特許第6412872号(P6412872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6412872
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】ユーザ端末、方法及びプロセッサ
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/02 20090101AFI20181015BHJP
   H04W 88/04 20090101ALI20181015BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20181015BHJP
【FI】
   H04W72/02
   H04W88/04
   H04W92/18
【請求項の数】3
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-539274(P2015-539274)
(86)(22)【出願日】2014年9月24日
(86)【国際出願番号】JP2014075315
(87)【国際公開番号】WO2015046264
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年6月30日
【審判番号】不服2017-8360(P2017-8360/J1)
【審判請求日】2017年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-202767(P2013-202767)
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-14915(P2014-14915)
(32)【優先日】2014年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】キュリーズ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】守田 空悟
(72)【発明者】
【氏名】安達 裕之
(72)【発明者】
【氏名】福田 憲由
【合議体】
【審判長】 菅原 道晴
【審判官】 中木 努
【審判官】 海江田 章裕
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/046155(WO,A1)
【文献】 Kyocera,Resource allocation schemes for D2D communication,3GPP TSG−RAN WG2 #83bis,R2−133569,2013年09月28日アップロード,<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_83bis/Docs/R2−133569.zip>
【文献】 Ericsson,Synchronization Procedures for D2D Discovery and Communication,3GPP TSG RAN WG1 Meeting #74bis,R1−134720,2013年09月27日アップロード,<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_74b/Docs/R1−134720.zip><R1−134720 D2D synchronization procedures.doc>
【文献】 LG Electronics,Resource Management for D2D Communications,3GPP TSG RAN WG1 Meeting #74,R1−133385,2013年08月10日アップロード,<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_74/Docs/R1−133385.zip><R1−133385 Resource management of D2D_LG.doc>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備えるユーザ端末であって、
前記ユーザ端末が基地局のカバレッジである場合において、前記制御部は、
前記基地局からブロードキャストされD2D利用可能リソースを構成する周波数バンドに関する情報及びD2D利用可能リソースを構成するサブフレームに関する情報を受信する処理と、
前記基地局から受信した前記周波数バンドに関する情報及び前記サブフレームに関する情報を、カバレッジ外のユーザ端末が受信できるようにブロードキャストする処理と、を実行する
ユーザ端末。
【請求項2】
ユーザ端末が実行する方法であって、
前記ユーザ端末が基地局のカバレッジである場合において、
前記基地局からブロードキャストされD2D利用可能リソースを構成する周波数バンドに関する情報及びD2D利用可能リソースを構成するサブフレームに関する情報を受信し、
前記基地局から受信した前記周波数バンドに関する情報及び前記サブフレームに関する情報を、カバレッジ外のユーザ端末が受信できるようにブロードキャストする
方法。
【請求項3】
ユーザ端末に備えられるプロセッサであって、
前記ユーザ端末が基地局のカバレッジである場合において、
前記基地局からブロードキャストされD2D利用可能リソースを構成する周波数バンドに関する情報及びD2D利用可能リソースを構成するサブフレームに関する情報を受信する処理と、
前記基地局から受信した前記周波数バンドに関する情報及び前記サブフレームに関する情報を、カバレッジ外のユーザ端末が受信できるようにブロードキャストする処理と、を実行する
プロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、D2D通信をサポートする移動通信システムにおいて用いられる通信制御方法及びユーザ端末に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムの標準化プロジェクトである3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、リリース12以降の新機能として、端末間(Device to Device:D2D)通信の導入が検討されている(非特許文献1参照)。
【0003】
D2D通信では、近接する複数のユーザ端末からなる端末グループ内で、ネットワークを介さずに直接的な端末間通信を行う。一方、移動通信システムの通常の通信であるセルラ通信では、ユーザ端末がネットワークを介して通信を行う。
【0004】
D2D通信は、近接するユーザ端末間で低送信電力の無線通信を行うことができるため、セルラ通信に比べて、ユーザ端末の消費電力及びネットワークの負荷を削減できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP技術報告書 「TR 22.803 V12.2.0」 2013年6月
【発明の概要】
【0006】
移動通信システムのカバレッジ外のユーザ端末を少なくとも一部に含む端末グループであっても、D2D通信が許容されることが想定される。
【0007】
そこで、本発明は、カバレッジ内のユーザ端末とカバレッジ外のユーザ端末とが混在する環境においてもD2D通信を適切に制御できる通信制御方法及びユーザ端末を提供することを目的とする。
【0008】
第1の特徴に係る第1のユーザ端末は、制御部を備える。前記第1のユーザ端末が通信ネットワークのカバレッジ外である場合において、前記制御部は、第2のユーザ端末から第1のDevice−to−Device(D2D)同期情報を直接的に受信する処理と、前記第1のD2D同期情報は、前記第2のユーザ端末が前記カバレッジ内であるか否かを示すカバレッジ情報を含み、前記カバレッジ情報に基づいて、前記第2のユーザ端末が前記カバレッジ内であるか否か判断する処理と、前記第2のユーザ端末が前記カバレッジ内であることに応じて、前記第2のユーザ端末を前記第1のユーザ端末の同期基準として選択する処理と、を実行する。
【0009】
第2の特徴に係る方法は、第1のユーザ端末が実行する方法である。前記方法は、前記第1のユーザ端末が通信ネットワークのカバレッジ外である場合において、第2のユーザ端末から第1のDevice−to−Device(D2D)同期情報を直接的に受信し、前記第1のD2D同期情報は、前記第2のユーザ端末が前記カバレッジ内であるか否かを示すカバレッジ情報を含み、前記カバレッジ情報に基づいて、前記第2のユーザ端末が前記カバレッジ内であるか否か判断し、前記第2のユーザ端末が前記カバレッジ内であることに応じて、前記第2のユーザ端末を前記第1のユーザ端末の同期基準として選択する。
【0010】
第3の特徴に係るプロセッサは、第1のユーザ端末に備えられる。前記プロセッサは、前記第1のユーザ端末が通信ネットワークのカバレッジ外である場合において、第2のユーザ端末から第1のDevice−to−Device(D2D)同期情報を直接的に受信する処理と、前記第1のD2D同期情報は、前記第2のユーザ端末が前記カバレッジ内であるか否かを示すカバレッジ情報を含み、前記カバレッジ情報に基づいて、前記第2のユーザ端末が前記カバレッジ内であるか否か判断する処理と、前記第2のユーザ端末が前記カバレッジ内であることに応じて、前記第2のユーザ端末を前記第1のユーザ端末の同期基準として選択する処理と、を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態及び第2実施形態に係るLTEシステムの構成図である。
図2】第1実施形態及び第2実施形態に係るUEのブロック図である。
図3】第1実施形態及び第2実施形態に係るeNBのブロック図である。
図4】第1実施形態及び第2実施形態に係る無線インターフェイスのプロトコルスタック図である。
図5】第1実施形態及び第2実施形態に係る無線フレームの構成図である。
図6】第1実施形態及び第2実施形態に係るD2D通信を説明するための図である。
図7】第1実施形態に係る動作環境を説明するための図である。
図8】第1実施形態に係る動作フロー図である。
図9】第1実施形態に係るIn coverageケースの動作を示すシーケンス図である。
