(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413114
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】電気機器収納用箱の屋根構造
(51)【国際特許分類】
H02B 1/28 20060101AFI20181022BHJP
H02B 1/30 20060101ALI20181022BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
H02B1/28 E
H02B1/30 F
H05K5/02 L
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-99750(P2014-99750)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-216816(P2015-216816A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】山澤 英丈
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 満
【審査官】
澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−122588(JP,U)
【文献】
特開平10−322812(JP,A)
【文献】
特開2004−332327(JP,A)
【文献】
特開2005−139847(JP,A)
【文献】
特開平07−247639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 − 1/38
H02B 1/46 − 7/08
H05K 5/00 − 5/06
E04D 1/00 − 3/40
E04D 13/00 −15/07
E04H 1/00 − 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器が収納される筐体本体の屋根部を、複数の屋根板材を連結して形成した電気機器収納用箱の屋根構造であって、各屋根板材の連結箇所に沿って第1水切部を設けるとともに、前記筐体本体の開口部の周縁のフレームには、第1水切部からの水滴を筐体本体の下方へと排水する第2水切部を形成し、前記第1水切部には、その両端部のうち少なくとも一方に、該第1水切部を伝う水滴を前記第2水切部に導くガイド部材を備え、前記ガイド部材は、略コ字状のガイド部と、該ガイド部の略コ字状の一方の腕部を、他方の腕部に対して延長させてなる側壁部とを備え、前記第1水切部の端部から前記第2水切部に向けて傾斜させたものであることを特徴とする電気機器収納用箱の屋根構造。
【請求項2】
連結された一方の屋根板材に前記第1水切部を設け、他方の屋根板材に前記第1水切部と平行に補強金具を設けるものとし、該第1水切部と該補強金具とを当接させたことを特徴とする請求項1記載の電気機器収納用箱の屋根構造。
【請求項3】
前記屋根板材には、前記ガイド部材の下端が載置される搭載部を設けたことを特徴とする請求項1記載の電気機器収納用箱の屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器収納用箱の屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気機器を収納するための電気機器収納用箱は、複数の枠体を連結してなる筐体本体と、この筐体本体の天井側を遮光するための屋根部とを備えている。この屋根部は、筐体本体のサイズが小さい場合は1枚の屋根板材により構成されるが、筐体本体のサイズが大きい場合には、強度低下を防止するために、複数の屋根板材を連結することにより構成されることが通常である。しかしながら、屋根板材同士の連結箇所の隙間から雨水等が筐体本体内に侵入する恐れがあるため、例えば特許文献1のように、連結箇所に沿って水切部を設ける技術が開示されている。
【0003】
