特許第6413142号(P6413142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6413142断熱パネル及び断熱パネルの取り付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413142
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】断熱パネル及び断熱パネルの取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20181022BHJP
【FI】
   E04B1/80 100J
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-66200(P2014-66200)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-190128(P2015-190128A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】313012349
【氏名又は名称】旭ファイバーグラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】友利 格
(72)【発明者】
【氏名】津田 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】本田 亜斗夢
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3780070(JP,B2)
【文献】 特許第4796836(JP,B2)
【文献】 特公平08−013519(JP,B2)
【文献】 実公平05−019444(JP,Y2)
【文献】 実公昭63−026489(JP,Y2)
【文献】 特許第3149674(JP,B2)
【文献】 実公昭63−016721(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/74 − 1/90
B32B 5/02 − 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
居室内壁に取り付けられる断熱パネルであって、
室内側を向く第1面を有し、バインダーとして熱硬化性樹脂を含む、無機繊維断熱材と、
前記無機繊維断熱材よりも低い透湿度を有する接着層を介して前記第1面に接着された、表皮と、
を備え、
前記無機繊維断熱材は、120kg/m3以上、600kg/m3以下の密度を有する
断熱パネル。
【請求項2】
請求項1に記載された断熱パネルであって、
バインダーである熱硬化性樹脂は、アミド化反応、イミド化反応、エステル化反応及びエステル交換反応のいずれかの反応で硬化する樹脂である断熱パネル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された断熱パネルであって、
バインダーである熱硬化性樹脂は、100〜300℃で硬化する樹脂である断熱パネル。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された断熱パネルであって、
前記表皮材は、不織布を有している断熱パネル。
【請求項5】
請求項4に記載された断熱パネルであって、
前記表皮材は、セルロース系天然繊維、有機合成繊維、及びガラス繊維のいずれかを含む紙である
断熱パネル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された断熱パネルであって、
前記接着層は、融点60〜260℃の有機樹脂フィルムを熱融着することで得られる層である
断熱パネル。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された断熱パネルであって、
前記接着層は、温度25℃、相対湿度90%における透湿度が75g/m2・24hr以下である断熱パネル。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された断熱パネルであって、
前記表皮材及び前記接着層は、前記第1面の全面に設けられている
断熱パネル。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載された断熱パネルであって、
厚みが3〜30mmであり、曲げ弾性率が1〜500MPaである断熱パネル。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載された断熱パネルを、前記第1面が室内側を向くように、前記居室内壁に取り付ける工程を備える、