図10図9の変形例を示すシーケンス図である。
図11】第1実施形態に係るOut ofcoverageケースの動作を示すシーケンス図である。
図12】第1実施形態に係るPartial coverageケースの動作を示すシーケンス図である。
図13】第2実施形態に係るD2DグループへのUE参加動作を示すシーケンス図である。
図14】第2実施形態に係るD2D通信動作を説明するためのタイミング図である。
図15】第3実施形態及び第4実施形態に係るカバレッジ内及びカバレッジ外の各シナリオを説明するための図である。
図16】第3実施形態に係る動作の概要を説明するための図である。
図17】第3実施形態に係るD2D同期元UEの動作を示すシーケンス図である。
図18】第3実施形態に係るD2D非同期元UEの動作を示すシーケンス図である。
図19】第4実施形態に係るカバレッジ外シナリオにおけるマルチホップ同期方式を示す図である。
図20】第4実施形態に係る部分的カバレッジシナリオにおけるマルチホップ同期方式を示す図である。
図21】第4実施形態に係るマルチホップ同期方式におけるブロードキャスト同期情報(D2DSS及びPD2DSCH)の転送方法を説明するための図である。
図22】第4実施形態に係るPD2DSCH間の干渉を抑制する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態の概要]
第1実施形態乃至第4実施形態に係る通信制御方法は、複数のユーザ端末により行われるD2D通信をサポートする移動通信システムにおいて用いられる。前記通信制御方法は、前記複数のユーザ端末に含まれるユーザ端末が、前記複数のユーザ端末に含まれる他のユーザ端末から、前記他のユーザ端末に関する情報を受信するステップAと、前記ユーザ端末が、前記他のユーザ端末に関する情報に基づいて、前記複数のユーザ端末の中から、D2D通信を制御するための制御ユーザ端末を選出するステップBと、を有する。
【0013】
第1実施形態及び第2実施形態では、前記他のユーザ端末に関する情報は、前記他のユーザ端末がD2D通信において利用可能な無線リソースに関するD2D利用可能リソース情報である。
【0014】
第1実施形態及び第2実施形態では、前記ステップBにおいて、前記ユーザ端末は、前記複数のユーザ端末のそれぞれのD2D利用可能リソースに基づいて、D2D通信がセルラ通信に与える干渉が少なくなるように前記制御ユーザ端末を選出する。
【0015】
第1実施形態及び第2実施形態では、前記ステップBにおいて、前記ユーザ端末は、前記複数のユーザ端末のうち、D2D通信において利用可能な無線リソースが相対的に少ないユーザ端末を前記制御ユーザ端末として選出する。
【0016】
第1実施形態及び第2実施形態では、前記ステップAにおいて、前記ユーザ端末は、前記他のユーザ端末から、前記他のユーザ端末が前記移動通信システムのカバレッジ内であるか否かに関するカバレッジ関連情報をさらに受信する。前記ステップBにおいて、前記ユーザ端末は、前記D2D利用可能リソース情報及び前記カバレッジ関連情報に基づいて、前記複数のユーザ端末の中から前記制御ユーザ端末を選出する。
【0017】
第1実施形態及び第2実施形態では、前記ステップAにおいて、前記ユーザ端末は、前記他のユーザ端末から、前記他のユーザ端末が利用する電源に関する電源関連情報をさらに受信する。前記ステップBにおいて、前記ユーザ端末は、前記D2D利用可能リソース情報、前記カバレッジ関連情報、及び前記電源関連情報に基づいて、前記複数のユーザ端末の中から前記制御ユーザ端末を選出する。
【0018】
第1実施形態及び第2実施形態では、前記D2D利用可能リソース情報、前記カバレッジ関連情報、及び前記電源関連情報のうち少なくとも1つは、近傍ユーザ端末の発見に使用される発見用信号に含まれる。
【0019】
第1実施形態及び第2実施形態では、前記ステップBにおいて、前記ユーザ端末は、前記複数のユーザ端末の全てが前記カバレッジ内、又は前記複数のユーザ端末の全てが前記カバレッジ外である場合に、前記複数のユーザ端末のうち、駆動可能時間が相対的に長い電源を有するユーザ端末を前記制御ユーザ端末として選出する。
【0020】
第1実施形態及び第2実施形態では、前記通信制御方法は、前記複数のユーザ端末の中から選出された前記制御ユーザ端末が、D2D通信のための報知信号を送信するステップCをさらに有する。前記報知信号は、前記複数のユーザ端末間で同期をとるための同期信号、前記制御ユーザ端末がD2D通信において利用可能な無線リソースに関するD2D利用可能リソース情報、当該利用可能な無線リソースの中から割り当てた割当リソース情報、端末グループへの参加要求の送信に利用可能な無線リソースを示す情報のうち、少なくとも1つを含む。
【0021】
第2実施形態では、D2D通信を行う端末グループが形成されていない場合において、前記端末グループを形成する際に前記ステップA及び前記ステップBが行われる。
【0022】
第2実施形態では、D2D通信を行う端末グループが形成されている場合において、前記端末グループに新たなユーザ端末が参加する際に前記ステップA及び前記ステップBが行われる。
【0023】
第2実施形態では、D2D通信を行う端末グループが形成されている場合において、前記端末グループを形成する一部のユーザ端末が離脱したことを確認する際に前記ステップA及び前記ステップBが行われる。
【0024】
第2実施形態では、D2D通信を行う端末グループが形成されていない場合において、前記ユーザ端末は、発見用信号を送信する送信タイミング、及び他のユーザ端末から送信される発見用信号を監視する監視タイミングを制御するステップDをさらに有する。前記ステップDにおいて、前記ユーザ端末は、基地局から送信される同期信号若しくは参照信号(preamble信号など)、又は自ユーザ端末で設定している動作タイミングに基づいて、前記送信タイミング及び前記監視タイミングを制御する。
【0025】
第2実施形態では、前記監視タイミングにおいて前記発見用信号を受信した場合に、前記ユーザ端末が、当該発見用信号の受信タイミングに基づいたタイミングで、端末グループへの参加要求を送信するステップをさらに有する。
【0026】
第2実施形態では、前記発見用信号の送信に利用可能な第1の無線リソースが予め規定されている。D2D通信を行う端末グループが形成されていない場合において、前記発見用信号の送信に利用可能な第2の無線リソースが基地局から許可された場合に、前記ユーザ端末が、前記監視タイミングで前記第1の無線リソース及び前記第2の無線リソースのそれぞれについて前記発見用信号を監視するステップをさらに有する。
【0027】
第3実施形態及び第4実施形態では、前記制御ユーザ端末は、D2D同期元である。前記他のユーザ端末に関する情報は、前記他のユーザ端末が前記D2D同期元に適合する度合いを示す優先度情報である。
【0028】
第1実施形態乃至第4実施形態に係るユーザ端末は、複数のユーザ端末により行われるD2D通信をサポートする移動通信システムにおいて、前記複数のユーザ端末に含まれる。前記ユーザ端末は、前記複数のユーザ端末に含まれる他のユーザ端末から、前記他のユーザ端末がD2D通信において利用可能な無線リソースに関するD2D利用可能リソース情報を受信する受信部と、前記D2D利用可能リソース情報に基づいて、前記複数のユーザ端末の中から、D2D通信を制御する制御ユーザ端末を選出する制御部と、を有する。
【0029】
第3実施形態に係るユーザ端末は、ネットワークを介さない直接的な端末間通信を可能とするD2D近傍サービスをサポートする。前記ユーザ端末は、前記D2D近傍サービスに利用可能な無線リソースを示すD2Dリソース情報を記憶する記憶部と、前記ネットワークのカバレッジ外において自ユーザ端末がD2D同期元となった場合、前記記憶部が記憶している前記D2Dリソース情報をブロードキャストで送信する制御部と、を有する。自ユーザ端末が前記D2D同期元に同期するD2D非同期元となった場合、前記制御部は、前記D2D同期元から受信する前記D2Dリソース情報により、前記記憶部が記憶している前記D2Dリソース情報を書き換える。
【0030】
第3実施形態では、前記ユーザ端末は、前記D2D同期元に適合する度合いを示す優先度情報を他のユーザ端末から受信する受信部をさらに有する。前記制御部は、前記受信した優先度情報を所定情報と比較することにより、前記他のユーザ端末を前記D2D同期元とするか、又は自ユーザ端末を前記D2D同期元とするかを判断する。
【0031】
第3実施形態では、前記所定情報は、自ユーザ端末の優先度情報、又は前記ネットワークから取得した基準値である。
【0032】
第3実施形態では、自ユーザ端末が前記D2D同期元に適合する度合いを示す優先度情報をブロードキャストで送信する送信部をさらに有する。自ユーザ端末の前記優先度情報は、自ユーザ端末のスペック、自ユーザ端末の移動状態、前記記憶部に記憶している前記D2Dリソース情報の信頼度のうち、少なくとも1つに基づく。
【0033】
第3実施形態に係る方法は、ネットワークを介さない直接的な端末間通信を可能とするD2D近傍サービスをサポートするユーザ端末における方法である。前記方法は、前記D2D近傍サービスに利用可能な無線リソースを示すD2Dリソース情報を記憶するステップと、前記ネットワークのカバレッジ外において自ユーザ端末がD2D同期元となった場合、前記記憶しているD2Dリソース情報をブロードキャストで送信するステップと、自ユーザ端末が前記D2D同期元に同期するD2D非同期元となった場合、前記D2D同期元から受信する前記D2Dリソース情報により、前記記憶しているD2Dリソース情報を書き換えるステップと、を有する。
【0034】
第4実施形態に係るユーザ端末は、ネットワークを介さない直接的な端末間通信を可能とするD2D近傍サービスをサポートする。前記ユーザ端末は、D2D同期元からマルチホップ転送されるブロードキャスト同期情報を受信する受信部と、前記受信したブロードキャスト同期情報に対応する送信ブロードキャスト同期情報を他のユーザ端末に転送する制御を行う制御部と、を有する。前記制御部は、前記受信したブロードキャスト同期情報に適用されている送信パラメータとは異なる送信パラメータを前記送信ブロードキャスト同期情報に適用する。前記送信パラメータは、信号系列又は時間・周波数リソースのうち少なくとも一方である。
