(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カラムおよび前記ガスセンサーの少なくとも1つの温度を前記周囲の空気の温度より高く制御する温度制御手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載のガスクロマトグラフ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載されたガスクロマトグラフにおいては、ポンプから流量調整部に供給されるキャリアーガスの圧力が低い場合には、流量調整部の上流側および下流側の圧力差が小さいので、流量調整部の上流側のキャリアーガスにポンプの動作に応じて脈流が発生すると、流量調整部の上流側および下流側の圧力差が流量調整部の正常な作動のための圧力差を下回って流量調整部が正常に作動しないことがあり、流量調整部が正常に作動しないとき、流量調整部の上流側のキャリアーガスに発生した脈流の影響によって流量調整部の下流側のキャリアーガスにも脈流が発生する。流量調整部の下流側のキャリアーガスに脈流が発生すると、ガスセンサーにおけるキャリアーガスの流速が変動するので、ガスセンサーにおけるキャリアーガスの流速が速いほど、キャリアーガスによってガスセンサーを通過させられるサンプルの成分の単位時間当たりの量が多くなるため、サンプルの成分の濃度がガスセンサーによって高く検出され、ガスセンサーにおけるキャリアーガスの流速が遅いほど、キャリアーガスによってガスセンサーを通過させられるサンプルの成分の単位時間当たりの量が少なくなるため、サンプルの成分の濃度がガスセンサーによって低く検出される。すなわち、特許文献1、2に記載されたガスクロマトグラフにおいては、キャリアーガスに発生する脈流によってガスセンサーの検出結果にノイズが発生する。したがって、特許文献1、2に記載されたガスクロマトグラフにおいては、注入部に注入されるサンプルの量が少なくても正常な検出結果が得られるように高感度化することが困難であり、キャリアーガスに発生する脈流によってガスセンサーの検出結果に発生するノイズの影響を抑えるために、注入部に注入されるサンプルの量を増やす必要がある。
【0006】
ここで、キャリアーガスに発生する脈流は、ポンプによって供給されるキャリアーガスをガスクロマトグラフの周囲の空気の圧力より高圧な状態で貯蔵可能なタンクをガスクロマトグラフが備え、ポンプによって直接供給されるキャリアーガスの流量ではなく、タンクから供給されるキャリアーガスの流量が流量調整部によって調整されることによって、抑えることができる。
【0007】
しかしながら、タンクの内部のキャリアーガスをガスクロマトグラフの周囲の空気の圧力より高圧にした場合、キャリアーガスの圧力が低下したときに、キャリアーガスに含まれていた水蒸気がキャリアーガスの断熱膨張による冷却によってカラムおよびガスセンサーの少なくとも一方の箇所で結露として現れるので、カラムおよびガスセンサーのうち結露が現れた方に結露によって経年変化および特性劣化の少なくとも一方が発生するという問題がある。例えば、カラムに結露が発生した場合、カラムの内部の液相が結露によって劣化させられて、カラムの特性が悪くなる。
【0008】
そこで、本発明は、キャリアーガスの脈流と、結露との両方を抑えることができるガスクロマトグラフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガスクロマトグラフは、サンプルが注入される注入部と、前記注入部から注入されてキャリアーガスによって移動させられた前記サンプルの成分を分離するカラムと、前記カラムによって分離された前記成分を検出するガスセンサーとを備えるガスクロマトグラフであって、前記ガスクロマトグラフの周囲の空気を前記キャリアーガスとして取り込むポンプと、前記ポンプによって供給される前記キャリアーガスを前記周囲の空気の圧力より高圧な状態で貯蔵可能なタンクと、前記タンクから供給される前記キャリアーガスの流量を調整するために前記カラムの上流の位置に配置された流量調整部と、前記ガスクロマトグラフの内部の空気の流路のうち前記タンクから前記ガスセンサーまでの流路を含む特定の範囲の外部から、前記特定の範囲の内部への空気の流入を、前記ポンプの停止中に抑制可能な空気流入抑制手段と、除湿を行う除湿部とを備え、前記除湿部は、前記特定の範囲の内部の少なくとも1箇所に配置されることを特徴とする。
【0010】
この構成により、本発明のガスクロマトグラフは、ポンプによって直接供給されるキャリアーガスの流量ではなく、ガスクロマトグラフの周囲の空気の圧力より高圧な状態でキャリアーガスを貯蔵可能なタンクから供給されるキャリアーガスの流量が流量調整部によって調整されるので、流量調整部の下流におけるキャリアーガスの脈流を抑えることができる。また、本発明のガスクロマトグラフは、内部の空気の流路のうちタンクからガスセンサーまでの流路を含む特定の範囲の内部に配置される除湿部によって除湿を行うとともに、この範囲の外部から、この範囲の内部への空気の流入を、ポンプの停止中に空気流入抑制手段によって抑制するので、この範囲の内部における結露をポンプの停止中にも抑えることができる。
【0011】
本発明のガスクロマトグラフにおいて、前記特定の範囲の内部の少なくとも1箇所の前記除湿部は、第1の除湿剤と、第2の除湿剤とを備え、前記第1の除湿剤は、前記第2の除湿剤と比較して、除湿の速度が速く、前記第2の除湿剤は、前記第1の除湿剤と比較して、除湿の量が多くても良い。
【0012】
この構成により、本発明のガスクロマトグラフは、除湿の速度が速い第1の除湿剤によって高速に除湿を行った後、除湿の量が多い第2の除湿剤によって第1の除湿剤に対して除湿を行うので、高速の除湿と、長期間の除湿とを両立することができる。
【0013】
本発明のガスクロマトグラフは、前記注入部に供給される前の空気に含まれる揮発性有機化合物の少なくとも一部を除去する前フィルターを前記特定の範囲の内部のうち前記タンクの外部に備え、前記前フィルターは、空気に含まれる揮発性有機化合物の少なくとも一部を除去する活性炭と、前記除湿部の少なくとも1つとを内部に備えても良い。
【0014】
