(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6412922
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】VLSI装置用の最適波長光子放射顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 21/36 20060101AFI20181015BHJP
H04N 5/33 20060101ALI20181015BHJP
G01N 21/67 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
G02B21/36
H04N5/33
G01N21/67 Z
【請求項の数】27
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-507666(P2016-507666)
(86)(22)【出願日】2014年4月10日
(65)【公表番号】特表2016-517970(P2016-517970A)
(43)【公表日】2016年6月20日
(86)【国際出願番号】US2014033701
(87)【国際公開番号】WO2014169154
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2017年2月7日
(31)【優先権主張番号】61/810,645
(32)【優先日】2013年4月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512304711
【氏名又は名称】ディーシージー システムズ、 インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DCG SYSTEMS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】デスランデス、ハーブ
【審査官】
堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−274138(JP,A)
【文献】
特開平05−191728(JP,A)
【文献】
特開平05−226220(JP,A)
【文献】
特表2005−523428(JP,A)
【文献】
特開2005−140868(JP,A)
【文献】
特開平04−206847(JP,A)
【文献】
特開平05−308097(JP,A)
【文献】
欧州特許第00559313(EP,B1)
【文献】
特開平01−292206(JP,A)
【文献】
特開平09−329497(JP,A)
【文献】
米国特許第05986767(US,A)
【文献】
特開平06−288858(JP,A)
【文献】
特開平07−307256(JP,A)
【文献】
特開平07−070363(JP,A)
【文献】
米国特許第05518810(US,A)
【文献】
国際公開第2004/083930(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0240051(US,A1)
【文献】
特開平10−206986(JP,A)
【文献】
特開平10−142289(JP,A)
【文献】
欧州特許第00837335(EP,B1)
【文献】
米国特許第06788093(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0002028(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0263705(US,A1)
【文献】
米国特許第06825978(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00−21/00
G02B 21/06−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
少なくとも1000nm〜2200nmの波長を持つ電磁放射に対して感受性がある検出器と、
複数のショートパスフィルタと、
被試験半導体デバイス(DUT)と前記検出器をつなぐ光路に前記複数のショートパスフィルタの1つを選択的に配置するためのセレクタと、
前記検出器及び前記セレクタに接続され、キャリブレーションモード及びテストモードで選択的に動作するように構成される制御器と、を含み、
前記キャリブレーションモード中に、前記制御器が前記検出器で前記DUTから受信した放射信号を記録すると共に、前記制御器は前記セレクタを操作して、前記光路に前記複数のショートパスフィルタのそれぞれを連続的に挿入し、前記制御器は記録された放射信号の信号対雑音比を比較し、