【0035】
第4実施形態では、前記送信パラメータは、前記D2D同期元からの前記ブロードキャスト同期情報のホップ数と関連付けられている。前記受信したブロードキャスト同期情報は、前記D2D同期元からのホップ数の情報を含む。前記制御部は、前記ホップ数の情報に応じた前記送信パラメータを前記送信ブロードキャスト同期情報に適用する。
【0036】
第4実施形態では、前記制御部は、他のユーザ端末から送信されるブロードキャスト同期情報をスキャンすることにより、前記送信ブロードキャスト同期情報に適用する前記送信パラメータを決定する。
【0037】
第4実施形態に係る方法は、ネットワークを介さない直接的な端末間通信を可能とするD2D近傍サービスをサポートするユーザ端末における方法である。前記方法は、D2D同期元からマルチホップ転送されるブロードキャスト同期情報を受信するステップと、前記受信したブロードキャスト同期情報に対応する送信ブロードキャスト同期情報を他のユーザ端末に転送する制御を行うステップと、を有する。前記制御を行うステップは、前記受信したブロードキャスト同期情報に適用されている送信パラメータとは異なる送信パラメータを前記送信ブロードキャスト同期情報に適用するステップを含む。前記送信パラメータは、信号系列又は時間・周波数リソースのうち少なくとも一方である。
【0038】
[第1実施形態]
以下において、本発明をLTEシステムに適用する場合の実施形態を説明する。
【0039】
(システム構成)
図1は、第1実施形態に係るLTEシステムの構成図である。図1に示すように、第1実施形態に係るLTEシステムは、UE(User Equipment)100、E−UTRAN(Evolved−UMTS Terrestrial Radio Access Network)10、及びEPC(Evolved Packet Core)20を備える。
【0040】
UE100は、ユーザ端末に相当する。UE100は、移動型の通信装置であり、接続先のセル(サービングセル)との無線通信を行う。UE100の構成については後述する。
【0041】
E−UTRAN10は、無線アクセスネットワークに相当する。E−UTRAN10は、eNB200(evolved Node−B)を含む。eNB200は、基地局に相当する。eNB200は、X2インターフェイスを介して相互に接続される。eNB200の構成については後述する。
【0042】
eNB200は、1又は複数のセルを管理しており、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。eNB200は、無線リソース管理(RRM)機能、ユーザデータのルーティング機能、モビリティ制御・スケジューリングのための測定制御機能などを有する。「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として使用される他に、UE100との無線通信を行う機能を示す用語としても使用される。
【0043】
EPC20は、コアネットワークに相当する。E−UTRAN10及びEPC20によりLTEシステムのネットワークが構成される。EPC20は、MME(Mobility Management Entity)/S−GW(Serving−Gateway)300を含む。MMEは、UE100に対する各種モビリティ制御などを行う。SGWは、ユーザデータの転送制御を行う。MME/S−GW300は、S1インターフェイスを介してeNB200と接続される。
【0044】
図2は、UE100のブロック図である。図2に示すように、UE100は、複数のアンテナ101、無線送受信機110、ユーザインターフェイス120、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機130、バッテリ140、メモリ150、及びプロセッサ160を備える。無線送受信機110及びプロセッサ160は、送信部及び受信部を構成する。メモリ150及びプロセッサ160は、制御部を構成する。メモリ150は、記憶部に相当する。UE100は、GNSS受信機130を有していなくてもよい。また、メモリ150をプロセッサ160と一体化し、このセット(すなわち、チップセット)をプロセッサ160’としてもよい。
【0045】
アンテナ101及び無線送受信機110は、無線信号の送受信に用いられる。無線送受信機110は、プロセッサ160が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナ101から送信する。また、無線送受信機110は、アンテナ101が受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換してプロセッサ160に出力する。
【0046】
ユーザインターフェイス120は、UE100を所持するユーザとのインターフェイスであり、例えば、ディスプレイ、マイク、スピーカ、及び各種ボタンなどを含む。ユーザインターフェイス120は、ユーザからの操作を受け付けて、該操作の内容を示す信号をプロセッサ160に出力する。GNSS受信機130は、UE100の地理的な位置を示す位置情報を得るために、GNSS信号を受信して、受信した信号をプロセッサ160に出力する。バッテリ140は、UE100の各ブロックに供給すべき電力を蓄える。
【0047】
メモリ150は、プロセッサ160により実行されるプログラム、及びプロセッサ160による処理に使用される情報を記憶する。プロセッサ160は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号などを行うベースバンドプロセッサと、メモリ150に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、を含む。プロセッサ160は、さらに、音声・映像信号の符号化・復号を行うコーデックを含んでもよい。プロセッサ160は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
【0048】
図3は、eNB200のブロック図である。図3に示すように、eNB200は、アンテナ201、無線送受信機210、ネットワークインターフェイス220、メモリ230、及びプロセッサ240を備える。メモリ230及びプロセッサ240は、制御部を構成する。
【0049】
アンテナ201及び無線送受信機210は、無線信号の送受信に用いられる。無線送受信機210は、プロセッサ240が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナ201から送信する。また、無線送受信機210は、アンテナ201が受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換してプロセッサ240に出力する。
【0050】
ネットワークインターフェイス220は、X2インターフェイスを介して隣接eNB200と接続され、S1インターフェイスを介してMME/S−GW300と接続される。ネットワークインターフェイス220は、X2インターフェイス上で行う通信及びS1インターフェイス上で行う通信に用いられる。
【0051】
メモリ230は、プロセッサ240により実行されるプログラム、及びプロセッサ240による処理に使用される情報を記憶する。プロセッサ240は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号などを行うベースバンドプロセッサと、メモリ230に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPUと、を含む。プロセッサ240は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
【0052】
図4は、LTEシステムにおける無線インターフェイスのプロトコルスタック図である。図4に示すように、無線インターフェイスプロトコルは、OSI参照モデルの第1層乃至第3層に区分されており、第1層は物理(PHY)層である。第2層は、MAC(Medium Access Control)層、RLC(Radio Link Control)層、及びPDCP(Packet Data Convergence Protocol)層を含む。第3層は、RRC(Radio Resource Control)層を含む。
【0053】
物理層は、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100の物理層とeNB200の物理層との間では、物理チャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。
【0054】
MAC層は、データの優先制御、及びハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理などを行う。UE100のMAC層とeNB200のMAC層との間では、トランスポートチャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。eNB200のMAC層は、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式)、UE100への割当リソースブロックを決定(スケジューリング)するスケジューラを含む。
【0055】
RLC層は、MAC層及び物理層の機能を利用してデータを受信側のRLC層に伝送する。UE100のRLC層とeNB200のRLC層との間では、論理チャネルを介してユーザデータ及び制御信号が伝送される。
【0056】
PDCP層は、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。
【0057】
RRC層は、制御信号を取り扱う制御プレーンでのみ定義される。UE100のRRC層とeNB200のRRC層との間では、各種設定のための制御信号(RRCメッセージ)が伝送される。RRC層は、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとeNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100は接続状態(RRC接続状態)であり、そうでない場合、UE100はアイドル状態(RRCアイドル状態)である。