この構成により、本発明のガスクロマトグラフは、前フィルターの内部に対して除湿部によって除湿を行うので、ガスクロマトグラフの内部の空気の流路のうちタンクからガスセンサーまでの流路を含む特定の範囲の内部における結露を抑えることができるとともに、前フィルターの活性炭による揮発性有機化合物の除去能力が前フィルターの内部の水分によって低下することを抑えることができる。
【0015】
本発明のガスクロマトグラフは、前記ガスセンサーによって前記成分が検出された後の空気に含まれる揮発性有機化合物の少なくとも一部を除去する後フィルターを前記特定の範囲の内部に備え、前記後フィルターは、空気に含まれる揮発性有機化合物の少なくとも一部を除去する活性炭と、前記除湿部の少なくとも1つとを内部に備えても良い。
【0016】
この構成により、本発明のガスクロマトグラフは、後フィルターの内部に対して除湿部によって除湿を行うので、ガスクロマトグラフの内部の空気の流路のうちタンクからガスセンサーまでの流路を含む特定の範囲の内部における結露を抑えることができるとともに、後フィルターの活性炭による揮発性有機化合物の除去能力が後フィルターの内部の水分によって低下することを抑えることができる。
【0017】
本発明のガスクロマトグラフにおいて、前記除湿部の少なくとも1つは、前記タンクの内部に配置されても良い。
【0018】
気体は、圧力が高いと、断熱膨張による冷却で結露が発生し易い。本発明のガスクロマトグラフは、ガスクロマトグラフの周囲の空気の圧力より高圧な状態でキャリアーガスを貯蔵可能なタンクの内部に除湿部が配置されている場合、タンクの内部に配置されている除湿部によって除湿を効果的に行うことができる。
【0019】
本発明のガスクロマトグラフは、前記カラムおよび前記ガスセンサーの少なくとも1つの温度を前記周囲の空気の温度より高く制御する温度制御手段を備えても良い。
【0020】
この構成により、本発明のガスクロマトグラフは、カラムおよびガスセンサーの少なくとも1つの温度をガスクロマトグラフの周囲の空気の温度より高く制御するので、カラムおよびガスセンサーのうち、ガスクロマトグラフの周囲の空気の温度より温度が高いものの箇所において結露を抑えることができ、その結果、カラムおよびガスセンサーのうち、ガスクロマトグラフの周囲の空気の温度より温度が高いものの経年変化および特性劣化の発生を抑えることができる。
【0021】
本発明のガスクロマトグラフにおいて、前記温度制御手段は、前記特定の範囲の内部の温度を前記周囲の空気の温度より高く制御しても良い。
【0022】
この構成により、本発明のガスクロマトグラフは、ガスクロマトグラフの内部の空気の流路のうちタンクからガスセンサーまでの流路を含む特定の範囲の内部の温度をガスクロマトグラフの周囲の空気の温度より高くするので、この範囲における結露を抑えることができる。
【0023】
本発明のガスクロマトグラフは、サンプルが注入される注入部と、前記注入部から注入されてキャリアーガスによって移動させられた前記サンプルの成分を分離するカラムと、前記カラムによって分離された前記成分を検出するガスセンサーとを備えるガスクロマトグラフであって、前記ガスクロマトグラフの周囲の空気を前記キャリアーガスとして取り込むポンプと、前記ポンプによって供給される前記キャリアーガスを前記周囲の空気の圧力より高圧な状態で貯蔵可能なタンクと、前記タンクから供給される前記キャリアーガスの流量を調整するために前記カラムの上流の位置に配置された流量調整部と、前記タンクの内部に配置されて除湿を行う除湿部とを備えることを特徴とする。
【0024】
この構成により、本発明のガスクロマトグラフは、ポンプによって直接供給されるキャリアーガスの流量ではなく、ガスクロマトグラフの周囲の空気の圧力より高圧な状態でキャリアーガスを貯蔵可能なタンクから供給されるキャリアーガスの流量が流量調整部によって調整されるので、流量調整部の下流におけるキャリアーガスの脈流を抑えることができる。気体は、圧力が高いと、断熱膨張による冷却で結露が発生し易い。本発明のガスクロマトグラフは、ガスクロマトグラフの周囲の空気の圧力より高圧な状態でキャリアーガスを貯蔵可能なタンクの内部に除湿部が配置されているので、タンクの内部に配置されている除湿部によって除湿を効果的に行うことができる。
【0025】
本発明のガスクロマトグラフは、前記タンクの内部に配置されて前記キャリアーガスに含まれる揮発性有機化合物の少なくとも一部を除去する活性炭を備えても良い。
【0026】
この構成により、本発明のガスクロマトグラフは、タンクの内部に対して除湿部によって除湿を行うので、タンクの内部に配置されている活性炭による揮発性有機化合物の除去能力がタンクの内部の水分によって低下することを抑えることができる。
【0027】
本発明のガスクロマトグラフは、サンプルが注入される注入部と、前記注入部から注入されてキャリアーガスによって移動させられた前記サンプルの成分を分離するカラムと、前記カラムによって分離された前記成分を検出するガスセンサーとを備えるガスクロマトグラフであって、前記ガスクロマトグラフの周囲の空気を前記キャリアーガスとして取り込むポンプと、前記ポンプによって供給される前記キャリアーガスを前記周囲の空気の圧力より高圧な状態で貯蔵可能なタンクと、前記タンクから供給される前記キャリアーガスの流量を調整するために前記カラムの上流の位置に配置された流量調整部と、前記カラムおよび前記ガスセンサーの少なくとも1つの温度を前記周囲の空気の温度より高く制御する温度制御手段とを備えることを特徴とする。
【0028】
この構成により、本発明のガスクロマトグラフは、ポンプによって直接供給されるキャリアーガスの流量ではなく、ガスクロマトグラフの周囲の空気の圧力より高圧な状態でキャリアーガスを貯蔵可能なタンクから供給されるキャリアーガスの流量が流量調整部によって調整されるので、流量調整部の下流におけるキャリアーガスの脈流を抑えることができる。また、本発明のガスクロマトグラフは、カラムおよびガスセンサーの少なくとも1つの温度をガスクロマトグラフの周囲の空気の温度より高く制御するので、カラムおよびガスセンサーのうち、ガスクロマトグラフの周囲の空気の温度より温度が高いものの箇所において結露を抑えることができ、その結果、カラムおよびガスセンサーのうち、ガスクロマトグラフの周囲の空気の温度より温度が高いものの経年変化および特性劣化の発生を抑えることができる。
【0029】
