(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記光検出ユニットは、上記出力光から、上記所定の回折光が有する上記所定の波長の光を波長分離し、各分離された波長に基づいて、上記光伝達体における上記複数の部分の位置を特定する、ことを特徴とする請求項1記載の光学式曲がり測定装置。
上記グレーティングは、光が内部を伝搬または表面で反射するときに回折現象を起こして、入射方向とは異なる方向に光を伝搬させる、周期性を持つ構造を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学式曲がり測定装置。
上記複数の被検出部の内の一部は、上記光伝達体の上記長手軸まわりの上記特定の方向を中心とする一部に形成され、上記複数の被検出部の内の他の一部は、上記光伝達体の上記長手軸まわりの上記特定の方向とは異なる第2の特定の方向を中心とする一部に形成され、
上記特定の方向を中心とする一部に形成された上記一部の被検出部の内、1個の上記グレーティングの上記周期性を持つ構造は、上記第2の特定の方向を中心とする一部に形成された上記一部の被検出部の内の1個の上記グレーティングの上記周期性を持つ構造と異なる周期を有する、ことを特徴とする請求項3に記載の光学式曲がり測定装置。
上記特定の方向を中心とする一部に形成された上記一部の被検出部それぞれの上記グレーティングの上記周期性を持つ構造は、上記第2の特定の方向を中心とする一部に形成された上記一部の被検出部それぞれの上記グレーティングの上記周期性を持つ構造と異なる周期を有する、ことを特徴とする請求項14に記載の光学式曲がり測定装置。
上記複数の被検出部は、上記グレーティングの上記周期性を持つ構造が、上記光源ユニットに近い側から遠い側に向かって、周期が短くならない方向の順番で並ぶように、上記光伝達体に設けられる、ことを特徴とする請求項3に記載の光学式曲がり測定装置。
上記光検出ユニットによって波長分離される光は、上記複数の被検出部のグレーティングにて複合的に引き起こされる特定の波長の光の光強度の変化を受けた光である、請求項1乃至19の何れかに記載の光学式曲がり測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る光学式曲がり測定装置10は、
図1に示すように、光源12と、導光部材14と、光検出部16と、複数の被検出部18(
図1の例では、n個の被検出部18−1,18−2,…,18−9,…,18−n)と、光分岐部20と、反射防止部材22及び24と、から構成される。
【0012】
ここで、光源12は、測定光を供給する光源ユニットである。導光部材14は、コアとその周囲をおおう、それより屈折率が低いクラッドとを有し、光源12からの測定光をその長手軸方向に伝達する、可撓性の光伝達体である。光検出部16は、導光部材14から出力される光を検出する光検出ユニットである。複数の被検出部18−1,18−2,…,18−nは、導光部材14の長手軸方向に異なる複数の部分において、導光部材14のコアに接するように設けられた、あるいは、導光部材14のクラッドの一部に設けられた、それぞれ所定の方向に進む特定の波長の光を強め合うように設定したグレーティングを有している。光分岐部20は、光源12及び光検出部16と導光部材14の一端とを光学的に接続し、これにより、光源12からの測定光を導光部材14の上記一端に入射させると共に、導光部材14の上記一端からの光を光検出部16に入射させる。反射防止部材22は、導光部材14の他端で測定光が反射されて導光部材14を反対方向にできるだけ伝達しないように、測定光の反射を抑制する。反射防止部材24は、光分岐部20で測定光が反射されて光検出部16に入射する量をできるだけ減らすため、測定光の反射を抑制する。
【0013】
なお、
図1の構成は、光源12と光検出部16が導光部材14の同じ側にある場合であるが、光源12と光検出部16とが導光部材14に対し違う側にあっても構わない。この場合、本実施形態に係る光学式曲がり測定装置10は、
図2に示すように、光源12と、導光部材14と、光検出部16と、複数の被検出部18(
図2の例では、2個の被検出部18−1,18−2)と、から構成される。