ところが、このような従来の構造においては、水切部を伝う水は屋根板材の端部から自由落下して排水されるために、この水が飛散してしまい、例えば筐体本体の正面側に設けられた扉部を開閉した際に作業者が濡れてしまう等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−322812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は前記した従来の問題点を解決し、屋根板材同士の連結箇所から侵入する水を速やかに筐体本体外に排水し、かつ、この水が飛散することのない電気機器収納用箱の屋根構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明は、電気機器が収納される筐体本体の屋根部を、複数の屋根板材を連結して形成した電気機器収納用箱の屋根構造であって、各屋根板材の連結箇所に沿って第1水切部を設けるとともに、前記筐体本体の開口部の周縁のフレームには、第1水切部からの水滴を筐体本体の下方へと排水する第2水切部を形成し、前記第1水切部には、その両端部のうち少なくとも一方に、該第1水切部を伝う水滴を前記第2水切部に導くガイド部材を備え、前記ガイド部材は、
略コ字状のガイド部と、該ガイド部の略コ字状の一方の腕部を、他方の腕部に対して延長させてなる側壁部とを備え、前記第1水切部の端部から前記第2水切部に向けて傾斜させたものであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電気機器収納用箱の屋根構造において、連結された一方の屋根板材に前記第1水切部を設け、他方の屋根板材に前記第1水切部と平行に補強金具を設けるものとし、該第1水切部と該補強金具とを当接させたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の電気機器収納用箱の屋根構造において、前記屋根板材には、前記ガイド部材の下端が載置される搭載部を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電気機器収納用箱の屋根構造は、各屋根板材の連結箇所に沿って第1水切部を設けるとともに、
前記筐体本体
の開口部の周縁のフレームには、第1水切部からの水滴を筐体本体の下方へと排水する第2水切部を形成し、第1水切部には、その両端部のうち少なくとも一方に、第1水切部を伝う水滴を第2水切部に導くガイド部材を備えた。これにより、第1水切部を伝う水は、ガイド部材によって第2水切部に導かれて筐体本体の下方へと排水されるため、この水が飛散することがない。
【0012】
また本発明では、ガイド部材は、第1水切部の端部から第2水切部に向けて傾斜させるものとした。これにより、第1水切部を伝う水をより確実に第2水切部に導くことができ、また傾斜させずに第2水切部へと水を自由落下させる場合と比較して、水の飛散を減少させることができる。
【0013】
また本発明では、ガイド部材は、略コ字状のガイド部と、このガイド部の略コ字状の一方の腕部を、他方の腕部に対して延長させてなる側壁部とを備えるものとした。これにより、略コ字状のガイド部を伝う水が溢れることなく流れる効果を有するとともに、側壁部を設けることによって屋根板材の強度を高めることができる。
【0014】
請求項2に係る発明は、連結された一方の屋根板材に第1水切部を設け、他方の屋根板材に第1水切部と平行に補強金具を設けるものとし、この第1水切部と補強金具とを当接させるものとした。これにより、屋根部全体の強度を高めることができると同時に、第1水切部を伝わる水が溢れたとしても、補強金具が当接しているため、この水が筐体本体内に侵入することを防止することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、屋根板材には、ガイド部材の下端が載置される搭載部を設けるものとした。これにより、組み立て時にガイド部材が筐体本体と当接して変形することを防止することができ、また屋根部全体の強度をより高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本実施形態の電気機器収納用箱を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態の縦フレームの水平断面図である。
【
図5】本実施形態の横フレームの垂直断面図である。
【
図8】本実施形態の中央屋根板材の裏面を示す斜視図である。
【
図9】本実施形態の左右屋根板材の裏面を示す斜視図である。
【
図10】本実施形態における中央屋根板材と左右屋根板材との連結箇所を示す垂直断面図である。
【
図11】本実施形態における中央屋根板材と左右屋根板材との連結箇所を示す垂直断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1に示すように、筐体本体1は、縦フレーム2と横フレーム3とからなる枠体4を左右方向に複数配置し、さらに縦フレーム2と奥行フレーム5とからなる枠体4を前後方向に複数配置することにより構成される。なお、左右方向および前後方向とは、