断熱パネルの取り付け方法。
【請求項11】
請求項10に記載された断熱パネルの取り付け方法であって、
前記取り付ける工程は、前記断熱パネルを、釘、ビス、接着剤、金具、及び両面テープのいずれかを用いて、前記居室内壁に取り付ける工程を含む、
断熱パネルの取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱パネル及び断熱パネルの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー意識の向上により、建築物の壁体に高い断熱性が要求されている。既設建築物の断熱性を高めるために、断熱リフォームが行われる場合がある。断熱リフォームでは、例えば、断熱パネルが建築物の壁体に取り付けられる。
【0003】
上記に関連して、特許第4385382号には、外断熱用の断熱材が開示されている。この断熱材は、無機繊維を熱硬化性結合剤によって結合して密度が32〜250kg/m3となるように成形したボード状の無機繊維成形体を有し、無機繊維成形体の全面又は一部に無機繊維成形体の厚さの80〜130%に相当する高さを有する支柱がボード面と垂直に刺挿されて無機繊維成形体によって保持されており、前記支柱が一方の端部が有底である樹脂製の円筒状体であり、無機繊維成形体の厚さ方向の圧縮強度が該支柱によって補強されていることを特徴とする。
【0004】
一方で、断熱パネルとしては、建築物の居室内壁に取り付けられるものも知られている。
特開2013−124490号公報には、水平に延び、上下方向に所定の間隔で複数配された横桟木と、少なくとも前記横桟木間に配された矩形状で厚さが25ミリメートル(mm)以下の断熱材が一体化され、前記断熱材の表面及び裏面は前記横桟木の配置部分を除いて露出してなるリフォーム用の断熱パネルを、既存の壁又は既存の天井の室内側に既存の壁又は既存の天井を撤去することなく重ねて施工することを特徴とする断熱リフォーム方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4385382号
【特許文献2】特開2013−124490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
居室内壁に断熱パネルを施工する場合、室内形状により、異なる寸法の断熱パネルが必要となることがある。すなわち、施工時に、室内形状に応じて、所望する形状になるように断熱パネルを加工することが求められる場合がある。すなわち、居室内壁用の断熱パネルは、加工性に優れていることが求められる。
また、居室内壁に断熱パネルを取り付けた場合、断熱パネルの断熱効果により、断熱パネルの両側(室内側と壁側)の間に温度差が生じる場合がある。ここで、水蒸気を含む空気が、断熱パネルの内部を通過して、壁に到達する場合がある。温度差により、断熱パネルと居室内壁との間で、空気中の水蒸気が結露する場合がある。よって、結露が生じない断熱パネルが求められる。
すなわち、本発明の課題は、加工に優れ、結露を防止することができる、断熱パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、無機繊維断熱材の密度を特定の値以上とし、表皮層及び接着層を設けることによって、上記課題が解決できることを見出した。すなわち、本発明は、以下の事項に関するものである。
(1)居室内壁に取り付けられる断熱パネルであって、第1面を有し、バインダーとして熱硬化性樹脂を含む、無機繊維断熱材と、前記無機繊維断熱材よりも低い透湿度を有する接着層を介して前記第1面に接着された、表皮層とを備え、前記無機繊維断熱材は、120kg/m3以上、600kg/m3以下の密度を有する断熱パネル。
(2)前記(1)に記載された断熱パネルであって、バインダーである熱硬化性樹脂は、アミド化反応、イミド化反応、エステル化反応及びエステル交換反応のいずれかの反応で硬化する樹脂である断熱パネル。
(3)前記(1)及び(2)に記載された断熱パネルであって、バインダーである熱硬化性樹脂は、100〜300℃で硬化する樹脂である断熱パネル。
(4)前記(1)乃至(3)に記載された断熱パネルであって、前記表皮材は、不織布を有している断熱パネル。
(5)前記(4)に記載された断熱パネルであって、前記表皮材は、セルロース系天然繊維、有機合成繊維、及びガラス繊維のいずれかを含む紙である断熱パネル。
(6)前記(1)乃至(5)のいずれかに記載された断熱パネルであって、前記接着層は、融点60〜260℃の有機樹脂フィルムを熱融着することで得られる層である断熱パネル。
(7)前記(1)乃至(6)のいずれかに記載された断熱パネルであって、前記接着層は、温度25℃、相対湿度90%における透湿度が75g/m2・24hr以下である断熱パネル。