本発明のガスクロマトグラフにおいて、前記温度制御手段は、前記タンクから前記ガスセンサーまでの前記キャリアーガスの流路の温度を前記周囲の空気の温度より高く制御しても良い。
【0030】
この構成により、本発明のガスクロマトグラフは、タンクからガスセンサーまでのキャリアーガスの流路の温度をガスクロマトグラフの周囲の空気の温度より高くするので、キャリアーガスに含まれていた水蒸気がキャリアーガスの断熱膨張による冷却によって結露として現れ易い、タンクからガスセンサーまでの流路における結露を抑えることができる。
【0031】
本発明のガスクロマトグラフにおいて、前記温度制御手段は、前記ガスクロマトグラフの内部の空気の流路の温度を前記周囲の空気の温度より高く制御しても良い。
【0032】
この構成により、本発明のガスクロマトグラフは、ガスクロマトグラフの内部の空気の流路の温度をガスクロマトグラフの周囲の空気の温度より高くするので、ガスクロマトグラフの内部の空気の流路における結露を抑えることができる。
【0033】
本発明のガスクロマトグラフは、前記タンクの内部の前記キャリアーガスの圧力を前記周囲の空気の圧力より高く特定の圧力より低く制御する圧力制御手段を備え、前記特定の圧力は、前記周囲の空気の圧力における露点が前記周囲の空気の温度である空気の露点が前記タンクの内部の前記キャリアーガスの温度である場合の圧力であっても良い。
【0034】
この構成により、本発明のガスクロマトグラフは、ガスクロマトグラフの周囲の空気の圧力における露点がガスクロマトグラフの周囲の空気の温度である空気の露点がタンクの内部のキャリアーガスの温度である場合の圧力より、タンクの内部のキャリアーガスの圧力を低くするので、タンクの内部のキャリアーガスの圧力および温度が、それぞれ、ガスクロマトグラフの周囲の空気の圧力および温度と同一になったとしても、結露を抑えることができる。
【0035】
本発明のガスクロマトグラフは、サンプルが注入される注入部と、前記注入部から注入されてキャリアーガスによって移動させられた前記サンプルの成分を分離するカラムと、前記カラムによって分離された前記成分を検出するガスセンサーとを備えるガスクロマトグラフであって、前記ガスクロマトグラフの周囲の空気を前記キャリアーガスとして取り込むポンプと、前記ポンプによって供給される前記キャリアーガスを前記周囲の空気の圧力より高圧な状態で貯蔵可能なタンクと、前記タンクから供給される前記キャリアーガスの流量を調整するために前記カラムの上流の位置に配置された流量調整部と、前記タンクの内部の温度を前記周囲の空気の温度より高く制御する温度制御手段と、前記タンクの内部の前記キャリアーガスの圧力を前記周囲の空気の圧力より高く特定の圧力より低く制御する圧力制御手段とを備え、前記特定の圧力は、前記周囲の空気の圧力における露点が前記周囲の空気の温度である空気の露点が前記タンクの内部の前記キャリアーガスの温度である場合の圧力であることを特徴とする。
【0036】
この構成により、本発明のガスクロマトグラフは、ポンプによって直接供給されるキャリアーガスの流量ではなく、ガスクロマトグラフの周囲の空気の圧力より高圧な状態でキャリアーガスを貯蔵可能なタンクから供給されるキャリアーガスの流量が流量調整部によって調整されるので、流量調整部の下流におけるキャリアーガスの脈流を抑えることができる。また、本発明のガスクロマトグラフは、ガスクロマトグラフの周囲の空気の圧力における露点がガスクロマトグラフの周囲の空気の温度である空気の露点がタンクの内部のキャリアーガスの温度である場合の圧力より、タンクの内部のキャリアーガスの圧力を低くするので、タンクの内部のキャリアーガスの圧力および温度が、それぞれ、ガスクロマトグラフの周囲の空気の圧力および温度と同一になったとしても、結露を抑えることができる。
【0037】
本発明のガスクロマトグラフは、前記タンクの下流であって前記流量調整部の上流である位置に配置された圧力レギュレーターを備えても良い。
【0038】
この構成により、本発明のガスクロマトグラフは、ポンプの動作に応じて圧力レギュレーターの上流のキャリアーガスに脈流が発生したとしても、圧力レギュレーターによって圧力が安定させられたキャリアーガスが流量調整部に供給されるので、流量調整部を正常に作動させることができる。したがって、本発明のガスクロマトグラフは、正常に作動させられた流量調整部によってキャリアーガスの流量が適切に調整され、その結果、流量調整部の下流におけるキャリアーガスの脈流を抑えることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明のガスクロマトグラフは、キャリアーガスの脈流と、結露との両方を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0042】
なお、本明細書および図面において具体的な数値で圧力を表す場合、ゲージ圧によって表す。
【0043】
まず、本実施の形態に係るガスクロマトグラフの構成について説明する。
【0044】
図1は、本実施の形態に係るガスクロマトグラフ10の構成図である。
【0045】
図1に示すように、ガスクロマトグラフ10は、ガスクロマトグラフ10の内部の空気の流路のうち特定の範囲(以下「特定流路範囲」という。)の外部から、特定流路範囲の内部への空気の流入を抑制可能な空気流入抑制手段としての逆止弁21および逆止弁22を備えている。ガスクロマトグラフ10の内部における空気は、逆止弁21側から逆止弁22側に流れる。逆止弁21は、特定流路範囲の内部側、すなわち、下流側から、特定流路範囲の外部側、すなわち、上流側への気体の流通を禁止するが、上流側の圧力が下流側の圧力と比較して特定の圧力以上高い場合にのみ、上流側から下流側への気体の流通を許可する。逆止弁22は、特定流路範囲の外部側、すなわち、下流側から、特定流路範囲の内部側、すなわち、上流側への気体の流通を禁止するが、上流側の圧力が下流側の圧力と比較して特定の圧力以上高い場合にのみ、上流側から下流側への気体の流通を許可する。
【0046】
ガスクロマトグラフ10は、逆止弁21の下流の位置に配置されていて空気に含まれる揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)の少なくとも一部を除去する前フィルターとしてのVOCフィルター31を備えている。ガスクロマトグラフ10の外部から逆止弁21を介してガスクロマトグラフ10の内部に導入された空気には、通常、揮発性有機化合物が含まれている。VOCフィルター31は、ガスクロマトグラフ10の外部から逆止弁21を介してガスクロマトグラフ10の内部に導入された空気にもともと含まれている揮発性有機化合物が後述のガスセンサー40によって検出されることを抑えるためのフィルターである。