【0058】
RRC層の上位に位置するNAS(Non−Access Stratum)層は、セッション管理及びモビリティ管理などを行う。
【0059】
図5は、LTEシステムで使用される無線フレームの構成図である。LTEシステムは、下りリンク(DL)にはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)、上りリンク(UL)にはSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)がそれぞれ適用される。
【0060】
図5に示すように、無線フレームは、時間方向に並ぶ10個のサブフレームで構成される。各サブフレームは、時間方向に並ぶ2個のスロットで構成される。各サブフレームの長さは1msであり、各スロットの長さは0.5msである。各サブフレームは、周波数方向に複数個のリソースブロック(RB)を含み、時間方向に複数個のシンボルを含む。各リソースブロックは、周波数方向に複数個のサブキャリアを含む。1つのサブキャリア及び1つのシンボルによりリソースエレメントが構成される。
【0061】
UE100に割り当てられる無線リソースのうち、周波数リソースはリソースブロックにより構成され、時間リソースはサブフレーム(又はスロット)により構成される。
【0062】
下りリンクにおいて、各サブフレームの先頭数シンボルの区間は、主に下りリンク制御信号を伝送するための物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)として使用される領域である。また、各サブフレームの残りの部分は、主に下りリンクユーザデータを伝送するための物理下りリンク共有チャネル(PDSCH)として使用できる領域である。
【0063】
上りリンクにおいて、各サブフレームにおける周波数方向の両端部は、主に上りリンク制御信号を伝送するための物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)として使用される領域である。各サブフレームにおける残りの部分は、主に上りリンクユーザデータを伝送するための物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)として使用できる領域である。
【0064】
(D2D通信)
第1実施形態に係るLTEシステムは、直接的な端末間通信(UE間通信)であるD2D通信をサポートする。図6は、第1実施形態に係るD2D通信を説明するための図である。
【0065】
ここでは、D2D通信を、LTEシステムの通常の通信であるセルラ通信と比較して説明する。セルラ通信は、データパスがネットワーク(E−UTRAN10、EPC20)を経由する通信形態である。データパスとは、ユーザデータの伝送経路である。
【0066】
これに対し、図6に示すように、D2D通信は、UE間に設定されるデータパスがネットワークを経由しない通信形態である。相互に近接する複数のUE100(UE100−1及びUE100−2)は、低送信電力で直接的に無線通信を行う。
【0067】
このように、近接する複数のUE100が低送信電力で直接的に無線通信を行うことにより、セルラ通信と比べて、UE100の消費電力を削減し、かつ、隣接セルへの干渉を低減できる。なお、第1及び第2実施形態では、D2D通信は、後述する発見処理(Discovery)を含んでもよい。
【0068】
(第1実施形態に係る動作)
(1)動作環境
図7は、第1実施形態に係る動作環境を説明するための図である。図7では、D2D通信を行う端末グループ(以下、「D2Dグループ」という)のそれぞれが2つのUE100により形成されているが、1つのD2Dグループを形成するUE100の数は3つ以上であってもよい。
【0069】
図7に示すように、D2DグループG1乃至D2DグループG3が形成されている。
【0070】
D2DグループG1は、eNB200のカバレッジ(以下、単に「カバレッジ」という
)内のUE100−11及びUE100−12により形成されるD2Dグループである。以下において、D2Dグループを形成する各UE100がカバレッジ内に位置するケースを「In coverage」という。
【0071】
D2DグループG2は、カバレッジ外のUE100−21及びUE100−22により形成されるD2Dグループである。以下において、D2Dグループを形成する各UE100がカバレッジ外に位置するケースを「Out of coverage」という。
【0072】
D2DグループG3は、カバレッジ内のUE100−31及びカバレッジ外のUE100−32により形成されるD2Dグループである。以下において、D2Dグループのうち一部のUE100がカバレッジ内であり、かつ残りのUE100がカバレッジ外に位置するケースを「Partial coverage」という。
【0073】
このように、D2Dグループには3種類のケースが想定されるため、これら3種類のケースにおいて、共通の方法でD2D通信を制御できることが望まれる。
【0074】
また、Out of coverageケース及びPartial coverageケースのように、eNB200が制御不能なUE100がD2Dグループ内に存在するケースでは、D2Dグループ内でD2D通信を制御する制御UE(制御ユーザ端末)を選出し、制御UEによりD2D通信を制御することが望まれる。
【0075】
制御UEは、D2D通信において利用可能な無線リソース(以下、「D2D利用可能リソース」という)の中から、D2Dグループ内に含まれるUE100に対して無線リソース(周波数、時間)を割り当てる。ここで、カバレッジ内のUE100については、セルラ通信との干渉を防止するために、D2D利用可能リソースがeNB200から指定される。これに対し、カバレッジ外のUE100については、D2D利用可能リソースが指定されないため、全ての無線リソースをD2D利用可能リソースとすることができる。
【0076】
また、制御UEは、D2Dグループ内に含まれるUE100間で送受信されるデータを中継してもよい。さらに、制御UEは、D2Dグループ内に含まれるUE100の同期の基準(D2D同期元)であってもよい。第1実施形態では、D2Dグループ内に含まれるUE100間で送受信されるデータを制御UEが中継する通信形態を想定する。よって、「In coverageケース」においても制御UEの存在が必須である。
【0077】
(2)動作概要
第1実施形態に係る通信制御方法は、複数のUE100により行われるD2D通信をサポートする移動通信システムにおいて用いられる。通信制御方法は、複数のUE100に含まれるUE100−1が、当該複数のUE100に含まれる他のUE100−nから、他のUE100−nがD2D利用可能リソースに関するD2D利用可能リソース情報を受信するステップAと、UE100−1が、D2D利用可能リソース情報に基づいて、当該複数のUE100の中から、D2D通信を制御する制御UEを選出するステップBと、を有する。D2D利用可能リソース情報は、D2D利用可能リソースを構成する周波数リソース(リソースブロック、周波数バンドなど)のそれぞれの識別子、及び/又はD2D利用可能リソースを構成する時間リソース(サブフレーム、無線フレームなど)のそれぞれの識別子である。或いは、D2D利用可能リソース情報は、D2D利用可能リソースを構成する周波数リソースの数、及び/又はD2D利用可能リソースを構成する時間リソースの数であってもよい。
【0078】
これにより、D2D利用可能リソースが指定されたUE100が当該複数のUE100に含まれる場合に、指定されたD2D利用可能リソースを考慮して制御UEを選出できる。また、第1実施形態では、ステップBにおいて、UE100−1は、D2D通信がセルラ通信に与える干渉が少なくなるように、制御UEを選出する。例えば、ステップBにおいて、D2D利用可能リソースが相対的に少ないUE100を制御UEとして選出することにより、D2D通信とセルラ通信との間の干渉を効率的に防止できる。
【0079】
第1実施形態では、ステップAにおいて、UE100−1は、他のUE100−nから、他のUE100−nが移動通信システムのカバレッジ内であるか否かに関するカバレッジ関連情報をさらに受信する。ステップBにおいて、UE100は、D2D利用可能リソース情報及びカバレッジ関連情報に基づいて、複数のUE100の中から制御UEを選出する。カバレッジ関連情報は、他のUE100−nが在圏するセルのセル識別子(或いはeNBの識別子)を含んでもよい。
【0080】
これにより、「In coverageケース」、「Out of coverageケース」、「Partial coverageケース」の何れに該当するかを考慮して制御UEを選出できる。
【0081】
第1実施形態では、ステップAにおいて、UE100−1は、他のUE100−nから、他のUE100−nが利用する電源に関する電源関連情報をさらに受信する。ステップBにおいて、UE100−1は、D2D利用可能リソース情報、カバレッジ関連情報、及び電源関連情報に基づいて、複数のUE100の中から制御UEを選出する。電源関連情報は、電源の種別(AC電源、バッテリなど)を示す情報、及び/又は電源の供給可能な電力量(バッテリ残量など)である。
【0082】
これにより、電源の種別や状態に応じて定められる駆動可能時間を考慮して制御UEを選出できる。
【0083】
なお、D2D利用可能リソース情報、カバレッジ関連情報、及び電源関連情報のうち少なくとも1つは、近傍UE100の発見に使用される発見用信号(以下、「Discovery信号」という)に含まれてもよい。これにより、D2Dグループを形成する処理と制御UEを選出する処理とを一部共通化し、効率化を図ることができる。
【0084】
第1実施形態では、ステップBにおいて、UE100−1は、複数のUE100の全てがカバレッジ内、又は複数のUE100の全てがカバレッジ外である場合に、複数のUE100のうち、駆動可能時間が相対的に長い電源を有するUE100を制御UEとして選出する。これにより、駆動可能時間が短いUE100が駆動不能(動作停止)になることを防止できる。
