(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413135
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】固化ブロック製造装置、及び固化ブロック製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/08 20060101AFI20181022BHJP
B28B 11/14 20060101ALI20181022BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20181022BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20181022BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20181022BHJP
B28B 1/29 20060101ALI20181022BHJP
E02B 1/00 20060101ALI20181022BHJP
C04B 18/06 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
B28B1/08
B28B11/14ZAB
B09B3/00 301M
C04B28/02
C04B18/08 Z
B28B1/29 A
E02B1/00 Z
C04B18/06
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-150245(P2014-150245)
(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公開番号】特開2016-22705(P2016-22705A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100158883
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 哲平
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 栄一
【審査官】
原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04545754(US,A)
【文献】
特開2002−308659(JP,A)
【文献】
特開昭62−180195(JP,A)
【文献】
特開2004−285605(JP,A)
【文献】
特開2006−001191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/00− 1/54
B09B 3/00
B28B 11/14
C04B 18/06−18/10
C04B 28/00−28/36
E02B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰、セメント、及び水を含んで混練された混練物を、層状に敷き均した層状体から、固化ブロックを製造する固化ブロック製造装置において、
前記固化ブロック製造時には略水平姿勢となる水平加振板と、
前記固化ブロック製造時には略鉛直姿勢となる筒状の側壁体を有するとともに、該側壁体の上端には上開口部を、及び該側壁体の下端には下開口部を有する鉛直ガイドと、
前記水平加振板を振動させる加振機と、を備え、
前記水平加振板は、前記鉛直ガイド内に収められるとともに、該鉛直ガイドとは独立して自由に該鉛直ガイド内を上下にスライド可能であり、
前記上開口部には、内側に向かって突出する固定制止手段が設けられ、該固定制止手段によって前記水平加振板は前記上開口部を通過することができず、
前記水平加振板を上方に引き上げると、該水平加振板に係止された前記鉛直ガイドも引き上げられる、ことを特徴とする固化ブロック製造装置。
【請求項2】
前記鉛直ガイドには、前記水平加振板を下方にスライドさせない可動制止手段が設けられ、
前記可動制止手段は、前記水平加振板のスライドを制止する制止状態、又は該制止状態を解除した解除状態の、いずれかに変更可能であり、
前記固化ブロック製造時に、前記可動制止手段を前記解除状態にすると前記水平加振板は前記鉛直ガイド内を自由に上下スライドし、前記可動制止手段を前記制止状態にすると前記水平加振板のスライドが制止される、
ことを特徴とする請求項1記載の固化ブロック製造装置。
【請求項3】
前記水平加振板及び前記鉛直ガイドを、移動させる移動体と、
