(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413013
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】シートベルト用ベルトバックル装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/195 20060101AFI20181015BHJP
B60R 22/03 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
B60R22/195 107
B60R22/03
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-514597(P2017-514597)
(86)(22)【出願日】2015年9月23日
(65)【公表番号】特表2017-528365(P2017-528365A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】EP2015071852
(87)【国際公開番号】WO2016046255
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2017年3月30日
(31)【優先権主張番号】102014219412.1
(32)【優先日】2014年9月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510136301
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】オツ、アイデュ
(72)【発明者】
【氏名】メルニコバ、ラリッサ
【審査官】
飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0299282(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0032653(US,A1)
【文献】
特開2014−172487(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/040691(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102013002948(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00−22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトバックルと、
前記ベルトバックルと結合された、または結合可能な駆動装置(2)と、
前記駆動装置(2)によって、自身の長手方向軸を中心として回転駆動可能なネジ付きスピンドル(10)であって、前記ベルトバックルと結合された、または結合可能なネジ付きスリーブ(5)のネジ山と係合するネジ付きスピンドル(10)と、
車両に対して取り付け可能に固定され、前記ネジ付きスリーブ(5)を案内し、前記ネジ付きスピンドル(10)を支持するガイド部(12)とを備えるシートベルト用ベルトバックル装置(1)であって、
前記ネジ付きスピンドル(10)には、前記ネジ付きスピンドル(10)の軸方向に支持プレート(9)が設けられ、
前記支持プレート(9)は、前記ベルトバックルによって作用する張力による変位ができず、
前記ネジ付きスピンドル(10)が、前記支持プレート(9)を介して、前記ガイド部(12)の第1のスラスト軸受(6)に、軸方向に支持されて、前記ベルトバックルによって作用する張力を受け、
前記ネジ付きスピンドル(10)が、前記ガイド部(12)に固定された第2のスラスト軸受(7)に支持されて、前記ベルトバックルによって作用する圧縮力を受けるように構成され、
前記第2のスラスト軸受(7)が、開口(17)を備え、前記開口(17)を通って前記ネジ付きスピンドル(10)が延在することを特徴とするシートベルト用ベルトバックル装置(1)。
【請求項2】
前記第2のスラスト軸受(7)が、前記ガイド部材(12)の外側に固定された成形部品であることを特徴とする請求項1に記載のシートベルト用ベルトバックル装置(1)。
【請求項3】
前記支持プレート(9)が開口(16)を備え、前記開口(16)を通って前記ネジ付きスピンドル(10)が延在することを特徴とする、請求項1又は2に記載のベルトバックル装置(1)。
【請求項4】