前記テストモード中に、前記制御器が前記検出器で前記DUTから受信した放射信号を記録する間に、前記制御器は前記セレクタを操作して、複数の試験電圧の選択試験電圧において前記複数のショートパスフィルタの最も高い信号対雑音比に関連付けられたショートパスフィルタを前記光路に挿入する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記制御器は、さらに波長に対する信号対雑音比のプロットを生成するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御器は、さらに前記複数の試験電圧のそれぞれに対して、波長に対する信号対雑音比のプロットを生成するように構成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数のショートパスフィルタは、1550nm、1800nm、1900nm、及び2000nmにおけるカットオフ波長を有するショートパスフィルタを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ショートパスフィルタは、900nm〜2200nmの波長のスペクトルカバレージを提供する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記DUTから前記検出器に放射信号を導くように、前記DUTに隣接する光路上に配置された固浸レンズをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記DUTから前記検出器に放射信号を導くように配置された、集束性対物レンズ及びリレーレンズをさらに含む、
ことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記リレーレンズは、前記光路に対して選択的に挿脱可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記光路に選択的に挿入可能に構成された複数のコールドアパーチャをさらに含む、
ことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記キャリブレーションモード中に、前記DUTを一定の温度に保つ温度制御機構をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
方法であって、
試験パラメータを一定に保ちながら電気試験信号を被試験半導体デバイス(DUT)に第1の試験電圧で与えるステップと、
複数のショートパスフィルタのそれぞれを前記DUTと光学検出器をつなぐ光路に連続的に挿入し、前記複数のショートパスフィルタのそれぞれに対する前記DUTからの放射物に関連付けられた前記光学検出器からの放射試験信号を収集するステップと、
収集された放射試験信号に基づき、前記複数のショートパスフィルタからショートパスフィルタを選択するステップと、
選択されたショートパスフィルタを前記光路に挿入するステップと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
各前記ショートパスフィルタは、1550nm、1800nm、1900nm、及び2000nmから選ばれるカットオフ波長を有するように選択される、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ショートパスフィルタは、900nm〜2200nmの範囲でカットオフ波長を提供するように選択される、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ショートパスフィルタを選択するステップは、波長に対する信号対雑音比のプロットを生成することを含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ショートパスフィルタを選択するステップの前に、前記第1の試験電圧と異なる第2の試験電圧を設定し、試験パラメータを一定に保ちながら前記第2の試験電圧で電気試験信号を前記DUTに与えるステップと、
前記複数のショートパスフィルタのそれぞれを前記光路に連続的に挿入し、前記複数のショートパスフィルタのそれぞれに対して前記光学検出器からの放射試験信号を収集するステップとを、さらに含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の試験電圧と前記第2の試験電圧のそれぞれに対して、前記複数のショートパスフィルタに関連付けられた波長に対する信号対雑音比の1つのプロットを生成することをさらに含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記試験パラメータを一定に保つことは、前記DUTの温度を一定に保つことを含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記試験パラメータを一定に保つことは、前記DUTに与えられる前記第1の試験電圧を一定に保つことを含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
被試験半導体デバイス(DUT)の放射試験のための方法であって、
前記DUTのゲートにおける状態変化を誘発できる電気試験機と、サーマル筐体の内部に配置された光検出器の上に前記DUTからの放射物を導く光路を伴う光学システムを有する放射試験機と、複数のコールドアパーチャと、前記光学システムの光路に挿入可能な複数のショートパスフィルタと、を準備するステップと、