【0085】
第1実施形態では、通信制御方法は、複数のUE100の中から選出された制御UEが、D2D通信のための報知信号(報知情報)を送信するステップCをさらに有する。報知信号は、制御UEのD2D利用可能リソースに関するD2D利用可能リソース情報を含む。D2Dグループに含まれる各UE100は、制御UEのD2D利用可能リソースの範囲内でD2D通信を行う。或いは、報知信号は、当該利用可能な無線リソースの中から割り当てた割当リソースを示す情報を含んでもよい。また、報知信号は、複数のUE100間で同期をとるための同期信号を含んでもよい。さらに、報知信号は、D2Dグループへの参加要求の送信に利用可能な無線リソースを示す情報を含んでもよい。これにより、制御UEがD2Dグループを適切に制御できる。
【0086】
(3)動作具体例
次に、第1実施形態に係る動作の具体例について説明する。
【0087】
(3.1)動作フロー
図8は、第1実施形態に係る動作フロー図である。
【0088】
図8に示すように、ステップS11において、UE100−1は、周囲のUE100(UE100−n)との情報交換を行う。具体的には、D2D利用可能リソース情報、カバレッジ関連情報、及び電源関連情報(以下、これらを併せて「D2D UE情報」という)を交換する。なお、D2D UE情報は、送信元UEの識別子を含む。
【0089】
ステップS12において、UE100−1は、カバレッジ関連情報に基づいて、UE100−1乃至UE100−nが何れもカバレッジ外であるか否かを判定する。ステップS12で「YES」の場合はOut of coverageケースに相当する。
【0090】
ステップS12で「NO」の場合、ステップS13において、UE100−1は、カバレッジ関連情報に基づいて、UE100−1乃至UE100−nが同一のセル(或いはeNB200)に在圏するか否かを判定する。なお、セルがセクタ分割されている場合には、同一のセクタに在圏するか否かを判定してもよい。
【0091】
なお、ステップS13で「YES」の場合は、同一セル内でのIn coverageケースに相当する。また、ステップS13で「NO」の場合は、Partial coverageケース、又は異なるセルでのIn coverageケース相当する。
【0092】
ステップS12で「YES」の場合又はステップS13で「YES」の場合、ステップS14において、UE100−1は、UE100−1乃至UE100−nの何れも制御UEの候補とする。
【0093】
一方、ステップS13で「NO」の場合、ステップS15において、UE100−1は、D2D利用可能リソース情報に基づいて、UE100−1乃至UE100−nのうち、カバレッジ内(eNB配下)のUE100を制御UEの候補とする。
【0094】
ステップS16において、UE100−1は、制御UEの候補の中から、電源関連情報に基づいて設定される優先度が高いUE100を制御UEとして選出する。具体的には、電源関連情報に対応する駆動可能時間が相対的に長いUE100を制御UEとして選出する。
【0095】
(3.2)In coverageケースの動作
図9は、第1実施形態に係るIn coverageケースの動作を示すシーケンス図である。図9において、UE100−11乃至UE100−13は、何れも同一のセルに在圏している。
【0096】
図9に示すように、ステップS101において、eNB200は、D2D通信への利用を許可する無線リソース「S1」をUE100−11乃至UE100−13に通知する。当該通知は、ブロードキャストで行われる。UE100−11乃至UE100−13のそれぞれのD2D利用可能リソースは、いずれも無線リソース「S1」である。なお、一旦制御UEが決定された後は、D2Dグループにおいて制御UE以外の各UE100がD2D利用可能リソース情報を制御UEに通知し、制御UEが当該各UE100の利用可能リソースを判断し、判断した利用可能リソースを当該各UE100に通知してもよい。
【0097】
ステップS102乃至S104において、UE100−11乃至UE100−13のそれぞれは、D2D UE情報を相互に通知し合う。当該通知は、ブロードキャストで行われる。
【0098】
ステップS105において、UE100−11乃至UE100−13のそれぞれは、上述した動作フローに沿って制御UEを選出する。ここでは、UE100−11乃至UE100−13が何れも同一のセルに在圏しており、かつ、UE100−11の電源(バッテリ)の駆動可能時間が最も長いため、UE100−11が制御UEとして選出される。
【0099】
ステップS106において、制御UEとして選出されたUE100−11は、報知信号を送信する。
【0100】
なお、図9においては、制御UEがD2Dグループの同期基準となることを想定しているが、In coverageケースでは、eNB200がD2Dグループの同期基準となってもよい。図10は、図9の変形例を示すシーケンス図である。図10に示すように、ステップS111乃至S115は図9と同様であるが、ステップS116において、eNB200がUE100−11乃至UE100−13に対して同期信号を送信する点で図9とは異なっている。
【0101】
(3.3)Out of coverageケースの動作
図11は、第1実施形態に係るOut ofcoverageケースの動作を示すシーケンス図である。図11において、UE100−21乃至UE100−23は、何れもカバレッジ外である。
【0102】
図11に示すように、ステップS121乃至S123において、UE100−21乃至UE100−23のそれぞれは、D2D UE情報を相互に通知し合う。当該通知は、ブロードキャストで行われる。
【0103】
ステップS124において、UE100−21乃至UE100−23のそれぞれは、上述した動作フローに沿って制御UEを選出する。ここでは、UE100−21乃至UE100−23が何れもカバレッジ外であり、かつ、UE100−21の電源(バッテリ)の駆動可能時間が最も長いため、UE100−21が制御UEとして選出される。
【0104】
ステップS125において、制御UEとして選出されたUE100−21は、報知信号を送信する。
【0105】
(3.4)Partial coverageケースの動作
図12は、第1実施形態に係るPartial coverageケースの動作を示すシーケンス図である。図12において、UE100−31はeNB200のセルに在圏しており、UE100−32及びUE100−33は、何れもカバレッジ外である。
【0106】
図12に示すように、ステップS131において、eNB200は、D2D通信への利用を許可する無線リソース「S1」をUE100−11に通知する。当該通知は、ブロードキャストで行われる。UE100−11のD2D利用可能リソースは、無線リソース「S1」である。これに対し、UE100−32及びUE100−33のそれぞれは、全ての無線リソース「S2(>S1)」を利用可能である。
【0107】
ステップS132乃至S134において、UE100−31乃至UE100−33のそれぞれは、D2D UE情報を相互に通知し合う。当該通知は、ブロードキャストで行われる。
【0108】
ステップS135において、UE100−31乃至UE100−33のそれぞれは、上述した動作フローに沿って制御UEを選出する。ここでは、UE100−31のD2D利用可能リソースが最も少ないため、UE100−31が制御UEとして選出される。
【0109】
ステップS136において、制御UEとして選出されたUE100−31は、報知信号を送信する。
【0110】
(第1実施形態のまとめ)
第1実施形態では、D2D利用可能リソースが相対的に少ないUE100(すなわち、D2D利用可能リソースが指定されたUE100)を制御UEとして選出することにより、D2D通信とセルラ通信との間の干渉を効率的に防止できる。
【0111】
また、第1実施形態では、複数のUE100の全てがカバレッジ内、又は複数のUE100の全てがカバレッジ外である場合に、複数のUE100のうち、駆動可能時間が相対的に長い電源を有するUE100を制御UEとして選出する。これにより、駆動可能時間が短いUE100が駆動不能(動作停止)になることを防止できる。
【0112】
[第2実施形態]
第2実施形態について、第1実施形態との相違点を主として説明する。第2実施形態は、システム構成及び動作環境については第1実施形態と同様である。
【0113】
第1実施形態では制御UEを選出する方法について説明したが、第2実施形態では、D2Dグループを形成及び管理する方法について説明する。
【0114】
(第2実施形態に係る動作)
(1)D2Dグループの初期形成
第2実施形態では、D2Dグループが形成されていない場合において、D2D通信を開始しようとするUE100が、Discovery信号を送信する送信タイミング、及び他のUE100−2から送信されるDiscovery信号を監視する監視タイミングを制御するステップDをさらに有する。Discovery信号の送信及び監視を交互に行う場合、例えば1秒間に1回Discovery信号を送信し、Discovery信号を送信していない間にDiscovery信号を監視する。
【0115】
ステップDにおいて、UE100は、eNB200から送信される同期信号、又は自UE100で設定している動作タイミングに基づいて、Discovery信号の送信タイミング及び監視タイミングを制御する。具体的には、カバレッジ内である場合には、eNB200から送信される同期信号に基づいて、Discovery信号の送信タイミング及び監視タイミングを制御する。これに対し、カバレッジ外である場合には、自UE100で設定している動作タイミングに基づいて、Discovery信号の送信タイミング及び監視タイミングを制御する。
【0116】
監視タイミングにおいてDiscovery信号を受信したUE100は、当該Discovery信号の受信タイミングに基づいたタイミングで、参加要求を送信する。これにより、Discovery信号の送信側との同期をとることができる。そして、参加要求の送受信をトリガとして、上述した第1実施形態に係る動作(ステップA及びステップB)が行われる。参加要求は、D2D UE情報を含む。或いは、上述したように、Discovery信号がD2D UE情報を含んでもよい。