【0014】
そして、本実施形態では、光検出部16は、上記複数の被検出部18のグレーティングにて引き起こされる上記特定の波長の光の変調を受けた光を波長分離し、各分離された波長の光の強度変化に基づいて上記導光部材14の上記複数の部分の上記特定方向の曲がり量を独立に測定する。
【0015】
以下、各部の構成について、詳細に説明する。
【0016】
光源12は、測定光として、例えば
図1中に示すような広範囲の波長帯域の間で略均一な光スペクトルを有する白色光を供給する。
【0017】
導光部材14は、例えば、光ファイバによって構成されることができる。
図3Aは、この光ファイバの長手軸方向に直交する方向である径方向の断面構造を示している。すなわち、上記光ファイバは、中心に存在する、光を導光するコア141と、当該コア141の周りに設けられた、光を安定的にコア141に閉じ込めるクラッド142と、更にこれらコア141及びクラッド142を物理的な衝撃及び熱的な衝撃から保護するためのジャケット143と、によって構成されている。
【0018】
あるいは、導光部材14は、光導波路によって構成されても良い。光導波路は、
図3Bに示すように、フレキシブル基板144上に、上記光ファイバのそれらと同等の役割をするコア141とクラッド142とを設けたものである。
【0019】
以下、導光部材14を上記のような光ファイバによって構成した場合を例に取って、光学式曲がり測定装置10の構成を更に詳しく説明する。なお、本実施形態では、この光ファイバは、シングルモードである。
【0020】
光学式曲がり測定装置10の導光部材14である光ファイバは、曲がり量を測定するべきそれぞれの部分に、
図4A及び
図4Bに示すような被検出部18が設けられている。すなわち、被検出部18は、光ファイバの長手軸方向の所望位置において、ジャケット143とクラッド142を除去してコア141の一部を露出させ、この露出させたコア141の部分に、フォトポリマーによりホログラフィックに光学特性変化部材であるグレーティング26を形成したものである。なお、上記ジャケット143及び上記クラッド142の除去は、レーザ加工によって、あるいは、フォト工程及びエッチング工程などを利用して行う。このとき、上記コア141にミクロな傷を付けてしまうと、光を漏らし、導光する光を損失させてしまったり、曲げに弱くなったりしたりするので、上記コア141に極力傷を付けない方法で加工することが望ましい。
【0021】
このように、被検出部18は、グレーティング26をコア141に接触するように形成したものである。また、グレーティング26は、接触していなくても、
図5に示すように、クラッド142の一部に形成されていても良い。
【0022】
グレーティング26は、光が内部を伝搬または表面で反射するときに回折現象を起こして、当該グレーティング26への入射方向とは異なる所定の方向に進む特定の波長の光を強め合うように伝搬させる。
図4Bでは、測定光を実線の矢印で示し、グレーティング26によって所定方向に進むようにされた特定波長の光を破線の矢印で示している。
【0023】
なお、上記特定の波長は、詳細は後述するように、グレーティング26の構造によって設定することが可能となっている。例えば、
図6A乃至
図6Cに示すように、グレーティング26を周期性を持つ構造により構成することができ、この周期(ピッチ長Λ)によって、上記特定の波長を設定することができる。
【0024】
なお、本実施形態では、グレーティング26の屈折率は、コア141の屈折率よりも小さいものとする。
【0025】
なお、各被検出部は、
図4A及び
図4B、及び
図5のようにグレーティング26を剥き出しのままとしても良いが、
図7Aに示す被検出部18−Aのように、グレーティング26上のジャケット143とクラッド142とを除去した部分に対してジャケット様の部材を被検出部保護部材145として満たして、光ファイバの元の形状に回復させても良い。あるいは、
図7Aに示す被検出部18−Bのように、ジャケット143とクラッド142を除去した部分を満たすように、グレーティング26を形成することで、光ファイバの元の形状に回復させても良い。
【0026】
図1及び
図2では、導光部材14である光ファイバの長手軸に沿って複数の被検出部18を設けている。このように並べて配置するだけで無く、