前記電気試験機を用いて前記DUTに第1の試験電圧で刺激を与えるステップと、
試験パラメータを一定に保ちながら、前記DUTから前記コールドアパーチャと前記ショートパスフィルタの複数の組み合わせを通過する光学放射物を連続的に収集するステップと、
前記ショートパスフィルタのそれぞれを通過して収集された光学放射物の信号対雑音比(SNR)を測定するステップと、
コールドアパーチャとショートパスフィルタの他の組合せに関連付けられたSNRよりも高いSNRに関連付けられたコールドアパーチャとショートパスフィルタの組み合わせを選択するステップと、
前記電気試験機を用いて前記DUTに刺激を与えるステップと、
前記DUTから前記選択されたコールドアパーチャとショートパスフィルタの組み合わせを通過する光学放射物を収集するステップと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記コールドアパーチャとショートパスフィルタの組み合わせを選択するステップの前に、第2の試験電圧を設定し、試験パラメータを一定に保ちながら前記第2の試験電圧で電気試験信号をDUTに与えるステップと、
試験パラメータを一定に保ちながら、前記DUTから前記ショートパスフィルタのそれぞれを通過する光学放射物を収集するステップとを、さらに含む、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記コールドアパーチャと、前記複数のショートパスフィルタと、前記検出器とをハウジングするサーマル筐体をさらに含む、
ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項22】
前記光路に挿入可能な複数のコールドアパーチャをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
複数の対物レンズと複数のコールドアパーチャをさらに含み、
各コールドアパーチャは前記複数の対物レンズの1つにマッチングする、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記複数の対物レンズは少なくとも1つのマクロレンズとマイクロレンズを含む、
ことを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記セレクタは、前記光路において、対応するコールドアパーチャと共に前記複数のショートパスフィルタの1つを選択的に配置するように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
複数のコールドアパーチャのそれぞれを通過して前記DUTから前記光学検出器に放射物を導くステップと、
前記複数のコールドアパーチャのそれぞれに関連付けられた受信した放射物に基づいてコールドアパーチャを選択するステップと
前記光路に前記選択されたコールドアパーチャを挿入するステップとをさらに含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項27】
前記ショートパスフィルタと前記コールドアパーチャを選択する前に、前記第1の試験電圧と異なる第2の試験電圧を設定し、試験パラメータを一定に保ちながら前記第2の試験電圧で電気試験信号を前記DUTに与えるステップと、
複数のショートパスフィルタとコールドアパーチャのそれぞれを前記光路に挿入し、ショートパスフィルタとコールドアパーチャの各組み合わせに対して前記光学検出器からの放射試験信号を収集するステップと、
ショートパスフィルタとコールドアパーチャの組み合わせを収集された放射試験信号に基づいて選択し、選択された組み合わせを前記光路に挿入するステップを含む、
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光子放射顕微鏡法(PhotonEmission Microscopy)の分野に属する。
本出願は、2013年4月10日に出願された米国仮出願第61/810,645号の優先権利益を主張し、そのすべての内容が本明細書に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
裏面光子放射顕微鏡法(Backside PEM:Backside Photon Emission Microscopy)は、超大規模集積(VLSI)装置(チップ)の回路診断及び分析によく使われている。PEMの前提は、状態を切り替えるときにVLSI回路における個々の論理ゲートが「ホットキャリア」(HC)光子を放射することである。これらの光子は通常、スペクトルの赤外線(IR)部分にあり、これらの波長でシリコンが透過的であるので、その裏側(基板側、すなわち金属層側の反対側)を通して回路(被試験デバイス、DUT)を作動中に観察することが可能である。
【0003】
IR範囲にわたって敏感なカメラ(検出器配列)は、