【0047】
VOCフィルター31は、空気に含まれる揮発性有機化合物の少なくとも一部を除去する活性炭31aと、除湿を行う除湿部としての除湿剤31bとを内部に備えている。除湿剤31bは、第1の除湿剤と、第2の除湿剤とを備えている。第1の除湿剤は、第2の除湿剤と比較して、除湿の速度が速く、第2の除湿剤は、第1の除湿剤と比較して、除湿の量が多い。例えば、第1の除湿剤は、シリカゲルであり、第2の除湿剤は、ゼオライトである。
【0048】
ガスクロマトグラフ10は、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気を逆止弁21およびVOCフィルター31を介してキャリアーガスとして取り込むポンプとしての加圧ポンプ32と、加圧ポンプ32によって供給されるキャリアーガスをガスクロマトグラフ10の周囲の空気の圧力より高圧な状態で貯蔵可能なタンクとしての圧力タンク33と、圧力タンク33の内部の圧力を検出する圧力センサー34とを備えている。
【0049】
圧力タンク33は、キャリアーガスに含まれる揮発性有機化合物の少なくとも一部を除去する活性炭33aと、除湿を行う除湿部としての除湿剤33bとを内部に備えている。活性炭33aは、VOCフィルター31を通過した空気に含まれている揮発性有機化合物、すなわち、VOCフィルター31によって除去することができなかった揮発性有機化合物が後述のガスセンサー40によって検出されることを抑えるための活性炭である。除湿剤33bは、第1の除湿剤と、第2の除湿剤とを備えている。第1の除湿剤は、第2の除湿剤と比較して、除湿の速度が速く、第2の除湿剤は、第1の除湿剤と比較して、除湿の量が多い。例えば、第1の除湿剤は、シリカゲルであり、第2の除湿剤は、ゼオライトである。
【0050】
ガスクロマトグラフ10は、圧力タンク33から供給されるキャリアーガスの圧力を調整するために圧力タンク33の下流の位置に配置されている圧力レギュレーター35と、圧力タンク33から供給されるキャリアーガスの流量を調整するために圧力レギュレーター35の下流の位置に配置されている流量調整部36と、流量調整部36によって調整された流量を検出する流量センサー37とを備えている。圧力レギュレーター35は、圧力レギュレーター35の下流側のキャリアーガスの圧力を、設定された圧力にするバルブである。圧力レギュレーター35は、圧力レギュレーター35の下流側のキャリアーガスの圧力、すなわち、流量調整部36の上流側に供給されるキャリアーガスの圧力を特定の圧力にすることによって、流量調整部36の上流側および下流側の圧力差が流量調整部36の正常な作動のための圧力差を下回ることを防止するものである。流量調整部36は、流量調整部36の下流側のキャリアーガスの流量を、設定された流量にするバルブである。
【0051】
ガスクロマトグラフ10は、流量調整部36の下流の位置に配置されていてサンプルとしてのサンプルガスがシリンジ90によって注入される注入部38と、注入部38から注入されてキャリアーガスによって移動させられたサンプルガスの成分を分離するカラムとしてのキャピラリーカラム39と、キャピラリーカラム39によって分離された成分を検出するガスセンサー40とを備えている。
【0052】
ガスクロマトグラフ10は、逆止弁22の上流の位置に配置されていてガスセンサー40によって成分が検出された後の空気に含まれる揮発性有機化合物の少なくとも一部を除去する後フィルターとしてのVOCフィルター41を備えている。注入部38から注入されたサンプルガスは、例えば、人体に悪影響がある有害物質である場合がある。VOCフィルター41は、注入部38から注入されたサンプルガスが逆止弁22を介してガスクロマトグラフ10の外部に排出されることを抑えるためのフィルターである。
【0053】
VOCフィルター41は、空気に含まれる揮発性有機化合物の少なくとも一部を除去する活性炭41aと、除湿を行う除湿部としての除湿剤41bとを内部に備えている。除湿剤41bは、第1の除湿剤と、第2の除湿剤とを備えている。第1の除湿剤は、第2の除湿剤と比較して、除湿の速度が速く、第2の除湿剤は、第1の除湿剤と比較して、除湿の量が多い。例えば、第1の除湿剤は、シリカゲルであり、第2の除湿剤は、ゼオライトである。
【0054】
ガスクロマトグラフ10は、VOCフィルター31を加熱するためのヒーターとしての第1フィルターヒーター51と、圧力タンク33を加熱するためのヒーターとしての圧力タンクヒーター52と、注入部38を加熱するためのヒーターとしての注入部ヒーター53と、キャピラリーカラム39を加熱するためのヒーターとしてのカラムヒーター54と、ガスセンサー40を加熱するためのヒーターとしてのガスセンサーヒーター55と、VOCフィルター41を加熱するためのヒーターとしての第2フィルターヒーター56とを備えている。
【0055】
図2は、ガスクロマトグラフ10のブロック図である。
【0056】
図2に示すように、ガスクロマトグラフ10は、ガスクロマトグラフ10の図示していない筐体の内部の温度を検出する温度センサー61と、ガスクロマトグラフ10の筐体の内部を換気する換気ファン62と、流量調整部36において設定される流量を変更する流量設定用アクチュエーター63と、種々の操作が入力されるボタンなどの入力デバイスである操作部64と、種々の情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部65と、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部66と、各種の情報を記憶する半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部67と、ガスクロマトグラフ10全体を制御する制御部68とを備えている。
【0057】
制御部68は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMまたは記憶部67に記憶されているプログラムを実行する。