図1に示す方向を意味するものであり、また正面側とは前面側を意味し、背面側とは後面側を意味するものとする。各枠体4同士は、
図3、
図4のように隣り合う縦フレーム2同士を連結金具6によって固定することにより連結され、連結金具6の外側には覆い部7が設けられている。また、
図4のように、一方の縦フレーム2と連結金具6との間には、パッキン8が設けられている。さらに、筐体本体1の正面側及び背面側を構成する枠体4の、縦フレーム2及び上部の横フレーム3には、
図3乃至
図5のように、縦フレーム2の水切部9a及び横フレーム3の水切部9bからなる第2水切部9が形成されており、これにより、横フレーム3の水切部9bを伝う水滴を、縦フレーム2の水切部9aに沿って筐体本体1の下方へと排水可能としている。同様に、枠体4の、縦フレーム2及び上部の奥行フレーム5にも、縦フレーム2の水切部9a及び奥行きフレーム5の水切部9cからなる第2水切部9が形成されるものであり、各々の第2水切部9は枠体4の開口部40の周縁に形成されているものである。
【0018】
図2のように、筐体本体1の前後左右に設けられた開口部40には各々扉部10や側板部(正面板11、側板12、図示しない背面板や背面扉)が設けられており、詳しくは、筐体本体1の正面側には扉部10および正面板11が設けられ、左右側面側には側板12が設けられ、また背面側には図示しない背面板または背面扉が設けられている。また、筐体本体1の底面側には
図1のように底板13が設けられており、さらに、筐体本体1がその上面に載置される基台14が設けられており、この基台14は設置場所への固定に用いられる。筐体本体1の天井側を遮光するために、屋根部15が設けられており、この屋根部15は、複数の屋根板材を連結することによって構成されるものであり、本実施形態では、中央屋根板材16と、その左右に位置する2枚の左右屋根板材17とにより構成するものとした。また、屋根部15は、その上部に水が溜まらないよう、正面側から背面側にかけて傾斜させている。
【0019】
中央屋根板材16には、
図7および
図8のように、天井面18の前後端部から下向きに折曲げた折曲辺19と、この折曲辺19の端部から筐体本体1の内側方向へ水平に延びる水平辺20とが形成されている。また、天井面18の左右端部には、後述する第1水切部23及び左右屋根板材17をねじ止めするための垂下辺21aが形成されている。左右屋根板材17も同様に、
図9のように、天井面18の前後端部から下向きに折曲げた折曲辺19と、この折曲辺19の端部から筐体本体1の内側方向へ水平に延びる水平辺20とが形成されている。また、天井面18の左右端部においては、
図10のように、中央屋根板材16と連結される側に垂下辺21bが形成されており、他方の側は
図9のように、前後端部と同様折曲辺19及び水平辺20が形成されている。
図10のように、垂下辺21a、21bとでは、左右屋根板材17の垂下辺21bの方が長く形成されており、さらに垂下辺21bから左右屋根板材17の内側方向に水平に折返した折返辺22が形成されている。
【0020】
図10及び
図11のように、中央屋根板材16と左右屋根板材17の連結箇所の下方位置には、連結箇所に沿って両屋根板材の垂下辺21a、21bを略コ字状に覆うように形成された第1水切部23が、前後方向に亘り設けられている。この第1水切部23は、中央屋根板材16に溶接により固定される固定部24と、固定部24から垂直下方向、すなわち、垂下辺21a、21bと平行に折曲げた垂直辺25と、垂直辺25から両屋根板材の垂下辺21a、21bの下端を覆うように、左右屋根板材17に向けて水平に延ばした水平辺26と、さらに水平辺26から垂直上向きに立上げた立上辺27とからなるものとした。また、垂下辺21aを左右屋根板材17の垂下辺21bと第1水切部23との間に挟止した上で、ねじ止めするものとし、これにより中央屋根板材16と、左右屋根板材17と、第1水切部23とが一体に固定されて連結される。このような構成により、中央屋根板材16と左右屋根板材17との連結箇所から落下する水滴の飛散を防止し、さらに垂下辺21bに折返辺22を形成することにより、より効果的に水の飛散を防止するものとした。
【0021】
前記第1水切部23の前後端部には、