前記水平加振板及び前記鉛直ガイドを、前記移動体に装着させるための装着治具と、
前記水平加振板の振動を吸収する振動減衰体と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の固化ブロック製造装置。
【請求項4】
固化ブロックを製造する固化ブロック製造方法において、
焼却灰、セメント、及び水を含んで混練された混練物を、層状に敷き均して層状体を形成する層状体形成工程と、
略鉛直姿勢となる筒状の側壁体、上開口部、及び下開口部を有する鉛直ガイドを、前記層状体に挿入する鉛直ガイド挿入工程と、
前記鉛直ガイド内に収められ、該鉛直ガイドとは独立して自由に該鉛直ガイド内を上下にスライド可能である水平加振板を、前記層状体の上に載置させる水平加振板載置工程と、
前記層状体の上に載置させた状態で前記水平加振板を振動させて、該層状体を流体化させる振動工程と、
前記層状体から前記鉛直ガイドを引き抜く引き抜き工程と、を備え、
前記振動工程において、前記層状体の流体化に伴って、前記水平加振板は前記鉛直ガイド内を下方にスライドし、
前記上開口部には、内側に向かって突出する固定制止手段が設けられ、該固定制止手段によって前記水平加振板は前記上開口部を通過することができず、
前記引き抜き工程において、前記水平加振板を上方に引き上げることによって、該水平加振板に係止された前記鉛直ガイドが引き抜かれ、
前記鉛直ガイドが引き抜かれた後に、周囲の前記層状体から独立した固化ブロックが形成される、ことを特徴とする固化ブロック製造方法。
【請求項5】
前記鉛直ガイドには、前記水平加振板を下方にスライドさせない可動制止手段が設けられ、
前記可動制止手段は、前記水平加振板のスライドを制止する制止状態、又は該制止状態を解除した解除状態の、いずれかに変更可能であり、
前記鉛直ガイド挿入工程では、前記可動制止手段を前記制止状態として、前記水平加振板のスライドを制止し、
前記水平加振板載置工程では、前記可動制止手段を前記解除状態として、前記水平加振板のスライドを自由にする、ことを特徴とする請求項4記載の固化ブロック製造方法。
【請求項6】
前記鉛直ガイドを引き抜く前に、該鉛直ガイドを搖動することによって、前記固化ブロックの周囲に縁切り空間を形成する鉛直ガイド搖動工程を、さらに備えたことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の固化ブロック製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、石炭灰、ごみ焼却灰、ペーパースラッジ焼却灰、汚泥焼却灰等(以下、これらを総称して「焼却灰」という。)の有効利用に関するものであり、より具体的には、焼却灰にセメント及び水を添加して固化させた「固化ブロック」を製造する装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国や自治体を中心とする様々な取り組みによって、我が国の廃棄物の排出量は近年減少傾向にある。その一方で、焼却灰は緩やかではあるが増加傾向にあると言われている。焼却灰のうち石炭灰は、主に石炭火力発電所における石炭燃焼により発生するもので、高温の燃焼ガス中を浮遊して集められたフライアッシュと、ボイラー底部にある多孔質な灰の塊を粉砕したクリンカアッシュに大別される。石炭火力発電は、いくつかの電気事業や一般産業で行われており、年間およそ1億トンの石炭が使用され、そのうち約1割が石炭灰として排出される。つまり、石炭灰だけで年間で1000万トンを超える焼却灰が排出されるわけであり、最終処分場の残容量、あるいは焼却灰の排出者が負担する費用を考えると、焼却灰の処理は大きな問題である。
【0003】
ところで、資源の大量使用により使用済物品や副産物が大量に発生し、再生資源あるいは再生部品となるべき相当部分が利用されずに廃棄されている状況に鑑み、平成12年、再生資源利用促進法が改正されるかたちで「資源の有効な利用の促進に関する法律(以下、単に「リサイクル法」という。)」が制定された。このリサイクル法では、エネルギーの供給又は建設工事に係る副産物であって、その全部又は一部を再生資源として利用促進するものを、特に「指定副産物」として定めており、石炭灰もこの中に含まれている。
【0004】
リサイクル法により指定副産物に定められたこともあって、排出される石炭灰の多くはセメント原料や建設資材として有効利用されている。例えば、石炭灰を固めたブロック(以下、「固化ブロック」という。)はその代表的な例であり、造成盛土材として利用したり、人工海底山脈の構築材として利用したり、様々な場所で好んで用いられている。