(8)前記(1)乃至(7)のいずれかに記載された断熱パネルであって、前記表皮材及び前記接着層は、前記第1面の全面に設けられている断熱パネル。
(9)前記(1)乃至(8)のいずれかに記載された断熱パネルであって、厚みが3〜30mmであり、曲げ弾性率が1〜500MPaである断熱パネル。
(10)前記(1)乃至(9)のいずれかに記載された断熱パネルを、前記第1面が室内側を向くように、居室内壁に取り付ける工程を備える、断熱パネルの取り付け方法。
(11)前記(10)に記載された断熱パネルの取り付け方法であって、前記取り付ける工程は、前記断熱パネルを、釘、ビス、接着剤、金具、及び両面テープのいずれかを用いて、前記居室内壁に取り付ける工程を含む、断熱パネルの取り付け方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加工に優れ、結露を防止することができる、断熱パネルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る断熱パネルを示す断面図である。
図2図2は、試験室を示す概略図である。
図3図3は、温度と経過時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る断熱パネル10を概略的に示す断面図である。この断熱パネル10は、断熱リフォーム材であり、建築物の居室内壁に取り付けられるものである。
図1に示されるように、断熱パネル10は、無機繊維断熱材1及び表皮材3を有している。無機繊維断熱材1は、板状である。表皮材3は、無機繊維断熱材1よりも低い透湿度を有する接着層2を介して、無機繊維断熱材1の片面(室内側を向く面;第1面)に接着されている。無機繊維断熱材1は、無機繊維をバインダーにより結合することにより得られるものである。バインダーとしては、熱硬化性樹脂が用いられる。また、無機繊維断熱材1の密度は、120kg/m3以上である。
【0011】
このような構成によれば、無機繊維断熱材1の密度が120kg/m3以上であるため、加工性の観点から居室内壁用に適した断熱パネル10が得られる。居室内壁に断熱パネル10を施工する場合、室内形状により、異なる寸法の断熱パネル10が必要となることがある。その結果、施工時に断熱パネル10を加工することが求められる場合がある。これに対し、無機繊維断熱材1の密度が120kg/m3以上であることにより、加工に適切な大きさの剛性を断熱パネル10に付与することが可能となり、加工性を高めることが可能になる。
加えて、居室内壁に取り付けられる断熱パネル10に対しては、押された時に凹まない程度の硬さが求められる。無機繊維断熱材1の密度が120kg/m3以上であることにより、断熱パネル10に押された時に凹まない程度の硬さを付与することが可能となる。
また、断熱パネル10は、ビス及び釘等を用いて居室内壁に取り付けられる場合がある。このような場合、施工時に断熱パネル10が破損しないことが求められる。無機繊維断熱材1の密度が120kg/m3以上であることにより、ビス及び釘等を用いた場合であっても、破損しない程度の強度を有する断熱パネル10に与える事ができる。
【0012】
加えて、本実施形態によれば、接着層2及び表皮材3が設けられていることにより、居室内壁用としてより適切な断熱パネル10を得ることができる。以下、この点について説明する。
居室内壁用の断熱パネル10に対しては、室内側の表面に化粧材(壁紙)を貼ることが求められる。無機繊維断熱材1や接着層2として用いられる樹脂は、多くの場合、壁紙等の接着剤との濡れ性が劣る。これに対して、表皮材3を設けることにより、断熱パネル10の室内側に化粧材(壁紙)を貼ることができる。すなわち、表皮材3は、化粧材の下地として機能する。
【0013】
接着層2は、表皮材3を無機繊維断熱材1に接着させる機能に加えて、防湿層としての機能をも兼ね備えている。仮に、防湿層を有さない断熱パネルを居室内壁に施工した場合、水蒸気を含む空気が、断熱パネルの内部を通過して、壁に到達する。そして断熱パネルの断熱効果により、室内側と居室内壁側との間で温度差が生じると、空気中の水蒸気が結露する。これに対して、本実施形態によれば、接着層2が無機繊維断熱材1よりも低い透湿度を有しているため、水蒸気を含む空気の透過が防止され、結露を防止できる。
すなわち、接着層2が接着作用に加えて防湿作用をも有していることにより、居室内壁用としてより適切な断熱パネル10を得ることができる。
【0014】
以上説明したように、本実施形態によれば、居室内壁用として適切な断熱パネル10が得られる。
以下に、断熱パネル10の構成を詳細に説明する。