【0058】
制御部68は、ROMまたは記憶部67に記憶されているプログラムを実行することによって、ガスクロマトグラフ10における温度を制御する温度制御手段68aと、圧力タンク33の内部のキャリアーガスの圧力を制御する圧力制御手段68bと、流量調整部36によって調整されるキャリアーガスの流量を制御する流量制御手段68cとを実現する。
【0059】
次に、ガスクロマトグラフ10の動作について説明する。
【0060】
まず、ガスクロマトグラフ10による測定の開始前に測定条件を受け付ける場合のガスクロマトグラフ10の動作について説明する。
【0061】
利用者は、ガスクロマトグラフ10による測定の開始前に、測定における経過時間毎の温度および流量など、測定条件を操作部64を介して指定することができる。制御部68は、指定された測定条件を記憶部67に記憶し、記憶部67に記憶した測定条件に応じた測定を実行する。ここで、利用者は、温度に関する測定条件を指定することによって、ガスクロマトグラフ10による測定時間を短縮したり、ガスクロマトグラフ10によって検出可能なガスの種類を増やしたりすることができる。利用者は、例えば50℃から300℃までの間の温度を指定することができる。例えば、温度を制御しない場合に測定の開始から3分後にガスセンサー40によって検出される成分Aと、温度を制御しない場合に測定の開始から120分後にガスセンサー40によって検出される成分Bと、温度を制御しない場合にキャピラリーカラム39に吸着されたままガスセンサー40によって検出されない成分Cとがサンプルガスに含まれているとき、測定の開始から10分が経過するまで、注入部38、キャピラリーカラム39およびガスセンサー40の温度を50℃にすることによって、成分Aをガスセンサー40によって確実に検出し、測定の開始から10分が経過した後、測定の開始から40分が経過するまで、注入部38、キャピラリーカラム39およびガスセンサー40の温度を200℃にすることによって、測定の開始から40分が経過するまでに成分Bをガスセンサー40によって検出し、測定の開始から40分が経過した後、注入部38、キャピラリーカラム39およびガスセンサー40の温度を300℃にすることによって、成分Cをキャピラリーカラム39による吸着から解除してガスセンサー40によって検出することができる。利用者は、流速に関する測定条件を指定することによって、ガスクロマトグラフ10による測定時間を短縮することができる。利用者は、例えば1ml/分から50ml/分までの間の流量を指定することができる。
【0062】
次に、温度を制御する場合のガスクロマトグラフ10の動作について説明する。
【0063】
図3は、温度を制御する場合のガスクロマトグラフ10の動作のフローチャートである。
【0064】
温度制御手段68aは、1秒毎に
図3に示す動作を実行する。
【0065】
図3に示すように、温度制御手段68aは、測定中であるか否かを判断する(S101)。
【0066】
温度制御手段68aは、測定中であるとS101において判断すると、注入部ヒーター53、カラムヒーター54およびガスセンサーヒーター55の温度を、今回の測定の測定条件において指定されている温度に制御する(S102)。
【0067】
温度制御手段68aは、測定中ではない、すなわち、測定待機中であるとS101において判断すると、注入部ヒーター53、カラムヒーター54およびガスセンサーヒーター55の温度を、40℃に制御する(S103)。
【0068】
温度制御手段68aは、S102またはS103の処理の後、第1フィルターヒーター51、圧力タンクヒーター52および第2フィルターヒーター56の温度を、40℃に制御する(S104)。
【0069】
次いで、温度制御手段68aは、ガスクロマトグラフ10の筐体の内部の温度が40℃以上であるか否かを温度センサー61による検出値に基づいて判断する(S105)。
【0070】
温度制御手段68aは、ガスクロマトグラフ10の筐体の内部の温度が40℃以上であるとS105において判断すると、換気ファン62を作動状態にして(S106)、
図3に示す動作を終了する。
【0071】
温度制御手段68aは、ガスクロマトグラフ10の筐体の内部の温度が40℃以上ではないとS105において判断すると、換気ファン62を非作動状態にして(S107)、
図3に示す動作を終了する。
【0072】
なお、各センサーや制御部68の温度が数度変化すると、各センサーの信号のベースラインが変動する温度ドリフトが発生する。したがって、S105〜S107の処理は、流量センサー37、ガスセンサー40など、各センサーの温度と、制御部68の温度とを制御することによって、温度ドリフトの発生を抑えるために設けられている。S105〜S107の処理によって、ガスクロマトグラフ10の筐体の内部の温度は、例えば、40℃±2℃の範囲、すなわち、38℃から42℃までの範囲で制御される。
【0073】
図3に示す動作には、S104の処理が含まれている。しかしながら、S102の処理によって特定流路範囲の内部の温度が40℃以上になるのであれば、S102の処理の後のS104の処理は省略されても良い。同様に、S103の処理によって特定流路範囲の内部の温度が40℃以上になるのであれば、S103の処理の後のS104の処理は省略されても良い。なお、ガスクロマトグラフ10は、S102およびS103のいずれの処理によっても特定流路範囲の内部の温度が40℃以上になる場合であって、S102およびS103のいずれの処理の後のS104の処理も省略されるとき、第1フィルターヒーター51、圧力タンクヒーター52および第2フィルターヒーター56を備えなくても良い。
【0074】
ガスクロマトグラフ10が一般的な室内に設置されると仮定した場合、一般的な室内の最高温度が30℃以下であると考えられるので、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度は、30℃以下であると考えられる。
図4は、温度毎の飽和水蒸気量を示す飽和水蒸気表である。ガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度が30℃である場合、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気の湿度が100%であるとき、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気に含まれる水蒸気の量は、