【0005】
従来、石炭灰の固化ブロックを製造するに当たっては、石炭灰とセメント、水を混合し、有スランプ状態で型枠に投入して固める方法が多かった。しかしながら、この手法で製造された固化ブロックは、セメント量に対して使用する水量が多くなるなどの理由から比較的小さな強度しか発現せず、そのため固化後にひび割れが生じやすく、ブロックとしての品質は粗悪になる傾向にあった。特に、固化ブロック中に重金属など有害物質を含んでいる場合は、ひび割れから浸透した雨水によって有害物質が溶出することも懸念される。
【0006】
従来手法で製造された固化ブロックの強度を向上させる目的で、砂や砂利といった骨材を混入することも考えられるが、リサイクル製品であるにもかかわらず天然資源が消費されることになり、しかも骨材を混入する分だけリサイクルできる焼却灰の量が減少することとなるため、有効な手段とはいえない。あるいは、セメント混入量を増加して所定の強度を確保する手法も考えられるが、この場合も不要な資源消費と、焼却灰のリサイクル量減少という問題や、水和熱の上昇に伴う内部拘束を招き、いわゆる温度ひび割れが発生するという問題を生じてしまう可能性もある。
【0007】
ところで本願の出願人は、焼却灰の固化ブロックを製造するに当たって上記問題を解決する好適な技術である「超流体工法」を、これまでに提案している。例えば特許文献1では、セメント、石炭灰、水(最適含水比程度)を練り混ぜて混練物を生成し、この混練物をブロック用型枠に投入した後、振動を加えて型枠内の混練物を流動化するという手法が提案されている。
【0008】
超流体工法について簡単に説明する。振動が与えられた混練物は、ベアリング効果によって粒子間が分離した結果、粒子の周囲に水分とセメント分がまんべんなく行き渡り、混練物は有効応力を失って間隙水圧のみとなり、いわゆる液状化現象を起こす。混練物が液状化したものは、いわばプリン状の塑性流体(超流体)であり、液状化により粒子配置が一様かつ密実となっており、さらに焼却灰中に含まれたケイ素やアルミナ分と水、セメントの水和反応により安定した結晶体が生成される。すなわち、特許文献1のように超流体工法によって製造された固化ブロックは、ひび割れが少なく高強度なものであり、10
−7〜10
−9(cm/s)オーダーの透水係数が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−246357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1で提案される技術は有効ではあるが、大量の固化ブロックを製造する場合にはいくつかの問題を指摘することができる。すなわち特許文献1の手法によれば、製造する固化ブロック一つひとつに対して鋼製の型枠が必要であり、大量に固化ブロックを製造する場合には多大なコストがかかるという問題がある。また、大量に用意した型枠に、それぞれ混練物を投入して製造することになるため、施工速度の面でも問題がある。
【0011】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、骨材や多くのセメントを用いることなく、ひび割れが少なく高強度な固化ブロックを製造することができ、しかも低コストで従来よりも短時間で製造することができる、固化ブロック製造装置、及び固化ブロック製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、出願人が開発した超流体工法を応用して焼却灰を含む固化ブロックを製造するという点に着目してなされたものであり、焼却灰と、水、セメントを含む混練物の層状体から、部分的に切り出して振動を与えるというこれまでにない発想に基づいて行われたものである。
【0013】
本願発明の固化ブロック製造装置は、混練物を層状に敷き均した層状体から、固化ブロックを製造するものであり、水平加振板と鉛直ガイド、加振機を備えたものである。このうち鉛直ガイドは、筒状の側壁体を有し、さらにこの側壁体の上端には上開口部を、側壁体の下端には下開口部を有するものである。加振機は、水平加振板に振動を与えることができる。なお、固化ブロック製造時においては、水平加振板は略水平姿勢(水平含む)となり、鉛直ガイドの側壁体は略鉛直姿勢(鉛直含む)となる。水平加振板は鉛直ガイド内に収められ、この鉛直ガイド内を上下にスライドすることができる。また、上開口部には、水平加振板を上方に通過させない固定制止手段が設けられており、つまり水平加振板を上方に引き上げると、固定制止手段によって係止された鉛直ガイドも引き上げられる。