前記ネジ付きスピンドル(10)がラジアルショルダ(15)を備え、
前記ネジ付きスピンドル(10)の前記ラジアルショルダ(15)が、前記支持プレート(9)の前記開口(16)の前記端に重なり、前記端が前記ネジ付きスリーブ(5)から離れる方向に向けられ、かつ/または前記第2のスラスト軸受(7)の前記端に重なり、前記端が前記ネジ付きスリーブ(5)に向けられることを特徴とする、請求項3に記載のベルトバックル装置(1)。
【請求項5】
前記ネジ付きスピンドル(10)の前記ラジアルショルダ(15)が、前記支持プレート(9)と前記第2のスラスト軸受(7)との間に配置されることを特徴とする、請求項4に記載のベルトバックル装置(1)。
【請求項6】
前記ネジ付きスピンドル(10)が、ネジのない部分によって、前記支持プレート(9)の前記開口(16)、および/または前記第2のスラスト軸受(7)の前記開口(17)に係合することを特徴とする、請求項3乃至5の何れか1項に記載のベルトバックル装置(1)。
【請求項7】
前記ネジ付きスピンドル(10)が前記支持プレート(9)の前記開口(16)において、および/または前記第2のスラスト軸受(7)の前記開口(17)において、いずれの場合も摩擦低減軸受インサート(13)および(14)によって支持されることを特徴とする、請求項3乃至6の何れか1項に記載のベルトバックル装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の特徴を備える、シートベルト用ベルトバックル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな目的のための、駆動装置を備えたシートベルト用ベルトバックル装置が提供されることが知られており、それらを使用することで、ベルトバックルを引き出すこと、または引き戻すことが可能になる。ベルトバックルが、例えば、手の届きにくい設置位置にある場合は、設置位置から、手の届きやすい提示位置にベルトバックルを移動させるために、駆動装置を供することができる。さらに、事故前の段階、または事故の早い段階では、シートベルト装置のシートベルトにおける既存のベルト弛みを取り除くために、ベルトバックルが急激に、設置位置から、緊張した位置に引き戻されることが知られている。この緊張させる動作は、火工駆動または前負荷されたバネを使用することで不可逆にも、駆動装置として電気モータを使用することで可逆にも、どちらにも行うことができる。
【0003】
駆動装置が電気モータによって構成される場合、これは超高回転速度および超低慣性を有する小型の電気モータとして設計される。しかるべき動力伝達装置を介して十分に高い力を実現できるため、電気モータが高回転速度であることは有用である。したがって、電気モータが低慣性であることは、数ミリ秒という極めて短時間に、毎分数千回転の高回転速度がそれによって達成できるため、意味のあることである。動力伝達装置の可能な一実施形態には、ベルトバックルの引きケーブルにネジ付きスリーブを設けることが含まれ、そのネジ付きスリーブは、電気モータによって駆動するネジ付きスピンドルと係合する。電気モータはさらに、方向の異なる回転運動によって、異なる方向にネジ付きスリーブを移動させることができるため、電気モータを駆動装置として使用することで、シートベルトのベルトバックルを移動させる機能と、緊張させる機能の両方を実現することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題のひとつは、事故における拘束力も同じように、ネジ付きスリーブ、スピンドル、および最終的には電気モータを介して、車両構造に送られなければならず、ベルトバックルを送る機能および緊張させる機能のために必要となる力よりも、はるかに大きな力のためにシャフトドライブを設計しなければならないことにある。電気モータはさらに、特にシャフトの軸方向にかかるストレスを受ける可能性があり、そのため、標準動作中には通常は生じることのない規模の力のために電気モータを設計しなければならないことは、特に不利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような背景に対して、本発明の目的は、駆動装置の駆動運動を伝達することと、事故における拘束力を受けることとの両方のために最適に設計できる、駆動装置およびベルトバックルを備えるシートベルト用ベルトバックル装置を提供することである。
【0006】