図4に示すように、30.3g/m
3である。そのため、この空気が40℃に昇温されると、40℃における飽和水蒸気量が
図4に示すように51.1g/m
3であるので、この空気の湿度が約60%(=(30.3/51.1)×100)に落ち、結露の発生が抑えられる。したがって、ガスクロマトグラフ10は、
図3に示す動作において、特定流路範囲の内部の温度を、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度である30℃以下より高い40℃以上に制御する。なお、特定流路範囲の内部の温度は、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度より高ければ良く、40℃以上でなくても良い。
【0075】
次に、圧力を制御する場合のガスクロマトグラフ10の動作について説明する。
【0076】
図5は、圧力を制御する場合のガスクロマトグラフ10の動作のフローチャートである。
【0077】
圧力制御手段68bは、1秒毎に
図5に示す動作を実行する。
【0078】
図5に示すように、圧力制御手段68bは、測定中であるか否かを判断する(S121)。
【0079】
圧力制御手段68bは、測定中であるとS121において判断すると、圧力タンク33の内部の圧力が50kPa以下であるか否かを圧力センサー34による検出値に基づいて判断する(S122)。
【0080】
圧力制御手段68bは、圧力タンク33の内部の圧力が50kPa以下であるとS122において判断すると、加圧ポンプ32を作動状態にして(S123)、
図5に示す動作を終了する。
【0081】
圧力制御手段68bは、圧力タンク33の内部の圧力が50kPa以下ではないとS122において判断すると、圧力タンク33の内部の圧力が55kPa以上であるか否かを圧力センサー34による検出値に基づいて判断する(S124)。
【0082】
圧力制御手段68bは、測定中ではない、すなわち、測定待機中であるとS121において判断するか、圧力タンク33の内部の圧力が55kPa以上であるとS124において判断すると、加圧ポンプ32を非作動状態にして(S125)、
図5に示す動作を終了する。
【0083】
圧力制御手段68bは、圧力タンク33の内部の圧力が55kPa以上ではないとS124において判断すると、
図5に示す動作を終了する。
【0084】
図6は、測定中における圧力タンク33の内部の圧力の変動の一例を示す図である。
【0085】
図6に示すように、測定中における圧力タンク33の内部の圧力は、
図5に示す動作によって50kPaから55kPaまでの間を変動する。
【0086】
図7は、任意の圧力における露点と、大気圧における露点とを換算するための圧力露点−大気圧露点換算表である。
【0087】
図7に示すように、大気圧における30℃の露点は、0.06MPa、すなわち、60kPaより大きく、0.1MPa、すなわち、100kPaより小さい圧力Aにおいて露点40℃に換算される。したがって、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度が30℃であり、圧力タンク33の内部の温度が40℃である場合に、圧力タンク33の内部の圧力が60kPaであるとき、キャリアーガスの圧力が圧力タンク33の下流でガスクロマトグラフ10の周囲の空気の圧力、すなわち、大気圧まで低下すると、圧力タンク33の下流においてキャリアーガスに対する加熱が行われなければ、
図7に示すように、キャリアーガスの断熱膨張による冷却によってキャリアーガスの温度は32℃まで低下する。しかしながら、32℃まで低下したとしても、ガスクロマトグラフ10の周囲からガスクロマトグラフ10の特定流路範囲に取り込まれた時点での空気の温度、すなわち、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度である30℃より高いので、キャリアーガスに含まれていた水蒸気がキャリアーガスの断熱膨張による冷却によって結露として現れることはない。実際には、圧力タンク33の下流においても
図3に示す動作によってキャリアーガスに対する加熱が行われるので、キャリアーガスに含まれていた水蒸気がキャリアーガスの断熱膨張による冷却によって結露として現れることは更に抑えられる。以上のことから、ガスクロマトグラフ10は、
図5に示す動作において、測定中における圧力タンク33の内部の圧力を、60kPa以下、具体的には50kPaから55kPaまでの間に制御する。なお、測定中における圧力タンク33の内部の圧力は、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度が30℃であり、圧力タンク33の内部の温度が40℃である場合、圧力A以下であれば良く、50kPaから55kPaまでの間でなくても良い。例えば、測定中における圧力タンク33の内部の圧力は、流量調整部36を正常に作動させることが可能な最低の圧力でも良い。
【0088】
次に、流量を制御する場合のガスクロマトグラフ10の動作について説明する。
【0089】
図8は、流量を制御する場合のガスクロマトグラフ10の動作のフローチャートである。
【0090】
流量制御手段68cは、1秒毎に
図8に示す動作を実行する。
【0091】
図8に示すように、流量制御手段68cは、測定中であるか否かを判断する(S141)。
【0092】
流量制御手段68cは、測定中であるとS141において判断すると、流量調整部36によって調整されるキャリアーガスの流量を、今回の測定の測定条件において指定されている流量に制御し(S142)、
図8に示す動作を終了する。ここで、流量制御手段68cは、流量調整部36によって調整された流量を流量センサー37による検出値に基づいて判断し、流量調整部36によって調整された流量が、今回の測定の測定条件において指定されている流量になるように流量設定用アクチュエーター63を制御する。
【0093】
流量制御手段68cは、測定中ではない、すなわち、測定待機中であるとS141において判断すると、流量調整部36によって調整されるキャリアーガスの流量を0ml/分に制御し(S143)、