【0014】
本願発明の固化ブロック製造装置は、可動制止手段が設けられた鉛直ガイドを備えたものとすることもできる。可動制止手段は、水平加振板のスライドを制止する制止状態、又はこの制止状態を解除した解除状態のいずれかに変更可能である。つまり、固化ブロック製造時に可動制止手段を解除状態にすると、水平加振板は鉛直ガイド内を下方にスライドすることができる。
【0015】
本願発明の固化ブロック製造装置は、移動体と装着治具、振動減衰体を備えたものとすることもできる。このうち移動体は、水平加振板と鉛直ガイドを移動させるものであり、装着治具は、水平加振板と鉛直ガイドを移動体に装着させるものであり、振動減衰体は、水平加振板の振動を吸収するものである。
【0016】
本願発明の固化ブロック製造方法は、層状体形成工程と、鉛直ガイド挿入工程、水平加振板載置工程、振動工程、引き抜き工程を備えた方法である。このうち層状体形成工程では、焼却灰、セメント、及び水を含んで混練された混練物を、層状に敷き均して層状体を形成する。また、鉛直ガイド挿入工程では、鉛直姿勢となる筒状の側壁体を有する鉛直ガイドを層状体に挿入し、水平加振板載置工程では、鉛直ガイド内に収められこの鉛直ガイド内を上下にスライド可能である水平加振板を層状体の上に載置させる。振動工程では、層状体の上に載置させた状態で水平加振板を振動させて鉛直ガイド内側の層状体を流体化させ、引き抜き工程では、層状体から鉛直ガイドを引き抜く。なお、振動工程において、層状体の流体化による容積の縮小に伴って水平加振板は鉛直ガイド内を下方にスライドし、引き抜き工程において、水平加振板を上方に引き上げることによってこの水平加振板に係止された鉛直ガイドが引き抜かれる。そして、鉛直ガイドが引き抜かれた後に、周囲の層状体から独立した固化ブロックが形成される。
【0017】
本願発明の固化ブロック製造方法は、鉛直ガイドに設けられた可動制止手段を利用した方法とすることもできる。この可動制止手段は、水平加振板のスライドを制止する制止状態、又はこの制止状態を解除した解除状態のいずれかに変更可能である。この場合、鉛直ガイド挿入工程では、可動制止手段を制止状態として水平加振板のスライドを制止し、水平加振板載置工程では、可動制止手段を解除状態として水平加振板のスライドを自由にする。
【0018】
本願発明の固化ブロック製造方法は、鉛直ガイド搖動工程を備えた方法とすることもできる。この鉛直ガイド搖動工程では、鉛直ガイドを引き抜く前にこの鉛直ガイドを搖動することによって、固化ブロックの周囲に縁切り空間を形成する。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の固化ブロック製造装置、及び固化ブロック製造方法には、次のような効果がある。
(1)焼却灰にセメントと水を添加して混練した状態は概ねスランプ0cmの非流動状態であるが、これに面振動を与えることで流動性が増し、極めて密実な固化体が得られる。具体的には、透水係数10
−7〜10
−9(cm/s)オーダーの固化ブロックが形成される。すなわち、骨材や多くのセメントを用いることなく、高強度でひび割れが少なく、極めて密実な固化ブロックを得ることができる。
(2)ブロック用の型枠を用意する必要がないため、容易かつ短時間で、しかも低コストで大量の固化ブロックを製造することができる。
(3)固化ブロック内に含まれる焼却灰は、飛散することがなく、重金属由来の有害物質が溶出するおそれもないため、未使用時の保管も極めて安全である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】(a)は本願発明の固化ブロック製造装置を示す断面図、(b)は本願発明の固化ブロック製造装置を示す平面図。
【
図3】(a)は制止状態の可動制止手段を示すモデル図、(b)は解除状態の可動制止手段を示すモデル図。
【
図4】(a)は鉛直ガイドを層状体に挿入する前の状態を示すモデル図、(b)は鉛直ガイドを層状体に挿入した後の状態を示すモデル図。
【
図5】(a)は層状体に振動を与え始めた状態を示すモデル図、(b)は層状体の容積減少に伴い水平加振板が下降した状態を示すモデル図。
【
図6】(a)は鉛直ガイドを搖動する状態を示すモデル図、(b)は層状体から鉛直ガイドを引き抜いた状態を示すモデル図
【
図7】縁切り空間によって分離された複数の固化ブロックを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明の固化ブロック製造装置、及び固化ブロック製造方法の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0022】