図6のようにガイド部材28を設けるものとした。このガイド部材28は、中央屋根板材16及び第1水切部23に溶接され、第1水切部23を伝う水を、第2水切部9へと導く、詳しくは、筐体本体1の上部の横フレーム3に形成された横フレーム3の水切部9bへと導くものである。なお、ガイド部材28は、縦フレーム2の水切部9aへと水を導くものでもよく、また第1水切部23と一体形成されたものでも良い。このような構成により、第1水切部23を伝う水は、ガイド部材28により、第2水切部9に導かれて筐体本体1の下方へと排水されるため、この水が飛散することがない。また、ガイド部材28は、第1水切部23の端部から第2水切部9に向けて傾斜させるものとして、第1水切部23を伝う水をより確実に第2水切部9に導き、水の飛散を減少させるものとすることが好ましい。なお、ガイド部材28を傾斜させることにより、筐体本体1の扉部10側から見たとき、ガイド部材28により第1水切部23の露出を防ぎ景観を向上させるものである。ガイド部材28は、略コ字状のガイド部29と、ガイド部29の略コ字状の一方の腕部を、他方の腕部に対して延長させてなる側壁部30と、
図7のように中央屋根板材16に溶接により取付けるための取付部31とを備えるものとして一体成型した。これにより、ガイド部29を伝う水が溢れることなく流れる効果を有するとともに、側壁部30を設けることによって中央屋根板材16の強度を高めることができる。また、
図7のように、中央屋根板材16の水平辺20には、左右方向に突出形成した搭載部32を設けるものとし、この搭載部32に、ガイド部材28の下端を載置するものとした。これにより、ガイド部材28の端部が開放端となることを防止し、組み立て時にガイド部材28が筐体本体1と当接して変形することを防止することができ、また屋根部15全体の強度をより高めることが可能となる。
【0022】
なお、本実施形態では、第2水切部9を筐体本体1の正面側及び背面側に設けるものとしたが、正面側または背面側のうち少なくとも一方に設けていれば良い。また第2水切部9の構造としては、モノコック式とすることもでき、その場合でも同様に、筐体本体1の正面側または背面側のうち少なくとも一方に、筐体本体1の扉部10や側板部(正面板11、側板12、図示しない背面板や背面扉)が取り付けられる開口部40の周縁に第2水切部9を設けるものとする。
【0023】
図8及び
図9のように、中央屋根板材16及び左右屋根板材17の内側には、補強金具33が複数設けられている。この補強金具33は、各屋根板材の天井面18の裏面及び各屋根板材の水平辺20に固定されて、各屋根板材の強度を高めるためのものである。また、
図9のように、左右屋根板材17に設けられる補強金具33のうち、中央屋根板材16と連結される側の補強金具33aは、中央屋根板材16に設けられた第1水切部23と平行となるよう、前後方向に亘って設けられるものとし、
図10のように、この補強金具33aのうち垂直面38を、第1水切部23の立上辺27と当接させるものとした。これにより、屋根部15全体の強度を高めることができると同時に、第1水切部23を伝わる水が溢れたとしても、補強金具33aの垂直面38が当接しているため、この水が筐体本体1内に侵入することを防止することができる。また、立上辺27と補強金具33a間にはパッキン34を介在させて、防水性能を更に高めるものとした。なお、両者をねじ固定するものであっても良いが、ねじ固定の際にパッキン34を巻き込んでしまい、防水性能が低下する恐れがあるため、立上辺27と補強金具33a間よりも幅広なパッキン34を圧入することがより好ましい。
【0024】
図9のように、補強金具33aには、筐体本体1内の空気の循環効率を高めるために複数の通気孔35を形成するものとし、
図11のように通気孔35は補強金具33aの垂直面38の下端側に片寄らせて形成し、垂直面38の上端側に第1水切部23の立上辺27と当接するように形成し、筐体本体1の空気の循環効率を高めつつ、防水性能を高めることも可能としている。また、
図8及び
図9のように、筐体本体1の正面側及び背面側に配置した補強金具33bには、吊上ボルト固定部36を形成して、
図2に示す吊上ボルト37を固定可能とした。
【符号の説明】
【0025】
1 筐体本体
2 縦フレーム
3 横フレーム
4 枠体
5 奥行フレーム
6 連結金具
7 覆い部
8 パッキン
9 第2水切部
(9a、9b、9c)水切部
10 扉部
11 正面板
12 側板
13 底板
14 基台
15 屋根部
16 中央屋根板材
17 左右屋根板材
18 天井面
19 折曲辺
20 水平辺
21(21a、21b)垂下辺
22 折返辺
23 第1水切部
24 固定部
25 垂直辺
26 水平辺
27 立上辺
28 ガイド部材
29 ガイド部
30 側壁部
31 取付部
32 搭載部
33(33a、33b)補強金具
34 パッキン
35 通気孔
36 吊上ボルト固定部
37 吊上ボルト
38 垂直面
40 開口部