特許第6413113号(P6413113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413113
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】系統連系システム
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/40 20060101AFI20181022BHJP
【FI】
   H02B1/40 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-53046(P2014-53046)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-177660(P2015-177660A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】東 久秀
(72)【発明者】
【氏名】水野 孝美
(72)【発明者】
【氏名】片岡 賢司
(72)【発明者】
【氏名】川畑 拓也
(72)【発明者】
【氏名】出原 侑昌
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−249392(JP,A)
【文献】 特開平09−233623(JP,A)
【文献】 特開平10−108321(JP,A)
【文献】 特開平09−009484(JP,A)
【文献】 特開2013−140111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/40 − 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源と分散電源から負荷に電源を供給する系統連系システムであって、
商用電源に接続される主幹開閉器および分岐開閉器を備えた商用電源回路部と、分散電源に接続される開閉器を備えた分散電源回路部と、地震を検出したときに開閉器に信号を出力し開閉器を遮断する感震リレーとを備え、
この感震リレーは商用電源回路部の主幹開閉器と、分散電源回路部の開閉器とに接続され、各々の系統に信号を出力することによりこれらの開閉器を遮断可能としたものであり、
またこの感震リレーは、第1所定値以上の地震を検出した場合には、分散電源回路部の開閉器に信号を出力した後、商用電源回路部の主幹開閉器に信号を出力する判定回路を備えたものであり、
さらに、前記の商用電源回路部と分散電源回路部との間で通電経路を切り替える切替開閉器を備え、この切替開閉器により一部の負荷への通電経路を切り替え可能としたことを特徴とする系統連系システム。
【請求項2】
判定回路は、第2所定値以上の地震を検出した場合には、各々の系統へ同時に信号を出力することを特徴とする請求項1記載の系統連系システム。
【請求項3】
感震リレーはその内部に、各々の系統への出力条件を設定する設定部を備えることを特徴とする請求項1または2記載の系統連系システム。
【請求項4】
感震リレーが接続される開閉器は、各々の系統の主回路を遮断する開閉器であることを特徴とする請求項1記載の系統連系システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感震リレーを備えた系統連系システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
商用電源と分散電源から負荷に電源を供給することができる系統連系システムは、太陽光発電装置などの普及に伴って一般住宅にも拡大している。また想定される大地震に備えるために、地震発生時に負荷への通電を遮断する技術も種々開発されている。
【0003】
例えば特許文献1には、分電盤の内部に感震センサを内蔵させ、地震が検出された場合には主幹開閉器および分岐開閉器を遮断するようにした感震遮断機能付き分電盤が記載されている。また特許文献2には、地震発生時に漏電等に伴って火災が発生することを防止するために、感震センサが地震を検知したときに漏電遮断器を開放して商用電源から負荷への通電を停止するとともに、非常用分散電源から、非常灯等への通電を行なうことが記載されている。
【0004】
このように従来から、地震発生時に一般負荷への通電を遮断するが、分散電源を利用して非常灯等への通電は継続することが行われていた。しかし地震によって負荷の配電系統が損傷した場合には、この非常灯等への通電によって漏電が発生し、火災や感電を引き起こす可能性が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−233623号公報
【特許文献2】特開2006−166645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、一定震度以上の地震が発生したときには通電を遮断し、火災や感電の危険性をなくした系統連系システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、商用電源と分散電源から負荷に電源を供給する系統連系システムであって、商用電源に接続される主幹開閉器および分岐開閉器を備えた商用電源回路部と、分散電源に接続される開閉器を備えた分散電源回路部と、地震を検出したときに開閉器に信号を出力し開閉器を遮断する感震リレーとを備え、この感震リレーは商用電源回路部の主幹開閉器と、分散電源回路部の開閉器とに接続され、各々の系統に信号を出力することによりこれらの開閉器を遮断可能としたものであり、またこの感震リレーは、第1所定値以上の地震を検出した場合には、分散電源回路部の開閉器に信号を出力した後、商用電源回路部の主幹開閉器に信号を出力する判定回路を備えたものであり、さらに、前記の商用電源回路部と分散電源回路部との間で通電経路を切り替える切替開閉器を備え、この切替開閉器により一部の負荷への通電経路を切り替え可能としたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2のように、判定回路は一定震度以上の地震を検出した場合には、各々の系統へ同時に信号を出力するものであることが好ましい。