1.全体概要
図1は、本願発明の主な工程の流れを示すフロー図である。この図を参考に、まずは本願発明の全体概要について説明する。はじめに、バルク車などの粉粒体運搬車によって、焼却灰を固化ブロック製造ヤード内に搬入する(Step10)。搬入された焼却灰に適量の水とセメントを添加し、ミキシングプラント等で混練して「混練物」を得る(Step20)。このとき、添加する単位水量はできるだけ少なくし、練り上がりの混練物はほぼ0スランプの固練り状態とする。
【0023】
次に、バックホウなどの重機によって0スランプ状態の混練物を層状に敷き均し、「層状体」を形成する(Step30)。なお、この層状体の平面面積は、確保されたヤードの広さや、一度に作成しようとする固化ブロックの数によって適宜設計することができ、例えば数十m×数十mの平面形状とすることができる。また、層状体の高さは、固化ブロックの寸法に応じて適宜設計され、例えば、高さ50cmの固化ブロックを製造する場合は、層状体の高さは概ね50cm+余裕高(振動・締固めによる高さ減少を考慮した余裕)として設計する。
【0024】
層状体が形成されると、本願発明の固化ブロック製造装置の鉛直ガイドを層状体に挿入する(Step40)。可動静止手段を操作することで水平加振板の自重の一部を層状体に預け(Step50)、固化ブロック製造装置の水平加振板を層状体の上面(天端)に載置し(Step60)、加振機によって水平加振板に振動を与える(Step70)。層状体に振動が与えられると、徐々に層状体(つまり混練物)は流動化し、容積が縮小していく。自重のうち一部の支持が層状体に預けられた水平加振板は、層状体の容積縮小に伴って徐々に下方へスライドしていく。
【0025】
層状体が流体化(プリン状あるいはヨウカン状に変化)すると、鉛直ガイドを左右に搖動させながら(Step80)、層状体から鉛直ガイドを引き抜く(Step90)。このとき、鉛直ガイドを直接引き抜くのではなく、水平加振板を引き上げることで間接的に鉛直ガイドを引き抜く。鉛直ガイドの上部には固定制止手段が設けられており、これを通過できない水平加振板に係止されるかたちで、鉛直ガイドは引き抜かれるわけである。なお、鉛直ガイドを左右に搖動させる理由は、固化ブロックの周辺に縁切り空間を形成するためであり、この縁切り空間によって固化ブロックは他の固化ブロックと明確に分離されるとともに、当該固化ブロックと隣接する位置で鉛直ガイドを挿入する際のガイド溝になる。
【0026】
製造しようとする固化ブロックの数だけ、Step10〜Step90を繰り返し(
図1のループ)、1日程度待機すれば(Step100)、切り出された混練物が固化し、固化ブロックが得られる。
【0027】
以下、本願発明の固化ブロック製造装置、及び固化ブロック製造方法を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0028】
2.固化ブロック製造装置
図2は、本願発明の固化ブロック製造装置100を示すモデル図であり、(a)は断面図、(b)はy−y矢視の平面図である。この図に示すように固化ブロック製造装置100は、水平加振板110と、鉛直ガイド120、加振機130を備えている。なお、
図1に示す固化ブロック製造装置100は固化ブロック製造時の姿勢(向き)であり、便宜上、以降も製造時姿勢の場合で説明する。
【0029】
(鉛直ガイド)
鉛直ガイド120は、側壁体121で囲まれた筒状であり、上端に上開口部が設けられるとともに下端には下開口部が設けられている。すなわち、側壁体121内には内部空間が設けられ、そしてこの内部空間は上下に貫通しているわけである。また、上開口部には内側に向かって突出する固定制止手段122が設けられており、したがって上開口部の面積は、内部空間の水平断面積(水平面で切った断面積)や下開口部よりも小さくなっている。なお、本実施形態では側壁体121の平面形状(つまり内部空間の平面形状)を矩形としているが、これに限らず平面視で多角形(例えば、六角形、八角形等)や、円形、楕円形など、製造する固化ブロックの形状に合わせて適宜設計することができる。さらに、鉛直ガイド120は層状体に貫入されることから、
図2では側壁体121の下端が尖鋭となるよう加工しているが、側壁体121の板厚によっては必ずしも尖鋭加工する必要はない。
【0030】
(水平加振板)
水平加振板110は、鉛直ガイド120の内部空間内に収められ、側壁体121に対して略垂直(垂直含む)に配置される。例えば