【0015】
[断熱パネル10の形状]
断熱パネル10は、既述の通り、板状である。断熱パネル10は、例えば直方体状(正面から見た場合に矩形状)である。
断熱パネル10の厚みは、3〜30mmであることが好ましく、8mm以上20mm以下であることがより好ましい。断熱パネル10の厚みが大きすぎると、施工後に室内空間が狭くなってしまう。また、所望する加工性が得られない場合がある。一方、断熱パネル10の厚みが小さすぎる場合も、加工に必要な剛性が得られにくくなり、所望する加工性を得られない場合がある。また、必要な強度が得られない場合がある。
断熱パネル10の曲げ弾性率は、1〜500MPaであることが好ましく、3〜60MPaであることがより好ましい。曲げ強度が大きすぎる場合、剛性が大きくなりすぎ、運搬時あるいは施工時に角部が欠けやすくなる。一方、曲げ強度が小さすぎる場合、必要な剛性が得られず、所望する加工性が得られない場合がある。
【0016】
[無機繊維断熱材1]
無機繊維断熱材1は、既述のように、無機繊維をバインダーにより結合することにより得られるものである。
既述のように、無機繊維断熱材1の密度は、所望する加工性を得る観点から、120kg/m3以上である。また、無機繊維断熱材1の密度は、600kg/m3以下であることが好ましい。無機繊維断熱材1の密度が600kg/m3を超える場合、重量が大きくなり、施工時の取り扱いが困難になる場合がある。また、600kg/m3を超える場合、自重により断熱パネルの自重により変形が起こりやすくなり、内壁用建材としての強度が維持できなくなる場合がある。無機繊維断熱材1の密度は、140〜350kg/m3であることが、より好ましい。
【0017】
無機繊維断熱材1に用いられる無機繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスウール、ロックウール、及び高炉スラグウールなどを用いることができる。このうち、建材用の断熱材として長年の実績を有する点、優れた特性を有する点、及び量産により低コストで製造できる点からは、遠心法で集綿されるガラスウールが好適である。ガラスウールの径は、3〜10μmが好ましく、より好ましくは4〜9μmである。
【0018】
バインダーとしては、アミド化反応、イミド化反応、エステル化反応及びエステル交換反応のいずれかの反応で硬化する熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。これらの樹脂を用いることは、以下の点から、居室内壁用の断熱パネル10として好ましい。
無機繊維断熱材1の密度を高めるためには、バインダーとして多量の樹脂を用いる必要がある。ここで、従来からバインダーとして広く用いられているフェノール系樹脂などのアルデヒド縮合性樹脂を用いた場合には、製造工程でホルムアルデヒドもしくはフェノール系樹脂特有の臭気が生じる場合がある。密度を高めるために多量の樹脂を用いると、多量のホルムアルデヒド等が生じる。その結果、対策を施さなければ、室内空気室が悪化する。その結果、ホルムアルデヒド等を十分に除去することが難しくなる。すなわち、アルデヒド縮合性樹脂を用いた場合には、環境負荷の観点から、無機繊維断熱材1の密度を十分に高めることが難しくなる。
これに対し、本実施形態によれば、バインダーとして、アミド化反応、イミド化反応、エステル化反応及びエステル交換反応のいずれかの反応で硬化する熱硬化性樹脂が用いられているため、ホルムアルデヒドが生じない。よって、環境負荷を増大させること無く、無機繊維断熱材1の密度を十分に高めることができ、加工性に優れた断熱パネル10を得ることができる。
【0019】
熱硬化性樹脂は、アミド化反応、イミド化反応、エステル化反応及びエステル交換反応のいずれかの反応で硬化する樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、エチレン性不飽和単量体を重合したポリカルボン酸と、アミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコールを含有する架橋剤とを含有する樹脂組成物を用いることができる。
上記ポリカルボン酸としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸単量体より選択される1種以上の単量体を、単独あるいは、カルボキシル基を含有しないエチレン性不飽和単量体を併用して重合させて得られるものが用いられる。