図8に示す動作を終了する。ここで、流量制御手段68cは、流量調整部36によって調整された流量を流量センサー37による検出値に基づいて判断し、流量調整部36によって調整された流量が0ml/分になるように流量設定用アクチュエーター63を制御する。
【0094】
次に、ガスクロマトグラフ10が測定中である場合のガスクロマトグラフ10における気体の状況について説明する。
【0095】
ガスクロマトグラフ10が測定中である場合、ガスクロマトグラフ10の特定流路範囲の内部の気体の温度は、
図3に示す動作によって、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度より高い40℃以上に制御される。特に、注入部38、キャピラリーカラム39およびガスセンサー40における気体の温度は、S102の処理によって、今回の測定の測定条件において指定されている温度に制御される。
【0096】
また、ガスクロマトグラフ10が測定中である場合、圧力タンク33の内部の気体の圧力は、
図5に示す動作によって、50kPaから55kPaまでの間に制御され、流量調整部36によって調整されるキャリアーガスの流量は、
図8に示す動作によって、今回の測定の測定条件において指定されている流量に制御される。したがって、ガスクロマトグラフ10の特定流路範囲の内部の気体の圧力は、例えば、ガスクロマトグラフ10の周囲から導入された直後のVOCフィルター31においては大気圧と同程度、すなわち、約0kPaであるが、圧力タンク33において50kPaから55kPaまでの間の圧力になった後、圧力タンク33から注入部38までの圧力損失によって注入部38において約30kPaになり、注入部38からガスセンサー40までの圧力損失によってガスセンサー40において約5kPaになり、ガスセンサー40からVOCフィルター41までの圧力損失によってVOCフィルター41において約0kPaになる。
【0097】
次に、ガスクロマトグラフ10が測定待機中である場合のガスクロマトグラフ10における気体の状況について説明する。
【0098】
ガスクロマトグラフ10が測定待機中である場合、ガスクロマトグラフ10の特定流路範囲の内部の気体の温度は、
図3に示す動作によって、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度より高い40℃以上に制御される。
【0099】
また、ガスクロマトグラフ10が測定待機中である場合、圧力タンク33の内部の気体の圧力が
図5に示す動作によって増加させられることがなく、流量調整部36によって調整されるキャリアーガスの流量が
図8に示す動作によって0ml/分に制御されるので、ガスクロマトグラフ10の特定流路範囲の内部の気体の圧力は、大気圧と同程度になる。
【0100】
以上に説明したように、ガスクロマトグラフ10は、キャリアーガスとしてカラムに供給されるための超高純度のヘリウムガス、窒素などの気体が充填された高圧ガスボンベを備えていないので、高圧ガスボンベを備えているガスクロマトグラフと比較して、小型軽量化することができ、その結果、可搬性に優れている。
【0101】
ガスクロマトグラフ10は、加圧ポンプ32によって直接供給されるキャリアーガスの流量ではなく、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気の圧力より高圧な状態でキャリアーガスを貯蔵可能な圧力タンク33から供給されるキャリアーガスの流量が流量調整部36によって調整されるので、流量調整部36の下流におけるキャリアーガスの脈流を抑えることができる。
【0102】
ガスクロマトグラフ10は、特定流路範囲の内部に配置される除湿剤31b、除湿剤33bおよび除湿剤41bによって除湿を行うとともに、特定流路範囲の外部から特定流路範囲の内部への空気の流入を加圧ポンプ32の停止中に空気流入抑制手段としての逆止弁21および逆止弁22によって抑制するので、特定流路範囲の内部における結露を加圧ポンプ32の停止中にも抑えることができる。ここで、加圧ポンプ32の停止中とは、ガスクロマトグラフ10に電力が供給されている場合に加圧ポンプ32が非作動状態になっているときだけでなく、ガスクロマトグラフ10に電力が供給されていないために加圧ポンプ32が非作動状態になっている場合も含まれる。
【0103】
なお、空気流入抑制手段は、特定流路範囲の外部から特定流路範囲の内部への空気の流入を抑制可能であれば、逆止弁でなくても良い。例えば、ガスクロマトグラフ10は、特定流路範囲の外部側の圧力が特定流路範囲の内部側の圧力と比較して特定の圧力以上高い場合にのみ、特定流路範囲の外部側から特定流路範囲の内部側への気体の流通を許可するとともに、特定流路範囲の内部側の圧力が特定流路範囲の外部側の圧力と比較して特定の圧力以上高い場合にのみ、特定流路範囲の内部側から特定流路範囲の外部側への気体の流通を許可するバルブを、逆止弁21および逆止弁22のいずれか1つ、または、逆止弁21および逆止弁22のそれぞれに換えて備えても良い。
【0104】
ガスクロマトグラフ10は、空気流入抑制手段を備えているので、特定流路範囲の内部における結露を加圧ポンプ32の停止中にも抑えることができるが、空気流入抑制手段を備えていなくて良い。
【0105】
ガスクロマトグラフ10は、除湿剤31b、除湿剤33bおよび除湿剤41bのそれぞれにおいて、除湿の速度が速い第1の除湿剤によって高速に除湿を行った後、除湿の量が多い第2の除湿剤によって第1の除湿剤に対して除湿を行うので、高速の除湿と、長期間の除湿とを両立することができる。
【0106】
なお、ガスクロマトグラフ10は、除湿剤31b、除湿剤33bおよび除湿剤41bの少なくとも1つが1種類の除湿剤のみによって構成されていても良い。
【0107】
ガスクロマトグラフ10は、VOCフィルター31の内部に対して除湿剤31bによって除湿を行うので、ガスクロマトグラフ10の特定流路範囲の内部における結露を抑えることができるとともに、活性炭31aによる揮発性有機化合物の除去能力がVOCフィルター31の内部の水分によって低下することを抑えることができる。
【0108】
ガスクロマトグラフ10は、VOCフィルター41の内部に対して除湿剤41bによって除湿を行うので、ガスクロマトグラフ10の特定流路範囲の内部における結露を抑えることができるとともに、活性炭41aによる揮発性有機化合物の除去能力がVOCフィルター41の内部の水分によって低下することを抑えることができる。