図2では、略鉛直姿勢の側壁体121に対して、水平加振板110は略水平姿勢で配置されている。また、水平加振板110は、内部空間の平面形状と同形であって(
図2では矩形)、内部空間の水平断面積よりも若干小さな面積となっており、鉛直ガイド120とは連結あるいは固定されない。したがって水平加振板110は、鉛直ガイド120の内部空間内を自由に(
図2では上下に)スライドすることができる。ただし、固定制止手段122が設けられた上開口部よりも水平加振板110の面積の方が大きいため、水平加振板110は上開口部を通過することができず、つまり鉛直ガイド120の上方外側に水平加振板110が抜け出ることはない。
【0031】
(加振機)
加振機130は、水平加振板110に振動を与えるものであり、従来からある種々のものを採用することができる。与える振動に関しては、製造現場や製造する固化ブロックの目的等によって適宜選択することができ、例えば振動数3,000〜5,000rpm、振幅0.5〜2.0mmといった振動を例示することができる。加振機130による振動は水平加振板110にのみ伝えることが望ましく、そのため
図2に示すように加振機130を直接、水平加振板110に取り付けると良い。
【0032】
(移動体)
固化ブロック製造装置100は、水平加振板110や鉛直ガイド120を移動させるとともに自らも移動し得る、移動体140を含めたものとすることもできる。
図2ではバックホウの例で移動体140を示しており、バケットを取り外したアームの先に装着治具150(アタッチメント)を取り付け、この装着治具150に水平加振板110を取り付けている。なお、装着治具150と水平加振板110を連結している振動減衰体160は、水平加振板110の振動を吸収(減衰)する目的で設けられたもので、そのため振動減衰体160はラバースプリングやゴム材等で構成されている。振動減衰体160を設けることによって、水平加振板110の振動は移動体140に伝わることがなく、すなわち移動体140が振動によって故障する等のおそれがなく好適となる。
【0033】
(可動制止手段)
図3は、可動制止手段123の動作を示すモデル図であり、(a)は制止状態を示すモデル図、(b)は解除状態を示すモデル図である。既述のとおり水平加振板110は、鉛直ガイド120から独立しているため、内部空間内を自由に上下スライドすることができる。これによって、層状体が流体化する過程において容積が減少する際、層状体に追随するように水平加振板110も徐々に下降し、すなわち常に水平加振板110が層状体の上面に接触して振動を与えることができるため好適となる。しかしながら、鉛直ガイド120を層状体に挿入する際は不都合が生じる。なぜなら、水平加振板110を下方に押し込んでも鉛直ガイド120には力が伝わらず、その結果、鉛直ガイド120は層状体に挿入されないからである。
【0034】
そこで、鉛直ガイド120に水平加振板110を一時的に固定する可動制止手段123を設けている。鉛直ガイド120を層状体に挿入する際は、水平加振板110に与える押し込み力を鉛直ガイド120に伝えるため、可動制止手段123によって水平加振板110は鉛直ガイド120に固定される。一方、層状体に振動を与える際には、水平加振板110が層状体に追随して下降するように、可動制止手段123を操作して当該固定を解除するわけである。
【0035】
可動制止手段123の動作を、
図3を参考にしてより具体的に説明する。
図3に示す可動制止手段123は、側壁体121の上部に4箇所設けられ、それぞれピン構造により回転可能となっている。
図3(a)の状態は水平加振板110のスライドを制止する状態(以下、「制止状態」という。)であり、可動制止手段123の一部(図では水平部)が水平加振板110をその下方から支持している。つまり水平加振板110は、可動制止手段123の支持によって下方にスライドすることができない。一方、
図3(b)の状態は水平加振板110のスライド制止を解除した状態(以下、「解除状態」という。)である。可動制止手段123を回転させることで水平加振板110の下方から外し、水平加振板110を支持しない状態としている。なお、この図では可動制止手段123を回転フック式としているため、側壁体121にはスリット(長孔)が設けられている。
【0036】
可動制止手段123は、回転フック式に限らず、抜き差し可能なピン構造とすることもできるし、水平加振板110を「制止状態」と「解除状態」にすることができれば他の様々な手法を採用することもできる。また、