上記カルボキシル基を含有しないエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n‐ステアリル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールエトキシ(メタ)アクリレート、メチル‐3‐メトキシ(メタ)アクリレート、エチル‐3‐メトキシ(メタ)アクリレート、ブチル‐3‐メトキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、4‐ヒドロキシブチルアクリレート、3価以上のポリオールのモノ(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、N‐アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N‐ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等のアクリル系単量体;ビニルアルキルエーテル、N‐アルキルビニルアミン、N,N‐ジアルキルビニルアミン、N‐ビニルピリジン、N‐ビニルイミダゾール、N‐(アルキル)アミノアルキルビニルアミン等のビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N‐アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N‐ビニルホルムアミド、N‐ビニルアセトアミド、N‐ビニルピロリドン等のアミド系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン、イソプレン、ブタジエン等の脂肪族不飽和炭化水素;スチレン、α‐メチルスチレン、p‐メトキシスチレン、ビニルトルエン、p‐ヒドロキシスチレン、p‐アセトキシスチレン当のスチレン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用することができる。ただし、N‐メチロール(メタ)アクリルアミド、メチル‐N‐メチロール(メタ)アクリルアミドは、加熱すると、架橋反応を生じ、ホルムアルデヒドを放出するので、使用することは避ける。
上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2‐メチルマレイン酸、イタコン酸、2‐メチルイタコン酸、α‐β‐メチレングルタル酸、マレイン酸モノアルキル、フマル酸モノアルキル、無水マレイン酸、無水アクリル酸、β‐(メタ)アクリロイルオキシエチレンハイドロジエンフタレート、β‐(メタ)アクリロイルオキシエチレンハイドロジエンマレエート、β‐(メタ)アクリロイルオキシエチレンハイドロジエンサクシネート等が挙げられる。
【0020】
熱硬化性樹脂に含まれる架橋剤は、既述のように、アミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコールを含有する。
このようなアルコールとしては、例えば、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン;脂肪族ポリアミン[例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,2‐ジアミノプロパン、1,3‐ジアミノプロパン、1,4‐ジアミノブタン、1,6‐ジアミノヘキサン、3,3’‐イミノビス(プロピルアミン)、3‐(メチルアミノ)プロピルアミン、3‐(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3‐(エチルアミノ)プロピルアミン、3‐(ブチルアミノ)プロピルアミン、N‐メチル‐3,3’‐イミノビス(プロピルアミン)、ポリエチレンイミン等]、芳香族ポリアミン[例えば、フェニレンジアミン、o‐トリジン、m‐トルイレンジアミン、m‐キシリレンジアミン、ジアニシジン、ジアミノジフェニルエーテル、1,4‐ジアミノアントラキノン、3,3’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノビフェニル、4,4’‐ジアミノベンズアニリド、4,4’‐ジアミノ‐3,3’‐ジエチルジフェニルメタン等]、複素環アミン[例えば、ピペラジン、2‐メチルピペラジン、1‐(2‐アミノエチル)ピペラジン、2,5‐ジメチルピペラジン、シス‐2,6‐ジメチルピペラジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、1,3‐ジ(4‐ピペリジル)プロパン、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール、1‐アミノエチル‐2‐メチルイミダゾール等]等のアミン類に、エチレンオキサイド、あるいはプロピレンオキサイドを付加したポリアミン系ポリオールが挙げられる。