【0117】
(2)D2DグループへのUE参加
第2実施形態では、D2D通信を行うD2Dグループが形成されている場合において、D2Dグループに新たなUE100が参加する際に、上述した第1実施形態に係る動作(ステップA及びステップB)が行われる。これにより、新たなUE100の方が制御UEとして相応しい場合には、当該新たなUE100を制御UEとして交替することができる。なお、D2Dグループ内の全UE100でD2D UE情報を交換する必要はなく、新たなUE100と制御UEとの間でD2D UE情報を交換すればよい。
【0118】
図13は、第2実施形態に係るD2DグループへのUE参加動作を示すシーケンス図である。初期状態において、UE100−42乃至UE100−44がD2Dグループを形成しており、そのうちのUE100−42が制御UEである。また、Out of coverageケースを想定している。
【0119】
図13に示すように、ステップS401において、UE100−41は、参加要求をブロードキャストで送信する。参加要求は、D2D UE情報(D2D利用可能リソース情報、カバレッジ関連情報、電源関連情報)を含む。
【0120】
ステップS402において、参加要求を受信したUE100−42は、D2D UE情報をブロードキャストで送信する。
【0121】
ステップS403において、UE100−41乃至UE100−44のそれぞれは、上述した第1実施形態に係る動作フローに沿って制御UEを選出する。ここでは、UE100−41の方がUE100−42よりも駆動可能時間が長いため、UE100−41が制御UEとして選出される。
【0122】
ステップS404において、制御UEとして選出されたUE100−41は、報知信号を送信する。
【0123】
(3)D2DグループからのUE離脱確認
第2実施形態では、D2D通信を行うD2Dグループが形成されている場合において、D2Dグループを形成する一部のUE100が離脱したことを確認する際に、上述した第1実施形態に係る動作(ステップA及びステップB)が行われる。これにより、D2D通信のための特別なコネクションが設定されない場合でも、一部のUE100が離脱したか否かを確認できる。
【0124】
例えば、D2D通信を行うD2Dグループが形成されている場合において、制御UEは、制御UEの設定要求(更新要求)を周期的にブロードキャストで送信する。制御UEの設定要求を受信したUE100は、D2D UE情報を送信する。制御UEは、D2D UE情報の受信状況に応じて、一部のUE100が離脱したか否かを確認する。また、制御UEの設定要求を周期的に行うことにより、状況に応じて適切な制御UEに更新できる。
【0125】
或いは、D2D通信を行うD2Dグループが形成されている場合において、制御UEは、D2D通信における他のUE100の送信頻度を監視しており、当該送信頻度の変動度合いに基づいて、制御UEの設定要求(更新要求)をブロードキャストで送信する。例えば、送信頻度が急激に低下したUE100を検知した場合に、制御UEの設定要求(更新要求)をブロードキャストで送信する。
【0126】
(4)D2D通信動作
上述したように、制御UEは、D2Dグループに含まれるUE100間で送受信されるデータを中継する。また、制御UEはD2Dグループ内のUE数を報知信号に含めており、各UE100は、D2Dグループ内のUE数と自身がD2Dグループに参加した順番とに基づいて送信タイミングを決定する。例えば、各UE100は、制御UEを基準として、2つの場合、制御UEを1番、UE2を2番、次に新たな参加があったら、そのUEは、優先順位として3番目といったように送信タイミングを決定する。或いは、制御UEが個々の順番を定めて、報知信号にて通知してもよい。
【0127】
図14は、第2実施形態に係るD2D通信動作を説明するためのタイミング図である。
【0128】
図14に示すように、D2Dグループを形成するUE100の数が3である場合、時間t0は制御UE、時間t2はUE1、時間t4はUE2の送信タイミングとする。時間t1、t3、t5は、制御UEが他のUEの送信データを中継する(送信し直す)タイミングとする。時間t0とt1は何れも制御UEの送信タイミングとなる。この時間t0を、報知信号(同期、リソース、UE数など)の送信タイミング、或いは新たなUEの参加要求の送信タイミングとする。
【0129】
[第1及び第2実施形態の変更例]
上述した第1及び第2実施形態では、eNB200が、D2D通信への利用を許可する無線リソースの通知をブロードキャストで行っていたが、ユニキャスト又はマルチキャストであってもよい。また、D2Dグループ内でのD2D UE情報の交換をブロードキャストで行っていたが、ユニキャスト又はマルチキャストであってもよい。
【0130】
上述した第1及び第2実施形態では、D2D UE情報は、D2D利用可能リソース情報、カバレッジ関連情報、電源関連情報の3種類の情報を含んでいた。しかしながら、D2D UE情報は、D2D利用可能リソース情報、カバレッジ関連情報、電源関連情報の何れか1つのみであってもよい。
【0131】
上述した第1及び第2実施形態では、Discovery信号の送信に利用可能な無線リソース(周波数、時間)について特に触れなかったが、Discovery信号の送信に利用可能な無線リソース(第1の無線リソース)は、予め規定されていてもよい。また、Discovery信号の送信に利用可能な第2の無線リソースがeNB200から別途許可された場合には、UE100が、監視タイミングで第1の無線リソース及び第2の無線リソースのそれぞれについてDiscovery信号を監視することが好ましい。
【0132】
上述した第1及び第2実施形態では、移動通信システムの一例としてLTEシステムを説明したが、LTEシステムに限定されるものではなく、LTEシステム以外のシステムに本発明を適用してもよい。
【0133】
[第3実施形態]
第3実施形態について、第1及び第2実施形態との相違点を主として説明する。
【0134】
D2D近傍サービス(D2D ProSe)は、同期がとられた複数のユーザ端末からなる同期クラスタ内で、ネットワークを介さない直接的な通信を可能とするサービスである。D2D近傍サービスは、近傍端末を発見するための発見処理(Discovery)と、直接的な通信を行う通信処理(Communication)と、を含む。
【0135】
ところで、移動通信システムでは、ネットワークからの制御(又は補助)によりユーザ端末が通信を行うことが一般的である。しかしながら、D2D近傍サービスは、ネットワークのカバレッジ外においても利用可能であることが想定されている。ネットワークのカバレッジ外においては、ネットワークからの制御(又は補助)が不能であるため、D2D近傍サービスを適切に利用することが困難である。そこで、以下の実施形態では、ネットワークのカバレッジ外においてもD2D近傍サービスを適切に利用可能とするユーザ端末及び方法を提供する。
【0136】
(D2D近傍サービス)
以下において、D2D近傍サービス(D2D ProSe)の概要について説明する。
【0137】
第3実施形態に係るLTEシステムは、D2D近傍サービスをサポートする。D2D近傍サービスは、同期がとられた複数のユーザ端末からなる同期クラスタ内で、ネットワークを介さない直接的な通信を可能とするサービスである。D2D近傍サービスは、近傍端末を発見するための発見処理(Discovery)と、直接的な通信を行う通信処理(D2D通信)と、を含む。D2D通信は、Direct communicationとも称される。
【0138】
同期クラスタを形成する全UE100がセルカバレッジ内に位置するシナリオを「カバレッジ内(In coverage)」という。同期クラスタを形成する全UE100がセルカバレッジ外に位置するシナリオを「カバレッジ外(Out of coverage)」という。同期クラスタのうち一部のUE100がセルカバレッジ内に位置し、残りのUE100がセルカバレッジ外に位置するシナリオを「部分的カバレッジ(Partial coverage)」という。
【0139】
図15は、カバレッジ内及びカバレッジ外の各シナリオを説明するための図である。
【0140】
図15に示すように、カバレッジ内では、eNB200がD2D同期元となる。第3実施形態では、D2D同期元とは、D2D同期信号を送信しているノード(Synchronization source)を指す。また、D2D非同期元とは、D2D同期信号を送信せずにD2D同期元に同期するノード(Un−synchronization source)を指す。
【0141】
カバレッジ内では、D2D同期元であるeNB200は、D2D近傍サービスに利用可能な無線リソースを示すD2Dリソース情報を、ブロードキャスト信号により送信する。D2Dリソース情報は、Discovery用の無線リソース(以下、「Discoveryリソース」という)を示す情報及びD2D通信用の無線リソース(以下、「Communicationリソース」という)を示す情報を含む。
【0142】
D2D非同期元であるUE100−1は、eNB200から受信するD2Dリソース情報に基づいて、Discovery及びD2D通信を行う。
【0143】
一方、カバレッジ外では、eNB200が上述の動作をすることができないため、あるUE100(図15ではUE100−2)がD2D同期元となる。D2D同期元であるUE100−2は、D2Dリソース情報をブロードキャスト信号により送信する。D2D非同期元であるUE100−3は、eNB200から受信するD2Dリソース情報に基づいて、Discovery及びD2D通信を行う。
【0144】
ここで、カバレッジ外では、UE100がeNB200からD2Dリソース情報を取得することができないため、カバレッジ外で用いるD2Dリソース情報をどのようにして決定するかが問題になる。
【0145】
カバレッジ外で用いるD2Dリソース情報を決定するための方法として、UE100が、カバレッジ内でeNB200から割り当てられたD2Dリソース情報を記憶し、カバレッジ外で当該D2Dリソース情報を使用する方法が考えられる。
【0146】