図7Aに示すように、一つの被検出部18(被検出部18−A)に対して、光ファイバの長手軸の同じ箇所で、直交方向に或いは径方向の軸が異なる向きに、異なる特定の波長を持つもう一つの被検出部18(被検出部18−B)を設けても良い。この構造では、被検出部18−A,18−Bに対応する部分での曲がり量だけではなく、湾曲の方向も測定可能となる。
【0027】
また、光ファイバの長手軸の同じ箇所に複数の被検出部18−A,18−Bを配置すると、当該箇所の剛性が低下し、曲げに弱くなってしまう。一方、光検出部16によって光の強度変化に基づいて測定される曲がり量は、光ファイバの上記被検出部18が配された部分だけではなく、上記被検出部18を含めた前後所定の長さの測定範囲に関するものである。そのため、
図7Bに示すように、光ファイバの長手軸の略同じ箇所に複数の被検出部18−A,18−Bを配置するようにして、剛性低下を抑制するようにしても構わない。
【0028】
このように、複数の被検出部18を、光ファイバの長手軸(z軸)の略同じ箇所に互いに直交方向やφが異なる向きに設けても良い(なお、導光部材14である光ファイバの円筒座標は、
図8に示す通りである)。複数の被検出部18を異なるz方向位置及びφ方向位置上に作製することで、様々な位置での様々な方向の曲率(曲がりの度合い)を検出することができる。
【0029】
以下、被検出部18のグレーティング26の原理説明を行う。説明の都合上、既存技術であるFBG(Fiber Bragg Grating)の場合のグレーティング26の基本原理から説明する。
【0030】
FBGは、
図9に示すように、シングルモードファイバのコア141にグレーティング26を書き込んだものである。グレーティング26のピッチ長をΛとしたときに、グレーティング26によって(真空中の)波長λB=2nΛの光が選択的に反射される(nはコア141の屈折率)。
【0031】
これは、波長λの逆数である波数kを使って考えると、以下のようになる。
波長λと波数kの関係をk=2π/λとする。1次回折は、大きさkを持ち、かつ、波の進行方向の向きを持つ、波数ベクトルK(本明細書において、大文字のKはベクトルであることを表す)の保存則として、下記のように説明できる。
【0032】
図10Aに示すように、コア141の中では、波数ベクトルKinの波は、グレーティング26の波数ベクトルKG(KG=2π/Λ)の1次回折で、Kout=Kin+KGという波数ベクトルKoutの波を発生させる。シングルモードファイバでは、伝搬モードの波数ベクトルKin,Koutは、ほぼz方向を向いている。また、回折により波数の大きさは変わらないので、kin=koutである。
【0033】
この2条件を満たすのは、
図10Bに示すように、(コア141中の)入射波数kin=2π/(2Λ)、グレーティング26の波数kG=2π/Λのときであり、このときだけシングルモードファイバを逆方向に伝搬する回折波を出すことができる。
【0034】
本実施形態のようにクラッド142にグレーティング26がある場合も、コア−クラッドクラッド界面に入射した光は上記と同様な回折を起こすために、その位置のグレーティング26の1次回折光を反射する。ただし、回折は主にコア−クラッド界面で起こるため、波数の保存則は、上記のようなKout=Kin+KGではなく、
図11Aに示すように、表面に沿った方向、すなわちz成分の保存則になる。これは、kout,z=kin,z+kGと書くことができる。シングルモードファイバでは、前述のように伝搬モードの波数ベクトルKin,Koutはほぼz方向を向いているので、
図11Bに示すように、上記のコア141にグレーティング26を書き込んだ場合と同じことになる。
【0035】
ただし、保存則がz方向に限定されるため、kin>kG/2の場合には、
図11Cに示すように、直進しないモードとカップルする可能性がある。これはクラッドモードになり、光の損失、ノイズの原因になる。クラッドモードとのカップリング係数が小さければ問題ないが、大きい場合は、対策が必要である。この損失は、kin>kG/2の場合だけ発生するため、特定の波数ベクトルKinの光が