本発明においては、架橋剤として、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のジアルカノールアミンを少なくとも1種類以上含有することが好ましい。
ジアルカノールアミンは、上記ポリアミン系ポリオールと比較して、分子量が小さいながらも、沸点が200℃以上であるので、ポリカルボン酸との反応性が高く、また、無機繊維断熱材1の硬化工程での揮散が少なく、経済性に優れている。
【0021】
また、熱硬化樹脂には、架橋剤として上記アルコール以外のポリオールがさらに含まれていてもよい。
このようなポリオールとしては、水溶性のポリオールであることが好ましく、具体的には、1,2‐エタンジオール(エチレングリコール)及びその二量体又は三量体、1,2‐プロパンジオール(プロピレングリコール)及びその二量体又は三量体、1,3‐プロパンジオール、2,2‐メチル‐1,3‐プロパンジオール、2‐ブチル‐2‐エチル‐1,3‐プロパンジオール、1,3‐ブタンジオール、1,4‐ブタンジオール、2‐メチル‐2,4‐ブタンジオール、1,5‐ペンタンジオール、3‐メチル‐1,5‐ペンタンジオール、2‐メチル‐2,4‐ペンタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、1,4‐シクロヘキサンジオール、2‐エチル‐1,3‐ヘキサンジオール、2‐ヒドロキシメチル‐2‐メチル‐1,3‐プロパンジオール、2‐エチル‐2‐ヒドロキシメチル‐2‐メチル‐1,3‐プロパンジオール、1,2,6‐ヘキサントリオール、2,2‐ビス(ヒドロキシメチル)‐2,3‐プロパンジオール等の脂肪族ポリオール;トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のトリアルカノールアミン;グルコース、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、マルチトール等の糖類、及び上記ポリオールと、フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等のポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリル樹脂系ポリオール等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用することができる。そして、なかでも、高沸点であり、かつ、揮散しにくいという理由から、トリアルカノールアミンが好ましい。
【0022】
無機繊維断熱材1中のバインダー(熱硬化性樹脂)の含有量は、所望の密度を得る観点から、8〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜20質量%である。
また、熱硬化性樹脂としては、100〜300℃で硬化する樹脂を用いることが好ましい。熱硬化性樹脂の硬化温度は、130〜250℃であることがより好ましい。
【0023】
[表皮材3]
既述のように、表皮材3は、化粧材を貼るための下地として設けられている。表皮材3としては、例えば、セルロース系天然繊維、有機合成繊維、及びガラス繊維のいずれかを含む紙が挙げられ、クラフト紙が好ましく用いられる。
クラフト紙は、単位面積当たりの重量が、100g/m2以上が好ましく、より好ましくは150g/m2以上である。
【0024】
[接着層2]
接着層2としては、例えば、融点60〜260℃の有機樹脂フィルムを熱融着することで得られる層が用いられる。有機樹脂フィルムの融点は、85〜250℃であることがより好ましい。
有機樹脂フィルムとしては、例えば、ポリアミドを除くフィルムが好適に用いられ、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、及び塩化ビニル樹脂等のフィルムがより好適に用いられる。また、有機樹脂フィルムとしては、ポリエチレンが更に好適に用いられる。
ポリエチレンは、単位面積当たりの重量が、15〜75g/m2であることが好ましく、25〜50g/m2であることがより好ましい。
接着層2の透湿度は、無機繊維断熱材1よりも低ければよいが、好ましくは、温度25℃、相対湿度90%における透湿度が75g/m2・24hr以下である。
表皮材3だけでなく接着層2も、無機繊維断熱材1の片面の全面に設けられていることが好ましい。これにより、接着層2が点状及び線状に配置されている場合よりも確実に、表皮材3を無機繊維断熱材1に接着させることができる。また、接着層2が全面に設けられていることにより、水分の透過をより確実に防止することができる。
【0025】
[断熱パネル10の製造方法]
本実施形態に係る断熱パネル10は、例えば以下のような手法により得ることができる。