図1に示される周波数応答で容易に入手できる。一般的に、水銀カドミウムテルル(MCT:MercuryCadmium Telluride,HgCdTe)カメラは、それらの応答がLWIR(約18μm)以下まで広がっているスペクトルの広いスライスにわたって均一であるので、この目的のために使われる。MOSCCD、アンチモン化インジウム(InSb)、又はインジウムガリウムヒ化物(InGaAs)などの他のタイプの検出器は、同様によく使われる。
【0004】
半導体ゲートからの放射物(emissions)の分光特性は、励起電圧、欠陥のタイプ、及び製造技術などの多くの要因に依存する。その放射物の重要な部分は、1.55μmの従来の閾値(一般的に、液体窒素温度で動作するInGaAsカメラにより観察される)以上の波長にある。
【0005】
しかし、一般的なVLSI装置のために、HC放射物が非常に微弱であり、また、熱放射物(黒体放射分光分布に従う)に起因するノイズの量が波長とともに増加するので、そのノイズがこれらのより長い波長における観察結果を一層妨げる。
【0006】
したがって、スペクトルの各バンドにおいて、DUTからのHC放射物も、DUTと顕微鏡レンズ(optics)の両方からの熱起因放射物(thermally-originated emissions)も存在しており、HC放射物が信号を構成するものであり、熱起因放射物がノイズに寄与するものである。大きな信号対雑音比(SNR)を持つことは、良い観察の達成に重要である。
【0007】
また、微弱なHC放射物により、露光時間は、観察を複雑にする数百秒もの長い間になる。そのような露光時間を短くする1つの方法は、SNRを増大させることである。
【0008】
いくつかの既存のデザインは観察範囲を1.5μm(InGaAsカメラの感度と一致する)に制限し、また、これらの波長で熱雑音がかなり弱いので、そのようなシステムは、動作電圧が800mVを超える装置でうまく働く。
【0009】
そのような波長のために、パッシブ設計が顕微鏡の公称光路外に由来する熱雑音の軽減に用いられるが、それらの設計はその熱騒音を完全に取り除くこともできないし、光路内に由来する熱雑音を取り除くこともできない。先行技術のシステムにおいて、リレーレンズは対物レンズと検出器の間に取り付けられ、コールドアパーチャはリレーレンズと検出器の間で、リレーレンズによって結像するように対物レンズの開口の結像位置と一致している位置に取り付けられる。この配置により、カメラ本体から放射する迷熱放射が最小化される。読者の参考のためのさらなる情報として、例えば、米国特許第6,825,978号がある。
【発明の概要】
【0010】
この発明の概要は、本発明のいくつかの態様および特徴について基本的な理解を得るために盛り込まれる。この発明の概要は本発明の広範の概要ではなく、単独で本発明の重要なまたは本質的な要素を特に特定したり、本発明の範囲を定義することを意図してはいない。後述されるより詳細な実施形態の導入部として、本発明のいくつかのコンセプトを簡略化した形式で示すことがただ一つの目的である。
【0011】
ここで、適切なフィルタを光路に挿入することによって、VLSI装置の観察のために最適波長を適応的に選択するカメラの様態が記載される。その波長は、SNRの最大化、又は高SNRと高解像度の組み合わせ(短波長への最適化を促す)などの基準に従って最適化される。そのカメラは複数の交換可能な対物レンズ及び複数のコールドアパーチャを有してもよく、コールドアパーチャの位置及びサイズは各対物レンズに応じて調整される必要がある。これは、選択ホイールに複数の開口を設けられることによって達成できる。
【0012】
光路へのフィルタの導入はすでに先行技術に記載されているが、適応性のある方法でSNRの最大化を考慮した光路へのフィルタの導入は記載されていない。VLSI装置からの光信号が非常に微弱であるので、そのようなフィルタは、より多くの光を取り込み、ひいては所要の露光時間を短縮するために、従来から広帯域幅を有する。
【0013】
開示される態様によれば、一連のショートパスフィルタは用いられ、異なるショートパスフィルタが被調査装置のタイプ及びその装置に適用する電圧によって選ばれる(ショートパス(SP)フィルタは、目標スペクトルの活性範囲にわたって長波長を減衰させて短波長を透過(通過)させる光干渉フィルタ又は色ガラスフィルタである)。しかしながら、そのために、システムはまず、可能な観察スペクトルにわたってSNRを特徴づける必要がある。開示される実施形態は、長波長のHC放射物を3μmの有用信号で示す装置の最近のVLSI技術の観察を可能にする。
【0014】
HC光子放射物がDUTの固有特性に依存するとともに、電圧及び温度のような操作パラメータにも依存するので、最適フィルタの選択は装置によって異なり、前もって決めることは実用ではない可能性がある。
【0015】