図11Bのようになるグレーティング26に到達するよりも前にその特定の波数ベクトルKinの光が通過するグレーティング26は、kin<kG/2を満たせばよい。つまり、光源12に近い側から遠い側に向かって、波数kGが長くならない順番(すなわち、グレーティング26のピッチ長Λが短くならない順番)にグレーティング26を作製する。
【0036】
このようにすれば、
図11Bのようになるグレーティング26に到達する前に波数ベクトルKinの光がクラッドモードを発生して損失を起こすことがなくなる。発生したクラッドモードは通常、ある程度の距離で減衰するので、他のグレーティング26や光検出部16に影響を及ぼすことはない。
【0037】
従って、導光部材14である光ファイバの特定の被検出部18に対して特定の波数ベクトルKinがあり、
図1の構成では、同じ大きさの逆方向の光が、光分岐部20を介して光検出部16に戻ることになる。特に上述の順番で被検出部18(グレーティング26)を並べた例として、
図1中に、被検出部18−1,18−2,18−nの断面構造を示している。グレーティング26は光源12に近い側の被検出部18−1のピッチ長Λが短く、遠ざかると長くなる。
図1中に示すように、被検出部18−1〜18−nに対応したλ1〜λnの波長の光が光検出部16に戻り、光検出部16では、この受光した光を分光する、つまり波長分離して、それぞれの波長の光の光強度を検出する。
【0038】
この光強度は、その被検出部18が設けられた光ファイバの部分での曲がり量(曲率)によって変化する。これは、コア−クラッドクラッド界面への入射角により、エバネッセント波のクラッド142側への侵入長が変化するからである。
図12A乃至
図12Cに示すように、被検出部18側に光ファイバが曲がっていれば光強度は弱く、それと逆方向ならば強くなる(
図12A乃至
図12Cでは、光強度の強弱を、破線矢印の太細により表している)。
【0039】
従って、光検出部16は、その場所での曲がり量(曲率)に依存する光の強度変化に基づいて、光ファイバの特定の位置での曲率を測定することができる。
【0040】
このように、波数(波長)により位置を区別するので、光源12及び光検出部16として特別な構成のものを用意する必要がなく、光学式曲がり測定装置10を安価に構成することができる。
【0041】
また、
図7A及び
図7Bに示したように、光ファイバの複数のφ方向に、互いに異なる波数(波長)のグレーティング26を形成することで、あらかじめ定まった異なる方向の曲率を波数(波長)により安価な装置で測定することができる。同時に、光ファイバの長手軸方向に異なる被検出部18も異なる波数(波長)のグレーティング26を形成することにより、あらかじめ定まった異なる方向、位置の曲率を安価な装置で測定することができる。従って、1本の光ファイバで、光ファイバの3次元的な形状を求めることができる。
【0042】
また、本実施形態では、光ファイバのクラッド142部分を加工してグレーティング26を形成する方式である。そのため、汎用品の光ファイバを利用することができ、安価に光ファイバを利用した光学式曲がり測定装置10を作成することができる。
【0043】
このような長所は、本発明の他の実施の形態にも共通している。
【0044】
なお、上述のような光源12に近い側から遠い側に向かって波数kGが長くならない順番にグレーティング26を作製しなかった場合には、ある波長の光は特定のグレーティング26での反射の手前で、他のグレーティングでのクラッドモード発生による損失が複合的に生じることがある。しかしながら、この損失も上記と同様な理由で曲率に依存する。従って、その波長の光は、並べ方により定まる損失と反射を通じて、特定の複数の被検出部18の曲がりの情報を持つ。複数波長についてこの情報を取得することで、それぞれの被検出部18の曲率を逆問題として解くことが可能である。
【0045】
また、前述したように発生したクラッドモードは通常、ある程度の距離で減衰する。しかし、十分減衰する前に光検出部16に到達すると、
図11Bようになる条件を満たす戻り光に対してノイズとなる。そのノイズが無視できないくらい大きい場合は、
