーの外側で回転することになるので、安全対策として設けられているカバーが無意味になる。更には、エンジン出力の一部が防塵体の回転駆動に奪われてしまうことも問題になる。
【0006】
また、当然のことながら、エンジンを長時間使用する際にはエンジン本体各部の温度上昇を抑えることが必要になる。特にキャブレター温度の上昇はエンジンを再起動させる際の起動性悪化を招くことになるので、このような温度上昇は可能な限り避けたいところである。このため、エンジン本体に装着させる外装体はより放熱性の高いものが求められる。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、エンジン本体に装着される外装体であって、装着箇所が限定されること無く、安全で、良好な防塵性を得ることができること、また、良好な放熱性を得ることができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明によるエンジン外装体は、明細書に記載された幾つかの発明のうち以下の構成を具備するものである。
【0009】
エンジン本体に装着される枠体と、前記枠体の表面に突設される軸部と、前記軸部に抜け止め状態で遊嵌される孔部を有しエンジン本体からの動力伝達を受けること無くエンジン本体動作時に前記軸部に伝わる振動によって前記軸部周りに回転する回転体を備え、前記回転体は、バランス位置に前記孔部を備え、前記回転体の背面側が前記枠体の表面に対して面接触しないように前記軸部に対して軸支されており、前記軸部が前記孔部の内面に片当たりすることで回転することを特徴とするエンジン外装体。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有するエンジン外装体によると、エンジン本体の振動によって回転する回転体を備えるので、エンジン本体の何処に装着してもエンジン本体動作時に回転して高い防塵性を得ることができる。また、回転体を熱伝導性の高い材料で形成することで、エンジン動作時に回転する回転体から効率よく放熱することができる。更に、回転体はエンジンからの動力伝達を受けること無く回転するので出力ロスが無く、また手で触れる程度で大きな抵抗無く止めることができるため、カバーなどの外側に設ける場合にも安全性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】エンジンの一般構成を示した説明図である。
図2】本発明の実施形態に係るエンジン外装体の要部を示した説明図である((a)が縦断面図、(b)が平面図、(c)がX−X断面図)。
図3】本発明の実施形態に係るエンジン外装体における回転体の他の形態例を示した説明図である。
図4】本発明の実施形態に係るエンジン外装体の具体例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、エンジンの一般構成を示した説明図である。エンジンEGは、エンジン本体1とこれに装着されるエンジン外装体2によって構成される。エンジン本体1は、クランクケースやシリンダヘッドなどによって構成される。ここで言うエンジン外装体2は、冷却ファン10、冷却ファン10を覆うカバー11、燃料タンク12、エアクリーナ13、キャブレター14など、エンジン本体1に装着されるものを一般に指す。
【0013】
図2は、本発明の実施形態に係るエンジン外装体の要部を示した説明図である。エンジン外装体2は、エンジン本体(図示省略)に装着される枠体20と、枠体20の表面に突設される軸部21と、軸部21に抜け止め状態で遊嵌される孔部22aを有する回転体22を備える。軸部21には軸部21を保護するカラー21sが圧入されており、その周囲に孔部22aが遊嵌している。
【0014】
ここで、回転体22は、軸部21に孔部22aが抜け止め状態で遊嵌されることで、エンジン本体からの動力伝達を受けること無くエンジン本体動作時に軸部21に伝わる振動によって軸部21周りに回転する。回転体22が連続的に回転するためには、エンジン本体を動作させ続けることが必要になる。この際、回転体22はエンジン本体の出力軸の回転から動力を得て回転するものでもなければ、冷却ファンの回転によって生じる冷却風の風圧によって回転するものでもなく、エンジン本体が動作時に発生する振動によって回転する。
【0015】
回転体22が回転する原理は、エンジン本体が発生する振動によってエンジン本体に装着されている枠体20が振動し、これによって枠体20の表面に突設されている軸部21に振れが生じる。そして、この軸部21の振れが孔部22aの内面に片当たりすることで、軸部21周りに回転体22を回転させる。
【0016】
ここで、孔部22aの内径は軸部21の外径に対して大きく形成されており、その寸法比は、(孔部22aの内径)/(軸部21の外径)=1.10〜1.20程度にすることが好ましい。軸部21の外径に対して孔部22aの内径を大きくしすぎると、軸部21の振れが孔部22aの内表面に伝わり難くなり、軸部21の外径に対して孔部22aの内径を小さくしすぎると、軸部21の外周と孔部22aの内表面との摩擦が大きくなって回転体22の自由回転が得られ難くなる。回転体22の回転速度は軸部21の外径と孔部22aの内表面とのクリアランスによって調整可能で有り、防塵性と安全性の両面を考慮して適宜設定することができる。
【0017】