請求項1に記載の特徴を備える、本発明に係るベルトバックル装置は、上記の目的を達成するために提案される。追加の好ましい発展は従属項、図面、および対応する説明に含まれる。
【0007】
本発明の基本概念によれば、ネジ付きスピンドルに支持プレートが設けられ、この支持プレートは少なくとも、ベルトバックルによって作用する張力からのネジ付きスピンドルの軸方向への変位ができず、この支持プレートを介して、ネジ付きスピンドルがガイド部の第1のスラスト軸受に軸方向に支持されて、ベルトバックルを介して作用する張力を受け入れることが提案される。この提案される解決策によれば、ベルトバックルを引き戻すことによって、特にシートベルトを緊張させることによって生じる軸力が、支持プレートおよび第1のスラスト軸受を介してネジ付きスピンドルによって車両構造に送られ、駆動装置そのもの、ならびに支持プレートと駆動装置との間の部品に対して、ベルトバックルに作用する張力のストレスがかかることがない。そのため、例えば駆動運動を伝達する動力伝達装置は、プラスチック部品から経済的に製造することができる。ストレスが減少することにより、駆動装置の寿命および機能上の信頼性を、さらに大幅に上昇させ、また向上することができる。
【0008】
さらに、ネジ付きスピンドルが第2のスラスト軸受に支持されて、ベルトバックルによって作用する圧縮力を受けることが提案される。これによって、例えばシートベルトが引き出された際に、ベルトバックルが動かなくなることによって生じる圧縮力が、駆動装置、ならびに第2のスラスト軸受と駆動装置との間に配置された構成部品に作用することを防ぐことができる。駆動装置には、回転運動が伝達される間に作動するトルクによって排他的に負荷がかかり、特に生じ得る軸力を受けるための追加の支持または設計を必要としない。
【0009】
第2のスラスト軸受が開口を有し、その開口を通ってネジ付きスピンドルが延在することから、第2のスラスト軸受は、さらに加えて、ラジアル軸受として使用することができ、少なくとも径方向のネジ付きスピンドルの移動を制限することができる。ネジ付きスピンドルは、さらに延びて第2のスラスト軸受を通って延在し、駆動装置に接続することができる。
【0010】
さらに、支持プレートも開口を備え、その開口を通ってネジ付きスピンドルが延在することが提案される。支持プレートは、また、第2のスラスト軸受と同様の利点を有し、ネジ付きスピンドルを径方向に支持するために使用でき、さらに、支持プレートを通って延在することができる。
【0011】
提案された、ネジ付きスピンドルの軸方向支持は、特に、ネジ付きスピンドルにラジアルショルダを備え、そのネジ付きスピンドルのショルダーを支持プレートの開口の端に重ね、その端をネジ付きスリーブ、および/または第2のスラスト軸受の端から離れる方向に向け、その端をネジ付きスリーブに向けることによって、構造上容易に実現することができる。提案されたこの配置によって、ベルトバックルが引き戻される間に作用する張力を第2のスラスト軸受によって受けることができ、ベルトバックルが引き出される際にネジ付きスピンドルに作用する圧縮力を、支持プレートによって、さらに第1のスラスト軸受によって受けることができる。
【0012】
こうした支持の構造は、特に、ネジ付きスピンドルのショルダーを、支持プレートと第2のスラスト軸受との間に配置すれば、容易に設計することができる。
【0013】
ネジ付きスピンドルは、支持プレートの開口および/または第2のスラスト軸受の開口が、ネジのない部分に係合すれば、特に適切に支持されることができる。それにより、ネジ付きスピンドルそのものと支持面と共に、最小限の表面荷重を有する、特に広い支持面が実現できる。
【0014】
この支持は、支持プレートの開口および/または第2のスラスト軸受の開口で、それぞれ摩擦低減軸受インサートを介してネジ付きスピンドルを支持することによって、さらに改善することができる。提案されたこの解決策を使用することで、ネジ付きスピンドルが駆動する間の、摩擦損失および騒音の発生を低減することができる。ガイド部よりも精度の高い寸法を有するように軸受インサートを生成することで、軸受クリアランスをさらに小さく設計できる。
【0015】
添付図面を参照しながら、好ましい実施形態を使用して、本発明を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明によるベルトバックル装置の部分を示す斜視図である。
【