図13に示すように、クラッドモード除去部材28を形成する必要がある。このクラッドモード除去部材28は、例えば、クラッド142に接触して、屈折率がほぼクラッド142と同等で、吸収部材をさらに含む部材、あるいは、外界との界面での透過又は散乱によりクラッドモードを減衰させる部材、である。このクラッドモード除去部材28としては、クラッド142の表面(外壁)そのものに凹凸を付けただけであってもよい。密着性がよいジャケット143も、クラッドモードの除去に有効である。すなわち、ジャケット143をクラッドモード除去部材28として利用することができる。
【0046】
クラッドモード除去部材28は、光検出部16とそれに最も近い被検出部18との間に形成するとよい。クラッドモードは、他の被検出部18でさらに別のモードに変換される等の悪影響を及ぼすおそれがあるので、隣接する2つの被検出部18の間にも形成すると、より効果的である。
【0047】
このようにすれば、クラッドモードが残存するような状況でも、
図1の構成では、各位置のグレーティング26に特有な波数の光だけが戻る。よって、分光部をもつ光検出部16で分光して光検出することにより、各位置での光の反射強度を求めることができる。
【0048】
なお、
図2の構成では、各位置(被検出部18−1,18−2)で特有の波数が反射された後のディップが観察される(λ1、λ2)。このディップの深さも曲率によって変化する。上述のクラッドモードへのカップリングがあまり大きくない場合は、この
図2の構成も可能である。
【0049】
いずれにしても、被検出部18をグレーティング構造とすることで、各被検出部18毎に限定された波長範囲で曲率による信号変化があるため、各被検出部18の位置での曲率を得ることができる。
【0050】
しかも、グレーティング26の屈折率がコア141の屈折率よりも小さいため、導波モードの主要部はエバネッセント成分を除いて被検出部18に侵入することがない。よって、クラッドモードへの変換等の不要な光量損失が生じない。
【0051】
グレーティング26の屈折率がクラッド142の屈折率よりも小さいと、全ての導波モードはエバネッセント成分を除いて被検出部18に侵入することがないので、不要な光量損失がさらに減少する。
【0052】
被検出部18として利用するグレーティング26は、
図6A乃至
図6Cのように、光ファイバの進行方向に沿った周期構造であり、材料の物性等の変化または材料そのものの違いによる屈折率の連続的または不連続的な周期構造である。変化は、実部の屈折率変化でも、虚部の屈折率変化でもよい。これは以下の理由による。グレーティング26による回折は、グレーティング26の各点からの散乱の周期的変化の積分により引き起こされる。散乱は、例えばレイリー散乱の場合では、散乱振幅は以下のように表される(式の出典:ボルン、ウルフ著,光学の原理,第5版,13.5,(85)式)。
【0054】
このように、散乱は、レイリー散乱に限らず、複素屈折率nの関数として表すことができ、屈折率の実部によっても虚部によっても散乱強度を周期的に変化させることができる。
【0055】
なお、グレーティング26は、例えばフォトポリマーによりホログラフィックに作製される。グレーティング26は、フォトポリマーの表面だけでなく、その内部まで作製されるので、エバネッセント成分がグレーティング26に効率よく結合する。
【0056】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、シングルモードの導光部材14の場合であったが、本発明は、マルチモードの導光部材14であっても、同様に適用可能である。
【0057】
マルチモードファイバの場合も、光強度は、その被検出部18が設けられた光ファイバの部分での曲がり量(曲率)によって変化する。これは、シングルモードファイバと同様に、コア−クラッドクラッド界面への入射角により、エバネッセント波のクラッド142側への侵入長が変化することに加えて、光波密度の断面分布も変化することも理由の一つである。
【0058】
シングルモードファイバでは、反射光は非常に狭い線幅を持つ。これに対して、マルチモードファイバでは、多くのモードがあるため、1個のグレーティング26に対して反射する波長は幅のある帯域を持つ。波数ベクトルKGのグレーティング26に対して、
図14Aに示すようなコア141中の波数kin=kG/2から