まず、無機繊維の製造工程中またはその後において、無機繊維に所定量の熱硬化性樹脂をバインダーとして含浸させ、マット状の無機繊維を得る。更に、マット状の無機繊維上に、接着層2形成用の有機樹脂フィルムを介して表皮材3を配置する。次いで、マット状の無機繊維、有機樹脂フィルム及び表皮材3を一定の厚さになるように加圧し、加熱(100〜300℃)によりバインダーを硬化させる。これにより、無機繊維同士が結合され、無機繊維断熱材1が形成される。ここで、有機樹脂フィルムの融点が60〜260℃であれば、加圧及び加熱時に、接着層2となる有機樹脂フィルムの表面が軟化、もしくは形状が崩れない程度に溶融し、断熱パネル10の成形と同時に表皮材3を無機繊維断熱材1に融着する。これにより、所定の密度とある程度の剛性を持ったボード状の材料が得られる。得られた材料が必要に応じて切断され、断熱パネル10が得られる。
【0026】
本実施形態に係る断熱パネル10は、既述の通り、建築物の壁体(例えば、外壁、及び居室内壁)に取り付けられる。居室内壁に取り付けられる場合、表皮材3側が室内側を向くように(第1面が室内側を向くように)、取り付けられる。このとき、断熱パネル10は、例えば、釘、ビス、接着剤、金具、及び両面テープのいずれかを用いて、居室内壁に取り付けられる。
【0027】
(実施例1)
遠心法にて、平均繊維径7ミクロンのガラス繊維を形成直後に、ポリアクリル酸とジエタノールアミンからなる熱硬化性水性アクリルバインダーを、総重量に対して15重量%となるように塗布して、目付450g/m2のガラス繊維マットを成形した。このガラス繊維マットを6層になるように積層して、接着層として、融点120℃、透湿度10g/m2・24hrのポリエチレンフィルムを、ガラス繊維マットの片面をすべて覆うように設置し、更に目付170g/m2の表皮材であるクラフト紙を、接着層を介してガラス繊維マットと接するように設置して、230℃、80kg/mm2の圧力で、15分間硬化させ、密度225kg/m3、厚み12mmの断熱パネルを得た。
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、ガラス繊維を形成後、スチレン-マレイン酸共重合物、モノエタノールアミン及びジエタノールアミンの混合物からなる熱硬化性水性アクリルバインダーを総重量に対して12重量%となるように塗布して、目付300g/m2のガラス繊維マットを成形した。このガラス繊維マットを5層になるように積層して、接着層として、融点260℃、透湿度20g/m2・24hrのポリエチレンテレフタレートフィルムを、ガラス繊維マットの片面がすべて覆うように設置し、更に目付30g/m2の表皮材であるポリエチレンテレフタレートフィルム繊維不織布を、接着層を介してガラス繊維マットと接するように設置して、230℃、50kg/mm2の圧力で、15分間、硬化させ、密度125kg/m3、厚み15mmの断熱パネルを得た。
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、ガラス繊維を形成後、ポリアクリル酸とジエタノールアミンからなる熱硬化性水性アクリルバインダーを総重量に対して17重量%となるように塗布して、目付450g/m2のガラス繊維マットを成形した。このガラス繊維マットを15層になるように積層して、接着層として、融点120℃、透湿度10g/m2・24hrポリエチレンフィルムを、ガラス繊維マットの片面がすべて覆うように設置し、更に目付170g/m2の表皮材であるクラフト紙を、接着層を介してガラス繊維マットと接するように設置して、240℃、80kg/mm2の圧力で、20分間硬化させ、密度563kg/m3、厚み12mmの断熱パネルを得た。
【0028】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で、目付450g/m2のガラス繊維マットを成形した。このガラス繊維マットを6層になるように積層して、接着層及び表皮材を用いずに、230℃、80kg/mm2の圧力で、15分間硬化させ、密度225kg/m3、厚み12mmの表皮材のない断熱パネルを得た。
(比較例2)
実施例1と同様の方法で、目付400g/m2のガラス繊維マットを成形した。このガラス繊維マットを3層になるように積層して、接着層として、融点120℃、透湿度10g/m2・24hrのポリエチレンフィルムを、ガラス繊維マットの片面がすべて覆うように設置し、更に目付170g/m2の表皮材であるクラフト紙を、接着層を介してガラス繊維マットと接するように設置して、240℃、50kg/mm2の圧力で、15分間硬化させ、密度100kg/m3、厚み12mmの断熱パネルを得た。
(比較例3)