しかしながら、カバレッジ外には、異なるeNB200より異なるD2Dリソース情報を割り当てられたUE100が複数存在することが想定される。例えばUE100同士が別のDiscoveryリソース情報に基づいてDiscoveryを実施すると、送信と受信で別のDiscoveryリソースを用いることとなり、Discovery受信の複雑性の増加、Discoveryの失敗が懸念される。よって、カバレッジ外においてD2D近傍サービスを適切に利用することが困難である。
【0147】
(ブロードキャスト同期情報)
以下において、D2D同期元が送信するブロードキャスト同期情報について説明する。ブロードキャスト同期情報は、同期(Synchronization)、Discovery、及びD2D通信を行うために必要な情報である。
【0148】
第3実施形態では、ブロードキャスト同期情報は、D2D同期信号(D2DSS)及び物理D2D同期チャネル(PD2DSCH)を含む。
【0149】
D2DSSは、時間・周波数の同期基準を提供する信号である。D2DSSは、D2D同期元の識別子又は種別を識別可能に構成されていてもよい。D2DSSは、プライマリD2DSS(PD2DSS)及びセカンダリD2DSS(SD2DSS)を含んでもよい。
【0150】
PD2DSCHは、D2DSSよりも多くの情報を運搬する物理チャネルである。PD2DSCHは、D2D同期元の識別子又は種別、及び上述したD2Dリソース情報を運搬する。或いは、D2DSSにD2Dリソース情報を関連付けることにより、PD2DSCHを不要としてもよい。
【0151】
(第3実施形態に係る動作)
(1)動作概要
第3実施形態では、UE100は、D2D同期元(eNB200又はUE100)から受信したD2Dリソース情報を記憶する。UE100は、カバレッジ外において自UE100がD2D同期元となった場合に、当該記憶しているD2Dリソース情報をブロードキャストで送信する。詳細には、上述したブロードキャスト同期情報にD2Dリソース情報を含めて送信する。
【0152】
一方、UE100は、自UE100がD2D同期元に同期するD2D非同期元となった場合に、当該D2D同期元から受信するD2Dリソース情報により、記憶しているD2Dリソース情報を書き換える。詳細には、D2D同期元から受信するブロードキャスト同期情報に含まれるD2Dリソース情報により、記憶しているD2Dリソース情報を書き換えて、書き換えたD2Dリソース情報に基づいてDiscovery(及びD2D通信)を行う。
【0153】
これにより、カバレッジ外で、D2D非同期元である自UE100が記憶しているD2Dリソース情報が、D2D同期元である他のUE100が記憶しているD2Dリソース情報と異なる場合であっても、D2D同期元である他のUE100が記憶しているD2Dリソース情報に従ってDiscovery(及びD2D通信)を行うことができる。例えば、UE100同士が同じDiscoveryリソース情報に基づいてDiscoveryを実施し、送信及び受信で同じDiscoveryリソースを用いることが可能となる。
【0154】
なお、UE100は、カバレッジ外で、自UE100がD2D同期元となるか、D2D非同期元となるかを決定する必要がある。
【0155】
第3実施形態では、UE100は、D2D同期元に適合する度合いを示す優先度情報を他のUE100から受信する。UE100は、受信した優先度情報を所定情報と比較することにより、他のUE100をD2D同期元とするか、又は自UE100をD2D同期元とするかを判断する。所定情報は、自UE100の優先度情報、又はネットワークから取得した基準値である。
【0156】
また、第3実施形態では、自UE100がD2D同期元に適合する度合いを示す優先度情報をブロードキャストで送信する。自UE100の優先度情報は、自UE100のスペック、自UE100の移動状態、記憶部に記憶しているD2Dリソース情報の信頼度のうち、少なくとも1つに基づく。
【0157】
図16は、第3実施形態に係る動作の概要を説明するための図である。
【0158】
図16に示すように、UE100−1乃至UE100−3のそれぞれは、初期状態ではD2D同期元としてブロードキャスト同期情報を送信している。また、UE100−1乃至UE100−3のそれぞれは、自UE100の優先度情報をブロードキャスト同期情報に含めて送信する。
【0159】
UE100−1の優先度情報は「Priority 10」であり、UE100−2の優先度情報は「Priority 1」であり、UE100−3の優先度情報は「Priority 5」である。UE100−4は、UE100−1乃至UE100−3のそれぞれからブロードキャスト同期情報を受信する。
【0160】
UE100−4は、UE100−1乃至UE100−3のそれぞれの優先度情報を比較し、最も優先度が高いUE100を選択する。「Priority 10」を有するUE100−1の優先度が最も高いため、UE100−1を選択し、自UE100のD2D同期元としてUE100−1を設定する。なお、ここでは、UE100−4の優先度情報は考慮していない。
【0161】
この場合、UE100−4は、自UE100で記憶しているD2Dリソース情報を、UE100−1のブロードキャスト同期情報に含まれるD2Dリソース情報で書き換える。UE100−4は、UE100−1のブロードキャスト同期情報に含まれるD2Dリソース情報に従ってDiscovery(及びD2D通信)を行う。
【0162】
なお、UE100−1及びUE100−4により1つの同期クラスタが構成され、UE100−1は、当該同期クラスタにおける同期元UE(同期クラスタヘッド、制御UE)となる。
【0163】
また、優先度情報をブロードキャスト同期情報に含めるケースを例示したが、優先度情報をブロードキャスト同期情報に含めることに代えて、又は優先度情報をブロードキャスト同期情報に含めることに加えて、優先度情報をDiscovery信号に含めてもよい。
【0164】
(2)優先度情報
UE100の優先度情報は、UE100のスペック、UE100の移動状態、記憶部に記憶しているD2Dリソース情報の信頼度のうち、少なくとも1つに基づく。詳細には、優先度情報を決定するためには、以下のパラメータのうち少なくとも1つを利用する。
【0165】
・カバレッジ内かどうか: カバレッジ内UE100については、カバレッジ外UE100に比べて優先度を高くする。
【0166】
・カバレッジ内D2D同期元(eNB200、カバレッジ内UE100)からD2Dリソース情報を取得した時間: カバレッジ内D2D同期元からD2Dリソース情報を取得した時間からの経過時間が長いほど、優先度を低下させる。
【0167】
・UE ID、Prose ID、Application ID: UE ID、ProSe IDに関しては、特定のUE ID(ProSe ID)を有するUE100、例えば、軍隊の司令官のUE、消防隊の隊長のUEなどを同期元として優先する設定に利用する。また、Application IDに関しては、例えば、Public Safetyや通話などの特定のApplicationを実施する予定の場合には、優先して同期元となるよう、優先度を上げる。
【0168】
・high power UEかどうか: 最大送信電力が大きいUE100については、優先度を高くする。
【0169】
・カバレッジ外のD2D同期元につながった回数: カバレッジ外のD2D同期元につながった回数が多いほど、D2Dリソース情報の信頼度低いと考えられるため、優先度を低くする。また、カバレッジ内のD2D同期元からD2Dリソース情報を取得するとリセットする。
【0170】
・GPSを持っているかどうか: GPS(GNSS)を持っているUE100については、時間精度が高いと考えられるため、優先度を高くする。
【0171】
・UE category: 通信能力が高いカテゴリに属するUE100については、優先度を高くする。
【0172】
・対応リリース: UE100が準拠する規格のリリースが新しいほど、優先度を高くする。
【0173】
・移動状態(速度情報): UE100の移動速度が高いほど、優先度を低くする。
【0174】
(3)D2Dリソース情報書き換え判断
UE100は、D2Dリソース情報書き換え判断を、下記のタイミングのうち少なくとも1つにおいて実施する。
【0175】
・E100がeNB200からブロードキャスト同期情報(D2D同期信号及びD2Dリソース情報)を受信したタイミング、すなわちカバレッジ内になったタイミング。
【0176】
・UE100が他のUE100からブロードキャスト同期情報を受信したタイミング。
【0177】
・UE100が他のUE100からDiscovery信号を受信したタイミング。
【0178】
なお、D2D通信を実行しているD2D同期元のUE100は、D2Dリソース情報を更新しなくてもよい。この場合、通信中はD2D同期元であり続ける。通信終了後、一定時間以上新規のD2D通信が発生しなかった場合に、D2Dリソース情報を更新する。
【0179】
(4)D2D同期元の動作
D2D同期元のUE100は、送信又は受信を行わないタイミングで、他のUE100から優先度情報を受信し、D2D同期元(すなわち、ブロードキャスト同期情報の送信)を継続するか中止するかを判断してもよい。
【0180】
図17は、第3実施形態に係るD2D同期元のUE100の動作を示すシーケンス図である。図17の初期状態において、UE100−1及びUE100−2のそれぞれはD2D同期元であり、ブロードキャスト同期情報を送信している。
【0181】
図17に示すように、ステップS501において、UE100−2は、自UE100−2の優先度情報「Priority B」を送信する。UE100−1は、UE100−2の優先度情報「Priority B」を受信する。
【0182】
ステップS502において、UE100−1は、UE100−2の優先度情報「Priority B」を、自UE100−1の優先度情報「Priority A」と比較する。ここでは、UE100−2の優先度情報「Priority B」が、自UE100−1の優先度情報「Priority A」よりも高いと仮定して、説明を進める。
【0183】
ステップS503において、UE100−1は、D2D同期元を中止する、すなわちブロードキャスト同期情報の送信を中止する。