図14Bに示すような波数kin=kG/(2cosθR)の波数範囲で反射が起こる(真空中の波長で2nΛcosθR<λ<2nΛ)。ここで、θRはsinθR=NA/nを満たすファイバ内での伝搬モードの臨界角、nはコア141の屈折率、NAはファイバの開口数、である。
【0059】
従って、導光部材14である光ファイバの異なる場所及び方向に形成するグレーティング26のピッチは、この間隔(波数の幅)程度あける必要がある。そのぶん、区別可能な点数が減少するが、マルチモードファイバは安価であるという長所、さらには、コア径が大きいため、光源12及び光検出部16と光ファイバとを切り離し可能な構成とした場合に、接続がより簡便であるという長所がある。
【0060】
図14Cのようなクラッドモードへの変換の問題も、シングルモードファイバと共通なので、グレーティング26を並べる順序、クラッドモード除去部材28の配置については、上記第1実施形態と同様な工夫が効果的である。
【0061】
なお、グレーティング26は、第1実施形態と同様、フォトポリマーによりホログラフィックに作製されることができる。また、フォトレジストを利用することもでき、2光束干渉法、位相マスク法などにより簡便に製作することができる。フォトレジストによって作成した構造を他の材料で置換してもよく、フォトレジスト自体を構造の一部としてもよい。
【0062】
[第3実施形態]
上記第1実施形態では、グレーティング26の屈折率がコア141の屈折率よりも小さいものとしたが、グレーティング26の屈折率をコア141の屈折率よりも大きくしてもよい。
【0063】
グレーティング26の屈折率がコア141の屈折率よりも大きい場合は、グレーティング面で反射する光成分の一部はグレーティング内を伝搬し、クラッド142の外壁で反射するが、その過程で1次回折して反射信号になる。屈折率の強度が入射角によって変化する等の効果により、屈折率がコア141より小さい場合と同様、位置及び曲率を識別することができる。
【0064】
また、グレーティング26の一部の屈折率がコア141の屈折率よりも大きい場合は、第1実施形態と上記との中間的になり、一部がクラッド142内に侵入するが、上記と同様に1次回折波が出るため、グレーティング26を特定する1次回折光が発生する。従って、上記と同様な効果により、位置及び曲率を識別することができる。
【0065】
[第4実施形態]
光学式曲がり測定装置10は、導光部材14を複数本備えていてもよい。
【0066】
この場合、光源12は共通として1個だけ備え、導光部材14毎に光検出部16を設ける。例えば、
図15に示すように、導光部材14である光ファイバを2本備える場合、第1の光検出部161と第2の光検出部162との2個の光検出部16を設ける。そして、光源12からの測定光を図示しない光分岐部にて2分岐して、分岐された一方の測定光を一方の光ファイバと第1の光検出部161に接続された光分岐部20に入射させ、他方の測定光を他方の光ファイバと第2の光検出部162に接続された光分岐部20に入射させる。
【0067】
このように、複数の導光部材14それぞれに対して独立した光検出部16を持つことで、より多くの位置での検出ができる。
【0068】
また、
図16に示すように、測定光が入射される導光部材14と検出光が出射される導光部材14とを分離して構成としてもよい。この場合、光源12からの測定光は直接、入射側の導光部材14に供給され、この入射側導光部材14からの出射光をミラー30で2方向に反射させ、各反射光をレンズ32で集光して、出射側の導光部材14のそれぞれに入射させる。そして、これら出射側導光部材14から出射される検出光を、対応する第1の光検出部161又は162に入射させる。
【0069】
この構成では、光源12と光検出部16との間の分岐(光分岐部20)が無くなるため、光の利用効率が高い。
【0070】
なお、ミラー30とレンズ32の代わりに、光分岐機能を持った接続用光ファイバを用いても良い。
【0071】
図15の導光部材14及び
図16の出射側導光部材14は、2本の場合を例に説明したが、より多くの本数にも拡張可能なことは勿論である。その本数に応じて、より多くの位置での検出ができる。
【0072】
また、
図15及び