図3では側壁体121の4箇所に可動制止手段123を設けているが、水平加振板110のスライドを制止することができれば、可動制止手段123の設置数は適宜(望ましくは2個以上として)設計することができる。
【0037】
3.混練物
焼却灰に水とセメントを添加し、所定の機械(もしくは人力)で混練(撹拌〜混ぜ合わせ)したものが「混練物」である。例えば焼却灰が石炭灰の場合、後に説明する超流体状態とするためには全体の1/2以上のフライアッシュを含むことが望ましい。添加するセメント量は焼却灰に対して少量であり、例えば焼却灰とセメントの重量比は95:5〜80:20とすることができる。また、水セメント比(W/C)はできるだけ小さくなるよう配合され、セメント量に対して「適量の水」が添加される。なお、ここで添加するセメントは、ポルトランドセメントをはじめ、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、アルミナセメント、他のセメント系固化材など、種々のものを採用することができる。
【0038】
ところで、「適量の水」のみを加えて水セメント比を小さくする理由は、後の工程で与える面振動によって混練物を密実に固化させ、高品質な固化体を得るためである。ここで高品質とは、少ないセメント量で強度が大きくひび割れ等が少ないことを意味する。その結果小さな透水係数を得るためである。ここで「適量の水」について説明する。後述するように高品質の固化体を得るためには、焼却灰の粒子配置を一様かつ密実の状態にする必要があり、そのためには水を加えて混練物を液状化させる必要がある。しかしながら過大の水を添加すると、塑性状態が維持できなくなり混練物の取り扱いが困難になる。また、単位セメント量に対する水の量が多くなるし、ブリージングの問題もあって、適切な強度が発現されず所望の透水係数は得られない。したがって、適量の水が必要となるわけであるが、この適量を定める手法としては最適含水比を基準とする手法が例示できる。締固めの程度を表す値として、一般に乾燥単位体積重量(乾燥密度)が用いられており、この値が大きいほど強度が増大し、締固めの程度が向上し、透水係数は小さくなる。同じ締固め条件でも、含有する水量によって得られる乾燥単位体積重量は異なり、最も大きな乾燥単位体積重量を与える含水比が「最適含水比」である。なお、現場で大量に締固めることもあり、締固め易さも考慮すれば、混練物の最適含水比より若干量だけ増やした水量を「適量の水」として定めることが望ましい。
【0039】
なお混練物は、非流動性の塑性物であり、いわば湿った土のような状態でいわゆる0スランプの状態である。後に説明する流動性の「超流体層」に比べると、ここで得られる混練物の流動性は極めて小さい。
【0040】
4.層状体
混練物を、バックホウBhなどの重機を使用して、例えば50cm程度の等厚で一面に敷き均したものが「層状体」である。なお、混練物を敷き均しただけの層状体は、やはり非流動性の塑性物であり、いわゆる0スランプの状態である。
【0041】
5.鉛直ガイドの挿入
図4は、鉛直ガイド120を層状体200に挿入する状態を示すモデル図であり、(a)は挿入前の状態を示すモデル図、(b)は挿入後の状態を示すモデル図である。
図4(a)に示すように、移動体140(例えばバックホウ)に装着された水平加振板110は、層状体200の上方から下方に向けて降ろされる。そして、鉛直ガイド120(側壁体121)の先端が層状体200の上面に接触し、さらに層状体200の中に押し込まれていく。遂には、
図4(b)に示すように、鉛直ガイド120(側壁体121)の先端が地面まで到達し、鉛直ガイド120による層状体200への挿入が完了する。このとき(
図4(a)〜(b))、既述したとおり可動制止手段123は制止状態とされており、つまり水平加振板110は鉛直ガイド120に固定されているので、水平加振板110を押し込むことによって鉛直ガイド120は層状体200内に挿入される。
【0042】
6.水平加振板の振動
図5は、層状体200に振動を与えた状態を示すモデル図であり、(a)は振動当初の状態を示すモデル図、(b)は層状体200の容積減少に伴い水平加振板110が下降した状態を示すモデル図である。
図4(b)に示すように、鉛直ガイド120の先端が地面まで到達し、鉛直ガイド120の挿入が完了すると、可動制止手段123を操作する(例えば回転させる)ことで解除状態にする。この結果、水平加振板110の自重は、その一部が移動体140等により負担され(吊り上げられ)、残りは層状体200に預けられる。言い換えれば水平加振板110は層状体200上に載置されることとなり、その状態で加振機130を動作させて水平加振板110に振動を加え、層状体200の上面から振動を与える。このとき、例えば振動数3,000〜5,000rpm、振幅0.5〜2.0mmで加振することができる。