一実施形態では、半導体装置を載置するためのベンチと、光路を規定する(defining)光学装置と、少なくとも1000nm〜2200nmの波長を持つ電磁放射に対して感受性がある検出器と、カットオフ波長を超える波長に対して高い遮断能力がある複数のショートパス光学フィルタと、上記光路に上記フィルタの1つを選択的に配置するためのセレクタと、上記検出器及び上記セレクタに接続され、キャリブレーションモード及びテストモードで選択的に動作するように構成される制御器と、を含む半導体装置の画像化用光学システムが提供される。ここで、キャリブレーションモード中に、制御器が検出器で受信した放射信号を記録すると共に、制御器はセレクタを操作して上記フィルタの1つを上記光路に連続的に挿入し、すべての上記フィルタが上記光路に配置されると、制御器は上記フィルタのそれぞれのために上記検出器の出力の信号対雑音比を比較するように動作する。テストモード中に、制御器が検出器で受信した放射信号を記録する間に、制御器は上記セレクタを操作して、選択試験電圧Vddにおいて最良の信号対雑音比を有するフィルタの1つを光路に挿入する。
【0016】
別の実施形態では、光学検出器を備える放射試験機のテストベンチにDUTを取り付けるステップと、DUTを電気試験機に電気的に接続するステップと、試験パラメータを一定に保ちながら電気試験信号をDUTに与えるステップと、複数のショートパスフィルタの1つを放射試験機の光路に連続的に挿入し、すべての利用可能なショートパスフィルタが光路に挿入されるまで、光学検出器からの放射試験信号を収集するステップと、放射信号の最も高い信号対雑音比を提供する適切なショートパスフィルタを決定するステップと、適切なショートパスフィルタを光路に挿入するステップと、DUTに対して放射試験を行うステップと、を含む半導体装置(DUT)の放射試験のための方法が提供される。その方法は、電圧Vddを変更して異なるショートパスフィルタを選択した後、DUTの2回目の放射試験を行うことをさらに含んでもよい。
【0017】
さらなる実施形態では、DUTのゲートにおける状態変化を誘発できる電気試験機を準備するステップと、光検出器の上にDUTからの放射物を画像化するための光学システムを備える放射試験機を準備するステップと、光学システムの光路に連続的に挿入可能な複数のショートパスフィルタを準備するステップと、上記電気試験機を用いてDUTに刺激を与えるステップと、すべての試験パラメータを一定に保ちながら、上記DUTからフィルタのそれぞれを通過する光学放射物を連続的に収集するステップと、すべての試験パラメータを一定に保ちながら、上記DUTからフィルタのそれぞれを通過する光学放射物を連続的に収集するステップと、上記フィルタのそれぞれを通過して収集された光学放射物の信号対雑音比(SNR)を測定するステップと、各フィルタを通過して収集された光学放射物の信号対雑音比(SNR)を測定するステップと、SNRを最大化する1つのフィルタを選択するステップと、電気試験機を用いて上記DUTに刺激を与えるステップと、上記DUTからその1つのフィルタを通過する光学放射物を収集するステップと、を含む半導体装置(DUT)の放射試験のための方法が提供される。
【0018】
明細書に含まれ、その一部を構成する添付の図面は、発明を実施するための形態とともに発明の実施形態を例示し、本発明の原理を解説し示すためにある。図面は、実施形態の主な特徴を、図式よって例示的に示すことを意図している。また、図面において、実際の実施形態のすべての特徴も、表示される要素の相対的なサイズも提示することを意図せず、図面は正確な縮尺率ではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、様々なカメラセンサ技術の応答機能を示す。
【
図2】
図2は、複数のフィルタ及び適応制御器を備えるカメラを示す。
【
図3】
図3は、複数の対物レンズ、複数のショートパスフィルタ、及び複数のコールドアパーチャ、着脱可能なリレーレンズを備えるカメラを示す。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るプロセスのフローチャートを示す。
【
図5】
図5は、波長に対して信号対雑音比をプロットした結果を示す。
【
図6】
図6は、SP1800ショートパスフィルタの透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、適切なフィルタを光路に挿入することによって、VLSI装置の観察のために最適波長を適応的に選択するカメラの様態が記載される。所定の被試験デバイス(DUT)のための最良の放射画像が得られるために、その波長は、SNRの最大化、又は高SNRと高解像度の組み合わせ(短波長への最適化を促す)などの基準に従って最適化される。
【0021】
光路への広帯域フィルタの導入はすでに先行技術に記載されているが、適応性のある方法でSNRの最大化を考慮した光路へのフィルタの導入は記載されていない。VLSI装置からの光信号が非常に微弱であるので、そのようなフィルタは、より多くの光を取り込み、ひいては所要の露光時間を短縮するために、従来から広帯域幅を有する。
【0022】
一方、ショートパスフィルタを通過する光の総量がより少ないにもかかわらず、DUTの特定の放射波長及び印加電圧に合わせながら高SNRが依然としてより短い露光時間を与えるので、開示される実施形態ではショートパスフィルタが利用される。いくつかの実施形態において、システムはまず、可能な観察スペクトルにわたってSNRを特徴づける必要がある。
【0023】