図2に示したエンジン外装体2の回転体22は、一方向に長い板状の長辺部材で構成されている。そして、回転体22の背面側が枠体20の表面に対して面接触しないように軸部21に対して軸支されている。このように回転体22の背面側を枠体20の表面から離間させることで、少ない抵抗で回転体22を回転させることができる。また、図2に示した回転体22は、一例として台形状の断面形状を有している(図2(c)参照)。このような断面形状にすることで、回転体22の回転方向に対面する側面22eが回転方向に沿った傾斜面になり、その傾斜面に沿って円滑に塵を除去することができる。また、回転体22の断面形状は、図2(d)に示すような三角形状や図2(e)に示すような湾曲面を有する凸形状であってもよく、前述した回転体22の回転方向に対面する側面22eは直線的な傾斜面である必要は無く回転方向に沿った湾曲面などであってもよい。
【0018】
このような特徴を備える本発明の実施形態に係るエンジン外装体2は、エンジン作動時に枠体20の表面に沿って回転する回転体22を備えるので、枠体20の表面に塵が付着するのを抑止することができる。これによって、枠体20が冷却風取り入れ口を構成する場合には、塵の付着による冷却効果の低下を抑止することができ、継続的なエンジン動作に対して良好なエンジン性能を維持することができる。
【0019】
また、本発明の実施形態に係るエンジン外装体2は、回転体22を回転させるのにエンジンの出力回転からの動力伝達を必要としないので、エンジン本体1の様々な部位に装着して、回転体22の回転による防塵効果を得ることができる。エンジン本体1の振動で回転する回転体22は、人手に触れても大きな抵抗無く停止し、エンジンの動作中であれば人手が離れると再び回転するので、エンジン外装体2の表面に露出した状態で回転体2が回転していても安全である。また、異物が回転体22と枠体20の間に喰い込んで回転体22の回転が妨げられる場合であっても、回転体22とエンジンは何ら動力の繋がりがないのでエンジンに無用な負荷を与えることが無い。
【0020】
そして、エンジン本体1の様々な部位に装着されるエンジン外装体2において、その表面で回転体22を回転させることができるので、枠体20から軸部21に伝わった熱を回転体22から放熱することができ、高温になるエンジン本体1及び枠体20の各部位に対して効果的な放熱が可能になる。回転体22は自身が風を切って回転するので、この回転体22を備えるエンジン外装体2は良好な放熱性を得ることができる。特に、枠体20,軸部21,回転体22をアルミなど熱伝導性の高い材料で形成することで放熱効果を高めることができる。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に係るエンジン外装体における回転体の他の形態例を示した説明図である。回転体22は、バランス良く孔部22aを備えるものであれば、どのような形態であってもよい。例えば、図3(a)に示すように、長辺を孔部22aに対して90°間隔で四方に延ばした形態であってもよいし、図3(b)に示すように、長辺を孔部22aに対して等間隔で八方に延ばした形態などであってもよい。
【0022】
図4は、本発明の実施形態に係るエンジン外装体の具体例を示している。(a)がエンジン本体に装着した状態を示しており、(b)がエンジン外装体の要部を示している。図4(a)に示すように、エンジンEGは、エンジン本体1に対して、カバー11、燃料タンク12、エアクリーナ13、キャブレター14、マフラーカバー(或いはマフラー)15などのエンジン外装体を備えている。この例では、カバー11が回転体22を備えたエンジン外装体2になっている。
【0023】
このエンジン外装体2は、冷却風取り入れ口11Aを有するカバー11に枠体20を設けており、冷却風取り入れ口11Aからの突出成形部21a,その突出成形部21aに螺合したネジ21b,それらの外周に配置したカラー21c,ワッシャ21dによって軸部21が構成され、この軸部21は冷却風取り入れ口11Aの略中心に設けられている。この軸部21には、抜け止め状態で遊嵌される孔部22aを有する回転体22が軸支されている。ここでは、回転体22の長さを110mmとし、軸部21の軸径を7.8mm,軸長を5.9mmとし、孔部22aの内径を8.8mmとしている。
【0024】
このようなエンジン外装体2は、エンジンEGを始動させると、エンジン本体1動作時に軸部21に伝わる振動によって回転体22が冷却風取り入れ口11Aの表面に沿って回転する。この例では、エンジン回転数に応じて回転体22の回転数も高くなる。具体的には、エンジン回転数を3000〜6000rpmの範囲で徐々に大きくした場合には、回転体22の回転数は280〜570rpmの範囲で徐々に大きくなった。そして、このエンジン外装体2を備えたエンジンEGは、草刈り作業機に用いた場合にもカバー11への塵の付着は殆ど確認されず、冷却ファンによる良好な空冷効果を維持することができた。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1:エンジン本体,2:エンジン外装体,
10:冷却ファン,11:カバー,12:燃料タンク,
13:エアクリーナ,14:キャブレター,15:マフラーカバー,
20:枠体,21:軸部,22a:孔部,22:回転体,
EG:エンジン
図1
図2
図3
図4