【0043】
面部振動を与えることで、層状体200は非流動性の状態から流体状、つまり「超流体の状態」に変わる。焼却灰のように球形の粒子を比較的多く含むものは、振動が与えられるとその中に含まれる球形粒子のベアリング効果によって粒子間が分離しやすく、その結果粒子の周囲には水分とセメント分がまんべんなく行き渡っていく。そして層状体200(混練物)は有効応力を失い、間隙水圧のみとなって液状化現象を起こす。層状体200が液状化したものがいわゆる「超流体層」であり、いわばプリン状(あるいはヨウカン状)の状態に変化する。この超流体層となった層状体200は、液状化により粒子配置が一様かつ密実となっており、しかも、焼却灰中にケイ素やアルミナ分含まれていると、水とセメントの水和反応により安定した結晶体(固化体)が生成される。この状態で固化したものは、ひび割れが少なく高強度なものであり、10
−7〜10
−9(cm/s)オーダーの透水係数が得られる。
【0044】
面振動により超流体層に変化していく過程で、層状体200はその容積が徐々に縮小していく。つまり、
図5(b)に示すように層状体200の上面は徐々に下方へと下がっていく。このとき、水平加振板110が鉛直ガイド120に固定されていると、水平加振板110の振動は層状体200に伝達されなくなるが、可動制止手段123は解除状態となっているため、水平加振板110は層状体200上に載置された状態であり、したがって層状体200上面の下降に伴って、これに追随するように水平加振板110も徐々に下降させる。その結果、常に水平加振板110が層状体200上面に接触した状態が維持され、水平加振板110の振動は適切に層状体200に伝達される。
【0045】
7.鉛直ガイドの引き抜き
図6は、層状体200から鉛直ガイド120を引き抜く状態を示すモデル図であり、(a)は鉛直ガイド120を搖動する状態を示すモデル図、(b)は層状体200から鉛直ガイド120を引き抜いた状態を示すモデル図である。
【0046】
層状体200に対して、所定時間(例えば数十秒〜1分程度)だけ面振動を与えるとプリン状の超流体層へと変化し、この時点で水平加振板110による振動工程は完了する。振動工程が完了すると、鉛直ガイド120を層状体200から引き抜くことになるが、その前に鉛直ガイド120を水平方向に搖動させることもできる。
図6(a)は、鉛直ガイド120を水平方向に搖動させている状態を示すもので、振動を与えた結果、その層状体200の周辺には縁切り空間210が形成されている。
【0047】
縁切り空間210が形成されると、
図6(b)に示すように層状体200から鉛直ガイド120を引き抜く。既述のとおり、鉛直ガイド120上部の固定制止手段122が水平加振板110に係止されることから、水平加振板110を上方に引き上げれば鉛直ガイド120を層状体200から引き抜くことができる。
【0048】
8.固化ブロック
図7は、縁切り空間210によって分離された複数の固化ブロック200を示す断面図である。鉛直ガイド120が引き抜かれた後、1日程度の待機(養生)を経ると、超流体の状態となった層状体200は十分に固化し、固化ブロック300が完成する。
図7に示すように、一つの層状体200に対して複数の固化ブロック300が製造され、計画された数の固化ブロック300が製造されると全工程が完了する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明の固化ブロック製造装置、及び固化ブロック製造方法は、造成盛土用の固化ブロックや、人工海底山脈を構築するための固化ブロックを製造する際に、特に有効に実施することができる。本願発明は、いままさに喫緊の課題となっている「資源の有効な利用」に対して好適な解決策を提供することを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
【符号の説明】
【0050】
100 固化ブロック製造装置
110 (固化ブロック製造装置の)水平加振板
120 (固化ブロック製造装置の)鉛直ガイド
121 (鉛直ガイドの)側壁体
122 (鉛直ガイドの)固定制止手段
123 (鉛直ガイドの)可動制止手段
130 (固化ブロック製造装置の)加振機
140 (固化ブロック製造装置の)移動体
150 (固化ブロック製造装置の)装着治具
160 (固化ブロック製造装置の)振動減衰体
200 層状体
210 縁切り空間
300 固化ブロック