実施例1と同様の方法で、目付400g/m2のガラス繊維マットを成形した。このガラス繊維マットを16層になるように積層して、接着層として、融点260℃、透湿度10g/m2・24hrのポリエチレンテレフタレートを、ガラス繊維マットの片面がすべて覆うように設置し、更に目付170g/m2の表皮材であるクラフト紙を、接着層を介してガラス繊維マットと接するように設置して、240℃、100kg/mm2の圧力で、20分間硬化させ、密度640kg/m3、厚み10mmの断熱パネルを得た。
【0029】
[評価方法]
実施例および比較例で作成した断熱パネルの、曲げ弾性率、たわみ試験、タップ強さ、熱伝導率、結露試験を評価した。
(曲げ弾性率)
断熱パネルより、幅50mm、長さ300mmの試験片を切り出し、温度25℃湿度60%の環境下で、万能試験機にて曲げ変形速度5mm/secで変形させ、曲げ弾性率を測定した。
(たわみ試験)
水平である試験台に、2台のT型スタンドを置き、間隔を1600mmとしたところに、長さ1800mm、幅900mmの断熱パネルをT型スタンドの上に載せ、断熱パネルの中央がT型スタンドの間の中央になるように設置した。断熱パネルの中央部の垂れ下がりを測定した。
(タップ強さ)
長さ1800mm、幅900mmの断熱パネルを1つの短辺の両角の部分、長辺から30mm、短辺から30mmのところ2か所に8mm径のビスで、高さ2000mmの合板上に取付け、合板を垂直に立てた際に、断熱パネルが宙づりになるようにした。この状態で、温度25℃湿度60%に環境下で7日間保持させた。取付時の断熱パネルの下辺側の位置と、7日後の下辺の位置を測定し、下辺位置の変化を測定した。評価においては、下辺位置の変化が大きいほど、タップ強さが低いと見なした。
(熱伝導率)
断熱パネルを300mm角に切りだし、熱貫流法にて、上面33℃、下面13℃、平均温度23℃での熱伝導率を測定した。
(結露試験)
図2は、結露試験で使用した試験室を示す概略図である。この試験室は、第1室及び第2室を有しており、第1室と第2室とは無断熱の壁により仕切られている。第1室は室外を模擬しており、その温度を-1.0〜-2.5℃に設定した。第2室の温度を23℃に設定し、湿度を70%RHに設定した。無断熱の壁の第2室側に断熱パネル10を施工し、断熱パネル10の表面温度を測定し、実験開始から6時間経過後における結露の有無を観察した。
【0030】
(評価結果)
曲げ弾性率、たわみ試験、タップ強さ、熱伝導率、及び結露の有無の試験結果を下記表1に示す。
【表1】
【0031】
(結露の有無及び熱伝導率について)
実施例1〜3では、本発明が目的とする居室内断熱リフォーム後に結露がないことがわかる。一方、比較例1での透湿度の低い接着層を用いない断熱パネルでは、断熱パネル内を水蒸気が対流して、壁側に結露が生じた。なお、実施例1〜3及び比較例1のいずれにおいても、同等の熱伝導率が得られた。この結果から、接着層を用いることにより、断熱性能を損なうことなく、結露を防止できることが理解される。
(曲げ弾性率及びたわみについて)
実施例1〜3の断熱パネルは、より密度が低い比較例2の断熱パネルと比較して、高い曲げ弾性率、及び小さなたわみを有していた。この結果から、比較例2よりも高い密度の断熱パネルを用いることにより、内壁用建材として十分な強度が得られることが理解される。
また、実施例3と比較例3とを比較すると、比較例3の方が、密度が高いのにもかかわらず、たわみが大きかった。これは、比較例3の自重によるものと考えられる。すなわち、密度が高すぎる場合であっても、自重により断熱パネルがたわみやすくなり、内壁用建材として十分な強度が得られることが理解される。
(タップ強さについて)
密度がより高い比較例3の断熱パネルでは、実施例1〜3の断熱パネルと比較して、タップ強さの低下が見られた。これは、ねじ止め後の自重によるものであると考えられる。すなわち、密度が高すぎる場合、断熱パネルを既存の壁や柱にねじ止めにより施工した場合に、自重による施工後にずれが生じやすくなることが理解される。
【0032】
更には、図3は、本発明の実施例1の断熱パネルの断熱性を示す結果であり、ここでは、温度と経過時間との関係を示している。図3には、第2室の室内温度a、断熱パネル10の表面温度b(実施例)、及び無断熱の壁の壁面温度c(比較例)が示されている。図3に示されるように、断熱パネル10を施工することにより、表面温度の低下が抑制され、断熱効果が得られることが理解される。
表1の実施例でも観察されるように、6時間経過後の結露が観察されなかった。一方、断熱パネル10を施工しなかった場合には壁面に結露が観察された。
【符号の説明】
【0033】
1 無機繊維断熱材
2 接着層
3 表皮材
10 断熱パネル
図1
図2
図3