【0109】
気体は、圧力が高いと、断熱膨張による冷却で結露が発生し易い。ガスクロマトグラフ10は、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気の圧力より高圧な状態でキャリアーガスを貯蔵可能な圧力タンク33の内部に除湿剤33bが配置されているので、圧力タンク33の内部に配置されている除湿剤33bによって除湿を効果的に行うことができる。
【0110】
活性炭は、圧力が高いほど吸着力が高くなる。ガスクロマトグラフ10は、圧力タンク33の内部に活性炭33aを配置しているので、活性炭33aによって揮発性有機化合物を効果的に除去することができる。ここで、ガスクロマトグラフ10は、圧力タンク33の内部に対して除湿剤33bによって除湿を行うので、圧力タンク33の内部に配置されている活性炭33aによる揮発性有機化合物の除去能力が圧力タンク33の内部の水分によって低下することを抑えることができる。
【0111】
ガスクロマトグラフ10は、ガスクロマトグラフ10の内部の空気の流路の温度を第1フィルターヒーター51、圧力タンクヒーター52、注入部ヒーター53、カラムヒーター54、ガスセンサーヒーター55および第2フィルターヒーター56によってガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度より高くするので、ガスクロマトグラフ10の内部の空気の流路における結露を抑えることができる。特に、ガスクロマトグラフ10は、特定流路範囲の内部の温度を第1フィルターヒーター51、圧力タンクヒーター52、注入部ヒーター53、カラムヒーター54、ガスセンサーヒーター55および第2フィルターヒーター56によってガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度より高くするので、特定流路範囲における結露を抑えることができる。
【0112】
ガスクロマトグラフ10は、圧力タンク33からガスセンサー40までのキャリアーガスの流路の温度を圧力タンクヒーター52、注入部ヒーター53、カラムヒーター54およびガスセンサーヒーター55によってガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度より高くするので、キャリアーガスに含まれていた水蒸気がキャリアーガスの断熱膨張による冷却によって結露として現れ易い、圧力タンク33からガスセンサー40までの流路における結露を抑えることができる。
【0113】
ガスクロマトグラフ10は、キャピラリーカラム39の温度をカラムヒーター54によってガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度より高く制御するので、キャピラリーカラム39の箇所において結露を抑えることができ、その結果、キャピラリーカラム39の経年変化および特性劣化の発生を抑えることができる。同様に、ガスクロマトグラフ10は、ガスセンサー40の温度をガスセンサーヒーター55によってガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度より高く制御するので、ガスセンサー40の箇所において結露を抑えることができ、その結果、ガスセンサー40の経年変化および特性劣化の発生を抑えることができる。
【0114】
ガスクロマトグラフ10は、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気の圧力における露点がガスクロマトグラフ10の周囲の空気の温度である空気の露点が圧力タンク33の内部のキャリアーガスの温度である場合の圧力A(
図7参照。)より、圧力タンク33の内部のキャリアーガスの圧力を低くする(S122〜S125)ので、圧力タンク33の内部のキャリアーガスの圧力および温度が、それぞれ、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気の圧力および温度と同一になったとしても、結露を抑えることができる。
【0115】
ガスクロマトグラフ10は、加圧ポンプ32の動作に応じて圧力レギュレーター35の上流のキャリアーガスに脈流が発生したとしても、圧力レギュレーター35によって圧力が安定させられたキャリアーガスが流量調整部36に供給されるので、流量調整部36の上流側および下流側の圧力差が流量調整部36の正常な作動のための圧力差を下回ることを抑えることができ、流量調整部36を正常に作動させることができる。したがって、ガスクロマトグラフ10は、正常に作動させられた流量調整部36によってキャリアーガスの流量が適切に調整され、その結果、流量調整部36の下流におけるキャリアーガスの脈流を抑えることができる。
【0116】
ガスクロマトグラフ10は、測定が終了して加圧ポンプ32が停止することによって、圧力タンク33の内部のキャリアーガスの圧力が加圧ポンプ32によって加圧されていた状態からガスクロマトグラフ10の周囲の空気の圧力と同一の圧力まで下がったとしても、上述した様々な構成によって圧力タンク33の内部における結露を抑えることができる。したがって、ガスクロマトグラフ10は、圧力タンク33の内部に結露として残った水分がキャピラリーカラム39に侵入してしまうことと、圧力タンク33の内部に結露として残った水分が、新たな測定時に圧力タンク33の内部で新たなキャリアーガスに水蒸気として取り込まれることによってキャリアーガスを加湿してしまうこととを抑えることができる。
【解決手段】 ガスクロマトグラフ10は、ガスクロマトグラフ10の周囲の空気をキャリアーガスとして取り込む加圧ポンプ32と、加圧ポンプ32によって供給されるキャリアーガスをガスクロマトグラフ10の周囲の空気の圧力より高圧な状態で貯蔵可能な圧力タンク33と、圧力タンク33から供給されるキャリアーガスの流量を調整するためにキャピラリーカラム39の上流の位置に配置された流量調整部36と、ガスクロマトグラフ10の内部の空気の流路のうち圧力タンク33からガスセンサー40までの流路を含む特定流路範囲の外部から、特定流路範囲の内部への空気の流入を、加圧ポンプ32の停止中に抑制可能な逆止弁21および22と、特定流路範囲の内部に配置されて除湿を行う除湿剤31b、33bおよび41bとを備えることを特徴とする。