また請求項3のように、感震リレーはその内部に、各々の系統への出力条件を設定する設定部を備えるものであることが好ましい。さらに請求項4のように、感震リレーが接続される開閉器は、各々の系統の主回路を遮断する開閉器であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、感震リレーが地震を検出したときに、商用電源回路部の主幹開閉器と分散電源回路部の開閉器とを遮断することができるので、通電による火災発生や感電事故の危険を無くすことができる。また請求項2〜請求項3の発明によれば、地震の震度等に応じて、商用電源回路部の主幹開閉器を遮断した後、一定時間経過後に分散電源回路部を遮断することや、震度に応じて開閉器の遮断の仕方を変更する等の様々な制御が可能となる。また請求項4の発明によれば、負荷への通電を全て遮断することにより、火災発生の危険を完全に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の系統連系システムを示す概略的な回路図である。
図2】実施形態の感震リレーの正面図である。
図3】実施形態の感震リレーの斜視図である。
図4】感震リレーの内部の回路構成図である。
図5】変形例を示す概略的な回路図である。
図6】本発明のシステムを分電盤に組み込んだ場合の配置例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は実施形態の系統連系システムを示す概略的な全体図であり、1は商用電源回路部、2は分散電源回路部である。商用電源回路部1は、商用電源3に接続される主幹開閉器4と、その二次側に接続された多数の分岐開閉器5とを備え、各分岐開閉器5から一般的な負荷(図示せず)への通電が行われることは従来と同様である。主幹開閉器4の一次側には分散電源用ブレーカ6が接続されているが、これについては後述する。主幹開閉器4としては、漏電ブレーカが用いられている。
【0012】
分散電源回路部2は開閉器7を介して分散電源8に接続されている。分散電源8は本実施形態では太陽光発電装置であるが、燃料電池その他の電源であってもよい。実施形態の太陽光発電装置は、図示のとおり接続箱9、パワーコンディショナ10を介して開閉器7に接続されている。開閉器7は系統連系用ブレーカとして機能するものであり、漏電ブレーカを用いることが好ましい。またパワーコンディショナ10は上記の分散電源用ブレーカ6にも接続されており、分散電源8から商用電源3側への逆潮流が可能となっている。
【0013】
11は商用電源回路部1と分散電源回路部2に接続され、一部の負荷12への通電経路を切り替える切替開閉器である。ここで、負荷12として非常灯、電気機器などが接続されるものである。切替開閉器11自体は公知のものであり、可動接触子13を商用電源側接点14と分散電源側接点15との間で切替えて、負荷12へ何れの電源から給電を行なうかを選択できるものである。なお16は中立接点であり可動接触子13を中立接点16に動かした場合には、何れの電源からも負荷12への給電は行われない。負荷12は非常灯などの非常用負荷であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。商用電源側接点14は第1の分散電源用ブレーカ17の二次側に接続されている。
【0014】
18は蓄電池であり、第2の分散電源用ブレーカ19の二次側とパワーコンディショナ10とに接続され、何れの電源からも充電可能となり、分岐開閉器5に接続された負荷にも放電可能としている。しかし蓄電池18は本発明の範囲外のものであり、省略可能である。
【0015】
本発明の系統連系システムは、感震リレー20を備えている。図2図3に実施形態の感震リレー20の外観を示し、図4に内部の回路構成を示す。図4に示すように、感震リレー20はケース21の内部に、感震センサ22、判定回路23、その電源部24等を収納したものである。この実施形態では電源端子25はプラグ端子であり、図1に示すように、プラグイン式の分電盤においては分岐開閉器5の列中に組み込むことができるので、余分の場所を取らない、また、電線等を接続することなく電源を取得できるなどの利点がある。しかし電源端子25の構造は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0016】
判定回路23は揺れ(S波)を検出する感震センサ22からの信号を受けて、震度が一定以上であるかどうかを判定し、出力端子26から開閉器を遮断するための信号を出力する回路である。例えば第1所定値(震度5)以上の場合には、感震センサ22からの信号を記憶部27に記憶させて3分後に信号を出力し、第2所定値(震度6)以上の場合には、直ちに信号を出力する。
【0017】