HC光子放射物がDUTの固有特性に依存するとともに、電圧及び温度のような操作パラメータにも依存するので、最適フィルタの選択は装置によって変更でき、前もって決めることは実用ではない可能性がある。
【0024】
ここで、適切なフィルタを光路に挿入することによって、VLSI装置の観察のために最適帯域幅を適応的に選択する顕微鏡の様態が記載される。この方法は、各特定のDUTから各特定の印加電圧、例えばVddで最良の放射画像が得られるために、最良のショートパスフィルタを確定するステップを含む。
【0025】
本発明の態様は、実施形態が
図2に示されるカメラを備える放射顕微鏡を利用する、DUTの放射顕微鏡法のための方法を包含する。そのカメラは、サーマル筐体[22]内に位置して、制御器[23]に接続される電子検出器配列[21]を含む。また、サーマル筐体には、コールドアパーチャ[24]、複数のショートパスフィルタ[25a,25b・・・]を備えるフィルタ選択ホイール[25]が取り付けられる。残りの光路は、リレーレンズ[26]及び対物レンズ[27]を含む。また、フィルタ選択ホイール[25]には、制御器が接続されている。例えば、自動試験装置(ATE:AutomatedTesting Equipment)などの試験機[28]は、DUT[29]を動作させて状態を変化させるようにDUT[29]に刺激信号を与えるために用いられる。ATE刺激信号は、所定の電圧Vddにおける信号を含む。異なる電圧により放射物に異なる波長を与えるので、フィルタホイールは放射物に応じて最良のショートパスフィルタを選択するために用いられる。
【0026】
本実施形態におけるカメラには、近赤外及び中赤外IRスペクトルにわたって好適な(均一かつ広い)応答を有する水銀カドミウムテルル(MCT:MercuryCadmium Telluride,HgCdTe)検出器配列が用いられるが、他の種類の検出器(例えば、InGaAs、拡張したInGaAs又はInSb)も使用され得る。
【0027】
ここで記載される本発明の様態では、動作時に、制御器が2つのモードのいずれかで動作する。
【0028】
<「キャラクタリゼーション」又はキャリブレーションモード>
このモードにおいて、制御器はDUTからの強い放射物を生じる試験信号を生成するために試験機を利用する。それから、制御器は検出器配列からの複数の測定結果(統計ベース測定結果を作るのに十分である)を集めて、DUTが作動中と非作動中の両方であるときの時間を比較して、システムのノイズフロアレベルを求める。そのレベルを求める際に、制御器は複数の画素から測定結果を集めて比較することができる。制御器は、異なるショートパスフィルタが使用される間に、このプロセスを繰り返すので、各フィルタのためにSNRを表にして最適フィルタを選択することができる。
【0029】
<「オブザベーション」又はテストモード>
このモードにおいて、制御器は、最適フィルタに切り替え、DUTを観察するために試験機を使用して実際の試験ベクトルを実行する。
【0030】
いくつかの実施形態において、対物レンズ[27]は、屈折率がDUTの基板の屈折率と一致する平坦な前面を有するので、DUTと接触して使用可能であり、カメラの開口数を増加させる。このようなレンズは、固浸レンズ(SIL)と呼ばれ、標準的な集束性対物レンズとともに動作することができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、カメラは複数の交換可能な対物レンズ、典型的に、回転ターレットに取り付けられる複数の交換可能な対物レンズを特徴とする。対物レンズの1つは、性質上より大径でより大きなリレーレンズを必要とするマクロレンズであってもよい。そのような状況において、マクロレンズを使用するときにリレーレンズ構成を使用しないことが有利となるので、リレーレンズは、それを光路から取り外すことを可能にする取り付け具に取り付けられる。
【0032】
図3は本発明の実施形態を示す。検出器[32]及びショートパスフィルタセレクタ[30]は先の実施形態と同様である。ターレット[34]には、複数の対物レンズ[34a,34b,34c]が載置されている。それらのうちの1つのレンズ[34a]はマクロレンズであり、マイクロレンズである他のレンズより大きい。リレーレンズ[33]は、それを光路外の位置[33a]に移動させることを可能にするピボット又はスライドに取り付けられ、マクロレンズ[34a]を使用するときに位置[33a]に移動する。開口部ホイール[31]は異なるサイズの複数のコールドアパーチャ[31a]を含み、各コールドアパーチャ[31a]は対物レンズの1つに対応する。光軸[35]は水平破線によって示される。
【0033】
DUT39は、ベンチ36に取り付けられる。ベンチ36は、試験中にDUTを一定の温度に保持するために、温度制御機構を含んでもよい。そのような機構として、例えば、熱電冷却器(TEC)、噴霧冷却器などが挙げられる。DUTは試験機38(例えば、ATE)から、電圧Vddを含む試験信号(ベクトル)を受信する。試験機ATEは標準試験装置であってもよく、放射検知システムの一部ではない。制御器37は、放射試験機の動作を制御するように構成されている。制御器37は、ショートパスフィルタセレクタ30及び光学検出器32からの放射信号の収集を操作するようにプログラムされてもよい。