図16では、2本の光ファイバを1本と想定して、光源12に近い側から遠い側に向かって波数kGが長くならない順番にグレーティング26を作製したものとしているが、光ファイバ毎にこの順番となるようにしても構わない。その理由は、光検出部16が光ファイバ毎に独立して設けられているからである。従って、
図15及び
図16において、被検出部18−1と被検出部18−2とが同じ波数kGのグレーティング26であってもよい。
【0073】
[第5実施形態]
本発明の光学式曲がり測定装置10は、管状挿入体に搭載することができる。
【0074】
例えば、
図17は、第1実施形態に係る光学式曲がり測定装置10の導光部材14を、管状挿入体としての内視鏡の挿入部34に沿って設置した内視鏡システムを示している。この内視鏡システムは、観察対象物である被検体(例えば体腔(管腔))内に挿入される管状挿入体である細長い挿入部34と、該挿入部34の基端部と連結した操作部36と、接続ケーブル38と、が配設される内視鏡を含む。さらに、内視鏡システムは、内視鏡を制御するコントローラ40を含んでいる。
【0075】
ここで、挿入部34は、挿入部34の先端部側から基端部側に向かって、先端硬質部と、湾曲する操作湾曲部と、可撓管部と、を有している。先端硬質部は、挿入部34の先端部であり、硬い部材となっている。この先端硬質部には、図示しない撮像部が設けられている。
【0076】
操作湾曲部は、操作部36に設けられた湾曲操作ノブの内視鏡オペレータ(医師らの作業者)による操作に応じて、所望の方向に湾曲する。オペレータは、この湾曲操作ノブを操作することで、操作湾曲部を湾曲させる。この操作湾曲部の湾曲により、先端硬質部の位置と向きが変えられ、観察対象物が撮像部の撮像範囲である観察視野内に捉えられる。こうして捉えられた観察対象物に対し、先端硬質部に設けられた図示しない照明窓から照明光が照射されて、観察対象物が照明させる。操作湾曲部は、図示しない複数個の節輪が挿入部34の長手方向に沿って連結されることにより、構成される。節輪同士が互いに対して回動することで、操作湾曲部は湾曲する。
【0077】
可撓管部は、所望な可撓性を有しており、外力によって曲がる。可撓管部は、操作部36から延出されている管状部材である。
【0078】
接続ケーブル38は、操作部36とコントローラ40との間を接続している。
【0079】
コントローラ40は、内視鏡の撮像部により撮像された観察画像に対して画像処理を施し、図示しない表示部に画像処理された観察画像を表示させる。そして、本実施形態では、
図17に示すように、このコントローラ40に、光学式曲がり測定装置10の光源12、光検出部16及び光分岐部20を内蔵させ、導光部材14である光ファイバを、このコントローラ40から接続ケーブル38及び操作部36内を経由して、挿入部34の長手軸方向に沿って延在配置する。反射防止部材22は、挿入部34の先端硬質部内に設ける。この場合、複数の被検出部18は、光ファイバの内、挿入部34の操作湾曲部及び可撓管部内に対応する位置に設けられる。
【0080】
前述したように、光検出部16は、光ファイバの複数の部分の湾曲方向と曲がり量(曲率)を、各部分独立に測定することができる。従って、被検出部18の個数が被測定物である挿入部34の操作湾曲部及び可撓管部の変形の度合いに比べて十分多数形成されていれば、挿入部34の曲がり量と湾曲方向とを測定することができる。
【0081】
コントローラ40は、さらに、制御及び演算部42を備えている。この制御及び演算部42は、光源12の発光制御を行う。さらに、制御及び演算部42は、光検出部16が測定した光ファイバつまり挿入部34の曲がり量と湾曲方向とから、挿入部34の3次元的形状を演算し、得られた3次元的形状を図示しない表示部に表示することができる。
【0082】
なお、管状挿入体は、この内視鏡に限定するものではなく、各種プローブ、カテーテル、オーバーシース(内視鏡やカテーテル等を挿入する際の補助に使う管)、などであってもよい。
【0083】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0084】
例えば、被検出部18が複数構成されるものとして説明してきたが、1箇であっても構わない。