図1に破線で示したように、地震発生時に感震リレー20から出力される上記信号は、商用電源回路部1の主幹開閉器4と分散電源回路部2の開閉器7とに送られ、両方の回路を遮断する。本実施形態においては、判定回路23は、第1所定値(震度5)以上の震度を検出した場合には、分散電源回路部2の開閉器7に信号を出力した後、商用電源回路部1の主幹開閉器4に信号を出力して、各々の系統の開閉器を遮断する。そして、第2所定値(震度6)以上の震度を検出した場合には、各々の系統の開閉器に同時に信号を出力し遮断する。このように各々の系統の主回路を遮断する開閉器4,7に感震リレー20の出力端子26を接続することにより、各負荷への通電を確実に遮断し、漏電による火災等を防止することができる。なお、感震リレー20は商用電源回路部1に組込みされるものであるが、既設の分電盤等に感震リレー20を増設する場合においても、商用電源回路部1の主幹開閉器4に接続するようにするため、同様の判定を行うことが可能である。
【0018】
感震リレー20から出力される信号は、例えば疑似漏電発生信号である。この実施形態のように、開閉器4、7を漏電遮断器としておけば、疑似漏電発生信号が入力されると漏電遮断器は漏電発生と判断して開閉器4、7が回路を遮断する。このほか、感震リレー20から出力される信号により、開閉器4、7のトリップバー等の機構部を機械的に、あるいは開閉器4,7の表面上のハンドルを自動操作装置により操作して開閉器4、7をトリップさせることも可能である。
【0019】
図4に示したように、感震リレー20には記憶部27、設定部28、受信部29などが設けられている。地震波が感知された後に停電が発生すると、3分後に主開閉器を遮断することとなっている。このため記憶部27は地震検出信号を少なくとも3分間記憶する機能を持つものである。しかしその3分以内にリセットボタン30が押されると、記憶部27の記憶はリセットされる。
【0020】
また、感震リレー20が作動する前に停電が先行し、停電発生から8秒以内に感震リレー20が地震波を感知した場合には、開閉器4,7は遮断されていない。この場合には記憶部27は地震検出信号を記憶し、復電時に開閉器4,7を遮断する。
【0021】
設定部28は、各々の系統への出力条件を設定する機能を持つ。実施形態のように複数の出力端子26a、26bを設けておけば、個々に出力条件を変更することができる。例えば、地震検出後に第1の出力端子26aから商用電源回路部1の主幹開閉器4に信号を送信し、一定時間後に第2の出力端子26bから分散電源回路部2の開閉器7に信号を送信するように設定することができる。
【0022】
また、震度が一定以上の場合には第1の出力端子26aと第2の出力端子26bに同時に信号を送信するが、震度がそれ以下のときには第1の出力端子26aだけに信号を送信するように、出力方法を設定することができる。また、各々の出力端子に地震を感知してから1分後に信号を送信するよう、トリップ時間の設定を行うことができる。さらに地震の揺れが数秒以上継続した場合には、その直後に信号を送信するよう、感知時間の設定を行うことができる。ただし設定部28は、上記に示した判定回路23の条件範囲内でのみ設定が可能となっている。
【0023】
図1では感震リレー20の出力端子26は商用電源回路部1の主幹開閉器4と分散電源回路部2の開閉器7とに接続されているが、図5に示すように分岐開閉器5にも接続することができる。
【0024】
上記したほかに、図2図3に示すように感震リレー20のケース21の表面には、表示部31、テストボタン32等を設けることもできる。表示部31は地震を検知したときにランプや音声により地震を報知するものであり、テストボタン32は出力端子26に擬似的に信号を出力し、主幹開閉器4や開閉器7が確実に動作するか否かをテストするものである。
【0025】
以上の説明は感震リレー20の感震センサ22が地震発生を検知した場合について行ったが、図4のように受信部29が緊急地震速報やP波等の地震情報を受信し、判定回路23にその信号を送ることも可能である。一定震度以上の地震発生が予測された場合には、判定回路23は直ちに出力端子26に信号を出力する。あるいは受信部29が受信した予測情報と、感震センサ22が実際に検知した震度とを組み合わせて判定回路23に判断させるようにすれば、より安全かつ確実な対応が可能となる。
【0026】
図6に本発明を分電盤に組み込んだ場合の配置例を示す。各部品に上記した番号を付して説明を省略する。ただし、図6では感震リレー20が分岐開閉器5の位置ではなく、主幹開閉器4に接続された母線バーの端部に接続されているが、その機能は上記の説明と同様である。
【0027】
以上に説明したように、本発明によれば、一定震度以上の地震が発生したときには商用電源回路部1及び分散電源回路部2の通電を遮断し、火災や感電の危険性をなくした系統連系システムを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 商用電源回路部
2 分散電源回路部
3 商用電源
4 主幹開閉器
5 分岐開閉器
6 分散電源用ブレーカ
7 開閉器
8 分散電源
9 接続箱
10 パワーコンディショナ
11 切替開閉器
12 負荷
13 可動接触子
14 商用電源側接点
15 分散電源側接点
16 中立接点
17 第1の分散電源用ブレーカ
18 蓄電池
19 第2の分散電源用ブレーカ
20 感震リレー
21 ケース
22 感震センサ
23 判定回路
24 電源部
25 電源端子
26 出力端子
27 記憶部
28 設定部
29 受信部
30 リセットボタン
31 表示部
32 テストボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6