【0034】
図4は一実施形態に係るプロセスのフローチャートを示す。ステップ40において、利用可能な対物レンズから対物レンズが選択される。一実施形態において、このステップは、SILをDUTに載置して所望の区域から放射物を収集することを含む。また、いくつからの実施形態において、このステップは、対応するコールドフィルタの選択も含む。ステップ41において、複数のショートパスフィルタにおける第1フィルタを選択する。一実施形態において、各ショートパスフィルタは異なる波長でカットオフ周波数を有し、約1200nm〜約2200nmの波長のカバレージを可能にする。各ショートパスフィルタは、そのカットオフ以上のいかなる伝送を実質的に除去する上限カットオフ波長を有するため、選択したカットオフ周波数以上のノイズの発生を回避する。代替的な実施形態において、ショートパスフィルタの代わりに狭帯域フィルタを用いてもよく、その場合、各狭帯域フィルタが約100nmの帯域幅を有し、利用可能なフィルタは約1200nm〜約2200nmの波長における周波数をカバーするように配置する。しかし、ショートパスフィルタがバンドパスフィルタより多くの信号を通過させることを可能にするので、ショートパスフィルタを使用することが好ましい。また、サーマルバックグランド放射物及びその関連ノイズが波長とともに増加するので、バンドパスフィルタの代わりにショートパスフィルタを使用することは、より高い信号レベルをカットオフより低い波長で通過させることを可能にすると同時に、これらの悪影響を効果的に遮断する。
【0035】
一実施形態によれば、4つのショートパスフィルタが用いられる。一例では、使用されるショートパスフィルタは、SP1550(InGaAsカメラを模擬するために用いられる。すなわち、標準InGaAsセンサが検出できないが、HgCdTe又は拡張したInGaAsのような他のいかなる検出器が検出できる長波長を遮断する)、SP1800、SP1900、及びSP2000である。各ショートパスフィルタは、特定のカットオフより低いすべてのものを伝送するが、特定のカットオフより高いものの伝送を阻害する。例えば、
図6に示すように、SP1800は1800nmより低いすべてのものを伝送するが、1800nmより高いすべてのものを阻害する。検出器自体が900nmより高い光のみを吸収するので、SP1800を例とする場合、システムは900nm〜1800nmの光を効果的に捕捉する。
【0036】
ステップ42において、すべてのパラメータを一定に保ちながら試験ベクトルをDUTに与える。重要なことは、ステップ43で放射信号を収集、記憶しながら、DUTの温度及び電圧Vddを一定に保つことである。その後、ステップ44において、より多くのテスト用フィルタがあるか否かを確定し、そして、より多くのテスト用フィルタがあれば、プロセスは次のフィルタを選択するステップ41に戻る。その後、同じ試験ベクトルをDUTに与え、すべてのパラメータを一定に保ちながら、別の一連の放射信号を収集、記憶する。ステップ44ですべてのフィルタがテスト済みであると確定された場合、プロセスはステップ45に進み、DUTの実際の放射試験のために用いられる最良のフィルタを確定する。一実施形態によれば、このステップにおいて、検出された放射物及びノイズは、使用されるフィルタのそれぞれに対して定量化される。1つの特定の実施形態において、この定量化は、波長に対して信号対雑音比をプロットすることによって行われる。そのようなプロットの例は、
図5に示される。
図5の例では、すべての利用可能なフィルタ及び異なるVddに対して、上に概説された試験を繰り返す(一連の試験のそれぞれは一定に保たれるVddを有する)。その後、実際の放射試験のために、放射試験で使用する最良のSNR及び電圧Vddによって、使用されるフィルタを確定する。
図5の例では、短波長放射による低いVddが示され、そのため、短波長フィルタは低いVddのために使用され得るが、長波長フィルタは高いVddのために使用され得る。一方、異なる装置による他の試験によって、そのような挙動は典型的ではないことが示され、試験装置がmV範囲、すなわち、1ボルトより低い範囲で動作する場合、その挙動は逆になり、すなわち、低いVddが放射物及び長波長を引き起こすから、最良のSNRのための長波長フィルタを必要とする。したがって、この試験は、試験される新たなデバイスのそれぞれに対して行われる必要がある。標準放射試験は、その後、ステップ46で適切に選択したショートパスフィルタを用いて行われる。
【0037】
本発明は、限定的というより例証的であることを意図した、特定の実施例に関連して記載されている。ハードウェア、ソフトウェアおよびファームウェアの多様な組合せが本発明の適用に適するということを当業者は理解するであろう。さらに、本明細書の検証および本明細書に記載される発明の適用から、本発明の他の適用は、当業者にとって明らかである。後述の特許請求の範囲によって示される本発明の正確な範囲と意思をもって、本明細書および実施例は、例示のみとしてみなされることを意図している。