【0184】
ステップS504において、UE100−1は、UE100−2を自UE100−1の同期元UEとして設定し、UE100−2に同期する。
【0185】
なお、本シーケンスでは、他UEの優先度情報を自身の優先度情報と比較しているが、自身の優先度情報との比較に限らず、ネットワークから取得した基準値と比較してもよい。ネットワークから取得した基準値とは、例えばAS、NASなどであらかじめ設定された閾値である。
【0186】
(5)D2D非同期元の動作
D2D非同期元のUE100は、カバレッジ内のD2D同期元からD2Dリソース情報を取得していない場合に、まずブロードキャスト同期情報(及びDiscovery信号)のサーチを実施する。或いは、D2D非同期元のUE100は、サーチ前にD2D同期元となり、ブロードキャスト同期情報(及びDiscovery信号)を送信することが禁止される。
【0187】
D2D非同期元のUE100は、受信した優先度情報を基に、又は他のUE100からのブロードキャスト同期情報を受信できなかった場合に、自身がD2D同期元になるかどうかを判断してもよい。
【0188】
図18は、第3実施形態に係るD2D非同期元のUE100の動作を示すシーケンス図である。図18の初期状態において、UE100−1はD2D同期元であり、UE100−2はD2D非同期元である。
【0189】
図18に示すように、ステップS601において、UE100−1は、自UE100−1の優先度情報「Priority A」を送信する。UE100−2は、UE100−1の優先度情報「Priority A」を受信する。
【0190】
ステップS602において、UE100−2は、UE100−1の優先度情報「Priority A」を、自UE100−2の優先度情報「Priority B」と比較する。ここでは、UE100−2の優先度情報「Priority B」が、自UE100−1の優先度情報「Priority A」よりも高いと仮定して、説明を進める。
【0191】
ステップS603において、UE100−2は、D2D同期元となる、すなわちブロードキャスト同期情報の送信を開始する。
【0192】
ステップS604において、UE100−2は、ブロードキャスト同期情報を送信する。
【0193】
なお、本シーケンスでは、他UEの優先度情報を自身の優先度情報と比較しているが、自身の優先度情報との比較に限らず、ネットワークから取得した基準値と比較してもよい。ネットワークから取得した基準値とは、例えばAS、NASなどであらかじめ設定された閾値である。
【0194】
[第4実施形態]
以下において、第4実施形態について、第1乃至第3実施形態との相違点を主として説明する。
【0195】
(マルチホップ同期方式)
上述したように、D2D同期元であるUE100、すなわち同期クラスタヘッド(SCH)UE100は、D2DSS及びPD2DSCHを用いて、Synchronization、Discovery及びD2D通信の実施に必要な情報を提供する。UE100は、D2D同期元(SCH)から送信されるD2DSSを受信することで、時間・周波数同期基準を取得する。さらに、Discovery・D2D通信の実施の際には、UE100は近接している他のUE100が使用しているリソースを知っておく必要がある。そのため、Discovery・D2D通信の無線リソース(リソースプール)が提供される必要がある。また、UE100は、異なるSCHから送信される複数のD2DSSを受信する可能性があるため、SCHに関する情報が送信されるべきである。SCHに関する情報とは、D2D同期元識別子、D2D同期元種別が考えられる。これらの情報は、D2D同期元からD2DSS、PD2DSCH、及びそれ以外の手段で通知されるべきである。表1に、D2D同期元が提供すべき情報を列挙する。
【0196】
【表1】
【0197】
第4実施形態では、マルチホップ同期方式を導入するケースについて説明する。マルチホップ同期方式とは、UE100が、eNB200又はSCH UE100から取得したブロードキャスト同期情報(D2DSS及びPD2DSCH)をマルチホップ転送するものである。
【0198】
図19は、カバレッジ外シナリオにおけるマルチホップ同期方式を示す図である。図19に示すように、複数の同期クラスタ1乃至3のそれぞれにおいて、SCH UEが送信するブロードキャスト同期情報は、当該同期クラスタ内の他UEにより転送される。その結果、SCH UEから直接ブロードキャスト同期情報を受信できないUEでも、当該SCH UEの配下のUEと同期し、Discovery・D2D通信を実施可能となる。
【0199】
図20は、部分的カバレッジシナリオにおけるマルチホップ同期方式を示す図である。図20に示すように、eNB1が送信するブロードキャスト同期情報は、カバレッジ内UEにより転送される。その結果、eNB1から直接ブロードキャスト同期情報を受信できないカバレッジ外UEでも、当該eNB1の配下のUEと同期し、Discovery・D2D通信を実施可能となる。
【0200】
(第4実施形態に係る動作)
(1)動作概要
図21は、マルチホップ同期方式におけるブロードキャスト同期情報(D2DSS及びPD2DSCH)の転送方法を説明するための図である。
【0201】
図21に示すように、ブロードキャスト同期情報を転送する場合には、転送前のブロードキャスト同期情報と転送後のブロードキャスト同期情報との間で干渉が発生すると考えられる。図21では、D2D同期元(SCH)であるUE100−1が送信するブロードキャスト同期情報(hop1)とUE100−2が転送するブロードキャスト同期情報(hop2)との間で干渉が生じている。また、UE100−2が転送するブロードキャスト同期情報(hop2)とUE100−3が転送するブロードキャスト同期情報(hop3)との間で干渉が生じている。そのため、干渉を考慮した転送方法を導入することが好ましい。
【0202】
以下において、第4実施形態に係るブロードキャスト同期情報の転送方法について説明する。まずUE100−2に着目して説明する。
【0203】
第1に、UE100−2は、D2D同期元(SCH UE100−1)からマルチホップ転送されるブロードキャスト同期情報(hop1)を受信する。
【0204】
第2に、UE100−2は、受信したブロードキャスト同期情報(hop1)に対応する送信ブロードキャスト同期情報(hop2)を他のUE100−3に転送する。ここで、UE100−2は、受信したブロードキャスト同期情報(hop1)に適用されている送信パラメータとは異なる送信パラメータを送信ブロードキャスト同期情報(hop2)に適用する。送信パラメータは、信号系列又は時間・周波数リソースのうち少なくとも一方である。
【0205】
詳細には、ブロードキャスト同期情報の送信パラメータは、D2D同期元(SCH UE100−1)からのブロードキャスト同期情報のホップ数と関連付けられている。また、UE100−2が受信したブロードキャスト同期情報(hop1)は、D2D同期元からのホップ数の情報を含む。UE100−2は、ホップ数に応じた送信パラメータを送信ブロードキャスト同期情報(hop2)に適用する。
【0206】
UE100−3も、UE100−2と同様の動作を行う。詳細には、UE100−3が受信したブロードキャスト同期情報(hop2)は、D2D同期元からのホップ数の情報を含む。UE100−2は、ホップ数に応じた送信パラメータを送信ブロードキャスト同期情報(hop3)に適用する。
【0207】
(2)D2DSS
次に、ブロードキャスト同期情報のうちD2DSSに適用される送信パラメータの具体例を説明する。
【0208】
D2DSS間の干渉を抑制する一つの方法は、例えばホップ毎にD2DSSの信号系列(直交系列)を変えることである。信号系列とは、Zadoff Chu系列又はM系列などである。これにより、UE100−1乃至UE100−3が送信するD2DSSの信号系列を異ならせることができるため、符号分割多重によりD2DSSを多重化可能になる。
【0209】
(3)PD2DSCH
次に、ブロードキャスト同期情報のうちPD2DSCHに適用される送信パラメータの具体例を説明する。
【0210】
PD2DSCH間の干渉を抑制する方法は、ホップ毎にPD2DSCHの送信リソースを変えることである。図22は、PD2DSCH間の干渉を抑制する方法を説明するための図である。
【0211】
図22に示すように、ホップ数に応じてPD2DSCHの送信周期のオフセットを変える。例えば、PD2DSCHの送信周期は、D2DSSの送信周期の整数倍に設定されており、ホップ数ごとに異なるオフセットをPD2DSCHの送信タイミングに付与する。これにより、UE100−1乃至UE100−3のPD2DSCH送信タイミングを異ならせることができるため、時間分割割多重によりD2DSSを多重化可能になる。
【0212】
[第3及び第4実施形態の変更例]
第4実施形態では、UE100は、他のUE100から送信されるブロードキャスト同期情報をスキャンすることにより、送信ブロードキャスト同期情報に適用する送信パラメータを決定してもよい。例えば、他のUE100から送信されるブロードキャスト同期情報をスキャンし、当該ブロードキャスト同期情報の送信パラメータを判別し、当該送信パラメータとは異なる送信パラメータを選択する。そして、選択した送信パラメータを適用してブロードキャスト同期情報を送信する。
【0213】
上述した第3及び第4実施形態は、第1及び第2実施形態と組み合わせて実施してもよい。
【0214】
上述した第3及び第4実施形態では、移動通信システムの一例としてLTEシステムを説明したが、LTEシステムに限定されるものではなく、LTEシステム以外のシステムに本発明を適用してもよい。
【0215】
[相互参照]
日本国特許出願第2013−202767号(2013年9月27日出願)及び日本国特許出願第2014−014915号(2014年1月29日出願)の全内容が、参照により、本願明細書に組み込まれている。
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明は、移動通信分野において有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22