図2】ラジアルショルダおよび支持プレートを含む、ネジ付きスピンドルの拡大部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1では、本発明によるベルトバックル装置1の部分、および駆動装置2を見ることができ、ベルトバックルそのものが想像されるはずであり、駆動装置2の駆動ギヤのみが認識可能である。しかしながら当然、駆動装置2そのものは、例えば電気モータ等、駆動運動を発生させるユニットを備え、そのユニットは、例えば歯付ベルトまたは歯車伝動装置を介して、例えば駆動ギヤを駆動させる。
【0018】
ベルトバックル装置1は、さらに、駆動装置2と共に回転するために駆動装置2に接続されたネジ付きスピンドル10と、ガイド部12と、車両構造に取り付けるためにガイド部12に堅く結合された締結部品3と、ガイド部12に挿入されたネジ付きスリーブ5とを備え、そのネジ付きスリーブ5において、ネジ付きスピンドル10がネジ山に係合する。一方、ネジ付きスリーブ5は、張力および圧力に対して固定されるように、引きケーブルに接続している。駆動装置2が作動する場合は、ネジ付きスピンドル10の回転方向に応じて、ネジ付きスリーブ5が駆動ギヤから離れるように、または駆動ギヤに向かって、直線方向に移動するように、ネジ付きスピンドル10が駆動ギヤを介して回転駆動し、ベルトバックルが引きケーブル4によって、引き戻されるか、または引き出される。ネジ付きスリーブ5は、スレッドインサートを備えたU字型の打抜き部として形成され、外側に向かって被覆部8によって覆われる。
【0019】
ネジ付きスピンドル10は、ガイド部12の直立軸受フランジ18でネジなし支持延長部11によって支持され、さらに、駆動ギヤに接続する終端に隣接して配置されるラジアルショルダ15を備える。ガイド部12には第1のスラスト軸受6が設けられ、その第1のスラスト軸受6には支持プレート9が支持されている。支持プレート9は開口16を有し、ネジ付きスピンドル10がそこで第1の摩擦低減軸受インサート13に支持されている。さらに、第2のスラスト軸受7が、ガイド部12の外側に取り付けられる成形部品の形態で設けられ、その成形部品が同様に開口17を有し、ネジ付きスピンドル10がそこで第2の摩擦低減軸受インサート14に支持される。それにより、ネジ付きスピンドル10が、支持プレート9および第2のスラスト軸受7において、開口16および17の両方に係合し、ラジアルショルダ15が、第2のスラスト軸受7と、支持プレート9または第1のスラスト軸受6との間に配置される。換言すると、これは、ラジアルショルダ15を備えるネジ付きスピンドルが支持プレート9の開口16の端に重なり、その端がネジ付きスリーブ5から離れる方向に向けられ、第2のスラスト軸受7の開口17の端に重なり、その端がネジ付きスリーブ5に向けられることを意味するものである。
【0020】
提案されたこの解決策によって、駆動運動の間に、回転方向に応じて、支持プレート9を介して、第2のスラスト軸受7または第1のスラスト軸受6で軸方向にネジ付きスピンドル10を支持することが可能になる。ベルトバックルが引き戻されることになると、
図3に示すネジ付きスリーブ5が左に移動する回転方向に、ネジ付きスピンドル10が駆動することになる。この場合、支持プレート9を介して、第1のスラスト軸受6でネジ付きスピンドル10が支持される。ベルトバックルが引き出される場合には、
図3に示すネジ付きスリーブ5が右に移動する、反対の回転方向にネジ付きスピンドル10が駆動することになる。この場合、第2のスラスト軸受7を介して、ガイド部12で、ネジ付きスピンドル10がそれ自体を支持する。ベルトバックルの動きが、詰まった物体または他の外部環境によって妨害されない限り、シートベルトのストラップを緊張させる間の、引き戻される動きの間に生じると予測される軸力が、一般に、シートベルトのストラップを引き出す間に生じる軸力よりも大きいことから、隣接する支持プレートを備える第1のスラスト軸受6は、そのため意図的に、より堅い設計となっている。
【0021】
ネジ付きスピンドル10は、開口16および17と係合する部分がネジのない設計となっているが、これは、ネジなし軸受インサート13および14を挿入することによっても実現することができ、それによって軸受への負荷が減少し、回転運動が妨害されなくなる。
【0022】
提案された解決策の利点が、ネジ付きスピンドルに作用する軸力が意図的にガイド部12に、そしてそこから車両構造に送られる点であることは明らかである。したがって、軸力による駆動装置2へのストレスを抑制することが可能である。さらに明白に、ネジ付きスピンドル10の径方向および軸方向の支持を改善することが可能になる。